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特開2023-137538アルミニウム合金箔、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137538
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】アルミニウム合金箔、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20230922BHJP
   C22F 1/04 20060101ALI20230922BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
C22C21/00 A
C22F1/04 D
C22F1/00 622
C22F1/00 627
C22F1/00 630A
C22F1/00 661A
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043790
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(72)【発明者】
【氏名】村松 賢治
(72)【発明者】
【氏名】秋山 聡太郎
(57)【要約】
【課題】回路配線の細線エッチングに優れ、さらに断線しにくい高強度なプリント配線基板用アルミニウム合金箔を提供することを目的とする。
【解決手段】アルミニウム合金箔であって、Ca含有量が1.0質量%以上4.5質量%未満、Fe含有量が0.02質量%以上1.3質量%未満で残部がAlとその他の微量元素を含むアルミニウム合金箔を用い、アルミニウム合金箔表面を観察面とし、EBSD(電子線後方散乱回折)法により結晶粒界の方位差15°以上として計測された平均結晶粒径が12μm以下としてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金箔であって、
Ca(カルシウム)含有量が1.0質量%以上4.5質量%未満、Fe(鉄)含有量が0.02質量%以上1.3質量%未満で残部がAl(アルミニウム)とその他の微量元素を含むアルミニウム合金箔。
【請求項2】
アルミニウム合金箔表面を観察面とし、EBSD(電子線後方散乱回折)法により結晶粒界の方位差15°以上として計測された平均結晶粒径が12μm以下である請求項1に記載のアルミニウム合金箔。
【請求項3】
アルミニウム合金箔の耐力が70N/mm以上である請求項1に記載のアルミニウム合金箔。
【請求項4】
アルミニウム合金箔の引張強度が110N/mm以上である、請求項3に記載のアルミニウム合金箔。
【請求項5】
アルミニウム合金箔の厚さが6μm以上80μm以下である、請求項1~4のいずれかに一項記載のアルミニウム合金箔。
【請求項6】
Ca(カルシウム)含有量が1.0質量%以上4.5質量%未満、Fe(鉄)含有量が0.02質量%以上1.3質量%未満で残部がAl(アルミニウム)とその他の微量元素を含むアルミニウム合金の溶湯を鋳造することにより、アルミニウム合金の鋳塊を得る工程と、
前記鋳塊を冷間圧延することにより、アルミニウム合金箔の冷間圧延箔を得る工程と、を備える、アルミニウム合金箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム合金箔、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器や電子機器には、プリント配線基板が用いられている。一般的にプリント配線基板の配線材料は、アルミニウム箔又は銅箔が使用される。例えば、その配線部にICタグが取り付けられてアンテナ回路として機能する。配線パターンは年々複雑化してきており、配線をより細くする必要が出てきている。
しかし、配線のエッチングについて、アルミニウム箔は銅箔と比べて精度が大きく劣る。アルミニウム箔のエッチング面は凸凹になりやすく、配線を細くするとエッチング時に断線しやすくなる。
【0003】
アルミニウム箔は純アルミニウムの1000系材料、アルミニウム-鉄系の8000系材料が多く使われており、配線材料としてもそれらの材質が用いられることが多い。またプリント配線基板用アルミニウム箔は冷間圧延終了後に焼鈍で圧延油を取り除くことで、基板との接着強度が得られやすくなる。この圧延油の除去には少なくとも200℃以上の焼鈍が必要であり、この焼鈍でアルミニウム箔の機械特性は大きく変化する。
【0004】
また、特許文献1に、Ni(ニッケル)と、Zn(亜鉛)及びGa(ガリウム)の一種又は二種を含有させ、金属間化合物と母相の電位差を大きくすることで、高い化学溶解性を持ち、鮮鋭なエッチングが可能なアルミニウム箔が開示されている。
さらに、特許文献2に、Fe(鉄):1.0~1.8重量%、Mn(マンガン):0.4~0.6重量%含有したアルミニウム箔で、適度な強度を有するとともに、エッチング時に鮮鋭性に優れた線縁面が得られる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-149289号公報
【特許文献2】特開2001-152270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、要求されるプリント配線基板の配線パターンに対応するためには、従来のアルミニウム箔のエッチング精度では難しくなりつつある。また、焼鈍後のアルミニウム箔は強度が低く、配線をさらに細くした場合、後工程もしくは使用中での外的な力で断線するリスクも生まれる。
また、特許文献1、2ではエッチングの鮮鋭性向上が示されているが、実際にエッチングで回路の断線なく細線化が可能かについての記載はない。さらに、特許文献2では、Mn添加、微細析出物により高い強度が得られるとあるが、細線化を目指す上では更なる強度向上が求められる。
そこで、本発明は、回路配線の細線エッチングに優れ、さらに断線しにくい高強度なプリント配線基板用アルミニウム合金箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、上記した課題を解決するため、発明にかかるアルミニウム合金箔を、以下[1]~[6]の特徴を有するものとした。
[1]アルミニウム合金箔であって、Ca(カルシウム)含有量が1.0質量%以上4.5質量%未満、Fe(鉄)含有量が0.02質量%以上1.3質量%未満で残部がAl(アルミニウム)とその他の微量元素を含むアルミニウム合金箔。
[2]アルミニウム合金箔表面を観察面とし、EBSD(電子線後方散乱回折)法により結晶粒界の方位差15°以上として計測された平均結晶粒径が12μm以下である[1]に記載のアルミニウム合金箔。
【0008】
[3]アルミニウム合金箔の耐力が70N/mm以上である[1]に記載のアルミニウム合金箔。
[4]アルミニウム合金箔の引張強度が110N/mm以上である、[3]に記載のアルミニウム合金箔。
[5]アルミニウム合金箔の厚さが6μm以上80μm以下である、[1]~[4]のいずれかに一項記載のアルミニウム合金箔。
[6]Ca(カルシウム)含有量が1.0質量%以上4.5質量%未満、Fe(鉄)含有量が0.02質量%以上1.3質量%未満で残部がAl(アルミニウム)とその他の微量元素を含むアルミニウム合金の溶湯を鋳造することにより、アルミニウム合金の鋳塊を得る工程と、前記鋳塊を冷間圧延することにより、アルミニウム合金箔の冷間圧延箔を得る工程と、を備える、アルミニウム合金箔の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
この発明で得られるアルミニウム合金箔は、回路配線の細線エッチングに優れ、さらに断線しにくく、高強度なプリント配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の配線エッチング試験で用いられた配線形状を示す図
図2図1の配線形状の例のSEM写真
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明に係るアルミニウム合金箔は、所定量のCa(カルシウム)、Fe(鉄)を含み、残部がAl(アルミニウム)とその他の微量元素を含む箔である。
【0012】
[Ca(カルシウム)]
本発明にかかるアルミニウム合金箔に含まれるCaは、冷間圧延後の結晶粒をきわめて微細にする効果を持ち、また200℃以上の熱処理を施しても微細結晶粒を保つことができる。Al-Ca金属間化合物が分散することで強度向上を図ることもでき、高強度かつ高延性なアルミニウム合金箔が得られる。
このCaの含有量は、本発明のアルミニウム合金箔全量に対し、1.0質量%以上がよく、4.5質量%未満がよい。Caの含有量が1.0質量%より少なければ、結晶粒微細化の効果が小さく、一方4.5質量%以上では、柔軟性が失われてしまい、箔圧延が困難になる。同様の理由でCaの含有量は1.5質量%以上3.0質量%未満が好ましい。
【0013】
[Fe(鉄)]
本発明にかかるアルミニウム合金箔に含まれるFeは、強度、伸びを改善する元素であり、アルミニウム箔には一般に添加されている。Feの含有量は、本発明のアルミニウム合金箔全量に対し、0.02質量%以上がよく、1.3質量%未満がよい。Feの含有量が0.02質量%より少なければ、強度が得られにくく、また生産するにあたり高純度地金を使う必要が出てくるためコスト的にも負荷となる。含有量が1.3質量%以上では、晶出物が粗大になりやすく、伸びの悪化や圧延中でのピンホール発生の恐れが出てくる。同様の理由でFeの含有量は0.15質量%以上0.8質量%未満が好ましい。
【0014】
[その他微量元素]
本発明にかかるアルミニウム合金箔は、Ca及びFe以外成分として、不可避不純物を含むその他の微量元素を含有する。この微量元素としては、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、V(バナジウム)、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)、B(ホウ素)、Ga(ガリウム)、Bi(ビスマス)等の元素があげられる。
これら各元素の含有量は、アルミニウム合金箔中に、それぞれ0.1質量%以下とすることが好ましい。
【0015】
[組成の測定]
本発明のアルミニウム合金箔の組成は、誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定するものとする。測定装置としては、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製:iCAP6500DUO、もしくは(株)島津製作所製:ICPS-8100などが挙げられる。
【0016】
[箔厚]
本発明にかかるアルミニウム合金箔の厚さは、6μm以上80μm以下であることが望ましい。6μm未満であるとプリント配線基板の製造工程における作業性が悪化し、80μmより厚くなると目的である細線エッチングが困難となる。同様の理由で10μm以上40μm以下が好ましい。
【0017】
[平均結晶粒径]
本発明におけるアルミニウム合金箔平均結晶粒径とは、アルミニウム合金箔表面を観察面として、EBSD(電子線後方散乱回折)法により、結晶粒界の方位差15°以上として計測された結晶粒の円相当径の平均値である。いわゆる大傾角粒界で区切られた結晶粒の平均サイズを表す。この平均結晶粒径が小さいほど、配線エッチングの際の溶解ピットが緻密になり細線化が可能となる。
本発明のアルミニウム合金箔平均結晶粒径を12μm以下にすると、従来の純アルミニウムやアルミニウム-鉄系材料と比べて細かな配線を得ることができ、好ましい。同様の理由で8μm以下がより好ましい。
【0018】
[引張強度、耐力]
本発明にかかるアルミニウム合金箔は、圧延方向への引張強度が110N/mm以上、耐力(0.2%耐力)が70N/mm以上であることが望ましい。上記範囲であると、プリント配線基板の配線を細くした場合にも断線するリスクを軽減することができる。同様の理由で引張強度が130N/mm以上、耐力が85N/mm以上であることが望ましい。
【0019】
[製造方法]
次に、本発明にかかるアルミニウム合金箔の製造方法について説明する。
本発明にかかるアルミニウム合金箔の製造方法は、まず、前記組成範囲になるようにアルミニウム地金、各種添加金属元素、又はそれらを含んだアルミニウム母合金を調製し、加熱しアルミニウム合金溶湯にする。次いで、その溶湯を鋳造し、鋳塊を作製する。
次に、得られた鋳塊を冷間圧延により所定厚みの箔にする。この冷間圧延後、調質及び圧延油除去のため、必要に応じて、最終焼鈍(FA)を行う。これらの方法により、本発明にかかるアルミニウム合金箔を製造することができる。
【0020】
[鋳造]
前記の通り、前記組成範囲になるようにアルミニウム地金、各種添加金属元素、又はそれらを含んだアルミニウム母合金を調製し、680~1000℃で加熱することにより、アルミニウム合金溶湯を得ることができる。
得られたアルミニウム合金溶湯を鋳造し、鋳塊を作製する。この鋳造の方法は、鋳塊又は鋳造板を作製できるものであれば特に鋳造方法は限定されることはなく、公知のものを用いることができる。この鋳造方法の例としては、DC鋳造(Direct Chill)やCC鋳造(Continuous Casting)を用いることができる。ただ、本発明の主要元素であるCa、Feをより多く含有させるためには鋳造冷却速度の高い鋳造方法を選択することが好ましく、この観点から、特に高い鋳造冷却速度が出せるCC鋳造を使用するのが好ましく、このCC鋳造の中でも双ロール連続鋳造がより好ましい。
【0021】
[冷間圧延]
得られた鋳塊又は鋳造板は、冷間圧延により所定厚みの冷間圧延箔にする。また、この冷間圧延の前に均質化熱処理及び熱間圧延を必要に応じて行ってもよく、冷間圧延工程の途中で中間焼鈍(IA)を必要に応じて行ってもよい。
【0022】
[均質化熱処理、熱間圧延]
本発明にかかるアルミニウム合金箔の製造方法において、均質化熱処理工程及び熱間圧延は、あっても無くてもよいが、鋳造組織に偏析が考えられる場合、アルミニウム合金箔の特性に影響が出ない範囲、具体的には450℃以上600℃以下で行っても良い。なお、均質化熱処理や熱間圧延の温度が600℃より高いと金属間化合物が粗大化し、アルミニウム合金箔の強度、伸び、結晶粒組織に悪影響を及ぼす。均質化熱処理工程の熱処理時間は生産効率上20時間以下が望ましい。
【0023】
[中間焼鈍(IA)]
本発明にかかるアルミニウム合金箔の製造方法において、中間焼鈍(IA)工程はあっても無くてもよいが、圧延性の改善の目的で、アルミニウム合金箔の特性に影響が出ない範囲、すなわち、450℃以下で行っても良い。なお、中間焼鈍温度が450℃より高いと金属間化合物が粗大化し、アルミニウム合金箔の強度、伸び、結晶粒組織に悪影響を及ぼす。熱処理時間は生産効率上20時間以下が望ましい。
【0024】
[最終焼鈍(FA)]
本発明にかかるアルミニウム合金箔の製造方法において、最終焼鈍(FA)工程はあっても無くてもよいが、プリント配線基板の製造上でアルミニウム合金箔と基板との接着強度を高めるためには200℃以上400℃以下で熱処理することが好ましい。なお、最終焼鈍温度が200℃より低いとアルミニウム合金箔に付着した圧延油が除去しきれず基板との接着強度が得られにくい。最終焼鈍温度が400℃を超える場合、本発明が目的とする強度、結晶粒組織が得られにくく、さらにコイル状で熱処理した時にはアルミニウム箔同士の過剰な密着が発生する。熱処理時間は生産効率上80時間以下が望ましい。
【0025】
[アルミニウム積層体]
本発明にかかるアルミニウム合金箔は、その少なくとも一方の面に少なくとも一層以上の被着体を積層し、アルミニウム積層体とする事ができる。
上記被着体は可撓性を有するものでも、有さないものでもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂フィルム、又は紙フェノール樹脂板、ガラスエポキシ板等が好適に用いられる。
【0026】
アルミニウム合金箔と被着体との積層方法は特に限定されず、例えば接着剤によるラミネート等が挙げられる。
また、前記積層に前もって、アルミニウム合金箔の表面を粗化したり、洗浄を行ったり、コーティング等を行ってもよい。
【0027】
[プリント配線基板]
前記積層体のアルミニウム箔の表面に所望の配線形状となるようにレジストインキをパターン状に印刷し、次にエッチング液に浸漬してレジストインキが印刷されていない部分を溶解させた後、必要に応じてレジストを剥離することにより、アルミニウム箔を配線パターンに形成しプリント配線基板とすることができる。
印刷方法は公知のものを用いる事ができ、例えばグラビア印刷やスクリーン印刷等である。
【0028】
上記レジストインキとしては、公知のものを用いる事ができ、有機系や無機系レジスト等をエッチング液やアルミニウム表面への塗工性等から適宜採用できる。
上記エッチング液は、公知のものを用いる事ができ、酸性、アルカリ性等適宜採用でき、例えば水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)水溶液や塩酸、塩化第二鉄液、塩化銅液、過酸化水素等、あるいはそれらの混合液が挙げられる。
【実施例0029】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の内容を一層明確にする。まず、この実施例で用いた試験方法を下記に示す。
【0030】
(試験方法)
[引張試験、耐力(0.2%耐力)]
引張方向が圧延方向と平行になるように15mm幅×200mm長さの短冊型試験片を切り出し、引張試験機は(株)東洋精機製作所製のストログラフVES5Dを使い、引張速度10mm/minで、チャック間距離100mmを標点距離として試験し、引張強度、耐力(0.2%耐力)のデータを得た。試験は3回実施し、その平均値を算出した。
【0031】
[平均結晶粒径]
EBSD分析装置((株)TSLソリューションズVelocity)を備えた電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM-7200F)を使用して、アルミニウム合金箔表面を倍率500倍、200μm×200μmの視野でStepSize0.4μmとしてEBSD測定した。その測定結果を解析ソフトウェアOIM Analysis 8((株)TSLソリューションズ)を用いてGrain Tolerance Angle=15°で解析した。Grain Size (diameter)の分布でSummary StatisticsのAverage:Areaで算出される数値を平均結晶粒径とした。またランダムに3視野でEBSD測定し、その平均値を求めた。測定前の前処理としてアルミニウム合金箔表面は電解研磨で鏡面加工した。
【0032】
[配線エッチング試験]
アルミニウム合金箔にドライフィルムレジスト25μmを貼り合わせ、その上からフォトマスクを介してUV光をドライフィルムレジストに露光させる。フォトマスクを介することで所定の箇所にだけドライフィルムレジストを硬化させることができる。その後、未硬化箇所のレジストを除去し、目的の配線形状にレジスト膜を形成した。レジスト膜が形成されていない箇所のアルミニウム合金箔を塩化第二鉄の水溶液でエッチング溶解させ、最後に苛性ソーダでレジスト膜を剥離することで配線エッチングが完了する。
目的の配線形状は図1に示すように、配線(アルミ部)とスペース(溶解部)が繰り返し配置されており、その幅は同じにした。配線の長さは50mmで、本数は10本とした。この配線形状の例のSEM写真を図2に示す。
線幅は50μm、75μm、100μm、125μm、150μmの5水準で試験した。光学顕微鏡で観察し、断線せずに配線エッチングが可能であった限界細さを表2に示した。
【0033】
(実施例1~15、比較例1~5)
表1に示す組成A~Kのアルミニウム合金を溶解し、その溶湯を固定鋳型に注入して厚さ6mm、幅60mm、長さ65mmの鋳造小板を作製した。鋳造小板をフライス盤で面削した後、表2に示す条件でアルミニウム合金箔を作製した。表2にはそれらの引張試験結果、平均結晶粒径、配線エッチング試験結果も示す。
なお、均質化熱処理、中間焼鈍、最終焼鈍を行う場合の条件は、下記の通りである。
・均質化熱処理
厚さ6mmから面削後、空気中雰囲気で、表2に記載の温度まで2時間かけて昇温し、10時間保持した後、炉内で冷却した。
・中間焼鈍(IA)
厚さ1mmまで圧延後、空気中雰囲気で表2に記載の温度まで2時間かけて昇温し、5時間保持した後、炉内で冷却した。
・最終焼鈍(FA)
冷間圧延完了後、空気中雰囲気で表2に記載の温度まで2時間かけて昇温し、5時間保持した後、炉内で冷却した。
なお、比較例4、5において、従来、使用されている1N30組成のアルミニウム箔(東洋アルミニウム(株)製)、8021組成のアルミニウム箔(東洋アルミニウム(株)製)を用いて同様の試験を実施した。比較例4、5の試験ではDC鋳造によりスラブ作製した後、均質化熱処理、熱間圧延を経て厚さ6mmの板とした。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
図1
図2