(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137668
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】光拡散板、表示装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20230922BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230922BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20230922BHJP
F21V 3/00 20150101ALI20230922BHJP
F21V 3/02 20060101ALI20230922BHJP
F21V 3/06 20180101ALI20230922BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230922BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230922BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G09F9/00 336G
G09F9/00 324
G02F1/13357
F21V3/00 530
F21V3/00 320
F21V3/02 500
F21V3/06 110
F21V3/06 130
F21S2/00 481
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043964
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】森井 崇人
【テーマコード(参考)】
2H042
2H391
3K244
5G435
【Fターム(参考)】
2H042BA04
2H042BA20
2H391AA03
2H391AB04
2H391AC27
2H391FA07
3K244AA01
3K244BA08
3K244BA48
3K244CA02
3K244DA01
3K244GA02
3K244LA04
5G435AA01
5G435AA03
5G435AA14
5G435BB12
5G435EE26
5G435FF06
5G435HH04
5G435LL04
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL14
5G435LL17
5G435LL19
(57)【要約】
【課題】優れた光拡散性および光透過性の両立が図られた光拡散板、かかる光拡散板を備え、信頼性に優れた表示装置および電子機器を提示すること。
【解決手段】本発明の光拡散板10は、入射された光を拡散させる平板状をなすものであり、ベース樹脂と、該ベース樹脂に分散された拡散材とを含有し、一方の面のISO 25178に準拠して求められる表面粗さをSa1[μm]とし、他方の面の前記表面粗さをSa2[μm]としたとき、前記表面粗さSa1は、0.5μm以上12.0μm以下であり、かつ、Sa1/Sa2は、1.0超5.0以下であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された光を拡散させる平板状をなす光拡散板であって、
ベース樹脂と、該ベース樹脂に分散された拡散材とを含有し、
一方の面のISO 25178に準拠して求められる表面粗さをSa1[μm]とし、他方の面の前記表面粗さをSa2[μm]としたとき、
前記表面粗さSa1は、0.5μm以上12.0μm以下であり、かつ、Sa1/Sa2は、1.0超5.0以下であることを特徴とする光拡散板。
【請求項2】
JIS K 7361に準拠して求められる全光線透過率は、80.0%以上である請求項1に記載の光拡散板。
【請求項3】
JIS K 7105に準拠して求められるヘイズ値は、86.0%以上である請求項1または2に記載の光拡散板。
【請求項4】
前記ベース樹脂と前記拡散材との屈折率差は、0.14以上0.30以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光拡散板。
【請求項5】
前記拡散材は、その含有量が前記ベース樹脂100重量部に対して0.01重量部以上5.0重量部以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光拡散板。
【請求項6】
前記ベース樹脂は、ポリカーボネート系樹脂である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光拡散板。
【請求項7】
前記拡散材は、粒子状をなし、その平均粒径が0.5μm以上10.0μm以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光拡散板。
【請求項8】
前記拡散材は、ポリオルガノシロキサン骨格を有するシリコーン系材料である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光拡散板。
【請求項9】
当該光拡散板は、その平均厚さが0.05mm以上0.30mm以下である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の光拡散板。
【請求項10】
10mm間隔で四方に並べた輝度が8500cdのLED光源から垂直方向に20mmの位置に、当該光拡散板を設置し、さらに前記垂直方向に300mm離れた位置に輝度測定カメラを設置し、その後、当該光拡散板における4cm四方の領域を64×64に分割された分割領域に細分化し、前記細分化された各前記分割領域における輝度を測定したとき、前記輝度の平均値が5000cd以上であり、かつ、前記輝度の標準偏差σが1000cd以下である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の光拡散板。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の光拡散板と、該光拡散板に対向配置された発光基板とを備え、
前記発光基板は、ベース基板と、該ベース基板の前記光拡散板に対向する側の面に格子状に配列された複数の発光ダイオードとを有することを特徴とする表示装置。
【請求項12】
前記光拡散板と前記ベース基板との間の離間距離は、0.5mm以上10.0mm以下である請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散板、表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置として、例えば、画像表示部としての液晶パネルと、この液晶パネルの背面側に配置された、バックライトとしての面発光光源とを備える液晶表示装置が知られている。
【0003】
この液晶表示装置では、面発光光源は、ランプボックス(筐体)と、ランプボックス内に格子状(マトリクス状)に配置された複数の発光素子とを備えており、液晶表示装置は、さらに、面発光光源の前面側、すなわち、面発光光源と液晶パネルとの間に配置された、透明樹脂材料(ベース樹脂)中に拡散材としての光拡散微粒子を分散させた光拡散板を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
かかる構成の液晶表示装置において、近年、省エネおよび発光素子ひいては液晶表示装置の小型化等の観点から、発光素子として発光ダイオード(LED)を用いることが提案されている。
【0005】
しかしながら、LEDは、発光する光を、前方に対して集中的に発する指向性が、白色電球や蛍光灯と比較して、極めて高い発光素子である。さらに、液晶表示装置の小型化の観点から、LEDは、光拡散板との離間距離が小さい位置に配置されることが求められる。
【0006】
そのため、面発光光源が備える発光素子としてLEDを使用すると、光拡散板において、光拡散性が十分に得られないことに起因して、LEDが透けて見える発光素子(LED)の点在性が発生し、その結果、液晶表示装置により表示される画像に表示ムラが生じると言う問題があった。また、LEDの点在性を抑制することを目的に、光拡散板の光透過性を低下させることも考えられるが、この場合、光拡散板を介した面発光光源からの光量が十分に得られず、液晶表示装置における画像の表示特性の低下を招くと言う問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた光拡散性および光透過性の両立が図られた光拡散板、かかる光拡散板を備え、信頼性に優れた表示装置および電子機器を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)~(13)に記載の本発明により達成される。
(1) 入射された光を拡散させる平板状をなす光拡散板であって、
ベース樹脂と、該ベース樹脂に分散された拡散材とを含有し、
一方の面のISO 25178に準拠して求められる表面粗さをSa1[μm]とし、他方の面の前記表面粗さをSa2[μm]としたとき、
前記表面粗さSa1は、0.5μm以上12.0μm以下であり、かつ、Sa1/Sa2は、1.0超5.0以下であることを特徴とする光拡散板。
【0010】
(2) JIS K 7361に準拠して求められる全光線透過率は、80.0%以上である上記(1)に記載の光拡散板。
【0011】
(3) JIS K 7105に準拠して求められるヘイズ値は、86.0%以上である上記(1)または(2)に記載の光拡散板。
【0012】
(4) 前記ベース樹脂と前記拡散材との屈折率差は、0.14以上0.30以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光拡散板。
【0013】
(5) 前記拡散材は、その含有量が前記ベース樹脂100重量部に対して0.01重量部以上5.0重量部以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光拡散板。
【0014】
(6) 前記ベース樹脂は、ポリカーボネート系樹脂である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光拡散板。
【0015】
(7) 前記拡散材は、粒子状をなし、その平均粒径が0.5μm以上10.0μm以下である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光拡散板。
【0016】
(8) 前記拡散材は、ポリオルガノシロキサン骨格を有するシリコーン系材料である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光拡散板。
【0017】
(9) 当該光拡散板は、その平均厚さが0.05mm以上0.30mm以下である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の光拡散板。
【0018】
(10) 10mm間隔で四方に並べた輝度が8500cdのLED光源から垂直方向に20mmの位置に、当該光拡散板を設置し、さらに前記垂直方向に300mm離れた位置に輝度測定カメラを設置し、その後、当該光拡散板における4cm四方の領域を64×64に分割された分割領域に細分化し、前記細分化された各前記分割領域における輝度を測定したとき、前記輝度の平均値が5000cd以上であり、かつ、前記輝度の標準偏差σが1000cd以下である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の光拡散板。
【0019】
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の光拡散板と、該光拡散板に対向配置された発光基板とを備え、
前記発光基板は、ベース基板と、該ベース基板の前記光拡散板に対向する側の面に格子状に配列された複数の発光ダイオードとを有することを特徴とする表示装置。
【0020】
(12) 前記光拡散板と前記ベース基板との間の離間距離は、0.5mm以上10.0mm以下である上記(11)に記載の表示装置。
【0021】
(13) 上記(11)または(12)に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ベース樹脂と拡散材とを含有する、入射された光を拡散させる平板状をなす光拡散板において、一方の面のISO 25178に準拠して求められる表面粗さをSa1[μm]とし、他方の面の前記表面粗さをSa2[μm]としたとき、表面粗さSa1は、0.5μm以上12.0μm以下であり、かつ、Sa1/Sa2は、1.0超5.0以下であることを満足している。かかる関係を満足して、表面粗さSa1、Sa2の大きさを異なるものとすることで、この光拡散板を、優れた光拡散性および光透過性の両立が図られたものとし得る。よって、かかる光拡散板を備える表示装置において、光学素子としてLEDを用いたとしても、光拡散板を介してLEDが透けて見えてしまう点在性を的確に抑制または防止しつつ、画像を優れた表示特性で表示することができる。その結果、この表示装置を備える電子機器は、優れた信頼性を有するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の表示装置が適用された液晶表示装置の実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の表示装置としての液晶表示装置を、自動車の表示パネルに適用した実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の光拡散板、表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本発明の光拡散板は、入射された光を拡散させるために平板状をなす光透過性を有する板材であり、ベース樹脂と、該ベース樹脂に分散された拡散材とを含有し、一方の面のISO 25178に準拠して求められる表面粗さをSa1[μm]とし、他方の面の前記表面粗さをSa2[μm]としたとき、表面粗さSa1は、0.5μm以上12.0μm以下であり、かつ、Sa1/Sa2は、1.0超5.0以下であることを特徴とする。
【0026】
以上の通り、本発明の光拡散板によれば、ベース樹脂と拡散材とを含有する、入射された光を拡散させる平板状をなす光拡散板において、表面粗さSa1は、0.5μm以上12.0μm以下であり、かつ、Sa1/Sa2は、1.0超5.0以下であることを満足している。かかる関係を満足して、一方の面側の表面粗さSa1と、他方の面側の表面粗さSa2との大きさが異なっていることで、この光拡散板を、優れた光拡散性および光透過性の両立が図られたものとし得る。よって、かかる光拡散板を備える液晶表示装置のような表示装置において、光学素子としてLEDを用いたとしても、光拡散板を介してLEDが透けて見えてしまう点在性を的確に抑制または防止しつつ、画像を優れた表示特性で表示することができる。したがって、この表示装置を備える電子機器を、優れた信頼性を有するものとし得る。
【0027】
以下では、まず、本発明の光拡散板を説明するのに先立って、本発明の光拡散板を備える液晶表示装置、すなわち、本発明の表示装置が適用された液晶表示装置について説明する。
【0028】
<液晶表示装置>
図1は、本発明の表示装置が適用された液晶表示装置の実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、
図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、使用する図面(
図1および
図2)は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0029】
液晶表示装置100は、
図1に示すように、画像表示部を構成する液晶パネル20と、液晶パネル20の表示面の反対側(背面側)に配置された、バックライトとしての面発光光源30と、液晶パネル20と面発光光源30との間に配置された光拡散板10とを有している直下型液晶表示装置(直下型液晶ディスプレイ)である。
【0030】
液晶パネル20は、液晶セル21と、液晶セル21の前面(上面)および背面(下面)にそれぞれ配置された2つの偏光板22とを有している、透過型の画像表示部を構成している。ここで、液晶セル21は、例えば、一対の透明電極と、これら透明電極間に封入された、液晶化合物を含む封入体とを有する構成をなし、さらに、前面側の透明電極に対応して配置されたカラーフィルターを有することで、カラー画像が表示可能となっている。
【0031】
面発光光源30は、平板状をなす基材(ベース基板)と、この基材の縁部から立設する壁部とを有することで、前面側(上面側)に開口する開口部が形成されたランプボックス31(筐体)、および、前記基材の前面(上面)に格子状に配列されることでランプボックス31内に配置された複数の発光素子32を備えている。
この面発光光源30において、発光素子32は、発光ダイオードで構成されている。
【0032】
また、光拡散板10は、前記開口部を塞ぐようにランプボックス31に固定されることで、ランプボックス31と液晶パネル20との間に配置されている。これにより、発光素子32により発光された光が、光拡散板10を通過(透過)される際に拡散され、その結果、拡散された光が液晶パネル20に対して照射される。
【0033】
以上のような構成の液晶表示装置100において、光拡散板10が本発明の光拡散板で構成されている。すなわち、光拡散板10は、入射された光を拡散させるために平板状をなす光透過性を有する板材であり、ベース樹脂と拡散材とを含有し、一方の面のISO 25178に準拠して求められる表面粗さをSa1[μm]とし、他方の面の前記表面粗さをSa2[μm]としたとき、表面粗さSa1は、0.5μm以上12.0μm以下であり、かつ、Sa1/Sa2は、1.0超5.0以下であることを特徴とする。そのため、この光拡散板10は、優れた光拡散性および光透過性の両立が図られたものとなる。
【0034】
そのため、液晶表示装置100において、発光素子32としてLEDを用い、さらに、ランプボックス31が備える基材(ベース基板)と光拡散板10との間の離間距離を0.5mm以上10.0mm以下のように、液晶表示装置100の小型化のために、近く設定したとしても、液晶表示装置100を、光拡散板10を介して発光素子32(LED)が透けて見えてしまう点在性が的確に抑制または防止され、画像を優れた表示特性で表示し得るものとし得る。
【0035】
以下、この光拡散板10は、その構成材料として、ベース樹脂と、このベース樹脂に分散され、光拡散板10に光拡散性を付与する拡散材とを含有する。
【0036】
(ベース樹脂)
ベース樹脂は、光拡散板10に、その主材料として含まれ、これにより、光拡散板10を、平板状(基板状)に成型するためのものである。
【0037】
このベース樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等の透明性を備えるものが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂の硬化物は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富むため、ベース樹脂にポリカーボネート系樹脂を用いることで、光拡散板10のベース樹脂における透明性や光拡散板10の耐衝撃性を向上させることができる。また、ポリカーボネート系樹脂は、その比重が1.2程度であり、樹脂材料のなかでも軽いものに分類されることから、ベース樹脂としてポリカーボネート系樹脂を用いることで、光拡散板10の軽量化を図ることができる。
【0038】
このポリカーボネート系樹脂としては、各種のものを用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、光拡散板10の強度をより優れたものとし得る。
【0039】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0040】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0041】
【化1】
(式(1)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0042】
なお、前記式(1)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、光拡散板10は、さらに優れた強度を発揮するものとなる。
【0044】
(拡散材)
拡散材は、光拡散板10において、発光素子32(面発光光源30)からの光が光拡散板10を介して液晶パネル20に照射される際に、この光を透過させつつ、拡散させるために含まれる。
【0045】
この拡散材は、粒子状(球状)をなす微粒子で構成され、その屈折率が、ベース樹脂の屈折率に対して差異を有するものであり、その構成材料としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムカリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化チタン、フッ化カルシウム、フッ化カリウムのような無機系材料、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂のような有機系材料(樹脂系材料)が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、ポリオルガノシロキサン骨格を有するシリコーン系樹脂であることが好ましい。構成材料としてシリコーン系樹脂(シリコーン系材料)を用いることで、拡散材の屈折率とベース樹脂の屈折率とを確実に差異を有するもの、すなわち、拡散材とベース樹脂とを確実に屈折率差を有するものとし得る。なお、拡散材等の屈折率は、光源としてナトリウムD線(589nm)を用いて、25℃の条件でアッベ屈折計により測定することができる。
【0046】
シリコーン系樹脂は、R3SiO0.5(Rは一価の有機基)で表される1官能性シロキサン単位(M単位)、R2SiO1.0で表される2官能性シロキサン単位(D単位)、RSiO1.5で表される3官能性シロキサン単位(T単位)、およびSiO2.0で表される4官能性シロキサン単位(Q単位)のうちの少なくとも1種(ただし、Q単位単独で構成されるものを除く)を主成分とするポリオルガノシロキサン骨格を有するものである。そして、これらM単位、D単位、T単位およびQ単位の組み合わせを、適宜変更することで、所望の屈折率を有する拡散材を形成することができる。なお、拡散材には、それぞれ、主成分とする単位の他に、シリコーン系樹脂とは異なる他の有機系材料や、無機系材料が含まれていてもよい。
【0047】
さらに、各単位中における有機基Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基のような炭素原子数が1~20のアルキル基、シクロヘキシル基のような環状アルキル基、フェニル基、キシリル基のようなアリール基、フェニルエチル基のようなアラルキル基等が挙げられる。
【0048】
また、ベース樹脂と拡散材との屈折率差は、0.14以上0.30以下であることが好ましく、ともに0.14以上0.20以下であることがより好ましい。
【0049】
さらに、拡散材の平均粒径は、好ましくは0.5μm以上10.0μm以下、より好ましくは1.0μm以上7.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以上4.5μm以下、特に好ましくは2.0μm以上3.0μm以下に設定される。
【0050】
また、光拡散板10における拡散材の含有量は、ベース樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上5.0重量部以下、より好ましくは0.05重量部以上3.0重量部以下に設定される。
【0051】
ベース樹脂と拡散材との屈折率差、拡散材の平均粒径、および、光拡散板10における拡散材の含有量を、それぞれ、前記範囲内に設定することで、光拡散板10を、優れた光拡散性を備えるものとすることができる。
【0052】
(蛍光増白剤)
また、光拡散板10は、ベース樹脂と拡散材との他に、さらに、蛍光増白剤を含むことが好ましい。
【0053】
光拡散板10を、蛍光増白剤が含まれる構成とすることで、光拡散板10により、面発光光源30からの光を液晶パネル20側に拡散・照射させる際に、白色系の光をより確実に出射させることができる。
【0054】
具体的には、光拡散板10に蛍光増白剤が含まれることで、光拡散板10は、そのxy色度図において、0.28≦x≦0.40、かつ、0.28≦y≦0.40の関係を満足する光を出射するものであることが好ましく、0.30≦x≦0.36、かつ、0.30≦y≦0.36の関係を満足する光を出射するものであることがより好ましい。これにより、光拡散板10を、面発光光源30からの光を液晶パネル20側に、白色系の光を出射するものであると言うことができる。
【0055】
この蛍光増白剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン型、クマリン型、ベンゾトリアゾール型、ヒドロキシフェニルトリアジン型およびベンゾオキザゾリルチオフェン型のものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、ベンゾオキザゾリルチオフェン型またはクマリン型であることが好ましい。これにより、xy色度図において、xおよびyを、比較的容易に前記関係を満足するものとし得る。
【0056】
また、光拡散板10における蛍光増白剤の含有量は、前記ベース樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上0.01重量部以下、より好ましくは0.003重量部以上0.007重量部以下に設定される。これにより、xy色度図において、xおよびyを、容易に前記関係を満足するものとし得る。
【0057】
さらに、光拡散板10は、必要に応じて、上述した、ベース樹脂、拡散材および蛍光増白剤の他に、例えば、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0058】
以上のような構成材料で構成される光拡散板10は、その全体形状が平板状をなし、一方の面のISO 25178に準拠して求められる表面粗さをSa1[μm]とし、他方の面の前記表面粗さをSa2[μm]としたとき、表面粗さSa1は、0.5μm以上12.0μm以下であり、かつ、Sa1/Sa2は、1.0超5.0以下であることを満足している。かかる関係を満足して、一方の面側の表面粗さSa1と、他方の面側の表面粗さSa2との大きさが異なっていることで、光拡散板10に入射した入射光の拡散性と、光拡散板10を出射する出射光の拡散性とが異なるものとなる。そのため、この光拡散板10を、優れた光拡散性および光透過性の両立が図られたものとし得る。
【0059】
したがって、液晶表示装置100において、発光素子32としてLEDを用い、さらに、ランプボックス31が備える基材(ベース基板)と光拡散板10との間の離間距離を0.5mm以上10.0mm以下のように、液晶表示装置100の小型化のために、近く設定したとしても、液晶表示装置100を、光拡散板10を介して発光素子32(LED)が透けて見えてしまう点在性が的確に抑制または防止され、画像を優れた表示特性で表示し得るものとし得る。
【0060】
ここで、一方の面の表面粗さSa1は、0.5μm以上12.0μm以下であればよいが、1.0μm以上5.0μm以下であるのが好ましい。
【0061】
また、他方の面の表面粗さSa2は、0.2μm以上5.0μm以下であるのが好ましく、0.5μm以上1.0μm以下であるのがより好ましい。
【0062】
さらに、Sa1/Sa2は、1.0超5.0以下であればよいが、2.0以上4.0以下であるのがより好ましい。
【0063】
表面粗さSa1、Sa2およびSa1/Sa2が、それぞれ、前記範囲内に設定され、さらには、前述した、拡散材とベース樹脂との屈折率差、また、拡散材の平均粒径および拡散材の含有量が、それぞれ、前記範囲内に設定されることにより、光拡散板10を、より確実に光拡散性および光透過性の両立が図られたものとし得る。
【0064】
また、一方の面の最大高さSz1は、2.0μm以上50.0μm以下であるのが好ましく、5.0μm以上30.0μm以下であるのがより好ましい。
【0065】
また、他方の面の最大高さSz2は、2.0μm以上50.0μm以下であるのが好ましく、5.0μm以上30.0μm以下であるのがより好ましい。
【0066】
最大高さSz1、Sz2が前記範囲内に設定されることにより、光拡散板10を、より確実に光拡散性および光透過性の両立が図られたものとし得る。
【0067】
なお、
図1に示す液晶表示装置100において、光拡散板10の一方の面と他方の面とは、一方の面が液晶パネル20側に位置し、他方の面が面発光光源30側に位置する場合と、他方の面が液晶パネル20側に位置し、一方の面が面発光光源30側に位置する場合とがあるが、これらのうちのいずれの場合であっても、前述した表面粗さSa1、Sa2およびSa1/Sa2等を設定することにより得られる効果を、同一もしくはほぼ同様の程度で得ることができる。
【0068】
また、光拡散板10は、その平均厚さが好ましくは0.05mm以上0.30mm以下程度、好ましくは0.10mm以上0.20mm以下程度に設定される。これにより、光拡散板10を、優れた光拡散性および光透過性の両立が図られたものとすることができる。
【0069】
さらに、この光拡散板10のJIS K 7361に準拠して求められる全光線透過率は、80.0%以上であるのが好ましく、85.0%以上であるのがより好ましい。
【0070】
また、この光拡散板10のJIS K 7105に準拠して求められるヘイズ値は、86.0%以上であるのが好ましく、90.0%以上であるのがより好ましい。
【0071】
全光線透過率およびヘイズ値が前記範囲内に設定されることにより、光拡散板10を、より確実に、優れた光拡散性および光透過性の両立が図られたものであると言うことができる。
【0072】
また、10mm間隔で四方に並べた輝度が8500cdのLED光源から垂直方向に20mmの位置に、光拡散板10を設置し、さらに前記垂直方向に300mm離れた位置に輝度測定カメラを設置し、その後、光拡散板10における4cm四方の領域を64×64に分割された分割領域に細分化し、この細分化された各分割領域における輝度を測定したとき、輝度の平均値が4500cd以上であり、かつ、輝度の標準偏差σが1000cd以下であることが好ましく、輝度の平均値が5000cd以上であり、かつ、輝度の標準偏差σが500cd以下であることがより好ましい。これにより、光拡散板10を、より確実に、優れた光拡散性および光透過性の両立が図られたものであると言うことができる。
【0073】
<電子機器>
次に、上述した液晶表示装置100を備える電子機器(本発明の電子機器)として、自動車の表示パネルに適用した場合を一例に説明する。
【0074】
図2は、本発明の表示装置としての液晶表示装置を、自動車の表示パネルに適用した実施形態を示す側面図である。なお、以下の説明では、
図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0075】
図2に示すように、スピードメーター、タコメーター、水温計、燃料計等を表示する表示パネル150(本発明の電子機器)は、液晶表示装置100を備え、自動車200に搭載して用いられる。この表示パネル150は、自動車200が有するダッシュボード201の上部に内蔵されており、これにより、液晶表示装置100により表示された自動車の速度等の情報が画像として、運転手Hに認識される。
【0076】
なお、本発明の電子機器は、
図2の自動車の表示パネルの他にも、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、テレビ、ビデオカメラ、電子手帳、医療機器(例えば血圧計、血糖計、内視鏡用表示装置)、タッチパネルを備えた機器(例えば自動券売機)のような表示部を備える電子機器に適用することができる。
【0077】
以上、本発明の光拡散板、表示装置および電子機器について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0078】
例えば、前記実施形態では、本発明の光拡散板を、液晶表示装置が備える液晶ディスプレイ用拡散板に適用する場合について説明したが、本発明の光拡散板は、照明用のカバー、窓ガラス、採光用の屋根部材等にも適用し得る。
【実施例0079】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0080】
1.原材料の準備
まず、各実施例および各比較例の光拡散板の作製に使用した原料は以下の通りである。
【0081】
<ベース樹脂>
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック社製、「ユーピロン」)
【0082】
<拡散材>
シリコーン微粒子1(モメンティブ社製、「TSR9000」、屈折率:1.42、粒子径:2.2μm)
シリコーン微粒子2(モメンティブ社製、「TSR9500」、屈折率:1.42、粒子径:5.0μm)
【0083】
2.光拡散板の製造
(実施例1)
[1]まず、光拡散板を形成するにあたり、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(100重量部)と、シリコーン微粒子1(0.100重量部)とを混練することで樹脂組成物を調製した。
【0084】
[2]次に、調製した樹脂組成物を押し出し機に収納し、その後、押し出し機から、光拡散板を押し出すことで、Tダイから層状とされた、溶融状態とされた光拡散板が押し出され、この層状の光拡散板を冷却して成形することで、平均厚さ0.2mmの実施例1の光拡散板を得た。ここで、溶融状態とされた光拡散板(溶融樹脂)を冷却する際に、任意の凹凸形状を持つ2本の金属ロールで搬送することで、所望の凹凸形状を光拡散板の表面に賦形することができる。
【0085】
なお、形成された光拡散板について、JIS B 0601に準拠して、一方の面および他方の面における表面粗さSa1、Sa2、および最大高さSz1、Sz2を測定したところ、Sa1=2.50μm、Sa2=0.74μm、Sz1=19.7μm、Sz2=8.9μmであった。
【0086】
(実施例2~実施例8、比較例1~比較例5)
前記工程[1]において調製する光拡散板に含まれる各構成材料の種類および含有量を、それぞれ、表1に示すように変更し、さらに、前記工程[2]において、前記表面粗さSa1、Sa2、および前記最大高さSz1、Sz2が、表1に示すような大きさになるように光拡散板を成形したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2~実施例8、比較例1~比較例5の光拡散板を得た。
【0087】
3.評価
各実施例および各比較例の光拡散板を、以下の方法で評価した。
【0088】
<1>光拡散板の全光線透過率
各実施例および各比較例の光拡散板について、それぞれ、ヘーズメーター(日本電色工業社製、「NDH4000」)を用いて、JIS K 7361に準拠して、光拡散板の全光線透過率[%]を測定した。
【0089】
<2>光拡散板のヘイズ値
各実施例および各比較例の光拡散板について、それぞれ、ヘーズメーター(日本電色工業社製、「NDH4000」)を用いて、JIS K 7105に準拠してヘイズ値[%]を測定した。
【0090】
<3>光拡散板の光透過性および光拡散性
まず、各実施例および各比較例の光拡散板について、それぞれ、10mm間隔で四方に並べた輝度が8500cdのLED光源から垂直方向に20mmの位置に光拡散板を設置し、さらに300mm離れた位置に輝度測定カメラ(ハイランド社製、「RISA-COLOR/ONE」)を設置して、光拡散板における4cm四方の領域を64×64に分割された分割領域に細分化し、この細分化された各分割領域における輝度を測定し、その平均値および標準偏差σを、それぞれ、光拡散板の明るさおよび光拡散板の均一性を示すパラメータとして求めた。そして、得られた平均値および標準偏差σに基づいて、それぞれ、次のように評価した。
【0091】
<光拡散板の明るさ (輝度の平均値)>
輝度の平均値が
◎: 5500cd以上である。
○: 5000cd以上5500cd未満である。
△: 4500cd以上5000cd未満である。
×: 4500cd未満である。
【0092】
<光拡散板の均一性 (輝度の標準偏差σ)>
輝度の標準偏差σが
◎: 500cd以下である。
○: 500cd超800cd以下である。
△: 800cd超1000cd以下である。
×: 1000cd超である。
【0093】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の光拡散板における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0094】
【0095】
表1に示したように、各実施例の光拡散板では、表面粗さSa1が0.5μm以上12.0μm以下であり、かつ、Sa1/Sa2が1.0超5.0以下であることを満足しており、これにより、各実施例の光拡散板は、優れた光透過性と、優れた光拡散性との両立が図られた結果を示した。
【0096】
これに対して、各比較例における光拡散板では、表面粗さSa1が0.5μm以上12.0μm以下であり、かつ、Sa1/Sa2が1.0超5.0以下であることを満足しておらず、これに起因して各比較例の光拡散板では、優れた光透過性と、優れた光拡散性との両立が図られた結果を得ることができなかった。