(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013760
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】リレー
(51)【国際特許分類】
H01H 50/02 20060101AFI20230119BHJP
H01H 50/36 20060101ALI20230119BHJP
H01H 50/38 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
H01H50/02 T
H01H50/36 M
H01H50/38 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118161
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】村越 拓治
(57)【要約】
【課題】衝撃に強く、組立ての容易なリレーを提供する。
【解決手段】ベース48は、接点の接離方向に延びる脚部80を有し、脚部80は、ベース48がケース22内に組み込まれたときに、ヨーク72に当接するように構成される。脚部80は、アマチュア60の上方に間隔を開けて配置され、この間隔は、アマチュア60の通常の動作ではアマチュア60の上面が脚部80に接触しないが、リレー10が搭載された車両が強い衝撃を受けた場合等に、アマチュア60がその可動範囲を超えて跳ね上がったときにはアマチュア60の上面が脚部80の下面に当接するような値に設定される。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石と、
前記電磁石の作動に伴って動作する可動接点を有する可動接点部と、
前記可動接点に対向して配置された固定接点を有する固定接点部と、
前記電磁石及び前記可動接点部を収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記固定接点と前記可動接点との接離方向に開口した構造を有し、
前記固定接点部は前記ケースの蓋部を構成する、リレー。
【請求項2】
電磁石と、
前記電磁石の作動に伴って動作するアマチュア、前記アマチュアに取り付けられる可動ばね、及び前記可動ばねに取り付けられる可動接点を有する可動接点部と、
前記可動接点に対向して配置された固定接点を有する固定接点部と、
前記電磁石及び前記可動接点部を収容するケースと、を備え、
前記ケースの内側上面に、前記アマチュアから間隔を開けて配置されたリブが形成される、リレー。
【請求項3】
コイル巻線及びコイル端子を有する電磁石と、
前記電磁石の作動に伴って動作する可動接点を有する可動接点部と、
前記可動接点に対向して配置された固定接点を有する固定接点部と、
前記電磁石及び前記可動接点部を収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記コイル端子が位置しかつ、前記コイル端子に接続された電線が配置される開口部と、前記電線が引き出される開口端を有するポケットとを備える、リレー。
【請求項4】
ヨークを有する電磁石と、
前記電磁石の作動に伴って動作するアマチュア、前記アマチュアに取り付けられる可動ばね、及び前記可動ばねに取り付けられる可動接点を有する可動接点部と、
前記可動接点に対向して配置された固定接点が取付けられたベースを有する固定接点部と、を備え、
前記ベースは、前記固定接点と前記可動接点との接離方向に延び、前記ヨークに当接し、前記アマチュアの上方との間に間隔を開けて配置される脚部を有する、リレー。
【請求項5】
ヨークを有する電磁石と、
前記電磁石の作動に伴って動作するアマチュア、前記アマチュアに取り付けられる可動ばね、前記可動ばねに取り付けられる可動接点、及び前記可動ばねと前記ヨークとを接続する復帰ばねを有する可動接点部と、
前記可動接点に対向して配置された固定接点を有する固定接点部と、を備え、
前記ヨークは、前記復帰ばねの一端を保持するばねポストを有し、
前記ばねポストは、前記固定接点と前記可動接点との接離方向について、前記ヨークよりも前記可動接点側に延在する先端部を有する、リレー。
【請求項6】
前記可動接点が中立位置にあるときにおいて、前記ばねポストの前記先端部と前記可動ばねとの前記接離方向の距離が、前記固定接点と前記可動接点との距離よりも小さくなるように設定される、請求項5に記載のリレー。
【請求項7】
電磁石と、
前記電磁石の作動に伴って動作する可動接点を有する可動接点部と、
前記可動接点に対向して配置された固定接点が取付けられたベースを有する固定接点部と、を備え、
前記ベースに、永久磁石、ヨーク及び消弧板が取付けられる、リレー。
【請求項8】
前記ベースに磁気シールドが取付けられる、請求項7に記載のリレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーに関する。
【背景技術】
【0002】
リレー(電磁継電器)は、コイルに電流を流して接点を開閉するように構成されており、鉄心に接続された継鉄(ヨーク)と、継鉄に対して可動に構成された接極子(アマチュア)とを有するヒンジ形のリレーがある。
【0003】
近年、リレーを、電気自動車に搭載する等の衝撃や振動を受け易い用途に使用する場合が増えている。リレーに大きな衝撃や振動が加わったときのヨークに対するアマチュアの変位を防止するために、ヨーク又はアマチュアの一方に軸部を、他方に軸部を回転可能に受容する軸受を設け、アマチュアをヨークに対して回動可能にする技術が知られている。
【0004】
絶縁基板の側面に開放した接触子保持溝を形成し、保持溝に固定接触子および可動接触子を差し込んで係止保持した上で、外部端子の引出し部周辺を接着剤で封止するリレーの組立構造が知られている。ボデイに側面を開口せる部品取付け用の溝を設け、端子部品等の部品を開口から挿入してボデイに取着し、開口を覆う蓋板をボデイに装着したリレー端子台が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-010719号公報
【特許文献2】特開2021-039829号公報
【特許文献3】特開2006-004665号公報
【特許文献4】特開平07-230839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くのリレーでは、接点の開閉のための適切な接触力や開離力を生じさせるために、板ばねやコイルばねが使用されている。このようなリレーを衝撃や振動を受けやすい用途に使用した場合、衝撃によってばねが塑性変形し、適切な接触力や開離力が得られなくなる虞がある。一方で、衝撃に耐えるための補強部材等を別途設けると、リレーの組立て作業が煩雑となり、コスト増につながる場合がある。
【0007】
そこで本発明は、衝撃や振動に強く、組立ての容易なリレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、ヨークを有する電磁石と、前記電磁石の作動に伴って動作するアマチュア、前記アマチュアに取り付けられる可動ばね、及び前記可動ばねに取り付けられる可動接点を有する可動接点部と、前記可動接点に対向して配置された固定接点が取付けられたベースを有する固定接点部と、を備え、前記ベースは、前記固定接点と前記可動接点との接離方向に延び、前記ヨークに当接し、前記アマチュアの上方との間に間隔を開けて配置される脚部を有する、リレーである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、固定端子が取付けられたベースの脚部を、固定接点と可動接点との接離方向に延びてヨークに当接し、かつアマチュアの上方に所定の間隔を開けて配置されるように構成することにより、固定接点部と電磁石との位置決め精度向上に加え、衝撃等による各部の破損や塑性変形等を防止する効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】ケースのリブ、ヨーク及びアマチュアの位置関係を示す断面図である。
【
図7】
図6のケースの開口部を樹脂で塞いだ状態を示す図である。
【
図8】固定接点部及び可動接点部の分解斜視図である。
【
図9】電磁石の分解斜視図をケースとともに示す図である。
【
図10】固定接点部及び可動接点部の上面図である。
【
図11】固定接点部及び可動接点部の側面図である。
【
図14】可動接点部及び電磁石の側断面図であり、接点が開の状態を示す。
【
図17】可動接点部及び電磁石の側断面図であり、接点が閉の状態を示す。
【
図19】
図18のベースに永久磁石及びアーク消弧板を取り付けた図である。
【
図20】
図19の構成からベースを除去して表示した図である。
【
図21】アーク消弧板によってアークが引き延ばされる様子を示す図である。
【
図22】
図21の比較例として、アーク消弧板がない場合を示す図である。
【
図23】固定接点部に磁気シールドを設けた場合の分解斜視図である。
【
図24】
図20に類似する図であって、磁気シールドを設けた場合を示す。
【
図25】磁気シールドを設けた場合の磁束を説明する図である。
【
図26】
図25の比較例として、磁気シールドがない場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び
図2はそれぞれ、実施形態に係るリレー(電磁継電器)10の組立図及び分解斜視図である。リレー10は、例えば電気自動車に使用される車載電装用のリレーである。リレー10は、固定接点12(
図8参照)を備える固定接点部14と、可動接点16を備える可動接点部18と、可動接点16を固定接点12に対して接離可能に変位させる電磁石20と、可動接点部18及び電磁石20を収容するケース22とを有するヒンジ形リレーである。リレー10は、ケース22の外側にカシメ等によって取付けられた金属製のカラー24を用いて、図示しないプリント基板等に実装される。
【0012】
図2に示すように、可動接点部18及び電磁石20(総称してリレーの「本体21」ともいう)は、ケース22に対して、固定接点12と可動接点16との接離方向(
図2では略左右方向)に沿って移動させることでケース22内に挿入して組み込まれる。よってケース22は、接離方向にのみ開口した構造とすることができ、例えば上下方向に2分割された部品を組み合わせた構造とする必要はない。固定接点部14は、ベース48と、ベース48に設けられた固定接点12とを含んでいる。固定接点部14をケース22に差し込むことで、固定接点部14の背面はリレー10の蓋を構成する。固定接点部14とケース22との境目に樹脂や接着剤を充填することで、リレー10を封止する。ケース22は例えば樹脂成形から作製可能である。ケース22を上述のように形成することで、部品点数を減らして製造コストを下げることができる。
【0013】
図3及び
図4はそれぞれ、ケース22の内部を示す斜視図及び正面図である。ケース22は、可動接点部18及び電磁石20をケース22内の所定位置に案内して位置決めするためのリブ26、28を有する。各リブは接点の接離方向、且つケース22への本体21の装着方向に延びる。
【0014】
図5は、ケース22に電磁石20を配置したときの、電磁石20の構成要素であるアマチュア60、ヨーク72、及び各リブの位置関係を示す概略断面図である。ケース22の内底面に形成されたリブ26は、ヨーク72の下面に当接して、可動接点部18を支持するとともに、可動接点部18の上下方向の位置決めに寄与する。ケース22の内側面に形成されたリブ28は、本体21の挿入方向に傾斜する傾斜面29を有し、傾斜面29は、本体21がケース22に挿入されるときのヨーク72の幅方向のガイドとして機能する。リブ28は、本体21の挿入後はヨーク72の側面に当接して、ケース22に対する電磁石20の幅方向の正確な位置決めに寄与する。
【0015】
ケース22内の上面に形成されたリブ30は、アマチュア60から上下方向に間隔を開けて配置され、通常の動作ではアマチュア60に接触しない。しかし、リレー10が搭載された車両が強い衝撃を受けた場合等にアマチュア60が可動範囲を超えて大きく跳ね上がっても、アマチュア60の動きがリブ30によって抑制され、接点や後述する復帰ばねに大きな力が作用することが防止される。よってリブ30を設けることで、各部の破損やばねの塑性変形等を防止することができる。
【0016】
図6は、ケース22の背面側、すなわち本体21が挿入される開口とは反対側を示す。
図2及び
図9に示すように、電磁石20は、コイル68に電力を供給するための2つのコイル端子78を有する。コイル端子78はケース22の内部に形成された縦長の開口41(
図3、
図4参照)に差し込まれ、ケース22の背面に形成された開口部32からケース22外に露出する。開口部32は、2つのコイル端子78にそれぞれ接続された電線34、36を引き回すための空間を有し、電線34、36はケース22の外側部に形成されたポケット38に導入された後、上方に開口したポケット38の開口40から引き出され、リレー10が実装される図示しないプリント基板等に電気的に接続される。
【0017】
図7は、電線34、36を開口40から引き出した後に、開口部32を樹脂又は接着剤42で充填して密封した状態を示す。このようにすれば、ケース22の背面は電線34、36又はこれに関連する部材が張り出すことがなく、故に接点の接離方向についてコンパクトなリレーを構築することができる。なおケース22には、熱硬化性の樹脂や接着剤を使用したときにケース22内部で膨張した空気を排出するために、空気穴44を設けることが好ましい。なお空気穴44は、開口部32を密封した後に、樹脂等で密封されることが好ましい。
【0018】
図8は、固定接点部14及び可動接点部18の分解斜視図である。固定接点部14は、各々が固定接点12を備えた少なくとも1つ(図示例では2つ)の固定端子46と、固定端子46が取り付けられる枠状又は箱状のベース48とを有する。固定端子46とベース48との間には樹脂や接着剤が充填され、隙間が密封される。ベース48は例えば樹脂成形により作製される。ベース48の外側面には永久磁石50及び永久磁石ヨーク54が取り付けられ、さらにベース48にはアークを消弧する消弧板52が挿入されるが、これらについては後述する。
【0019】
可動接点部18は、可動接点16がかしめなどにより取り付けられる導電板56と、導電板56が取付けられる可動ばね58と、可動ばね58がリベット62等により取り付けられるアマチュア60とを有する。
【0020】
図9は、電磁石20の分解斜視図をケース22とともに示す。電磁石20は、ボビン70と、ボビン70内に配置された鉄心66と、ボビン70に巻回されたコイル68と、鉄心66の下端が結合される略L字形状のヨーク72と、ヨーク72に取り付けられたばねポスト74とを有する。ボビン70はコイル端子78が挿入される端子口76を有し、電線34、36及びコイル端子78を介してコイル68に電流が流れる。アマチュア60は、ヨーク72に対して揺動可能に支持される。後述するように、可動ばね58とばねポスト74とは、復帰ばね64(
図8参照)を介して互いに弾性変位可能に連結される。
【0021】
図10及び
図11はそれぞれ、固定接点部14及び可動接点部18の上面図及び側面図であり、
図12はベース48の斜視図である。ベース48は、ケース22への本体の装着方向に延びる脚部80を有する。
図10及び
図11のA部に示すように、脚部80の端面は、ベース48がケース22内に組み込まれたときに、ヨーク72に当接するように構成される。よって固定接点部14と電磁石20との間の接点の接離方向の位置関係は一義的に定まり、ケース22内の各部材間の正確な位置決めが可能となる。
【0022】
脚部80は、
図10のB-B′断面を示す
図13からわかるように、アマチュア60の上方においてアマチュア60と間隔を開けて配置される。この間隔は、アマチュア60の通常の動作ではアマチュア60の上面が脚部80の下面に接触しないが、リレー10が搭載された車両が強い衝撃を受けた場合等にアマチュア60がその可動範囲を超えて跳ね上がったときにはアマチュア60の上面が脚部80の下面に当接するような値に設定される。従来のリレーは、アマチュア60の浮き上がり等による大きな変位を抑制する部材を具備しないので、アマチュア60の変位によって復帰ばね64を伸ばす方向に大きな力がかかり、復帰ばね64が塑性変形してしまう虞がある。本実施例では、脚部80によりアマチュア60の通常の可動範囲を超えた動きが抑制され、接点や復帰ばね64にかかる力が低減され、復帰ばね64の塑性変形も防止される。つまり脚部80は、固定接点部14と電磁石20との位置決め精度向上に加え、衝撃等による各部の破損や塑性変形等を防止する機能も具備する。脚部80は、樹脂成形等によってベース48と一体的に成形可能であり、このような場合は部品点数の増加も生じない。
【0023】
図14は、可動接点部18及び電磁石20の側断面図であり、
図15はばねポスト74の、
図16は可動ばね58の構造例を示す斜視図である。
図14に示す復帰ばね64はコイルばねであるが、板ばね等で構成してもよい。復帰ばね64の一端は、ヨーク72に固定されたばねポスト74の幅方向の略中央に形成された先端部84の根元に形成された凹部86に係合して保持される。復帰ばね64の他端は、可動ばね58に形成された突起92の根元に形成された凹部94に係合して保持される。電磁石20がオフのときは、復帰ばね64の付勢力によってアマチュア60が鉄心66から離れるように傾斜し、可動接点16は固定接点12から離隔した状態となる(
図14)。一方、
図17に示すように、電磁石20がオンのときは、復帰ばね64の付勢力に逆らってアマチュア60が磁力によって鉄心66側に変位し、可動接点16が固定接点12に当接した状態となる。
【0024】
リレー10に対して可動接点16の開離方向(
図14の左右方向)に強い衝撃や外力が作用すると、可動接点16及び導電板56がヨーク72に向けて大きく変位し、その結果、可動ばね58が塑性変形する虞がある。本実施例では、ばねポスト74の先端部84をヨーク72よりも接点の接離方向の可動接点側に延在させることで、この不具合を防止することができる。衝撃等により可動接点16がヨーク72側に変位したとしても、可動ばね58又は導電板56が先端部84に突き当たることにより可動ばね58のそれ以上の変位が抑制され、可動ばね58の破損や塑性変形が防止される。なお、先端部84は復帰ばねを取り付けるための復帰ばねポストに設けられているため、可動ばねの変位を抑制するための別部材を設ける必要がなく、部品点数を抑制することが可能となる。
【0025】
復帰ばねの一端をヨーク72に直接係合させるリレーの場合、導電板とヨークとの間に部材が介在しないので、導電板がヨーク側に大きく変位することを防ぐことができない。しかし本実施例に係るばねポスト74は、復帰ばね64を保持する機能に加え、導電板56の左右方向の変位を抑制する先端部84を有するので、接点開離方向の大きな外力等による可動ばね58の塑性変形等を防止する機能を具備する。
【0026】
リレーの小型化が求められる場合、ヨーク72と導電板56との距離は短い方が好ましい。そこで本実施例では、
図9又は
図14に示すようにヨーク72に凹部又は開口96を形成し、開口96内にばねポスト74の一部が配置されるようにしている。ばねポスト74は、
図15に示すように、ヨーク72に固定される基部87と、基部87から開口96内に延びる方向に屈曲する第1屈曲部88と、第1屈曲部88から第1屈曲部88の屈曲方向とは反対方向に屈曲する第2屈曲部90とを有し、先端部84は第2屈曲部90に設けられる。ばねポスト74の一部が開口96内に配置されるように構成したことで、ばねポスト74がヨーク72から可動接点16側に延びる距離を最小限にすることができ、リレーの小型化が図れる。またばねポスト74は、互いに反対方向に屈曲する2つの屈曲部88、90を有するので、接点の接離方向について弾性変形が可能となり、ばねポスト74の損傷や塑性変形が防止される。
【0027】
ヒンジ形リレーの可動部分の固有振動数に等しい周波数の振動がリレーに加わった場合、可動部分の共振が発生し得る。例えばリレー10に対して可動接点部18の固有振動数に等しい周波数の振動が加わると、可動接点16に固定接点12との接離方向への共振が発生し、意図していない状況で可動接点16が固定接点12に接触してしまう等、リレー10の誤動作に至る虞がある。
【0028】
そこで本実施例では、
図14のような可動接点16が中立位置にあるとき(リレー10が動作していない状態)において、先端部84と可動ばね58又は導電板56との接点接離方向の距離d1が、固定接点12と可動接点16との距離d2(
図14参照)よりも小さくなるように設定される。d1がd2よりも小さいため、可動接点部18が共振により振動しても振幅が大きくなる前に可動ばねが復帰ばねポストに接触して、振幅がそれ以上大きくなることを抑制できる。そのため、共振により固定接点12と可動接点16とが意図せずに接触することを防止できる。よって上述の寸法関係を有するばねポスト74により、可動部分の共振時のリレーの誤動作を防止することができる。
【0029】
リレー、特に400~800V等の高電圧がかかる直流リレーでは、接点を保護するためにアークを引き延ばし又は消弧する手段、具体的には永久磁石やアーク消弧板が設けられる。これらの手段は、消弧機能を有する消弧室等とは別の部材に取り付けられていたため、部品コストや組立工数を増加させる要因になっていた。
【0030】
そこで本実施例では、
図8及び
図18に示すように、樹脂成形等によりベース48を枠状又は箱状に形成し、ベース48は、永久磁石50が嵌合される側面の凹部100と、消弧板52が挿入されるスロット102と、永久磁石ヨーク54が取付けられる外面104とを有する。
図8等に図示されるベース48は一体的に成形されている。
【0031】
図19は、永久磁石50、消弧板52及びヨーク54を、ベース48に取り付けた状態を示し、
図20は明瞭化のため
図19からベース48を図示省略した状態を示す。このように、固定接点12が取付けられるベース48に対し、ヨーク54、永久磁石50及び消弧板52を全て取付けることができる。故にベース48は、固定接点12を囲繞する永久磁石50、ヨーク54と消弧板52とを有する、アーク遮断性能の高い消弧室としての機能も具備する。
【0032】
図21は、ベース48の側断面図であり、永久磁石50、消弧板52及びヨーク54によってアークが引き延ばされて消弧される様子を説明する。永久磁石50及びヨーク54からの磁束により、固定接点12と可動接点16との間に生じたアーク106はベース48が有する消弧室内に引き延ばされる。2つの永久磁石50は、互いに対向する面が同極であることが好ましく、このような同極対向配置により、各接点間に発生するアークを同じ方向に引き延ばすことができる。
【0033】
図22は、比較例として、消弧板52がない場合のアークの状態を示す。
図21からわかるように、アーク106は、ベース48に挿入された消弧板52によって引き延ばされる。一方、消弧板52が設けられていない
図22では、アークは引き延ばされることなく、ベース48内に広がる。このように、アーク消弧に関連する部材の全てを、消弧のためのスペースが確保されたベース48に取り付けるようにしたことで、部品点数を増やすことなく、アーク遮断能力の高いリレーが提供される。
【0034】
本実施例はいわゆるダブルブレーク式リレーであり、2つの固定接点12がベース48に取り付けられているため、それぞれの固定接点になるべく近い位置に永久磁石や消弧板を配置するのが好ましい。そこで本実施例では、2つの永久磁石50をベース48の両側面に取付け、2つの消弧板52がそれぞれ2つの固定接点12の直近まで延びるようにベース48に挿入・配置される。またヨーク54は、組立の容易性等の観点から上下に2分割してベース48の上下方向から取付けできるように構成されているが、これに限られるものではなく、例えば左右に2分割してベース48の左右方向から取付けできるように構成されてもよい。
【0035】
図23は、固定接点部14′の分解斜視図である。固定接点部14′は、2つの固定接点12の間に、鉄等の透磁率の高い材料からなる磁気シールド110が固定部位(図示例ではベース48の台座109)に配置される点で
図8とは異なる。他の構成要素については
図8と同様であり、同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0036】
図24は、ベース48を図示していない状態を示す図である。
図24には、永久磁石50、消弧板52、ヨーク54、及び2つの固定接点12間に配置された磁気シールド110が示される。本実施例では、消弧機能に加え、以下に述べる磁束吸収機能も得られる。
【0037】
図25は、固定接点12に流れる電流と磁束の関係を説明する図であり、
図26は比較例として磁気シールド110がない場合の電流と磁束の関係を示す。例えば、直流リレーとしてリレーを使用する場合、矢印112の向きに一方の固定端子46に入力される電流が、固定接点12、可動接点16、導電板56、および他方の固定接点12を経由して他方の固定端子46から矢印114の向きに流れる。このように流れる電流によって、2つの固定接点12及び固定端子46の間に、紙面に垂直かつ奥から手前方向に磁束116が生じる。リレーの閉成した接点に大電流が通電されると、可動接点と固定接点との間に電磁反発力が生じ、接点の開離や、接点同士の溶着が生じる虞もある。
【0038】
図26のように磁気シールド110が設けられていない場合は、磁束116の影響は例えば破線120で示す範囲に及ぶので、範囲120内にある導電板56には、矢印122で示す方向のローレンツ力が作用する。故に
図26の例では、導電板56に接点開離方向の力が加わり、ローレンツ力によって固定接点12と可動接点16とが開離してしまう虞がある。
【0039】
これに対し、
図25のように磁気シールド110が設けられている場合は、磁束が磁気シールド110に吸収されるので、磁束の影響により導電板56に接点の開離方向の力が生じることを防止できる。よって本実施例によれば、特に大電流を流した場合であっても、誤動作の生じ難いリレーが提供される。
【0040】
磁気シールド110は、リレー10の可動部分ではなく、ベース48等の固定部分に配置される。磁気シールドを可動部分に配置することも可能であるが、一般に、可動部分の重量が増加すると、リレーに衝撃等が加わった場合に誤動作が生じやすい傾向があるため、磁気シールドを可動部分に配置するのは避けることが好ましい。本実施例では、磁気シールドが固定部分に配置されているため、磁気シールドによって可動部分の重量は増加しないので、そのような不具合も防止できる。
【符号の説明】
【0041】
10 リレー、12 固定接点、14 固定接点部、16 可動接点、
18 可動接点部、20 電磁石、22 ケース、 26,28,30 リブ、
32 開口部、34,36 電線、38 ポケット、 40 開口、
42 接着剤、46 固定端子、48 ベース、 50 永久磁石、52 消弧板、
54 永久磁石ヨーク、56 導電板、 58 可動ばね、60 アマチュア、
64 復帰ばね、72 ヨーク、74 ばねポスト、 78 コイル端子、
80 脚部、84 先端部、 88,90 屈曲部、92 突起、96 開口、
106,108 アーク、109 台座、 110 磁気シールド