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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137714
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】流体圧シリンダ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20230922BHJP
   F15B 15/16 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F15B15/14 380B
F15B15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044047
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 夏樹
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA02
3H081AA12
3H081BB02
3H081CC23
3H081CC26
3H081CC28
3H081DD13
3H081DD32
3H081HH01
(57)【要約】
【課題】流体圧シリンダを大型にせずに圧力損失を小さくする。
【解決手段】油圧シリンダ100は、ロッド部材60と、ロッドヘッド75と、を備え、ロッド部材60は、ロッド部材60内に設けられロッド側室1及び反ロッド側室5の一方に作動流体を導く第一ロッド内通路63と、第一ロッド内通路63を囲うようにロッド部材60内に設けられロッド側室1及び反ロッド側室5の他方に作動流体を導く環状の第二ロッド内通路64と、を有し、ロッドヘッド75は、ロッドヘッド75外と第一ロッド内通路63とを連通する第一通路80と、ロッドヘッド75外と第二ロッド内通路64とを連通する第二通路81と、を有し、第二通路81は、ロッドヘッド75の外面に開口する主通路81aと、主通路81aから枝分かれして設けられ第二ロッド内通路64にそれぞれ連通する複数の分岐通路81bと、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブに摺動自在に挿入され前記シリンダチューブ内にロッド側室と反ロッド側室を区画するピストン部と、
前記シリンダチューブに挿入され一方の端部が前記ピストン部に連結されるロッド部材と、
前記ロッド部材の他方の端部に設けられるロッドヘッドと、を備え、
前記ロッド部材は、
前記ロッド部材内に設けられ前記ロッド側室及び前記反ロッド側室の一方に作動流体を導く第一ロッド内通路と、
前記第一ロッド内通路を囲うように前記ロッド部材内に設けられ前記ロッド側室及び前記反ロッド側室の他方に作動流体を導く環状の第二ロッド内通路と、を有し、
前記ロッドヘッドは、
前記ロッドヘッド外と前記第一ロッド内通路とを連通する第一通路と、
前記ロッドヘッド外と前記第二ロッド内通路とを連通する第二通路と、を有し、
前記第二通路は、
前記ロッドヘッドの外面に開口する主通路と、
前記主通路から枝分かれして設けられ前記第二ロッド内通路にそれぞれ連通する複数の分岐通路と、を有することを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
前記第一通路は、前記複数の分岐通路の間に位置しないように延びて設けられることを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【請求項3】
前記第一ロッド内通路は、前記第一通路との連通部が前記ロッド部材の中心からずれて設けられることを特徴とする請求項2に記載の流体圧シリンダ。
【請求項4】
前記ロッドヘッドは、
取付対象に取り付けられる円筒状の取付部と、
前記取付部の外面から突出する突出部と、をさらに有し、
前記第一通路及び前記第二通路は、前記突出部の突出方向の先端面に開口して設けられ、
前記第二通路の前記開口は、前記第一通路の前記開口よりも前記取付部側に設けられ、
前記第一通路は、前記複数の分岐通路の間を横切るように設けられることを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリンダチューブと、シリンダチューブに摺動自在に挿入されシリンダチューブ内にロッド側室と反ロッド側室を区画するピストン部と、シリンダチューブに挿入されるロッド部材と、ロッド部材内に設けられ反ロッド側室へ作動流体を導く管部材と、を備える流体圧シリンダが開示されている。ロッド部材内には中空部が形成され、中空部はロッド側室に連通する。また、ロッド部材は、流体圧シリンダを駆動対象に取り付けるための取付部を有し、取付部に設けられる二つの流路が管部材と中空部にそれぞれ連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-143704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような流体圧シリンダでは、二つの流路が取付部に設けられるため、流路断面積が確保し難く、二つの流路で生じる圧力損失が大きいという問題がある。取付部を大きくして二つの流路の断面積を大きくすると、流体圧シリンダが大型化してしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体圧シリンダを大型にせずに圧力損失を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体圧シリンダであって、シリンダチューブと、シリンダチューブに摺動自在に挿入されシリンダチューブ内にロッド側室と反ロッド側室を区画するピストン部と、シリンダチューブに挿入され一方の端部がピストン部に連結されるロッド部材と、ロッド部材の他方の端部に設けられるロッドヘッドと、を備え、ロッド部材は、ロッド部材内に設けられロッド側室及び反ロッド側室の一方に作動流体を導く第一ロッド内通路と、第一ロッド内通路を囲うようにロッド部材内に設けられロッド側室及び反ロッド側室の他方に作動流体を導く環状の第二ロッド内通路と、を有し、ロッドヘッドは、ロッドヘッド外と第一ロッド内通路とを連通する第一通路と、ロッドヘッド外と第二ロッド内通路とを連通する第二通路と、を有し、第二通路は、ロッドヘッドの外面に開口する主通路と、主通路から枝分かれして設けられ第二ロッド内通路にそれぞれ連通する複数の分岐通路と、を有することを特徴とする。
【0007】
この発明では、第一ロッド内通路を囲うようにロッド部材内に環状の第二ロッド内通路が設けられ、第二通路の複数の分岐通路がそれぞれ第二ロッド内通路に作動流体を導く。このように、第二通路の一部を複数の分岐通路で構成することで、第二ロッド内通路の径を大きくせずに第二通路の流路断面積を大きくすることができる。よって、第二通路で生じる圧力損失を小さくすることができる。
【0008】
また、本発明は、第一通路は、複数の分岐通路の間に位置しないように延びて設けられることを特徴とする。
【0009】
この発明では、複数の分岐通路の間に第一通路が位置しない。そのため、第二ロッド内通路の径を大きくせずに分岐通路の径を大きくし、分岐通路の合計流路断面積を大きくすることができる。
【0010】
また、本発明は、第一ロッド内通路は、第一通路との連通部がロッド部材の中心からずれて設けられることを特徴とする。
【0011】
この発明では、第一ロッド内通路がロッド部材の中心軸からずれて設けられるため、第二通路の分岐通路が第二ロッド内通路に連通する面積を最大限確保することができる。
【0012】
また、本発明は、ロッドヘッドは、取付対象に取り付けられる円筒状の取付部と、取付部の外面から突出する突出部と、をさらに有し、第一通路及び第二通路は、突出部の突出方向の先端面に開口して設けられ、第二通路の開口は、第一通路の開口よりも取付部側に設けられ、第一通路は、複数の分岐通路の間を横切るように設けられることを特徴とする。
【0013】
この発明では、第二通路が第一通路よりも取付部側に開口し、第一通路が第二通路の複数の分岐通路の間を横切るように設けられるため、第一通路を短くすることができる。よって、ロッドヘッドをコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流体圧シリンダを大型にせずに圧力損失を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る油圧シリンダの断面模式図であり、最収縮状態を示す図である。
図2】ロッドヘッドを拡大して示す平面図である。
図3】ロッドヘッドを拡大して示す斜視図である。
図4】ロッドヘッドを図3におけるA方向から見た拡大図である。
図5】本発明の実施形態に係る油圧シリンダの断面模式図であり、第一ピストンが伸長位置にあり、第二ピストン及び第三ピストンが収縮位置にある状態を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る油圧シリンダの断面模式図であり、第一ピストン及び第二ピストンが伸長位置にあり、第三ピストンが収縮位置にある状態を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る油圧シリンダの断面模式図であり、最伸長状態を示す図である。
図8】本発明の実施形態の変形例2に係るロッドヘッドの断面模式図である。
図9】本発明の実施形態の変形例3に係るロッドヘッドの断面模式図である。
図10】本発明の実施形態の変形例4に係るロッドヘッドの突出部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1~4を参照して、本発明の実施形態に係る多段式流体圧シリンダ100について説明する。以下では、多段式流体圧シリンダ100が作動油を作動流体として駆動する多段式油圧シリンダ100(以下、単に「油圧シリンダ100」と称する。)である場合について説明する。
【0018】
油圧シリンダ100は、対象に取り付けられ、伸縮することで対象を駆動させる。例えば、油圧シリンダ100は、ダンプトラックの荷台と車体との間に取り付けられ荷台を昇降させるホイストシリンダである。油圧シリンダ100が伸長することで荷台が傾斜し、荷台の積載物が排出される。
【0019】
図1に示すように、油圧シリンダ100は、有底筒状のシリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に摺動自在に挿入されシリンダチューブ10内にロッド側室1と反ロッド側室5を区画するピストン部20と、シリンダチューブ10に挿入され一方の端部がピストン部20に連結されるロッド部材60と、シリンダチューブ10の底部に設けられるシリンダ側取付部70と、ロッド部材60の他方の端部に設けられるロッド側取付部としてのロッドヘッド75と、を備える。なお、図1は、油圧シリンダ100が最も収縮した状態を示す断面模式図である。
【0020】
油圧シリンダ100は、シリンダ側取付部70とロッドヘッド75とを介して、シリンダチューブ10が鉛直上方側に位置し、ロッド部材60が鉛直下方側に位置するようにして対象に取り付けられる。また、油圧シリンダ100は、ロッドヘッド75に対してシリンダ側取付部70が略鉛直方向、すなわち上下方向に沿って変位するように対象に取り付けられる。なお、油圧シリンダ100が取り付けられる方向はこれに限定されず、シリンダチューブ10が鉛直下方側に位置し、ロッド部材60が鉛直上方側に位置するように取り付けられてもよい。また、油圧シリンダ100は、水平方向に伸縮作動するように対象に取り付けられてもよい。
【0021】
ピストン部20は、シリンダチューブ10の内周面を摺動する第一ピストン30と、第一ピストン30の内周面を摺動する第二ピストン40と、第二ピストン40の内周面を摺動しロッド部材60が連結される第三ピストン50と、を有する。シリンダチューブ10の開口部には、ピストン部20の第一ピストン30を摺動自在に支持するシリンダヘッド11が設けられる。
【0022】
ロッド側室1は、第一ロッド側室2と、第二ロッド側室3と、第三ロッド側室4と、を有する。第一ロッド側室2は、シリンダチューブ10、シリンダヘッド11、及び第一ピストン30によって区画される。第二ロッド側室3は、第一ピストン30及び第二ピストン40によって区画される。第三ロッド側室4は、第二ピストン40、第三ピストン50、及びロッド部材60によって区画される。
【0023】
反ロッド側室5は、シリンダチューブ10、ピストン部20、ロッド部材60によって区画される。このようにして、シリンダチューブ10内にロッド側室1と反ロッド側室5とが区画される。
【0024】
シリンダヘッド11の内周面には、第一ピストン30の外周面との間の隙間を封止するシール部材(図示省略)が設けられる。
【0025】
シリンダチューブ10の底部には、反ロッド側室5に開口する凹部10aが形成される。凹部10aは、第一ピストン30の内径よりも大きな内径に形成される。これにより、凹部10aに導かれる作動油の圧力が第一ピストン30に作用する。
【0026】
第一ピストン30は、筒状の第一本体部31と、第一本体部31の一端部から径方向外側に突出して形成されシリンダチューブ10の内周面に摺接する円筒状の第一摺接部32と、第一本体部31の他端部から径方向内側に突出して形成され第二ピストン40を摺動自在に支持する円筒状の第一支持部33と、第一摺接部32の外周面に設けられる第一ピストンリング34と、を有する。
【0027】
第一本体部31には、径方向に貫通する第一連通ポート30Aが第一摺接部32に隣接する位置に形成される。第一ロッド側室2は、第二ピストン40が最収縮位置にある状態において、第一連通ポート30Aを通じて第二ロッド側室3と連通する。
【0028】
第一摺接部32は、シリンダチューブ10の底部とシリンダヘッド11との間で摺動する。第一ピストン30は、第一摺接部32がシリンダチューブ10の底部に当接することで最収縮位置が規定され、シリンダヘッド11に当接することで最伸長位置が規定される。
【0029】
第一支持部33の内周面には、第二ピストン40の外周面との間の隙間を塞ぐシール部材(図示省略)が設けられる。
【0030】
第一ピストンリング34は、環状部材である。第一ピストンリング34により、第一摺接部32の外周面とシリンダチューブ10の内周面との間の隙間を通じた第一ロッド側室2と反ロッド側室5との連通が遮断される。
【0031】
また、第一摺接部32の外周面には、シリンダチューブ10の内周面に摺接するブッシュ(図示省略)が設けられる。ブッシュがシリンダチューブ10の内周面に摺接することにより、第一ピストン30がシリンダチューブ10に摺動自在に支持される。
【0032】
第一本体部31の内周面の環状溝には、第二ピストン40に係合可能な第一スナップリング25が装着される。第一スナップリング25は、第二ピストン40からの第一ピストン30の脱落を規制する。
【0033】
第二ピストン40は、第一ピストン30と同様の構成を有する。具体的には、図1に示すように、第二ピストン40は、筒状の第二本体部41と、第二本体部41の一端部から径方向外側に突出して形成され第一ピストン30の内周面に摺接する円筒状の第二摺接部42と、第二本体部41の他端部から径方向内側に突出して形成されロッド部材60を摺動自在に支持する円筒状の第二支持部43と、第二摺接部42の外周面に設けられる第二ピストンリング44と、を有する。
【0034】
第二本体部41には、径方向に貫通する第二連通ポート40Aが第二摺接部42に隣接する位置に形成される。第二ロッド側室3は、第三ピストン50が最収縮位置にある状態において、第二連通ポート40Aを通じて第三ロッド側室4に連通する。
【0035】
第二摺接部42は、第一ピストン30の第一スナップリング25と第一支持部33との間で摺動する。第二ピストン40は、第二摺接部42が第一スナップリング25に当接することで最収縮位置が規定され、第一支持部33に当接することで最伸長位置が規定される。
【0036】
第二支持部43の内周面には、ロッド部材60の外周面との間の隙間を塞ぐシール部材(図示省略)が設けられる。
【0037】
第二ピストンリング44は、第一ピストンリング34と同様の環状部材である。第二ピストンリング44により、第二ピストン40の第二摺接部42の外周面と第一ピストン30の第一本体部31の内周面との間の隙間を通じた第二ロッド側室3と反ロッド側室5との連通が遮断される。
【0038】
第二摺接部42の外周面には、第一ピストン30の内周面に摺接するブッシュ(図示省略)が設けられる。ブッシュが第一ピストン30の内周面に摺接することにより、第二ピストン40が第一ピストン30に摺動自在に支持される。
【0039】
第二本体部41の内周面の環状溝には、第三ピストン50に係合可能な第二スナップリング26が装着される。第二スナップリング26は、第三ピストン50からの第二ピストン40の脱落を規制する。
【0040】
第三ピストン50は、第二ピストン40の内周面に摺接する環状の第三摺接部52と、第三摺接部52の外周面に設けられる第三ピストンリング54と、を有する。第三摺接部52の内周面には、環状のフランジ部53が形成され、フランジ部53が複数のボルトを介してロッド部材60の先端部に連結される。
【0041】
第三摺接部52は、第二ピストン40の第二スナップリング26と第二支持部43との間で摺動する。第三ピストン50は、第三摺接部52が第二スナップリング26に当接することで最収縮位置が規定され、第二支持部43に当接することで最伸長位置が規定される。
【0042】
第三ピストンリング54は、第一,第二ピストンリング34,44と同様の環状部材である。第三ピストンリング54により、第三ピストン50の第三摺接部52の外周面と第二ピストン40の第二本体部41の内周面との間の隙間を通じた第三ロッド側室4と反ロッド側室5との連通が遮断される。
【0043】
また、第三摺接部52の外周面には、第二ピストン40の内周面に摺接するブッシュ(図示省略)が設けられる。ブッシュが第二ピストン40の内周面に摺接することにより、第三ピストン50が第二ピストン40に摺動自在に支持される。
【0044】
図1に示すように、ロッド部材60は、有底円筒状に形成され、底部61に第三ピストン50の第三摺接部52が連結され、開口部62にロッドヘッド75が連結される。ロッド部材60は、第三ピストン50と共にシリンダチューブ10内を軸方向に移動する。
【0045】
ロッド部材60の中空部内には、パイプ状の配管65がロッド部材60の軸方向に延びて設けられる。配管65は、一方の端部が反ロッド側室5に開口し、他方の端部がロッドヘッド75に開口する。具体的には、配管65は、ロッド部材60の底部61の中心を軸方向に貫通する第一貫通孔61aに一方の端部が挿入され、圧入や溶接等により第一貫通孔61aに固定される。つまり、配管65の一方の端部は、中心がロッド部材60の中心軸Oと一致するように設けられる。また、配管65の他方の端部は、ロッドヘッド75内(後述する配管取付孔77d)に挿入され、圧入や溶接等によりロッドヘッド75内に固定される。配管65内には、第一ロッド内通路63が形成される。第一ロッド内通路63を通じて反ロッド側室5に作動油が給排される。
【0046】
ロッド部材60内には、配管65の外側に第二ロッド内通路64が形成される。具体的には、第二ロッド内通路64は、ロッド部材60の内周面と配管65の外周面との間に環状に形成される。第二ロッド内通路64は、ロッド部材60の底部61に形成された第二貫通孔61bを通じて第三ロッド側室4に連通する。第二ロッド内通路64を通じてロッド側室1に作動油が給排される。
【0047】
このように、ロッド部材60は、ロッド部材60内に設けられ反ロッド側室5に作動油を導く第一ロッド内通路63と、第一ロッド内通路63を囲うようにロッド部材60内に設けられロッド側室1に作動油を導く環状の第二ロッド内通路64と、を有する。
【0048】
図2及び図3に示すように、ロッドヘッド75は、取付対象に取り付けられる円筒状の取付部76と、ロッド部材60と連結される連結部77と、取付部76の外面から突出する突出部78と、を有する。
【0049】
取付部76は、ロッドヘッド75の本体を構成する。連結部77は、取付部76と連続して設けられる。連結部77は、端面77cに開口して設けられ配管65の端部が挿入されて取り付けられる配管取付孔77dを有する。端面77cは、ロッド部材60の開口部62の端面に突き合わされて溶接等により接続される。配管取付孔77dの内径は、配管65の外径と略同じに形成される。配管取付孔77dには、配管65の端部が挿入されて圧入や溶接等により取り付けられる。
【0050】
突出部78は、一方の側面がロッド部材60の外周面と連続し、他方の側面が取付部76の外周面と連続して設けられる。具体的には、突出部78は、連結部77を介してロッド部材60の外周面と連続するとともに取付部76に対して傾斜して形成されたロッド側傾斜側面78aと、取付部76の外周面と連続するとともに取付部76に対して傾斜して形成されたロッドヘッド側傾斜側面78bと、を有する。ロッド側傾斜側面78aとロッドヘッド側傾斜側面78bは、互いに平行に形成される。突出部78は、ロッド部材60の中心軸Oを含むとともに取付部76に平行な断面(図1に示す断面)において、ロッド側傾斜側面78aとロッド部材60の外周面との成す角が鈍角になるように傾斜して突出する。
【0051】
ロッドヘッド75は、ロッドヘッド75外と第一ロッド内通路63とを連通する第一通路80と、ロッドヘッド75外と第二ロッド内通路64とを連通する第二通路81と、を有する。反ロッド側室5には、第一通路80及び第一ロッド内通路63を通じて外部に設けられるポンプ(図示せず)またはタンク(図示せず)が選択的に接続されて作動油が給排される。ロッド側室1には、第二通路81及び第二ロッド内通路64を通じて外部に設けられるポンプまたはタンクが選択的に接続されて作動油が給排される。
【0052】
第一通路80は、突出部78の突出方向の先端面78c及び連結部77の配管取付孔77dに開口する。第一通路80は、突出部78の先端面78cから直線上に延びる通路80aと、配管取付孔77dから軸方向に延びるとともに通路80aに連通する通路80bと、を有する。通路80bは、配管取付孔77dと同心状に設けられる。第一通路80は、流路断面積が一様になるように設けられる。
【0053】
図4に示すように、本実施形態では、配管取付孔77d及び第一通路80の通路80bの開口は、ロッド部材60の中心軸Oからずれて設けられる。つまり、配管取付孔77dに取り付けられる配管65の端部及び通路80bは、その中心がロッド部材60の中心軸Oからずれて設けられる。このように、第一ロッド内通路63及び配管65は、一方の端部がロッド部材60の中心軸Oと一致し、他方の端部がロッド部材60の中心軸Oからずれるように、ロッド部材60内で緩やかに傾斜して設けられる。図4においては、中心軸Oからの配管取付孔77d及び通路80bの開口のずれを誇張して示している。なお、配管取付孔77d及び第一通路80の通路80bの開口は、ロッド部材60の中心軸Oと一致して設けられてもよい。
【0054】
図3,4に示すように、第二通路81は、突出部78の先端面78c及び連結部77の端面77cに開口する。第二通路81は、突出部78の先端面78cにおいて第一通路80よりも取付部76側に開口する。第二通路81は、ロッドヘッド75の外面に開口する主通路81aと、主通路81aの端部から枝分かれして設けられ第二ロッド内通路64にそれぞれ連通する複数の分岐通路81bと、を有する。本実施形態では、分岐通路81bは二つ設けられる。具体的には、主通路81aは、突出部78の先端面78cから直線上に延びて設けられる。分岐通路81bは、主通路81aからロッドヘッド75の垂直方向(図2における紙面垂直方向)に枝分かれするとともに、連結部77の端面77cまで互いに平行に直線上に延びて設けられる。分岐通路81bは、第一通路80の通路80aには連通せずに、図1,2に示す平面図において通路80aと交差して設けられる。言い換えれば、第一通路80の通路80aは、二つの分岐通路81bの間を横切るように設けられ、二つの分岐通路81bの間には、第一通路80の通路80aが位置する。主通路81a及び分岐通路81bは、流路断面積がそれぞれ一様になるように設けられる。また、主通路81aの流路断面積は、二つの分岐通路81bの流路断面積の合計以上になるように設けられる。なお、分岐通路81bは、二つ以上の複数が設けられてもよい。
【0055】
図4に示すように、第一ロッド内通路63に対する通路80bの開口と第二ロッド内通路64に対する分岐通路81bの二つの開口とは、それぞれの中心を結んだ形状が三角形状になるように設けられる。具体的には、ロッド部材60の中心軸Oを通る仮想線Bで端面77cを二つの半円に分けた際に、一方の半円(図4における右側の半円)内に通路80bの開口の中心が位置し、他方の半円(図4における左側の半円)内に分岐通路81bの二つ開口の中心が位置する。
【0056】
ここで、油圧シリンダでは、作動油を導く流路の流路断面積が小さいと、当該流路で生じる圧力損失が大きくなる。仮に本実施形態のような油圧シリンダにおいて、第二通路に複数の分岐通路が設けられず第二通路が分岐の無い一本の通路である場合では、第二通路の流路断面積を大きくするためには第二通路の径を大きくすることが考えられる。しかしながら、第二通路の径は、連通する第二ロッド内通路よりも大きくすることができない。特に、第二ロッド内通路は環状であるため、第二通路の径を大きくし難い。第二ロッド内通路を大きくすることにより第二通路の径を大きくすると、ロッド部材の径が大きくなるため、油圧シリンダが大型になってしまう。
【0057】
これに対して、本実施形態の油圧シリンダ100では、第二通路81の一部を複数の分岐通路81bで構成することで、第二通路81の一部の合計流路断面積を大きくすることができる。言い換えれば、第二ロッド内通路64の径を大きくせずに複数の分岐通路81bの合計流路断面積を大きくすることができる。また、第二通路81の主通路81aは、第二ロッド内通路64に直接連通しない。そのため、第二ロッド内通路64の径を大きくせずに主通路81aの径を大きくし、主通路81aの流路断面積を大きくすることができる。よって、油圧シリンダ100を大型にせずに、第二通路81で生じる圧力損失を小さくすることができる。
【0058】
また、本実施形態の油圧シリンダ100では、突出部78の先端面78cにおいて、第二通路81が第一通路80よりも取付部76に開口し、第一通路80が第二通路81の複数の分岐通路81bの間を横切るように設けられる。そのため、図8に示す後述の変形例2のように第一通路80が第二通路81の複数の分岐通路81bの間を横切らないように設けられる構成と比較し、第一通路80(具体的には、第一通路80の通路80b)を短くすることができる。よって、ロッドヘッド75をコンパクトにすることができる。
【0059】
次に、図1図5図7を参照して、油圧シリンダ100の作動について説明する。なお、以下では、油圧シリンダ100が、シリンダ側取付部70が鉛直上方側に位置し、ロッドヘッド75が鉛直下方側に位置するようにして対象に取り付けられている場合について説明する。
【0060】
油圧シリンダ100が伸長作動する際には、第一通路80を通じてポンプ等の油圧源(図示省略)から反ロッド側室5に作動油が供給され、第一,第二,第三ロッド側室2,3,4の作動油が第二通路81を通じてタンク(図示省略)に排出される。油圧シリンダ100の伸長作動では、第一ピストン30、第二ピストン40、第三ピストン50の順番で、シリンダチューブ10に対して相対移動する。
【0061】
油圧シリンダ100が図1に示す最収縮状態から伸長作動する際には、第一通路80を通じて反ロッド側室5に作動油が供給される。ここで、反ロッド側室5の圧力を受ける受圧面積は、第一ピストン30が最も大きく、第三ピストン50が最も小さく形成される。つまり、内側のピストンほど受圧面積が小さい。よって、油圧シリンダ100が最収縮状態から伸長作動する際には、まず、第一ピストン30に対してシリンダチューブ10が相対移動する。具体的には、図5に示すように、シリンダチューブ10が第一ピストン30に対して上方(図5中上側)へ移動する。
【0062】
第一ピストン30とシリンダチューブ10が相対移動すると、第一ロッド側室2の作動油は、第一連通ポート30A、第二ロッド側室3、第二連通ポート40A、第三ロッド側室4、第二貫通孔61b、及び第二ロッド内通路64を通じて第二通路81に導かれて排出される。
【0063】
図5に示すように、シリンダヘッド11が第一ピストン30に当接する、第一ピストン30の伸長ストローク端までシリンダチューブ10が移動すると、反ロッド側室5の圧力によって第三ピストン50よりも受圧面積が大きい第二ピストン40に対してシリンダチューブ10及び第一ピストン30が相対移動する。具体的には、図6に示すように、シリンダチューブ10及び第一ピストン30が第二ピストン40に対して上方(図6中上側)へ移動する。
【0064】
第一ピストン30と第二ピストン40が相対移動すると、第二ロッド側室3の作動油は、第二連通ポート40A、第三ロッド側室4、第二貫通孔61b、及び第二ロッド内通路64を通じて第二通路81に導かれて排出される。
【0065】
図6に示すように、第一ピストン30の第一支持部33が第二ピストン40に当接する、第二ピストン40の伸長ストローク端までシリンダチューブ10及び第一ピストン30が移動すると、反ロッド側室5の圧力を受けて第三ピストン50に対してシリンダチューブ10、第一ピストン30、及び第二ピストン40が相対移動する。具体的には、図7に示すように、シリンダチューブ10、第一ピストン30、及び第二ピストン40が第三ピストン50に対して上方(図7中上側)へ移動する。
【0066】
第三ピストン50と第二ピストン40が相対移動すると、第三ロッド側室4の作動油は第二貫通孔61b、及び第二ロッド内通路64を通じて第二通路81に導かれて排出される。シリンダチューブ10、第一ピストン30、及び第二ピストン40は、第二ピストン40の第二支持部43が第三ピストン50に当接するまで移動する。このようにして、図7に示すように、油圧シリンダ100は最伸長状態となる。
【0067】
油圧シリンダ100が収縮作動する際には、第二通路81、第二ロッド内通路64、及び第二貫通孔61bを通じて油圧源から第一,第二,第三ロッド側室2,3,4に作動油が供給され、反ロッド側室5の作動油が第一ロッド内通路63及び第一通路80を通じてタンクに排出される。油圧シリンダ100の収縮作動では、第三ピストン50、第二ピストン40、及び第一ピストン30が、この順番でシリンダチューブ10に対して相対移動する。もしくは、油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10及びシリンダ側取付部70に連結される駆動対象機器の自重により収縮作動する。その場合は、第一,第二,第三ロッド側室2,3,4に作動油を供給する必要がない。
【0068】
以上の本実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0069】
油圧シリンダ100では、第二通路81の複数の分岐通路81bがそれぞれ第二ロッド内通路64に作動油を導く。第二通路81の一部を複数の分岐通路81bで構成することで、第二ロッド内通路64の径を大きくせずに第二通路81の流路断面積を大きくすることができる。よって、油圧シリンダ100を大型にせずに、第二通路81で生じる圧力損失を小さくすることができる。
【0070】
油圧シリンダ100では、第二通路81が第一通路80よりも取付部76に開口し、第一通路80が第二通路81の複数の分岐通路81bの間を横切るように設けられるため、第一通路80を短くすることができる。よって、ロッドヘッド75をコンパクトにすることができる。
【0071】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0072】
<変形例1>
上記実施形態では、第一ロッド内通路63が反ロッド側室5に連通し、第二ロッド内通路64がロッド側室1に連通する。これに限らず、油圧シリンダ100は、第一ロッド内通路63がロッド側室1に連通し、第二ロッド内通路64が反ロッド側室5に連通する構成であってもよい。具体的には、第一ロッド内通路63がロッド部材60内で径方向に曲がって形成されて第三ロッド側室4に連通し、第二ロッド内通路64がロッド部材60の底部61を軸方向に貫通するように形成されて反ロッド側室5に連通する。この構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0073】
<変形例2>
上記実施形態では、第二通路81の分岐通路81bが、図1,2に示す平面図において、第一通路80の通路80aと交差して設けられる。これに限らず、油圧シリンダ100では、第二通路81が、図1,2に示す平面図において、第一通路80と交差しないで設けられてもよい。具体的には、図8に示すように、第二通路81は、突出部78の先端面78cにおいて第一通路80よりもロッド側傾斜側面78a側に開口し、分岐通路81bが図8に示す平面図において、第一通路80の通路80aと交差しないで設けられる。
【0074】
上記実施形態では、分岐通路81bが図1,2に示す平面図において通路80aと交差し、二つの分岐通路81bの間に通路80aが位置する。そのため、第二ロッド内通路64の径を大きくせずに分岐通路81bの径を大きくしようとしても、二つの分岐通路81bの間の距離を通路80bよりも大きくしなければならず、分岐通路81bの径を大きくすることに制限がある。これに対し、本変形例では、二つの分岐通路81bの間に第一通路80の通路80aが位置しない。言い換えれば、通路80aは、複数の分岐通路81bの間に位置しないように延びて設けられる。そのため、第二ロッド内通路64の径を大きくせずに分岐通路81bの径を大きくし、分岐通路81bの合計流路断面積を大きくすることができる。
【0075】
さらに、図4に示すように、上記実施形態では、配管65の端部及び第一通路80の通路80bの中心がロッド部材60の中心軸Oからずれて設けられる。これにより、第二ロッド内通路64に対する二つの分岐通路81bの開口面積を、限られたスペースのなかで最大限確保することができる。そのため、本変形例のように二つの分岐通路81bの間に第一通路80の通路80aが位置しない構成とすることで、分岐通路81bの径をより大きくし、分岐通路81bの合計流路断面積をより大きくすることができる。
【0076】
<変形例3>
上記実施形態では、ロッドヘッド75は突出部78を有し、突出部78の先端面78cに第一通路80及び第二通路81が開口する。これに限らず、図9に示すように、ロッドヘッド75が突出部78を有さず、連結部77の側面に第一通路80及び第二通路81が開口して設けられてもよい。第一通路80の通路80a及び第二通路81の主通路81aは、互いに180度離間して開口する。このような構成であっても、上記変形例2と同様に、第二ロッド内通路64の径を大きくせずに分岐通路81bの径を大きくできる。さらに、図4に示すように第一通路80の通路80bの中心をロッド部材60の中心軸Oからずれて設けることにより、第二ロッド内通路64に対する二つの分岐通路81bの開口面積を、限られたスペースのなかで最大限確保することができる。
【0077】
<変形例4>
上記実施形態では、ロッドヘッド75は、ロッドヘッド75外と第一ロッド内通路63とを連通する第一通路80と、ロッドヘッド75外と第二ロッド内通路64とを連通する第二通路81と、を有する。これに加えて、図10に示すように、ロッドヘッド75は、第一通路80と第二通路81とを連通可能な第三通路82と、第三通路82に設けられるリリーフ弁90と、を有してもよい。第三通路82は、突出部78のロッド側傾斜側面78aに開口し、リリーフ弁90は、当該開口から挿入されて第三通路82に設けられる。リリーフ弁90は、第二通路81の圧力が第一通路80の圧力よりも所定値以上大きくなると開弁し、第二通路81から第一通路80への作動油の流れを許容する。このように、本変形例では、第三通路82及びリリーフ弁90が突出部78に設けられる。
【0078】
油圧シリンダには、伸長作動中に伸長速度を超えて油圧シリンダを強制的に伸長させるような外力が作用する可能性がある。例えば、ダンプトラックの荷台と車体との間に取り付けられ、伸長することで荷台を傾斜させ積載物を排出する油圧シリンダでは、積載物が一気に排出されると、荷台の端部にある排出直前の積載物の重さにより瞬間的に荷台が車体との連結部を支点として回転するような力を受ける。これにより、油圧シリンダには、伸長作動中に伸長速度を超えて油圧シリンダを強制的に伸長させるような外力が作用する。この場合、反ロッド側室では作動油の供給が追い付かず負圧となり、ロッド側室では作動油の排出が追い付かず圧力が上昇する。この状態において、油圧シリンダに作用する外力がなくなると、反ロッド側室が負圧となっているため油圧シリンダが瞬間的に収縮する。これにより、油圧シリンダ内で衝撃が発生するおそれがある。
【0079】
これに対して、本変形例の油圧シリンダ100では、ロッドヘッド75に第三通路82及びリリーフ弁90が設けられ、リリーフ弁90は、第二通路81の圧力が第一通路80の圧力よりも所定値以上大きくなると第二通路81から第一通路80への作動油の流れを許容する。よって、リリーフ弁90のリリーフ圧を調整することで、油圧シリンダ100の伸長作動中に伸長速度を超えて油圧シリンダ100を強制的に伸長させるような外力が作用した際には、ロッド側室1から第三通路82を通じて反ロッド側室5に作動油を導くことができる。よって、油圧シリンダ100が瞬間的に収縮して衝撃が発生するということが防止される。さらに、油圧シリンダ100では、第三通路82及びリリーフ弁90がロッド側室1及び反ロッド側室5に近いロッドヘッド75に設けられるため、反ロッド側室5が負圧になることを効果的に防止することができる。
【0080】
また、本変形例の油圧シリンダ100では、第三通路82が突出部78のロッド側傾斜側面78aに開口し、リリーフ弁90が当該開口から挿入されて設けられるため、リリーフ弁90の取り付けや調整及び交換を容易に行うことができる。さらに、リリーフ弁90は、突出部78においてロッド部材60の外周面と連続するロッド側傾斜側面78aに設けられる。突出部78では、ロッドヘッド側傾斜側面78bよりもロッド側傾斜側面78aの方が突出方向の寸法が長く形成される。よって、リリーフ弁90をロッド側傾斜側面78aに設けることで、取付部76からの突出部78の突出量が小さくてもリリーフ弁90を設けるためのスペースが確保できるため、油圧シリンダ100をコンパクトにすることができる。
【0081】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0082】
油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に摺動自在に挿入されシリンダチューブ10内にロッド側室1と反ロッド側室5を区画するピストン部20と、シリンダチューブ10に挿入され一方の端部がピストン部20に連結されるロッド部材60と、ロッド部材60の他方の端部に設けられるロッドヘッド75と、を備え、ロッド部材60は、ロッド部材60内に設けられロッド側室1及び反ロッド側室5の一方に作動流体を導く第一ロッド内通路63と、第一ロッド内通路63を囲うようにロッド部材60内に設けられロッド側室1及び反ロッド側室5の他方に作動流体を導く環状の第二ロッド内通路64と、を有し、ロッドヘッド75は、ロッドヘッド75外と第一ロッド内通路63とを連通する第一通路80と、ロッドヘッド75外と第二ロッド内通路64とを連通する第二通路81と、を有し、第二通路81は、ロッドヘッド75の外面に開口する主通路81aと、主通路81aから枝分かれして設けられ第二ロッド内通路64にそれぞれ連通する複数の分岐通路81bと、を有する。
【0083】
この構成では、第一ロッド内通路63を囲うようにロッド部材60内に環状の第二ロッド内通路64が設けられ、第二通路81の複数の分岐通路81bがそれぞれ第二ロッド内通路64に作動流体を導く。このように、第二通路81の一部を複数の分岐通路81bで構成することで、第二ロッド内通路64の径を大きくせずに第二通路81の流路断面積を大きくすることができる。よって、第二通路81で生じる圧力損失を小さくすることができる。
【0084】
また、油圧シリンダ100では、第一通路80は、複数の分岐通路81bの間に位置しないように延びて設けられる。
【0085】
この構成では、複数の分岐通路81bの間に第一通路80が位置しない。そのため、第二ロッド内通路64の径を大きくせずに分岐通路81bの径を大きくし、分岐通路81bの合計流路断面積を大きくすることができる。
【0086】
また、油圧シリンダ100では、第一ロッド内通路63は、第一通路80との連通部がロッド部材60の中心からずれて設けられる。
【0087】
この構成では、第一ロッド内通路63がロッド部材60の中心軸からずれて設けられることで、第二通路81の複数の分岐通路81bが第二ロッド内通路64に連通する面積を最大限確保することができる。
【0088】
また、油圧シリンダ100では、ロッドヘッド75は、取付対象に取り付けられる円筒状の取付部76と、取付部76の外面から突出する突出部78と、をさらに有し、第一通路80及び第二通路81は、突出部78の突出方向の先端面78cに開口して設けられ、第二通路81の開口は、第一通路80の開口よりも取付部76側に設けられ、第一通路80は、複数の分岐通路81bの間を横切るように設けられる。
【0089】
この構成では、第二通路81が第一通路80よりも取付部76に開口し、第一通路80が第二通路81の複数の分岐通路81bの間を横切るように設けられるため、第一通路80を短くすることができる。よって、ロッドヘッド75をコンパクトにすることができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0091】
本実施形態では、多段式の流体圧シリンダを例に挙げて説明したが、ロッド部材内にロッド側室及び反ロッド側室に作動流体を導くロッド内通路が設けられる流体圧シリンダであれば、多段式ではない流体圧シリンダにも適用できる。
【符号の説明】
【0092】
1…ロッド側室、5…反ロッド側室、10…シリンダチューブ、20…ピストン部、60…ロッド部材、63…第一ロッド内通路、64…第二ロッド内通路、75…ロッドヘッド、76・・・取付部、78・・・突出部、先端面・・・78c、80…第一通路、81…第二通路、81a…主通路、81b…分岐通路、100…油圧シリンダ(流体圧シリンダ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10