(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137838
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】円筒表面撮影装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/222 20060101AFI20230922BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20230922BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230922BHJP
G03B 15/02 20210101ALI20230922BHJP
G03B 15/05 20210101ALI20230922BHJP
【FI】
H04N5/222 100
H04N5/225 600
G03B15/00 T
G03B15/02 G
G03B15/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044231
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 耕平
(72)【発明者】
【氏名】堤 親平
(72)【発明者】
【氏名】森田 裕也
【テーマコード(参考)】
2H053
5C122
【Fターム(参考)】
2H053DA04
5C122DA12
5C122EA42
5C122GD01
5C122GG07
(57)【要約】
【課題】一定条件で円筒形製品の円筒表面を撮影可能な円筒表面撮影装置を提供する。
【解決手段】円筒表面撮影装置(1)は、円筒表面(91)の撮影対象領域に光を照射する照射手段(2)と、照射手段よりも上方かつ撮影対象領域に対面する位置で撮影手段(3)を支持し、使用状態において円筒形製品の軸線と平行に配置されるフレーム部(4)と、フレーム部の軸線方向両端部から円筒表面に当接する位置まで延びて、撮影手段と円筒表面との間隔(H1)を一定に維持するための一対の間隔保持部(5)とを、一体的に備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形製品の円筒表面を撮影する撮影装置であって、
前記円筒表面の撮影対象領域に光を照射する照射手段と、
前記照射手段よりも上方かつ前記撮影対象領域に対面する位置で撮影手段を支持し、使用状態において前記円筒形製品の軸線と平行に配置されるフレーム部と、
前記フレーム部の軸線方向両端部から前記円筒表面に当接する位置まで延びて、前記撮影手段と前記円筒表面との間隔を一定に維持するための一対の間隔保持部とを、一体的に備える、円筒表面撮影装置。
【請求項2】
前記一対の間隔保持部の先端部は、前記円筒表面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する円弧状の当接部により構成されている、請求項1に記載の円筒表面撮影装置。
【請求項3】
前記撮影手段による撮影対象空間の周囲を取り囲み、外部の光を遮断する筒状遮光部材をさらに備え、
前記一対の間隔保持部は、前記筒状遮光部材のうち軸線方向に沿って互いに対面する一対の軸方向対面部により構成されている、請求項1または2に記載の円筒表面撮影装置。
【請求項4】
前記筒状遮光部材の下端部の少なくとも一部に、弾力性を有する弾力性部材が設けられている、請求項3に記載の円筒表面撮影装置。
【請求項5】
前記照射手段は、前記一対の間隔保持部のそれぞれに固定された一対の光源を含む、請求項1~4のいずれかに記載の円筒表面撮影装置。
【請求項6】
前記円筒形製品は、金型遠心鋳造法により製造された鋳鉄管である、請求項1~5のいずれかに記載の円筒表面撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形製品の表面、すなわち円筒表面を撮影する円筒表面撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平3-295450号公報(特許文献1)には、円筒形の検査対象物の撮影方法が開示されている。当該撮影方法は、円筒形の検査対象物の表面上に検査対象領域を囲んで平板な反射板を配置し、検査対象物の軸心方向に沿った斜め上方に配置した光源から検査対象領域に光を照射し、検査対象物の軸心方向において光源に対向して配置されたカメラによって検査対象領域を撮影する構成である。カメラによって撮影された検査対象物の画像は、画像処理装置により二値化処理などの画像解析が行われて、検査対象物の表面にできた凹凸部の存在、すなわち不良部分の存在を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、検査対象物の表面上に反射板を配置して検査対象領域の周辺部における光量を増加させることにより、健全な表面であるにも拘わらず輝度不足によって不良部分と同様な表示となってしまうことを防止できるようにしている。
【0005】
一方で、カメラによって撮影された画像により検査対象物の定量的な評価を行うためには、毎回、一定条件で検査対象領域を撮影する必要がある。そのためには、毎回、光源と撮影手段と検査対象物との位置関係を一定とすることが求められるが、特許文献1の構成では、光源およびカメラの位置が固定されていないため、撮影画像によって定量的な評価を行うことができない。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、一定条件で円筒形製品の円筒表面を撮影可能な円筒表面撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に従う円筒表面撮影装置は、円筒形製品の円筒表面を撮影する撮影装置であって、円筒表面の撮影対象領域に光を照射する照射手段と、照射手段よりも上方かつ撮影対象領域に対面する位置で撮影手段を支持し、使用状態において円筒形製品の軸線と平行に配置されるフレーム部と、フレーム部の軸線方向両端部から円筒表面に当接する位置まで延びて、撮影手段と円筒表面との間隔を一定に維持するための一対の間隔保持部とを、一体的に備える。
【0008】
好ましくは、一対の間隔保持部の先端部は、円筒表面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する円弧状の当接部により構成されている。
【0009】
好ましくは、撮影手段による撮影対象空間の周囲を取り囲み、外部の光を遮断する筒状遮光部材をさらに備える。この場合、一対の間隔保持部は、筒状遮光部材のうち軸線方向に沿って互いに対面する一対の軸方向対面部により構成されていることが望ましい。
【0010】
また、筒状遮光部材の下端部の少なくとも一部に、弾力性を有する弾力性部材が設けられていることも望ましい。
【0011】
照射手段は、一対の間隔保持部のそれぞれに固定された一対の光源を含むことが望ましい。
【0012】
上記円筒形製品は、典型的には、金型遠心鋳造法により製造された鋳鉄管である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一定条件で円筒形製品の円筒表面を撮影することができる。その結果、撮影手段が撮影した画像を、各円筒形製品の定量評価に用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る円筒表面撮影装置の概略構成を模式的に示す図であり、(A),(B)は非使用状態における円筒表面撮影装置と円筒形製品との関係を示す側面図および断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る円筒表面撮影装置の概略構成を模式的に示す図であり、(A),(B)は使用状態における円筒表面撮影装置と円筒形製品との関係を示す側面図および断面図である。
【
図3】(A),(B)は、本発明の実施の形態に係る円筒表面撮影装置の具体的な構成例を示す斜視図および側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る円筒表面撮影装置の当接部の機能を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態の変形例に係る円筒表面撮影装置を模式的に示す図である。
【
図6】(A)は、金型遠心鋳造法により製造された鋳鉄管を示す斜視図であり、
図6(B)は、鋳鉄管の鋳肌(円筒表面)の一部を通常の撮影手段で撮影して得られた画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0016】
<概略構成について>
図1および
図2を参照して、本実施の形態に係る円筒表面撮影装置1の概略構成について説明する。円筒表面撮影装置1は、たとえば鋳鉄管などの円筒形製品90の円筒表面を撮影するための装置である。
図1には、非使用状態における円筒表面撮影装置1が示され、
図2には、使用状態における円筒表面撮影装置1が示されている。なお、
図1(B)は、
図1(A)のIB-IB線に沿う断面図であり、
図2(B)は、
図2(A)のIIB-IIB線に沿う断面図である。
【0017】
円筒表面撮影装置1は、円筒形製品90の円筒表面91を上方から撮影し、円筒表面91の一部の領域(撮影対象領域)の画像を取得する。
図1および
図2の矢印A1は、円筒形製品90の軸線Oと平行な方向を表わしており、この方向を「左右方向」ともいう。矢印A2は、左右方向に直交する方向であり、この方向を「奥行き方向」ともいう。「奥行き方向」は、円筒形製品90の径方向に一致する。矢印A3は、円筒形製品90から遠ざかる方向を表わしており、この方向を「上方」という。また、その反対方向を「下方」という。円筒表面撮影装置1の左右方向、奥行き方向、および上下方向はそれぞれ、x方向、y方向、およびz方向と言い換えることができる。
【0018】
本実施の形態に係る円筒表面撮影装置1は、たとえば工場の搬送手段(ベルトコンベアなど)上に横置きされた円筒形製品90の円筒表面91を鉛直上方から撮影する。そのため、本実施の形態において、上下方向は鉛直方向を表わし、左右方向および奥行き方向は水平方向に一致する。なお、円筒表面撮影装置1は、円筒表面91を側方(たとえば真横)から撮影するように構成されていてもよく、「上方」とは、鉛直上方に限定されない。
【0019】
円筒表面撮影装置1は、撮影手段としてのカメラ3と、円筒表面91の撮影対象領域(
図1において破線で囲む領域)に光を照射する照射手段としての光源2と、カメラ3を支持するフレーム部4と、一対の間隔保持部5とを、一体的に備えている。本実施の形態では、このような一体化されたユニットを、撮影ユニットPUという。なお、
図1(B)および
図2(B)では、光源2の図示を省略している。
【0020】
円筒表面撮影装置1は、たとえばフレーム部4に接続された昇降手段8を備えており、撮影ユニットPUは、昇降手段8によって、
図1に示す上方退避位置(非使用状態に相当)と
図2に示す作業位置(使用状態に相当)との間を上下方向にスライド移動可能に設けられている。昇降手段8は、たとえば図示しない機械的制御手段によって実現されてもよいし、作業員自身の手によって実現されてもよい。つまり、撮影ユニットPUは、自動または手動により上下方向にスライド移動させられることによって、上方退避位置と作業位置とに位置変更可能である。
【0021】
フレーム部4は、円筒表面91(撮影対象領域)に対面する位置でカメラ3を支持する部材である。カメラ3は、光源2よりも上方位置において真下を向くように、フレーム部4に取り付けられている。カメラ3のレンズから円筒表面91の撮影対象領域までの空間30を、「撮影対象空間30」という。
【0022】
フレーム部4は、円筒形製品90の側方から見て、軸線Oと平行に配置されており、本実施の形態では水平に配置されている。詳細には、フレーム部4は、円筒形製品90の軸線O方向に見て、円筒形製品90の軸心(軸線O)とカメラ3のレンズ中心とを結ぶ仮想直線に直交するように配置されている。円筒表面91とこの仮想直線とが交わる箇所が、撮影対象領域の円周方向中心位置91tであり、本実施の形態では、円筒表面91の最上端部である。
【0023】
フレーム部4は、たとえば左右方向を長辺とし、奥行き方向を短辺とする矩形状に形成されている。フレーム部4は、たとえば複数の板材または棒材が枠状に組まれて形成されていてもよいし、
図3(A)に示すように一枚の平板により形成されていてもよい。
【0024】
一対の間隔保持部5はそれぞれ、フレーム部4の軸線O方向(左右方向)両端部から下方に延在している。一対の間隔保持部5は、撮影対象空間30の左右両側にそれぞれ配置されており、互いの長さは等しい。
図2(A),(B)に示すように、一対の間隔保持部5は、使用状態において下端部が円筒表面91に当接し、撮影ユニットPUの脚部として機能する。このように、各間隔保持部5の先端部(下端面を含む部分)は、使用状態において円筒表面91に接する「当接部51」を構成する。これにより、使用状態において、カメラ3と円筒表面91との間隔(具体的には、カメラ3のレンズと撮影対象領域との最短距離)H1が、一定に維持される。
【0025】
図1(B)および
図2(B)に示されるように、間隔保持部5は、軸線O方向に見て、円筒表面91の軸心(軸線O)とカメラ3のレンズ中心とを結ぶ仮想直線に重なるように、上下方向(本実施の形態では鉛直方向)に延在している。各間隔保持部5は、上下方向に長い棒状部材により形成されてもよいし、上下方向を長辺とし、奥行き方向を短辺とする、たとえば略矩形状の板状部材により形成されていてもよい。いずれの場合であっても、一対の間隔保持部5は、同じ形状であることが望ましい。
【0026】
光源2は、典型的には、一対の間隔保持部5それぞれの内側(撮影対象空間側)に固定される。つまり、撮影ユニットPUが備える照射手段は、一対の光源2を含み、一対の光源2が、円筒形製品90の軸線O方向一方および他方の両側から、円筒表面91の撮影対象領域に光を照射するように取り付けられる。各光源2は、軸線O方向に見て、円筒表面91の軸心(軸線O)とカメラ3のレンズ中心とを結ぶ仮想直線に重なる位置に配置されることが望ましい。
【0027】
当接部51から光源2の設置位置までの高さは、互いに等しい。これにより、使用状態において、各光源2と円筒表面91との間隔(具体的には、撮影対象領域から光源2までの高さ)H2が、一定に維持されるので、光源2の高さ調整が不要となる。その結果、撮影ユニットPUを用いることで、撮影対象領域に対する光源2およびカメラ3の位置関係を最適化した条件下で、円筒形製品90の円筒表面91を撮影することができる。
【0028】
撮影ユニットPUは、カメラ3による撮影対象空間30の周囲を取り囲み、外部の光を遮断する筒状遮光部材6をさらに備えることが望ましい(
図1および
図2では想像線で示している)。これにより、周囲の照明環境等に左右されることなく、円筒表面91の撮影対象領域を一定条件(同じ条件)で撮影することができる。
【0029】
<具体的な構成例>
図3(A)は、円筒表面撮影装置1の具体的な構成例を示す斜視図である。円筒表面撮影装置1は、下端が開口した略直方体形状のケース部10を有しており、このケース部10に、カメラ3および一対の光源2が取り付けられている。ケース部10は、遮光性を有し、かつ、ある程度の剛性を有する部材(たとえば樹脂、木材、厚紙など)により形成されている。ケース部10は、撮影ユニットPUの外郭を構成している。
【0030】
上述のフレーム部4および筒状遮光部材6は、ケース部10によって実現されている。具体的には、ケース部10の天板部10aがフレーム部4を構成し、ケース部10の4つの側面10b~10eが筒状遮光部材6を構成している。カメラ3は、ケース部10の天板部10aの中央に設けられている。天板部10aは、筒状遮光部材6の上端開口を覆う上端遮光部材を構成している。
【0031】
ケース部10の4つの側面10b~10eによって、カメラ3による撮影対象空間30の周囲が取り囲まれている。4つの側面10b~10eのうち軸線O方向に沿って対面する一対の側面部(以下「軸方向対面部」という)10b,10cによって、軸線O方向(左右方向)両側からの外光の侵入が遮断され、径方向に沿って対面する一対の側面部(以下「径方向対面部」という)10d,10eによって、径方向(奥行き方向)両側からの外光の侵入が遮断される。
【0032】
図3(A)に示す撮影ユニットPUにおいては、筒状遮光部材6の軸方向対面部10b,10cが、一対の間隔保持部5として機能する。言い換えると、一対の間隔保持部5は、筒状遮光部材6の一対の軸方向対面部10b,10cにより構成されている。そのため、本実施の形態では、間隔保持部5が平坦な板状部により形成されている。2つの光源2は、一対の軸方向対面部10b,10cの内側面に、向かい合わせに取り付けられている。
【0033】
各光源2は、図示されるように、奥行き方向に長さを有する一つのLED照明具により実現されてもよいし、図示しない形態として、奥行き方向に沿って並べられた複数個のLED電球を含んでいてもよい。なお、光源2は、一対の径方向対面部10d,10eの内側面にも、向かい合わせに取り付けられていてもよい。
【0034】
図3(B)には、円筒表面撮影装置1を軸線O方向一方側から見た側面図が模式的に示されている。軸方向対面部10b,10cの下端部は、奥行き方向に沿って円弧状に切り欠かれている。つまり、軸線O方向に見て、間隔保持部5の当接部(先端部)51が円弧状に形成されている。当接部51の円弧の曲率半径R2は、円筒表面91の曲率半径R1よりも(若干)大きい。これにより、昇降手段8が撮影ユニットPUを上方退避位置から作業位置に下降させると、円弧状の当接部51に円筒形製品90の上端部分が嵌まり込むので、使用状態において、撮影ユニットPU(ケース部10)を円筒形製品90上に安定的に載置することができる。
【0035】
なお、円筒表面91に対する当接部51の曲率半径の比率「R2/R1」は、1.0より大きく、かつ、2.0以下であり、好ましくは1.7以下である。より好ましくは、1.0より大きく、かつ、1.1以下である。これにより、当接部51の横方向(撮影ユニットPUの奥行き方向)における両端部と円筒表面91との間の隙間、および、径方向対面部10d,10eの下端部と円筒表面91との間の隙間を小さくできるので、これらの隙間から撮影対象空間30への外光の侵入を少なくすることができる。
【0036】
上述の撮影ユニットPUに搭載されたカメラ3により円筒表面91を撮影することにより、円筒形製品90が金型遠心鋳造法により製造された鋳鉄管である場合であっても、良好な画像を得ることができる。このことについて、
図6を参照して説明する。
図6(A)は、鋳鉄管100を示す斜視図であり、
図6(B)は、鋳鉄管100の鋳肌(円筒表面)の一部を通常の撮影手段で撮影して得られた画像である。
図6(A),(B)の矢印A4は、鋳鉄管100の円周方向を示している。
【0037】
金型遠心鋳造法で用いられる円筒状の金型の内周面には微細な凹凸(ピーニング加工による凹凸)が形成されているため、金型遠心鋳造法により製造された鋳鉄管100の鋳肌(円筒表面)101には、
図6(B)に示されるように、多数の円環状の凹凸模様102が縞状に表われる。そのため、鋳鉄管100の円筒表面101を、軸線O方向一方側のみから照らす場合、凹凸模様102の凹部に影ができる。そのため、撮影手段で撮影した画像から、鋳肌の状態を精度良く把握することが困難である。
【0038】
これに対し、本実施の形態では、外光の侵入を抑制し、かつ、同じ高さにある一対の光源2により軸線O方向両側から(斜め下方に向かって)円筒表面91の撮影対象領域を照射した状態で、カメラ3により真上から円筒表面91を撮影するため、上述のように凹凸模様102の凹部に影ができることを防止することができる。これにより、円筒表面91の凹凸形状を明瞭にした良好な画像を得ることができる。したがって、
図3(B)に模式的に示すように、たとえば画像処理装置PCにおいてカメラ3で撮影した画像を画像処理することによって、円筒形製品90の円筒表面91の良否状態などを定量的に評価することが可能となる。その結果、カメラ3で撮影した円筒表面91の画像を、機械学習用の画像として好適に用いることができる。
【0039】
ここで、当接部51の円弧の中心角θは、180度未満であり、好ましくは120度未満である。また、昇降手段8による昇降途中において、撮影ユニットPUは奥行き方向に沿って水平移動可能であることが望ましい。この場合、
図4に示されるように、昇降手段8によって撮影ユニットPUを上方退避位置から作業位置に下降させる過程において、ケース部10の中心位置(カメラ3の位置)が相対的に奥行き方向一方側(紙面左側)にずれていたとしても、当接部51の反対側(紙面右側)の端部が先に円筒表面91aに接し、そのまま円筒表面91aに沿って下降するので、使用状態における位置ずれを抑制または防止することができる。つまり、当接部51がガイド部材として機能することにより、円筒表面91の撮影対象領域に対する光源2およびカメラ3の位置決め(芯出し)を適切に行うことができる。
【0040】
したがって、たとえば工場等において連続的に搬送されてくる円筒形製品90を順次撮影する場合などにおいて、円筒形製品90の位置が多少ずれていたとしても、毎回、同じ条件(一定条件)で撮影した円筒表面91の画像を取得することができる。
【0041】
なお、当接部51の曲率半径R2(
図3(B))は、径が異なる複数の円筒形製品90に対応可能となるように定められていてもよい。この場合、曲率半径R2を、
図4に示すように、比較的大径の円筒形製品90の円筒表面91bの曲率半径R1bよりも(若干)大きくなるように定めておくことで、比較的小径の円筒形製品90の円筒表面91a(曲率半径R1a)にも当接部51の中央部を確実に当接させることができる。
【0042】
ただし、このように径が異なる複数の円筒形製品90に対応可能とする場合、
図5に示されるように、ケース部10の径方向対面部10d,10eの下端部(下端面)には、弾力性を有する弾力性部材7が取り付けられていてもよい。弾力性部材7は、たとえば、ウレタンやスポンジなどの発泡体により形成されており、遮光性を有している。弾力性部材7は、径方向対面部10d,10eの下端縁の全幅に亘って左右方向に延在していることが望ましい。この場合、使用状態において、ケース部10内への外光の侵入をより十分に抑制できるので、撮影条件を向上させることができる。
【0043】
また、弾力性部材7は、一対の軸方向対面部10b,10cの下端部(下端面)にも設けられていてもよい(図示せず)。つまり、弾力性部材7によって当接部51の全部または一部が実現されてもよい。この場合、比較的小径の円筒形製品90の円筒表面91aを撮影対象とする際でも、当接部51による接触面積が大きくなるので、撮影条件をさらに向上させることができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、筒状遮光部材6が角柱形状である例について説明したが、このような例に限定されない。筒状遮光部材6はたとえば円柱形状であってもよい。
【0045】
また、本実施の形態では、筒状遮光部材6が剛性を有するケース部10により実現されることとしたが、
図1に示されるように筒状遮光部材6と一対の間隔保持部5とが別構成とされる場合には、筒状遮光部材6は剛性を有していなくてもよい。たとえば、筒状遮光部材6は、フレーム部4から吊り下げられた柔軟な布地により実現されてもよい。
【0046】
また、円筒形製品90が、金型遠心鋳造法により製造された鋳鉄管100である例について説明したが、他の手法により製造された鋳鉄管や、他種の管製品にも、円筒表面撮影装置1を好適に利用できる。なお、他種の管製品を対象とする場合、円筒表面91を照射する光源2の個数および設置位置は上記のような例に限定されない。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1 円筒表面撮影装置、2 光源、3 カメラ、4 フレーム部、5 間隔保持部、6 筒状遮光部材、7 弾力性部材、8 昇降手段、10 ケース部、10b,10c 軸方向対面部、10d,10e 径方向対面部、30 撮影対象空間、51 当接部、90 円筒形製品、91,91a,91b 円筒表面、100 鋳鉄管、102 凹凸模様、O 軸線、PU 撮影ユニット。