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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137536
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】排滓部用定形耐火物及び取鍋
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/02 20060101AFI20230922BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B22D41/02 B
B22D41/02 D
F27D1/00 N
F27D1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043787
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】320005154
【氏名又は名称】日本製鋼所M&E株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】浦本 和孝
(72)【発明者】
【氏名】関 佑太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠
(72)【発明者】
【氏名】中谷 友彦
(72)【発明者】
【氏名】板橋 義亜樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 進吾
【テーマコード(参考)】
4E014
4K051
【Fターム(参考)】
4E014BA01
4E014BA02
4E014BA03
4E014BB00
4K051AA06
4K051AB03
4K051BB02
4K051BB07
4K051BE03
(57)【要約】
【課題】変形、破断、或いは脱落を低減する排滓部用定形耐火物、及び取鍋を提供すること。
【解決手段】排滓部用定形耐火物2は、取鍋1の排滓部11に設置可能な定形耐火物である。排滓部用定形耐火物2は、排滓部11に設置される底部2aと、取鍋1の外周側OUTに相当する外壁部2bと、取鍋1の内周側INに相当する内壁部2cと、底部2aと対向する天壁部2dを備える。排滓部用定形耐火物2が排滓部11に設置されると、外壁部2bは、炉頂部10における取鍋1の外周を形成する外殻である鉄皮12よりも径方向の内側へ凹み、一部が内壁部2cの側へ凹む凹部3を備える。排滓部用定形耐火物2の底部2aを排滓部11に設置すると、天壁部2dの高さは、取鍋1の上端部10aの高さとなる。取鍋1が、炉頂部10において支持具5を備えるとき、外壁部2bの一部は、支持具5の一部と接触し、かつ支持具5の一部が凹部3に進入する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋の炉頂部における排滓部に設置可能な定形耐火物であって、
前記排滓部に設置される底部と、前記取鍋の外周側に相当する外壁部と、前記取鍋の内周側に相当する内壁部と、前記底部と対向する天壁部を備え、
前記天壁部を上側とし、前記底部を下側とする上下方向とし、
前記排滓部に設置されると、
前記外壁部は、前記炉頂部における前記取鍋の外周を形成する外殻よりも径方向の内側へ凹み、一部が前記内壁部の側へ凹む凹部を備え、
前記天壁部の高さは、前記取鍋の上端部の高さとなり、
前記取鍋が、前記炉頂部において支持具を備えるとき、
前記外壁部の一部は、前記支持具の一部と接触し、かつ前記凹部には前記支持具の一部が挿入される排滓部用定形耐火物。
【請求項2】
マグネシアカーボン質レンガで形成される請求項1に記載の排滓部用定形耐火物。
【請求項3】
前記凹部は、前記支持具の一部が挿入された状態で、該支持具の一部の上側、下側、及び径方向に隙間を有する請求項1又は2に記載の排滓部用定形耐火物。
【請求項4】
炉頂部における排滓部と、
前記排滓部に設置される排滓部用定形耐火物と、
前記排滓部に形成される支持具を備え、
前記排滓部用定形耐火物は、
前記排滓部に設置される底部と、外周側の外壁部と、内周側の内壁部と、前記底部と対向する天壁部と、前記外壁部の一部が前記内壁部の側へ凹む凹部を備え、
前記天壁部を上側とし、前記底部を下側とする上下方向とし、
前記排滓部用定形耐火物は、
前記外壁部が、外周を形成する外殻よりも径方向の内側へ凹み、
上下方向において、前記天壁部の高さが、前記炉頂部における上端部の高さであり、
前記支持具は、
内周側に向かって突出する凸部と、
前記凸部の上側にあって、前記排滓部用定形耐火物の前記外壁部と接触する第一接触部と、
前記凸部の下側にあって、前記排滓部用定形耐火物の前記外壁部と接触する第二接触部を備え、
前記第一接触部は、前記排滓部用定形耐火物の前記外壁部と、前記天壁部に隣接する位置で接触し、
前記第二接触部は、前記排滓部用定形耐火物の前記外壁部と、前記凹部の下側で接触し、
前記凸部は、前記凹部に挿入された状態である取鍋。
【請求項5】
前記凸部は、前記凹部に挿入された状態で、該凸部の上側、下側、及び径方向にそれぞれ隙間を有する請求項4に記載の取鍋。
【請求項6】
前記支持具における前記第一接触部、前記凸部、及び前記第二接触部と、前記排滓部用定形耐火物における前記外壁部及び前記凹部とによって囲われる領域は、充填材によって充填されている請求項4又は5に記載の取鍋。
【請求項7】
前記排滓部は、周方向における所定の範囲に形成され、
前記支持具は、前記凸部と前記第一接触部と前記第二接触部が、周方向に沿って連続して形成され、
複数個並べて設置される前記排滓部用定形耐火物に対して、前記凸部は前記凹部に挿入され、前記第一接触部及び前記第二接触部が前記外壁部と接触する請求項4から6のいずれかに記載の取鍋。
【請求項8】
前記排滓部用定形耐火物は、マグネシアカーボン質レンガで形成される請求項4から7のいずれかに記載の取鍋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋の排滓部に使用する排滓部用定形耐火物と、排滓部用定形耐火物を含めた取鍋の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、取鍋等の溶融金属保持容器及び押さえレンガが提案されている。例えば、特許文献1の記載によれば、溶融金属保持容器は、鉄皮の開口部の内側に設けられ、レンガ層を上側から押える押さえレンガを備える。押さえレンガの下面における内周側には、下側に突出する凸部が形成され、レンガ層の上面には、凸部が係合された段差部が形成されている。この凸部を含む押さえレンガの下面と、段差部を含むレンガ層の上面との間の目地は、レンガ層の内周面からレンガ層の径方向に延びる水平目地と、この水平目地に対するレンガ層の外周側に位置すると共にレンガ層の高さ方向に延びて水平目地と繋がる垂直目地とを含んで屈曲している。
【0003】
これによれば、水平目地に地金が侵入しても、この水平目地と垂直目地との接続部で地金の侵入を阻止することができる。これにより、地金の侵入に伴う押さえレンガの迫り出しを抑制し、地金が鉄皮に近い側の奥深くまで侵入することを防止できる。この結果、地金を除去する際には、レンガ層のレンガの脱落を防止して、溶融金属が鉄皮に接することを回避できるので、湯漏れの危険性を解消できる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-135065
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来例では以下の課題がある。特許文献1の例を図示したのが図5である。図5に示すように、押さえレンガ120と鉄皮112は、パッチング材118を介して一体となっている。パッチング材118は可縮性が高いため、容器内部の溶融金属による熱によって押さえレンガ120が膨張すると、押しつぶされて収縮する。パッチング材118は、放冷すると収縮前の寸法よりも小さくなり、鉄皮112と押さえレンガ120との間に隙間が発生する。隙間が発生すると、押さえレンガ120の拘束力が低下し、目地が開いて地金が進入しやすくなる。
【0006】
押さえレンガ120は、受熱により膨張し、冷却によってレンガ間に隙間が生じて拘束力が低下してしまう。その結果、押さえレンガ120は再度受熱した際に傾きや上下方向に膨張してしまう。さらに地金が侵入しやすくなることも手伝って局所的な応力が発生しやすくなり、凸部が破断してしまう。よって、仮に凸部があったとしても凸部が破断してしまうという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、従来の課題を解決すべくなされたものであり、変形、破断、或いは脱落を低減する排滓部用定形耐火物、及び取鍋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る排滓部用定形耐火物は、取鍋の炉頂部における排滓部に設置可能な定形耐火物であって、前記排滓部に設置される底部と、前記取鍋の外周側に相当する外壁部と、前記取鍋の内周側に相当する内壁部と、前記底部と対向する天壁部を備え、前記天壁部を上側とし、前記底部を下側とする上下方向とし、前記排滓部に設置されると、前記外壁部は、前記炉頂部における前記取鍋の外周を形成する外殻よりも径方向の内側へ凹み、一部が前記内壁部の側へ凹む凹部を備え、前記天壁部の高さは、前記取鍋の上端部の高さとなり、前記取鍋が、前記炉頂部において支持具を備えるとき、前記外壁部の一部は、前記支持具の一部と接触し、かつ前記支持具の一部が前記凹部に挿入される。
【0009】
これによれば、排滓部用定形耐火物は、排滓部に設置されると、外壁部が炉頂部における取鍋の外周を形成する外殻よりも径方向の内側へ凹むので、外殻より飛び出す部分がない。仮に、炉頂部における外殻が外部の障害に接触したとしても、排滓部用定形耐火物は外殻よりも内側へ凹むので不可抗力による損傷を防止できる。また、上下方向において、天壁部の高さは取鍋の上端部の高さとなる。よって、取鍋内の溶融スラグ等は、排滓部用定形耐火物の天壁部に沿わせて排出することができる。
【0010】
また、排滓部用定形耐火物は、外壁部が内壁部の側へ凹む凹部を備える。取鍋が炉頂部において支持具を備えるとき、排滓部用定形耐火物は、外壁部の一部が支持具と直接接触し、受熱による外周方向の応力を同軸の反力として受け返すことで傾きの発生が抑制される。また、凹部へ支持具の一部が挿入されることで上下動の動きが抑制され、浮き上がりによる脱落を低減できる。
【0011】
また、前記排滓部用定形耐火物は、マグネシアカーボン質レンガで形成されてもよい。この場合、排滓部用定形耐火物は、取鍋内の溶融スラグ或いは溶融金属が飛び散って付着したとしても濡れにくく、溶融スラグ或いは溶融金属が凝固しても剥離しやすい。よって、排滓部用定形耐火物は、溶融スラグ或いは溶融金属を除去する工程を低減できるので、損傷を抑えることができる。
【0012】
また、前記排滓部用定形耐火物の凹部は、前記支持具の一部が挿入された状態で、該支持具の一部の上側、下側、及び径方向に隙間を有してもよい。この場合、排滓部用定形耐火物は、支持具との熱膨張率が異なっていても、過大な応力が発生することを抑制できるので、変形、破断、或いは脱落を低減することができる。
【0013】
本発明の第二の態様に係る取鍋は、炉頂部における排滓部と、前記排滓部に設置される排滓部用定形耐火物と、前記排滓部に形成される支持具を備え、前記排滓部用定形耐火物は、前記排滓部に設置される底部と、外周側の外壁部と、内周側の内壁部と、前記底部と対向する天壁部と、前記外壁部の一部が前記内壁部の側へ凹む凹部を備え、前記天壁部を上側とし、前記底部を下側とする上下方向とし、前記排滓部用定形耐火物は、前記外壁部が、外周を形成する外殻よりも径方向の内側へ凹み、上下方向において、前記天壁部の高さが、前記炉頂部における上端部の高さであり、前記支持具は、内周側に向かって突出する凸部と、前記凸部の上側にあって、前記排滓部用定形耐火物の前記外壁部と接触する第一接触部と、前記凸部の下側にあって、前記排滓部用定形耐火物の前記外壁部と接触する第二接触部を備え、前記第一接触部は、前記排滓部用定形耐火物の前記外壁部と、前記天壁部に隣接する位置で接触し、前記第二接触部は、前記排滓部用定形耐火物の前記外壁部と、前記凹部の下側で接触し、前記凸部は、前記凹部に挿入された状態である。
【0014】
これによれば、取鍋は、排滓部用定形耐火物の外壁部が炉頂部における取鍋の外周を形成する外殻よりも径方向の内側へ凹むので、外殻より飛び出す部分がない。仮に、炉頂部における外殻が外部の障害に接触したとしても、排滓部用定形耐火物は外殻よりも内側へ凹むので不可抗力による損傷を防止できる。上下方向において、天壁部の高さは取鍋の上端部の高さとなる。よって、取鍋内の溶融スラグ等は、排滓部用定形耐火物の天壁部に沿わせて排出することができる。
【0015】
また、取鍋は、支持具が第一接触部と第二接触部にて排滓部用定形耐火物の外壁部に直接接触する。よって、排滓部用定形耐火物は、受熱による外周方向の応力を同軸の反力として受け返すことで傾きの発生が抑制される。また、凸部は凹部へ挿入された状態なので、排滓部用定形耐火物は上下動の動きが抑制され、浮き上がりによる脱落を抑制できる。
【0016】
また、前記取鍋は、前記凸部が前記凹部に挿入された状態で、上側、下側、及び径方向にそれぞれ隙間を有してもよい。この場合、取鍋は、支持具及び排滓部用定形耐火物が溶融金属の熱によって膨張伸縮したとしても、互いに過大な応力が発生することを低減できる。よって、排滓部用定形耐火物が、変形、破断、或いは脱落を低減することができる。
【0017】
また、前記取鍋は、前記支持具における前記第一接触部、前記凸部、及び前記第二接触部と、前記排滓部用定形耐火物における前記外壁部及び前記凹部とによって囲われる領域は、充填材によって充填されてもよい。
【0018】
この場合、取鍋は、支持具が排滓部用定形耐火物に接触するときに形成される囲われた空間へ充填材を充填することにより、支持具と排滓部用定形耐火物との間の拘束力が増す。よって、排滓部用定形耐火物が変形、破断、或いは脱落を低減することができる。
【0019】
また、前記取鍋は、前記排滓部が周方向における所定の範囲に形成され、前記支持具は、前記凸部と前記第一接触部と前記第二接触部が、周方向に沿って連続して形成され、複数個並べて設置される前記排滓部用定形耐火物に対して、前記凸部は前記凹部に挿入され、前記第一接触部及び前記第二接触部が前記外壁部と接触してもよい。
【0020】
この場合、周方向の所定の範囲に形成される排滓部において、支持具は凸部と第一接触部と第二接触部とが周方向に沿って連続的に形成されるので、強度を高めることができる。排滓部用定形耐火物は複数個並べて設置されるので、支持具と排滓部用定形耐火物とは互いに強固な状態で、第一接触部及び第二接触部が外壁部と接触する。よって、支持具は排滓部用定形耐火物を強固に支持することができるので、取鍋の排滓部用定形耐火物は、変形、破断、或いは脱落を低減することができる。
【0021】
また、前記取鍋の前記排滓部用定形耐火物は、マグネシアカーボン質レンガで形成されてもよい。この場合、排滓部用定形耐火物は、取鍋内の溶融スラグ或いは溶融金属が飛び散って付着したとしても濡れにくく、溶融スラグ或いは溶融金属が凝固しても剥離しやすい。よって、排滓部用定形耐火物は、溶融スラグ或いは溶融金属を除去する工程を低減できるので、損傷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の排滓部用定形耐火物2、及び取鍋1を示す図であり、取鍋1の排滓部11周辺を拡大して示した中央断面図である。
図2】本発明の取鍋1の全体を示した中央断面図である。
図3】本発明の取鍋1の全体を示した平面図である。
図4】本発明の取鍋1の排滓部11を拡大して示した平面図を斜視図とした図である。
図5】従来の取鍋における押さえレンガ120と鉄皮112、及びパッチング材118を示した図である。
【0023】
以下、図面を参照し、本発明を具現化した排滓部用定形耐火物2、及び取鍋1を説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0024】
<<排滓部用定形耐火物2の説明>>
図1図2を参照して、本発明の第一の態様に係る排滓部用定形耐火物2の構成を説明する。排滓部用定形耐火物2は、取鍋1の炉頂部10における排滓部11に設置可能な定形耐火物である。排滓部用定形耐火物2は、排滓部11に設置される底部2aと、取鍋1の外周側OUTに相当する外壁部2bと、取鍋1の内周側INに相当する内壁部2cと、底部2aと対向する天壁部2dを備える。
【0025】
天壁部2dを上側とし、底部2aを下側とする上下方向とする。取鍋1は、後述するように円筒状であり、取鍋1の上下方向に延びる仮想中心軸に対して、外殻に向かう方向を径方向とし、円周方向を周方向とする。排滓部用定形耐火物2が排滓部11に設置されると、外壁部2bは、炉頂部10における取鍋1の外周を形成する外殻である鉄皮12よりも径方向の内側へ凹み、一部が内壁部2cの側へ凹む凹部3を備える。取鍋1の排滓部11において、排滓部用定形耐火物2が設置される設置部19は、調整レンガ17によって高さ方向が調整される。排滓部用定形耐火物2は、排滓部11に設置されると、天壁部2dの高さが取鍋1の上端部10aの高さとなる。取鍋1が、炉頂部10において支持具5を備えるとき、外壁部2bの一部は、支持具5の一部と接触し、かつ支持具5の一部が凹部3に挿入される。
【0026】
次に、排滓部用定形耐火物2の材質を説明する。排滓部用定形耐火物2は、マグネシアカーボン質レンガで形成されることが望ましい。マグネシアカーボン質レンガは、主骨材として2852°Cと高い融点をもつマグネシアと、溶融金属、溶融スラグに対して濡れ難く、高い熱伝導性と低熱膨張性を有する鱗状黒鉛を使用する。これにより、高い耐食性、耐スポーリング性、及びスラグ浸潤抑制機能を有する。組成は、例として酸化マグネシウムが65%から95%まで、炭素が5%から30%までで、酸化マグネシウムと炭素の合計が100%を超えない範囲で構成されている。排滓部用定形耐火物2は、マグネシアカーボン質レンガで形成されると、溶融スラグ或いは溶融金属が付着して凝固したとしても剥離しやすい。
【0027】
<取鍋1に設置する場合の排滓部用定形耐火物2の説明>
次に、図1を参照して、取鍋1に設置する場合の排滓部用定形耐火物2を説明する。排滓部用定形耐火物2は、外壁部2bが内壁部2cの側へ凹む凹部3を備える。取鍋1が、炉頂部10において支持具5を備えるとき、底部2aを排滓部11に設置すると、外壁部2bの一部は、支持具5の一部と接触し、かつ支持具5の一部が凹部3に挿入される。
【0028】
取鍋1の構成は後述するが、図1に示すように、支持具5は第一接触部7と第二接触部8、及び凸部6を備える。外壁部2bは、天壁部2dに隣接する位置において第一接触部7と接触し、凹部3の下側の位置で第二接触部8と接触する。凹部3には、凸部6が進入する。ここで、上述した排滓部11に形成された部材は、支持具5の第一接触部7及び第二接触部8が相当する。
【0029】
次に、凹部3と凸部6との関係を説明する。図1に示すように、凹部3は、支持具5の一部である凸部6が挿入された状態で、支持具5の一部の上側、下側、及び径方向に隙間を有する。
【0030】
また、排滓部用定形耐火物2は、図4に示すように複数個を周方向に沿って並べて排滓部11に設置する。凹部3は、周方向に連続して繋がり、一連の溝となる。支持具5の凸部6が周方向に連続して形成されているが、周方向において凹部3との間で干渉することはない。
【0031】
図1に示すように、排滓部用定形耐火物2の側壁部2eには鉄板4が取り付けられている。図4に示すように、複数の排滓部用定形耐火物2が互いに鉄板4を挟んで並べられる。取鍋1内に溶湯金属が存在すると、溶湯金属の熱が鉄板4に伝わることによって、隣り合う排滓部用定形耐火物2同士が結合する。なお、隣り合う排滓部用定形耐火物2同士の間は、モルタルを介してもよい。
【0032】
<<排滓部用定形耐火物2の効果>>
以上説明した排滓部用定形耐火物2によれば、以下の効果を奏する。排滓部用定形耐火物2は、排滓部11に設置されると、外壁部2bが炉頂部10における取鍋1の外周を形成する外殻よりも径方向の内側へ凹むので、外殻より飛び出す部分がない。仮に、炉頂部10における外殻が外部の障害に接触したとしても、排滓部用定形耐火物2は外殻よりも内側へ凹むので、不可抗力による損傷を防止できる。また、排滓部用定形耐火物2が排滓部11に設置されると、上下方向において、天壁部2dの高さは取鍋1の上端部10aの高さとなる。よって、取鍋1内の溶融スラグ等は、排滓部用定形耐火物2の天壁部2dに沿わせて排出することができる。
【0033】
また、図1に示すように、排滓部用定形耐火物2は、外壁部2bが内壁部2cの側へ凹む凹部3を備える。取鍋1が炉頂部10において支持具5を備えるとき、排滓部用定形耐火物2は、外壁部2bの一部が支持具5と直接接触し、受熱による外周方向の応力を同軸の反力として受け返すことで傾きの発生が抑制される。また、凹部3へ支持具5の一部が挿入されることで上下動の動きが抑制され、浮き上がりによる脱落を低減できる。よって、排滓部用定形耐火物2は、支持具5によって外周方向への倒れを防止し、さらに上下方向への移動を規制することで、変形、破断、或いは脱落を低減することができる。
【0034】
また、排滓部用定形耐火物2は、マグネシアカーボン質によって形成されると、以下の効果を奏する。排滓部用定形耐火物2は、取鍋1内の溶融スラグ或いは溶融金属が飛び散って付着したとしても、濡れにくく、溶融スラグ或いは金属が凝固しても剥離しやすい。よって、排滓部用定形耐火物2は、溶融スラグ或いは金属を除去する工程を低減できるので、損傷を抑えることができる。
【0035】
また、排滓部用定形耐火物2は、マグネシアカーボン質によって形成し、さらに上述した排滓部11に形成された部材と合わせることにより以下の効果がある。マグネシアカーボン質は、伝熱性が高いので取鍋1内の溶湯金属によって発生する熱を他へ伝熱しやすい性質がある。排滓部用定形耐火物2は、溶湯金属からに熱を受けやすいので、仮に取鍋1の炉頂部10に形成される部材との接触部分が多いと取鍋1へ伝熱してしまい、炉頂部10が熱膨張によって変形してしまう恐れがある。これに対して、排滓部用定形耐火物2は、外壁部2bの一部が、排滓部11に形成された部材である支持具5或いは上端板14と接触するので、炉頂部10が熱膨張によって変形することを低減できる。
【0036】
また、図1に示すように、凹部3は支持具5の一部が挿入された状態で、上側、下側、及び径方向に隙間を有する。排滓部用定形耐火物2は、支持具5との熱膨張率が異なっていても一定範囲の寸法変化に対しては互いに離間した状態であり、さらに傾き等の変形が生じると凹部3が支持具5の一部と接触してさらなる変形が抑制される。よって、排滓部用定形耐火物2は、支持具5との熱膨張率が異なっていても、過大な応力が発生することを抑制できるので、変形、破断、或いは脱落を低減することができる。
【0037】
<<取鍋1の構成>>
次に、本発明の第二の態様に係る取鍋1の構成を説明する。図1の例に示すように、取鍋1は、炉頂部10における排滓部11と、排滓部11に設置される排滓部用定形耐火物2と支持具5を備える。排滓部用定形耐火物2は、すでに説明したように、排滓部11に設置される底部2aと、外周側OUTの外壁部2bと、内周側INの内壁部2cと、底部2aと対向する天壁部2dと、外壁部2bの一部が内壁部2cの側へ凹む凹部3を備える。天壁部2dを上側とし、底部2aを下側とする上下方向とする。
【0038】
図1図2に示すように、排滓部用定形耐火物2は、外壁部2bが、外周を形成する外殻である鉄皮12よりも径方向の内側へ凹み、一部が排滓部11に形成される部材と直接接触する。上下方向において、天壁部2dの高さが、炉頂部10における上端部10aの高さである。
【0039】
図2に示すように、取鍋1は上部が開口した円筒状の形状である。取鍋1の底と側壁の外周は、鉄皮12で覆われている。側壁は、内側がウエアレンガ16によって形成され、鉄皮12とウエアレンガ16との間は、パーマレンガ20によって形成される。図3に示すように、排滓部11は、炉頂部10において周方向における所定の範囲に形成される。
【0040】
図1図2に示すように、排滓部11は、排滓部用定形耐火物2が設置される設置部19において、調整レンガ17によって高さ方向が調整され、排滓部用定形耐火物2の高さが取鍋1の上端部10aの高さに一致する。調整レンガ17と排滓部用定形耐火物2の底部2aとの間は、直接接しているか、或いはモルタルを介して接している。尚、調整レンガ17を使用せず、排滓部用定形耐火物2が直接ウエアレンガ16に載置されてもよい。また、排滓部用定形耐火物2の底部2aには可縮性が高い断熱材は使用しない。熱による影響を少なくするためである。
【0041】
次に、図1から図4までを参照して、取鍋1の支持具5と排滓部用定形耐火物2との関係を説明する。取鍋1は、排滓部11に形成される支持具5を備える。排滓部用定形耐火物2は、外壁部2bが内壁部2cの側へ凹む凹部3を備える。支持具5は、内周側INに向かって突出する凸部6と、凸部6の上側にあって、排滓部用定形耐火物2の外壁部2bと接触する第一接触部7と、凸部6の下側にあって、排滓部用定形耐火物2の外壁部2bと接触する第二接触部8を備える。第一接触部7は、排滓部用定形耐火物2の外壁部2bと、天壁部2dに隣接する位置で接触する。第二接触部8は、排滓部用定形耐火物2の外壁部2bと、凹部3の下側で接触する。凸部6は、凹部3に挿入された状態である。
【0042】
図2及び図3に示すように、炉頂部10は、排滓部11を除いて周方向に上端板14が形成され、上端板14とパーマレンガ20及びウエアレンガ16との間は、スタンプ材13が成形されている。上端板14は、鉄皮12に溶接され、外殻を形成する鉄皮12と共に取鍋1を覆っている。
【0043】
図1に示すように、支持具5は、鉄鋼材料等の金属で形成され、内部が空洞の構成である。第一接触部7は、固定部15の上端15bから所定角度θ斜め上側に延びる腕部9の先端に形成され、排滓部用定形耐火物2の外壁部2bの天壁部2d付近に接する高さに設定される。所定角度θは45°から75°の範囲が好ましく、60°が最適な角度である。所定角度θが45°未満の場合、腕部9の長さが長くなり、排滓時に損傷する恐れがある。所定角度θが75°よりも大きいと、排滓部用定形耐火物2が変形したときの抗力を得にくくなる。
【0044】
凸部6は、固定部15の内壁15aから内周側INに向かって突出して形成される。凸部6は固定部15の上端15bの延長上にある。第二接触部8は、固定部15の内壁15aのうち凸部6の下側に位置する。支持具5は、固定部15が鉄皮12に溶接固定される。
【0045】
また、図1に示すように、取鍋1の凸部6は、凹部3に進入した状態で、上側、下側、及び径方向に隙間を有する。
【0046】
また、図1に示すように、支持具5における第一接触部7、凸部6、及び第二接触部8と、排滓部用定形耐火物2における外壁部2b及び凹部3とによって囲われる領域21は、充填材18によって充填されている。充填材18は、例として断熱材或いは不定形耐火物を使用する。
【0047】
また、図3及び図4に示すように、排滓部11は、炉頂部10において周方向における所定の範囲に形成される。支持具5は、凸部6と第一接触部7と第二接触部8が、周方向に沿って連続して形成される。複数個並べて設置される排滓部用定形耐火物2に対して、凸部6は凹部3に挿入され、第一接触部7及び第二接触部8が外壁部2bと接触する。
【0048】
また、取鍋1に設置される排滓部用定形耐火物2は、マグネシアカーボン質レンガで形成されることが望ましい。詳細は、すでに説明したとおりである。
【0049】
<<取鍋1の効果>>
以上説明した取鍋1の構成によれば、以下の効果を奏する。図1を例に示すように、取鍋1は、排滓部用定形耐火物2の外壁部2bが炉頂部10における取鍋1の外周を形成する外殻である鉄皮12よりも径方向の内側へ凹む。排滓部用定形耐火物2は、外殻より外周側へ飛び出す部分がない。仮に、炉頂部10における外殻が外部の障害に接触したとしても、排滓部用定形耐火物2は外殻よりも内側へ凹むので不可抗力による損傷を防止できる。
【0050】
また、排滓部用定形耐火物2は、外壁部2bの一部が排滓部11に形成された部材と直接接触する。よって、排滓部用定形耐火物2は、受熱による外周方向の応力を同軸の反力として受け返すことで傾きの発生が抑制される。また、凸部6は凹部3へ挿入された状態なので、排滓部用定形耐火物2は上下動の動きが抑制され、浮き上がりによる脱落を抑制できる。
【0051】
さらに、上下方向において、天壁部2dの高さは取鍋1の上端部10aの高さとなる。よって、取鍋1内の溶湯金属等は、排滓部用定形耐火物2の天壁部2dに沿わせて排出することができる。
【0052】
また、図1に示すように、取鍋1は、支持具5が第一接触部7と第二接触部8にて排滓部用定形耐火物2の外壁部2bに接触し、凸部6が排滓部用定形耐火物2の凹部3に挿入された状態である。よって、支持具5は排滓部用定形耐火物2が外周方向へ倒れることと、上下方向に移動することを低減し、変形、破断、或いは脱落を抑制することができる。
【0053】
図1に示すように、支持具5の腕部9は、固定部15の上端15bから排滓部用定形耐火物2に向かって所定角度θを有して斜めに延び、第一接触部7にて外壁部2bと接触する。よって、溶融金属の熱等によって排滓部用定形耐火物2が変形しようとしたとき、第一接触部7と第二接触部8が外壁部2bに接触して固定することで、受熱による外周方向の熱膨張を上下で受けることができ、傾きの発生を抑制することができる。
【0054】
また、支持具5は、排滓部用定形耐火物2と接触するのは、第一接触部7と第二接触部8のみである。溶湯金属の熱によって排滓部用定形耐火物2が高温になったとしても、支持具5には伝熱されにくい。よって、排滓部用定形耐火物2から支持具5及び支持具5が溶接される鉄皮12へ伝熱されることを低減できるので、支持具5及び鉄皮12が熱によって変形することを抑制できる。
【0055】
また、取鍋1は、支持具5の凸部6が排滓部用定形耐火物2の凹部3に挿入された状態で上側、下側、及び径方向に隙間を有する。支持具5と排滓部用定形耐火物2との熱膨張率が異なっていても、凸部6と凹部3とは一定範囲の寸法変化に対しては互いに離間した状態である。さらに排滓部用定形耐火物2の傾き等によって変形が生じると、凸部6が凹部3と接触してさらなる変形が抑制される。よって、支持具5及び排滓部用定形耐火物2が溶融金属の熱によって膨張伸縮したとしても、互いに過大な応力が発生することを低減できる。取鍋1は、排滓部用定形耐火物2が、変形、破断、或いは脱落を低減することができる。
【0056】
また、取鍋1は、支持具5が排滓部用定形耐火物2に接触するときに形成される囲われる領域21へ充填材18を充填することにより、支持具5と排滓部用定形耐火物2との間の拘束力が増す。よって、排滓部用定形耐火物2が変形、破断、或いは脱落を低減することができる。
【0057】
また、取鍋1は、周方向の所定の範囲に形成される排滓部11において、支持具5は凸部6と第一接触部7と第二接触部8とが周方向に沿って連続的に形成されるので、強度を高めることができる。排滓部用定形耐火物2は複数個並べて設置されるので、支持具5と排滓部用定形耐火物2とは互いに強固な状態で、凸部6は凹部3に進入し、第一接触部7及び第二接触部8が外壁部2bと接触する。よって、支持具5は排滓部用定形耐火物2を強固に支持することができるので、取鍋1の排滓部用定形耐火物2は、変形、破断、或いは脱落を低減することができる。
【0058】
また、排滓部用定形耐火物2はマグネシアカーボン質レンガで形成されることによる効果は、すでに説明したとおりである。
【符号の説明】
【0059】
1 取鍋
2 排滓部用定形耐火物
2a 底部
2b 外壁部
2c 内壁部
2d 天壁部
2e 側壁部
3 凹部
4 鉄板
5 支持具
6 凸部
7 第一接触部
8 第二接触部
9 腕部
10 炉頂部
10a 上端部
11 排滓部
12 鉄皮
13 スタンプ材
14 上端板
15 固定部
15a 内壁
15b 上端
16 :ウエアレンガ
17 調整レンガ
18 充填材
19 設置部
20 パーマレンガ
21 領域
112 鉄皮
118 パッチング材
120 押さえレンガ
IN 内周側
OUT 外周側
θ 所定角度
図1
図2
図3
図4
図5