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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137725
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20230922BHJP
【FI】
G01N21/3504
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044066
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 幸博
(72)【発明者】
【氏名】長 宏樹
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059EE01
2G059EE11
2G059HH01
2G059JJ02
2G059JJ30
2G059KK03
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】隣り合う受光素子の出力の干渉を抑制する。
【解決手段】ガスセンサ1は、ステム2に取り付けられるキャップ4の内面に設けられ、光源から照射される光のうち検知対象ガスに吸収される波長の光を透過させる検知用フィルタ5aと、検知用フィルタ5aと並んでキャップ4の内面に設けられ、光源から照射される光のうち検知対象ガスにより吸収されない波長の光を透過させる参照用フィルタ5bと、ステム2に設けられ、検知用フィルタ5aを透過した光を受光する第1受光素子3aと、第1受光素子3aと並んでステム2に設けられ、参照用フィルタ5bを透過した光を受光する第2受光素子3bと、キャップ4の内面の検知用フィルタ5aと参照用フィルタ5bとの間に立設して配置される遮光板6と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象ガスが導入/排出される光学ブロックと、
前記光学ブロック内の一端に設けられ、前記検知対象ガスに吸収される波長を含む光を照射する光源と、を含む非分散形赤外線吸収方式ガスセンサに用いられ、
ステムに取り付けられるキャップの内面に設けられ、前記光源から照射される光のうち前記検知対象ガスに吸収される波長の光を透過させる検知用フィルタと、
前記検知用フィルタと並んで前記キャップの内面に設けられ、前記光源から照射される光のうち前記検知対象ガスにより吸収されない波長の光を透過させる参照用フィルタと、
前記ステムに設けられ、前記検知用フィルタを透過した光を受光する第1受光素子と、
前記第1受光素子と並んで前記ステムに設けられ、前記参照用フィルタを透過した光を受光する第2受光素子と、
前記キャップの内面の前記検知用フィルタと前記参照用フィルタとの間に立設して配置される遮光板と、を備えたことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記遮光板は、シリコン板の両面にアルミや金等の金属薄膜からなる反射コートを形成したもので構成されることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば二酸化炭素などの検知対象ガスを検知するガスセンサに関し、特に、NDIR(Non Dispersive InfraRed (非分散型赤外))式ガスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
NDIR式ガスセンサは、例えば下記特許文献1に開示されるように、放射された赤外線が検知対象ガスの分子振動を引き起こすことにより、特定波長の赤外線が吸収される現象を利用してガスを検知するセンサとして従来から知られている。
【0003】
さらに説明すると、NDIR式ガスセンサ11は、図4に示すように、検知対象ガスが導入されるガス導入口12aと検知対象ガスが排出されるガス排出口12bを有する筒状の光学ブロック(測定セル)12の長手方向に対し、検知対象ガスに吸収される波長を含む光(例えば赤外線)を照射する光源13とガス検知器14が対向するように収容される。
【0004】
ガス検知器14は、図5に示すように、リード付き金属ステム15上に2個の受光素子16a,16bを並設し、受光素子16a,16bそれぞれと対向する位置に透過波長域の異なる光学フィルタ17a,17bが取り付けられた透過窓付きキャップ18でリード付き金属ステム15を覆うように構成される。このガス検知器14では、光源13からの赤外線のうち検知対象ガスの吸収をもつ吸収波長域と、吸収をもたない比較波長域での透過量を比較してガス濃度に変換する。
【0005】
上述したNDIR式ガスセンサ11では、光源13から中赤外領域の赤外線をガスに照射すると、ガス分子の振動数と赤外線のエネルギーレベルが一致するスペクトル領域において、赤外線が分子の固有振動数で共振し、分子振動としてガス分子に吸収される。図6は検知対象ガスの吸収波長帯における透過光強度Iと放射光強度Ioの関係を示している。
【0006】
ここで、ガス濃度と赤外線の透過率の関係は、ランベルト・ベールの法則により説明することができ、NDIR式ガスセンサ11において、検知対象ガスの吸光度εと光路長dは不変であり、検知対象ガスの吸収エネルギー(波長)と一致するスペクトル領域で、赤外線の透過率Tを測定することにより、検知対象ガスの濃度Cを下記式(1)から得ることができる。
【0007】
【数1】
【0008】
なお、図6に示す放射光強度Ioは、赤外線の吸収がないゼロガスを用いたキャリブレーションにより設定される。また、吸光度εは、既知の濃度の検知対象ガスを用いたキャリブレーションにより初期設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-074629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述したNDIR式ガスセンサ11では、測定中に光学ブロック12内の汚れ、光源13の出力変動等による測定指示ドリフトが発生してしまうことがある。この場合の長期ドリフト対策は、参照検知出力を基準に指示補正を行っている。
【0011】
しかしながら、NDIR式ガスセンサ11に採用される図5のガス検知器14では、光源13からの赤外線エネルギーが光学フィルタ17a,17bを通過して対応する受光素子16a,16bへ入射する以外に、光学ブロック12での反射により隣り合う受光素子16a,16bにも互いに入射し、受光素子16a,16bの出力が干渉してしまうことにより、補正精度が低下するという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、隣り合う受光素子の出力の干渉を抑制することができるガスセンサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたガスセンサは、検知対象ガスが導入/排出される光学ブロックと、
前記光学ブロック内の一端に設けられ、前記検知対象ガスに吸収される波長を含む光を照射する光源と、を含む非分散形赤外線吸収方式ガスセンサに用いられ、
ステムに取り付けられるキャップの内面に設けられ、前記光源から照射される光のうち前記検知対象ガスに吸収される波長の光を透過させる検知用フィルタと、
前記検知用フィルタと並んで前記キャップの内面に設けられ、前記光源から照射される光のうち前記検知対象ガスにより吸収されない波長の光を透過させる参照用フィルタと、
前記ステムに設けられ、前記検知用フィルタを透過した光を受光する第1受光素子と、
前記第1受光素子と並んで前記ステムに設けられ、前記参照用フィルタを透過した光を受光する第2受光素子と、
前記キャップの内面の前記検知用フィルタと前記参照用フィルタとの間に立設して配置される遮光板と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2に記載されたガスセンサは、請求項1のガスセンサにおいて、
前記遮光板は、シリコン板の両面にアルミや金等の金属薄膜からなる反射コートを形成したもので構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、隣り合う受光素子の出力の干渉を抑制し、補正精度の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るガスセンサの断面図である。
図2】本発明に係るガスセンサの平面図である。
図3】本発明に係るガスセンサにおいて遮光板が有る場合と無い場合の再現性[回数]と出力干渉率[%]の関係を示す図である。
図4】NDIR式ガスセンサの概略構成を示す図である。
図5】NDIR式ガスセンサに用いられる従来のガス検知器の構成を示す断面図である。
図6】検知対象ガスの吸収波長帯における透過光強度と放射光強度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本実施の形態による図1のガスセンサ1は、図4のNDIR式ガスセンサ11のガス検知器14に代えて配設され、例えば二酸化炭素などの検知対象ガスを検知するものである。
【0019】
なお、図4のNDIR式ガスセンサ11において、光学ブロック12は、本体を金属や樹脂などで構成し、その内側表面が光を効率的に反射するように、例えば金、銀、ニッケル、アルミニウムなどの金属で表面処理(メッキ、蒸着、スパッタリング等)して内側表面を鏡面や光沢面にする。また、光学ブロック12は、図示のような一定幅(一定径)の筒状に限定されず、光源13の光路長を稼ぐために内面が楕円型の光路を形成してもよい。
【0020】
図1に示すように、ガスセンサ1は、複数本(多くは、3~4本)のリード2aを有する金属ステム2上に第1受光素子3aと第2受光素子3bが並設される。
【0021】
図1に示すように、金属ステム2には、第1受光素子3aと第2受光素子3bを覆うようにキャップ4が取り付けられる。キャップ4には、NDIR式ガスセンサ11の光源13からの光を導入するための貫通窓4aが第1受光素子3aと第2受光素子3bそれぞれに対向して形成される。
【0022】
図1に示すように、キャップ4の各貫通窓4aの内面には、第1受光素子3aと第2受光素子3bそれぞれと対向して透過波長域の異なる検知用フィルタ5aと参照用フィルタ5bが取り付けられる。
【0023】
検知用フィルタ5aは、第1受光素子3aに対向して配置され、NDIR式ガスセンサ11の光学ブロック12内に導入される検知対象ガスに吸収される波長の光のみを透過させる。これにより、第1受光素子3aは、NDIR式ガスセンサ11の光源13から照射される光のうち検知用フィルタ5aを透過した検知対象ガスに吸収される波長の光の光量に応じた受光信号を出力する。
【0024】
参照用フィルタ5bは、第2受光素子3bに対向して配置され、NDIR式ガスセンサ11の光学ブロック12内に導入される検知対象ガスに吸収されない波長の光のみを透過させる。これにより、第2受光素子3bは、NDIR式ガスセンサ11の光源13から照射される光のうち参照用フィルタ5bを透過した検知対象ガスに吸収されない波長の光の光量に応じた受光信号を出力する。
【0025】
図1に示すように、検知用フィルタ5aと参照用フィルタ5bとの間のキャップ4の内面には、矩形状の遮光板6が立設して配置される。図2に示すように、遮光板6は、検知用フィルタ5aが配置される空間と参照用フィルタ5bが配置される空間とを仕切るように、両端がキャップ4の内壁面4bに接触して配置される。
【0026】
遮光板6は、例えばシリコン板の両面にアルミや金等の金属薄膜からなる反射コートを形成したもので構成される。なお、遮光板6は、例えば金属板で構成してもよいが、NDIR式ガスセンサ11の光源13からの光(赤外線エネルギー)が透過しない材料、吸収しない材料が好ましい。
【0027】
遮光板6は、NDIR式ガスセンサ11の光源13からの赤外線エネルギーが、検知用フィルタ4aを通過して第1受光素子3aへ入射するとともに、参照用フィルタ4bを通過して第2受光素子3bへ入射する以外に、隣り合う第1受光素子3aと第2受光素子3bへも入射して第1受光素子3aの出力と第2受光素子3bの出力が干渉するのを抑制する。すなわち、遮光板6は、隣り合う第1受光素子3aと第2受光素子3bへの光源13からの赤外線エネルギーの入射を防ぎ、各出力の干渉を抑制している。
【0028】
ここで、遮光板6が有る場合と無い場合の出力干渉率の実験結果を図3に示す。なお、出力干渉率[%]は、検知対象ガスが有るときの第1受光素子3aの出力値をVsen(対象ガス有)、検知対象ガスが無いときの第1受光素子3aの出力値をVsen(対象ガス無)、検知対象ガスが有るときの第2受光素子3bの出力値をVref(対象ガス有)、検知対象ガスが無いときの第2受光素子3bの出力値をVref(対象ガス無)として、出力干渉率[%]=(Vref(対象ガス有)-Vref(対象ガス無)/(Vsen(対象ガス有)-Vsen(対象ガス無)×100の計算式から算出した。また、再現性を確認するため、同様の出力干渉率の計算を5回行った。
【0029】
その結果、図3に示すように、遮光板6が有る場合、遮光板6が無い場合と比較して、出力干渉率を低減することができ、5回の実験において出力干渉率を1%以下に抑えることができた。
【0030】
このように、上述した実施の形態によれば、キャップの内面の検知用フィルタと参照用フィルタとの間に遮光板を立設して配置することにより、隣り合う受光素子の出力の干渉を抑制することができる。その結果、補正精度の低下を防ぐことができる。
【0031】
以上、本発明に係るガスセンサの最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 ガスセンサ
2 金属ステム
2a リード
3a 第1受光素子
3b 第2受光素子
4 キャップ
4a 貫通窓
4b 内壁面
5a 検知用フィルタ
5b 参照用フィルタ
6 遮光板
11 NDIR式ガスセンサ
12 光学ブロック(測定セル)
12a ガス導入口
12b ガス排出口
13 光源
14 ガス検知器
15 リード付き金属ステム
16a,16b 受光素子
17a,17b 光学フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6