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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013775
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/04 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
E01F15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118185
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】日鉄神鋼建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】久野 剛直
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 誠也
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA03
2D101CA06
2D101FA11
2D101FA22
2D101FB01
2D101FB12
2D101HA11
2D101HA18
(57)【要約】
【課題】車両の衝突エネルギに対して安定して高い吸収性能を発揮する防護柵を提供する。
【解決手段】防護柵1は、防護柵本体2と、固定装置3と、を備え、固定装置3は、固定管30と、差込管32と、位置決め部42と、を有し、固定管30は、当該固定管30内の空間に挿入される差込管32の外周面と固定管30の内周面との間に間隙を確保可能な内径を有し、位置決め部42は、第1道路の延び方向と直交する方向における差込管32の水平方向の位置を差込管32の第1反道路側部位32dと固定管30の第1対向部位30aとの間に間隙が形成される所定の位置に位置決めするように構成されているとともに、第1道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときにはその車両の衝突荷重により前記第1対向部位30aに対して前記第1反道路側部位32dが当接する位置まで差込管32が水平移動するのを許容するように構成されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が通行する道路に隣接する設置場所に設置されて車両が前記道路から逸脱したときにその車両を受け止める防護柵であって、
前記設置場所の地面上にその設置場所から移動可能に設置される防護柵本体と、
前記防護柵本体を前記設置場所で固定するための固定装置と、を備え、
前記防護柵本体は、上下方向に延びる支柱管を有し、
前記固定装置は、前記設置場所の地中に上下方向に延びる姿勢で埋め込まれる固定管と、前記支柱管内の空間及び前記固定管内の空間に跨るようにそれらの空間に挿入されて前記支柱管と前記固定管とを連結する差込管と、前記固定管内の空間における前記差込管の水平方向の位置を位置決めする位置決め部と、を有し、
前記固定管は、当該固定管内の空間に挿入される前記差込管の外周面と当該固定管の内周面との間に間隙を確保可能な内径を有し、
前記位置決め部は、前記道路の延び方向と直交する方向における前記差込管の水平方向の位置を前記固定管内の空間に挿入された前記差込管の外周面のうち前記道路と反対側を向く部位である差込管反道路側部位と前記固定管の内周面のうち前記差込管反道路側部位と対向する部位である固定管対向部位との間に間隙が形成される所定の位置に位置決めするように構成されているとともに、前記道路上から前記防護柵本体に車両が衝突したときにはその車両の衝突荷重により前記差込管反道路側部位が前記固定管対向部位に対して当接する位置まで前記差込管が水平移動するのを許容するように構成されている、防護柵。
【請求項2】
前記防護柵が設置される前記設置場所は、第1道路と第2道路との間に位置する中央分離帯であり、
前記差込管反道路側部位は、前記第1道路と反対側を向く部位である第1反道路側部位と、前記第2道路と反対側を向く部位である第2反道路側部位と、を含み、
前記固定管対向部位は、前記第1反道路側部位と対向する部位である第1対向部位と、前記第2反道路側部位と対向する部位である第2対向部位と、を含み、
前記位置決め部は、前記差込管の水平方向の位置を前記差込管の前記第1反道路側部位と前記固定管の前記第1対向部位との間に間隙が形成されるとともに前記差込管の前記第2反道路側部位と前記固定管の前記第2対向部位との間に間隙が形成される所定の位置に位置決めするように構成されているとともに、前記第1道路上から前記防護柵本体に車両が衝突したときにはその車両の衝突荷重により前記第1対向部位に対して前記第1反道路側部位が当接する位置まで前記差込管が水平移動するのを許容し且つ前記第2道路上から前記防護柵本体に車両が衝突したときにはその車両の衝突荷重により前記第2対向部位に対して前記第2反道路側部位が当接する位置まで前記差込管が水平移動するのを許容するように構成されている、請求項1に記載の防護柵。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記差込管が挿通される挿通孔を有していて前記固定管の上端部の上に設置される天板部であって前記挿通孔に挿通された前記差込管の水平方向の位置を前記所定の位置に位置決めするものと、前記挿通孔の外側で且つ前記固定管の径方向内側の位置において前記天板部から前記固定管内の空間へ下方に突出し、前記固定管の内周面に当接することにより前記天板部の水平方向への移動を規制する移動規制突起と、を有し、
前記移動規制突起は、前記道路上から前記防護柵本体に車両が衝突するときのその車両の衝突荷重により前記差込管及び前記天板部が前記道路と反対側へ水平移動するのを許容するように前記固定管に当たって変形し得る強度を有する、請求項1又は2に記載の防護柵。
【請求項4】
前記防護柵本体は、当該防護柵本体が前記設置場所に設置されるときに前記支柱管に対して前記道路側の位置で前記道路に沿って延びるように配置されて前記道路に面する道路側ビームと、当該防護柵本体が前記設置場所に設置されるときに前記支柱管に対して前記道路側ビームと反対側の位置で前記道路に沿って延びるように配置される反道路側ビームと、をさらに有し、
前記固定管内の空間への前記差込管の挿入長と、前記固定管の内径と前記差込管の外径との差と、前記反道路側ビームの下端から前記設置場所の地面までの距離とは、前記道路上から前記防護柵本体に車両が衝突したときに前記固定管対向部位に対して前記差込管反道路側部位が当接する位置まで前記差込管及び前記防護柵本体が水平移動した後、前記差込管の下端が前記固定管の内周面のうちの前記道路側の部位に当接するとともにその差込管の下端から上方に離れた部位が前記固定管対向部位の上端に当接するように当該差込管及び前記防護柵本体が前記道路と反対側へ傾き、その後、前記差込管が曲げ変形して前記反道路側ビームの下端が前記設置場所の地面に接触するまで前記防護柵本体が前記道路と反対側へさらに傾くという前記差込管及び前記防護柵本体の動作が生じるように設定されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の防護柵。
【請求項5】
前記反道路側ビームの下端から前記設置場所の地面までの距離は、前記固定管の内径と前記差込管の外径との差よりも大きく設定されている、請求項4に記載の防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が通行する道路に隣接する設置場所に設置されて車両が道路から逸脱したときにその車両を受け止める防護柵が知られている。例えば、下記特許文献1にこのような防護柵の一例が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された防護柵は、その設置場所から移動可能に構成された可動防護柵である。この可動防護柵は、複数の可動側部材と、ビームと、固定管と、複数の連結部材と、を備えている。
【0004】
複数の可動側部材は、それぞれ、その設置場所から道路上を移動可能に構成されている。各可動側部材は、上下方向に延びる筒状の支柱を有する。ビームは、複数の可動側部材の支柱を横切る方向に延びるとともにそれらの支柱を繋いでいる。固定管は、前記設置場所の地面に固定されている。
【0005】
複数の連結部材は、それぞれ、複数の可動側部材の対応するものの支柱内に上下方向に移動可能に収容されている。各連結部材は、可動側部材の支柱内の空間と固定管内の空間とに跨って配置されてその可動側部材の支柱と固定管とを連結する第1の高さ位置と、可動側部材の支柱内の空間に挿入された状態で固定管内の空間から上方へ離脱する第2の高さ位置との間で上下方向に移動可能となっている。また、防護柵は、各連結部材を第2の高さ位置で保持する保持部を有する。
【0006】
下記特許文献1に開示された可動防護柵の通常の使用時には、その設置場所において各連結部材を第1の高さ位置に配置してその各連結部材により各可動側部材の支柱と各固定管とを連結することで可動側部材を前記設置場所に固定する。一方、緊急時には、各連結部材を第2の高さ位置に引き上げてその各連結部材を保持部により当該第2の高さ位置で保持することによって、当該各連結部材による各可動側部材の支柱と各固定管との連結を解除する。これにより、各可動側部材が移動可能となり、その結果、可動防護柵が前記設置場所から移動可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6014782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、車両の衝突エネルギに対する防護柵の吸収性能の向上が求められている。前記特許文献1に開示された可動防護柵において、例えば固定管の内径を拡大すれば、その固定管内の空間に挿入された前記連結部材の水平方向に移動可能な距離及びその連結部材の傾き代が確保され、車両の衝突を受けた可動防護柵の水平移動に伴う衝突エネルギの吸収効果、及び、車両の衝突を受けた可動防護柵が固定管内の空間において連結部材が傾動する分だけ倒れることに伴う衝突エネルギの吸収効果を得ることができ、その結果、車両の衝突エネルギに対する防護柵の吸収性能の向上が可能である。
【0009】
しかしながら、この場合、車両の衝突エネルギに対する防護柵の吸収性能の安定性は確保できないという問題がある。具体的に、前記のように固定管の内径を拡大すると、その固定管内の空間における連結部材の水平方向の位置が定まらず、その固定管内の空間において連結部材が道路寄りに位置している場合には道路上から防護柵に車両が衝突したときに連結部材及び可動側部材が水平移動する距離が大きくなって車両の衝突エネルギに対する防護柵の高い吸収性能が得られるのに対し、固定管内の空間において連結部材が道路から遠い側の管壁寄りに位置している場合には道路上から防護柵に車両が衝突したときに連結部材及び可動側部材が水平移動する距離は比較的小さくなり、その結果、車両の衝突エネルギに対する防護柵の吸収性能の向上は比較的小さくなる。このように固定管内の空間における連結部材の水平方向の位置によって車両の衝突エネルギに対する防護柵の吸収性能が異なることになり、防護柵の吸収性能の安定性を確保できない。
【0010】
本発明の目的は、車両の衝突エネルギに対して安定して高い吸収性能を発揮する防護柵を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により提供されるのは、車両が通行する道路に隣接する設置場所に設置されて車両が前記道路から逸脱したときにその車両を受け止める防護柵である。この防護柵は、前記設置場所の地面上にその設置場所から移動可能に設置される防護柵本体と、前記防護柵本体を前記設置場所で固定するための固定装置と、を備える。前記防護柵本体は、上下方向に延びる支柱管を有する。前記固定装置は、前記設置場所の地中に上下方向に延びる姿勢で埋め込まれる固定管と、前記支柱管内の空間及び前記固定管内の空間に跨るようにそれらの空間に挿入されて前記支柱管と前記固定管とを連結する差込管と、前記固定管内の空間における前記差込管の水平方向の位置を位置決めする位置決め部と、を有する。前記固定管は、当該固定管内の空間に挿入される前記差込管の外周面と当該固定管の内周面との間に間隙を確保可能な内径を有する。前記位置決め部は、前記差込管の水平方向の位置を前記固定管内の空間に挿入された前記差込管の外周面のうち前記道路と反対側を向く部位である差込管反道路側部位と前記固定管の内周面のうち前記差込管反道路側部位と対向する部位である固定管対向部位との間に間隙が形成される所定の位置に位置決めするように構成されているとともに、前記道路上から前記防護柵本体に車両が衝突したときにはその車両の衝突荷重により前記固定管対向部位に対して前記差込管反道路側部位が当接する位置まで前記差込管が水平移動するのを許容するように構成されている。
【0012】
この防護柵では、道路上から防護柵本体に車両が衝突したときに差込管及び防護柵本体の道路と反対側への傾動及び水平移動によって車両の衝突エネルギを吸収することが可能であり、しかも、固定管内の空間に挿入される差込管の水平方向の位置が位置決め部によって前記差込管反道路側部位と前記固定管対向部位との間に間隙が形成される所定の位置に位置決めされることにより、差込管及び防護柵本体の道路と反対側への水平移動による衝突エネルギの吸収量が一定になることから、車両の衝突エネルギに対して安定して高い吸収性能を発揮することができる。
【0013】
具体的には、この防護柵では、固定管が当該固定管内の空間に挿入される差込管の外周面と当該固定管の内周面との間に間隙を確保可能な内径を有するため、固定管内の空間に挿入された差込管が道路と反対側へ傾動可能となっている。このため、道路上から防護柵本体に車両が衝突したときに、差込管及び防護柵本体が道路と反対側へ傾動して車両の衝突エネルギを吸収できる。それに加えて、この防護柵では、固定管内に挿入される差込管の水平方向の位置が位置決め部により前記差込管反道路側部位と前記固定管対向部位との間に間隙が形成される所定の位置に位置決めされるとともに、位置決め部は、道路上から防護柵本体に車両が衝突したときにその車両の衝突荷重により前記固定管対向部位に対して前記差込管反道路側部位が当接する位置まで差込管が水平移動するのを許容するように構成されているため、道路上から防護柵本体に車両が衝突したときに差込管及び防護柵本体が道路と反対側へ水平移動して車両の衝突エネルギを吸収でき、しかも、その差込管及び防護柵本体の道路と反対側への水平移動の距離は位置決め部による差込管の位置決めにより一定になるため、当該差込管及び当該防護柵本体の水平移動による車両の衝突エネルギの吸収量を一定にすることができる。以上のように、この防護柵では、防護柵本体への車両の衝突時に差込管及び防護柵本体の道路と反対側への傾動及び水平移動による車両の衝突エネルギの吸収効果を得ることができるとともに、差込管及び防護柵本体の道路と反対側への水平移動による車両の衝突エネルギの吸収量を一定にすることができることから、車両の衝突エネルギに対して安定して高い吸収性能を発揮することができる。
【0014】
前記防護柵が設置される前記設置場所は、第1道路と第2道路との間に位置する中央分離帯であり、前記差込管反道路側部位は、前記第1道路と反対側を向く部位である第1反道路側部位と、前記第2道路と反対側を向く部位である第2反道路側部位と、を含み、前記固定管対向部位は、前記第1反道路側部位と対向する部位である第1対向部位と、前記第2反道路側部位と対向する部位である第2対向部位と、を含み、前記位置決め部は、前記差込管の水平方向の位置を前記差込管の前記第1反道路側部位と前記固定管の前記第1対向部位との間に間隙が形成されるとともに前記差込管の前記第2反道路側部位と前記固定管の前記第2対向部位との間に間隙が形成される所定の位置に位置決めするように構成されているとともに、前記第1道路上から前記防護柵本体に車両が衝突したときにはその車両の衝突荷重により前記第1対向部位に対して前記第1反道路側部位が当接する位置まで前記差込管が水平移動するのを許容し且つ前記第2道路上から前記防護柵本体に車両が衝突したときにはその車両の衝突荷重により前記第2対向部位に対して前記第2反道路側部位が当接する位置まで前記差込管が水平移動するのを許容するように構成されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、中央分離帯において第1道路上からの車両の衝突と第2道路上からの車両の衝突との両方の衝突エネルギに対して安定して高い吸収性能を発揮可能な防護柵を提供できる。
【0016】
前記位置決め部は、前記差込管が挿通される挿通孔を有していて前記固定管の上端部の上に設置される天板部であって前記挿通孔に挿通された前記差込管の水平方向の位置を前記所定の位置に位置決めするものと、前記挿通孔の外側で且つ前記固定管の径方向内側の位置において前記天板部から前記固定管内の空間へ下方に突出し、前記固定管の内周面に当接することにより前記天板部の水平方向への移動を規制する移動規制突起と、を有し、前記移動規制突起は、前記道路上から前記防護柵本体に車両が衝突するときのその車両の衝突荷重により前記差込管及び前記天板部が前記道路と反対側へ水平移動するのを許容するように前記固定管に当たって変形し得る強度を有するものであってもよい。
【0017】
この場合には、差込管の水平方向の位置を前記所定の位置に位置決めするとともに、道路上から防護柵本体に車両が衝突したときにはその車両の衝突荷重により差込管が道路と反対側へ水平移動するのを許容する位置決め部を具体的に構成することができる。
【0018】
前記防護柵本体は、当該防護柵本体が前記設置場所に設置されるときに前記支柱管に対して前記道路側の位置で前記道路に沿って延びるように配置されて前記道路に面する道路側ビームと、当該防護柵本体が前記設置場所に設置されるときに前記支柱管に対して前記道路側ビームと反対側の位置で前記道路に沿って延びるように配置される反道路側ビームと、をさらに有し、前記固定管内の空間への前記差込管の挿入長と、前記固定管の内径と前記差込管の外径との差と、前記反道路側ビームの下端から前記設置場所の地面までの距離とは、前記道路上から前記防護柵本体に車両が衝突したときに前記固定管対向部位に対して前記差込管反道路側部位が当接する位置まで前記差込管及び前記防護柵本体が水平移動した後、前記差込管の下端が前記固定管の内周面のうちの前記道路側の部位に当接するとともにその差込管の下端から上方に離れた部位が前記固定管対向部位の上端に当接するように当該差込管及び前記防護柵本体が前記道路と反対側へ傾き、その後、前記差込管が曲げ変形して前記反道路側ビームの下端が前記設置場所の地面に接触するまで前記防護柵本体が前記道路と反対側へさらに傾くという前記差込管及び前記防護柵本体の動作が生じるように設定されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、道路上から防護柵本体に車両が衝突するときにその車両の衝突エネルギを良好に吸収可能な差込管及び防護柵本体の前記の動作を実現できる。
【0020】
前記固定管の内径と前記差込管の外径との差は、前記反道路側ビームの下端から前記設置場所の地面までの距離よりも大きく設定されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、防護柵本体に対する車両の衝突時に、差込管の下端が固定管の内周面のうちの道路側の部位に当接するとともにその差込管の下端から上方に離れた部位が固定管対向部位の上端に当接するように差込管及び防護柵本体が道路と反対側へ傾き、その後、差込管が曲げ変形して反道路側ビームの下端が設置場所の地面に接触するまで防護柵本体が道路と反対側へさらに傾くという差込管及び防護柵本体の動作を実現できる。このため、差込管の曲げ変形が生じる前に反道路側ビームの下端が設置場所の地面に接触して差込管の曲げ変形による車両の衝突エネルギの吸収効果が十分得られなくなるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、車両の衝突エネルギに対して安定して高い吸収性能を発揮する防護柵が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態による防護柵の正面図である。
図2】本発明の一実施形態による防護柵の上面図である。
図3図1に示した防護柵の図1中のIII-III位置における断面図である。
図4】防護柵のうち固定管及び位置決め部とそれらの内側に挿入された差込管との係合状態を固定管及び位置決め部を破断させて部分的に示す図である。
図5】防護柵の固定管と位置決め部と差込管の図4中のV-V位置における断面図である。
図6】位置決め部の上面図である。
図7】位置決め部の正面図である。
図8】位置決め部の下面図である。
図9】防護柵に対して車両が衝突するときの防護柵の動作を説明するための図であって車両の衝突前の状態を示す図である。
図10】防護柵に対して車両が衝突するときの防護柵の動作を説明するための図であって図9の状態から防護柵が車両の衝突を受けてその衝突方向に水平移動した状態を示す図である。
図11】防護柵に対して車両が衝突するときの防護柵の動作を説明するための図であって図10の状態から防護柵が車両の衝突荷重により傾動した状態を示す図である。
図12】防護柵に対して車両が衝突するときの防護柵の動作を説明するための図であって図11の状態から車両の衝突荷重により差込管が曲げ変形して防護柵がさらに傾動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
本発明の一実施形態による防護柵1は、高速道路やその他の道路の中央分離帯の地面上に当該中央分離帯の両側の道路の延び方向に沿って延びるように設置され、その両側の道路上を走行する車両がその道路上から逸脱した場合にその車両を受け止めるものである。また、緊急時には、当該防護柵1の一部である後述の防護柵本体2を設置場所から移動させることが可能となっており、その防護柵本体2を移動させることにより車両が中央分離帯の両側の道路のうちの一方の道路から他方の道路へUターンもしくは進入するためのスペースを確保できるようになっている。
【0026】
防護柵1は、複数の防護柵本体2(図1参照)と、複数の固定装置3(図1参照)と、複数の接続部材4(図2参照)と、を備える。
【0027】
複数の防護柵本体2のそれぞれは、特定の長手方向に延び、その長手方向について道路に沿うように配置される。本実施形態では、複数の防護柵本体2は、中央分離帯の両側の道路の延び方向に沿って並んで配置され、一方の道路とその反対車線の道路との間を仕切る。防護柵本体2は、後述の転動体22の転動部材が地面G上を転動することにより地面G上を移動可能である。防護柵本体2は、複数の基部6と、複数の支柱管8と、第1ビーム10と、第2ビーム12(図2参照)と、複数のビーム連結部材13とを備える。
【0028】
複数の基部6は、防護柵本体2のベースとなる部分であり、それぞれ、地面G上を移動可能に構成されている。本実施形態では、防護柵本体2は、2つの基部6を有する。各基部6は、図3に示すように、ベースプレート20と、複数の転動体22とを有する。
【0029】
ベースプレート20は、略水平に配置された平板である。このベースプレート20は、当該ベースプレート20を上下方向(当該ベースプレート20の板厚方向)に貫通する貫通孔を有する。
【0030】
複数の転動体22は、地面Gに沿って当該地面G上を転動可能に構成されており、基部6が地面G上を移動できるようにするためのものである。この複数の転動体22は、それぞれベースプレート20に取り付けられている。当該転動体22は、いわゆるキャスタである。本実施形態では、各基部6は、4つの転動体22を有する。4つの転動体22は、ベースプレート20の貫通孔の両側に分かれて2つずつ配置されている。この4つの転動体22は、ベースプレート20から下向きに突出しており、地面Gに接触してベースプレート20を下から支える。
【0031】
複数の支柱管8は、図1に示すように、防護柵本体2の長手方向に並ぶ複数の位置で複数の基部6のそれぞれから立直するようにそれらの基部6に固定されている。本実施形態では、防護柵本体2は、2つの支柱管8を有する。各支柱管8は、円筒状であり、各基部6のベースプレート20の貫通孔に挿入されてベースプレート20を貫通するとともにそのベースプレート20から上方へ延びる姿勢で当該ベースプレート20に固定されている。
【0032】
第1ビーム10と第2ビーム12は、図2及び図3に示すように、防護柵本体2の長手方向及び高さ方向の両方に対して直交する当該防護柵本体2の幅方向について前記複数の支柱管8の両側に配置されてそれら複数の支柱管8にビーム連結部材13を介してそれぞれ固定されている。第1ビーム10と第2ビーム12は、防護柵本体2の幅方向における両側の最外部に位置している。第1道路上から防護柵本体2に車両が衝突する場合には、第1ビーム10が本発明における道路側ビームの一例であり、第2ビーム12が本発明における反道路側ビームの一例である。また、第2道路上から防護柵本体2に車両が衝突する場合には、第2ビーム12が本発明における道路側ビームの一例であり、第1ビーム10が本発明における反道路側ビームの一例である。
【0033】
第1ビーム10は、防護柵1の両側に位置する道路のうちの一方の道路である第1道路に面し、この第1道路上を走行する車両がその第1道路上から中央分離帯上へ逸脱した場合にその車両の衝突を受ける面を構成する。第1ビーム10は、図3に示すように、上下に並んで配置された第1上ビーム10a及び第1下ビーム10bからなる。第1上ビーム10aは、縦方向の断面が波形をなす薄板からなり、防護柵本体2の長手方向に沿って延びている。第1下ビーム10bは、第1上ビーム10aと同様の形状をなし、第1上ビーム10aの下側でその第1上ビーム10aと平行に延びている。
【0034】
第2ビーム12は、防護柵1を挟んで前記第1道路と反対側に位置する道路である第2道路に面し、この第2道路上を走行する車両がその第2道路上から中央分離帯上へ逸脱した場合にその車両の衝突を受ける面を構成する。第2ビーム12は、図3に示すように、上下に並んで配置された第2上ビーム12a及び第2下ビーム12bからなる。第2上ビーム12aは、第1上ビーム10aと対称形をなし、防護柵本体2の長手方向に沿って延びている。第2下ビーム12bは、第2上ビーム12aと同様の形状をなすとともに第1下ビーム10bと対称形をなし、第2上ビーム12aの下側でその第2上ビーム12aと平行に延びている。
【0035】
複数のビーム連結部材13は、図2及び図3に示すように、第1上ビーム10aと第2上ビーム12aとの間及び第1下ビーム10bと第2下ビーム12bとの間にそれぞれ介在している。第1上ビーム10aと第2上ビーム12aとの間に介在するビーム連結部材13は、第1上ビーム10aと第2上ビーム12aとを防護柵本体2の幅方向において連結するとともにそれらの第1上ビーム10a及び第2上ビーム12aを支柱管8に連結する。また、第1下ビーム10bと第2下ビーム12bとの間に介在するビーム連結部材13は、第1下ビーム10bと第2下ビーム12bとを防護柵本体2の幅方向において連結するとともにそれらの第1下ビーム10b及び第2下ビーム12bを支柱管8に連結する。従って、第1上ビーム10aと第2上ビーム12aは、それらを連結するビーム連結部材13を介して支柱管8に連結されている。また、第1下ビーム10bと第2下ビーム12bは、それらを連結するビーム連結部材13を介して支柱管8に連結されている。
【0036】
複数の固定装置3(図1参照)は、各防護柵本体2が設置位置に配置されたときに当該防護柵本体2をその設置位置で固定するためのものである。この固定装置3は、防護柵本体2をその設置位置で地面Gに固定する固定状態と当該固定を解除してその防護柵本体2の地面G上での移動を許容する固定解除状態とに切り換えられることが可能に構成されている。具体的には、固定装置3は、前記固定状態では防護柵本体2の対応する基部6をその設置位置で地面Gに固定し、前記固定解除状態では対応する基部6の固定を解除してその基部6の地面G上での移動を許容する。
【0037】
複数の固定装置3は、防護柵1の設置場所(本実施形態では中央分離帯)において前記第1及び第2道路の延び方向に沿って間隔をあけて並ぶように設置されている。各固定装置3は、固定管30と、差込管32と、位置決め部42と、を有する。
【0038】
固定管30は、防護柵1の設置場所において地面G下に埋め込まれて固定されている。固定管30は、中空円筒状であり、上下方向に延びる姿勢で地中に埋め込まれてその内側に差込管32を受け入れる空間を確保している。固定管30は、その上端の位置が地面Gの位置と一致するように配置されている。当該固定管30の上端は、開口している。固定管30の内周面は、後述のように当該固定管30内の空間に挿入された差込管32の第1反道路側部位32dと対向する部位である第1対向部位30aと、その差込管32の第2反道路側部位32eと対向する部位である第2対向部位30bと、を有する。この第1対向部位30a及び第2対向部位30bは、本発明における固定管対向部位の一例である。
【0039】
差込管32は、図1及び図3に示すように、固定装置3の前記固定状態において支柱管8内の空間と固定管30内の空間とに跨るようにそれらの空間に挿入されて支柱管8と固定管30とを相互に連結し、それによって支柱管8及びそれを有する防護柵本体2を設置場所に固定するものである。この差込管32は、固定装置3の前記固定解除状態では、固定管30内の空間及び支柱管8内の空間から上方へ引き抜かれて基部6の地面Gに対する固定を解除し、その基部6の地面G上での移動を許容する。
【0040】
差込管32は、支柱管8内の空間及び固定管30内の空間に挿入される円筒状の差込管本体32aと、その差込管本体32aの上端からその径方向外側へ突出するようにその上端に取り付けられた鍔部32bと、差込管本体32aの上端に取り付けられた把手32cとを有する。前記鍔部32bは、支柱管8の外径よりも大きい外径を有しており、前記固定状態において支柱管8の上端に当接し、それによって差込管32を当該差込管32が支柱管8と固定管30とを相互に連結する高さ位置(図3参照)で保持する。また、前記把手32cは、支柱管8内の空間及び固定管30内の空間に差込管32を挿脱する作業の際に作業者によって把持される部分である。
【0041】
前記差込管本体32aは、当該差込管本体32aの外周面のうち第1道路と反対側を向く部位である第1反道路側部位32dと、当該差込管本体32aの外周面のうち第2道路と反対側を向く部位である第2反道路側部位32eと、を有する。この第1反道路側部位32d及び第2反道路側部位32eは、本発明における反道路側部位の一例である。
【0042】
位置決め部42(図4参照)は、固定管30の上端に装着され、固定管30内の空間に挿入される差込管32の水平方向の位置を位置決めするものである。具体的には、位置決め部42は、差込管32の水平方向の位置を前記第1反道路側部位32dと固定管30の第1対向部位30aとの間に間隙が形成されるとともに前記第2反道路側部位32eと固定管30の第2対向部位30bとの間に間隙が形成される所定の位置に位置決めするように構成されている。より具体的には、位置決め部42は、差込管32の水平方向の位置を当該差込管32の外周面と固定管30の内周面との間にそれらの周方向全体に亘って間隙が形成される所定の位置に位置決めする。すなわち、位置決め部42は、第1及び第2道路の延び方向に直交する方向における差込管32の固定管30内の空間での水平方向の位置、及び、第1及び第2道路の延び方向に沿う方向における差込管32の固定管30内の空間での水平方向の位置を位置決めする。また、位置決め部42は、第1道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときにはその車両の衝突荷重により差込管32の第1反道路側部位32dが固定管30の第1対向部位30aに対して当接する位置まで差込管32が水平移動するのを許容し、且つ、第2道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときにはその車両の衝突荷重により差込管32の第2反道路側部位32eが固定管30の第2対向部位30bに対して当接する位置まで差込管32が水平移動するのを許容するように構成されている。
【0043】
位置決め部42は、天板部44と、延出部46と、複数の移動規制突起48と、を有する。
【0044】
天板部44は、固定管30の上端の上に設置される。この天板部44は、差込管32が挿通される挿通孔44aを有する。この挿通孔44aは、差込管32の外径よりも僅かに大きい直径を有する丸孔であり、天板部44を上下方向に貫通している。天板部44が固定管30の上端の上に設置された状態で、挿通孔44aは、その中心が固定管30の軸心上に位置するように配置されている。天板部44は、挿通孔44aに挿通された差込管32の水平方向の位置を前記所定の位置に位置決めする。また、天板部44は、固定管30の上端の内縁と差込管32の外周面との間の隙間を覆い、その隙間から固定管30内の空間に砂利やゴミなどの異物が落ち込むのを抑制する機能も有する。
【0045】
延出部46は、天板部44の挿通孔44aの縁部から下方へ固定管30内の空間に延出する円筒状の部分である。この延出部46は、その軸心が固定管30の軸心と一致するように配置されている。この延出部46は、差込管32の外径よりも僅かに大きい内径を有し、その内側に差込管32が挿通される。すなわち、差込管32は、前記天板部44の挿通孔44a及び延出部46の内側を通って固定管30内の空間に挿入される。
【0046】
複数の移動規制突起48は、それぞれ、前記挿通孔44aの外側で且つ固定管30の径方向内側の位置において天板部44から固定管30内の空間へ下方に突出している。この複数の移動規制突起48は、固定管30の内周面に当接することにより天板部44の水平方向への移動を規制する。複数の移動規制突起48は、図5及び図6に示すように、前記挿通孔44a及び延出部46の周方向、すなわち固定管30の周方向において、等間隔に配置されている。本実施形態では、各移動規制突起48は、天板部44に打ち込まれたリベットからなる。
【0047】
移動規制突起48は、第1道路上から防護柵本体2に車両が衝突するときのその車両の衝突荷重により差込管32及び天板部44が第1道路と反対側へ水平移動するのを許容し、且つ、第2道路上から防護柵本体2に車両が衝突するときのその車両の衝突荷重により差込管32及び天板部44が第2道路と反対側へ水平移動するのを許容するように、固定管30に当たって変形し得る強度を有する。すなわち、各移動規制突起48は、車両の衝突荷重により固定管30に当たって潰れることが可能となっており、そのように潰れることによって差込管32及び天板部44の第1及び第2道路と反対側への水平移動を許容する。
【0048】
また、本実施形態では、図9及び図10に示すように、固定管30内の空間への差込管32の挿入長Lと、固定管30の内径と差込管32の外径との差2xと、第1下ビーム10bの下端から地面Gまでの距離yとは、第1道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときに固定管30の第1対向部位30aに対して差込管32の第1反道路側部位32dが当接する位置まで差込管32及び防護柵本体2が水平移動した後、差込管32の下端が固定管30の内周面のうちの第1道路側の部位に当接するとともにその差込管32の下端から上方に離れた部位が固定管30の第1対向部位30aの上端(支持部A)に当接するように差込管32及び防護柵本体2が第1道路と反対側へ傾き、その後、差込管32が固定管30の第1対向部位30aの上端(支持部A)に当たった位置で曲げ変形して第2下ビーム12bの下端が地面Gに接触するまで防護柵本体2が第1道路と反対側へさらに傾くという差込管32及び防護柵本体2の動作が生じるように設定されている。
【0049】
また、固定管30内の空間への差込管32の挿入長Lと、固定管30の内径と差込管32の外径との差2xと、第2下ビーム12bの下端から地面Gまでの距離yとは、第2道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときに固定管30の第2対向部位30bに対して差込管32の第2反道路側部位32eが当接する位置まで差込管32及び防護柵本体2が水平移動した後、差込管32の下端が固定管30の内周面のうちの第2道路側の部位に当接するとともにその差込管32の下端から上方に離れた部位が固定管30の第2対向部位30bの上端に当接するように差込管32及び防護柵本体2が第2道路と反対側へ傾き、その後、差込管32が固定管30の第2対向部位30bの上端に当たった位置で曲げ変形して第1下ビーム10bの下端が地面Gに接触するまで防護柵本体2が第2道路と反対側へさらに傾くという差込管32及び防護柵本体2の動作が生じるように設定されている。
【0050】
また、第1及び第2下ビーム10b,12bの下端から地面Gまでの距離は、固定管30の内径と差込管32の外径との差2xよりも大きく設定されている。
【0051】
前記複数の接続部材4は、それぞれ、隣り合う防護柵本体2の互いに隣接する端部同士を接続する部材である。各接続部材4は、防護柵本体2の延び方向の端部に対して着脱可能となっており、複数の防護柵本体2が設置場所に並んで設置された状態で隣り合う防護柵本体2の互いに隣接する端部に装着されてそれらの端部同士を接続する。
【0052】
次に、本実施形態による防護柵1に車両が衝突して防護柵1がその車両の衝突エネルギを吸収するときの動作について説明する。
【0053】
まず、防護柵1に車両が衝突する前は、図9に示すように、差込管32が、防護柵本体2の支柱管8内の空間に挿入されているとともに、位置決め部42により固定管30に対して同軸となるように配置されている。すなわち、差込管32の外周面と固定管30の内周面との間にそれらの外周面及び内周面の全周に亘って均等な間隙xが形成されている。
【0054】
そして、車両が防護柵1の防護柵本体2に衝突する。このとき、例えば、第1道路上を走行している車両がその第1道路上から中央分離帯側へ逸脱して防護柵本体2に衝突するものとする。このとき、防護柵本体2が車両の衝突荷重Pを受け、図10に示すように防護柵本体2及び差込管32が第1道路と反対側へ水平移動する。具体的には、固定管30内の空間に挿入された差込管32の第1反道路側部位32dが固定管30の第1対向部位30aに当接する位置まで差込管32及び防護柵本体2が第1道路と反対側(第2道路側)へ水平移動する。この際、位置決め部42の複数の移動規制突起48(図7及び図8参照)のうち第1道路から遠い側に位置するものが前記衝突荷重Pにより固定管30の上端部の管壁に当たって潰れることによって、位置決め部42によって位置決めされていた差込管32の第1道路と反対側への水平移動が許容される。この移動規制突起48が潰れるときの抵抗力及び重量物である防護柵本体2の水平移動により、車両の衝突エネルギの一部が吸収される。
【0055】
そして、差込管32及び防護柵本体2が以上のように水平移動した後、図11に示すように、固定管30の第1対向部位30aの上端部である支持部Aを支点として、差込管32の下端が固定管30の内周面のうち第1道路側の部位(第2対向部位30b)に当たるまで当該差込管32が第1道路と反対側へ傾動するとともに防護柵本体2が第1道路と反対側へ傾動する。この時の地中への固定管30の埋込方向(固定管30の軸方向)に対する差込管32及び防護柵本体2の傾角θは、約5°である。この差込管32及び防護柵本体2の傾動により、車両の衝突エネルギのさらに一部が吸収される。
【0056】
そして、このような差込管32及び防護柵本体2の傾動後、前記衝突荷重Pにより、図12に示すように、差込管32が前記支持部Aに当たった位置で屈曲するように曲げ変形しつつ防護柵本体2が第1道路と反対側へさらに傾動する。このとき、第2下ビーム12bの下端が地面Gに接触するまで防護柵本体2が傾動する。このように第2下ビーム12bの下端が地面Gに接触するまで防護柵本体2が傾いた状態における、地中への固定管30の埋込方向(固定管30の軸方向)に対する防護柵本体2の傾角θは、約8°である。この防護柵本体2の傾動と差込管32の曲げ変形とにより、車両の衝突エネルギのさらに一部が吸収される。
【0057】
以上のような動作により、本実施形態の防護柵1による車両の衝突エネルギの吸収が行われる。また、第2道路上から防護柵本体2に車両が衝突した場合には、以上の動作の第1道路側を第2道路側に置き換えて同様の動作が行われ、それによって同様にその第2道路上からの車両の衝突による衝突エネルギの吸収が行われる。
【0058】
本実施形態による防護柵1では、第1道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときには差込管32及び防護柵本体2の第1道路と反対側への傾動及び水平移動によって車両の衝突エネルギを吸収することが可能であり、第2道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときには差込管32及び防護柵本体2の第2道路と反対側への傾動及び水平移動によって車両の衝突エネルギを吸収することが可能である。しかも、この防護柵1では、固定管30内の空間に挿入される差込管32の水平方向の位置が位置決め部42によって差込管32の第1反道路側部位32dと固定管30の第1対向部位30aとの間に間隙が形成されるとともに差込管32の第2反道路側部位32eと固定管30の第2対向部位30bとの間に間隙が形成される所定の位置に位置決めされるため、差込管32及び防護柵本体2の第1道路と反対側への水平移動による衝突エネルギの吸収量が一定になるとともに、差込管32及び防護柵本体2の第2道路と反対側への水平移動による衝突エネルギの吸収量が一定になる。このため、当該防護柵1は、車両の衝突エネルギに対して安定して高い吸収性能を発揮することができる。
【0059】
具体的には、本実施形態による防護柵1では、固定管30が当該固定管30内の空間に挿入される差込管32の外周面と当該固定管30の内周面との間に間隙を確保可能な内径を有するため、固定管30内の空間に挿入された差込管32が第1道路と反対側もしくは第2道路と反対側へ傾動可能となっている。このため、第1道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときには差込管32及び防護柵本体2が第1道路と反対側へ傾動して車両の衝突エネルギを吸収でき、第2道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときには差込管32及び防護柵本体2が第2道路と反対側へ傾動して車両の衝突エネルギを吸収できる。
【0060】
加えて、この防護柵1では、固定管30内に挿入された差込管32の水平方向の位置が位置決め部42により差込管32の第1反道路側部位32dと固定管30の第1対向部位30aとの間に間隙が形成されるとともに差込管32の第2反道路側部位32eと固定管30の第2対向部位30bとの間に間隙が形成される所定の位置に位置決めされるとともに、位置決め部42は、第1道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときにその車両の衝突荷重により移動規制突起48が潰れて前記第1対向部位30aに対して前記第1反道路側部位32dが当接する位置まで差込管32が水平移動するのを許容し、且つ、第2道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときにその車両の衝突荷重により移動規制突起48が潰れて前記第2対向部位30bに対して前記第2反道路側部位32eが当接する位置まで差込管32が水平移動するのを許容するように構成されている。このため、第1道路上から防護柵本体2に車両が衝突した場合には差込管32及び防護柵本体2が第1道路と反対側へ水平移動して車両の衝突エネルギを吸収できるとともに、第2道路上から防護柵本体2に車両が衝突した場合には差込管32及び防護柵本体2が第2道路と反対側へ水平移動して車両の衝突エネルギを吸収でき、しかも、それらの場合における差込管32及び防護柵本体2の水平移動の距離は位置決め部42による差込管32の位置決めにより一定になるため、当該差込管32及び当該防護柵本体2の水平移動による車両の衝突エネルギの吸収量を一定にすることができる。
【0061】
以上のように、本実施形態による防護柵1では、防護柵本体2への車両の衝突時に差込管32及び防護柵本体2の傾動及び水平移動による車両の衝突エネルギの吸収効果を得ることができるとともに、差込管32及び防護柵本体2の水平移動による車両の衝突エネルギの吸収量を一定にすることができることから、車両の衝突エネルギに対して安定して高い吸収性能を発揮することができる。しかも、本実施形態による防護柵1は、中央分離帯上において第1道路上からの車両の衝突及び第2道路上からの車両の衝突のいずれに対してもそれらの車両の衝突エネルギに対する安定した高い吸収性能を発揮できる。
【0062】
また、本実施形態による防護柵1では、固定管30内の空間への差込管32の挿入長Lと、固定管30の内径と差込管32の外径との差2xと、第2下ビーム12bの下端から防護柵1の設置場所の地面Gまでの距離yとが、第1道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときに差込管32の第1反道路側部位32dが固定管30の第1対向部位30aに当接するまで差込管32及び防護柵本体2が水平移動した後、差込管32の下端が固定管30の内周面のうちの第1道路側の部位(第2対向部位30b)に当接するとともにその差込管32の下端から上方に離れた部位が固定管30の第1対向部位30aの上端(支持部A)に当接するように差込管32及び防護柵本体2が第1道路と反対側へ傾き、その後、差込管32が前記第1対向部位30aの上端(支持部A)に当たった位置で曲げ変形して第2下ビーム12bの下端が地面Gに接触するまで防護柵本体2が第1道路と反対側へさらに傾くという差込管32及び防護柵本体2の動作が生じるように設定されている。また、本実施形態による防護柵1では、固定管30内の空間への差込管32の挿入長Lと、固定管30の内径と差込管32の外径との差2xと、第1下ビーム10bの下端から防護柵1の設置場所の地面Gまでの距離yとが、第2道路上から防護柵本体2に車両が衝突したときに差込管32の第2反道路側部位32eが固定管30の第2対向部位30bに当接するまで差込管32及び防護柵本体2が水平移動した後、差込管32の下端が固定管30の内周面のうちの第2道路側の部位(第1対向部位30a)に当接するとともにその差込管32の下端から上方に離れた部位が固定管30の第2対向部位30bの上端に当接するように差込管32及び防護柵本体2が第2道路と反対側へ傾き、その後、差込管32が前記第2対向部位30bの上端に当たった位置で曲げ変形して第1下ビーム10bの下端が地面Gに接触するまで防護柵本体2が第2道路と反対側へさらに傾くという差込管32及び防護柵本体2の動作が生じるように設定されている。そして、このような差込管32及び防護柵本体2の動作を実現するために、第1及び第2下ビーム10b,12bの下端から防護柵1の設置場所の地面Gまでの距離yは、固定管30の内径と差込管32の外径との差2yよりも大きく設定されている。
【0063】
防護柵本体2に車両が衝突するときに以上のような差込管32及び防護柵本体2の動作が行われることにより、その車両の衝突エネルギを良好に吸収することができる。具体的には、従来の防護柵では、固定管の内周面と差込管の外周面との間に固定管内の空間における差込管の水平移動及び傾動を可能とする間隙が確保されていないため、車両の衝突時に差込管及び防護柵本体の水平移動及び傾動による車両の衝突エネルギの吸収効果が得られないが、本実施形態による防護柵1では、上記のように車両の衝突時にまず差込管32及び防護柵本体2が道路と反対側へ水平移動することによる車両の衝突エネルギの吸収効果が得られるとともに、その後に差込管32及び防護柵本体2が道路と反対側へ傾くことによる車両の衝突エネルギの吸収効果が得られる。また、差込管32及び防護柵本体2が道路と反対側へ傾いて仮に差込管32の曲げ変形が生じる前に第1下ビーム10bの下端もしくは第2下ビーム12bの下端が地面Gに接触する場合には、その時点で防護柵本体2の傾動が止まるため、差込管32の曲げ変形による車両の衝突エネルギの吸収効果が得られない。これに対し、本実施形態による防護柵1では、第1道路上からの車両の衝突時には差込管32が曲げ変形して第2下ビーム12bの下端が地面Gに接触するまで防護柵本体2が第1道路と反対側へ傾き、第2道路上からの車両の衝突時には差込管32が曲げ変形して第1下ビーム10bの下端が地面Gに接触するまで防護柵本体2が第2道路と反対側へ傾くため、差込管32の曲げ変形による車両の衝突エネルギの吸収効果を十分に得ることができる。以上のことから、本実施形態による防護柵1では、防護柵本体2に車両が衝突するときにその車両の衝突エネルギを良好に吸収可能な差込管32及び防護柵本体2の動作を実現できる。
【0064】
本発明による防護柵は、前記のような構成のものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による防護柵に以下のような構成を採用可能である。
【0065】
本発明による防護柵における位置決め部は、固定管内の空間に挿入された差込管の水平方向の位置を位置決め可能であれば、前記実施形態で用いられたものに必ずしも限定されず、様々な構成のものを採用可能である。
【0066】
例えば、本発明における位置決め部の移動規制突起は、円板部から下方へ突出するように円板部にねじ込まれて固定されたボルト、もしくは、円板部から下方へ突出するように円板部に溶接された丸鋼、もしくは、円板部から下方へ突出するように円板部の一部が曲げ起こされたものであってもよい。
【0067】
また、本発明における位置決め部は、固定管の上端に溶接された円環状のプレートであってその内側に差込管が挿通されるものであってもよい。また、位置決め部は、固定管に絞り加工等を行うことにより固定管の管壁の一部を径方向内側へ突出するように形成されたものであってもよい。
【0068】
また、本発明による位置決め部は、差込管に設けられていてもよい。この場合、位置決め部は、差込管のうち固定管内の空間に挿入される部分から径方向外側へ突出するようにその部分に設けられたプレート状のもの、もしくは、突起などであってもよい。また、差込管に設けられた位置決め部は、差込管の一部を径方向外側へ突出するように曲げ加工したものであってもよい。このような差込管に設けられた位置決め部は、固定管の内周面に接触することで固定管内の空間における差込管の水平方向の位置を位置決めする。
【0069】
また、本発明による防護柵は、中央分離帯上に設置されるものに限らず、車両が通行する道路の脇に設置されるものであってもよい。この場合、位置決め部は、差込管の水平方向の位置を固定管の管壁の道路寄りの部位に近接した位置に位置決めするものであることが好ましい。こうすれば、道路上から防護柵本体に車両が衝突するときに固定管内の空間における差込管の水平移動の距離をより大きく確保することができ、車両の衝突エネルギに対する防護柵の吸収性能をより高めることができる。
【0070】
前記実施形態では、防護柵が上下に並んだ第1上ビーム及び第1下ビームと上下に並んだ第2上ビーム及び第2下ビームとを有しているが、防護柵は単一の第1ビーム及び単一の第2ビームを有するものでもよい。
【0071】
また、防護柵本体は、前記実施形態で示した転動体により地面上を移動可能なものに必ずしも限定されない。例えば、本発明における防護柵本体は、転動体を備えておらず、設置場所の地面上に載置されることによって設置されるようなものであってもよく、また、地面に沿って引きずったり押したり、また、地面から持ち上げたりすることによって当該地面上を移動可能なものであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 防護柵
2 防護柵本体
3 固定装置
8 支柱管
10 第1ビーム(道路側ビーム、反道路側ビーム)
12 第2ビーム(道路側ビーム、反道路側ビーム)
30 固定管
30a 第1対向部位(固定管対向部位)
30b 第2対向部位(固定管対向部位)
32 差込管
32d 第1反道路側部位(差込管反道路側部位)
32e 第2反道路側部位(差込管反道路側部位)
42 位置決め部
44 天板部
44a 挿通孔
48 移動規制突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12