(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137699
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】運行管理システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G08G1/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044016
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 駿
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA02
5H181AA07
5H181AA27
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL09
5H181MB01
(57)【要約】
【課題】走行状況に適した隊列走行を実現可能な運行管理システムを提供する。
【解決手段】本発明は、乗員の有無に関する情報を含む運転情報、種類又は型に関する特性情報、目標走行経路の情報、及び位置情報を取得する情報取得部11と、目標走行経路及び位置情報に基づいて、同一の走行経路を隊列走行する予定の又は隊列走行中の複数の登録モビリティを検出する隊列走行検出部12と、隊列走行予定又は隊列走行中の走行経路である隊列走行経路の状態を検出する経路状態検出部13と、運転情報、特性情報、及び隊列走行経路の状態情報に基づいて、隊列走行検出部12で検出された複数の登録モビリティの隊列走行における走行順序及び走行間隔の少なくとも一方を設定する隊列設定部14と、隊列設定部14の設定結果に基づく隊列指示を、変更対象の登録モビリティに送信する指示送信部15と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種類又は型が異なるモビリティを含む複数の登録モビリティの運行を管理するように、各前記登録モビリティと通信可能に構成された運行管理システムであって、
各前記登録モビリティから受信した情報に基づいて、乗員の有無に関する情報を含む各前記登録モビリティの運転情報、各前記登録モビリティの種類又は型に関する特性情報、各前記登録モビリティの目標走行経路の情報、及び各前記登録モビリティの位置情報を取得する情報取得部と、
前記目標走行経路及び前記位置情報に基づいて、同一の走行経路を隊列走行する予定の又は隊列走行中の複数の前記登録モビリティを検出する隊列走行検出部と、
隊列走行予定又は隊列走行中の前記走行経路である隊列走行経路の状態を検出する経路状態検出部と、
前記運転情報、前記特性情報、及び前記隊列走行経路の状態情報に基づいて、前記隊列走行検出部で検出された複数の前記登録モビリティの隊列走行における走行順序及び走行間隔の少なくとも一方を設定する隊列設定部と、
前記隊列設定部の設定結果に基づく隊列指示を、変更対象の前記登録モビリティに送信する指示送信部と、
を備える、運行管理システム。
【請求項2】
前記経路状態検出部は、前記隊列走行経路が所定勾配以上の坂道であるか否かを判定し、
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により前記隊列走行経路が所定勾配以上の坂道であると判定されている場合、前記運転情報に基づいて、有人の前記登録モビリティが無人の前記登録モビリティよりも坂道の上方に位置するように、前記走行順序を設定する、
請求項1に記載の運行管理システム。
【請求項3】
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により前記隊列走行経路が所定勾配以上の坂道であると判定され、且つ、隊列中に有人の前記登録モビリティ又は無人の前記登録モビリティが複数存在する場合、前記特性情報に基づいて、前記登録モビリティの重量が小さいほど坂道の上方に位置するように、複数の有人の前記登録モビリティ又は複数の無人の前記登録モビリティの前記走行順序を設定する、
請求項2に記載の運行管理システム。
【請求項4】
前記情報取得部は、前記運転情報として、前記登録モビリティの運転が自動運転及び手動運転の何れであるかの情報を取得し、
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により前記隊列走行経路が所定勾配以上の坂道であると判定され、且つ、隊列中に同種類又は同型の有人の前記登録モビリティが複数存在する場合、有人手動運転の前記登録モビリティが有人自動運転の前記登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、前記走行順序を設定する、
請求項2又は3に記載の運行管理システム。
【請求項5】
前記情報取得部は、前記運転情報として、前記登録モビリティの運転が自動運転及び手動運転の何れであるかの情報を取得し、
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により前記隊列走行経路が所定勾配以上の坂道であると判定され、且つ、隊列中に有人の前記登録モビリティが複数存在する場合、有人手動運転の前記登録モビリティが有人自動運転の前記登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、前記走行順序を設定する、
請求項2に記載の運行管理システム。
【請求項6】
前記経路状態検出部は、前記隊列走行経路が所定勾配以上の坂道であるか否かを判定し、
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により隊列走行予定の前記隊列走行経路が所定勾配以上の坂道であると判定されている場合、前記隊列走行経路が所定勾配以上の坂道になる前に、前記走行順序を設定し、
前記指示送信部は、前記隊列走行経路が所定勾配以上の坂道になる前に、隊列の前記走行順序が変更されるように、変更対象の前記登録モビリティに前記隊列指示を送信する、
請求項1~5の何れか一項に記載の運行管理システム。
【請求項7】
前記経路状態検出部は、前記隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であるか否かを判定し、
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により前記隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であると判定されている場合、前記運転情報に基づいて、有人の前記登録モビリティが無人の前記登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、前記走行順序を設定する、
請求項1又は2に記載の運行管理システム。
【請求項8】
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により前記隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であると判定され、且つ、隊列中に有人の前記登録モビリティ又は無人の前記登録モビリティが複数存在する場合、前記特性情報に基づいて、前記登録モビリティの重量が小さいほど進行方向の後方に位置するように、複数の有人の前記登録モビリティ又は複数の無人の前記登録モビリティの前記走行順序を設定する、
請求項7に記載の運行管理システム。
【請求項9】
前記情報取得部は、前記運転情報として、前記登録モビリティの運転が自動運転及び手動運転の何れであるかの情報を取得し、
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により前記隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であると判定され、且つ、隊列中に同種類又は同型の有人の前記登録モビリティが複数存在する場合、有人手動運転の前記登録モビリティが有人自動運転の前記登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、前記走行順序を設定する、
請求項7又は8に記載の運行管理システム。
【請求項10】
前記情報取得部は、前記運転情報として、前記登録モビリティの運転が自動運転及び手動運転の何れであるかの情報を取得し、
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により前記隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であると判定され、且つ、隊列中に有人の前記登録モビリティが複数存在する場合、有人手動運転の前記登録モビリティが有人自動運転の前記登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、前記走行順序を設定する、
請求項7に記載の運行管理システム。
【請求項11】
前記経路状態検出部は、前記隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であるか否かを判定し、
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により隊列走行予定の前記隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であると判定されている場合、前記隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満になる前に、前記走行順序を設定し、
前記指示送信部は、前記隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満になる前に、隊列の前記走行順序が変更されるように、前記隊列指示を送信する、
請求項1、7~10の何れか一項に記載の運行管理システム。
【請求項12】
各前記登録モビリティに対して、互いの重なりを禁止する所定の領域を持つ保護バブルを設定する保護バブル設定部をさらに備え、
前記保護バブル設定部は、進行方向において、
後方の第1登録モビリティが前方の第2登録モビリティの左側を走行して前記第2登録モビリティを追い越す場合、前記第1登録モビリティの右側の前記保護バブルを小さくし、且つ前記第2登録モビリティの左側の前記保護バブルを小さくし、
前記第1登録モビリティが前記第2登録モビリティの右側を走行して前記第2登録モビリティを追い越す場合、前記第1登録モビリティの左側の前記保護バブルを小さくし、且つ前記第2登録モビリティの右側の前記保護バブルを小さくする、
請求項1~11の何れか一項に記載の運行管理システム。
【請求項13】
前記隊列設定部は、前記走行間隔を小さくする場合、前記運転情報に基づいて、有人の前記登録モビリティが無人の前記登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、前記走行順序を設定する、
請求項1~12の何れか一項に記載の運行管理システム。
【請求項14】
前記隊列設定部は、前記走行間隔を小さくする場合であって、隊列中に有人の前記登録モビリティ又は無人の前記登録モビリティが複数存在する場合、前記特性情報に基づいて、前記登録モビリティの重量が小さいほど進行方向の後方に位置するように、複数の有人の前記登録モビリティ又は複数の無人の前記登録モビリティの前記走行順序を設定する、
請求項13に記載の運行管理システム。
【請求項15】
前記情報取得部は、前記運転情報として、前記登録モビリティの運転が自動運転及び手動運転の何れであるかの情報を取得し、
前記隊列設定部は、前記走行間隔を小さくする場合であって、隊列中に同種類又は同型の有人の前記登録モビリティが複数存在する場合、有人手動運転の前記登録モビリティが有人自動運転の前記登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、前記走行順序を設定する、
請求項13又は14に記載の運行管理システム。
【請求項16】
前記情報取得部は、前記運転情報として、前記登録モビリティの運転が自動運転及び手動運転の何れであるかの情報を取得し、
前記隊列設定部は、前記走行間隔を小さくする場合、有人手動運転の前記登録モビリティが有人自動運転の前記登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、前記走行順序を設定する、
請求項13に記載の運行管理システム。
【請求項17】
前記経路状態検出部は、前記隊列走行経路が所定勾配以上の坂道であるか否かを判定し、
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により前記隊列走行経路が所定勾配以上の坂道であると判定されている場合、前記走行間隔を一律に大きくする、
請求項1~16の何れか一項に記載の運行管理システム。
【請求項18】
前記経路状態検出部は、前記隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であるか否かを判定し、
前記隊列設定部は、前記経路状態検出部により前記隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であると判定されている場合、前記走行間隔を一律に大きくする、
請求項1~17の何れか一項に記載の運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のモビリティの運行を管理する運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の自動運転可能な車両の運行を管理する運行管理システムは、例えば複数の自動運転車両が縦列(進行方向)に並んで走行する隊列走行を管理することができる。例えば特開2021-028748号公報には、隊列の分断を防止するために、車両の隊列における順序を設定し、進行方向の先頭から後方に向けて車両を走行性能の低い順に配置する隊列走行システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗用車やトラック等の様々なモビリティ(移動体)により隊列走行が実行される状況において、走行経路の状態によっては、衝突(特に追突)時の被害の大きさである被害リスクの観点から、隊列中のモビリティの走行順序が最適でないことがある。このような観点において、従来の運行管理システムには、改良の余地がある。
本発明の目的は、走行状況に適した隊列走行を実現可能な運行管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の運行管理システムは、種類又は型が異なるモビリティを含む複数の登録モビリティの運行を管理するように、各前記登録モビリティと通信可能に構成された運行管理システムであって、各前記登録モビリティから受信した情報に基づいて、乗員の有無に関する情報を含む各前記登録モビリティの運転情報、各前記登録モビリティの種類又は型に関する特性情報、各前記登録モビリティの目標走行経路の情報、及び各前記登録モビリティの位置情報を取得する情報取得部と、前記目標走行経路及び前記位置情報に基づいて、同一の走行経路を隊列走行する予定の又は隊列走行中の複数の前記登録モビリティを検出する隊列走行検出部と、隊列走行予定の又は隊列走行中の前記走行経路である隊列走行経路の状態を検出する経路状態検出部と、前記運転情報、前記特性情報、及び前記隊列走行経路の状態情報に基づいて、前記隊列走行検出部で検出された複数の前記登録モビリティの隊列走行における走行順序及び走行間隔の少なくとも一方を設定する隊列設定部と、前記隊列設定部の設定結果に基づく隊列指示を、変更対象の登録モビリティに送信する指示送信部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
隊列走行経路の状態は、例えば目標走行経路として選択された走行経路(例えば坂道の有無)や天候(例えば雨天)等により異なることがあり、様々なケースが考えられる。また、運転状況も、無人の自動運転車両や有人の手動運転など、複数のケースが考えられる。本発明によれば、登録モビリティの種類又は型に関する特性情報だけでなく、隊列走行経路の状態及び運転情報をも考慮して、走行順序及び走行間隔の少なくとも一方が設定される。例えば、隊列走行経路の状態が坂道であった場合、坂道の下方に位置するモビリティのほうが上方に位置するモビリティよりも被害リスク(衝突時の被害の大きさ)は大きいと考えられる。この場合、本発明によれば、上方に有人運転のモビリティを配置し、下方に無人運転のモビリティを配置することが可能となる。つまり、本発明によれば、隊列走行経路の状態に応じて、被害リスクが小さい位置に安全性が優先されるモビリティを配置することができる。このように、モビリティの特性、乗員の有無、及び走行経路の状態を考慮することで、走行状況に適した隊列走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の運行管理システムの構成図である。
【
図2】本実施形態において坂道(下り坂)での走行順序の変更例を示す概念図である。
【
図3】本実施形態において坂道(上り坂)での走行順序の変更例を示す概念図である。
【
図4】本実施形態においてスリップ警戒状態での走行順序の変更例を示す概念図である。
【
図5】本実施形態の保護バブルの設定例を説明するための概念図である。
【
図6】本実施形態の走行順序変更の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の一実施形態である運行管理システム1を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【0009】
本実施形態の運行管理システム1は、少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリを備える電子制御ユニット(ECU)又はコンピュータ(例えば車載コンピュータ)である。メモリには、各種プログラムや各種データが記憶されている。プロセッサは、メモリからプログラムを読み出して実行し、各種演算・制御を実行する。車両内の通信は、CAN(car area network or controllable area network)によって行われる。
【0010】
運行管理システム1は、種類又は型が異なるモビリティを含む複数の登録モビリティの運行を管理するように、各登録モビリティと通信可能に構成(接続)されたシステムである。登録モビリティは、運行管理システム1に登録されているモビリティであって、運行管理システム1の管理対象のモビリティである。本実施形態において、登録モビリティとして、複数のピックアップトラック(小型貨物トラック)と、複数の大型ダンプトラック(大型重機)とが登録されている。
【0011】
運行管理システム1は、無線機(図示略)及び通信ネットワークを介して、各登録モビリティと通信可能に構成されている。運行管理システム1は、各登録モビリティから各種情報(例えば識別情報、位置情報、及び状態情報等)を受信する。本実施形態の運行管理システム1は、中央管制システムの一部であり、後述する経路演算部10により演算された目標走行経路の情報を、対応する登録モビリティに送信する。自動運転が指示された登録モビリティは、受信した目標走行経路の情報に基づいて自動運転を実行する。
【0012】
図1に示すように、各登録モビリティには、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)の受信機2、及び走行を制御するECU3が設けられている。各登録モビリティは、受信機2で演算されたGNSSの測位データに基づく位置情報と、モビリティの状態を示す状態情報(例えば走行速度等)を運行管理システム1に送信する。つまり、運行管理システム1は、各登録モビリティから位置情報と状態情報を受信する。ECU3は、運行管理システム1から受信した目標走行経路に基づいて、自動運転制御を実行する。各登録モビリティには、運行管理システム1と通信するための無線機(図示略)が設けられている。
【0013】
一部又はすべての登録モビリティ(本例では全登録モビリティ)には、それぞれ周辺監視装置4が設けられている。周辺監視装置4は、自モビリティの周辺を監視(認識)する装置であって、例えばライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging, or Laser Imaging Detection and Ranging)を含んで構成されている。本実施形態の周辺監視装置4は、例えば、1つ以上のライダー、自モビリティの周辺を撮像する1つ以上のカメラ、及び自モビリティと自モビリティ周辺の物体との距離を測定する1つ以上のレーダーを備えている。例えば、周辺監視装置4の検出結果と3次元地図データとに基づいて、精度の良い周辺状況及び自己位置の認識が可能となる。ECU3は、周辺監視装置4の検出結果に基づいて、局所的な目標走行経路(目標軌道)の修正を実行可能に構成されている。
【0014】
(運行管理システムの詳細構成)
図1に示すように、運行管理システム1は、機能として、経路演算部10と、情報取得部11と、隊列走行検出部12と、経路状態検出部13と、隊列設定部14と、指示送信部15と、保護バブル設定部16と、を備えている。経路演算部10は、地図データ、各登録モビリティから受信した位置情報、及び目的地の情報に基づいて、各登録モビリティの目標走行経路を演算する。経路演算部10で演算された目標走行経路の情報は、対応する登録モビリティに送信される。
【0015】
情報取得部11は、各登録モビリティから受信した情報に基づいて、乗員の有無に関する情報を含む各登録モビリティの「運転情報」、各登録モビリティの種類又は型に関する「特性情報」、各登録モビリティの「目標走行経路の情報」、及び各登録モビリティの「位置情報」を取得する。
【0016】
情報取得部11は、例えば、各登録モビリティから自身のモビリティを特定できる識別情報(例えばID)を受信する。運行管理システム1のメモリには、識別情報と登録モビリティの特性情報との対応関係が記憶されている。情報取得部11は、受信した識別情報に対応する特性情報(ピックアップトラック又は大型ダンプトラック)をメモリから読み取ることで、特性情報を取得する。
【0017】
運行管理システム1は、特性情報に基づいて、登録モビリティの重量(例えば、異なる種類の登録モビリティ間の重量の大小関係)を把握することができる。運行管理システム1には、ピックアップトラックの重量が大型ダンプトラックの重量よりも小さいことが設定されている。特性情報は、重量に関する情報ともいえる。なお、情報取得部11は、各登録モビリティから識別情報だけでなく特性情報も受信することで、各登録モビリティの特性情報を取得してもよい。この場合、予めメモリ等に識別情報と特性情報との対応関係を記憶しておく必要はない。
【0018】
情報取得部11は、各登録モビリティから、運転情報として、乗員の有無の情報(有人又は無人)、及び運転モードが自動運転であるか手動運転であるかの情報を受信する。つまり、本実施形態において、運転情報は、登録モビリティの運転状況が、有人自動運転、有人手動運転、及び無人自動運転のうちの何れに該当するかを示す情報である。各登録モビリティは、自身の運転情報を運行管理システム1に送信する。
【0019】
情報取得部11は、経路演算部10から目標走行経路の情報を取得する。また、情報取得部11は、各登録モビリティ又は経路演算部10から位置情報を取得する。なお、目標走行経路が登録モビリティで演算されている場合、情報取得部11は、登録モビリティから目標走行経路を取得してもよい。
【0020】
隊列走行検出部12は、目標走行経路及び位置情報に基づいて、同一の走行経路を隊列走行する予定の又は隊列走行している複数の登録モビリティを検出する。隊列走行とは、複数のモビリティが縦列に並んで(進行方向に沿って例えば所定走行間隔以内で並んで)走行することを意味する。隊列走行検出部12は、位置情報に基づいて現在隊列走行している複数の登録モビリティを特定でき、目標走行経路の情報に基づいてどの区間隊列走行するか等を特定することができる。また、隊列走行検出部12は、各登録モビリティの目標走行経路、位置情報、及び状態情報(走行速度)に基づいて、例えば目標走行経路上の各位置における走行予定時刻を演算でき、隊列走行予定の複数の登録モビリティを検出(認識)することができる。
【0021】
経路状態検出部13は、隊列走行予定又は隊列走行中の走行経路である隊列走行経路の状態を検出する。隊列走行経路の状態は、例えば、経路の勾配の度合い、天候、経路の曲がり度合い、又は路面状態(例えば舗装路、未舗装路、路面摩擦係数等)等で表すことができる。運行管理システム1には、例えば、各経路の勾配情報を持つ地図データが記憶されている。経路状態検出部13は、例えば各経路の勾配情報を持つ地図データに基づいて、隊列走行経路が所定勾配以上の坂道であるか否かを判定する。
【0022】
また、経路状態検出部13は、登録モビリティから受信した路面摩擦係数に関する情報に基づいて、隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であるか否かを判定する。運行管理システム1には、一部の又はすべての登録モビリティから現在走行中の路面摩擦係数に関する情報を受信する。複数の登録モビリティには、それぞれ車輪速度センサが設けられている。登録モビリティのECU3は、車輪速度に基づいて路面摩擦係数(路面μ)を演算することができる。運行管理システム1(経路状態検出部13)は、受信した路面摩擦係数を地図データ上の経路と関連付けて記憶し、路面摩擦係数の現状を更新していく。経路状態検出部13は、地図データと関連付けされた路面摩擦係数の情報に基づいて、隊列走行経路の路面摩擦係数を把握する。
【0023】
隊列設定部14は、運転情報、特性情報、及び隊列走行経路の状態情報に基づいて、隊列走行検出部12で検出された複数の登録モビリティの隊列走行における走行順序及び走行間隔の少なくとも一方を設定する。つまり、隊列設定部14は、隊列走行対象の登録モビリティが検出されると、運転情報、特性情報、及び隊列走行経路の状態に基づいて、必要に応じて、隊列走行における走行順序及び走行間隔の少なくとも一方を設定する。運転情報は、例えば有人自動運転、有人手動運転、又は無人自動運転を示している。特性情報は、例えばピックアップトラック又は大型ダンプトラックを示している。隊列走行経路の状態情報は、例えば勾配が所定勾配以上の坂道、勾配が所定勾配未満の経路、又は路面摩擦係数が所定値未満のスリップ警戒状態等を示している。
【0024】
指示送信部15は、隊列設定部14の設定結果に基づく隊列指示(隊列設定情報)を、変更対象の登録モビリティ(すなわち走行順序及び/又は走行間隔が現状から変更される登録モビリティ)に送信する。変更対象の各登録モビリティのECU3は、受信した隊列指示に基づいて、他の登録モビリティと連動して、走行順序及び走行間隔の少なくとも一方を変更することができる。なお、隊列指示(隊列設定情報)は、少なくとも変更対象の登録モビリティに送信されればよく、隊列を構成するすべての登録モビリティに送信されてもよい。保護バブル設定部16については、後述する。
【0025】
(本実施形態の効果)
隊列走行経路の状態は、例えば目標走行経路として選択された走行経路(例えば坂道の有無)や天候(例えば雨天)等により異なることがあり、様々なケースが考えられる。また、運転状況も、無人の自動運転車両や有人の手動運転など、複数のケースが考えられる。本実施形態によれば、登録モビリティの種類又は型に関する特性情報だけでなく、隊列走行経路の状態及び運転情報をも考慮して、走行順序及び走行間隔の少なくとも一方が設定される。例えば、隊列走行経路の状態が坂道であった場合(特に下り坂の場合)、坂道の下方に位置するモビリティのほうが上方に位置するモビリティよりも被害リスク(追突時の被害の大きさ)は大きいと考えられる。この場合、本実施形態によれば、上方に有人運転のモビリティを配置し、下方に無人運転のモビリティを配置することが可能となる。つまり、本実施形態によれば、走行状況に応じて、被害リスクが小さい位置に安全性が優先されるモビリティを配置することができる。このように、モビリティの特性、乗員の有無、及び走行経路の状態を考慮することで、走行状況に適した隊列走行が可能となる。
【0026】
(第1坂道ルール)
隊列設定部14は、経路状態検出部13により隊列走行経路が所定勾配以上の坂道(以下、単に「坂道」ともいう)であると判定されている場合、運転情報に基づいて、有人の登録モビリティが無人の登録モビリティよりも坂道の上方に位置するように、走行順序を設定する。隊列設定部14には、安全性確保の優先度として、有人自動運転又は有人手動運転の登録モビリティが無人自動運転の登録モビリティよりも優先されることが記憶されている。
【0027】
また、隊列設定部14には、坂道走行時における被害リスク(追突時の被害の大きさ)の大小として、坂道の上方に位置する登録モビリティほど、被害リスクは小さいことが記憶されている。隊列設定部14は、被害リスクが小さい位置に安全性確保の優先度が高い登録モビリティを配置するように構成されている。したがって、隊列設定部14は、隊列走行経路が坂道(下り坂又は上り坂)であった場合、被害リスクが小さい坂道の上方の位置に、安全性確保の優先度が高い有人の(乗員有りの)登録モビリティが配置されるように、走行順序を設定する。これにより、仮に追突が発生した場合でも、有人の登録モビリティの被害を抑えることができる。この走行順序のルールを、第1坂道ルールと称する。
【0028】
(第2坂道ルール)
隊列中に有人の登録モビリティが複数存在している場合、隊列設定部14は、重量が相対的に小さい登録モビリティが、相対的に坂道の上方に位置するように走行順序を設定する。つまり、隊列設定部14は、経路状態検出部13により走行経路が坂道であると判定され、且つ、隊列中に有人の登録モビリティが複数存在する場合、特性情報に基づいて、登録モビリティの重量が小さいほど坂道の上方に位置するように、複数の有人の登録モビリティの走行順序を設定する。これは、重量が大きいモビリティほど、当該モビリティが坂道の上方から下方に向けて移動(下り坂走行時)又はスリップして下方のモビリティに衝突・追突した際の、下方のモビリティの被害が大きいとの考え方に基づいている。また、隊列走行経路が上り坂である場合、重量が大きいモビリティの発進できない可能性やずり下がりの可能性があることから、上記走行順序が設定されている。
【0029】
したがって、隊列設定部14は、隊列中に複数の有人の登録モビリティが存在する場合、被害リスクが小さい位置である坂道の上方の位置に、重量が相対的に小さい登録モビリティを配置するように構成されている。これにより、仮に隊列内で衝突が発生した場合でも、重量の小さい登録モビリティの被害を抑えることができ、隊列全体の被害を抑えることができる。この走行順序のルールを、第2坂道ルールと称する。第2坂道ルールは、隊列中に複数の無人の登録モビリティが存在する場合における複数の無人の登録モビリティの走行順序の設定に対しても適用される。
【0030】
(第3坂道ルール)
隊列設定部14は、経路状態検出部13により隊列走行経路が所定勾配以上の坂道であると判定され、且つ、隊列中に同種類又は同型(すなわち同一重量)の有人の登録モビリティが複数存在する場合、有人手動運転の登録モビリティが有人自動運転の登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、走行順序を設定する。この走行順序のルールを、第3坂道ルールと称する。
【0031】
第3坂道ルールによれば、例えば、隊列中に、有人自動運転の第1登録モビリティと、第1登録モビリティと同種類のモビリティであって有人手動運転の第2登録モビリティとが存在した場合、隊列設定部14は、有人手動運転の登録モビリティが有人自動運転の登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、両者の走行順序を設定する。第3坂道ルールは、手動運転のほうが自動運転よりも危険察知能力や危機回避能力が高く、危険を避けやすいとの考え方に基づいて設定されている。第3坂道ルールによれば、追突の可能性がある隊列の後方(後続)の位置に、有人手動運転の登録モビリティが配置されることで、より追突発生の可能性が小さくなる。
【0032】
第3坂道ルールによれば、隊列設定部14は、有人自動運転のピックアップトラック(又は大型ダンプトラック)が有人手動運転のピックアップトラック(又は大型ダンプトラック)の前方に配置されるように、走行順序を設定する。このように、例えば、隊列中に、手動運転と自動運転との区別を除いた運転情報及び特性情報が同じ複数の登録モビリティが存在する場合、隊列のうち相対的に前方に自動運転が配置され、相対的に後方に手動運転が配置される。これにより、隊列内での追突発生の可能性を抑えることができる。なお、第3坂道ルールは、隊列の前後を規定しており、坂道以外でも適用できる。
【0033】
(坂道での走行順序変更例)
図2に示すように、例えば、隊列中に、有人自動運転のピックアップトラック、有人手動運転のピックアップトラック、有人手動運転の大型ダンプトラック、有人自動運転の大型ダンプトラック、無人自動運転のピックアップトラック、及び無人自動運転の大型ダンプトラックが存在するケースについて説明する。
【0034】
このケースにおいて、隊列走行経路が坂道(ここでは下り坂)であった場合、隊列設定部14が設定する走行順序は、坂道の下方から上方に向けて、すなわち進行方向の先頭から後方に向けて、無人自動運転の大型ダンプトラック、無人自動運転のピックアップトラック、有人自動運転の大型ダンプトラック、有人手動運転の大型ダンプトラック、有人自動運転のピックアップトラック、有人手動運転のピックアップトラックの順となる。
【0035】
隊列設定部14は、経路状態検出部13により隊列走行予定の隊列走行経路が坂道であると判定されている場合、隊列走行経路が坂道になる前に、走行順序を設定する。指示送信部15は、隊列走行経路が坂道になる前に、隊列の走行順序が変更されるように、変更対象の登録モビリティに隊列指示を送信する。つまり、経路状態検出部13により将来的に隊列が坂道を走行することが検出されている場合、隊列が当該坂道に到達する前に、隊列設定部14が走行順序を設定し、指示送信部15が坂道到達前に走行順序を変更するように対象の登録モビリティに指示する。これにより、隊列が坂道に到達する前に、走行順序が変更され、各登録モビリティは、坂道走行開始時から坂道に適した走行順序で隊列走行することができる。また、走行順序の入れ替え時の追い抜き走行等を、坂道に入る前に行うことで、より安全に走行順序を入れ替えることができる。
【0036】
図2の例では、各ルールの優先度が、第1坂道ルール、第2坂道ルール、第3坂道ルールの順となるように、各ルール内容等が設定されている(優先度:第1坂道ルール>第2坂道ルール>第3坂道ルール)。しかし、各ルールの設定は上記に限らず、例えば、第3坂道ルールが、隊列中に複数の有人の登録モビリティが存在する場合、重量にかかわらず、有人手動運転の登録モビリティが有人自動運転の登録モビリティよりも坂道の上方(進行方向の後方)に位置するように設定されてもよい。この第3坂道ルールと第2坂道ルールとを併用する場合、両ルール間で優先度の高低を設定する必要がある。各ルールの内容、適用の優先度、及び適用の可否については、適宜設定可能である。また、各ルールは、下り坂でも上り坂でも適用できる。
【0037】
図3に示すように、隊列走行経路が上り坂である場合、隊列設定部14が設定する走行順序は、坂道の上方から下方に向けて、すなわち進行方向の先頭から後方に向けて、有人自動運転のピックアップトラック、有人手動運転のピックアップトラック、有人自動運転の大型ダンプトラック、有人手動運転の大型ダンプトラック、無人自動運転のピックアップトラック、無人自動運転の大型ダンプトラックの順となる。
図3の場合、変更前の有人自動運転の大型ダンプトラックを、有人手動運転のピックアップトラックが追い越すことで、走行順序が隊列設定部14で設定された走行順序に変更される。したがって、この場合、指示送信部15は、例えば、有人自動運転の大型ダンプトラックと有人手動運転のピックアップトラックに隊列指示(入れ替え指示)を送信する。
【0038】
(第1警戒ルール)
経路状態検出部13は、隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であるか否かを判定する。隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満である場合、隊列走行経路の状態は、スリップしやすい状態(以下「スリップ警戒状態」ともいう)といえる。例えば、雨で濡れた道路、積雪している道路、又は凍っている道路等は、スリップしやすい。路面摩擦係数は、例えば、登録モビリティに設けられた車輪速度センサの検出値に基づいてECU3で演算される。運行管理システム1は、路面摩擦係数を演算した登録モビリティから、路面摩擦係数の情報を受信する。
【0039】
隊列設定部14は、経路状態検出部13により隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であると判定されている場合、運転情報に基づいて、有人の登録モビリティが無人の登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、走行順序を設定する。隊列走行経路がスリップ警戒状態である場合、追突が発生する可能性が普段よりも高いと考えられる。また、追突事故において、追突される登録モビリティのほうが追突する登録モビリティよりも被害リスクが大きいと考えられる。この考え方に基づいて、隊列設定部14は、被害リスクが相対的に小さい進行方向の後方の位置に、安全性確保の優先度が高い登録モビリティすなわち有人の登録モビリティを配置するように構成されている。隊列設定部14は、有人の登録モビリティが無人の登録モビリティよりも後方に配置されるように、走行順序を設定する。この走行順序のルールを、第1警戒ルールと称する。
【0040】
(第2警戒ルール)
隊列設定部14は、経路状態検出部13により隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であると判定され、且つ、隊列中に有人の登録モビリティ又は無人の登録モビリティが複数存在する場合、特性情報に基づいて、登録モビリティの重量が小さいほど進行方向の後方に位置するように、複数の有人の登録モビリティ又は複数の無人の登録モビリティの走行順序を設定する。この走行順序のルールを、第2警戒ルールと称する。第2警戒ルールは、重量が小さいモビリティほど、後ろから追突した時の相手モビリティ(前方のモビリティ)の被害が小さいとの考え方に基づいて設定されている。これにより、追突が発生した場合でも、被害を抑えることができる。
【0041】
(第3警戒ルール)
隊列設定部14は、経路状態検出部13により隊列走行経路の路面摩擦係数が所定値未満であると判定され、且つ、隊列中に同種類又は同型(すなわち同一重量)の有人の登録モビリティが複数存在する場合、有人手動運転の登録モビリティが有人自動運転の登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように、走行順序を設定する。この走行順序のルールを、第3警戒ルールと称する。第3警戒ルールは、第3坂道ルール同様、手動運転のほうが自動運転よりも危機察知能力及び危機回避能力が高いとの考え方に基づいて設定されている。これにより、追突発生の可能性を抑えることができる。
【0042】
(スリップ警戒状態での走行順序変更例)
図4に示すように、例えば、隊列中に、有人自動運転のピックアップトラック、有人手動運転のピックアップトラック、有人手動運転の大型ダンプトラック、有人自動運転の大型ダンプトラック、無人自動運転のピックアップトラック、及び無人自動運転の大型ダンプトラックが存在するケースについて説明する。
【0043】
このケースにおいて、隊列走行経路の状態がスリップ警戒状態であった場合、隊列設定部14が設定する走行順序は、進行方向の先頭から後方に向けて、無人自動運転の大型ダンプトラック、無人自動運転のピックアップトラック、有人自動運転の大型ダンプトラック、有人手動運転の大型ダンプトラック、有人自動運転のピックアップトラック、有人手動運転のピックアップトラックの順となる。
【0044】
隊列設定部14は、経路状態検出部13により隊列走行予定の隊列走行経路の状態がスリップ警戒状態であると判定されている場合、隊列走行経路の状態がスリップ警戒状態になる前に、走行順序を設定する。指示送信部15は、隊列走行経路の状態がスリップ警戒状態になる前に、隊列の走行順序が変更されるように、隊列指示を送信する。つまり、経路状態検出部13により将来的に隊列がスリップ警戒状態の経路(以下「悪路」ともいう)を走行することが検出されている場合、隊列が当該悪路に到達する前に、隊列設定部14が走行順序を設定し、指示送信部15が当該悪路到達前に走行順序を変更するように各登録モビリティに指示する。これにより、隊列が悪路に到達する前に、走行順序が変更され、各登録モビリティは、悪路走行開始時から悪路に適した走行順序で隊列走行することができる。また、走行順序の入れ替え時の追い抜き走行等を、悪路に入る前に行うことで、より安全に走行順序を入れ替えることができる。
【0045】
図4の例では、各ルールの優先度が、第1警戒ルール、第2警戒ルール、第3警戒ルールの順となるように、各ルールが設定されている(優先度:第1警戒ルール>第2警戒ルール>第3警戒ルール)。しかし、各ルールの設定は上記に限らず、例えば、第3警戒ルールが、隊列中に複数の有人の登録モビリティが存在する場合、重量にかかわらず、有人手動運転の登録モビリティが有人自動運転の登録モビリティよりも進行方向の後方に位置するように設定されてもよい。この場合、第2警戒ルールを併用する場合、第2警戒ルールと第3警戒ルールとの間で優先度の高低を設定する必要がある。各ルールの内容、適用の優先度、及び適用の可否については、適宜設定可能である。
【0046】
運行管理システム1には、隊列走行経路の状態が坂道で且つスリップ警戒状態である場合、いずれのルールを適用するか又は新たなルールを適用するかが予め設定されている。本実施形態では、隊列走行経路の状態が坂道で且つスリップ警戒状態である場合、坂道ルールを適用するように設定されている。なお、
図2と
図4の例では、坂道とスリップ警戒状態とで同様のルールが設定されており、且つ坂道が下り坂であったため、両状態で同じ走行順序となっている。仮に、隊列走行経路の状態が坂道で且つスリップ警戒状態である場合、坂道ルールと警戒ルールとで優先度が高いほうのルールが適用されてもよいし、新たなルールが適用されてもよい。
【0047】
(走行間隔の変更)
隊列設定部14は、早急に複数の登録モビリティを目的地に到達させたい状況、例えば緊急掘削等により大型モビリティを密な状態で走らせたい状況(効率重視の状況)又は人を乗せて小型モビリティが現場に向かいたい状況(緊急時)等において、走行間隔を通常時の設定値(例えば初期値)よりも小さくする。隊列設定部14は、走行間隔の変更とともに、例えば警戒ルールに基づいて走行順序も設定する。
【0048】
車間距離を小さくして隊列走行させる場合、車間距離が小さくなる分、追突が生じやすくなるため、隊列設定部14は、被害リスクの観点から走行順序を警戒ルールに応じて変更する(
図4参照)。つまり、隊列設定部14は、走行間隔を小さくする場合(例えば一律に)、第1警戒ルール、第2警戒ルール、及び第3警戒ルールに基づいて走行順序を設定する。これにより、効率重視の状況又は緊急時に対応できるとともに、追突が発生した際の被害を抑えることができる。なお、車間距離を小さくする場合の走行順序のルールが別途設定されてもよい。また、隊列設定部14は、走行間隔を小さくするにあたり、第1警戒ルールのみ、第1警戒ルールと第2警戒ルールのみ、又は第1警戒ルールと第3警戒ルールのみを適用してもよい。
【0049】
また、隊列設定部14は、隊列走行経路の状態が坂道及び/又は悪路である際に、走行順序の設定・変更とともに、走行間隔を通常時の設定値(例えば初期値)より大きくしてもよい。つまり、隊列設定部14は、経路状態検出部13により隊列走行経路が坂道及び/又は悪路であると判定されている場合、走行間隔を一律に大きくしてもよい。これにより、状況に応じて走行間隔を調整することができ、より追突の危険性を抑えることができる。各登録モビリティは、指示送信部15から受信した隊列指示(走行間隔変更指示)に基づいて、走行間隔を変更する。
【0050】
(保護バブルの設定)
保護バブル設定部16は、各登録モビリティに対して、互いの重なりを禁止する所定の領域を持つ保護バブルを設定する。保護バルブは、各登録モビリティに対して、登録モビリティを中心に例えば円形状、球形状、又はバブル状に設定されている。保護バブル設定部16は、大型ダンプトラックに対して相対的に大きな所定の保護バルブを設定し、ピックアップトラックに対して相対的に小さな所定の保護バブルを設定する。
【0051】
運行管理システム1及び各登録モビリティのECU3は、自モビリティの保護バブルと他モビリティの保護バブルとが重ならないように、自動運転を実行する。例えば、運行管理システム1は、2つの保護バブルが重なった場合、両方の登録モビリティを停止させる。運行管理システム1は、例えば、保護バルブの設定情報と位置情報に基づいて保護バブル同士の重なりを検出すると、対象の両登録モビリティに停車指示を送信する。各ECU3は、受信した停車指示に基づいて停車制御を実行する。運行管理システム1は、例えば、保護バブル同士が重なりそうになった場合(例えば両モビリティの間隔が所定値未満となった場合)、保護バブルが重ならないように、警告や、加減速(速度)及び/又は転舵角に関する指示を、少なくとも一方の登録モビリティに送信してもよい。
【0052】
隊列設定部14が走行順序を変更した場合、保護バブル設定部16は、走行順序の変更対象となる各登録モビリティの保護バブルを、追い越し時に互いの保護バブルが重なりにくくなるように変更する。具体的に、
図5に示すように、保護バブル設定部16は、進行方向において、後方の第1登録モビリティ91が前方の第2登録モビリティ92の左側を走行して第2登録モビリティ92を追い越す場合、第1登録モビリティ91の右側の保護バブル(右半分の保護バブル)を小さくし、且つ第2登録モビリティ92の左側の保護バブル(左半分の保護バブル)を小さくする。反対に、保護バブル設定部16は、進行方向において、後方の第1登録モビリティ91が前方の第2登録モビリティ92の右側を走行して第2登録モビリティ92を追い越す場合、第1登録モビリティ91の左側の保護バブル(左半分の保護バブル)を小さくし、且つ第2登録モビリティ92の右側の保護バブル(右半分の保護バブル)を小さくする。これにより、追い越し時の保護バルブの重なりが抑制され、第1登録モビリティ91が第2登録モビリティ92を追い越しやすくなり、走行順序の変更がスムーズになる。
【0053】
追い越しを実行する際、指示送信部15は、例えば、指示速度(指示車速)又は上限速度(上限車速)を下げる指示を第2登録モビリティ92に送信し、第1登録モビリティ91に追い越し許可信号又は追い越し指示(例えば目標軌道の変更指示)を送信する。第1登録モビリティ91及び第2登録モビリティ92の各ECU3は、運行管理システム1の指示に従って走行順序の入れ替えを実行する。各ECU3が保護バブルを認識する構成である場合、指示送信部15は、変更後の保護バブルの情報を各登録モビリティに送信する。なお、追い越し動作の対象に手動運転の登録モビリティが含まれる場合、指示を受信した手動運転の登録モビリティでは、例えば指示内容が運転者に通知(例えば車内の画面に表示される等)される。また、保護バブルの形状や大きさは、適宜設定可能である。
【0054】
走行順序変更の流れの一例を説明すると、
図6に示すように、運行管理システム1は、各登録モビリティから通信ネットワークを介して各種情報(登録モビリティの識別情報や位置情報等)を取得する(S1)。運行管理システム1は、各登録モビリティの目標走行経路及び位置情報等に基づいて、隊列走行予定の又は隊列走行中の複数の登録モビリティを検出する(S2)。運行管理システム1は、道路の勾配情報を含む地図データや登録モビリティから受信した情報(蓄積データ)等に基づいて、走行予定の又は走行中の隊列走行経路の状態を検出・判定する(S3)。
【0055】
運行管理システム1は、隊列走行経路の状態が坂道又は悪路(スリップ警戒状態)であるか否かを判定する(S4)。隊列走行経路の状態が坂道又は悪路である場合(S4:Yes)、運行管理システム1は、経路状態に対応する予め設定されたルールに基づいて、隊列の走行順序の設定を変更する(S5)。運行管理システム1は、走行順序の変更情報を隊列構成対象の各登録モビリティに送信する(S6)。また、運行管理システム1は、追い越し制御対象の登録モビリティの保護バブルを変更する(S7)。変更指示を受信した登録モビリティは、保護バブル変更後の所定のタイミングで、必要に応じて追い越し制御等を実行し、走行順序の入れ替えを実行する。運行管理システム1は、所定間隔毎に上記処理を実行する。
【0056】
(その他)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、隊列走行経路の状態の検出対象は、坂道と悪路だけでなく、悪天候(例えば強風、大雨等)、凹凸路(例えば所定高さの轍がある路面)、又は露天掘りの道路(例えば一方が崖の道路)等でもよい。隊列走行経路が凹凸路であるか否か等は、例えば、各登録モビリティの車輪速度センサの変化量と基準値との比較、ステアリングシステムの転舵モータへの供給電流と基準値との比較、又は周辺監視装置4の検出結果に基づく推定(演算)等により、判定することができる。経路状態検出部13は走行順序や走行間隔の変更が必要な状況を検出し、隊列設定部14は当該状況に応じて走行順序や走行間隔を設定すればよい。
【0057】
また、各登録モビリティ(例えばECU3)が加速度センサ等の検出結果に基づいて道の勾配を検出する場合、運行管理システム1は、各登録モビリティから勾配情報を取得し、経路状態検出部13は取得情報に基づいて隊列走行経路が坂道であるか否かを判定してもよい。また、経路状態検出部13は、登録モビリティから過去に取得した勾配情報に基づいて、隊列走行予定の隊列走行経路が坂道であるか否かを判定してもよい。
【0058】
また、自モビリティの位置情報は、GPSの測位データであってもよい。各登録モビリティは各種センサ(ヨーレートセンサや加速度センサ)を備え、各種検出結果に基づくモビリティの状態情報を運行管理システム1に送信してもよい。走行順序設定における各種ルールは、登録モビリティの最大減速度の大小を考慮して設定されてもよい。登録モビリティの種類は、ピックアップトラックと大型ダンプトラックに限らず、例えば中型トラックや小型乗用車等が含まれてもよい。また、経路状態検出部13は、天候に関する情報を、例えば登録モビリティ又はインターネットから取得し、天候情報を考慮して隊列走行経路の状態を判定してもよい。
【0059】
また、隊列設定部14は、隊列内で衝突(追突)が発生した場合の被害の大きさを示す被害リスクと、隊列中の登録モビリティの位置との関係(リスク位置関係)を、隊列走行経路の状態毎に記憶していてもよい。隊列設定部14は、例えば、坂道でのリスク位置関係と、悪路でのリスク位置関係とを記憶していてもよい。この場合、隊列設定部14は、位置関係記憶部を備えるといえる。さらに、隊列設定部14は、特性情報と運転情報との組み合わせ毎に設定された登録モビリティに対する安全性確保の優先度を、隊列走行経路の状態毎に記憶していてもよい。隊列設定部14は、例えば、有人の登録モビリティの安全性確保の優先度が無人の登録モビリティの安全性確保の優先度よりも高く、ピックアップトラックの安全性確保の優先度が大型ダンプトラックの安全性確保の優先度よりも高い等の優先度情報を記憶していてもよい。この場合、隊列設定部14は、優先度記憶部を備えるといえる。隊列設定部14は、位置関係記憶部と優先度記憶部に記憶された情報に基づいて、走行順序及び走行間隔の少なくとも一方を設定してもよい。
【0060】
また、運行管理システム1は、「走行順序」又は「走行順序と走行間隔」を設定するように構成されてもよい。また、本実施形態では、隊列走行の最小構成数(最小登録モビリティ数)が2に設定されているが、隊列走行の最小構成数が3以上の数値に設定されてもよい。隊列走行における走行間隔の初期値は、一律に一定値であってもよいし、前後の登録モビリティの種類に応じて設定されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…運行管理システム、11…情報取得部、12…隊列走行検出部、13…経路状態検出部、14…隊列設定部、15…指示送信部。