(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137669
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】顔料分散剤、顔料分散剤の製造方法、顔料分散液、及び紫外線硬化型インク
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20230922BHJP
C09D 11/326 20140101ALI20230922BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20230922BHJP
【FI】
C09D17/00
C09D11/326
C09K23/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043967
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 博之
(72)【発明者】
【氏名】岩田 稜平
(72)【発明者】
【氏名】村上 賀一
【テーマコード(参考)】
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
4J037CC23
4J037CC25
4J037DD24
4J037EE43
4J037FF23
4J039AE05
4J039AE07
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA07
4J039DA02
4J039EA04
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】顔料の分散性が良好であるとともに、低粘度かつ保存安定性に優れた顔料分散液を調製することが可能な顔料分散剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される構造を有する顔料分散剤である。
(R
1、R
2、及びR
3は、ペンタデシル基等、R
4、R
5、及びR
6は、相互に独立に、H、式(2)で表される基、又は式(3)で表される基、R
4、R
5、及びR
6のうちの1以上は式(2)で表される基で、nは1~10の数を示す。*は結合位置を示し、R
7はエチレン基又はメチルエチレン基、mは14~68の数を示す。Aはアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ピリジニルアルキル基、イミダゾリルアルキル基、ピリジニル基、又はイミダゾリル基を示し、R
8はH又はアルキル基を示す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有する顔料分散剤。
(前記一般式(1)中、R
1、R
2、及びR
3は、相互に独立に、ペンタデシル基、7-ペンタデセニル基、7,10-ペンタデカジエニル基、又は7,10,14-ペンタデカトリエニル基を示し、R
4、R
5、及びR
6は、相互に独立に、水素原子、下記一般式(2)で表される基、又は下記一般式(3)で表される基を示すとともに、R
4、R
5、及びR
6のうちの1以上は下記一般式(2)で表される基であり、nは1~10の数を示す)
(前記一般式(2)中、*は結合位置を示し、R
7はエチレン基又はメチルエチレン基を示し、mは14~68の数を示す)
(前記一般式(3)中、*は結合位置を示し、Aはアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ピリジニルアルキル基、イミダゾリルアルキル基、ピリジニル基、又はイミダゾリル基を示し、R
8は水素原子又はアルキル基を示す)
【請求項2】
請求項1に記載の顔料分散剤の製造方法であって、
下記一般式(4)で表されるポリエポキシ化合物に、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルモノアミンを反応させる反応工程を有する顔料分散剤の製造方法。
(前記一般式(4)中、R
1、R
2、及びR
3は、相互に独立に、ペンタデシル基、7-ペンタデセニル基、7,10-ペンタデカジエニル基、又は7,10,14-ペンタデカトリエニル基を示し、R
9、R
10、及びR
11は、相互に独立に、水素原子又は2,3-エポキシプロピル基を示すとともに、R
9、R
10、及びR
11のうちの1以上は2,3-エポキシプロピル基であり、nは1~10の数を示す)
【請求項3】
前記一般式(4)で表される化合物が、カルダノールのホルマリン縮合物である請求項2に記載の顔料分散剤の製造方法。
【請求項4】
前記反応工程が、前記ポリエポキシ化合物に、第一級有機アミン、第二級有機アミン、及びポリアミン化合物からなる群より選択される少なくとも一種のアミン化合物をさらに反応させる工程であり、
前記ポリアミン化合物が、一級アミノ基又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有する化合物である請求項2又は3の記載の顔料分散剤の製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミン化合物が、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、4-アミノピリジン、4-(2-アミノエチル)ピリジン、及び1-(3-アミノプロピル)イミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種である請求項4に記載の顔料分散剤の製造方法。
【請求項6】
顔料、溶剤、及び前記顔料を前記溶剤中に分散させる顔料分散剤を含有する顔料分散液であって、
前記顔料分散剤が、請求項1に記載の顔料分散剤である顔料分散液。
【請求項7】
カルボキシ基、リン酸基、及びスルホン酸基からなる群より選択される少なくとも一種の酸性基を有する顔料誘導体をさらに含有する請求項6に記載の顔料分散液。
【請求項8】
前記溶剤が、1以上の不飽和結合を有する紫外線・電子線硬化性モノマー、又は紫外線・電子線硬化性オリゴマーである請求項6又は7に記載の顔料分散液。
【請求項9】
請求項8に記載の顔料分散液を含有するインクジェット用の紫外線硬化型インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散剤、顔料分散剤の製造方法、顔料分散液、及び紫外線硬化型インクに関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、インク、及びコーティング剤等の一般的な塗工液は有機溶剤を含有する。このため、これらの塗工液の塗工後には有機溶剤が揮発するので、環境への負荷が比較的高い。そこで、有機溶剤を実質的に含有しない環境にやさしい塗工液として、水を主な液媒体とする水性のインクや塗工液、着色された樹脂粉末による粉体塗装等が提案されている。さらに、有機溶剤に代えて、ビニル系、エポキシ系、及びオキセタン系のモノマーを用いた塗工液等も提案されている。このような塗工液は、塗布後に熱や光を付与してモノマーを重合してポリマーを形成させるタイプの塗工液であることから、揮発成分を実質的に含有しない紫外線硬化型インクや電子線硬化型インク等の活性エネルギー線硬化型のインクとして用いられている。
【0003】
近年、包装材や容器等の基材に色鮮やかな画像をオンデマンドで記録しうる、顔料を着色剤として含有する紫外線硬化型のインクジェットインク(UVIJインク)が提案されている。UVIJインクは、高速印刷に適した吐出性を示すとともに、顔料の分散安定性に優れていること、さらには、より低粘度であることも要求される。すなわち、顔料が微分散されているとともに、顔料の分散安定性に優れたUVIJインク用の顔料分散液が求められている。
【0004】
顔料分散液を調製する際には、通常、顔料分散剤が使用される。顔料分散剤としては、界面活性剤等の低分子量の分散剤や、ポリマー型の分散剤等が使用されている。なかでも、顔料の微分散性及び分散安定性の観点から、ビニル系モノマーを重合して得られるビニル系ポリマー等のポリマー型の分散剤が頻繁に使用されている。なお、このようなビニル系ポリマー等の顔料分散剤は、通常、有機溶剤で希釈された溶液の状態で用いられている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-157077号公報
【特許文献2】特開2013-177580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的なポリマー型の顔料分散剤は、上述のように、有機溶剤に溶解した状態で用いられている。したがって、このような顔料分散剤を用いて調製されるUVIJインクにも有機溶剤が含まれることになるため、「揮発成分を実質的に含有せず、環境に優しい」といったUVIJインクの優位性が損なわれやすい。そこで、揮発成分を実質的に含有せず、固形分100%で取り扱い性に優れたポリマー系の顔料分散剤の開発が要望されていた。
【0007】
揮発成分を実質的に含有しないポリマー系の顔料分散剤は、例えば、溶液重合等で製造したポリマーの有機溶剤溶液から有機溶剤を除去すること等によって製造することができる。しかし、有機溶剤を除去して得られる固形分(ポリマー)の取り扱い性が必ずしも良好ではないとともに、製造工程が煩雑になるといった課題があった。さらに、得られるポリマーの顔料分散剤としての機能は必ずしも良好であるとはいえず、さらなる改良の余地があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、顔料の分散性が良好であるとともに、低粘度かつ保存安定性に優れた顔料分散液を調製することが可能な顔料分散剤を提供することにある。
【0009】
また、本発明の課題とするところは、上記の顔料分散剤の簡便な製造方法、及び上記の顔料分散剤を用いた、顔料の分散性が良好であるとともに、低粘度かつ保存安定性に優れた顔料分散液を提供することにある。さらに、本発明の課題とするところは、上記の顔料分散剤を用いた、顔料の分散性が良好であるとともに、低粘度かつ保存安定性に優れた、揮発性の有機化合物を実質的に含有しないインクジェット用の紫外線硬化型インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す顔料分散剤が提供される。
[1]下記一般式(1)で表される構造を有する顔料分散剤。
【0011】
(前記一般式(1)中、R
1、R
2、及びR
3は、相互に独立に、ペンタデシル基、7-ペンタデセニル基、7,10-ペンタデカジエニル基、又は7,10,14-ペンタデカトリエニル基を示し、R
4、R
5、及びR
6は、相互に独立に、水素原子、下記一般式(2)で表される基、又は下記一般式(3)で表される基を示すとともに、R
4、R
5、及びR
6のうちの1以上は下記一般式(2)で表される基であり、nは1~10の数を示す)
【0012】
(前記一般式(2)中、*は結合位置を示し、R
7はエチレン基又はメチルエチレン基を示し、mは14~68の数を示す)
【0013】
(前記一般式(3)中、*は結合位置を示し、Aはアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ピリジニルアルキル基、イミダゾリルアルキル基、ピリジニル基、又はイミダゾリル基を示し、R
8は水素原子又はアルキル基を示す)
【0014】
また、本発明によれば、以下に示す顔料分散剤の製造方法が提供される。
[2]前記[1]に記載の顔料分散剤の製造方法であって、下記一般式(4)で表されるポリエポキシ化合物に、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルモノアミンを反応させる反応工程を有する顔料分散剤の製造方法。
【0015】
(前記一般式(4)中、R
1、R
2、及びR
3は、相互に独立に、ペンタデシル基、7-ペンタデセニル基、7,10-ペンタデカジエニル基、又は7,10,14-ペンタデカトリエニル基を示し、R
9、R
10、及びR
11は、相互に独立に、水素原子又は2,3-エポキシプロピル基を示すとともに、R
9、R
10、及びR
11のうちの1以上は2,3-エポキシプロピル基であり、nは1~10の数を示す)
【0016】
[3]前記一般式(4)で表される化合物が、カルダノールのホルマリン縮合物である前記[2]に記載の顔料分散剤の製造方法。
[4]前記反応工程が、前記ポリエポキシ化合物に、第一級有機アミン、第二級有機アミン、及びポリアミン化合物からなる群より選択される少なくとも一種のアミン化合物をさらに反応させる工程であり、前記ポリアミン化合物が、一級アミノ基又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有する化合物である前記[2]又は[3]の記載の顔料分散剤の製造方法。
[5]前記ポリアミン化合物が、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、4-アミノピリジン、4-(2-アミノエチル)ピリジン、及び1-(3-アミノプロピル)イミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種である前記[4]に記載の顔料分散剤の製造方法。
【0017】
さらに、本発明によれば、以下に示す顔料分散液が提供される。
[6]顔料、溶剤、及び前記顔料を前記溶剤中に分散させる顔料分散剤を含有する顔料分散液であって、前記顔料分散剤が、前記[1]に記載の顔料分散剤である顔料分散液。
[7]カルボキシ基、リン酸基、及びスルホン酸基からなる群より選択される少なくとも一種の酸性基を有する顔料誘導体をさらに含有する前記[6]に記載の顔料分散液。
[8]前記溶剤が、1以上の不飽和結合を有する紫外線・電子線硬化性モノマー、又は紫外線・電子線硬化性オリゴマーである前記[6]又は[7]に記載の顔料分散液。
【0018】
また、本発明によれば、以下に示す紫外線硬化型インクが提供される。
[9]前記[8]に記載の顔料分散液を含有するインクジェット用の紫外線硬化型インク。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、顔料の分散性が良好であるとともに、低粘度かつ保存安定性に優れた顔料分散液を調製することが可能な顔料分散剤を提供することができる。
【0020】
また、本発明によれば、上記の顔料分散剤の簡便な製造方法、及び上記の顔料分散剤を用いた、顔料の分散性が良好であるとともに、低粘度かつ保存安定性に優れた顔料分散液を提供することができる。さらに、本発明によれば、上記の顔料分散剤を用いた、顔料の分散性が良好であるとともに、低粘度かつ保存安定性に優れた、揮発性の有機化合物を実質的に含有しないインクジェット用の紫外線硬化型インクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<顔料分散剤>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の顔料分散剤の一実施形態は、下記一般式(1)で表される化合物(ポリマー)である。以下、本実施形態の顔料分散剤の詳細について説明する。
【0022】
(前記一般式(1)中、R
1、R
2、及びR
3は、相互に独立に、ペンタデシル基、7-ペンタデセニル基、7,10-ペンタデカジエニル基、又は7,10,14-ペンタデカトリエニル基を示し、R
4、R
5、及びR
6は、相互に独立に、水素原子、下記一般式(2)で表される基、又は下記一般式(3)で表される基を示すとともに、R
4、R
5、及びR
6のうちの1以上は下記一般式(2)で表される基であり、nは1~10の数を示す)
【0023】
(前記一般式(2)中、*は結合位置を示し、R
7はエチレン基又はメチルエチレン基を示し、mは14~68の数を示す)
【0024】
(前記一般式(3)中、*は結合位置を示し、Aはアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ピリジニルアルキル基、イミダゾリルアルキル基、ピリジニル基、又はイミダゾリル基を示し、R
8は水素原子又はアルキル基を示す)
【0025】
一般式(1)中、芳香環とR1、R2、及びR3で表される長鎖の炭化水素基は、顔料への親和性を付与する部分である。また、不飽和結合を有する基である7-ペンタデセニル基、7,10-ペンタデカジエニル基、及び7,10,14-ペンタデカトリエニル基は、いずれもラジカルを生成しうる基である。このため、これらの基を有する本実施形態の顔料分散剤を紫外線硬化型のインクに用いることで、これらの基と、インク中の硬化成分とを反応させることができる。
【0026】
一般式(2)で表される基は、水酸基及びアミノ基を有する。また、「(R7O)mCH3」で表されるメトキシポリアルキレングリコール鎖としては、メトキシポリエチレングリコール鎖、メトキシポリプロピレングリコール鎖、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダム構造鎖、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジブロック構造鎖、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコールトリブロック構造鎖、及びメトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコールトリブロック構造鎖等を挙げることができる。
【0027】
一般式(2)中、mは14~68であり、「(R7O)mCH3」で表されるメトキシポリアルキレングリコール鎖の分子量は、好ましくは1,000~3,000である。原料の入手容易性及び市場性等の観点から、「(R7O)mCH3」で表されるメトキシポリアルキレングリコール鎖は、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダム構造鎖であることが好ましく、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)のモル比は、EO/PO=6~58/3~29の範囲であることが好ましい。一般式(1)中、R4、R5、及びR6のうちの1以上は一般式(2)で表される基であり、繰り返し単位の半分以上に一般式(2)で表される基が結合していることが好ましく、R4、R5、及びR6のすべてが一般式(2)で表される基であってもよい。
【0028】
一般式(3)中、R8で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、及びヘキシル基等を挙げることができる。一般式(3)中、Aで表されるジアルキルアミノアルキル基としては、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、ジブチルアミノプロピル基、及びジブチルアミノブチル基等を挙げることができる。なかでも、ジメチルアミノプロピル基、ジエチルアミノプロピル基、ジブチルアミノプロピル基が、塩基性が高く、反応性が良好であるために好ましい。
【0029】
一般式(3)中、Aで表されるピリジニルアルキル基としては、2-ピリジニルメチル基、4-ピリジニルメチル基、1-(2-ピリジニル)エチル基、2-(2-ピリジニル)エチル基、1-(4-ピリジニル)エチル基、及び2-(4-ピリジニル)エチル基等を挙げることができる。なかでも、4位に塩基性窒素を有する4-ピリジニル基、2-(4-ピリジニル)エチル基が好ましい。一般式(3)中、Aで表されるイミダゾリルアルキル基としては、2-イミダゾリルエチル基、3-イミダゾリルプロピル基、及び4-イミダゾリルブチル基等を挙げることができる。なかでも、原料の入手容易性等の観点から、3-イミダゾリルプロピル基が好ましい。
【0030】
一般式(1)中、nは1~10の数を示し、2~4の数であることが好ましい。nが0であると、主鎖の吸着部分が小さいために顔料から脱離してしまい、顔料の分散安定性が低下する。一方、nが10超であると分子量が大きすぎるので、得られる顔料分散液の粘度が過剰に高くなる。
【0031】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される顔料分散剤のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、1,000以上20,000以下であることが好ましく、3,000以上10,000以下であることがさらに好ましい。
【0032】
<顔料分散剤の製造方法>
上述の顔料分散剤は、以下に示す方法によって製造することができる。
すなわち、本発明の顔料分散剤の製造方法の一実施形態は、上述の顔料分散剤を製造する方法であり、下記一般式(4)で表されるポリエポキシ化合物に、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルモノアミンを反応させる反応工程を有する。
【0033】
(前記一般式(4)中、R
1、R
2、及びR
3は、相互に独立に、ペンタデシル基、7-ペンタデセニル基、7,10-ペンタデカジエニル基、又は7,10,14-ペンタデカトリエニル基を示し、R
9、R
10、及びR
11は、相互に独立に、水素原子又は2,3-エポキシプロピル基を示すとともに、R
9、R
10、及びR
11のうちの1以上は2,3-エポキシプロピル基であり、nは1~10の数を示す)
【0034】
一般式(4)中のR1、R2、及びR3は、前述の一般式(1)中のR1、R2、及びR3と同義である。一般式(4)中、R9、R10、及びR11のうちの1以上は2,3-エポキシプロピル基(以下、単に「エポキシ基」とも記す)であり、好ましくは2以上、繰り返し単位n+2以下である。
【0035】
一般式(4)で表されるポリエポキシ化合物としては、カルダノールのホルマリン縮合物を用いることが好ましい。カルダノールは、長鎖炭化水素基を持った芳香環を有する。カルダノールは植物由来の原材料であるため、カーボンニュートラルの観点から、二酸化炭素の低減に寄与する原材料である。カルダノールのホルマリン縮合物の市販品としては、例えば、Caedolite社の商品名「Cardolite NC-547」等を挙げることができる。
【0036】
反応工程では、ポリエポキシ化合物にポリアルキレングリコールモノメチルエーテルモノアミンを反応させる。ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルモノアミンとしては、メトキシポリエチレングリコールモノアミン、メトキシポリプロピレングリコールモノアミン、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダム構造モノアミン、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジブロック構造モノアミン、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコールトリブロック構造モノアミン、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコールトリブロック構造モノアミン等を挙げることができる。なかでも、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダム構造モノアミンが好ましい。ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルモノアミンの市販品としては、ハンツマン社製の商品名「ジェファーミンM-」シリーズ、クラリアント社製の商品名「ゲナミン」等を挙げることができる。
【0037】
ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルモノアミンは、ポリエポキシ化合物中のすべてのエポキシ基と反応させることができる。エポキシ基と、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルモノアミン中のアミノ基とを反応させることで、エポキシ基が開環して水酸基とアミノ基が形成され、目的とする構造を有する顔料分散剤を得ることができる。ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルモノアミンは、ポリエポキシ化合物中の一部のエポキシ基を残すように反応させてもよい。そして、残余のエポキシ基にアミン化合物をさらに反応させてアミノ基を導入することも好ましい。ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルモノアミンは、ポリエポキシ化合物中のエポキシ基の50モル%以上と反応させることが好ましい。
【0038】
残余のエポキシ基に反応させるアミン化合物としては、第一級有機アミン、第二級有機アミン、及びポリアミン化合物からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。すなわち、反応工程は、ポリエポキシ化合物に、第一級有機アミン、第二級有機アミン、及びポリアミン化合物からなる群より選択される少なくとも一種のアミン化合物をさらに反応させる工程であることが好ましい。なお、上記のポリアミン化合物は、一級アミノ基又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有する化合物であることが好ましい。
【0039】
第一級有機アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、及びヒドロキシエチルアミン等を挙げることができる。第二級有機アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、及びジヒドロキシエチルアミン等を挙げることができる。
【0040】
ポリアミン化合物のうち、一級アミノ基及び三級アミノ基を有する化合物としては、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、4-アミノピリジン、4-(2-アミノエチル)ピリジン、及び1-(3-アミノプロピル)イミダゾール等を挙げることができる。また、ポリアミン化合物のうち、二級アミノ基及び三級アミノ基を有する化合物としては、ジエチルアミノエチルメチルアミン及びビス(ジメチルアミノエチル)アミン等を挙げることができる。
【0041】
ポリアミン化合物は、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、4-アミノピリジン、4-(2-アミノエチル)ピリジン、及び1-(3-アミノプロピル)イミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0042】
ポリエポキシ化合物にポリアルキレングリコールモノメチルエーテルモノアミンを反応させ、必要に応じてアミン化合物をさらに反応させることで、目的とする顔料分散剤を得ることができる。反応工程では、例えば、エポキシ基やアミノ基との反応性を有しない有機溶剤の存在下、好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上に加熱して、エポキシ基とアミノ基を反応させる。その後、必要に応じて有機溶剤を留去させることで、固形分約100%の顔料分散剤を得ることができる。ポリエポキシ化合物は、通常、室温~40℃の条件下で粘度が比較的低い液体である。このため、溶剤を使用せず(溶剤非存在下)、加熱してそのままバルクで反応させることが好ましい。
【0043】
反応の進行状況は、赤外吸収スペクトル(IR)を測定し、エポキシ基に由来する910cm-1付近の吸収の消失及び水酸基に由来する3,200cm-1付近の吸収の生成を確認することによって把握することができる。また、従来公知の方法にしたがってエポキシ当量を測定し、エポキシ基の消失を確認することによっても反応の進行状況を把握することができる。さらに、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって分子量の増大を確認したり、従来公知の方法にしたがってアミン価を測定したりしても、反応の進行状況を把握することができる。なお、反応が完全に進行していなくても、特定構造を有する本実施形態の顔料分散剤が生成していれば、顔料を分散させるための分散剤として用いることができる。
【0044】
<顔料分散液>
本発明の顔料分散液の一実施形態は、顔料、溶剤、及び顔料を溶剤中に分散させる顔料分散剤を含有する。そして、この顔料分散剤が、前述の顔料分散剤である。
【0045】
顔料としては、従来公知の顔料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、97、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、175、180、181、185、191;C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、71、73;C.I.ピグメントレッド4、5、9、23、48、49、52、53、57、97、112、122、123、144、146、147、149、150、166、168、170、176、177、180、184、185、192、202、207、214、215、216、217、220、221、223、224、226、227、228、238、240、242、254、255、264、269、272;C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50;C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64;C.I.ピグメントグリーン7、36、58;C.I.ピグメントブラック7;C.I.ピグメントホワイト6;等を挙げることができる。
【0046】
これらの顔料を混合して用いる場合には、粉末顔料を混合する方法、ペースト状の顔料を混合する方法、及び顔料化の際に混合して固溶体とする方法のいずれであってもよい。また、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、シリカ、及びマイカ等のフィラーを用いることもできる。さらに、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノリボン、カーボンフラーレン、炭素系量子ドット、及びナノダイヤモンド等を用いることもできる。
【0047】
インクジェット用のインクに好適な顔料としては、発色性、分散性、及び耐候性等の観点から、C.I.ピグメントイエロー74、83、109、128、139、150、151、154、155、180、181、185;C.I.ピグメントレッド122、170、176、177、185、269;C.I.ピグメントバイオレット19、23;C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、15:6;C.I.ピグメントブラック7;C.I.ピグメントホワイト6;等を挙げることができる。
【0048】
顔料は、未処理の顔料でもあってもよく、その表面に官能基が導入された自己分散性顔料であってもよく、カップリング剤や活性剤等の表面処理剤やポリマー等で表面処理された又はカプセル化された処理顔料であってもよい。また、隠蔽力を必要とする場合以外は、有機系の微粒子顔料を用いることが好ましい。さらに、高精彩で透明性が必要とされる場合には、ソルトミリング等の湿式粉砕又は乾式粉砕で微細化した顔料を用いることが好ましい。印刷時のノズル詰まりの抑制を考慮して、1.0μm超の粒子径の顔料を除去しておくことが好ましい。有機顔料の平均粒子径は0.2μm以下であることが好ましく、無機顔料の平均粒子径は0.4μm以下であることが好ましい。
【0049】
(顔料誘導体)
本実施形態の顔料分散液は、カルボキシ基、リン酸基、及びスルホン酸基からなる群より選択される少なくとも一種の酸性基を有する顔料誘導体をさらに含有することが好ましい。酸性基を有する顔料誘導体は、顔料の表面に吸着することで顔料の表面に酸性基を付与する。そして、付与された酸性基と、顔料分散剤のアミノ基とがイオン結合することで、顔料分散剤をより強固に顔料の表面に吸着させて脱離を防止する。したがって、酸性基を有する顔料分散剤をさらに含有させることで、顔料の凝集や沈降を抑制し、より分散安定性に優れた顔料分散液とすることができる。
【0050】
顔料誘導体としては、従来公知の顔料誘導体を用いることができる。具体的には、カルボキシ基、リン酸基、及びスルホン酸基の少なくともいずれかの酸性基が有機色素骨格に結合した化合物を顔料誘導体として用いることができる。酸性基は、スルホン酸が好ましい。有機色素骨格としては、アゾ色素骨格、アントラキノン色素骨格、キナクリドン色素骨格、フタロシアニン色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、及びイソインドリン色素骨格等を挙げることができる。有機色素骨格に1個の酸性基が結合していることが好ましく、2個以上の酸性基が結合していてもよい。
【0051】
アゾ色素骨格を有する顔料誘導体としては、下記式(A)で表される化合物を挙げることができる。アントラキノン色素骨格を有する顔料誘導体としては、下記式(B)で表される化合物を挙げることができる。キナクリドン色素骨格を有する顔料誘導体としては、下記式(C)及び(D)で表される化合物を挙げることができる。フタロシアニン色素骨格を有する顔料誘導体としては、下記式(E)で表される化合物を挙げることができる。ジケトピロロピロール色素骨格を有する顔料誘導体としては、下記式(F)で表される化合物を挙げることができる。イソインドリン色素骨格を有する顔料誘導体としては、下記式(G)で表される化合物を挙げることができる。
【0052】
【0053】
【0054】
顔料誘導体は、顔料分散液を製造する際に配合してもよく、顔料の表面に予め処理しておいてもよい。顔料誘導体によって顔料を表面処理する方法としては、例えば、合成後の顔料に添加してろ過する方法;酸性基をナトリウム塩とした顔料誘導体と顔料を混合した後、酸性にして顔料誘導体を水不溶化させて処理する方法;顔料を微粒子化する際に一緒にミリングする方法;等を挙げることができる。顔料100質量部に対する顔料誘導体の量は、0.5~20質量部とすることが好ましく、1~10質量部とすることがさらに好ましい。
【0055】
(溶剤)
溶剤は、顔料を分散させる分散媒体として用いられる有機溶媒等の液体である。有機溶媒としては、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ドデカノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸ジメチル等のエステル系溶媒;ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等のアミド系溶媒;テトラメチルウレア、ジメチルイミダゾリジノン等のウレア系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジエーテル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルモノエーテルエステル系溶媒;1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等のイオン液体;等を挙げることができる。また、必要に応じて水を溶剤として用いることもできる。
【0056】
顔料分散液が、紫外線硬化型インクを調製するために用いられる場合には、溶剤は、1以上の不飽和結合を有する紫外線・電子線硬化性モノマー、又は紫外線・電子線硬化性オリゴマーであることが好ましい。これらの溶剤は紫外線等の照射によって硬化するので、有機溶剤等の揮発成分を実質的に含有しない。このため、これらの溶剤を用いることで、環境にやさしいインクを調製しうる顔料分散液とすることができる。
【0057】
紫外線・電子線硬化性モノマー及びオリゴマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマー、光硬化性オリゴマー、光硬化性ポリマー等の硬化成分を挙げることができる。単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、アダマンチルメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、無水フタル酸と2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加物、アクリロイルモルホリン等のラジカル重合性モノマー等を挙げることができる。
【0058】
多官能モノマー及び光硬化性オリゴマーとしては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2以上)ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=2以上)ジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジアクリレート、ビス(2-(メタ)アクリロキシエチル)-ヒドロキシエチル-イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジエポキシと(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシポリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルジイソシアネートとポリ(n=6-15)テトラメチレングリコールのウレタン化反応物に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート等のウレタンポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンとコハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート、トリメチロ-ルプロパンと、コハク酸、エチレングリコール、及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート等のポリエステルポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0059】
光硬化性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、及びポリエポキシ樹脂等のポリマーの末端や側鎖に、ラジカル重合性基である(メタ)アクリロイルオキシ基を複数導入したポリマー等を挙げることができる。さらに、カルボキシ基等が導入された、アルカリ現像性を有する光硬化性ポリマーを用いることもできる。
【0060】
(添加剤)
顔料分散液には、各種の添加剤を含有させることができる。添加剤の具体例としては、ニトロキサイド化合物等の光安定剤、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤、染料、蛍光増白剤、塗膜の物性や塗布性を改善するためのレベリング剤、消泡剤、滑剤、増粘剤、帯電防止剤、界面活性剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、赤外線吸収剤、接着促進剤、防汚剤、撥水剤、硬化性触媒、シリカ等の無機フィラー、及び金属微粒子等を挙げることができる。
【0061】
また、顔料分散液には光重合開始剤を含有させてもよい。光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド等のリン酸化合物;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1;カンファーキノン;等を挙げることができる。
【0062】
顔料分散液は、従来公知の方法にしたがって調製することができる。例えば、溶剤を分散媒体とし、顔料を顔料分散剤によって溶剤中に分散させることで、本実施形態の顔料分散液を調製することができる。顔料分散剤中の有機顔料の含有量は、1~30質量%とすることが好ましく、10~25質量%とすることがさらに好ましい。また、顔料分散液中の無機顔料含有量は、5~70質量%とすることが好ましく、30~50質量%とすることがさらに好ましい。
【0063】
まず、ペイントシェイカー、ボールミル、アトライター、サンドミル、横型メディアミル、コロイドミル、及びロールミル等を使用して顔料、顔料分散剤、及び溶剤の混合物を処理し、所定の粒子径の顔料を微分散させるとともに、所定の液色度に調整した分散液を得る。その後、遠心分離機やフィルターを使用して得られた分散液から粗大粒子を除去することが好ましい。次いで、必要に応じて各種の添加剤を添加することで、顔料分散液を調製することができる。
【0064】
顔料分散液の粘度は、顔料の性質や塗布方法に適した粘度に調整すればよい。有機顔料を用いた顔料分散液の25℃における粘度は、2~100mPa・sであることが好ましい。また、無機顔料を用いた顔料分散液の25℃における粘度は、5~200mPa・sであることが好ましい。
【0065】
本実施形態の顔料分散液は、塗料、グラビアインク、コーティング剤、及び文具等の用途における顔料分散液として有用である。また、一般式(2)中、「(R7O)mCH3」で表されるメトキシポリアルキレングリコール鎖中のエチレンオキサイド(EO)の割合を50モル%以上とすると、メトキシポリアルキレングリコール鎖の水溶性が向上するので、水性インクにも用いることができる。
【0066】
<紫外線硬化型インク>
前述の顔料分散剤は、好適には揮発成分を実質的に含有しない。このため、本実施形態の顔料分散剤は、揮発成分を実質的に含有せず、ほとんどの成分が塗膜となる紫外線硬化型インクや電子線硬化型インクを構成するための材料として有用である。また、本実施形態の顔料分散剤を用いると、顔料を媒体中に安定して微分散させることができるとともに、得られる分散液の保存安定性も高い。このため、本実施形態の顔料分散剤及び顔料分散液は、インクジェット用の紫外線硬化型インクに用いられる材料として好適である。すなわち、本実施形態の紫外線硬化型インクは、紫外線・電子線硬化性モノマーや紫外線・電子線硬化性オリゴマーを溶剤として用いた前述の顔料分散液を含有する、揮発成分を実質的に含有しないインクジェット用のインクである。
【0067】
本実施形態の紫外線硬化型インクは、顔料分散液、必要に応じて用いられる前述の光重合開始剤、紫外線・電子線硬化性モノマーや紫外線・電子線硬化性オリゴマー、及び各種の添加剤等を含有する。各成分を混合して十分に撹拌した後、必要に応じてフィルターでろ過すること等によって、紫外線硬化型インクを得ることができる。紫外線硬化型インク中の光重合開始剤の含有量は、3~12質量%であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が3質量%未満であると、硬化不良となる場合がある。一方、光重合開始剤の含有量が12質量%超であると、過剰な光重合開始剤が残存したり、光重合開始剤によって画像が着色したりする場合がある。
【0068】
本実施形態の紫外線硬化型インクを用いれば、一般的なインクジェット記録方法によって、高彩度であるとともに、発色性、密着性、及び耐摩擦性等の耐久性に優れた画像(印刷皮膜)を様々な基材に記録する(印刷する)ことができる。基材としては、紙、印画紙、写真光沢紙、プラスチックフィルム、布地、セラミックス、及び金属等を挙げることができる。
【実施例0069】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0070】
<顔料分散剤の製造>
(実施例1)
反応装置に、カルダノールノボラック型ポリエポキシ樹脂(NC-547)75部、片末端アミノ化ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノメチルエーテル共重合体(商品名「ジェファーミンM2005」、ハンツマン社製、PPG/PEG=29/6(モル比)、実測アミン価:26.1mgKOH/g、アミン価から算出した分子量:2,151)(M2005)215部(0.1mol)を入れた。カルダノールノボラック型ポリエポキシ樹脂としては、商品名「Cardlite NC-547」(Cardlite社製、エポキシ等量:750g/mol)を用いた。カルダノールは、フェノール骨格の4位にペンタデシル基、7-ペンタデセニル基、7,10-ペンタデカジエニル基、及び7,10,14-ペンタデカトリエニル基が結合した構造を有する。窒素バブリングさせながら80℃まで加温して8時間反応し、顔料分散剤NCA-1を得た。反応液の一部をサンプリングして赤外吸収スペクトル(IR)を測定し、エポキシ基の吸収(904cm-1)がほぼ完全に消失したことと、及び水酸基の吸収(3,500cm-1)が増加したことを確認した。テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した顔料分散剤NCA-1のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は2,700であり、分散度(PDI=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は6.13であった。原料として用いたNC-547及びM2005に由来するピークはほとんど認められなかった。0.1mol/Lイソプロパノール性塩酸溶液を用いる電位差自動滴定装置により測定した顔料分散剤NCA-1のアミン価は、20.9mgKOH/gであった。180℃で恒量に達した加熱残分の固形分(水分計を使用して測定した測定値)は、約100%であった。
【0071】
(実施例2及び3)
表1に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、顔料分散剤NCA-2及び3を得た。表1中の略号の意味を以下に示す。
・M1000:片末端アミノ化ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノメチルエーテル共重合体、商品名「ジェファーミンM1000」、ハンツマン社製
・M41:片末端アミノ化ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノメチルエーテル共重合体、商品名「ゲナミンM41/2000」、クラリアント社製
【0072】
【0073】
(実施例4)
反応装置に、NC-547 75部、M41 158.2部(0.074mol)、及び3-ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)2.67部(0.026mol)を入れた。窒素バブリングさせながら80℃まで加温して8時間反応し、顔料分散剤NCA-4を得た。反応液の一部をサンプリングしてIRを測定し、エポキシ基の吸収がほぼ完全に消失したことと、及び水酸基の吸収が増加したことを確認した。GPCにより測定した顔料分散剤NCA-4のMnは2,100であり、PDIは4.09であり、原料として用いたNC-547及びM41に由来するピークはほとんど認められなかった。また、顔料分散剤NCA-4のアミン価は31.3mgKOH/gであり、固形分は99.3%であった。
【0074】
(実施例5及び6)
表2に示す配合としたこと以外は、前述の実施例4と同様にして、顔料分散剤NCA-5及び6を得た。表2中の略号の意味を以下に示す。
・AEP:2-(2-アミノエチル)ピリジン
・API:1-(3-アミノプロピル)イミダゾール
【0075】
【0076】
(比較製造例1)
反応装置に、フェノールノボラック型ポリエポキシ樹脂(商品名「Araldite EPN 1180」、ハンツマン社製、エポキシ等量:176g/mol)(EPN1180)17.6部、及びM41 214部(0.1mol)を入れた。窒素バブリングさせながら、80℃まで加温して8時間反応し、顔料分散剤H-1を得た。反応液の一部をサンプリングしてIRを測定し、エポキシ基の吸収がほぼ完全に消失したことと、及び水酸基の吸収が増加したことを確認した。GPCにより測定した顔料分散剤H-1のMnは1,800であり、PDIは4.22であり、原料として用いたEPN1180及びM41に由来するピークはほとんど認められなかった。また、顔料分散剤H-1のアミン価は24.5mgKOH/gであり、固形分は99.5%であった。
【0077】
(比較製造例2)
(a)アクリル型ポリエポキシ化合物の合成
反応装置に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)98.2部を入れ仕込み、窒素バブリングさせながら65℃まで加温した後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フィルム和光純薬社製)(V65)3.4部を添加した。グリシジルメタクリレート 51.2部(0.36mol)、スチレン 37.5部(0.36mol)、及び1-チオグリセロール(商品名「ブレンマーTGL」、日油社製)4.3部(0.04mol)を混合して調製した溶液を1時間かけて滴下した。65℃で1時間重合した後、V65 0.9部を添加した。さらに、65℃で2時間重合した後、V65 0.9部を添加して4時間重合して、アクリル型ポリエポキシ化合物のPGMAc溶液を得た。IRを測定したところ、エポキシ基の吸収を確認することができた。GPCにより測定したアクリル型ポリエポキシ化合物のMnは2,800であり、PDIは2.49であった。また、エポキシ等量は273g/molであり、固形分は50.1%であった。
【0078】
(b)顔料分散剤の製造
反応装置に、アクリル型ポリエポキシ化合物のPGMAc溶液54.5部、4-メトキシフェノール0.1部、及びM41 214部(0.1mol)を入れた。窒素バブリングさせながら、80℃まで加温して8時間反応し、顔料分散剤H-2を得た。反応液の一部をサンプリングしてIRを測定し、エポキシ基の吸収がほぼ完全に消失したことと、及び水酸基の吸収が増加したことを確認した。GPCにより測定した顔料分散剤H-2のMnは3,500であり、PDIは3.05であり、原料として用いたアクリル型ポリエポキシ化合物及びM41に由来するピークはほとんど認められなかった。また、顔料分散剤H-2のアミン価は23.8mgKOH/gであり、固形分は89.8%であった。
【0079】
<紫外線硬化型インク用の顔料分散液の製造>
(実施例7~12、比較例1及び2)
表3に示す種類及び量の各成分を配合した。ディゾルバーで2時間撹拌した後、横型メディア分散機を使用して分散処理し、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、及びブラック(Bk)色の紫外線硬化型インク用の顔料分散液を製造した。表3中、「シナジスト1」、「シナジスト2」、及び「シナジスト3」は、それぞれ、下記構造式(I)~(III)で表される酸性基を有する顔料誘導体である。表3中、「PY-150」はレバスクリンエロー(ランクセス社製)であり、「PR-122」及び「PB-15:4」は、いずれも大日精化工業社製の顔料である。表3中、「PEA」はアクリル酸2-フェニルエチルであり、カーボンブラックとしては、商品名「MB-1000」(三菱化学社製)を用いた。
【0080】
【0081】
【0082】
<顔料分散液の評価>
製造した顔料分散液の粘度(初期の粘度)及び顔料の粒子径(初期の粒子径(メジアン径;D50))を測定した。また、顔料分散液を70℃で1週間保存した後の粘度(保存後の粘度)及び顔料の粒子径(保存後の粒子径(メジアン径;D50))を測定した。測定結果を表4に示す。顔料の粒子径は、動的光散乱式の粒度分布測定装置(商品名「SZ-100」、堀場製作所社製)を使用して測定した。
【0083】
【0084】
表4に示すように、比較例2で製造したM色顔料分散液-3はある程度良好な分散性を示すものであったが、揮発成分であるPGMAcを含有しており、揮発成分を実質的に含有しない紫外線硬化型インク用の顔料分散液としては不適当である。
【0085】
<紫外線硬化型インクの調製>
(実施例13~18、比較例3)
表5に示す種類及び量(部)の各成分を用いて、インクジェット用の紫外線硬化型インク(顔料インク)を調製した。具体的には、表5に示す種類及び量の各成分を混合し、ディゾルバーを使用して十分に撹拌した後、ポアサイズ10μmのメンブランフィルターでろ過した。5μmのメンブランフィルターでさらにろ過して、顔料インクを得た。表5中、「ルシリンTPO」、「イルガキュア819」、及び「イルガキュア127」は、いずれも、BASF社製の光重合開始剤の商品名である。
【0086】
【0087】
<紫外線硬化型インクの評価>
調製した紫外線硬化型インク(顔料インク)の粘度(初期の粘度)及び顔料の粒子径(初期の粒子径(メジアン径;D50))を測定した。また、顔料インクを70℃で1週間保存した後の粘度(保存後の粘度)及び顔料の粒子径(保存後の粒子径(メジアン径;D50))を測定した。測定結果を表6に示す。
【0088】
【0089】
<インクの使用例>
(使用例1~6)
実施例13~18で調製した各色の顔料インクをインクカートリッジにそれぞれ充填し、インクジェットプリンタ(商品名「EB100」、コニカミノルタ社製)に装着した。このインクジェットプリンタを使用し、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに1時間連続してベタ画像を印刷した。その結果、いずれの顔料インクを用いた場合にもヘッドが詰まることなく、スムーズに印刷することができた。また、筋やヨレ等の不具合も発生せず、吐出安定性が良好であった。
本発明の顔料分散剤は、環境に配慮した紫外線硬化型インク用の材料として有用であるとともに、環境にやさしい印刷用インクの顔料分散液としても有用であり、食品包装、電子部品包装、及びラベル等の印刷に用いられるインク用の材料として好適である。