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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013763
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】焼入装置、及び、コイル交換機構
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/42 20060101AFI20230119BHJP
   C21D 1/62 20060101ALI20230119BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20230119BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20230119BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20230119BHJP
   H05B 6/44 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C21D1/42 J
C21D1/62
C21D9/00 A
C21D1/18 K
H05B6/10 371
H05B6/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118167
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】521317438
【氏名又は名称】株式会社高周波ヒートシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100150153
【弁理士】
【氏名又は名称】堀家 和博
(72)【発明者】
【氏名】北森 和夫
(72)【発明者】
【氏名】栗原 昌立
【テーマコード(参考)】
3K059
4K042
【Fターム(参考)】
3K059AA09
3K059AB24
3K059AD32
3K059AD40
3K059CD54
3K059CD64
3K059CD75
4K042AA04
4K042AA14
4K042AA15
4K042AA16
4K042AA17
4K042AA18
4K042AA22
4K042AA23
4K042AA25
4K042BA13
4K042BA14
4K042DA01
4K042DB01
4K042DC05
4K042DF01
4K042EA01
4K042EA03
(57)【要約】
【課題】ワークを、大コイルからの小コイルを介した誘導加熱にて焼入れしたり、ワークに応じて小コイルのみを交換する等して、「装置の小型化等」や「作業効率の向上」などを実現する。
【解決手段】断面が略円形状部分を含むワークWを焼入れする焼入装置1である。ワークWを、電流が供給される大コイルC1からの、電流が供給されない小コイルC2を介した誘導加熱にて焼入れする。又、小コイルC2は、略リング状のワークW’の内側に配置された第1小コイルC2a、第1小コイルC2aから軸方向に略沿って所定距離だけ離れた第2小コイルC2bや、略リング状のワークW’と大コイルC1の間に配置された第3小コイルC2c等を含み、これらが一体ユニットコイルであっても良い。その他、コイル交換機構10は、ワークWに応じて小コイルC2のみを交換し、移動部11は小コイルC2を軸方向に略沿った移動支持部材11’で支持して移動させても良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が略円形状部分を含むワーク(W)を焼入れする焼入装置であって、
前記ワーク(W)を焼入れする複数のコイル(C)を有し、
前記複数のコイル(C)は、前記ワーク(W)における略円形状部分より少なくとも経大な大コイル(C1)と、前記大コイル(C1)より径小な小コイル(C2)を含み、
前記大コイル(C1)に電流を供給する機構は、備えている一方で、
前記小コイル(C2)に電流を供給する機構は、備えておらず、
前記ワーク(W)を、前記大コイル(C1)からの前記小コイル(C2)を介した誘導加熱にて焼入れすることを特徴とする焼入装置。
【請求項2】
前記ワーク(W)は、略リング状のワーク(W’)であり、
前記小コイル(C2)は、少なくとも、前記略リング状のワーク(W’)の内側に配置された第1小コイル(C2a)と、前記第1小コイル(C2a)から当該第1小コイル(C2a)の軸方向に略沿って所定距離だけ離れた位置に配置された第2小コイル(C2b)を含み、
前記小コイル(C2)は、少なくとも、前記第1小コイル(C2a)と前記第2小コイル(C2b)が小コイル支持部材(C2’)に一体的に取り付けられた一体ユニットコイルであることを特徴とする請求項1に記載の焼入装置。
【請求項3】
前記小コイル(C2)は、更に、前記略リング状のワーク(W’)の外側に配置され且つ前記大コイル(C1)の内側に配置された第3小コイル(C2c)も含み、
前記小コイル(C2)は、更に、前記第3小コイル(C2c)も小コイル支持部材(C2’)に一体的に取り付けられた一体ユニットコイルであることを特徴とする請求項2に記載の焼入装置。
【請求項4】
前記ワーク(W)の略円形状部分の形状及び/又は大きさに応じて、前記複数のコイル(C)のうち、前記小コイル(C2)のみを交換するコイル交換機構(10)が設けられていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の焼入装置。
【請求項5】
断面が略円形状部分を含むワーク(W)を焼入れし且つ前記ワーク(W)を焼入れする複数のコイル(C)を有した焼入装置おいて、前記複数のコイル(C)の少なくとも一部を交換するコイル交換機構であって、
前記複数のコイル(C)は、前記ワーク(W)の略円形状部分より経大な大コイル(C1)と、前記大コイル(C1)より径小な小コイル(C2)を含み、
前記ワーク(W)の略円形状部分の形状及び/又は大きさに応じて、前記複数のコイル(C)のうち、前記小コイル(C2)のみを交換することを特徴とするコイル交換機構。
【請求項6】
前記小コイル(C2)のみの交換時に当該小コイル(C2)を移動させる移動部(11)を有し、
前記移動部(11)は、前記小コイル(C2)を当該小コイル(C2)の軸方向に略沿った移動支持部材(11’)を介して支持していることを特徴とする請求項5に記載のコイル交換機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面が略円形状の部分を含むワークを焼入れする焼入装置、及び、焼入装置におけるコイル交換機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱装置が知られている(特許文献1)。
この誘導加熱装置は、環状のワークが有する内周面の周方向の一部に対向させる内対向コイル部を含む内コイル、及び当該内コイルと一体である内ベースを有する内側部材と、 前記ワークが有する外周面の周方向の一部に対向させる外対向コイル部を含む外コイル、及び当該外コイルと一体である外ベースを有する外側部材と、を備え、前記内側部材及び前記外側部材それぞれが前記ワークの径方向に移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-009720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された誘導加熱装置は、その段落0017や図1、2等に開示されたように、内側部材と外側部材の両方それぞれに電流を供給するリード部材が、当該内側部材と外側部材に亘って接続されており、装置全体の大型化や複雑化を招く。
又、特許文献1の誘導加熱装置では、加熱対象である環状のワークにおける内面形状等が変わった際に、内側部材、外側部材及びリード部材全体を手等で交換した場合、ワークに対する当該誘導加熱装置の位置合わせを再び行う必要があるため、作業効率が低下する。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、ワークを、電流が供給される大コイルからの、電流が供給されない小コイルを介した誘導加熱にて焼入れしたり、ワークに応じて小コイルのみを交換する等によって、「装置の小型化等」や「作業効率の向上」などを実現できる焼入装置、及び、コイル交換機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る焼入装置1は、断面が略円形状部分を含むワークWを焼入れする焼入装置であって、前記ワークWを焼入れする複数のコイルCを有し、前記複数のコイルCは、前記ワークWにおける略円形状部分より少なくとも経大な大コイルC1と、前記大コイルC1より径小な小コイルC2を含み、前記大コイルC1に電流を供給する機構は、備えている一方で、前記小コイルC2に電流を供給する機構は、備えておらず、前記ワークWを、前記大コイルC1からの前記小コイルC2を介した誘導加熱にて焼入れすることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係る焼入装置1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記ワークWは、略リング状のワークW’であり、前記小コイルC2は、少なくとも、前記略リング状のワークW’の内側に配置された第1小コイルC2aと、前記第1小コイルC2aから当該第1小コイルC2aの軸方向に略沿って所定距離だけ離れた位置に配置された第2小コイルC2bを含み、前記小コイルC2は、少なくとも、前記第1小コイルC2aと前記第2小コイルC2bが小コイル支持部材C2’に一体的に取り付けられた一体ユニットコイルである点にある。
【0008】
本発明に係る焼入装置1の第3の特徴は、上記第2の特徴に加えて、前記小コイルC2は、更に、前記略リング状のワークW’の外側に配置され且つ前記大コイルC1の内側に配置された第3小コイルC2cも含み、前記小コイルC2は、更に、前記第3小コイルC2cも小コイル支持部材C2’に一体的に取り付けられた一体ユニットコイルである点にある。
【0009】
本発明に係る焼入装置1の第4の特徴は、上記第1~3の特徴に加えて、前記ワークWの略円形状部分の形状及び/又は大きさに応じて、前記複数のコイルCのうち、前記小コイルC2のみを交換するコイル交換機構10が設けられている点にある。
【0010】
これらの特徴により、ワークWを、電流が供給される大コイルC1からの、電流が供給されない小コイルC2を介した誘導加熱にて焼入れすることによって、特許文献1とは異なり、大コイルC1と小コイルC2に亘るリード部材等は不要となり、装置全体の小型化や、簡素化等を図れる(「装置の小型化等」)。
これに加えて、大コイルC1と小コイルC2に亘るリード部材等がないため、ワークWに応じて小コイルC2のみを交換することが可能となることから、この場合、特許文献1とは異なり、ワークWに対する大コイルC1の位置合わせは、少なくとも不要となり、作業効率の低下を抑制できるとも言える。
【0011】
又、小コイルC2を、略リング状のワークW’内側の第1小コイルC2aと、第1小コイルC2aから軸方向に略沿って所定距離だけ離れた位置の第2小コイルC2b等とし、これら第1小コイルC2aと第2小コイルC2b等を一体ユニットコイルとすることによって、更なる「装置の小型化等」や、作業効率低下の抑制などが図れるとも言える。
【0012】
更に、小コイルC2に、略リング状のワークW’と大コイルC1との間の第3小コイルC2cも含ませ、第3小コイルC2cも一体ユニットコイルとすることによって、より「装置の小型化等」が図れると共に、略リング状のワークW’の外側の形状等に応じた第3小コイルC2cとすること等で、当該ワークW’(の内面側や外面側)に対し、更に適切な焼入れが可能になるとも言える。
【0013】
そして、ワークWに応じて小コイルC2のみを交換するコイル交換機構10を設けることによって、上述したように、ワークWに対する大コイルC1の位置合わせは、少なくとも不要となり、作業効率が向上する(「作業効率の向上」)。
【0014】
本発明に係るコイル交換機構10は、断面が略円形状部分を含むワークWを焼入れし且つ前記ワークWを焼入れする複数のコイルCを有した焼入装置おいて、前記複数のコイルCの少なくとも一部を交換するコイル交換機構であって、前記複数のコイルCは、前記ワークWの略円形状部分より経大な大コイルC1と、前記大コイルC1より径小な小コイルC2を含み、前記ワークWの略円形状部分の形状及び/又は大きさに応じて、前記複数のコイルCのうち、前記小コイルC2のみを交換することを第1の特徴とする。
【0015】
本発明に係るコイル交換機構10の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記小コイルC2のみの交換時に当該小コイルC2を移動させる移動部11を有し、前記移動部11は、前記小コイルC2を当該小コイルC2の軸方向に略沿った移動支持部材11’を介して支持している点にある。
【0016】
これらの特徴により、ワークWに応じて小コイルC2のみを交換させることによって、特許文献1とは異なり、加熱対象である環状のワークにおける内面形状等が変わった際に、内側部材、外側部材及びリード部材全体を手等で交換せずとも良く、ワークWに対する大コイルC1の位置合わせは、少なくとも不要となり、作業効率が向上する(「作業効率の向上」)。
【0017】
又、交換時に小コイルC2を移動させる移動部11で、小コイルC2を軸方向に略沿った移動支持部材11’にて支持することによって、小コイルC2の軸方向が、大コイルC1の軸方向等とも略同じ方向であると言えることから、大コイルC1や大コイルC1の支持部材等と、小コイルC2自体や移動支持部材11’等が接触することなく、大コイルC1の内側位置から、小コイルC2を抜き出し易くなるとも言える。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る焼入装置、及び、コイル交換機構によると、ワークを、電流が供給される大コイルからの、電流が供給されない小コイルを介した誘導加熱にて焼入れしたり、ワークに応じて小コイルのみを交換する等によって、「装置の小型化等」や「作業効率の向上」などを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る第1実施形態の焼入装置を示す概要図である。
図2】本発明に係る第2実施形態の焼入装置を示す概要図であって、(a)は大コイル-<誘導加熱(電磁誘導)>→略円柱状のワークにおける大径部の焼入れを示し、(b)は大コイル-<電磁誘導>→小コイル-<誘導加熱(電磁誘導)>→略円柱状のワークの小径部における焼入れを示す。
図3】第2実施形態の焼入装置にて焼入れされた別のワークを示す概要図である。
図4】焼入装置全体とコイル交換機構を示す正面図である。
図5】焼入装置全体とコイル交換機構を示す側面図である。
図6】コイル交換機構等を示す拡大正面図である。
図7】コイル交換機構等を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
<焼入装置1の全体構成>
図1には、本発明に係る焼入装置1が示されている。
焼入装置1は、後述するワークWを焼入れする装置である。
【0021】
焼入装置1は、ワークWを焼入れする複数のコイルCを有しており、これらの複数のコイルCには、後述する大コイルC1と、後述する小コイルC2が含まれている。
これらの複数のコイルCによって、焼入装置1は、ワークWを誘導加熱(Induction Heating、IH)によって、焼入れを行うところ、詳解すれば、後述するワークWを、後述する大コイルC1からの、後述する小コイルC2を介した誘導加熱にて焼入れする。
【0022】
焼入装置1は、後述するコイル交換機構10を有していても良く、又、ワークWを保持するワーク保持・移動機構20を有していたり、又、後述する大コイルC1へ電流を供給する電流供給機構30であったり、ワークW、複数のコイルC及びコイル交換機構10等を支持する筐体40や、この筐体40内の機構10、20、30等を制御する制御部、その他、油圧ポンプやドレン等の油圧回路、発振器などを有していても構わない。
以下はまず、焼入装置1に焼入れをされるワークWについて述べる。
【0023】
<ワークW>
図1~7に示されたように、ワークWは、上述した焼入装置1に焼入れされるものであって、断面が略円形状部分を含む。
ワークWは、断面が略円形状部分を含んでいれば、特に限定はないが、例えば、略リング状のワークW’の他、略円柱状のワークW”や、略円筒状のワークなども含む。
以下、略リング状のワークW’から、順に述べる。
【0024】
<略リング状のワークW’>
図1に示されたように、略リング状のワークW’は、その軸方向の直交断面形状も、略リング状(略環状)となるワークである。
略リング状のワークW’は、その軸方向の断面形状(外周側や内周側の形状)が、真円形状であるだけでなく、略円形状であっても良く、詳解すれば、略リング状における内周側断面形状と外周側断面形状の少なくとも何れか一方が、真円形状であったり、略円形状であっても構わない。
【0025】
略リング状のワークW’における周方向の直交断面形状は、特に限定はないが、例えば、略矩形状や、略大括弧『[』状であったり、その他、略小括弧『(』状や、略正方形状、略円形状などであっても構わない。
略リング状のワークW’としては、例えば、ベアリング(ベアリングにおける内側の部材(内輪)や外側の部材(外輪)等)であっても良く、その他、二重リングなどであっても構わない。
尚、略リング状のワークW’の大きさは、特に限定はないが、例えば、外径が70mm以下であっても良く、その他、内面側には、転動体(鋼球など)が転がる溝(凹み)が周方向に沿って形成されていても構わない。
【0026】
<略円柱状のワークW”や、その他のワーク>
図2~7に示されたように、略円柱状のワークW”などは、径が異なる2つ以上の略円柱が1つになった段付シャフトなどを含み、又、略円柱状のワークW”の軸方向の長さに限定はないが、例えば、600mm等であっても良い。
略円柱状のワークW”における軸方向の直交断面形状は、上述したように、略円形状部分を含んでいれば良いが、その他、略カム形状部分や、楕円形状部分、略正方形状部分、略六角形状部分などを含んでいても良い。
【0027】
略円柱状のワークW”は、軸状部材であっても良く、例えば、段付シャフトを始めとして、クランクシャフト、カムシャフト、ドライブシャフト、ピニオンシャフト等の、途中で太さ(直径や、長径・短径等)や、軸方向の断面形状、軸位置などが変わる部分を有した軸状部材であっても構わない。略円柱状のワークW”は、軸状部材以外であれば、例えば、ロール状部材(径が大きい略円柱状の部材)であっても良い。
尚、軸状部材において、途中で太さ等が変わる部分は、急激に太さが変わって略直角状となる軸状部材(謂わば、段付部分)であっても良いが、徐々に太さが変わる(例えば、先細り部分や、先太り部分などを有する)軸状部材であっても構わない。
【0028】
その他、ワークWは、断面が略円形状部分を含んでいれば、略円筒状の(断面が略リング状である)ワーク等でも良く、具体的には、シリンダライナ(シリンダスリーブ)などであっても良い。
更にその他、ワークWは、断面が略円形状部分を含んでいれば、歯車状部材(内周側の形状等が略円形状)であったり、レール状部材(軸方向の断面形状が略円形状)、略球状部材であっても良い。
【0029】
<第1実施形態の複数のコイルC>
図1に示されたように、第1実施形態の複数のコイルCは、上述したワークWのうち、略リング状のワークW’を焼入れするコイルであって、その数は、複数(2つ以上)である。
複数のコイルCの数は、2つ以上であれば、特に限定はないが、例えば、3つや4つであったり、5つ以上であっても良い。
【0030】
複数のコイルCそれぞれは、電線を、略リング状に巻回したものである。
巻回される電線は、銅線をエナメル樹脂(エナメル塗料)で被覆したエナメル線であったり、銅線をポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、その他の絶縁体で被覆したマグネット線であったり、その他、銅線などであっても良い。
【0031】
複数のコイルCそれぞれにおける電線の太さ(直径)も、特に限定はなく、複数のコイルCそれぞれは、鉄心を有さなくとも(空芯コイルであっても)良い。
電線を巻回して構成される各コイルCは、当然、軸方向を有することとなるが、各コイルCの軸方向視形状(軸方向が上下方向(鉛直方向)であれば、平面視形状)は、特に限定はないが、例えば、略C字状であったり、略円形状であっても良い。
【0032】
複数のコイルCは、後述する大コイルC1と小コイルC2を含む。
これらの複数のコイルCによって、焼入装置1は、上述したように、略リング状のワークW’を誘導加熱よって、焼入れを行うところ、詳解すれば、上述したワークWを、後述する大コイルC1からの、後述する小コイルC2を介した誘導加熱にて焼入れする。
以下、第1実施形態における大コイルC1と小コイルC2等について述べる。
【0033】
<大コイルC1>
図1に示されたように、大コイルC1は、上述した複数のコイルCに含まれ(複数のコイルCの1つであり)、上述したワークWにおける略円形状部分より少なくとも経大である。
大コイルC1は、その構成等に特に限定はないが、巻回された電線の巻数は何れの値であっても良く、電線の素材も、上述したエナメル線やマグネット線など何れであっても構わない。又、大コイルC1における電線の素材や、大コイルC1における軸方向視形状(平面視形状)は、後述する小コイルC2と同じであっても良いし、互いに異なっていても構わない。
【0034】
大コイルC1は、略リング状のワークW’に対して、略同軸状に配置されていても良く、その他、大コイルC1は、その軸方向に沿って複数(例えば、2つや3つ、4つ以上等)の部分に分けて配置されていても良く、各部分の間には、当該大コイルC1の軸方向に沿って所定距離だけ離れていても構わない。
例えば、大コイルC1が軸方向に沿って2つの部分に分けて配置されている場合、これら2つの部分の両方が、それぞれ、略リング状のワークW’に対して、略同軸状に配置されていても良い。
【0035】
図1のように、この場合、大コイルC1の2つの部分のうちの一方が、略リング状のワークW’と略同じ軸方向位置(例えば、略同じ上下方向位置)に配置され、2つの部分のうちの他方が、略リング状のワークW’から異なる軸方向位置(例えば、異なる上下方向位置)に配置されていても良い。
ここで、略リング状のワークW’と略同じ軸方向位置に配置された大コイルC1の一方の部分を、近大コイル(又は、第1大コイル)C1aとし、略リング状のワークW’と異なる軸方向位置に(謂わば、略リング状のワークW’から遠い位置)に配置された大コイルC1の他方の部分を、遠大コイル(図1の場合は、遠上大コイル、又は、第2大コイル)C1bとしても良い。
【0036】
尚、近大コイルC1aと遠大コイルC1bそれぞれにおいて、巻回された電線の巻数は、特に制限はないが、例えば、近大コイルC1aの巻数より、遠大コイルC1bの巻数を多くても良く、その他、近大コイルC1aの巻数と遠大コイルC1bの巻数を略同じにしたり、近大コイルC1aの巻数より、遠大コイルC1bの巻数を少なくしても構わない。
特に、近大コイルC1aの巻数より遠大コイルC1bの巻数が多い場合、近大コイルC1aの巻数と遠大コイルC1bの巻数の比率は、特に限定はないが、例えば、近大コイルC1aの巻数:遠大コイルC1bの巻数=1:2、1:3、1:4等であったり、1:1.5、1:1.4、1:1.3、1:1.2,1:1.1等であっても良い。
【0037】
ここで、近大コイルC1aの巻数:遠大コイルC1bの巻数=1:2の場合、それぞれの構成は特に限定はないが、例えば、巻数が同じ所定値であるコイル(1ターン)を、合計で3つ作成し(合計で3ターン作成し)、これら3ターンのうち、1ターンで近大コイルC1aを構成し、残り2ターンを軸方向に重ねたもので遠大コイルC1bを構成しても良い。
これと同様に、近大コイルC1aの巻数:遠大コイルC1bの巻数=1:3等の場合であれば、合計で4ターン等を作成し、これら4ターン等のうち、1ターンで近大コイルC1aを構成し、残り3ターン等を軸方向に重ねたもので遠大コイルC1bを構成しても良い。
【0038】
その他、例えば、大コイルC1が軸方向に沿って3つの部分に分けて配置されている場合、これら3つの部分の全てが、それぞれ、略リング状のワークW’に対して、略同軸状に配置されていても良く、これら3つの部分のうちの1つが、略リング状のワークW’と略同じ軸方向位置(例えば、略同じ上下方向位置)に配置され、残り2つの部分のうちの一方が、略リング状のワークW’から一方寄りに異なる軸方向位置(例えば、上方寄りに異なる上下方向位置)に配置され、残り2つの部分のうちの他方が、略リング状のワークW’から他方寄りに異なる軸方向位置(例えば、下方寄りに異なる上下方向位置)に配置されていても構わない。
ここで、略リング状のワークW’と略同じ軸方向位置に配置された大コイルC1の部分を、近大コイルC1aとし、略リング状のワークW’から一方(上方等)寄りに異なる軸方向位置に(謂わば、略リング状のワークW’から一方(上方等)寄りに遠い位置)に配置された大コイルC1の部分を、遠上大コイルC1bとし、略リング状のワークW’から他方(下方等)寄りに異なる軸方向位置に(謂わば、略リング状のワークW’から他方(下方等)寄りに遠い位置)に配置された大コイルC1の部分を、遠下大コイル(又は、第3大コイル)としても良い。
【0039】
又、ここまで述べた近大コイルC1aや、遠大コイル(遠上大コイル)C1b、遠下大コイル等のように分けずに、これら近大コイルC1aや、遠大コイル(遠上大コイル)C1b、遠下大コイル等が配置された軸方向位置に亘って(謂わば、近い位置から遠い位置までに亘って)、所定距離をあけずに、1つの大コイルC1が配置されていても良い。
そして、近大コイルC1aや、遠大コイル(遠上大コイル)C1b、遠下大コイル等における電線の素材や軸方向視形状は、互いに同じであっても良いし、互いに異なっていても構わない。
大コイルC1の軸方向長さ(上下長さ等)は、近大コイルC1aや、遠大コイル(遠上大コイル)C1b、遠下大コイル等のように分けて配置された場合でも、1つの大コイルC1が配置された場合など、何れの場合であっても特に制限はないが、例えば、15mm等であっても良い。
【0040】
<大コイルC1と電流供給機構30>
大コイルC1には、電流を流す(供給する)機構(例えば、後述する電流供給機構30)が備えられている。
ここで、大コイルC1に供給される電流は、交流電流であって、その周波数は、高周波数であっても(つまり、大コイルC1に供給される電流は、高周波電流と呼ばれても)良く、この場合、焼入装置1によるワークWの焼入れは、「高周波焼入」とも言う。
【0041】
大コイルC1に供給される電流の周波数は、その具体的な値に特に制限はないが、例えば、1kHz以上500kHz以下であっても良い。
尚、大コイルC1が上述した近大コイルC1aや遠大コイル(遠上大コイル)C1b等に分かれている場合、それらが互いに導通されていれば、1つの電流供給機構30によって各大コイルC1a、C1b等に電流を流すことが出来ると言える。
【0042】
この場合、逆に、上述した近大コイルC1aや遠大コイルC1b等が互いに導通されていない(互いの間に絶縁体が配置されている)のであれば、各大コイルC1a、C1b等それぞれに、1つずつ電流供給機構30を設けていても良い。
大コイルC1は、上述した略リング状のワークW’等を、後述する小コイルC2を介した誘導加熱にて焼入れをすることから、謂わば、大コイルC1が母体となるため、大コイルC1は、「マザーコイル」であるとも言える。
【0043】
<小コイルC2>
図1~7に示されたように、小コイルC2は、上述した複数のコイルCに含まれ(複数のコイルCの1つであり)、上述した大コイルC1より径小なコイルである。
又、小コイルC2は、上述した略リング状のワークW’等を、上述した大コイルC1からの、当該小コイルC2を介した誘導加熱にて焼入れをすることから、小コイルC2は、「ベビーコイル」であるとも言える。
【0044】
小コイルC2には、電流を流す(供給する)機構(例えば、後述する電流供給機構30)が備えられていない。
小コイルC2は、少なくとも、後述する第1小コイルC2aと、第2小コイルC2bを含んでいても良い。
【0045】
小コイルC2は、少なくとも、後述する第1小コイルC2aと第2小コイルC2bが、後述する小コイル支持部材C2’に一体的に取り付けられた一体ユニットコイルであっても良い。
小コイルC2は、更に、後述する第3小コイルC2cも含んでいても良い。
【0046】
小コイルC2も、その構成等に特に限定はないが、巻回された電線の巻数は何れの値であっても良く、電線の素材も、上述したエナメル線やマグネット線など何れであっても構わない。又、小コイルC2における電線の素材や、小コイルC2における軸方向視形状(平面視形状)は、上述した大コイルC1と同じであっても良いし、互いに異なっていても構わない。
そして、第1小コイルC2aや、第2小コイルC2b、第3小コイルC2c等における電線の素材や軸方向視形状は、互いに同じであっても良いし、互いに異なっていても構わない。
【0047】
小コイルC2は、略リング状のワークW’に対して、略同軸状に配置されていても良く、その他、第1~3小コイルC2a~C2c等それぞれが、略リング状のワークW’に対して、略同軸状に配置されていても良い。
又、第1~3小コイルC2a~C2c等は、これらのうち一部が互いに導通されていても良く、例えば、第1小コイルC2aと第2小コイルC2bが互い導通されていても構わない。
一方、第1~3小コイルC2a~C2c等は、これらのうち一部が互いに導通されていなくとも良く、例えば、第3小コイルC2cは、第1小コイルC2aや第2小コイルC2bと、互い導通されていなくとも構わない。
【0048】
<第1小コイルC2a>
図1に示されたように、第1小コイルC2aは、上述した略リング状のワークW’の内側に配置されたコイルである。
第1小コイルC2aは、上述した小コイルC2に含まれ、「第1ベビーコイル」であるとも言える。
【0049】
図1のように、第1小コイルC2aも、上述したように、略リング状のワークW’に対して、略同軸状に配置されているが、第1小コイルC2aは、略リング状のワークW’と略同じ軸方向位置(例えば、略同じ上下方向位置)に配置されている。
従って、第1小コイルC2aは、略リング状のワークW’の内側(内面側)に対して、最も近い位置に配置されたコイル(謂わば、内近小コイルC2a)であるとも言える。
【0050】
<第2小コイルC2b>
図1に示されたように、第2小コイルC2bは、上述した第1小コイルC2aから当該第1小コイルC2aの軸方向に略沿って所定距離だけ離れた位置に配置されたコイルである。
第2小コイルC2bも、上述した小コイルC2に含まれ、「第2ベビーコイル」であるとも言える。
【0051】
図1のように、第2小コイルC2bも、上述したように、略リング状のワークW’に対して、略同軸状に配置されているが、第2小コイルC2bは、略リング状のワークW’から一方寄りに異なる軸方向位置(例えば、上方寄りに異なる上下方向位置)に配置されている。
従って、第2小コイルC2bは、略リング状のワークW’の内側(内面側)に対して、上述した第1小コイルC2aより遠い位置に配置されたコイル(謂わば、内遠小コイル(内遠上小コイル)C2b)であるとも言える。
尚、この第2小コイル(内遠小コイル(内遠上小コイル))C2bと、上述した第1小コイル(内近小コイル)C2aとの間は、導通されている。
【0052】
ここまで述べた第1、2小コイルC2a、C2bと、上述した大コイルC1(特に、遠大コイルC1b)によって、略リング状のワークW’(特に、その内面側)が、誘導加熱にて焼入れされる。
詳解すれば、大コイルC1(遠大コイル(遠上大コイル)C1b)に電流供給機構30で電流(交流電流)を流すことによって、当該遠上大コイルC1bから磁界(磁束が変動する磁界)が発生し、この磁界内に配置され且つ遠上大コイルC1bに最も近い第2小コイル(内遠上小コイル)C2bに誘導電流が流れ、当該内遠上小コイルC2bと導通する第1小コイル(内近小コイル)C2aにも誘導電流が流れ、これによって当該内近小コイルC2aから磁界(磁束が変動する磁界)が発生し、この磁界内に配置され且つ内近小コイルC2aに最も近い略リング状のワークW’(特に、内面側の部分)に誘導電流が流れるところ、略リング状のワークW’に電気抵抗があるために熱(ジュール熱)が発生し、この熱で略リング状のワークW’の内面側の部分の焼入れを行う。
つまり、大コイルC1(遠上大コイルC1b)-<電磁誘導>→第2小コイル(内遠上小コイル)C2b-<導通>→第1小コイル(内近小コイル)C2a-<誘導加熱(電磁誘導)>→略リング状のワークW’の内面側にて、焼入れを行うこととなる。
【0053】
<第3小コイルC2c>
図1に示されたように、第3小コイルC2cは、上述した略リング状のワークW’の外側に配置されると同時に、上述した大コイルC1(特に、近大コイルC1a)の内側に配置されたコイルである。換言すれば、第3小コイルC2cは、略リング状のワークW’と近大コイルC1aの間に配置されているとも言える。
第3小コイルC2cも、上述した小コイルC2に含まれ、「第3ベビーコイル」であるとも言える。
【0054】
図1のように、第3小コイルC2cも、上述したように、略リング状のワークW’に対して、略同軸状に配置されているが、第3小コイルC2cは、略リング状のワークW’と略同じ軸方向位置(例えば、略同じ上下方向位置)に配置されている。
従って、第3小コイルC2cは、略リング状のワークW’の外側(外面側)に対して、最も近い位置に配置されたコイル(謂わば、外小コイルC2c)であるとも言える。
尚、第3小コイル(外小コイル)C2cと、上述した第2小コイル(内遠小コイル(内遠上小コイル))C2b及び第1小コイル(内近小コイル)C2aとの間は、導通されていない。
【0055】
ここまで述べた第3小コイルC2cと、上述した大コイルC1(特に、近大コイルC1a)によって、略リング状のワークW’(特に、その外面側)が、誘導加熱にて焼入れされる。
詳解すれば、大コイルC1(近大コイルC1a)に電流供給機構30で電流(交流電流)を流すことによって、当該近コイルC1aから磁界(磁束が変動する磁界)が発生し、この磁界内に配置され且つ近大コイルC1aに最も近い第3小コイル(外小コイル)C2cに誘導電流が流れ、これによって当該外小コイルC2cから磁界(磁束が変動する磁界)が発生し、この磁界内に配置され且つ外小コイルC2cに最も近い略リング状のワークW’(特に、外面側の部分)に誘導電流が流れるところ、略リング状のワークW’に電気抵抗があるために熱(ジュール熱)が発生し、この熱で略リング状のワークW’の外面側の部分の焼入れを行う。
つまり、大コイルC1(近大コイルC1a)-<電磁誘導>→第3小コイル(外小コイル)C2c-<誘導加熱(電磁誘導)>→略リング状のワークW’の外面側にて、焼入れを行うこととなる。
従って、大コイルC1(近大コイルC1a、遠上大コイルC1b)のみに電流を流すことによって、小コイルC2(第1~3小コイルC2a~C2c)を介して、略リング状のワークW’の外面側と内面側に対して、同時に焼入れをすることとなる。
【0056】
<その他の小コイルC2>
その他に、小コイルC2は、上述した第1~3小コイルC2a~C2c以外のコイルを含んでいても良い。
例えば、上述した第1~3小コイルC2a~C2c以外に、略リング状のワークW’から他方(下方等)寄りに異なる軸方向位置に(謂わば、略リング状のワークW’から他方(下方等)寄りに遠い位置)に、第4小コイルが配置されていても良い。
【0057】
尚、第4小コイルを、内遠下小コイルとしても良く、この第4小コイル(内遠下小コイル)と、上述した第1小コイル(内近小コイル)C2aとの間は、導通されていても良い。
又、この第4小コイル(内遠下小コイル)は、上述した大コイルC1が軸方向に沿って3つの部分に分けて配置されている場合における遠下大コイルと、略同じ軸方向位置(例えば、略同じ上下方向位置)に配置されていても良い。
【0058】
ここまで述べた第4小コイル(内遠下小コイル)及び第1小コイル(内近小コイル)C2aと、上述した大コイルC1(特に、遠下大コイル)によって、略リング状のワークW’(特に、その内面側)が、誘導加熱にて焼入れされるとも言える。
詳解すれば、大コイルC1(遠下大コイル)に電流供給機構30で電流(交流電流)を流すことによって、当該遠下大コイルから磁界(磁束が変動する磁界)が発生し、この磁界内に配置され且つ遠下大コイルに最も近い第4小コイル(内遠下小コイル)に誘導電流が流れ、当該内遠下小コイルと導通する第1小コイル(内近小コイル)C2aにも誘導電流が流れ、これによって当該内近小コイルC2aから磁界(磁束が変動する磁界)が発生し、この磁界内に配置され且つ内近小コイルC2aに最も近い略リング状のワークW’(特に、内面側の部分)に誘導電流が流れるところ、略リング状のワークW’に電気抵抗があるために熱(ジュール熱)が発生し、この熱で略リング状のワークW’の内面側の部分の焼入れを行う。
つまり、大コイルC1(遠下大コイル)-<電磁誘導>→第4小コイル(内遠下小コイル)-<導通>→第1小コイル(内近小コイル)C2a-<誘導加熱(電磁誘導)>→略リング状のワークW’の内面側にて、焼入れを行うこととなる。
【0059】
ここで、第4小コイル(内遠下小コイル)と導通する第1小コイル(内近小コイル)C2aの部分と、第2小コイル(内遠上小コイル)C2bと導通する第1小コイル(内近小コイル)C2aの部分とは、互いに導通していなくとも良い。
そして、第1~3小コイルC2a~C2cや、第4小コイル等における電線の素材や軸方向視形状は、互いに同じであっても良いし、互いに異なっていても構わない。
小コイルC2の軸方向長さ(上下長さ等)は、第1、2小コイルC2a、C2bだけが配置された場合や、第3小コイルC2cも配置された場合、第4小コイル等も配置された場合など、何れの場合であっても特に制限はないが、例えば、15mm等であっても良い。
【0060】
<小コイル支持部材C2’>
図1に示されたように、小コイル支持部材C2’は、上述した第1小コイルC2aと第2小コイルC2b等を支持する部材である。
小コイル支持部材C2’は、その形状や構成に特に限定はないが、例えば、上述した第1小コイルC2aを支持する第1支持部と、上述した第2小コイルC2bを支持する第2支持部と、これら第1支持部と第2支持部を連結する連結部を有していても良い。
【0061】
小コイル支持部材C2’のうち、第1支持部は、第1小コイルC2aをその内側から支持する略円板状の部材であっても良く、又、第2支持部も、第2小コイルC2bをその内側から支持する略円板状の部材であっても良く、更に、連結部は、上述した略円板状の第1、2支持部の中心部同士を連結する軸状の部材であっても構わない。
小コイル支持部材C2’は、その内部に、第1小コイルC2aと第2小コイルC2bとを導通させる電線を有していても良く、又、小コイル支持部材C2’は、その素材にも特に限定はないが、絶縁体などであっても構わない。
【0062】
又、小コイル支持部材C2’は、第1小コイルC2a及び第2小コイルC2bと共に、上述した第3小コイルC2cを支持する部材であっても良い。
この場合、小コイル支持部材C2’は、第1小コイルC2a及び第2小コイルC2bと、第3小コイルC2cとは導通されておらず、第1小コイルC2a及び第2小コイルC2bと第3小コイルC2cとの間に、絶縁体が設けられていても良い。
【0063】
更に、小コイル支持部材C2’は、第1小コイルC2aや第2小コイルC2b、第3小コイルC2cと共に、上述した第4小コイル等を支持する部材であっても良い。
この場合、小コイル支持部材C2’が第4小コイルも支持する場合には、第1小コイルC2aと第4小コイルとを導通させる電線を有していても良い。
【0064】
<一体ユニットコイルC2
図1に示されたように、一体ユニットコイルC2は、上述した第1小コイルC2aと第2小コイルC2b等を、上述した小コイル支持部材C2’に一体的に取り付けたユニットである。
一体ユニットコイルC2は、上述した第3小コイルC2c等も、小コイル支持部材C2’に一体的に取り付けていても良い。
【0065】
一体ユニットコイルC2によって、上述した略リング状のワークW’の形状や大きさに応じて、大コイルC1は、一切交換せずとも、小コイルC2である当該一体ユニットコイルC2だけを交換するだけで、該ワークW’の内面側や外面側に対し、更に適切な焼入れが可能になるとも言える。
これと共に、大コイルC1を交換しないため、略リング状のワークW’の形状や大きさに対応しつつ、当該略リング状のワークW’に対する大コイルC1の位置合わせは不要となり、作業効率が向上すると言える。
【0066】
ここまで述べた一体ユニットコイルC2や、上述した小コイル支持部材C2’の軸方向視形状(軸方向が上下方向(鉛直方向)であれば、平面視形状)は、特に限定はないが、例えば、略C字状であったり、略円形状であっても良く、軸方向視形状が略C字状であれば、一体ユニットコイルC2や小コイル支持部材C2’は、小コイルC2におけるある1つの径方向の一方(後方)側に、軸方向(上下方向)に長い隙間(謂わば、後方開口)を有していても良く、この後方開口を通して、後述するワーク保持・移動機構20におけるワーク下保持部20aやワーク上保持部20cを、小コイルC2の内側へ入れたり、外側へ出しても構わない。
このような小コイルC2を含む一体ユニットコイルC2を交換するコイル交換機構10は、詳細を後述する。
【0067】
<第2実施形態の焼入装置1>
図2~7には、本発明に係る第2実施形態の焼入装置1が示されている。
この第2実施形態において第1実施形態と最も異なるのは、焼入対象であるワークWが、略リング状のワークW’ではなく、略円柱状のワークW”である点である。
ここで、略円柱状のワークW”とは、例えば、径が異なる2つ以上の略円柱が1つになった段付シャフトやクランクシャフト、カムシャフト等であり、この段付シャフト等は、異なる径のうち、径が大きい大径部W1”と、その大径部W1”より径が小さい小径部W2”を少なくとも有している。
【0068】
第2実施形態においても、複数のコイルCとして、大コイルC1と小コイルC2を有している(複数のコイルCに、大コイルC1と小コイルC2が含まれている)。
又、第2実施形態においても、大コイルC1には、電流を供給する電流供給機構4が備えられている一方で、小コイルC2には、電流供給機構4は備えられていない。
【0069】
更に、第2実施形態においても、略円柱状のワークW”の少なくとも一部を、大コイルC1からの、小コイルC2を介した誘導加熱にて焼入れをする。
このような第2実施形態の焼入装置1における大コイルC1や小コイルC2等について、次に述べる。
【0070】
<大コイルC1、小コイルC2>
図2~7に示されたように、大コイルC1は、段付シャフト等の略円柱状のワークW”における断面が略円形状部分(大径部W1”や小径部W2”など)より経大なコイルであり、小コイルC2は、その大コイルC1より径小なコイルである。
尚、第2実施形態では、大コイルC1及び小コイルC2が、それぞれコイルを1つずつ含む点も、第1実施形態とは異なっていると言える。
【0071】
図2(a)に示したように、大コイルC1によって、段付シャフト等の略円柱状のワークW”における大径部W1”が、誘導加熱にて焼入れされる。
詳解すれば、大コイルC1に電流供給機構30で電流(交流電流)を流すことによって、当該大コイルC1から磁界(磁束が変動する磁界)が発生し、この磁界内に配置され且つ大コイルC1に最も近い略円柱状のワークW”の大径部W1”(特に、大径部W1”の外面側)に誘導電流が流れるところ、略円柱状のワークW”に電気抵抗があるために熱(ジュール熱)が発生し、この熱で略円柱状のワークW”の大径部W1”の焼入れを行う。
つまり、大コイルC1-<誘導加熱(電磁誘導)>→略円柱状のワークW”の大径部W1”にて、焼入れを行うこととなる。
【0072】
この大コイルC1-<誘導加熱(電磁誘導)>→略円柱状のワークW”における大径部W1”の焼入れをしつつ、後述するワーク保持・移動機構20によって略円柱状のワークW”が下方に移動することで、略円柱状のワークW”における大径部W1”の下端(一方端)から上端(他方端)に亘って焼入れが行われるが、この間、小コイルC2は、略円柱状のワークW”の小径部W2”側に位置しており、略円柱状のワークW”の下方移動につれて、後述する移動部11などによって小コイルC2も下方に移動させても良い。
略円柱状のワークW”が更に下方に移動して、大コイルC1が段付コーナー部W3”に近づき、焼入対象が略円柱状のワークW”の大径部W1”から小径部W2”に切り替わる際には、ちょうど、小コイルC2が大コイルC1の内側に入るように、ワーク保持・移動機構20や移動部11などによって略円柱状のワークW”と小コイルC2を下方に移動させても良い(図2(a)→図2(b)参照)。
【0073】
図2(b)に示したように、大コイルC1と小コイルC2によって、段付シャフト等の略円柱状のワークW”における小径部W2”が、誘導加熱にて焼入れされる。
詳解すれば、大コイルC1に電流供給機構30で電流(交流電流)を流すことによって、当該大コイルC1から磁界(磁束が変動する磁界)が発生し、この磁界内に配置され且つ大コイルC1に最も近い小コイルC2に誘導電流が流れ、これによって当該小コイルC2から磁界(磁束が変動する磁界)が発生し、この磁界内に配置され且つ小コイルC2に最も近い略円柱状のワークW”の小径部W2”(特に、小径部W2”の外面側)に誘導電流が流れるところ、略円柱状のワークW”に電気抵抗があるために熱(ジュール熱)が発生し、この熱で略円柱状のワークW”の小径部W2”の焼入れを行う。
【0074】
つまり、大コイルC1-<電磁誘導>→小コイルC2-<誘導加熱(電磁誘導)>→略円柱状のワークW”の小径部W2”にて、焼入れを行うこととなる。
この大コイルC1-<電磁誘導>→小コイルC2-<誘導加熱(電磁誘導)>→略円柱状のワークW”における小径部W2”の焼入れをしつつ、後述するワーク保持・移動機構20によって略円柱状のワークW”が下方に移動することで、略円柱状のワークW”における小径部W2”の下端(一方端)から上端(他方端)に亘っても焼入れが行われる。
尚、焼入れをしつつ、ワーク保持・移動機構20によって略円柱状のワークW”を上方に移動させても良く、この場合、略円柱状のワークW”における大径部W1”や小径部W2”の上端(他方端)から下端(一方端)に亘って焼入れが行われることとなる。
【0075】
図2のように、第2実施形態では、大コイルC1のみによる大径部W1”の焼入れと、上述した大コイルC1及び小コイルC2による小径部W2”の焼入れは、連続的に行われるため、謂わば、1工程にて、1つの略円柱状のワークW”における大径部W1”と小径部W2”の焼入を行えるとも言え、従来のように、1つの略円柱状のワークW”に対して、大径部W1”の焼入れを行う工程と、小径部W2”の焼入れを行う工程を分けて、2工程で行うことと比べて、径が異なるコイルへの交換における段取時間や着脱時間を省くことが可能となり、作業効率が上がるとも言える。
又、図3のように、第2実施形態では、大コイルC1と小コイルC2の少なくとも一方に、それらのコイルにおける内面側の周方向断面をラウンド形状(角を取った形状や、角が丸い形状であったり、全体に半円状の丸みがある形状等)としたラウンドコイルを用いた場合、略円柱状のワークW”の大径部W1”と小径部W2”の間の段付コーナー部W3”も、焼入れが可能にあるとも言える。
【0076】
第2実施形態においても、小コイルC2は、小コイル支持部材C2’に支持され、小コイルC2と小コイル支持部材C2’で一体ユニットコイルC2を構成していても良いが、小コイルC2は1つのコイルで構成されることから、小コイル支持部材C2’に支持されず、且つ、小コイルC2と小コイル支持部材C2’で一体ユニットコイルC2が構成されておらず、小コイルC2単体が後述する移動支持部材11’に支持されていても構わない。
又、小コイルC2の内径や外径は、特に限定はないが、例えば、内径が30mmや40mm、50mmなどであっても良く、外径は、内径によらず一定の値であっても(つまり、小コイルC2の外径は一定の値で、内径が小さければ、径方向の厚さが厚くなり、内径が大きければ、径方向の厚さが薄くなっても)構わない。
その他の焼入装置1の構成、作用効果や使用態様は、第1実施形態と同様である。
ここまで述べた第1、2実施形態の焼入装置1に設けられ得るコイル交換機構10について、以下に述べる。
【0077】
<コイル交換機構10>
図4~7に示されたように、コイル交換機構10は、上述したワークW(略リング状のワークW’や、略円柱状のワークW”等)の略円形状部分の形状及び/又は大きさに応じて、上述した複数のコイルCのうち、上述した第1、2実施形態における小コイルC2のみを交換する機構である。
コイル交換機構10は、上述したように、第1実施形態の焼入装置1における小コイルC2と小コイル支持部材C2’を含む一体ユニットコイルC2を交換し、第2実施形態の焼入装置1における小コイルC2のみを交換するとも言える。
【0078】
コイル交換機構10は、後述する移動部11や、固定部12を有していても良い。
これらのうち、移動部11について、まず以下に述べる。
【0079】
<移動部11、移動支持部材11’>
図4~7に示されたように、移動部11は、上述した小コイルC2(のみ)を交換する時に、当該小コイルC2を移動させる部分である。
移動部11は、小コイルC2を当該小コイルC2の軸方向に略沿った移動支持部材11’を介して支持している。
【0080】
ここで、小コイルC2の軸方向が上下方向(鉛直方向)であれば、移動支持部材11’は、上下方向に略沿って延びている(延設されている)とも言え、謂わば、移動支持部材11’は、小コイルC2を、上側(又は、下側)から移動部11に取り付けているとも言える。
移動支持部材11’は、その形状や構成等に特に制限はないが、例えば、複数(4本や3本など)の軸材や複数の板材から構成されていたり、1つの略筒状体から構成されていても良く、上述した小コイルC2のように、軸方向視(平面視)で略C字状に形成されている。
【0081】
これによって、焼入時には、小コイルC2及び移動支持部材11’の内側にワークWが配置され、コイル交換時には、小コイルC2及び移動支持部材11’を前方へ移動させることで、焼入時には小コイルC2及び移動支持部材11’の内側に配置されていたワークWが、平面視が略C字状である小コイルC2及び移動支持部材11’の後方の隙間(謂わば、後方開口)を通って、当該小コイルC2及び移動支持部材11’の外側に出ることとなる。
このような移動支持部材11’が、第1実施形態の焼入装置1における小コイルC2を含む一体ユニットコイルC2や、第2実施形態の焼入装置1における小コイルC2そのものを、小コイルC2及び移動支持部材11’の内側に配置され得るワークWに接触することなく、後述する移動部11の本体11aに連結している。
【0082】
その他の移動部11の構成等は、特に限定はないが、例えば、移動部11は、その本体11aと、シリンダ11bと、サーボモータ11cと、レール11dと、ベルト11eと、プーリ11fと、前後移動機器(図示せず)と、ボールバルブ11gなどを有していても良い。
移動部11における本体11aは、後述するシリンダ11b等によって、軸方向(上下方向)や、ある1つの径方向(左右方向)、これら2つの方向に略直交する径方向(前後方向)に移動させられる部材であって、形状も特に限定はないが、左右方向に長い(後述するレール11dに略沿った方向が長手方向である)略直方体状であっても良く、この本体11aに移動支持部材11’を介して取り付けられた小コイルC2(一体ユニットコイルC2)も、当該本体11aの移動につれて上下方向や左右方向、前後方向に移動させられることとなる。
又、1つの本体11aには、内径等が異なる複数の小コイルC2等が左右方向に略沿って並んで取り付けられ、この小コイルC2等の数だけ、ワークWや後述するワーク保持・移動機構20におけるワーク下保持部20aやワーク上保持部20cを通すための、ある1つの径方向の一方(後方)側に軸方向(上下方向)に長い隙間(謂わば、後方開口)が、各小コイルC2等に対応する位置に設けられていても良い。
【0083】
移動部11におけるシリンダ11bは、上述した本体11aをワークWや小コイルC2等の上下方向に略沿って移動させる駆動源(詳解すれば、シリンダ11b内において、ピストン上方側へ作動油が流入し、ピストン下方側から作動油が流出すれば、ピストンが下がってロッドが下方へ突出して本体11aを下方へ移動させ、又、シリンダ11b内において、ピストン上方側から作動油が流出し、ピストン下方側へ作動油が流入すれば、ピストンが上がってロッドが上方へ嵌入して本体11aを上方へ移動させる駆動源)であり、上下移動機器であるとも言える。又、シリンダ11bは、左右一対に配置されていても良い。
移動部におけるサーボモータ11cは、上述した本体11aを左右方向に略沿って移動させる駆動源であり、左右移動機器であるとも言える。
【0084】
移動部11におけるレール11dは、上述した本体11aの移動方向を規定するものであり、左右方向に略沿って長手方向を有するガイドレールであるとも言え、このレール11dに沿って本体11aや小コイルC2等が移動する。
移動部11におけるベルト11eは、上述したサーボモータ11cからの駆動力を本体11aに伝える部材であり、その一端は上述したサーボモータ11cの回転軸に掛けられ、その他端は後述するプーリ11fに掛けられており、サーボモータ11cの回転力をワークW等の左右方向に略沿った移動させる力に変えるものである。
【0085】
移動部11におけるプーリ11fは、上述したベルト11eを、サーボモータ11cの回転軸と共に、左右方向に略沿って回転可能に張設する部材である。
移動部11における前後移動機器は、上述した本体11aを、小コイルC2等と共に、前後方向に略沿って移動させる機器である。
移動部11におけるボールバルブ11gは、上述したシリンダ11b内へ流入したり、シリンダ11b内から流出する作動油の弁であって、後述する筐体40外等にある油圧ポンプやドレン等の油圧回路に、油路(油圧パイプ)を介して接続した際に、当該油路を開閉する弁である(油圧ポンプやドレン等の油圧回路、油路(油圧パイプ)は図示せず)。
【0086】
このような移動部11によって、コイル交換機構10は、〔1〕小コイルC2等を、シリンダ11b等にてワークW等の軸方向の一方(上方)に移動させ(小コイルC2等を、大コイルC1の内側(大コイルC1と略同じ軸方向位置)から上方に移動させ)、〔2〕小コイルC2等を、前後移動機器にてワークW等のある1つの径方向(前方)に移動させ(小コイルC2等における後方の隙間(後方開口)にワークWを通し、小コイルC2等の軸方向位置を、ワークW等の軸方向位置より前方へずらし)、〔3〕本体11a及び小コイルC2等を、サーボモータ11cにて、また別の径方向(左右方向)に移動させて、当該本体11aに取り付けられた複数の小コイルC2等のうちを、ワークWに応じた小コイルC2を選択し、選択した小コイルC2等をワークW等の前方に移動させ、〔4〕小コイルC2等を、前後移動機器にてワークW等のある1つの径方向(後方)に移動させ(小コイルC2等における後方の隙間(後方開口)にワークWを通し、小コイルC2等の軸方向位置を、ワークW等の軸方向位置と略同軸状として)、〔5〕小コイルC2等を、シリンダ11b等にてワークW等の軸方向の他方(下方)に移動させる(小コイルC2等を、大コイルC1の内側(大コイルC1と略同じ軸方向位置)に移動させる)こととなる。
移動部11による小コイルC2等の交換時に、大コイルC1は、移動も交換もされていない(焼入装置1に固定されている)が、この大コイルC1を固定する固定部12について、以下に述べる。
【0087】
<固定部12>
図4~7に示されたように、固定部12は、上述した大コイルC1を、コイル交換時や焼入時等に、当該大コイルC1を固定させる部分である。
固定部12は、大コイルC1を当該大コイルC1のある1つの径方向に略沿った固定支持部材12’を介して支持している。
【0088】
ここで、大コイルC1の軸方向が上下方向(鉛直方向)であれば、固定支持部材12’は、上下方向に略直交する(また別の径方向である左右方向にも略直交する)前後方向に略沿って延びている(延設されている)とも言え、謂わば、固定支持部材12’は、大コイルC1を、後側(又は、前側)から固定部12に取り付けているとも言える。
固定支持部材12’は、その形状や構成等に特に制限はないが、例えば、複数の板材から構成されていたり、1つの略棒状体から構成されていても良く、大コイル支持部材C1’であるとも言える。
【0089】
このような固定支持部材12’(大コイル支持部材C1’)には、電流が流れる大コイルC1を冷却する冷却ジャケットが設けられていても良い。
又、固定支持部材12’は、後述するワーク保持・移動機構20によって保持された後のワークWに対する前後方向位置を調節可能な調整具を有していても良い。
以下、ワーク保持・移動機構20について述べる。
【0090】
<ワーク保持・移動機構20>
図4~7に示されたように、ワーク保持・移動機構20は、上述したワークWを焼入装置1に保持させると共に、保持したワークWをその軸方向に略沿って移動させる機構である。
ワーク保持・移動機構20は、その形状や構成等に特に限定はないが、例えば、ワークWを、当該ワークWの軸方向が焼入装置1の上下方向となるように、焼入装置1に対して保持する場合、ワークWを下方から支持するワーク下保持部20aと、このワーク下保持部20aを上方へ付勢して(押圧して)ワークWを下方から保持する下モータ(例えば、回転モータ(ステッピングモータ)等)20bと、ワークWを上方から支持するワーク上保持部20cと、このワーク上保持部20cを下方へ付勢して(押圧して)ワークWを上方から保持する上モータ(例えば、サーボモータ等)20dと、ここまで述べたワーク下保持部20a、下モータ20b、ワーク上保持部20c及び上モータ20d全体を、ワークWの軸方向(上下方向)に略沿って移動可能な移動モータ(例えば、サーボモータ等)20eなどを有していても良い。
【0091】
このようなワーク保持・移動機構20は、大コイルC1及び小コイルC2の位置を移動させずに、ワークWだけをその軸方向に略沿って移動させることで、大コイルC1及び小コイルC2に対するワークWの位置(相対位置)を変更させて、当該ワークWを一方から他方(下方から上方)に亘って、大コイルC1及び小コイルC2で焼入れすることとなる。
ワーク保持・移動機構20において、ワークWの軸方向(上下方向)の移動幅は、特に限定はないが、例えば、650mm等であっても良く、又、ワークWをワーク保持・移動機構20に保持させる際のワーク上保持部20cの軸方向(上下方向)の移動幅も、特に限定はないが、例えば、50mm等であっても構わない。
【0092】
その他、ワーク保持・移動機構20におけるワーク下保持部20aやワーク上保持部20cは、保持するワークWに応じた形状・構成等であっても良く、例えば、ワークWの軸方向長さ(上下方向長さ)が短い(例えば、ワークWが略リング状のワークW’等である)場合には、ワーク下保持部20aやワーク上保持部20cの上下方向長さを、より長くすることで、後述する筐体40や、その他の機構10、30等は変更しなくとも良い構成であっても構わない。
次に、電流供給機構30について述べる。
【0093】
<電流供給機構30>
図4~7に示されたように、電流供給機構30は、上述した大コイルC1に、電流を流す(供給する)機構である。
電流供給機構30が供給する電流は、上述したように、交流電流であって、その周波数は、高周波数であっても(つまり、高周波電流と呼ばれても)良く、その周波数は、その具体的な値に特に制限はないが、例えば、1kHz以上500kHz以下であっても構わない。
【0094】
尚、電流供給機構30は、上述したように、小コイルC2には、電流を流さない(供給しない)。
電流供給機構30の構成は、特に限定はないが、例えば、電流供給機構30は、出力変成器(出力変圧器、出力トランス)30aや、発振器(高周波発振機、図示せず)を有していても良く、電流供給機構30自体の電源も、特に限定はないが、例えば、家庭用電源(家庭用コンセント)などであっても構わない。
このような電流供給機構30や、ここまで述べたコイル交換機構10やワーク保持・移動機構20などを支える筐体40について、以下に述べる。
【0095】
<筐体40>
図4~7に示されたように、筐体40は、上述したワークW、複数のコイルC及びコイル交換機構10、その他、ワーク保持・移動機構20や電流供給機構30等を支持する。
筐体40は、その構成等に特に限定はないが、例えば、各機構10、20、30等が取り付けられる枠部材40aと、その枠部材40aや各機構10、20、30等を覆う外壁部材40bと、これら枠部材40aや外壁部材40bの下端側に取り付けられた底部40cと、この底部40cから下方に突出し且つ高さ調節自在な脚部40dなどを有していても良い。
【0096】
その他、筐体40においては、上述したコイル交換機構10や、ワーク保持・移動機構20、電流供給機構30等を制御する制御部(制御盤、操作盤)などが、これらの機構10、20、30等を操作できるように、外壁部材40bに設けられていても良く、又、外壁部材40bには、開閉可能な扉が設けられていても構わない。
又、上述した電流供給機構30における発振器が、筐体40内に設けられていても良いし、筐体40外に設けられていても構わない。
更に、上述したコイル交換機構10に関わる油圧ポンプやドレン等の油圧回路、油路(油圧パイプ)も、筐体40内に設けられていても良いし、筐体40外に設けられていても構わない。
【0097】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。焼入装置1や、コイル交換機構10等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
焼入装置1は、コイル交換機構10を有していなくとも良い。
焼入装置1において、ワークWや大コイルC1、小コイルC2における軸方向は、主に上下方向(延力方向)であるとして述べてきたが、これらの軸方向が、左右方向や前後方向、その他、斜めの方向であっても良い。
小コイルC2は、第1~3小コイルC2a~C2c等を小コイル支持部材C2’に一体的に取り付けられた一体ユニットコイルC2でなくとも良く、第1~3小コイルC2a~C2c等それぞれが、別々に小コイル支持部材C2’に取り付けられている等でも構わない。
【0098】
小コイルC2は、上述した第3小コイルC2cを含んでいなくとも良く、この場合、略リング状のワークW’の外側(外面側)は、大コイル(特に、近大コイルC1a)からの誘導加熱で、直接、焼入れをされることとなるとも言える。
この場合を詳解すれば、大コイルC1(近大コイルC1a)に電流供給機構30で電流(交流電流)を流すことによって、当該近コイルC1aから磁界(磁束が変動する磁界)が発生し、この磁界内に配置され且つ近大コイルC1aに最も近い略リング状のワークW’(特に、外面側の部分)に誘導電流が流れるところ、略リング状のワークW’に電気抵抗があるために熱(ジュール熱)が発生し、この熱で略リング状のワークW’の外面側の部分の焼入れを行うこととなる。
つまり、この場合、大コイルC1(近大コイルC1a)-<誘導加熱(電磁誘導)>→略リング状のワークW’の外面側にて、焼入れを行うこととなる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る焼入装置は、ベアリングなどの略リング状のワークに対する焼入れに利用できる他、段付シャフトなどの略円柱状のワークや、その他、断面が略円形状部分を含む何れのワークに対する焼入れにも利用可能である。
本発明に係るコイル交換機構は、ベアリングなどの略リング状のワークに対する焼入れに用いる複数のコイル(小コイル)の交換だけでなく、段付シャフトなどの略円柱状のワークや、その他、断面が略円形状部分を含む何れのワークに対する焼入れに用いる複数のコイル(小コイル)の交換にも利用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 焼入装置
10 コイル交換機構
11 移動部
11’ 移動支持部材
W ワーク
W’ 略リング状のワーク
C コイル
C1 大コイル
C2 小コイル
C2a 第1小コイル
C2b 第2小コイル
C2c 第3小コイル
C2’ 小コイル支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7