(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137764
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】自動走行車両
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20230922BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230922BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20230922BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20230922BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20230922BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B60W30/10
G05D1/02 H
G05D1/02 W
B62D6/00
B60W30/095
B60W60/00
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044125
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻阪 龍
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA24
3D232DD08
3D232DD13
3D232EB04
3D232GG06
3D241BA11
3D241BA15
3D241BA16
3D241BA32
3D241BA49
3D241BC02
3D241CA18
3D241CE09
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB03Z
3D241DB12Z
3D241DB14Z
3D241DB20Z
5H181AA07
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF27
5H181LL09
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG14
5H301GG16
5H301HH01
5H301HH02
5H301HH03
5H301JJ01
(57)【要約】
【課題】より精度良く目標経路に沿って走行できる自動走行車両を提供する。
【解決手段】自動走行車両である無人フォークリフトFは、前輪11R,11Lおよび後輪12を有する車両本体1と、後輪12の向きである舵角を変える操舵装置13と、操舵装置13の動作の遅れを考慮して、車両本体1が目標経路に沿って走行するように前記操舵装置13を制御する制御部としての制御装置19とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有する車両本体と、
前記車輪の向きである舵角を変える操舵装置と、
前記操舵装置の動作の遅れを考慮して、前記車両本体が目標経路に沿って走行するように前記操舵装置を制御する制御部と、を備える
ことを特徴とする自動走行車両。
【請求項2】
前記車両本体の状態である車両状態を検出するセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記センサによる前記車両状態の検出結果に基づいて、前記車両本体を制御対象としてモデル化したモデル予測制御により、前記操舵装置を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動走行車両。
【請求項3】
前記操舵装置の動作の遅れを考慮した前記車両本体に係る車両モデルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記車両モデルと、前記センサによる前記車両状態の検出結果とに基づいて、前記操舵装置の動作の遅れを考慮するとともに前記車両本体を制御対象としてモデル化したモデル予測制御により、前記操舵装置を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の自動走行車両。
【請求項4】
前記センサとして、
前記舵角を検出するための舵角センサと、
前記車輪の周速度を検出するための車輪速センサと、
前記車両本体の位置を検出するための位置センサと、
前記車両本体の姿勢を検出するための姿勢センサと、を備え、
前記制御部は、前記車両モデルと、前記舵角と、前記車輪の周速度と、前記車両本体の位置と、前記車両本体の姿勢とに基づいて、前記操舵装置を制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の自動走行車両。
【請求項5】
前記車両本体の周辺に存在する物体の位置データに基づいて、前記車両本体の位置および姿勢を推定する推定装置をさらに備え、
前記位置センサおよび前記姿勢センサは、前記位置データを取得するレーザースキャナーまたはカメラにより構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の自動走行車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車両や無人フォークリフト等の自動走行車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動走行車両として、倉庫内での荷役を無人で行うために、当該倉庫内での自車の位置を推定し、設定された目標経路に沿って自律して走行する(すなわち経路追従制御を行う)無人搬送車両や無人フォークリフトが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
経路追従制御としては、Pure Pursuit、Rear Wheel Based Feedback、Front Wheel Based Feedback、および、モデル予測制御(MPC:Model Predictive Control)等の制御手法が知られている。
【0004】
しかし、従来の経路追従制御では、操舵装置の動作の遅れを考慮していなかったため、実際の走行経路が目標経路から外れることがあり、より精度良く目標経路に沿って走行することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、より精度良く目標経路に沿って走行できる自動走行車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の自動走行車両は、車輪を有する車両本体と、前記車輪の向きである舵角を変える操舵装置と、前記操舵装置の動作の遅れを考慮して、前記車両本体が目標経路に沿って走行するように前記操舵装置を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記車両本体の状態である車両状態を検出するセンサをさらに備え、前記制御部は、前記センサによる前記車両状態の検出結果に基づいて、前記車両本体を制御対象としてモデル化したモデル予測制御により、前記操舵装置を制御することが好ましい。
【0009】
また、前記操舵装置の動作の遅れを考慮した前記車両本体に係る車両モデルを記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記車両モデルと、前記センサによる前記車両状態の検出結果とに基づいて、前記操舵装置の動作の遅れを考慮するとともに前記車両本体を制御対象としてモデル化したモデル予測制御により、前記操舵装置を制御することが好ましい。
【0010】
また、前記センサとして、前記舵角を検出するための舵角センサと、前記車輪の周速度を検出するための車輪速センサと、前記車両本体の位置を検出するための位置センサと、前記車両本体の姿勢を検出するための姿勢センサと、を備え、前記制御部は、車両モデルと、前記舵角と、前記車輪の周速度と、前記車両本体の位置と、前記車両本体の姿勢とに基づいて、前記操舵装置を制御することが好ましい。
【0011】
また、前記車両本体の周辺に存在する物体の位置データに基づいて、前記車両本体の位置および姿勢を推定する推定装置をさらに備え、前記位置センサおよび前記姿勢センサは、前記位置データを取得するレーザースキャナーまたはカメラにより構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より精度良く目標経路に沿って走行できる自動走行車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動走行車両の概略構成図である。
【
図2】同実施形態に係るモデル予測制御に使用されるモデルの概要図である。
【
図3】同実施形態に係る経路追従制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る自動走行車両である無人フォークリフトFを説明する。
図1に示すように、無人フォークリフトFは、路面上を走行する車両本体1と、荷役を行う荷役装置2とを備えており、荷物を搬送するために、所定の目標経路π(
図2参照)に沿って自律して走行する。
【0015】
車両本体1は、後述する後輪12等が設けられた基体1Aと、基体1Aから前方に突出した左右一対のレッグ1Bとを備えている。荷役装置2は、左右一対のレッグ1Bの間に設けられており、荷物を支持する左右一対のフォーク2Aを備えている。
【0016】
無人フォークリフトFは、車両本体1の構成要素として、前輪11R,11L、後輪12、操舵装置13、舵角センサ14、車輪速センサ15、レーザースキャナー16、推定装置17、記憶装置18、および制御装置19等を備えている。
【0017】
前輪11Rは、右側のレッグ1Bに設けられた右側の車輪であって、前輪11Lは、左側のレッグ1Bに設けられた左側の車輪である。前輪11R,11Lは、車両本体1の走行に伴って回転する従動輪であり、かつ、舵角(向き)が変化しない固定輪である。
【0018】
後輪12は、前輪11R,11Lに比べて後方に設けられた車輪である。後輪12は、車両本体1が走行するための動力が駆動源(図示略)から伝達されることにより回転する駆動輪であり、かつ、舵角δ(
図2参照)が変更可能な転舵輪である。
【0019】
操舵装置13は、後輪12の向きである舵角δを変える装置である。操舵装置13は、後輪12の向きを変えるための機械機構と、この機械機構に動力を伝達する動力源としての電動モータと、この電動モータを駆動するための駆動回路とにより構成されている。
【0020】
舵角センサ14は、車両本体1の状態である車両状態を検出するセンサであり、後輪12の舵角δを検出するためのセンサである。舵角センサ14は、例えば操舵装置13の機械機構または電動モータの一部の回転角を検出する。後輪12の舵角δは、舵角センサ14が検出した回転角に基づいて、制御装置19により算出される。
【0021】
車輪速センサ15は、車両本体1の状態である車両状態を検出するセンサであり、後輪12の周速度vを検出するためのセンサである。車輪速センサ15は、後輪12の回転速度である車輪速を検出する。後輪12の周速度vは、車輪速センサ15が検出した車輪速に基づいて、制御装置19により算出される。
【0022】
レーザースキャナー16は、車両本体1の周辺にレーザー光を投光するとともにその反射光を受光することで車両本体1の周辺に存在する物体の位置データを取得するレーザーレーダー(LiDAR:Light Detection And Ranging)である。レーザースキャナー16は、車両本体1の状態である車両状態を検出するセンサとして機能し、車両本体1の位置を検出するための位置センサおよび車両本体1の姿勢を検出するための姿勢センサを構成している。
【0023】
推定装置17は、レーザースキャナー16により取得した位置データに基づいて、車両本体1の位置および姿勢を推定する装置である。推定装置17は、車両本体1周囲の環境地図の作成と環境地図上での車両本体1の位置および姿勢の推定とを同時に行うSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)処理を行う。推定装置17は、車両本体1の位置として、車両基準点P(
図2参照)のxy座標を推定し、車両本体1の姿勢として、車両本体1の左右中心軸C(
図2参照)の方位角θを推定する。
【0024】
記憶装置18は、制御装置19が実行するプログラム、および、そのプログラムの実行に必要な情報等を記憶する記憶部である。具体的には、記憶装置18は、目標経路π、前輪11R,11Lと後輪12との距離であるホイールベースL(
図2参照)、および操舵装置13の動作の遅れを考慮した車両本体1に係る車両モデル等を記憶している。
【0025】
制御装置19は、車両本体1が目標経路πに沿って走行するように、操舵装置13を制御する制御部である。制御装置19は、車両状態の検出結果に基づいて、車両本体1を制御対象としてモデル化したモデル予測制御により、操舵装置13の動作の遅れを考慮して操舵装置13を制御する。具体的には、制御装置19は、記憶装置18に記憶されている車両モデルと、車両状態の検出結果である後輪12の舵角δ、周速度v、車両基準点Pのxy座標、および左右中心軸Cの方位角θとに基づいて、モデル予測制御を行って制御入力値uを算出し、この制御入力値uを操舵装置13に入力することで操舵装置13を制御する。
【0026】
モデル予測制御とは、制御対象のモデル(予測モデル)に基づいて、制御周期毎に最適化問題を解く計算を行って、その計算結果を用いて制御対象を制御する手法である。本実施形態では、最適化問題を解くことで、後述する追従誤差eを「0」にするための制御入力値uが得られるように構成されている。
【0027】
図2を参照して、同実施形態に係る車両本体1のモデルを説明する。
図中のδは、後輪12の舵角δを表しており、図中のvは、後輪12の周速度vを表している。舵角δが0度であるときは、車両本体1が前後方向に直進し、それ以外のときは、後輪12が右方を向いた場合は車両本体1が左方に旋回し、後輪12が左方を向いた場合には車両本体1が右方に旋回する。
【0028】
車両基準点Pは、前輪11R,11Lの間に位置する中間点であり、車両基準点Pのxy座標は、所定地点を原点とする直交座標系で、x座標とy座標との組み合わせ(x,y)により表現される。
【0029】
左右中心軸Cは、車両基準点Pを通過して車両本体1の前後方向に平行な軸である。左右中心軸Cの方位角θは、所定の基準方位と左右中心軸Cが延びる方位とが成す角度により表現される。
【0030】
また、図中のPrefは、後述する目標地点Prefを表しており、図中のθrefは、後述する目標方位角θrefを表している。目標地点Prefのxy座標は、(xref,yref)により表現される。
【0031】
また、図中のeyは、車両基準点Pと目標地点Prefとの距離を表しており、図中のθeは、左右中心軸Cの方位角θと目標方位角θrefとの差分を表している。
【0032】
図3を参照して、制御装置19によるモデル予測制御を利用した経路追従制御の流れを説明する。
図3に示す工程S1~S5は、車両本体1の走行中に微小な制御周期で繰り返し行われる。すなわち、工程S1~S5の一連の処理を1つのステップとし、このステップが複数回繰り返される。
【0033】
まず、制御装置19は、舵角センサ14と車輪速センサ15とレーザースキャナー16と推定装置17とを用いて、車両状態として、車輪である後輪12の舵角δおよび周速度vと、車両本体1の位置としての車両基準点Pのx,y座標と、車両本体1の姿勢としての左右中心軸Cの方位角θを検出する(工程S1)。
【0034】
次いで、制御装置19は、工程S1で検出した車両状態に基づいて、追従誤差e0を算出する(工程S2)。工程S2で算出される追従誤差e0は、後述の(式7)~(式11)に従って算出されるey,0、θe,0、δe,0、ξe,0を成分とする4×1行列である。
【0035】
次いで、制御装置19は、1ステップ後からMステップ後までの追従誤差e1~eM(「M」は任意の自然数を意味する)を表す方程式を算出する(工程S3)。工程S3で算出される追従誤差e1~eMを表す方程式は、後述の(式27)である。
【0036】
次いで、制御装置19は、工程S3で算出した方程式に基づいて、評価関数Jを最小化する制御入力値u0を算出する(工程S4)。評価関数Jは、後述の(式34)の方程式が成立する。
【0037】
そして、制御装置19は、工程S4で算出した制御入力値u0を用いて、操舵装置13を制御する(工程S5)。すなわち、工程S5では、制御装置19が、制御入力値u0を操舵装置13に入力することで、操舵装置13を介して後輪12の舵角δを制御する。
【0038】
以下、経路追従制御に利用するモデル予測制御を詳しく説明する。以下の数式では、車両基準点Pのx座標を「x」、車両基準点Pのy座標を「y」、左右中心軸Cの方位角θを「θ」、後輪12の舵角δを「δ」、後輪12の舵角δの変化速度ξを「ξ」、後輪12の周速度vを「v」、ホイールベースLを「L」と記載する。
【0039】
車輪が横方向に滑ることがないと仮定されるDubinの車両モデルに従って、本実施形態の車両本体1を制御対象とするモデルは、以下の方程式(式1)~(式3)により定義される制約を有する。
【数1】
【0040】
なお、Dubinの車両モデルにおいて周速度vおよび舵角δは制約が課されていないが、実際には操舵装置13に生じる慣性や制御に要する処理時間等によって制約が加えられるべきでる。しかしながら、例えば、モータの駆動回路の特性が不明である場合や、モータが高い自由度と複雑な形状を有している場合には、操舵装置13の詳細な特性を特定することは困難である。そこで、本願の発明者は、以下の方程式(式4)が成立することを無人フォークリフトの走行実験から発見し、この方程式を利用することで本願の課題を解決することにした。
【数2】
【0041】
なお、数式中の「u
past」は、操舵装置15の過去(具体的には所定の無駄時間T
dead前)の制御入力値uであり、数式中の「ξ」は、後輪12の舵角δの変化速度ξであって、以下の方程式(式5)により定義される。また、数式中の「I」、「k」、「γ」は、慣性モーメント、制御ゲイン、抵抗に対応する数値であると推測される。
【数3】
【0042】
本実施形態では、車両本体1を目標経路πに沿って走行させるために、以下の方程式(式6)により定義される追従誤差eを「0」にすることを目標に、操舵装置15の制御入力値uを算出する。
【数4】
【0043】
追従誤差eの成分である「e
y」、「θ
e」、「δ
e」、「ξ
e」は、以下の方程式(式7)~(式10)により定義される。なお、数式中の「x
ref」、「y
ref」、「θ
ref」、「δ
ref」、「ξ
ref」は、目標経路π上に位置する車両基準点Pに最も近い目標地点P
refのx座標、同じく目標地点P
refのy座標、目標方位角θ
ref、目標舵角δ
ref、目標舵角変化速度ξ
refである。
【数5】
【0044】
なお、車両本体1の旋回半径を「R」、旋回曲率を「κ」とすると、以下の方程式(式11)が成り立つため、目標地点P
refにおける目標経路πの曲率を「κ
ref」とすると、目標方位角θ
refは、以下の方程式(式12)により定義される。
【数6】
【数7】
【0045】
また、目標舵角変化速度ξ
refは、以下の方程式(式13)により定義される。
【数8】
【0046】
また、目標方位角θ
refの微分関数は、以下の方程式(式14)により定義される。
【数9】
【0047】
上記の(式1)~(式4)および(式14)に基づいて、以下の方程式(式15)~(式18)が得られる。(式15)~(式18)は、追従誤差eの時間発展方程式を表している。
【数10】
【0048】
計算機上において、目標経路πは離散的な点の集合として扱われる。そこで、本実施形態では、目標経路π上の複数の目標地点P
n(添字の「n」は任意の自然数を意味する。以下同じ)と、車両本体1が目標地点P
nの横を通過するときの追従誤差e
nとの関係を考える。任意の目標地点P
ref,n-1から次の目標地点P
ref,nまでの区間を車両本体1が移動する時間を「T
n」とし、その区間が十分小さいとして微分を差分によって表すと、以下の方程式(式19)~(式22)が得られる。
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
【0049】
なお、目標地点P
ref,n-1から次の目標地点Pref,
nまでの区間を車両本体1が移動する時間T
nは、目標地点P
refのx座標およびy座標を用いて、以下の方程式(式23)により定義される。
【数15】
【0050】
上記の(式19)~(式22)は、誤差の発展を計算式で扱いやすい連続写像を表しているが、この写像は非線形であるためより扱いやすい線形システムへ近似を行う。(式19)~(式22)を、「e=0」を中心に線形近似すると以下の方程式(式24)が得られる。
【数16】
【0051】
ここで、上記(式24)に現れる行列を用いて、4×4行列A
n、4×1行列B
n、4×1行列w
nを以下の方程式(式25)~(式27)により定義し、1ステップ先からMステップ先までの追従誤差e
1~e
Mを成分とするブロック行列Eを以下の方程式(式28)により定義すると、以下の方程式(式29)が成り立つ。
【数17】
【数18】
【数19】
【0052】
さらに、上記(式29)に現れる行列を用いて、行列F,G,U,S,Wを以下の方程式(式30)~(式34)により定義すると、以下の方程式(式35)が成り立つ。
【数20】
【数21】
【0053】
予測される追従誤差e
1~e
Mは、追従誤差e
0と制御入力値uに対して線形である。このため、評価関数Jは、以下の方程式(式36)により二次形式で表現することが可能である。なお、数式中の「Q」および「R」は重み行列であり、「C」は定数である。
【数22】
【0054】
二次形式で表現された評価関数Jを最小化する方法としては二次計画法が知られており、二次計画法を毎ステップ解くことで、ブロック行列Eを最小化する行列Uが算出される。そして、行列Uに含まれる制御入力値u0が操舵装置13に入力される。
【0055】
本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)無人フォークリフトF(自動走行車両)は、後輪12(車輪)を有する車両本体1と、後輪12の舵角δを変える操舵装置13と、操舵装置13の動作の遅れを考慮して、車両本体1が目標経路πに沿って走行するように操舵装置13を制御する制御装置19(制御部)とを備えている。この構成によれば、操舵装置13に生じる慣性等により操舵装置13の動作が遅れる場合であっても、この遅れを考慮して操舵装置13が制御されるため、より精度良く目標経路πに沿って走行できる無人フォークリフトFを構成することができる。
【0056】
(2)制御装置19は、舵角センサ14、車輪速センサ15、およびレーザースキャナー16(センサ)による車両状態の検出結果に基づいて、車両本体1を制御対象としてモデル化したモデル予測制御により、操舵装置13を制御する。この構成によれば、操舵装置13の動作の遅れが考慮された最適化問題を解くことで、車両本体1が目標経路πに沿って走行するように操舵装置13を制御でき、外乱に強い高精度な経路追従制御が可能である。
【0057】
(3)制御装置19は、記憶装置18(記憶部)に記憶されている車両モデルと、車両状態の検出結果とに基づいて、操舵装置13の動作の遅れを考慮するとともに車両本体1を制御対象としてモデル化したモデル予測制御により、操舵装置13を制御する。この構成によれば、記憶装置18に操舵装置13の動作の遅れを考慮した車両モデルを予め記憶させておくことで、高精度なモデル予測制御が可能となる。
【0058】
(4)無人フォークリフトFは、センサとして、舵角センサ14と、車輪速センサ15と、レーザースキャナー16(位置センサ、姿勢センサ)とを備え、制御装置19は、車両モデルと、舵角δと、後輪12の周速度vと、車両本体1の位置および姿勢とに基づいて、操舵装置13を制御する。この構成によれば、一般的なセンサを用いて、操舵装置13の動作の遅れを考慮したモデル予測制御が可能となる。
【0059】
(5)無人フォークリフトFは、車両本体1の周辺に存在する物体の位置データに基づいて、車両本体1の位置および姿勢を推定する推定装置17を備え、位置データを取得するレーザースキャナー16は、位置センサおよび姿勢センサを構成している。この構成によれば、磁気テープや反射板等の誘導体を必要としないガイドレス方式の無人フォークリフトFを構成することができる。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記構成を変更することもできる。例えば、以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実施することもできる。
【0061】
・車両状態を検出するセンサは、舵角センサ14と車輪速センサ15とレーザースキャナー16との組み合わせに限られず、他のセンサの組み合わせにより構成してもよく、無人フォークリフトFは、カメラを備えたガイドレス方式の自動走行車両であってもよい。例えば、無人フォークリフトFは、レーザースキャナー16に代えて、車両本体1の周辺を撮影することで車両本体1の周辺に存在する位置データを取得するカメラを備えたガイドレス方式の自動走行車両であってもよい。すなわち、位置センサおよび姿勢センサは、カメラにより構成されていてもよい。
【0062】
・制御装置19が行うモデル予測制御は、上記実施形態に記載した数式に限定されず、操舵装置13の動作の遅れを考慮して操舵装置13を制御できるのであれば、数式(車両モデル)を適宜変形してもよい。
【0063】
・無人搬送車両(AGV)等の無人フォークリフトF以外の自動走行車両に本発明を適用してもよい。また、本発明は、ガイドレス方式の自動走行車両に限られず、例えばレーザー誘導方式や画像認識方式の自動走行車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
F 無人フォークリフト(自動走行車両)
1 車両本体
2 荷役装置
11R,11L 前輪(車輪)
12 後輪(車輪)
13 操舵装置
14 舵角センサ
15 車輪速センサ
16 レーザースキャナー(位置センサ、姿勢センサ)
17 推定装置
18 記憶装置(記憶部)
19 制御装置(制御部)