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特開2023-137747ヨウ素化合物とコタラヒムブツエキスを含有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137747
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ヨウ素化合物とコタラヒムブツエキスを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/18 20060101AFI20230922BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230922BHJP
   A61K 36/37 20060101ALI20230922BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61K33/18
A61P3/10
A61K36/37
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044100
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】520376801
【氏名又は名称】株式会社JCIコロイドヨード研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 美智子
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA24
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZC35
4C086ZC75
4C088AB12
4C088MA02
4C088NA05
4C088ZC35
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】がん等の患者が同時に発症することがあり、合併症となることにより様々な弊害を引き起こす糖尿病に対して、高い予防・治療効果を発揮し、副作用の少ない薬剤を提供する。
【解決手段】水と、ヨウ素化合物と、コタラヒムブツエキスを含有することを特徴とする組成物により上記課題を解決した。該組成物は、pHが7以上8以下であることが望ましい。また、該組成物は、ヨウ素化合物のヨウ素1質量部に対して、0.1質量部以上1質量部以下のコタラヒムブツエキスを含有するのが特に望ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、ヨウ素化合物と、コタラヒムブツエキスを含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ヨウ素化合物をヨウ素として0.1質量%以上20質量%以下の割合で含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
pHが7以上8以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヨウ素化合物のヨウ素1質量部に対して、0.1質量部以上1質量部以下のコタラヒムブツエキスを含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の組成物からなることを特徴とする血糖降下剤。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の組成物からなることを特徴とする糖尿病予防薬又は糖尿病治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ素化合物とコタラヒムブツエキス含有する組成物や、かかる組成物からなる血糖降下剤、糖尿病予防薬、糖尿病治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素や、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のヨウ素化合物を含有する薬剤は、従来から、皮膚の消毒や、創傷・潰瘍の殺菌・消毒等に広く用いられており、様々な改良がなされている。また、ヨウ素化合物を含有する薬剤は、様々な疾患の予防・治療用に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ヨウ素分として1.0重量%~1.5重量%相当量のヨウ化ナトリウムを含有する水素イオン濃度が7~8の弱アルカリ性溶液からなるヨウ化ナトリウム含有製剤が開示されており、がんやエイズに対する予防・治療効果があると報告されている。
【0004】
特許文献2には、ヨウ化水素換算で3重量%~5重量%の有機ヨウ素と、1~3重量%の水酸化ナトリウムと、残部が微量の過酸化水素を含有するアルカリイオン水からなり、アルカリイオン水に、水酸化ナトリウムが溶解し、有機ヨウ素がコロイド状に分散した、pHが7~8の弱アルカリ性のコロイド溶液である液体製剤が開示されており、癌やエイズに対する予防・治療効果があると報告されている。
【0005】
特許文献3には、ヨウ化カリウム及び/またはヨウ化水素換算で有機ヨウ素0.1重量%~4重量%のヨウ素分を含む水溶液に対し1000ppm以上のリキリチゲニンを添加してなる液体製剤が開示されており、抗がん剤、抗ウイルス剤としての効果を奏するとされている。
特許文献3に記載の液体製剤は、有機ヨウ素とリキリチゲニンを併用することにより、ヨード中毒等の副作用が極めて低く、がん・ウイルス感染の予防・治療に高い相乗効果を有するとされている。
【0006】
がん、エイズ、ウイルス感染症等を発症した患者の中には、糖尿病等の他の疾患も同時に発症している者も多く、がん、エイズ、ウイルス感染症等と他の疾患を、同時に予防・治療することのできる薬剤の需要もあるところ、これらの公知技術は、かかる需要に十分に応えたものではなく、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-315470号公報
【特許文献2】特開2008-143808号公報
【特許文献3】特開2010-265209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、がん等の患者が同時に発症することがあり、合併症となることにより様々な弊害を引き起こす糖尿病に対して、高い予防・治療効果を発揮し、副作用の少ない薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ヨウ素化合物と、コタラヒムブツエキスを併用することにより、コタラヒムブツエキスの有する血糖降下作用が増強し、糖尿病の予防・治療に極めて有効であることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、水と、ヨウ素化合物と、コタラヒムブツエキスを含有することを特徴とする組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記の組成物からなることを特徴とする血糖降下剤を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記の組成物からなることを特徴とする糖尿病予防薬又は糖尿病治療薬を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヨウ素化合物とコタラヒムブツエキスが同時に存在することによる相乗効果によって、従来のものよりも強力な血糖降下作用を有する組成物を提供することができ、糖尿病の予防・治療に大きな効果が期待される。
【0014】
特に、本発明の組成物は、ヨウ素化合物を含有しており、前記背景技術に記載したように、ヨウ素化合物は、がん、エイズ、ウイルス感染症等の様々な疾患に対する予防・治療効果を持つので、これらの疾患と糖尿病を同時に発症している患者に投与するのに極めて適している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0016】
本発明の組成物は、水と、ヨウ素化合物と、コタラヒムブツエキスを含有する。
【0017】
本発明の組成物が含有するヨウ素化合物に、特に限定がないが、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム等の無機ヨウ素化合物;グリセリン、ポリビニルアルコール、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、レシチン、タラ肝油、竜脳、クレオソート等の誘導体であるヨウ素化合物;が例示できる。
これらのヨウ素化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
また、本発明の組成物は、ヨウ素化合物として、上記した無機ヨウ素化合物を1種又は2種以上含有しているのが好ましく、特に、ヨウ化ナトリウムとヨウ化カリウムの両方を含有しているのが好ましい。
【0019】
本発明の組成物が、ヨウ化ナトリウムとヨウ化カリウムの両方を含有する場合、ヨウ化カリウム1質量部に対するヨウ化ナトリウムの含有量は、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることが特に好ましい。また、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部であることが特に好ましい。
【0020】
本発明の組成物におけるヨウ素化合物の含有量は、ヨウ素として0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが特に好ましい。また、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
ヨウ素化合物のヨウ素としての含有量が上記下限以上であると、コタラヒムブツエキスとの相乗効果による、血糖降下作用が十分に発揮されやすい。また、上記上限以下であると、安全性が確保でき、コストを抑制しやすい。
【0021】
本発明の組成物は、コタラヒムブツエキスを含有する。
「コタラヒムブツ(Salacia reticulate)」は、ニシキギ目ニシキギ科サラシア属の蔓性の植物であり、特にスリランカに多く自生している。
【0022】
本発明の組成物が含有するコタラヒムブツエキスは、コタラヒムブツを原料として抽出されたエキスである。コタラヒムブツエキスは、α-グルコシダーゼを阻害することによる血糖降下作用を有することが知られており、経口血糖降下薬である医薬品のアカルボースと同程度の薬効を有すると言われている。
【0023】
コタラヒムブツエキスを、ヨウ素化合物と併用した場合、コタラヒムブツエキスの有する血糖降下作用が増強し、糖尿病の予防・治療に極めて有効となる。このため、ヨウ素化合物の有するがん等に対する治療効果とも相まって、ヨウ素化合物とコタラヒムブツエキスを含有する本発明の組成物は、糖尿病とがん等を併発している患者に投与するのに特に適している。
【0024】
また、特許文献1や特許文献2に記載のように、ヨウ素化合物を含む薬剤は、エイズ、高血圧症、血管硬化症、結核、喘息、胃潰瘍、白血病等の疾患にも効果があるとされている。
本発明の組成物は、糖尿病とこれらの疾患を併発している患者に投与するのにも適している。
【0025】
本発明の組成物が含有するコタラヒムブツエキスは、コタラヒムブツのどの部位から抽出されたものでもよい。例えば、コタラヒムブツの蔓、葉、根等から抽出したコタラヒムブツエキスを適宜使用することができる。このうち、コタラヒムブツの根から抽出したコタラヒムブツエキスを使用するのが最適である。
【0026】
本発明の組成物におけるコタラヒムブツエキスの含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることが特に好ましい。また、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
コタラヒムブツエキスの含有量が上記下限以上であると、血糖降下作用が十分に発揮されやすい。また、上記上限以下であると、コストを抑制しやすい。
【0027】
コタラヒムブツは、サラシノール、コタラノール等のポリフェノール類や、カテキン、マンギフェリン等の機能性成分を含有する。これらの成分は、コタラヒムブツエキスを含有する本発明の組成物にも含有されている。
【0028】
本発明の組成物におけるポリフェノール類の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましい。また、10質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0029】
本発明の組成物におけるカテキンの含有量は、0.0005質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが特に好ましい。また、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0030】
本発明の組成物におけるマンギフェリンの含有量は、0.0005質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが特に好ましい。また、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0031】
本発明の組成物において、ヨウ素化合物のヨウ素1質量部に対する、コタラヒムブツエキスの含有量は、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.25質量部以上であることが特に好ましい。また、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.35質量部以下であることが特に好ましい。
コタラヒムブツエキスの含有量が上記範囲内であると、ヨウ素化合物とコタラヒムブツエキスとを併用したことによる血糖降下作用の増強が顕著になりやすい。
【0032】
本発明の組成物は、過酸化水素(H)を含有していてもよい。
本発明の組成物における過酸化水素の含有量は、1×10-9質量%以上であることが好ましく、1×10-8質量%以上であることがより好ましく、1×10-7質量%以上であることが特に好ましい。また、1×10-4質量%以下であることが好ましく、1×10-5質量%以下であることがより好ましく、1×10-6質量%以下であることが特に好ましい。
過酸化水素の含有量が上記範囲内であると、ヨウ素化合物がコロイド状に分散した状態となりやすく、組成物が毒性を生じにくい。
【0033】
本発明の組成物は、水素を含有していてもよい。
本発明の組成物における水素の含有量は、1ppb以上であることが好ましく、10ppb以上であることがより好ましく、100ppb以上であることが特に好ましい。また、1.5ppm以下であることが好ましく、1.3ppm以下であることがより好ましく1ppm以下であることが特に好ましい。
【0034】
本発明の組成物は、弱アルカリ性であることが好ましい。具体的には、本発明の組成物は、pHが7以上8以下であることが好ましい。
前記したヨウ素化合物、コタラヒムブツエキス、過酸化水素を水に混合した場合、通常、中性又は酸性の溶液となるので、pHを上昇させるために、pH調整剤(アルカリ性物質)を添加する必要がある。
かかるpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示できる。
【0035】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、糖、アミノ酸、ビタミン剤、安定剤、無痛化剤、着色剤等の添加剤を適宜添加することができる。
【0036】
本発明は、前記の組成物からなることを特徴とする血糖降下剤、糖尿病予防薬又は糖尿病治療薬等の薬剤にも関する。
本発明の血糖降下剤、糖尿病予防薬又は糖尿病治療薬は、糖尿病患者等への投与に適しているが、特に、がん等の、ヨウ素化合物を含有する薬剤で予防・治療可能な疾患と、糖尿病を併発している患者に投与すると、強力な血糖降下作用をのみならず、がん等の予防・治療効果も同時に発揮するので、本発明の組成物は、かかる患者への投与に適している。
【0037】
本発明の組成物(薬剤)の投与方法は、経口投与であってもよいし、注射・吸入・点眼・点耳・点鼻等の非経口投与であってもよい。
【0038】
本発明の組成物(薬剤)の投与量としては、特に制限はなく、投与対象である個体の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。
例えば、成人への1日の投与量は、1mg以上が好ましく、10mg以上がより好ましく、100mg以上が特に好ましく、1g以上が更に好ましく、10g以上が最も好ましい。また、1000g以下が好ましく、300g以下がより好ましく、100g以下が特に好ましく、20g以下が更に好ましく、5g以下が最も好ましい。
【0039】
本発明の組成物(薬剤)の投与頻度にも、特に制限はないが、1ヶ月に一回以上が好ましく、1週間に一回以上がより好ましく、1日に一回以上が特に好ましい。また、1日に十回以下が好ましく、1日に五回以下がより好ましく、1日に三回以下が特に好ましい。
【0040】
本発明の組成物(薬剤)は、例えば、糖尿病患者に投与されるが、投与時期に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。
【0041】
本発明の組成物が優れた血糖降下作用を示す作用・原理は明らかではないが、以下のことが推定される。ただし、本発明は、以下に推定する作用・原理の範囲に限定されるわけではない。
【0042】
本発明の組成物は、従来から血糖降下作用を示すことが知られているコタラヒムブツエキスに加えて、ヨウ素化合物を含有する。ヨウ素化合物自体には、血糖降下作用はないが、コタラヒムブツエキスとヨウ素化合物が共存することにより、コタラヒムブツエキスの有する血糖降下作用が増強する。
【実施例0043】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1
下記の成分を含有する組成物Aを調製した。組成物AのpHは7.5であった。
【0045】
・水:98.7質量部
・ヨウ素ナトリウム:0.7質量部
・ヨウ素カリウム:0.3質量部
・コタラヒムブツエキス:0.275質量部
【0046】
組成物Aを、2名の被験者に、1日3回、1回当たり50mLの量で、毎日経口投与し、被験者の空腹時血漿グルコース濃度を測定した。
結果を表1に示す。表1の「経過日数」は、組成物Aを最初に投与した日を0日目とした場合の経過日数を示しており、「経過日数0日」における濃度は、組成物Aを最初に投与する前に測定した濃度である。
【0047】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の組成物は、強力な血糖降下作用を有するので、糖尿病患者やその予備軍に投与する薬剤、サプリメント等に広く利用されるものである。特に、本発明の組成物は、ヨウ素化合物を含有するので、糖尿病と他の疾患(がん、エイズ、高血圧症、血管硬化症、結核、喘息、胃潰瘍、白血病等)を併発している患者に投与するのに適している。