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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137766
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B25J9/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044127
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恵輔
(72)【発明者】
【氏名】松尾 卓摩
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS14
3C707BS10
3C707CY22
3C707HT12
3C707HT33
3C707KS21
3C707KS39
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】エンドエフェクタの位置決め精度を向上させる。
【解決手段】検査装置は、腕の角度変化に対して腕先の角度を維持するロバーバル機構を備える下腕部と、前記下腕部の腕先である下腕腕先部の第1軸線周りに回転可能に前記下腕腕先部に取り付けられる関節部と、前記関節部の前記第1軸線とは方向が異なる第2軸線周りに回転可能に前記関節部に取り付けられる上腕部と、前記関節部に対する前記第2軸線周りの前記上腕部の回転角度に応じて、前記下腕腕先部に対する前記第1軸線周りの前記関節部の回転角度を変化させる角度調整部と、前記上腕部を介して支持される非接触音響センサと、音を収音する収音部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕の角度変化に対して腕先の角度を維持するロバーバル機構を備える下腕部と、
前記下腕部の腕先である下腕腕先部の第1軸線周りに回転可能に前記下腕腕先部に取り付けられる関節部と、
前記関節部の前記第1軸線とは方向が異なる第2軸線周りに回転可能に前記関節部に取り付けられる上腕部と、
前記関節部に対する前記第2軸線周りの前記上腕部の回転角度に応じて、前記下腕腕先部に対する前記第1軸線周りの前記関節部の回転角度を変化させる角度調整部と、
前記上腕部を介して支持される非接触音響センサと、
音を収音する収音部と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記角度調整部は、
前記第2軸線周りに前記上腕部とともに回転するカムと、
前記カムに対向する前記下腕腕先部の位置に配置されるカムフォロアと、
を備え、
前記カムフォロアから前記カムが受ける力によって、前記下腕腕先部に対する前記第1軸線周りの前記関節部の回転角度を変化させる、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記カムが前記上腕部に対して着脱可能にされ、又は、前記カムフォロアが前記下腕腕先部に対して着脱可能にされることにより、前記カム及び前記カムフォロアの少なくとも一方が、交換可能である
請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記上腕部の前記第2軸線周りの回転角度を検出する検出部と、
前記関節部を前記第1軸線周りに回転駆動する駆動部と、
あらかじめ記憶されている前記回転角度と前記関節部の回転量との対応関係を示す制御情報と、前記検出部が検出する前記回転角度とに基づいて、前記駆動部の回転駆動量を制御する制御部と、
をさらに備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記制御情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記制御情報を書き換える書換制御部と、
をさらに備える請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記上腕部に取り付けられ、発生させた気流の反力によって前記上腕部を変位させる推力発生部
をさらに備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記推力発生部は、
互いに異なる3方向のうち、
第1方向に気流を発生させる第1推力発生部と、
第2方向に気流を発生させる第2推力発生部と、
第3方向に気流を発生させる第3推力発生部と、
を備える請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記推力発生部は、
重力方向に気流を発生させる第4推力発生部と、
重力方向とは異なる方向に気流を発生させる第5推力発生部と、
前記第5推力発生部が気流を発生させる方向を変化させる方向可変部と、
を備える請求項6に記載の検査装置。
【請求項9】
前記上腕部は、腕の角度変化に対して腕先の角度を維持するロバーバル機構を備えるものであって、
エンドエフェクタが取り付けられる第1端部と、釣合錘が取り付けられる第2端部とを備え、前記第1端部と前記第2端部との間にある取付位置において、前記上腕部の腕先である上腕腕先部に対して姿勢変化可能に取り付けられる延長腕と、
前記延長腕を構成する第1延長腕と第2延長腕との角度を変化させる延長腕駆動部と、
前記第1延長腕の角度変化と前記第2延長腕の角度変化とのいずれにも応じて、前記取付位置に対する前記釣合錘の位置を変化させる釣合調整部と、
をさらに備える請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物、橋梁などの建造物やプラントの保守に関する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物、橋梁などの社会インフラ構造は、経年劣化などの検査をするため、従来から打音を用いた検査が行われていた。また、AE(Acoustic Emission)法は、き裂進展/き裂発生等に伴う弾性波の放出(AE)を検知する非破壊検査手法であり、コンクリート等の内部劣化の初期を検知できる(例えば、特許文献1を参照)。また、従来、計測器をマルチコプターの揚力で浮上させる手法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-096113号公報
【特許文献2】特開2020-153844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AE法は、従来は接触型センサを用いていたが、非接触型センサを用いた新たな方法もある。非接触型センサによるAE法を用いた場合、AEセンサの位置を一定時間安定に保持しなければならない。AEセンサの位置の保持には、非接触型センサをエンドエフェクタとして備えるロボット装置によるものもある。
しかしながら、従来の技術によると、エンドエフェクタ(例えば、非接触型センサ)の位置決め精度が低いという課題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、エンドエフェクタの位置決め精度を向上させることができる検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、腕の角度変化に対して腕先の角度を維持するロバーバル機構を備える下腕部と、前記下腕部の腕先である下腕腕先部の第1軸線周りに回転可能に前記下腕腕先部に取り付けられる関節部と、前記関節部の前記第1軸線とは方向が異なる第2軸線周りに回転可能に前記関節部に取り付けられる上腕部と、前記関節部に対する前記第2軸線周りの前記上腕部の回転角度に応じて、前記下腕腕先部に対する前記第1軸線周りの前記関節部の回転角度を変化させる角度調整部と、前記上腕部を介して支持される非接触音響センサと、音を収音する収音部と、を備える検査装置である。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、上述の検査装置において、前記角度調整部は、前記第2軸線周りに前記上腕部とともに回転するカムと、前記カムに対向する前記下腕腕先部の位置に配置されるカムフォロアと、を備え、前記カムフォロアから前記カムが受ける力によって、前記下腕腕先部に対する前記第1軸線周りの前記関節部の回転角度を変化させる。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、上述の検査装置において、前記カムが前記上腕部に対して着脱可能にされ、又は、前記カムフォロアが前記下腕腕先部に対して着脱可能にされることにより、前記カム及び前記カムフォロアの少なくとも一方が、交換可能である。
【0009】
また、本発明の一実施形態は、上述の検査装置において、前記上腕部の前記第2軸線周りの回転角度を検出する検出部と、前記関節部を前記第1軸線周りに回転駆動する駆動部と、あらかじめ記憶されている前記回転角度と前記関節部の回転量との対応関係を示す制御情報と、前記検出部が検出する前記回転角度とに基づいて、前記駆動部の回転駆動量を制御する制御部と、をさらに備える。
【0010】
また、本発明の一実施形態は、上述の検査装置において、前記制御情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている前記制御情報を書き換える書換制御部と、をさらに備える。
【0011】
また、本発明の一実施形態は、上述の検査装置において、前記上腕部に取り付けられ、発生させた気流の反力によって前記上腕部を変位させる推力発生部をさらに備える。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、上述の検査装置において、前記推力発生部は、互いに異なる3方向のうち、第1方向に気流を発生させる第1推力発生部と、第2方向に気流を発生させる第2推力発生部と、第3方向に気流を発生させる第3推力発生部と、を備える。
【0013】
また、本発明の一実施形態は、上述の検査装置において、前記推力発生部は、重力方向に気流を発生させる第4推力発生部と、重力方向とは異なる方向に気流を発生させる第5推力発生部と、前記第5推力発生部が気流を発生させる方向を変化させる方向可変部と、を備える。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、上述の検査装置において、前記上腕部は、腕の角度変化に対して腕先の角度を維持するロバーバル機構を備えるものであって、エンドエフェクタが取り付けられる第1端部と、釣合錘が取り付けられる第2端部とを備え、前記第1端部と前記第2端部との間にある取付位置において、前記上腕部の腕先である上腕腕先部に対して姿勢変化可能に取り付けられる延長腕と、前記延長腕を構成する第1延長腕と第2延長腕との角度を変化させる延長腕駆動部と、前記第1延長腕の角度変化と前記第2延長腕の角度変化とのいずれにも応じて、前記取付位置に対する前記釣合錘の位置を変化させる釣合調整部と、をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、エンドエフェクタの位置決め精度を向上させた検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の検査装置の外観の一例を示す図である。
図2】本実施形態の検査装置の腕部の構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態の関節部の構成の一例を示す図である。
図4】本実施形態の関節部の姿勢変化の一例を示す図である。
図5】本実施形態の角度調整部の変形例を示す図である。
図6】本実施形態の延長腕の構成の一例を示す斜視図である。
図7】本実施形態の延長腕の構成の一例を示す平面図である。
図8】本実施形態の釣合調整部の構成の一例を示す図である。
図9】本実施形態の釣合調整部の変形例を示す図である。
図10】本実施形態の推力発生部の構成の一例を示す図である。
図11】本実施形態の推力発生部の変形例を示す図である。
図12】本実施形態の制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図13】本実施形態の雑音除去部の動作の一例を示す図である。
図14】本実施形態の雑音除去部によるノイズ除去の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[検査装置1の構成]
図面を参照して検査装置1の構成について説明する。
図1は、本実施形態の検査装置1の外観の一例を示す図である。検査装置1は、台座部100と、下腕部110と、上腕部120と、延長腕145と、非接触音響センサ150と、収音部160と、関節部200と、推力発生部300と、釣合調整部400と、制御装置500とを備える。
下腕部110と上腕部120とをまとめて腕部ともいう。また、非接触音響センサ150と収音部160とをまとめてエンドエフェクタともいう。
【0018】
なお、以下の説明において必要な場合にはxyz三次元直交座標系を用いて方向などを示す。台座部100が置かれた面を、x軸とy軸とがなす面、すなわちxy平面とする。z軸は重力方向の軸、すなわち鉛直軸を示す。
【0019】
[腕部の構成]
図2は、本実施形態の検査装置1の腕部の構成の一例を示す図である。図2(A)は、y軸方向から見た腕部の一例を示す。図2(B)は、x軸方向から見た腕部の一例を示す。図2(C)は、z軸方向から見た腕部の一例を示す。
上述したように、腕部は、下腕部110と、上腕部120とを備える。下腕部110は、下端が台座部100に接続され、上端が関節部200によって上腕部120の一端と接続される。下腕部110の上端のことを下腕腕先部115ともいう。上腕部120は、上端に延長腕145を接続可能である。上腕部120の上端のことを上腕腕先部126ともいう。
【0020】
下腕部110は、腕の角度変化に対して腕先の角度を維持するロバーバル機構を備える。本実施形態では、平行リンクをロバーバル機構の一例として説明するが、これに限られない。例えば、下腕部110は、下端と上端とに1対のプーリ(不図示)を備え、プーリ間に張られたベルトあるいはワイヤによるつり合い機構により、腕の角度変化に対して腕先の角度を維持するように構成されてもよい。
【0021】
また、上腕部120も、腕の角度変化に対して腕先の角度を維持するロバーバル機構を備えるものであってもよい。
【0022】
図2(C)に示すように、検査装置1は、関節部200において、下腕部110に対して上腕部120がz軸周りに回転する。下腕部110に対して上腕部120がz軸周りに回転すると、上腕部120に働く重力によって、下腕部110には捩じりモーメントが発生する。ここで、下腕部110と上腕部120とがなす、z軸周りの角度を、上腕部120の軸線方向と下腕部110の軸線方向とが一致している場合(つまり、xy平面視において、下腕部110と、上腕部120とが一直線になっている場合)を0[°]と表す。この場合、下腕部110に生じる捩じりモーメントは、0[°]である場合が最も小さく、90[°]あるいは-90[°]である場合が最も大きい。このように、上腕部120がz軸周りに回転すると、上腕部120の回転角度に応じた捩じりモーメントが下腕部110に生じる。下腕部110が捩じられる結果、下腕部110が捩じられていない場合に比べて、上腕部120のz軸方向の位置(つまり、上腕部120の高さ)が下がる。上腕部120の高さが下がると、エンドエフェクタの高さも下がる。このことは、上腕部120の姿勢変化によってエンドエフェクタの高さが変化することを意味する。エンドエフェクタを精度よく位置決めしようとする場合、上腕部120の姿勢変化によってエンドエフェクタの高さが変化することは好ましくない。
【0023】
上腕部120の回転角度によらず上腕部120の高さを維持して、エンドエフェクタを精度よく位置決めしようとする場合には、例えば、下腕部110の剛性をきわめて高くすればよいが、これは現実的ではない。また、上腕部120の高さの下がり幅を検出して、下がり幅分だけ下腕部110あるいは上腕部120を上昇させるようにコンピュータ制御することもできるが、制御が複雑になってしまう。
【0024】
そこで、本実施形態の検査装置1は、上腕部120のz軸周りの回転角度に応じて、下腕部110に対する上腕部120の角度を意図的に変化させる機構を備えた関節部200により、上腕部120のz軸周りの回転角度によらず上腕部120の高さを維持する。
この関節部200の構成について、図3を参照して説明する。
【0025】
[関節部200の構成]
図3は、本実施形態の関節部200の構成の一例を示す図である。関節部200は、下腕腕先部115に取り付けられ、上腕部120の荷重を下腕部110に伝える。関節部200は、下腕腕先部115の第1軸線AX1周りに回転可能である。上腕部120は、上腕ヨー軸122を備えており、上腕ヨー軸122周りに回転可能である。上腕ヨー軸122は、関節部200の第2軸線AX2に一致する。つまり、上腕部120は、第2軸線AX2周りに回転可能である。第1軸線AX1及び第2軸線AX2について説明する。
【0026】
下腕腕先部115の座標を、xj1軸、yj1軸、zj1軸による三次元直交座標系によって示す。このxj1軸、yj1軸、zj1軸による三次元直交座標系を、下腕腕先部座標系ともいう。
関節部200の座標を、xj2軸、yj2軸、zj2軸による三次元直交座標系によって示す。このxj2軸、yj2軸、zj2軸による三次元直交座標系を関節部座標系ともいう。
なお、同図においては、関節部200の下面を、下側(zj1軸の負側、およびzj2軸の負側)から見上げた状態を示している。すなわち、同図は、下腕腕先部座標系のxj1軸、yj1軸がなす平面(xj1-yj1平面)、および関節部座標系のxj2軸、yj2軸がなす平面(xj2-yj2平面)を、zj1軸の負側およびzj2軸の負側から見上げた状態を示す。
この一例において、第1軸線AX1は、下腕腕先部座標系のyj1軸に一致する。第2軸線AX2は、関節部座標系のzj2軸に一致する。
関節部200が、第1軸線AX1周りに回転していない基準位置では、下腕腕先部座標系の各軸の方向と、関節部座標系の各軸の方向とが一致する。
【0027】
すなわち、関節部200は、下腕部110の腕先である下腕腕先部115の第1軸線AX1周りに回転可能に下腕腕先部115に取り付けられる。
上腕部120は、関節部200の第1軸線AX1とは方向が異なる第2軸線AX2周りに回転可能に関節部200に取り付けられる。
【0028】
角度調整部210は、関節部200に対する第2軸線AX2周りの上腕部120の回転角度に応じて、下腕腕先部115に対する第1軸線AX1周りの関節部200の回転角度を変化させる。
この角度調整部210には、モータなどの駆動力によらず関節部200を第1軸線AX1周りに回転させる従動型の角度調整部と、モータなどの駆動力によって関節部200を第1軸線AX1周りに回転させる駆動型の角度調整部とがある。
【0029】
[従動型の角度調整部]
従動型の角度調整部210は、カム121と、カムフォロア116とを備える。カム121は、上腕ヨー軸122に取り付けられており、第2軸線AX2周りに上腕部120とともに回転する。カムフォロア116は、カム121に対向する下腕腕先部115の位置に配置される。カム121と、カムフォロア116とはカムフォロア面において接触している。
上腕部120が第2軸線AX2周りに回転すると、上腕ヨー軸122が回転することにより、カム121が第2軸線AX2周りに回転する。カム121は、上腕ヨー軸122に対して偏心している。カム121が第2軸線AX2周りに回転すると、カム121の回転角度と、カムフォロア116のカムフォロア面のプロファイルとに応じて、関節部200を第1軸線AX1周りに回転させる力を発生させる。すなわち、カムフォロア116からカム121が受ける力によって、下腕腕先部115に対する第1軸線AX1周りの関節部200の回転角度を変化させる。
【0030】
図4は、本実施形態の関節部200の姿勢変化の一例を示す図である。
図4(A)は、上腕部120が回転していない状態を示す。図4(A)に示す状態では、関節部200は、基準位置にあり、第1軸線AX1周り(すなわち、yj1軸周り)に回転しておらず、下腕腕先部座標系の各軸の方向と、関節部座標系の各軸の方向とが一致している。上腕部120が、下腕部110に対して回転していない場合には、下腕部110に捩じりモーメントが発生しない。
【0031】
図4(B)は、上腕部120が第2軸線AX2周りに約45[°]回転した状態を示す。図4(B)に示す状態では、下腕部110に捩じりモーメントが発生する。このねじりモーメントによって、下腕腕先部115は、図4(A)に示した場合に比べてyj1軸の右回り方向に回転変位する。一方、上腕部120が、下腕部110に対して第2軸線AX2周りに約45[°]回転した場合には、カム121およびカムフォロア116の作用により、関節部200がyj1軸周りに左回転する。すなわち、捩じりモーメントによる下腕腕先部115の回転変位に対して、関節部200が逆方向に回転変位する。この結果、下腕腕先部115の回転変位が、関節部200の逆方向への回転変位によって打ち消され、下腕部110の捩じりモーメントによって生じる上腕部120の位置変化が低減される。
【0032】
図4(C)は、上腕部120が第2軸線AX2周りに約90[°]回転した状態を示す。図4(C)に示す状態では、図4(B)に示した場合よりも大きい捩じりモーメントが下腕部110に発生する。この捩じりモーメントによって、下腕腕先部115は、図4(B)に示した場合に比べてyj1軸の右回り方向にさらに回転変位する。この場合、カム121およびカムフォロア116の作用により、関節部200がyj1軸周りに左回転する。この関節部200の左回転の量は、図4(B)に示した場合よりも大きくされている。すなわち、捩じりモーメントによる下腕腕先部115のより大きな回転変位に対して、関節部200が逆方向により大きく回転変位する。この結果、下腕腕先部115の回転変位が、関節部200の逆方向への回転変位によって打ち消され、下腕部110の捩じりモーメントによって生じる上腕部120の位置変化が低減される。
【0033】
なお、カム121が上腕部120に対して着脱可能にされ、又は、カムフォロア116が下腕腕先部115に対して着脱可能にされることにより、カム121及びカムフォロア116の少なくとも一方が、交換可能であることが好ましい。
このように構成された関節部200によれば、例えば、エンドエフェクタの交換などによって上腕部120の質量に変化が生じた場合に、下腕部110に生じる捩じりモーメントの発生量の変化を、カム121およびカムフォロア116のプロファイルの変更によって吸収することができる。すなわち、このように構成された関節部200によれば、エンドエフェクタの位置決め精度をより向上させることができる。
【0034】
[駆動型の角度調整部]
なお、角度調整部210は、回転角度センサ123および駆動部124(いずれも不図示)を備えていてもよい。
回転角度センサ123は、例えば、ロータリエンコーダであり、上腕部120の第2軸線AX2周りの回転角度を検出する。
駆動部124は、例えば電動モータであり、関節部200を第1軸線AX1周りに回転駆動する。
【0035】
これら、回転角度センサ123および駆動部124は、後述する制御装置500に接続されている。制御装置500は、回転角度センサ123が検出する上腕部120の第2軸線AX2周りの回転角度に基づいて、駆動部124の駆動量を算出し、関節部200を第1軸線AX1周りに回転駆動させる。
このように構成された角度調整部210によっても、下腕腕先部115の回転変位が、関節部200の逆方向への回転変位によって打ち消すことができ、下腕部110の捩じりモーメントによって生じる上腕部120の位置変化を低減させることができる。
【0036】
[角度調整部210の変形例]
図5は、本実施形態の角度調整部210の変形例を示す図である。上述した角度調整部210では、上腕ヨー軸122周りにカム121が回転し、カム121とカムフォロア116との作用によって関節部200を第1軸線AX1周りに回転させる機構を備えていた。同図に示す変形例では、この関節部200を第1軸線AX1周りに回転させる機構に加えて、上腕偏心カム125を備えている。上腕偏心カム125は、上腕部120の関節部200に対する角度に応じて、上腕部120を変位させる。すなわち、この変形例では、上腕ヨー軸122用の偏心カム・カムフォロアによる角度補正機構に加えて、上腕部120のピッチ軸用の偏心カム・カムフォロアによる角度補正機構を備えている。
このように構成された角度調整部210によれば、エンドエフェクタなどの質量による上腕部120の撓みによる位置決め精度の悪化を低減することができる。
【0037】
[延長腕145の構成]
次に、図6から図8を参照して、延長腕145の構成について説明する。
図6は、本実施形態の延長腕145の構成の一例を示す斜視図である。
図7は、本実施形態の延長腕145の構成の一例を示す平面図である。
延長腕145は、取付位置144において上腕腕先部126に取り付けられている。取付位置144は、延長腕145の姿勢の基準となる基準位置である。取付位置144は、下腕部110の姿勢及び上腕部120の姿勢に応じて、その位置が変化する。
延長腕145の座標を、取付位置144を基準とするxa軸、ya軸、za軸による三次元直交座標系によって示す。このxa軸、ya軸、za軸による三次元直交座標系を、延長腕座標系ともいう。
【0038】
延長腕145は、第1端部141と、第2端部142と、釣合錘143と、第1延長腕145Aと、第2延長腕145Bと、第1リンク146Aと、第2リンク146Bと、延長腕駆動部147と、釣合調整部400とを備える。第1端部141には、エンドエフェクタが取り付けられる。第2端部142には、釣合錘143が取り付けられる。
【0039】
延長腕駆動部147は、例えば電動モータを備えている。延長腕駆動部147は、取付位置144に対して第1延長腕145Aを変位させる。また、延長腕駆動部147は、第2リンク146Bを駆動することにより、取付位置144に対して第2延長腕145Bを変位させる。この結果、第1延長腕145Aの変位と、第2延長腕145Bの変位とが合成されて、取付位置144に対する第1端部141の位置が変化する。
【0040】
すなわち、延長腕145は、エンドエフェクタが取り付けられる第1端部141と、釣合錘143が取り付けられる第2端部142とを備え、第1端部141と第2端部142との間にある取付位置144において、上腕部120の腕先である上腕腕先部126に対して姿勢変化可能に取り付けられる。
また、延長腕駆動部147は、延長腕145の第1延長腕145Aと第2延長腕145Bとの角度を変化させる。
【0041】
釣合調整部400は、1Aリンク413と、2Aリンク423とを備える。
1Aリンク413は、第1リンク146Aの一端に接続されている。第1リンク146Aは、他端が第1延長腕145Aに接続されている。第1リンク146Aは、第1延長腕145Aの変位を1Aリンク413に伝達する。
2Aリンク423は、第2リンク146Bの一端に接続されている。第2リンク146Bは、他端が第2延長腕145Bに接続されている。第2リンク146Bは、第2延長腕145Bの変位を2Aリンク423に伝達する。
釣合調整部400は、第1端部141の変位に応じて、釣合錘143を変位させることにより、第1端部141の変位によって延長腕145に生じる重心の移動によるモーメントをキャンセルする。この釣合調整部400の具体的な構成について、図8を参照して説明する。
【0042】
図8は、本実施形態の釣合調整部400の構成の一例を示す図である。釣合調整部400は、1Aリンク413に伝達される第1延長腕145Aの変位と、2Aリンク423に伝達される第2延長腕145Bの変位とを合成して、釣合錘143を変位させる。
釣合調整部400は、第1延長腕145Aの変位を釣合錘143に伝達する第1系統と、第2延長腕145Bの変位を釣合錘143に伝達する第2系統とを有する。
【0043】
釣合調整部400は、第1系統の構成要素として、1A歯車411と、1A軸412と、1Aリンク413と、1B歯車414と、1B軸415と、1Bリンク416とを備える。
上述したように、1Aリンク413は、第1リンク146Aに接続されており、第1延長腕145Aの変位が入力される。
1Aリンク413は、1A軸412を回転中心として回転する。1Aリンク413は、第1リンク146Aから入力される第1延長腕145Aの変位を、1A軸412を回転中心とする回転角度に変換して1A歯車411に伝達する。
1A歯車411は、1A軸412を回転中心として回転する。1A歯車411は、1Aリンク413から与えられる回転力によって回転する。
1B歯車414は、1B軸415に接続されており、1B軸415を回転中心として回転する。
1Bリンク416は、1B軸415を回転中心として回転する。1Bリンク416は、1B歯車414から与えられる回転力によって回転する。
すなわち、1Aリンク413に入力された第1延長腕145Aの変位は、1A歯車411と、1B歯車414とを介して、1Bリンク416に伝達される。
【0044】
釣合調整部400は、第2系統の構成要素として、2A歯車421と、2A軸422と、2Aリンク423と、2B歯車424と、2B軸425と、2Bリンク426とを備える。
上述したように、2Aリンク423は、第2リンク146Bに接続されており、第2延長腕145Bの変位が入力される。
2Aリンク423は、2A軸422を回転中心として回転する。2Aリンク423は、第2リンク146Bから入力される第2延長腕145Bの変位を、2A軸422を回転中心とする回転変位に変換して2A歯車421に伝達する。
2A歯車421は、2A軸422を回転中心として回転する。2A歯車421は、2Aリンク423から与えられる回転力によって回転する。
2B歯車424は、2B軸425を回転中心として回転する。2B軸425は、上述した1B軸415とxa軸方向の同軸上に配置される。なお、1B軸415と、2B軸425とは接続されておらず、1B歯車414と2B歯車424とは、互いに独立して回転可能である。
2Bリンク426は、2B軸425とは接続されておらず、2B歯車424の回転変位とは独立して、2B軸425を回転中心として回転する。
【0045】
次に、1Bリンク416の変位を釣合錘143に伝達する構成について説明する。釣合調整部400は、2C歯車427と、2C軸428と、2Cリンク429と、2D軸431と、2E軸432と、2Dリンク433とを備える。
2C軸428は、1Bリンク416に接続されており、1Bリンク416の回転変位に応じて、1B軸415を回転中心として変位する。
【0046】
2C軸428の2B軸425を回転中心とする回転変位は、2Cリンク429に伝達される。2Cリンク429は、2D軸431、2Dリンク433及び2E軸432を介して、2Bリンク426に接続される。すなわち釣合調整部400は、2Bリンク426、2Cリンク429を第1対辺とし、1Bリンク416、2Dリンク433を第2対辺とする平行リンク(あるいは四節リンク)を構成する。この平行リンクによって、1Bリンク416の変位が2E軸432において2Bリンク426に伝達される。
すなわち、1Aリンク413に入力された第1延長腕145Aの変位は、1A歯車411と、1B歯車414と、1Bリンク416と、2Cリンク429と、2Dリンク433とを介して、2Bリンク426に伝達される。
【0047】
次に、2B歯車424の回転変位を釣合錘143に伝達する構成について説明する。2C歯車427は、2B歯車424と噛み合っており、2C軸428を回転中心として回転する。2C歯車427は、2Cリンク429に接続されている。2C歯車427の回転変位に応じて、2Cリンク429は、2C軸428を回転中心として回転変位する。2Cリンク429の回転変位は、2Dリンク433を介して2Bリンク426に伝達される。
【0048】
なお、2C歯車427と2B歯車424との軸間距離は、1B軸415と2C軸428との軸間距離、及び、2B軸425と2C軸428との軸間距離と一致している。すなわち、2C歯車427は、2B歯車424を太陽歯車とする惑星歯車となり、遊星歯車機構を構成する。2C歯車427は、1B軸415を回転中心とした1Bリンク416の回転変位に応じて、2B歯車424の円周上を回転移動する。
【0049】
2Bリンク426の一端には、釣合錘143が取り付けられている。釣合錘143は、2Bリンク426の回転変位に伴い、2B軸425を回転中心にして変位する。
【0050】
なお、釣合錘143には、2Bリンク426に加えて、2Bリンク426Bが接続される構成であってもよい。2Bリンク426Bは、1B軸415を回転中心として回転する。2Bリンク426Bは、1B軸415には接続されておらず、2Bリンク426Bと1B軸415とは互いに独立して回転可能である。つまり、釣合錘143は、1B軸415の回転角度によらず、2B軸425の回転角度に応じて回転変位する。
このように構成された釣合調整部400によれば、釣合錘143の荷重を2Bリンク426と2Bリンク426Bとの2つのリンクによって支えることができる。
【0051】
すなわち、1Aリンク413に入力された第1延長腕145Aの変位と、2Aリンク423に入力された第2延長腕145Bの変位とが、釣合調整部400によって合成され、釣合錘143を変位させる。
換言すれば、釣合調整部400は、第1延長腕145Aの角度変化と第2延長腕145Bの角度変化とのいずれにも応じて、取付位置144に対する釣合錘143の位置を変化させる。
【0052】
[釣合調整部の変形例]
図9は、本実施形態の釣合調整部の変形例を示す図である。上述した一例では、平行四辺形リンク(四節リンク)によって、第1延長腕145Aの変位と第2延長腕145Bの変位とを合成したがこれに限られない。同図に示すように、釣合調整部は、第1ラック441と、第2ラック442と、ピニオン443とを備える構成であってもよい。
第1ラック441には、第1リンク146A-1の変位が入力される。第2ラック442には、第2リンク146B-1の変位が入力される。第1ラック441と、第2ラック442とは、1つのピニオン443を挟んで対向配置されている。ピニオン443には釣合錘143が接続されている。第1ラック441と第2ラック442とは、ピニオン443を回転移動させることで第1延長腕145Aの変位と第2延長腕145Bの変位とを合成する。
【0053】
[推力発生部300の構成]
次に、推力発生部300の構成について図10を参照して説明する。
図10は、本実施形態の推力発生部300の構成の一例を示す図である。推力発生部300は、例えば、ダクテッドファンを備えている。推力発生部300は、上腕部120に取り付けられ、発生させた気流の反力によって上腕部120を変位させる。なお、推力発生部300は、上腕腕先部126に推力を伝達できればよく、必ずしも上腕部120に取り付けられていなくてもよい。推力発生部300は、例えば、延長腕145の取付位置144に取り付けられていてもよい。
【0054】
推力発生部300は、第1方向(例えば、xa軸方向)に気流を発生させる第1推力発生部310と、第2方向(例えば、ya軸方向)に気流を発生させる第2推力発生部320と、第3方向(例えば、za軸方向)に気流を発生させる第3推力発生部330とを備える。
このように構成された推力発生部300によれば、第1推力発生部310~第3推力発生部330の推力の組み合わせにより、上腕部120に対して、三次元空間内の任意の方向に推力を与えることができる。
【0055】
図11は、本実施形態の推力発生部の変形例を示す図である。推力発生部300aは、重力方向(例えば、za軸方向)に気流を発生させる第4推力発生部340と、重力方向とは異なる方向(例えば、xa-ya平面内の任意の方向)に気流を発生させる第5推力発生部350と、第5推力発生部350が気流を発生させる方向を変化させる方向可変部360とを備えていてもよい。
方向可変部360は、例えば電動モータを備えており、電動モータを駆動することによって、第5推力発生部350の推力発生方向を変化させる。
【0056】
[制御装置500の機能構成]
次に、図12を参照して、制御装置500の機能構成の一例について説明する。
【0057】
図12は、本実施形態の制御装置500の機能構成の一例を示す図である。制御装置500は、中央演算処理装置などの演算機能と、半導体メモリなどの記憶機能とを備えており、雑音除去部501と、信号出力部502と、検出部511と、制御部512と、書換制御部513と、記憶部514とをその機能部として備える。
【0058】
雑音除去部501は、非接触音響センサ150が出力する信号と、収音部160が出力する信号とを取得する。
非接触音響センサ150は、上腕部120を介して支持されており、検査対象物に対して非接触の状態で、検査対象物に生じている音響情報を取得する。
収音部160は、非接触音響センサ150の周囲に生じている音を収音して、音信号を出力する。
雑音除去部501は、非接触音響センサ150が出力する信号から、収音部160が収音する音の成分を除去する。この雑音除去部501による処理の手順について、図13を参照して説明する。
【0059】
[雑音除去部501の動作]
図13は、本実施形態の雑音除去部501の動作の一例を示す図である。
(ステップS100)雑音除去部501は、非接触音響センサ150の出力信号を取得する。雑音除去部501は、収音部160の出力信号を取得する。
(ステップS110)雑音除去部501は、取得した信号を時間軸方向にフレーム分割する。
(ステップS120)雑音除去部501は、非接触音響センサ150の出力信号に含まれるノイズ成分の周波数スペクトルを除去する。ノイズ成分の周波数スペクトルの除去には、既知のスペクトル・サブトラクション法(spectral subtraction method)が用いられる。
(ステップS130)雑音除去部501は、既知のεフィルタによって小振幅高周波を除去する。
(ステップS140)雑音除去部501は、ノイズ除去後の信号をAE(アコースティック・エミッション)信号として出力する。
【0060】
図14は、本実施形態の雑音除去部501によるノイズ除去の一例を示す図である。
図14(A)は、推力発生部300を動作させない状態において、非接触音響センサ150が出力する信号の一例を示す。同図に示す波形には、非接触音響センサ150に起因するノイズ成分が含まれている。
図14(B)は、推力発生部300を動作させた状態において、非接触音響センサ150が出力する信号の一例を示す。同図に示す波形には、非接触音響センサ150に起因するノイズ成分に加えて、推力発生部300の動作によるノイズ成分が含まれている。
図14(C)は、推力発生部300を動作させた状態において、非接触音響センサ150が出力する信号から、雑音除去部501がノイズ除去を行った後の信号の一例を示す。同図に示す波形には、非接触音響センサ150に起因するノイズ成分と、推力発生部300の動作によるノイズ成分とが除去されている。
なお、上述した一例においては、雑音除去部501が、スペクトル・サブトラクション法とεフィルタとを用いてノイズ除去を行うとして説明したが、これに限られない。雑音除去部501は、非接触音響センサ150の出力信号に含まれるノイズ成分を除去することができる既知のいずれの手法を採用してもよい。
【0061】
図12に戻り、信号出力部502は、雑音除去部501が生成したAE信号を、外部装置(例えば、提示装置560)に出力する。提示装置560は、液晶ディスプレイなどの表示部を備える表示装置であってもよいし、プリンタなどの印刷機能を備える装置であってもよい。
【0062】
次に、制御装置500による関節部200の姿勢制御について説明する。
上述したように関節部200の角度調整部210は、回転角度センサ123および駆動部124(いずれも不図示)を備えていてもよい。以下では、角度調整部210が、回転角度センサ123および駆動部124を備える場合について説明する。
【0063】
検出部511は、回転角度センサ123の出力信号を取得し、上腕部120の第2軸線AX2周りの回転角度を検出する。
記憶部514には、制御情報があらかじめ記憶されている。制御情報とは、上腕部120の回転角度と関節部200の回転量との対応関係を示す情報である。例えば、上腕部120の回転角度が0[°]である場合、下腕部110には捩じれが生じないため、関節部200の回転量は0である。上腕部120の回転角度が0[°]から大きく(あるいは小さく)なるに従い、下腕部110の捩じれ量が大きくなる。このため、上腕部120の回転角度が0[°]から大きく(あるいは小さく)なるに従い、関節部200の回転量は大きくなる。記憶部514には、上腕部120の回転角度と関節部200の回転量との対応関係を示す制御情報があらかじめ記憶されている。
制御部512は、記憶部514に記憶されている制御情報と、検出部511が検出する回転角度とに基づいて、駆動部124の回転駆動量を制御する。
【0064】
ここで、上腕部120に取り付けられる部品(例えば、エンドエフェクタ)の質量が変化することで、上腕部120の回転角度と関節部200の回転量との対応関係は変化する。また、下腕部110の剛性が変化することでも、上腕部120の回転角度と関節部200の回転量との対応関係は変化する。したがって、エンドエフェクタが交換された場合などにおいては、記憶部514に記憶されている制御情報は、書き換えられるように構成されていることが望ましい。
そこで、制御装置500は、書換制御部513を備えていてもよい。
【0065】
書換制御部513は、記憶部514に記憶されている制御情報を書き換える。具体的には、プロファイル提供装置550は、上腕部120に取り付けられる部品(例えば、エンドエフェクタ)の種類ごとに、あるいは、下腕部110を構成する部品の種類ごとに、上腕部120の回転角度と関節部200の回転量との対応関係をあらかじめ用意したプロファイル情報を記憶している。プロファイル提供装置550は、複数のプロファイル情報の中から、検査装置1の仕様(例えば、エンドエフェクタの種類)に応じたプロファイル情報を制御装置500に提供する。書換制御部513は、プロファイル提供装置550から提供されたプロファイル情報を取得すると、取得したプロファイル情報を新たな制御情報として、記憶部514に記憶されている制御情報を書き換える。
このように構成された制御装置500によれば、エンドエフェクタの種類が変化した場合であっても、エンドエフェクタの種類によらず、エンドエフェクタの位置決め精度をより向上させることができる。
【0066】
エンドエフェクタの一例として、上述した非接触音響センサ150がある。非接触音響センサ150は、検査対象物に対して所定の距離範囲かつ所定の角度範囲で対向することが望ましい。例えば、非接触音響センサ150は、検査対象物に対する距離が25[mm]付近、角度が15.6[°]付近で検査対象物に対向することが望ましい。
したがって、検査装置1には、エンドエフェクタの位置決め精度を高くすることが求められる。
【0067】
上述したように、本実施形態の検査装置1は、関節部200が下腕部110の捩じれの方向と逆方向に傾いて、捩じれを吸収することにより、エンドエフェクタの位置決め精度を向上させることができる。
また、本実施形態の検査装置1は、エンドエフェクタの種類などに応じて、関節部200の角度制御をより適切なプロファイルに変更することができる。したがって、本実施形態の検査装置1によれば、エンドエフェクタを交換した場合などにおいても。エンドエフェクタの位置決め精度を向上させることができる。
また、本実施形態の検査装置1は、第1延長腕145A及び第2延長腕145Bの変位を合成した位置に釣合錘143を移動させることによって、第1延長腕145A及び第2延長腕145Bがそれぞれ姿勢変化をしたことによる延長腕145の重心位置の変化を抑制する。これにより、本実施形態の検査装置1によれば、エンドエフェクタの位置決め精度を向上させることができる。
また、本実施形態の検査装置1は、上腕腕先部126の位置をファン(例えば、ダクテッドファン)の推力によって制御する推力発生部300を備えている。このように構成された本実施形態の検査装置1によれば、エンドエフェクタの位置決め精度を向上させることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0069】
なお、上記の実施形態における各装置が備える各部は、専用のハードウエアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0070】
なお、各装置が備える各部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、各装置が備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0071】
また、各装置が備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、制御部が備える各部による処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウエアを含むものとする。
【0072】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…検査装置、110…下腕部、120…上腕部、145…延長腕、200…関節部、300…推力発生部、500…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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