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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137695
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】アンギュラ玉軸受及び組合せ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/16 20060101AFI20230922BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20230922BHJP
   F16C 33/42 20060101ALI20230922BHJP
   F16C 35/12 20060101ALI20230922BHJP
   F16C 19/54 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F16C19/16
F16C33/58
F16C33/42 Z
F16C35/12
F16C19/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044004
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 成晃
(72)【発明者】
【氏名】勝野 美昭
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA55
3J701FA15
3J701FA32
3J701GA31
3J701XB03
3J701XB12
3J701XB26
3J701XB39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軸受内部の空間容積を維持して、発熱放熱対策も確保しつつ、アキシアル定格荷重を向上させたアンギュラ玉軸受及び組合せ軸受を提供する。
【解決手段】アンギュラ玉軸受1において、外輪2の肩部2bの内周面は、ピッチ円直径よりも内径側に位置し、外輪軌道溝2aは、外輪2の肩部2bに沿ってピッチ円直径よりも内径側まで形成される。また、内輪3の肩部3bの外周面は、ピッチ円直径よりも外径側に位置し、内輪軌道溝3aは、内輪3の肩部3bに沿ってピッチ円直径よりも外径側まで形成される。ピッチ円直径を越えた外輪2の肩部2bの高さをhe、ピッチ円直径を越えた内輪3の肩部3bの高さをhiとし、玉4の玉径をDa、接触角αの無次元量をKとすると、式(1)、(2)を満たす。
(0.0072K-0.4)Da≦he≦0.30Da・・・(1)
(0.0072K-0.4)Da≦hi≦0.30Da・・・(2)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に外輪軌道溝と、前記外輪軌道溝の軸方向一方側に肩部と、を有する外輪と、
外周面に内輪軌道溝と、前記内輪軌道溝の軸方向他方側に肩部と、を有する内輪と、
前記外輪軌道溝と前記内輪軌道溝との間に接触角を持って配置される複数の玉と、
を備えるアンギュラ玉軸受であって、
前記接触角αは、60°<α≦85°であり、
前記外輪軌道溝の溝底径と、前記内輪軌道溝の溝底径の和を2で割った径をピッチ円直径としたとき、
前記外輪の肩部の内径側端部は、前記ピッチ円直径よりも内径側に位置し、前記外輪軌道溝は、前記ピッチ円直径を越えて内径側まで形成され、
前記内輪の肩部の外径側端部は、前記ピッチ円直径よりも外径側に位置し、前記内輪軌道溝は、前記ピッチ円直径を越えて外径側まで形成され、
前記ピッチ円直径を越えた前記外輪の肩部の高さをhe、前記ピッチ円直径を越えた前記内輪の肩部の高さをhiとし、前記玉の玉径をDa、前記接触角αの無次元量をKとすると、
(0.0072K-0.4)Da≦he≦0.30Da
(0.0072K-0.4)Da≦hi≦0.30Da
を満たす、
アンギュラ玉軸受。
【請求項2】
前記接触角αは、65°≦α≦85°である、請求項1に記載のアンギュラ玉軸受。
【請求項3】
(0.0072K-0.4)Da≦he≦0.25Da
(0.0072K-0.4)Da≦hi≦0.25Da
を満たす、請求項1又は2に記載のアンギュラ玉軸受。
【請求項4】
前記外輪の外径をD、前記内輪の内径をdとすると、
0.55≦2×Da/(D-d)≦0.65
を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンギュラ玉軸受。
【請求項5】
円周方向に所定間隔で設けられる複数の柱部と、前記複数の柱部の軸方向端部を連結する少なくとも1つのリム部と、を有し、前記複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを形成する保持器を備え、
前記柱部の軸方向他方側端部を連結する前記軸方向他方側のリム部の軸方向外端面と前記玉との間の軸方向最短寸法をtiとし、該リム部が臨む前記外輪の軸方向端面と前記玉との間の軸方向最短寸法をtIRとしたとき、
0≦ti≦tIR
を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンギュラ玉軸受。
【請求項6】
円周方向に所定間隔で設けられる複数の柱部と、前記複数の柱部の軸方向端部を連結する少なくとも1つのリム部と、を有し、前記複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを形成する保持器を備え、
前記柱部の軸方向一方側端部を連結する前記軸方向一方側のリム部の軸方向外端面と前記玉との間の軸方向最短寸法をteとし、該リム部が臨む前記内輪の軸方向端面と前記玉との間の軸方向最短寸法をtORとしたとき、
0≦te≦tOR
を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載のアンギュラ玉軸受。
【請求項7】
円周方向に所定間隔で設けられる複数の柱部と、前記複数の柱部の軸方向端部を連結する少なくとも1つのリム部と、を有し、前記複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを形成する保持器を備え、
前記柱部の軸方向他方側端部を連結する前記軸方向他方側のリム部の厚さをwiとしたとき、
0.2Da≦wi≦0.45Da
を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載のアンギュラ玉軸受。
【請求項8】
円周方向に所定間隔で設けられる複数の柱部と、前記複数の柱部の軸方向端部を連結する少なくとも1つのリム部と、を有し、前記複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを形成する保持器を備え、
前記柱部の軸方向一方側端部を連結する前記軸方向一方側のリム部の厚さをweとしたとき、
0.2Da≦we≦0.45Da
を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載のアンギュラ玉軸受。
【請求項9】
前記外輪の軸方向他方側のカウンタボア、及び前記内輪の軸方向一方側のカウンタボアは、掛かり代をそれぞれ有して、非分離に構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のアンギュラ玉軸受。
【請求項10】
前記外輪の肩部の軸方向外端面と、前記内輪の肩部の軸方向外端面の少なくとも一方には、軸方向から見て、前記外輪の肩部と前記内輪の肩部とがオーバーラップする領域を切り欠くことで、段差が形成される、請求項1~9のいずれか1項に記載のアンギュラ玉軸受。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のアンギュラ玉軸受を複数備え、
前記複数のアンギュラ玉軸受が互いに隣接して、又は間座を介して軸方向に並んだ、組合せ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンギュラ玉軸受に関し、特に、射出成形機や電動プレス機、あるいは工作機械用ボールねじサポート等、アキシアル方向に大きい荷重や予圧を受ける軸受として適用可能なアンギュラ玉軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成型機や電動プレス機において、回転軸を支持する軸受には、高効率加工の目的から、大きなアキシアル荷重に耐えられる能力(以下、「アキシアル定格荷重」と称す。)および小さな初期トルクで動作可能であることが要求されている。これらの要求に合致する軸受としては、スラスト玉軸受およびアンギュラ玉軸受が挙げられる。
【0003】
スラスト玉軸受は、回転軸に対し直角方向に軌道溝を有しており、アキシアル定格荷重が非常に大きいという長所を持つ。一方、スラスト玉軸受は、回転輪である軸軌道盤(内輪)と固定輪であるハウジング軌道盤(外輪)が同軸上に並列される構造であるため、複数列をアキシアル方向に並べてアキシアル荷重を分散して支持することが構造上極めて困難であり、単列で使用するのが常である。
また、駆動モータの動力伝達にベルトを使用する射出成型機の場合、回転軸支持用軸受には、上述のアキシアル荷重だけではなく、回転軸に巻掛けされた駆動ベルトによる大きなラジアル荷重を受ける必要があるが、スラスト玉軸受はその構造上、合成荷重であるモーメント荷重を受けることができない。
【0004】
一方、アンギュラ玉軸受は、接触角を大きくすることで、スラスト玉軸受には劣るもののアキシアル定格荷重を大きくできる。さらに、アンギュラ玉軸受は、アキシアル荷重負荷側に多数列並べてアキシアル荷重を分散して支持することで、スラスト玉軸受に劣るアキシアル定格荷重を補填可能という長所を持つ。また、アンギュラ玉軸受は非分離型であるため、組み込み性が高い。このような特徴から、射出成型機用途としては、多列のアンギュラ玉軸受を用いることが一般的である。
【0005】
しかしながら、近年、射出物の大型化や射出材料の高強度化に伴い、更なるアキシアル定格荷重の向上が求められている。このような課題の解決手段の一つとして、より多くのアンギュラ玉軸受を組み合わせて使用する方法が考えられるが、この場合、装置全体がアキシアル方向に粗大化し、機械が大型化(設置床面積の増大)するデメリットが懸念される。そのため、軸受配列数を増やすことなく、軸受1列あたりのアキシアル定格荷重を向上させることが強く求められている。
【0006】
特許文献1及び2では、内外輪の肩を互いに接近する程度に高くして、内外輪の負荷側軌道溝を互いに延長し、さらに接触角を大きくすることでアキシアル定格荷重の向上を図っている。また、特許文献1では、内輪又は外輪に仕切壁を設けて玉を等間隔に保持する一方、特許文献2の図4では、外輪の内周面を切り欠いて形成された空間に、保持器の周縁部を配置して、保持器のボール保持部によって玉を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平7-23821号公報
【特許文献2】特開2006-316865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2では、内外輪の肩を、お互いに接近するまで延長していることから、軸受内部の空間容積を十分に確保できないため、潤滑剤の少量化、保持器の薄肉化が必要となる。そのため、アキシアル定格荷重が高いにも関わらず、保持器の損傷や潤滑剤切れに起因して軸受が早期に損傷する可能性がある。
【0009】
また、潤滑剤の枯渇による発熱過多や、放熱不足が発生した場合、アキシアル定格荷重とは関係のない形態で損傷する可能性がある。また、内外輪の肩を高くすることはアキシアル定格荷重の向上に有効であるが、同時に空間容積を減らし(潤滑剤の封入スペース減少)、さらには軸受内部空間に熱が籠り易くなり放熱の阻害要因となる。したがって、アキシアル定格荷重の確保と発熱放熱対策(潤滑性向上)の両立が求められる。
【0010】
さらに、過大なアキシアル荷重が付加され玉の進み、遅れ(玉の公転速度の差異)が発生した場合、玉を保持する保持器に過大な張力が発生することが懸念される。保持器の耐荷重性を向上させるためには保持器断面積を大きくすることが有効であり、そのためには空間容積の確保が必要となる。これは内外輪の肩高さを大きくすることと相反するため、アキシアル定格荷重の確保と保持器の耐荷重性の確保との両立も求められる。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、軸受内部の空間容積を維持して、発熱放熱対策も確保しつつ、アキシアル定格荷重を向上させたアンギュラ玉軸受及び組合せ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は下記に示すアンギュラ玉軸受及び組合せ軸受を提供する。
(1) 内周面に外輪軌道溝と、前記外輪軌道溝の軸方向一方側に肩部と、を有する外輪と、
外周面に内輪軌道溝と、前記内輪軌道溝の軸方向他方側に肩部と、を有する内輪と、
前記外輪軌道溝と前記内輪軌道溝との間に接触角を持って配置される複数の玉と、
を備えるアンギュラ玉軸受であって、
前記接触角αは、60°<α≦85°であり、
前記外輪軌道溝の溝底径と、前記内輪軌道溝の溝底径の和を2で割った径をピッチ円直径としたとき、
前記外輪の肩部の内径側端部は、前記ピッチ円直径よりも内径側に位置し、前記外輪軌道溝は、前記ピッチ円直径を越えて内径側まで形成され、
前記内輪の肩部の外径側端部は、前記ピッチ円直径よりも外径側に位置し、前記内輪軌道溝は、前記ピッチ円直径を越えて外径側まで形成され、
前記ピッチ円直径を越えた前記外輪の肩部の高さをhe、前記ピッチ円直径を越えた前記内輪の肩部の高さをhiとし、前記玉の玉径をDa、前記接触角αの無次元量をKとすると、
(0.0072K-0.4)Da≦he≦0.30Da
(0.0072K-0.4)Da≦hi≦0.30Da
を満たす、
アンギュラ玉軸受。
(2) 前記接触角αは、65°≦α≦85°である、(1)に記載のアンギュラ玉軸受。
(3)(0.0072K-0.4)Da≦he≦0.25Da
(0.0072K-0.4)Da≦hi≦0.25Da
を満たす、(1)又は(2)に記載のアンギュラ玉軸受。
(4) 前記外輪の外径をD、前記内輪の内径をdとすると、
0.55≦2×Da/(D-d)≦0.65
を満たす、(1)~(3)のいずれかに記載のアンギュラ玉軸受。
(5) 円周方向に所定間隔で設けられる複数の柱部と、前記複数の柱部の軸方向端部を連結する少なくとも1つのリム部と、を有し、前記複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを形成する保持器を備え、
前記柱部の軸方向他方側端部を連結する前記軸方向他方側のリム部の軸方向外端面と前記玉との間の軸方向最短寸法をtiとし、該リム部が臨む前記外輪の軸方向端面と前記玉との間の軸方向最短寸法をtIRとしたとき、
0≦ti≦tIR
を満たす、(1)~(4)のいずれかに記載のアンギュラ玉軸受。
(6) 円周方向に所定間隔で設けられる複数の柱部と、前記複数の柱部の軸方向端部を連結する少なくとも1つのリム部と、を有し、前記複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを形成する保持器を備え、
前記柱部の軸方向一方側端部を連結する前記軸方向一方側のリム部の軸方向外端面と前記玉との間の軸方向最短寸法をteとし、該リム部が臨む前記内輪の軸方向端面と前記玉との間の軸方向最短寸法をtORとしたとき、
0≦te≦tOR
を満たす、(1)~(5)のいずれかに記載のアンギュラ玉軸受。
(7) 円周方向に所定間隔で設けられる複数の柱部と、前記複数の柱部の軸方向端部を連結する少なくとも1つのリム部と、を有し、前記複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを形成する保持器を備え、
前記柱部の軸方向他方側端部を連結する前記軸方向他方側のリム部の厚さをwiとしたとき、
0.2Da≦wi≦0.45Da
を満たす、(1)~(6)のいずれかに記載のアンギュラ玉軸受。
(8) 円周方向に所定間隔で設けられる複数の柱部と、前記複数の柱部の軸方向端部を連結する少なくとも1つのリム部と、を有し、前記複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを形成する保持器を備え、
前記柱部の軸方向一方側端部を連結する前記軸方向一方側のリム部の厚さをweとしたとき、
0.2Da≦we≦0.45Da
を満たす、(1)~(7)のいずれかに記載のアンギュラ玉軸受。
(9) 前記外輪の軸方向他方側のカウンタボア、及び前記内輪の軸方向一方側のカウンタボアは、掛かり代をそれぞれ有して、非分離に構成される、(1)~(8)のいずれかに記載のアンギュラ玉軸受。
(10) 前記外輪の肩部の軸方向外端面と、前記内輪の肩部の軸方向外端面の少なくとも一方には、軸方向から見て、前記外輪の肩部と前記内輪の肩部とがオーバーラップする領域を切り欠くことで、段差が形成される、(1)~(9)のいずれかに記載のアンギュラ玉軸受。
(11) (1)~(10)のいずれかに記載のアンギュラ玉軸受を複数備え、
前記複数のアンギュラ玉軸受が互いに隣接して、又は間座を介して軸方向に並んだ、組合せ軸受。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアンギュラ玉軸受及び組合せ軸受によれば、軸受内部の空間容積を維持して、発熱放熱対策も確保しつつ、アキシアル定格荷重を向上できる。また、アンギュラ玉軸受を複数用いて組合せ軸受とすれば、アキシアル定格荷重が増えるので、大きなアキシアル荷重を受ける用途では、軸受の組み合わせ列数を増やすことなく設置可能であり、大きなアキシアル荷重を受けない用途では、軸受の組み合わせ列数を減らすことができるため、省スペース化やコスト抑制に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るアンギュラ玉軸受の断面図である。
図2図2は、図1の保持器の斜視図である。
図3図3は、第1実施形態のアンギュラ玉軸受が複数の組み込まれた組合せ軸受を示す断面図である。
図4図4は、比較例のアンギュラ玉軸受を示す断面図である。
図5図5は、比較例のアンギュラ玉軸受が複数の組み込まれた組合せ軸受を示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態の変形例の保持器の斜視図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係るアンギュラ玉軸受の断面図である。
図8図8は、図7の保持器の斜視図である。
図9図9は、第2実施形態の変形例の保持器の斜視図である。
図10図10は、本発明の変形例に係るアンギュラ玉軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の各実施形態に係るアンギュラ玉軸受について詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、射出成形機や電動プレス機、工作機械用ボールねじサポートなど、アキシアル方向に大きい荷重や予圧を受ける際に適用可能な、第1実施形態のアンギュラ玉軸受を示している。
【0017】
アンギュラ玉軸受1は、内周面に断面円弧状の外輪軌道溝2aを有する外輪2と、外周面に断面円弧状の内輪軌道溝3aを有する内輪3と、外輪軌道溝2aと内輪軌道溝3aとの間に接触角αを持って転動自在に設けられた複数の玉4と、複数の玉4をそれぞれ保持する複数のポケット11を形成する保持器10と、を備える。なお、接触角αとは、軸受中心軸Xに垂直な平面Pと、玉4が外輪2及び内輪3とそれぞれ接触する2つの接触点P1,P2を結んだ作用線とがなす角度と定義される。
【0018】
外輪2の外輪軌道溝2aに対して軸方向一方側(図1の右側)には、肩部2bが形成され、軸方向他方側(図1の左側)の内周面には、カウンタボア2cが形成されている。肩部2bの内周面は、外輪軌道溝2aに連続して外輪2の軸方向一方側の端面まで延在する、円筒面である。カウンタボア2cは、外輪軌道溝2aに連続して外輪2の軸方向他方側の端面まで延在する、円筒面である。
また、内輪3の内輪軌道溝3aに対して軸方向他方側には、肩部3bが形成され、軸方向一方側の外周面には、カウンタボア3cが形成されている。肩部3bの外周面は、内輪軌道溝3aに連続して内輪3の軸方向他方側の端面まで延在する、円筒面である。カウンタボア3cは、内輪軌道溝3aに連続して内輪3の軸方向一方側の端面まで延在する、円筒面である。
外輪2の肩部2bの内周面は、隙間を介して内輪3のカウンタボア3cと対向している。内輪3の肩部3bの外周面は、隙間を介して外輪2のカウンタボア2cと対向している。
【0019】
外輪軌道溝2aの溝底径DAと、内輪軌道溝3aの溝底径DBの和を2で割った径をピッチ円直径P.C.D.としたとき、外輪2の肩部2bの内周面を含む内径側端部は、ピッチ円直径P.C.D.よりも内径側に位置する。また、外輪軌道溝2aは、外輪2の肩部2bに沿ってピッチ円直径P.C.D.よりも内径側まで形成される。
【0020】
さらに、内輪3の肩部3bの外周面を含む外径側端部は、ピッチ円直径P.C.D.よりも外径側に位置しており、内輪軌道溝3aは、内輪3の肩部3bに沿ってピッチ円直径P.C.D.よりも外径側まで形成される。
また、接触角αは、60°<α≦85°、好ましくは、65°≦α≦85°に設定される。
これにより、玉軸受にアキシアル荷重を負荷した際に玉4が外輪軌道溝2aまたは内輪軌道溝3aのいずれかの肩部2b、3bに乗り上げる乗上荷重を大きくすることができ、大きなアキシアル定格荷重を確保できる。
【0021】
即ち、接触角αが60°以下では、大きなアキシアル定格荷重が確保できず、組合せ軸受として使用する際には列数が増え、装置の設置面積が増加してしまう。また、接触角αが85°を越えると、接触楕円が溝肩に乗り上げる可能性がある。
【0022】
また、外輪2のカウンタボア2c、及び内輪3のカウンタボア3cは、所定の高さの掛かり代をそれぞれ有している。これにより、外輪2及び内輪3は、玉4に対してカウンタボア2c、3cを乗り越えて脱落することがなく、非分離に構成される。
【0023】
保持器10は、図2にも示すように、円周方向に等間隔に設けられる複数の柱部12と、複数の柱部12の軸方向両端部をそれぞれ連結し、全周に亘って連続する一対のリム部13,14と、を備える。一対のリム部13,14は、外輪2の内周面と内輪3の外周面との間に形成される軸受空間内に配置されるように形成される。即ち、柱部12の軸方向一方側端部を連結する軸方向一方側のリム部(小径リム部とも言う)13は、外輪2の肩部2bの内周面と、内輪3のカウンタボア3cの外周面との間で、ピッチ円直径P.C.D.よりも内径側に配置される。また、柱部12の軸方向他方側端部を連結する軸方向他方側のリム部(大径リム部とも言う)14は、外輪2のカウンタボア2cの内周面と内輪3の肩部3bの外周面との間で、ピッチ円直径P.C.D.よりも外径側に配置される。そして、複数の柱部12は、外輪軌道溝2aと内輪軌道溝3aとの間で、一対のリム部13、14に連結されるように、軸方向に対して傾斜して形成される。なお、一対のリム部13、14と隣り合う柱部12とにより囲まれた部分に、玉4を転動自在に保持するポケット11が形成されている。ポケット11の内面は、球面状に形成されている。
【0024】
また、図1に示す軸受断面において、ピッチ円直径P.C.D.を内径側に越えた外輪2の肩部2bの高さをhe、ピッチ円直径P.C.D.を外径側に越えた内輪3の肩部3bの高さをhiとし、玉4の玉径をDa、接触角αの無次元量をKとすると、アンギュラ玉軸受1は、下記式(1)、(2)を満足するように設計されている。
(0.0072K-0.4)Da≦he≦0.3Da ・・・(1)
(0.0072K-0.4)Da≦hi≦0.3Da ・・・(2)
【0025】
これら条件の上限値を満足することで、外輪2の肩部2bの内周面と、内輪3のカウンタボア3cの内周面との間、及び、外輪2のカウンタボア2cの内周面と内輪3の肩部3bとの間に、径方向隙間、即ち空間容積が確保されるので、グリース等の潤滑剤を軸受空間内に十分に封入でき、また、軸受内部に生じた熱を外部へ逃がすことができる。また、同条件を満足することで、一対のリム部13、14の径方向肉厚(断面積)を確保することができ、保持器強度をさらに確保することができる。
また、上記条件の下限値を満足することで、アンギュラ玉軸受1のアキシアル定格荷重を確保することができる。
【0026】
一方、he,hiが上限値より大きいと、空間容積を確保できないため、潤滑剤の封入量が十分でなく、潤滑不良となるおそれがある。また、リム部13,14の径方向肉厚を確保できず、強度が不足する可能性がある。さらに、外輪軌道溝2a、内輪軌道溝3aの全体を研削加工することが難しい。また、he,hiが下限値より小さいと、接触楕円C1,C2が溝肩に乗り上げる可能性があり、このため、接触角αを大きくできず、負荷容量を大きくすることができない。
【0027】
なお、本実施形態のアンギュラ玉軸受1は、下記式(3)、(4)を満たすことが外輪軌道溝2a及び内輪軌道溝3aを研削加工するうえでより好ましい。
(0.0072K-0.4)Da≦he≦0.25Da ・・・(3)
(0.0072K-0.4)Da≦hi≦0.25Da ・・・(4)
【0028】
さらに、外輪2の外径をD、内輪3の内径をdとすると、アンギュラ玉軸受1は、下記式(5)を満足することがより好ましい。
0.55≦2×Da/(D-d)≦0.65 ・・・(5)
即ち、比較的玉径Daの大きな玉4を用いることで、アキシアル定格荷重をより大きく確保することができる。
【0029】
また、一対のリム部13、14の軸方向外端面は、玉4よりも軸方向外側に位置している。即ち、小径リム部13の軸方向外端面と玉4との間の小径リム部13の軸方向最短寸法をte、大径リム部14の軸方向外端面と玉4との間の大径リム部14の軸方向最短寸法をti、また、小径リム部13が臨む外輪2の軸方向外端面と玉4との間の軸方向最短寸法をtOR、大径リム部14が臨む内輪3の軸方向外端面と玉4との間の軸方向最短寸法をtIRとすると、アンギュラ玉軸受1は、下記式(6)、(7)を満足する。
0≦te≦tOR ・・・(6)
0≦ti≦tIR ・・・(7)
これにより、一対のリム部13、14の軸方向長さが確保され、保持器強度を確保することができる。
【0030】
te、tiが0より小さいと、リム部13、14の断面形状は、台形形状から三角形状に近づき、断面積が急激に小さくなる。このため、リム部13、14は、玉4同士の進み遅れによる圧縮、引張応力の繰り返しに対して強度が不足する可能性がある。一方、te、tiがtIR、tORより大きくなると、保持器10がアキシアルすきま分だけ軸方向外側に変位した際に、リング部13、14が、隣接するリング13、14や間座など周辺部材に干渉(衝突)する懸念が生じる。
【0031】
また、小径リム部13の厚さ(径方向寸法)をwe、大径リム部14の厚さ(径方向寸法)をwiとしたとき、アンギュラ玉軸受1は、下記式(8)、(9)を満足する。
0.2Da≦we≦0.45Da ・・・(8)
0.2Da≦wi≦0.45Da ・・・(9)
これにより、一対のリム部13、14の厚さも確保され、保持器強度をさらに確保することができる。
【0032】
we、wiが0.2Da未満の場合、リム部13、14は、玉4同士の進み遅れによる圧縮、引張応力の繰り返しに対して強度が不足する可能性がある。一方、we、wiが0.45Daを越える場合、空間容積を確保できないため、潤滑剤の封入量が十分でなく、潤滑不良となるおそれがある。
【0033】
また、外輪軌道溝2a及び内輪軌道溝3aの表面粗さは、算術平均粗さRa≦0.10であることが好ましく、Ra≦0.07であることがより好ましい。即ち、上記算術平均粗さRaとする外輪軌道溝2a及び内輪軌道溝3aの範囲を、接触楕円C1,C2の溝底側端部Q1,Q2から各軌道溝2a,3aと溝肩との交点R1,R2までとすることで、転がり抵抗を小さくでき、発熱が抑えられ、良好な潤滑性能が与えられる。
【0034】
接触楕円C1,C2の溝底側端部Q1,Q2から各軌道溝2a,3aと溝肩との交点R1,R2までが、実荷重を受けて玉4と軌道溝2a,3aが接触する範囲であり、この範囲において上記算術平均粗さRaが0.10を越えると、転がり抵抗が大きくなり、発熱増大による潤滑不良の虞がある。
【0035】
また、アンギュラ玉軸受1のラジアルすきまは、各軌道溝2a,3aの溝底S1,S2で測定されることから、測定精度を確保するためには、上記算術平均粗さRaとする外輪軌道溝2a及び内輪軌道溝3aの範囲を、各軌道溝2a,3aの溝底S1,S2から各軌道溝2a,3aと溝肩との交点R1,R2までとすることがより好ましい。
【0036】
各軌道溝2a,3aの溝底S1,S2から各軌道溝2a,3aと溝肩との交点R1,R2までの範囲において、上記算術平均粗さRaが0.10を越える場合、ラジアルすきまの測定精度が低下するので、外輪2又は内輪3の品質を確保できない可能性がある。
なお、算術平均粗さRaは、小さくし過ぎると、加工コストが嵩むため、加工コストを考慮して設計されればよい。
【0037】
また、外輪2の軸方向一方側の肩部2bの軸方向外端面と、内輪3の軸方向他方側の肩部3bの軸方向外端面には、軸方向から見て、外輪2の軸方向一方側の肩部2bと内輪3の軸方向他方側の肩部3bとがオーバーラップする領域を切り欠くことで、段差2d、3dが形成される。
つまり、外輪2の肩部2bの軸方向外端面は、内径側の端部から、内輪3の肩部3bの外周面よりも外径側まで円盤状に切欠かれ、内輪3の肩部3bの軸方向外端面は、外径側の端部から、外輪2の肩部2bの内周面よりも内径側まで円盤状に切欠かれている。なお、段部2d、3dは、傾斜面形状に切欠くこともできる。
【0038】
これにより、例えば、図3に示すように、アンギュラ玉軸受1を軸方向に並べて配置される組合せ軸受20の場合、隣り合うアンギュラ玉軸受1の外輪2と内輪3とが干渉することがなく、回転輪の回転が阻害されることが防止される。
なお、切り欠きは、アキシアル荷重を受けた際でも互いに干渉しない軸方向深さであればよい。
【0039】
ここで、第1実施形態のアンギュラ玉軸受1と、図4に示す従来のアンギュラ玉軸受100と、を用いて、乗上荷重(玉が内輪軌道若しくは外輪軌道の端縁に乗り上げる状態となる荷重)及び寿命の比をシミュレーションにて比較した。
即ち、両軸受の断面寸法、玉数や玉径を同一とし、従来のアンギュラ玉軸受100の乗上荷重及び寿命を1とした場合の第1実施形態のアンギュラ玉軸受1の乗上荷重比と寿命比をシミュレーションにて算出した。
【0040】
第1実施形態のアンギュラ玉軸受1では、he=0.2Da、hi=0.2Da、接触角α=65°に設計されたものが用いられた。一方、従来のアンギュラ玉軸受100は、外輪2の軸方向一方側の肩部2bの内周面がピッチ円直径P.C.D.より外径側に位置し、内輪3の軸方向他方側の肩部3bの外周面が、ピッチ円直径P.C.D.よりも内径側に位置する。したがって、従来のアンギュラ玉軸受100では、he=-0.05Da、hi=-0.05/Da、接触角α=55°に設計されたものが用いられた。
【0041】
この結果、第1実施形態のアンギュラ玉軸受1では、乗上荷重比=2.7、寿命比=1.3となり、接触角αを大きくとることができ、乗上荷重が大きくなり、また、寿命を向上できることが確認された。
【0042】
また、アンギュラ玉軸受1を軸方向に複数並べて組合せ軸受20として使用する場合には、接触角αを65°以上とすることで、アンギュラ玉軸受1の数を減らすことができ、省スペース化にも寄与する。
【0043】
具体的に、シミュレーションにて計算したところ、従来のアンギュラ玉軸受100を用いた組合せ軸受では、図5に示すように、6列のアンギュラ玉軸受100を並べてアキシアル荷重を支持していたものに対して、第1実施形態のアンギュラ玉軸受1を用いた組合せ軸受20では、図3に示すように、4列のアンギュラ玉軸受1によって同程度のアキシアル荷重を支持できることが確認された。
【0044】
以上説明したように、本実施形態のアンギュラ玉軸受1において、外輪2の軸方向一方側の肩部2bの内周面は、ピッチ円直径P.C.D.よりも内径側に位置し、外輪軌道溝2aは、外輪2の軸方向一方側の肩部2bに沿ってピッチ円直径P.C.D.よりも内径側まで形成され、内輪3の軸方向他方側の肩部3bの外周面は、ピッチ円直径P.C.D.よりも外径側に位置し、内輪軌道溝3aは、内輪3の軸方向他方側の肩部3bに沿ってピッチ円直径P.C.D.よりも外径側まで形成され、ピッチ円直径P.C.D.を越えた外輪2の肩部2bの高さをhe、ピッチ円直径P.C.D.を越えた内輪3の肩部3bの高さをhiとし、玉4の玉径をDa、接触角αの無次元量をKとすると、式(1)、(2)を満たす。
(0.0072K-0.4)Da≦he≦0.30Da・・・(1)
(0.0072K-0.4)Da≦hi≦0.30Da・・・(2)
これにより、軸受内部の空間容積を維持して、発熱放熱対策及び確保しつつ、アキシアル定格荷重を向上できる。また、本実施形態では、上記構成により、保持器10の耐荷重性も確保することができる。また、アンギュラ玉軸受1を複数用いて組合せ軸受20とすれば、アキシアル定格荷重が増えるので、大きなアキシアル荷重を受ける用途では、軸受の組み合わせ列数を増やすことなく設置可能であり、大きなアキシアル荷重を受けない用途では、軸受の組み合わせ列数を減らすことができ、省スペース化やコスト抑制に寄与することができる。
【0045】
なお、上記実施形態の保持器10では、各リム部13,14は、円周方向全体に亘って連続しているが、例えば、各リム部13、14は、円周方向の少なくとも一部が切り欠かれた形状であってもよい。具体的に、図6に示す保持器10aでは、柱部12の円周方向中間位置である円周方向の1箇所に形成された切れ目15において、保持器10aは、一対のリム部13,14を含めて軸方向全長に沿って切欠かれて(切断して)いる。
このように、保持器10の円周方向の一部に切れ目15が形成されることで、保持器10aに引っ張りや圧縮の力が掛かりにくく、保持器10aの耐久性が向上する。アンギュラ玉軸受1内の複数の玉4は、一見すると保持器10aに対して同じ公転速度で回転しているが、外輪2と内輪3との間でミスアライメントなどが生じた条件下では、厳密には、僅かに公転速度が異なっており、所謂玉の遅れや、玉の進みという現象が発生する。この玉4の遅れや進みにより、保持器10aが玉4で潰されたり(圧縮)、引っ張られたりする。
上記のように、保持器10aに切れ目15を設けることで、圧縮や引っ張りの力を開放することができるため、保持器10aの耐久性が向上する。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るアンギュラ玉軸受について図7及び図8を参照して説明する。第2実施形態のアンギュラ玉軸受1aでは、第1実施形態の両持ちタイプ保持器の代わりに冠型保持器10bが使用されている。その他の構成及び作用は、第1実施形態のものと同一であるので、説明を省略或いは簡略化する。
【0047】
冠型保持器10bは、円周方向に等間隔に設けられる複数の柱部12と、複数の柱部12の軸方向他方側端部をそれぞれ連結し、全周に亘って連続するリム部14と、を備える。リム部14は、外輪2の内周面と内輪3の外周面との間に形成される軸受空間内に配置されるように形成される。即ち、リム部14は、外輪2のカウンタボア2cの内周面と内輪3の肩部3bの外周面との間で、ピッチ円直径P.C.D.よりも外径側に配置される。そして、複数の柱部12は、リム部14に連結されるように、軸方向に対して傾斜して形成される。
【0048】
なお、冠型保持器10bを有するアンギュラ玉軸受1aにおいても、第1実施形態の式(1)~(5),(7)~(9)を満足することができ、大きなアキシアル定格荷重を確保しつつ、空間容積を維持して、発熱放熱対策及び保持器の耐荷重性も確保できる。
【0049】
また、第2実施形態のアンギュラ玉軸受1aにおいても、図4に示す従来のアンギュラ玉軸受100を用いて、乗上荷重比と寿命比をシミュレーションにて比較した。
【0050】
第2実施形態のアンギュラ玉軸受1aでは、he=0.24Da、hi=0.24Da、接触角α=80°に設計されたものが用いられた。
【0051】
第2実施形態のアンギュラ玉軸受1aでは、乗上荷重比=2.6、寿命比=1.7となり、この場合も、接触角αを大きくとることができ、乗上荷重が大きくなり、また、寿命を向上できることが確認された。
【0052】
また、第2実施形態では、リム部14は、円周方向全体に亘って連続しているが、例えば、図9に示す保持器10cのように、リム部14は、円周方向の少なくとも一部が切り欠かれた形状であってもよい。
具体的に、この変形例では、保持器10cは、柱部12の円周方向中間位置で軸方向に亘って形成される3箇所の切れ目15によって、円周方向に分離された、複数(3つ)の保持器片によって構成されている。
この場合も、第1実施形態の変形例と同様に、圧縮や引っ張りの力を開放することができるため、保持器10cが壊れにくくなる。
【0053】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜変形、改良などが可能である。
例えば、上記実施形態では、外輪2の肩部2bの軸方向外端面と、内輪3の肩部3bの軸方向外端面の両方に段差2d、3dが設けられているが、外輪2の肩部2bの軸方向外端面と、内輪3の肩部3bの軸方向外端面のいずれか一方に、段差が形成されて、外輪2と内輪3とが干渉しなければよい。例えば、図10に示すアンギュラ玉軸受1bのように、外輪2の肩部2bの軸方向外端面のみに段差2dが形成されてもよい。
また、上記実施形態では、保持器10、10a~10cの案内方式を玉案内方式として、外輪や内輪との接触によるトルクの増加を抑制しているが、本発明はこれに限らず、内輪案内、外輪案内のいずれの方式であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1、1a、1b アンギュラ玉軸受
2 外輪
2a 外輪軌道溝
2b 肩部
2c カウンタボア
2d 段差
3 内輪
3a 内輪軌道溝
3b 肩部
3c カウンタボア
3d 段差
4 玉
10,10a、10b、10c 保持器
11 ポケット
12 柱部
13、14 リム部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10