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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137691
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】畜肉様加工食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20230922BHJP
   A23J 3/22 20060101ALI20230922BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23J3/22
A23J3/16 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043997
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 桃子
(72)【発明者】
【氏名】中谷 伸
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AD20
4B042AD36
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK13
4B042AK20
4B042AP02
(57)【要約】
【課題】
メチルセルロースと水を含む連続相と、組織状植物性蛋白素材から成る分散相とを組み合わせた畜肉様加工食品において、肉粒感の不足を解消するために連続相の割合を制限すると、生地の成型が困難となる。この問題は、卵白を使用しないメチルセルロースの生地に於いて、特に顕著である。
そこで本発明では、連続相の割合を制限しても成型可能な生地を調製し、これを用いた肉粒感に富んだ、動物性原料を使用しない畜肉様加工食品を得ることを課題とした。
【解決手段】
水、油脂、およびメチルセルロースを含む水中油型乳化物、並びに組織状植物性蛋白素材を必須な構成とする畜肉様加工食品に於いて、乳化剤を含んだ、水分が62質量%以下の生地を用いることで、生地が良好に成型できる。これを加熱することで、肉粒感に富んだ畜肉様加工食品を製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、油脂、およびメチルセルロースを含む水中油型乳化物、並びに組織状植物性蛋白素材を必須な構成とする畜肉様加工食品の製造に於いて、水分62質量%以下で且つ乳化剤を含んだ生地を加熱する、動物性原料を使用しない畜肉様加工食品の製造方法。
【請求項2】
乳化剤のHLBが1~17である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
乳化剤がシュガーエステルである、請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成後の肉粒感を向上させた、畜肉様加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
植物性食市場、特にベジバーグ等の畜肉様加工食品が国内外で著しく伸長している。これら畜肉様加工食品は、大豆等の植物性蛋白質を主原料にエクストルーダー等で組織化した組織状植物性蛋白素材を用いて畜肉様に加工したものだが、多くの製品では動物性素材を一部に使用しているため、完全菜食主義者、いわゆるヴィーガン等が食すことができない。
特に乾燥卵白の置換は重要であり、メチルセルロースを使用している例がある。特許文献1や特許文献2では、メチルセルロースとグルテンの生地に組織状植物性蛋白素材を組み合わせた、畜肉様加工食品を作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-21163号公報
【特許文献2】特開2018-29565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メチルセルロースと水を含む連続相と、組織状植物性蛋白素材とを組み合わせた、畜肉様加工食品について、その組織は天然の肉加工品とは隔たりがあり、特に肉粒感の不足が指摘されている。この改善策として、組織状植物性蛋白素材である分散相と、つなぎと呼ばれる連続相の混合比が重要と考えられるが、分散相の割合を増やすべく連続相の割合を制限すると、生地の成型が困難となる。この問題は、卵白を使用しないメチルセルロースの生地に於いて、特に顕著である。
そこで本発明では、連続相の割合を制限しても成型可能な、卵白をはじめとした動物性原料を使用しない生地を調製し、これを用いた肉粒感に富んだ畜肉様加工食品を得ることを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、生地中の水分を62質量%以下に制限することにより肉粒感が顕著に向上すること、および、水分が制限されることで生地成型が困難になるところ、乳化剤の添加で著しく改善されることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は
(1)水、油脂、およびメチルセルロースを含む水中油型乳化物、並びに組織状植物性蛋白素材を必須な構成とする畜肉様加工食品の製造に於いて、水分62質量%以下で且つ乳化剤を含んだ生地を加熱する、動物性原料を使用しない畜肉様加工食品の製造方法。
(2)乳化剤のHLBが1~17である、(1)に記載の製造方法。
(3)乳化剤がシュガーエステルである、(1)または(2)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メチルセルロースと水を含む連続相と、組織状植物性蛋白素材を用いた畜肉様加工食品の製造に於いて、生地水分を従来より制限して調製することで、動物性原料を使用しない、肉粒感を向上させた畜肉様加工食品が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(畜肉様加工食品)
本発明における畜肉様加工食品とは、通常は種々のひき肉を使用することが一般的な食品において、該ひき肉を組織状植物性蛋白素材で代替したものを言う。これらを、植物ベースまたはplant-basedと表現する場合もある。
通常は種々のひき肉を使用することが一般的な食品としては、ハンバーグ,パティ,ミートボール,ナゲット,つくね,ハム,ソーセージ,サラミ,フランクフルト,アメリカンドック,餃子,焼売,春巻き,肉饅頭,小龍包,メンチカツ,ミートパイ,ラビオリ,ラザニア,ミートローフ,ロールキャベツ,ピーマンの肉詰めを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
(水中油型乳化物)
本発明では、水、油脂、およびメチルセルロースを含む、水中油型乳化物を必須とする。
本発明に用いるメチルセルロースは、天然に広く分布するセルロースを原料とし、メトキシ化したもので、通常はセルロースを苛性ソーダで処理した後、塩化メチル、エーテル化剤と反応させて製造される。また、加熱により可逆的にゲル化力が増加する性質を持つ。本発明では、メチルセルロースは、メチルセルロース単体や、他のゲル化剤との併用により使用することができる。他のゲル化剤には、ジェランガム,カラギーナン,アルギン酸,寒天,カードラン,こんにゃく粉,澱粉等が挙げられる。
本発明に用いる油脂には、各種の油脂を使用することができる。具体的には、大豆油,菜種油,米油,コーン油,パーム油,及びこれらの分別油,硬化油,エステル交換油をあげることができ、これらを適宜選択し、使用できる。しかし、本発明の目的が畜肉様加工食品であることから、体温において融解状態である油脂を使用することが望ましい。またこれら油脂は水中油型乳化物だけではなく、後述する生地に直接添加することもできる。生地に直接添加する油脂は、20℃に於いて保形性を有した固形脂であることがこのましい。
【0010】
(乳化剤)
本発明には乳化剤が必須である。乳化剤を添加することで、後述する62質量%以下の水分の生地であっても、成型性を維持することが可能となる。ここで使用する乳化剤は、乳化機能のある物質を広く含むものであるが、HLBが1~17のものが好ましく、15以下のものがより好ましく、11以下のものが更に好ましい。また2以上のものがより好ましい。このHLBを有する乳化剤としては、モノグリセライド、ジグリセライド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、シュガーエステル、レシチン、リゾレシチン等が例示できる。中でも、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、シュガーエステルが好ましく、シュガーエステルが最も好ましい。
【0011】
(澱粉)
本発明には、物性の維持のために種々の澱粉類を用いることができる。タピオカ、馬鈴薯、甘藷等の芋類、コーン、小麦、大麦等の穀類、エンドウ、緑豆等の豆類等の種々の原料の澱粉を、そのまま、あるいは物理処理または化学処理により加工した澱粉として用いることができる。中でもα化澱粉や低温糊化澱粉が有効である。
α化澱粉は、糊化させた澱粉を瞬時に乾燥したもので、水に溶解した未加熱状態で機能を発揮する。本発明に用いると成型時の結着性を向上させる効果がある。
低温糊化澱粉とは、冷水にも可溶ないわゆるα化澱粉とは異なり、室温より高い、30~50℃、好ましくは35~45℃、更に好ましくは35~40℃で糊化を開始する澱粉である。例えば、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉等が挙げられ、具体的にはTATE & LYLE INGREDIENTS AMERICAS LLC社製のLO-TEMP453-S等がある。育種分野では糊化開始温度が60℃程度でも低温糊化澱粉の表現を行うことがあるが、本発明においては前述した範囲の糊化温度を有する澱粉を低温糊化澱粉と定義する。低温糊化澱粉の添加により、食感を悪化させることなく、焼成時の離水を抑止することができる。
【0012】
(食物繊維)
本発明は食物繊維を併用することもできる。ここに用いる食物繊維とは、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がある。不溶性食物繊維とは、水または温水に溶解しない繊維であって植物に由来するものが好ましい。具体的には、オート麦ファイバー,小麦ファイバー,シトラスファイバー等をあげることができるが、膨潤性の低い繊維が好ましく、竹繊維が最も好ましい。これら不溶性食物繊維は肉様の繊維感を付与する効果を有する。
水溶性食物繊維とは、水または温水に溶解する繊維であって、植物または微生物に由来するものが好ましい。具体的には、ペクチン,水溶性大豆多糖類,プルラン,キサンタンガム等をあげることができる。これら食物繊維を添加することで、低温糊化澱粉等と合わせて離水抑制効果を更に強めるとともに、焼成後の食感を締めることができる。
【0013】
(組織状植物性蛋白素材)
本発明に用いる組織状植物性蛋白素材とは、大豆,脱脂大豆,分離大豆たん白,濃縮大豆たん白,小麦,小麦たん白,エンドウ,エンドウたん白,ヒヨコ豆,マイコプロテイン等に例示される植物性の原材料を組織化物形状に加工したものが挙げられる。例えば大豆の場合、大豆,脱脂大豆,分離大豆たん白等に必要であれば他の原料を合わせて配合し、一軸又は二軸押出成形機(エクストルーダー)等を用いて高温高圧下に組織化した、粒状,フレーク状,スライス肉状などの形状のものがあげられる。エンドウ,緑豆,ヒヨコ豆も、丸豆やその分画品を原料に同様な処理を行うことで、組織化された素材を得ることができる。
【0014】
本発明には大豆を主原料とする組織状大豆蛋白素材が好適であり、所望の商品形態に応じ、任意の形状や大きさの製品を適宜選択し使用することができる。なお、水戻し済で流通する製品も存在するが、本発明には乾燥品(水分10質量%以下)を用いることが望ましい。また、豆腐を圧搾することで組織化した大豆素材も、本発明に好適である。
組織状植物性蛋白素材としては、小麦たん白を加工して調製した、いわゆるグルテンチップ等も、本発明に使用することができる。
【0015】
(他の素材)
各種の調味料、野菜類、ゲル化剤、粉末状大豆たん白等の植物性蛋白素材等も適宜使用することもできる。但し、卵白や畜肉等の動物性原料は含まないものとする。
【0016】
(生地)
前述の乳化物に、必要により澱粉、食物繊維、油脂、調味料等を加えたものを連続相、いわゆる「つなぎ」とし、ここに分散相として組織状植物性蛋白素材を加えたものを生地とする。また、タマネギ等の野菜類を添加することもできる。この生地を加熱することで、ゲル化剤であるメチルセルロースにより組織状植物性蛋白素材が結着され、畜肉様加工食品を調製することができる。これら畜肉様加工食品は、卵白を用いた畜肉加工食品に似た食感を有するものである。
尚、生地の調製に際しては、乳化物を元に連続相である「つなぎ」を調製し、そこに分散相である組織状蛋白素材を加える等の順番には限定されず、例えば分散相を「つなぎ」を調製する前後に、複数回に分けて加えることもできるし、最初から全ての原料を同時に混合攪拌することで生地を調製することも可能である。
【0017】
(生地水分)
本発明に於いては連続相の量が重要であるが、これは生地中の水分として考えることができる。上述した油脂、メチルセルロース、組織状植物性蛋白素材、各種添加物および加水量について、それぞれの質量および組成から全生地中の水分量を算出する。肉粒感を増すために連続相である「つなぎ」の配合量を減らす試みの中で、この生地中の水分量を62質量%以下に抑えると生地成型が困難だったところ、本発明では同条件であっても生地成型が行えるところが特徴となる。生地中の水分量は生地の成型性の差が明確になる61質量%以下が好ましく、60質量%以下が更に好ましい。また水分が極端に低いと成型が困難な場合があり、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、55質量%以上であることが最も好ましい。
以下に畜肉様加工食品を調製する方法を例示する。例示であって、この方法に依らなければ、求める物性を有した畜肉様加工食品が得られないわけではない。
【0018】
(工程ア)(乳化物調製)
油脂、メチルセルロースおよび水を混合し水中油型の乳化物を調製する。この際、ミキサー,フードプロセッサー,サイレントカッター,ハンドブレンダー,ステファンミキサー等を用いてシェアをかけると、乳化粒子が細かくなり好ましい。予め油脂とメチルセルロースを混合し、十分に分散させた後に水を加えることで、更に良好な乳化物を得ることができる。
【0019】
メチルセルロースはゲルとなる量が必要であるが、乳化物中の2~8質量%が例示できる。油脂量は乳化物中の8~40質量%が好ましく10~30質量%が更に好ましい。
【0020】
水は他の添加物の量によっても変化するが、乳化物中の55~88質量%が好ましく、55~83質量%が更に好ましい。但し、後述する生地中の水分の調整も考慮する必要がある。また、メチルセルロースの溶解度は低温で上昇することから、用いる水は低温であることが好ましく、氷水を用いるとより好ましい。乳化物調製後に凍結する方法も有効である。
乳化物には上記以外の甘味料,香辛料,塩,風味付与材,調味料など、本発明の効果を妨げない範囲で他の成分を添加することもできる。この添加は乳化工程の前後で行うことができる。
尚、ここで調製した水中油型乳化物は、これ自体が連続相である水と分散相である油脂の乳化粒子を有するが、今回の発明では微小な乳化粒子を含めて連続相と考え、組織状植物性蛋白素材を分散相として扱うものとする。
【0021】
(工程イ)(生地調製)
工程アで作成した乳化物に、必要により澱粉類や食物繊維を加えた連続相を「つなぎ」とし、ここに分散相である組織状植物性蛋白素材を混合したものを生地とする。混合にはニーダー,ミキサー,フードプロセッサーまたはサイレントカッター等を用いることができる。組織状植物性蛋白素材は通常乾燥体であるので、その場合はまず水を吸水させ、組織を軟化させる「水戻し」を行った上で混合するが、乾燥状態の組織状植物性蛋白素材と水を添加混合することも、一部水戻しした組織状植物性蛋白素材と水を添加混合することも拒まない。また、水の一部を上記の水中油型乳化物とすることもできる。また、水戻しした組織状植物性蛋白素材をカッター等で破砕して用いることもできる。
生地中の水の量が本発明には重要であり、生地中の水分を62質量%以下とする必要がある。そのためには、工程アおよび工程イで調製する際に、各成分の組成および配合量を調整する。
生地の調製時には、風味や物性に変化を与えるために、各種の調味料,野菜類,澱粉類,ゲル化剤,粉末状大豆たん白等の植物性蛋白素材等を加えることもできる。また上述した乳化物または各種の素材等、これらの添加順も特に指定するものではない。
【0022】
前述した乳化剤は、生地中に分散または溶解できるのであれば、どの工程で加えても構わない。例えば工程アに於いて、乳化物を作る際に、油脂にメチルセルロースと共に添加しても良いし、水に分散させた上で油脂と合わせて乳化物を調製しても良い。また、油相と水相の乳化時に添加しても良い。あるいは、工程イに於いて、組織状植物性蛋白素材や他の素材と合わせて添加しても良い。乳化剤の添加量は、生地中の0.01質量%以上が好ましい。更に好ましくは0.05質量%以上であり、最も好ましくは0.1質量%以上である。上限は特に定めないが、乳化剤が多い場合は乳化剤に由来する風味が強くなり、汎用性が低下するおそれがある。
【0023】
それぞれの成分の使用量は生地中、乳化物は10~40質量%が好ましく、20~30質量%がより好ましい。澱粉類は0.1~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。食物繊維を併用する場合は、澱粉類を0.1~10質量%且つ食物繊維を0.1~3質量%が好ましく、澱粉類を2~7質量%且つ食物繊維を0.5~2質量%がより好ましい。組織状植物性蛋白素材は乾物量として、5質量%以上が好ましく、8質量%以上、10質量%以上、更には15質量%以上が好ましい。また、35質量%以下が好ましく、30質量%以下、更には25質量%以下が好ましい。
尚、以上の工程イに記載の使用量は生地中の濃度である。
【0024】
(工程ウ)(成形加熱)
工程イで作成した生地は、成形機で所望の大きさと形状に成形する。尚、生地中の水分が62質量%以下で乳化剤を配合しない場合は、生地の結着性が極端に低く、成型が困難となる。
次いでこれを加熱工程に供する。本発明における加熱手段は、焼成加熱,蒸し加熱,ボイル加熱,フライ加熱,電磁波加熱等を適宜組み合わせて用いることができる。またレトルト加熱も可能である。これによって成形した生地が加熱凝固し、形状が安定化される。
温度と時間は形状や重量、加熱方法にもよるが、蒸し加熱の場合は75~130℃が好ましく、75~100℃が更に好ましい。その際の加熱時間は5~20分が好ましい。加熱温度が低く時間が短いと衛生的でなく、加熱温度が高く時間が長いと離水(ドリップ)が増えるおそれがある。焼成加熱の加熱法では150~300℃で5~15分が、レトルトの加熱法では115~130℃で10~60分が、ボイル加熱では、75~100℃で5~50分が例示できる。
【0025】
本発明によれば、畜肉や卵白等の動物性原料を使用することなく、通常の畜肉加工食品と同様な肉粒感を有した、畜肉様加工食品を得ることができる。
【実施例0026】
以下に実施例を記載することで本発明を説明する。以下の部は質量部とする。
【0027】
○実施例1(基本製造法)
表1の配合に基づいて、菜種油3.7質量部に、メチルセルロース(信越化学製・メトローズMCE100TS)1.2質量部、カラメル色素(池田糖化工業株式会社製・カラメル SF-180)0.2質量部、乳化剤(三菱ケミカル社製・リョートーシュガーエステルS570)を0.1質量部加え、ロボクープ中で攪拌したのち、氷水21.9質量部を加え更に5分間攪拌して、水中油型の乳化物Aを得た。ここに、低温糊化澱粉(TATE & LYLE INGREDIENTS AMERICAS LLC社製・LO-TEMP453-S/糊化開始温度38℃)3.0質量部、竹繊維(レッテンマイヤー製・VITACEL BAF90)0.9質量部、食塩0.6質量部、調味料8.8質量部を加え、ミキサーで攪拌することで、連続相である「つなぎ」とした。
「つなぎ」全量に、4.3質量部の水で戻した組織状大豆蛋白素材A(不二製油製・アペックス350/粒形状)2.1質量部、30.4質量部の水で戻した組織状大豆蛋白素材B(不二製油製・アペックス950/扁平形状22.8質量部を分散相として加え、ケンウッドミキサーで3分間攪拌して生地とした。
生地は日本キャリア社製自動成形機(GM-D)を用いて、打ち抜き成形を行なうことで、50g(60×80×15mm(楕円形))を成形し、コンベクションオーブン((株)フジマック製・FCCM-PLUS)を用いて、95℃で6分間蒸し加熱を行い、ハンバーグ様食品を得た。
【0028】
○実施例2~4、比較例1~3(乳化剤添加量)
表1に基づいて実施例1と同様の操作で、実施例1の乳化剤の添加量を変化させた(実施例2~4)。また、乳化剤を添加しない場合(比較例1)、乳化剤を添加せず、且つ水の割合を増加させた場合(比較例2,3)の検討を行った。
【0029】
(生地物性評価基準)
焼成前の生地について、成型作業ができるかを確認した。
◎:生地がなめらかでとても成型しやすい
○:生地がなめらかで成型しやすい
△:生地がぼそつき成型できる下限
×:生地の結着性がなく成型できない
【0030】
(官能評価基準)
加熱焼成後の官能評価は熟練したパネラー5名にて行い、加熱後の食感について、畜肉加工食品、特にハンバーグらしい食感を総合的に評価し、合議により判定した。
○:結着性が良く、ハンバーグ様食品として良好
△:やや結着性が弱いが、ハンバーグ様食品として許容範囲内
×:評価できず
【0031】
(肉粒感評価基準)
加熱焼成後の肉粒感も、上記と同じパネラーで食感を総合的に評価し、合議により判定した。
○:強い肉粒感を付与出来て良好
△:肉粒感のあるハンバーグ様食品
×:肉粒感が弱いソフトなハンバーグ様食品
【0032】
(表1)乳化剤配合量と水配合量の検討
【0033】
結果を表1に示した。比較例2,3は水分の多い従来配合であり、どちらも肉粒感の弱い、ソフトな食感を示した。また、乳化剤を添加せずに水分を下げた比較例1は、生地成型が出来なかった。対して、乳化剤を添加した実施例1は良好な生地物性であり、焼成したハンバーグ様食品は良好な食感と肉粒感を有していた。
乳化剤の添加量は、0.02%ではやや弱いが成形は可能であり、0.05%以上は十分な機能が認められた。
【0034】
○実施例5~11(各種乳化剤および添加方法)
表2に基づいて実施例1と同様の操作で、各種の乳化剤を添加した(実施例5~8)。また、乳化剤を油ではなく水に添加し乳化物Aとした場合(実施例10)および、ミキサー中で澱粉その他の原料と同時に添加した場合(実施例11)の検討も行った。
尚、シュガーエステルは三菱ケミカル製のリョートーシュガーエステルS270(HLB2)、同S570(HLB5)、同S1170(HLB11)、同S1670(HLB16)を、ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンエステル)は理研ビタミン製のポエムS-60V(HLB5.1)を、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリエリンエステル)は、太陽化学製のサンソフトQ18B(HLB6.5)をそれぞれ用いた。
【0035】
(表2)各種乳化剤および添加方法の検討
【0036】
結果を表2に示した。今回使用したHLB2~16の乳化剤は、どれも生地成型が可能となった。特にHLBが16未満の乳化剤が好ましく、中でもシュガーエステルが優れていた。
【0037】
○実施例12~14、比較例4~6(各種の添加物)
表3に基づいて実施例1と同様の操作で、澱粉、調味料、繊維を増やした配合(実施例12~14)および、それぞれから乳化剤を抜いた配合(比較例4~6)を検討した。
【0038】
(表3)各種の添加物での検討
【0039】
結果を表3に示した。水分を制限した条件下では、澱粉、調味料、繊維を添加しても生地物性を改善することはできない一方、乳化剤を配合することで、生地物性は改善され、良好な食感を持つ畜肉様食品を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明を用いると、組織状植物性素材とメチルセルロースを用いた配合であっても、肉粒感に富んだ畜肉様の加工食品を製造することが可能となる。