(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137861
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20230922BHJP
A63B 71/06 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A63B69/00 C
A63B71/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044271
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】山本 太
(57)【要約】
【課題】ユーザが歩行、走行のような身体の移動を伴う移動運動を行う経路について、その経路の特性を加味した移動運動パターンの生成を可能とすること。
【解決手段】
運動支援装置100は、ユーザが移動運動を行う経路の線形に関する情報である経路線形情報を取得する経路線形情報取得部118と、取得した前記経路線形情報に基づいて、前記経路について、前記ユーザが第1の速度で移動運動する区間である第1の区間と、前記ユーザが前記第1の速度より低い第2の速度で移動運動する区間である第2の区間とを設定する移動運動パターン設定部119とを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが移動運動を行う経路に関する情報である経路情報を取得する経路情報取得部と、
取得した前記経路情報に基づいて、前記経路について、前記ユーザが第1の速度で移動運動する区間である第1の区間と、前記ユーザが前記第1の速度より低い第2の速度で移動運動する区間である第2の区間とを設定する区間設定部と、
を備えている情報処理装置。
【請求項2】
前記経路情報取得部は、前記ユーザが移動運動を行う経路の線形に関する情報を前記経路情報として取得し、
前記区間設定部は、前記ユーザが移動運動を行う経路の線形に関する情報に基づいて前記第1の区間と前記第2の区間とを設定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記経路情報が、前記経路における位置と前記経路上における勾配に関する情報との対応関係を示す勾配情報と、前記経路における位置と前記経路上における曲線に関する情報との対応関係を示す曲線情報とを含んでおり、前記区間設定部は、前記経路において、前記第1の速度での移動運動に適した区間として、当該区間における前記勾配が所定の閾値より小さい、及び前記曲線の半径が所定の閾値より大きいという条件を満足するように設定する、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記区間設定部が、前記経路において、前記第1の速度で少なくとも第1の距離移動運動することと、前記第2の速度で少なくとも第2の距離移動運動することを反復するように前記第1の区間及び前記第2の区間を前記経路上に設定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記区間設定部が、前記第1の区間を設定する場合、前記第1の区間の長さを所定の閾値以上となるように設定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記区間設定部が、前記経路上に設定された前記第1の区間及び前記第2の区間を、視覚、聴覚、及び触覚のうちの少なくともいずれかの感覚を通じて識別可能な態様で出力する、請求項1~5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記移動運動は、ユーザが歩くことと、ユーザが走ることとの少なくともいずれかを含んでいる、請求項1~6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
ユーザが前記経路に沿って移動運動したときに、前記経路に沿って検出される前記ユーザの時系列の位置情報に基づいて、前記経路についての経路情報を取得する、請求項1~7までのいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記経路情報に、前記経路上の注目すべき場所が記録されており、前記区間設定部が、前記経路上の前記注目すべき場所の近傍を、前記第2の区間に設定する、請求項1~8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記区間設定部が、前記ユーザについて取得される生体情報に基づいて、前記第1の区間及び前記第2の区間又はそのいずれか一方の設定距離を調整する、請求項1~9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
情報処理装置が、
ユーザが移動運動する経路に関する情報である経路情報を取得する処理と、
取得した前記経路情報に基づいて、前記経路について、前記ユーザが第1の速度で移動する区間である第1の区間と、前記ユーザが前記第1の速度より低い第2の速度で移動する区間である第2の区間とを設定する処理と、
を実行する情報処理方法。
【請求項12】
情報処理装置に、
ユーザが移動運動する経路に関する情報である経路情報を取得する処理と、
取得した前記経路情報に基づいて、前記経路について、前記ユーザが第1の速度で移動する区間である第1の区間と、前記ユーザが前記第1の速度より低い第2の速度で移動する区間である第2の区間とを設定する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
健康の維持、増進のために無理なく実行できる運動としてウォーキングがある。特に、通常のペースでの歩行と、通常よりも速いペースでの歩行とを交互に行うことにより、運動効果を高める、インターバルウォーキングという運動法が注目されている。このインターバルウォーキングは、公園や街中などの、様々なシーン、様々な経路で実行することができる。
【0003】
一方、ユーザがランニング等のトレーニングを行うときに、その経路を自動的に生成する技術が提案されている。例えば特許文献1には、様々なユーザの活動データに基づいて、その活動の人気レベル、活動レベルを判定してマップ上に表示し、ユーザが選択したマップ上の活動を示す領域を通る経路を自動的に生成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のインターバルウォーキングの場合、通常ペースの歩行と速歩の反復周期を所定の時間のみに基づいて設定していたため、急な曲線、坂道など、経路上の速歩に適さない区間であっても速歩を行う区間に設定されることがあり、必ずしもユーザにとって適切な運動効果をもたらすようなウォーキングプログラムが提供されない場合があるという問題があった。前記の特許文献1においても、経路自体に含まれる曲線や勾配を経路の自動設定に反映させることは開示されていない。
【0006】
本発明の目的の一つは、ユーザが歩行、走行のような身体の移動を伴う移動運動を行う経路について、その経路の特性を加味した運動パターンの生成を可能とする情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様による情報処理装置は、ユーザが移動運動を行う経路に関する情報である経路情報を取得する経路情報取得部と、取得した前記経路情報に基づいて、前記経路について、前記ユーザが第1の速度で移動運動する区間である第1の区間と、前記ユーザが前記第1の速度より低い第2の速度で移動運動する区間である第2の区間とを設定する区間設定部とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザが歩行、走行のような身体の移動を伴う移動運動を行う経路について、その経路の特性を加味した運動パターンの生成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態における標準歩行パターンを例示する模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態における運動支援システムの構成を例示するシステム構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態における運動支援装置のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態における運動支援装置が有する処理部が実現する機能を例示するブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態における移動運動経路の例を平面線形で示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態における移動運動経路の例を縦断線形で示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態における運動支援装置が作成した歩行パターンの出力表示例を示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態における歩行パターン設定処理を例示するフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態における歩行パターン修正処理を例示するフローチャートである。
【
図10】本発明の他の実施形態における移動運動経路の例を平面線形で示す模式図である。
【
図11】本発明の他の実施形態における移動運動経路の例を縦断線形で示す模式図である。
【
図12】本発明の他の実施形態による運動支援装置が作成した移動運動パターンの出力表示例を示す模式図である。
【
図13】本発明の他の実施形態における移動運動パターン設定処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、その実施形態に即して添付図面を参照しながら説明する。
【0011】
(実施形態1)
<インターバルウォーキング>
前記のように、インターバルウォーキングとは、通常の速さでの歩行と通常よりも早く歩く速歩とを所定の時間ずつ繰り返す運動法である。その学術的な裏付けは、例えば「能勢博ほか「インターバル速歩による生活習慣病・介護予防と評価 -松本市熟年体育大学の現状と将来-」理学療法学 36巻4号 148-152、2009年」に記載されている。同論文によると、所定のテストによって決定した最高酸素摂取量(VO2peak)に対して、その最高酸素摂取量の70%を超えるような速さで歩く速歩と最高酸素摂取量の30%を超えないような速さで歩く通常歩行とを3分間ずつ繰り返す運動方法をインターバル速歩(登録商標)として紹介している。最高酸素摂取量には個人差があるため、速歩と通常歩行の速さを一律に規定することはできないが、ここでは、便宜的に、通常歩行の速さとして4.0km/h、速歩の速さとして6.0km/hを想定して説明する。このような通常歩行と速歩を3分間ずつ繰り返す歩行パターンを「標準歩行パターン」と称することとすると、それを歩行距離で表せば、通常歩行で200m、速歩で300m歩くパターンを繰り返すことになる。
図1に、この標準歩行パターンの一例を模式的に示している。
図1において、符号Nは通常歩行(Normal walk)を、符号Fは速歩(Fast Walk)を示している。
【0012】
<運動支援装置を含むシステムの概要>
図2は、本発明の一実施形態における運動支援装置を含む運動支援システムSのシステム構成を例示するシステム構成図である。
図2に示すように、運動支援システムSは、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって実現される運動支援装置1、スマートウォッチ等の端末装置2を備える。運動支援装置1は、インターネット、LAN、WAN等の通信ネットワークを介して、サーバコンピュータ3と通信可能に接続されている。運動支援装置1と端末装置2との間は、例えばBluetooth(登録商標)等の無線通信によって通信可能に接続されている。
【0013】
運動支援装置1は、例えば通信ネットワークNを通じて外部装置から、ユーザがインターバルウォーキングを行おうとする経路に関する経路線形情報(経路情報)を取得して、ユーザが入力するユーザ情報とに基づいて、ユーザが当該経路においてインターバルウォーキングをする場合に適した歩行パターンを、経路線形情報を考慮して生成する。「経路線形情報」とは、ユーザがウォーキングしようとする経路における勾配、曲線に関する情報である。経路線形情報には、路面の状態、市街地の経路の場合、交通信号の位置等の他の情報を含めてもよい。運動支援装置1は、生成した歩行パターンを、サーバコンピュータ3に登録することができる。登録された歩行パターンは、複数のユーザによって共有可能としてもよい。経路設定は、ユーザが運動支援装置1としてのスマートフォンを通じて地図データにアクセスし、その地図上で入力設定するように構成することができる。あるいは、ユーザがサーバコンピュータ3又は他の外部装置にあらかじめ登録されている複数のモデル経路から選択することができるように構成してもよい。経路線形データは、地図データからは、設定した経路に沿った位置座標の集合としての平面線形及び高度情報として取得することができる。運動支援装置1がスマートフォンとして実現されている場合、ユーザがそのスマートフォンを身体に装着することで、後述する端末装置2としても利用することが可能である。運動支援装置1は様々な形態のデバイスとして実現することができる。そのような本実施形態の運動支援装置1が取りうる形態については、
図3に示す構成例に関して後述する。
【0014】
端末装置2は、一般的にはウォーキングエクササイズを実行しようとするユーザが装着するスマートウォッチ等の携帯端末装置であって、運動支援装置1とBluetooth等の通信手段によって通信可能に接続されている。例えば本実施形態では、端末装置2は、運動支援装置1が作成したウォーキング経路での歩行パターンデータを転送して出力したり、端末装置2に設ける各種センサによって検出されたユーザの状態を示す情報を運動支援装置1に転送したりする機能を有する。端末装置2は、通信ネットワークNを介してサーバコンピュータ3と通信可能に構成することにより、運動支援装置1として機能することができるように構成することも可能である。その場合、運動支援装置1としての端末装置2は、通信ネットワークNから経路線形情報を取得して歩行パターンを作成し、作成した歩行パターンを、通信ネットワークNを介してサーバコンピュータ3に登録するように機能する。
【0015】
サーバコンピュータ3は、運動支援システムSの機能を管理するコンピュータであり、運動支援装置1に、歩行パターン作成に必要なユーザに関する情報、経路線形情報を提供し、各運動支援装置1が作成した経路ごと、ユーザごとの歩行パターンデータを登録して管理する機能を有する。サーバコンピュータ3は、一つのロケーションに設置されたコンピュータであってもよいし、ネットワーク上に分散配置された複数のコンピュータで構成されるクラウドシステムとして構成されてもよい。
【0016】
<運動支援装置の構成例>
次に、本実施形態における運動支援装置1の構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態における運動支援装置1のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図3に示すように、本実施形態における運動支援装置1は、処理部11と、主記憶部12と、補助記憶部13と、入力部14と、出力部15と、通信部16とを備える。
図3において破線で示しているセンサ部17と、GNSS部18とは、運動支援装置1のハードウェアの要素として必須ではない。
【0017】
図2に関して述べたように、本実施形態における運動支援装置1は、様々な形態で実現することができる。運動支援装置1の主要な機能は、ユーザが移動運動を実施しようとする経路についての曲線や勾配の情報を含む経路情報を取得して、その経路情報を考慮した移動運動パターンを生成し、ユーザに提供することである。したがって、本実施形態の運動支援装置1は、まず、センサ部17、GNSS部18を有しない、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置として構成することができる。その場合、
図2に例示したサーバコンピュータ3を運動支援装置1として機能するように構成することも可能である。このように構成された運動支援装置1は、外部から取得される経路情報に基づいて、ユーザが移動運動を実施する経路において好適な移動運動パターンを生成してユーザに提供することができる。本実施形態の運動支援装置1は、また、センサ部17、GNSS部18を含む情報処理装置として構成することもできる。この場合、運動支援装置1は、例えば、
図3に示したすべてのハードウェア要素を備えたスマートフォン、リストウォッチ型端末等として実現することができ、経路線形情報に基づく歩行パターンの作成を、ユーザがエクササイズを実施するシーンにおいて実行することを可能にする。特に、運動支援装置1としてのスマートウォッチ等のウェアラブル端末は、エクササイズを行うにあたって、装着状態で、経路線形情報に基づく歩行パターン作成に利用することができるためユーザの利便性が向上する。なお、後述するように、運動支援システムSは、ユーザが歩行パターンを作成するのに利用することができるだけでなく、歩行と走行とを組み合わせた移動運動を行う際の移動運動パターンを作成するのに利用することもできる。
【0018】
図3に例示した各ハードウェア要素について説明する。処理部11は、運動支援装置1の動作に必要な各種の演算及び制御等の処理を行うプロセッサによって構成される。処理部11はプロセッサと言い換えることもできる。処理部11を構成するプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、SoC(System on a Chip)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等やこれらの組合せである。また、処理部11は、これらのプロセッサにハードウェアアクセラレーター等を組み合わせたものであってもよい。
【0019】
主記憶部12は、ファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェア等のプログラムを記憶するとともに、各種の処理を行う上で一時的に利用されるワークエリアとしても機能する。主記憶部12は、例えば、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)や、揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)等によって構成される。
【0020】
補助記憶部13は、ユーザの情報、取得した経路線形情報、作成した歩行パターン情報等を記憶する。補助記憶部13は、半導体メモリ等で構成される。
【0021】
入力部14は、例えばタッチパネルやキー等の各種のボタン、マイク等で構成され、ユーザの操作を受け付ける。出力部15は、上述のタッチパネルを搭載し画像を表示するディスプレイや音声を拡声するスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
【0022】
通信部16は、運動支援装置1が他の端末装置2、サーバコンピュータ3等の外部の情報処理装置との間で行う通信を制御する。通信部16は、例えば、SIM(Subscriber Identity Module)カードやネットワークアダプタ等のネットワーク接続機器や、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)やWi-Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)やNFC(Near Field Communication)等の通信規格に基づく無線通信機器等によって構成される。
【0023】
通信部16は、インターネット等のネットワークを介して外部の情報処理装置と情報のやり取りを行う方式でもよいし、ペアリングされる情報処理端末を通じて外部の情報処理装置と情報のやり取りを行う方式でもよい。
【0024】
センサ部17は、ユーザの状態や動きを検出する各種のセンサである。センサ部17は、例えば、加速度センサ、角加速度センサ、地磁気センサ、圧力センサ、心拍センサ等によって構成される。加速度センサ、角加速度センサ、地磁気センサ、圧力センサは、センサ部17をユーザの動きを検出するための挙動検出部として機能させたり、後述のGNSS部18とともに位置特定部として機能させたりすることができる。また、心拍センサはセンサ部17を、生体情報としてのユーザの心拍数を取得するための生体情報取得部として機能させることができる。
【0025】
GNSS部18は、位置情報を取得するための測位情報取得部である。GNSSは、Global Navigation Satellite Systemの略称であり、GNSS部16はGPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムを利用する衛星測位装置である。GNSS部18は、アンテナや電子部品によって構成され、複数の測位衛星から送信される測位衛星信号を取得し、自身の位置を特定する。
【0026】
次に、運動支援装置1の処理部11が実現する機能について説明する。
図4は、本発明の一実施形態における運動支援装置1の処理部11によって実現される機能を例示するブロック図である。本実施形態の処理部11は、通信制御部111と、出力制御部112と、入力制御部113と、位置情報取得部114と、センサ情報取得部115と、運動情報取得部116と、ユーザ情報取得部117と、経路線形情報取得部118と、移動運動パターン設定部119とを有する。
【0027】
通信制御部111は、運動支援装置1が通信部18を介して外部の機器と通信するための処理を実行する。例えば、通信制御部111は、端末装置2あるいはサーバコンピュータ3と通信を行って各種の情報を送受信する。
【0028】
出力制御部112は、出力部15の画面に画像を表示するための処理を実行する。例えば、出力制御部112は、運動支援装置1が作成したあるウォーキング経路の歩行パターン表示画像を出力部15の画面に表示する処理を実行する。
【0029】
入力制御部113は、ユーザによる入力部14の操作を受け付ける処理を実行する。例えば、入力制御部113は、出力部15の画面に表示された操作画面に基づいてユーザが入力部14を介して実行した入力操作を受け付ける処理を実行する。
【0030】
位置情報取得部114は、GNSS部18が受信した測位衛星信号、センサ部17の圧力センサから得る圧力信号に基づいて運動支援装置1、あるいはセンサ部17、GNSS部18を備えた端末装置2を装着したユーザの現在位置を示す緯度、経度、高度を算出して位置情報とする機能を有する。
【0031】
センサ情報取得部115は、センサ部17に備えられている各種センサによって取得されたセンサ信号から各センサによって得られた測定値を取得する機能を有する。センサ部17は、運動支援装置1が備えても、運動支援装置1と連携するウェアラブル端末等の外部装置に設けられていてもよい。これは、次の運動情報取得部116に関しても同様である。
【0032】
運動情報取得部116は、センサ部17の加速度センサ、角加速度センサ、地磁気センサ等からセンサ情報取得部115を通じて得られる各測定値に基づいて、運動支援装置1の動きを検出する機能を有する。
【0033】
ユーザ情報取得部117は、ユーザが入力部14を介して入力するユーザ情報を取得して補助記憶部13に格納する機能を有する。ユーザ情報には、例えば、ユーザの識別情報であるID、年齢、性別、身長、体重等のユーザの属性情報を含めることができる。このユーザ情報に基づいて、運動支援装置1ではユーザの最高酸素摂取量あるいは最大酸素摂取量が算出され、ユーザ情報として記録される。ユーザ情報は、運動支援装置1がユーザごと、経路ごとに運動効果の高い歩行パターンを作成するためのデータとして利用される。ユーザ情報は、あらかじめサーバコンピュータ3に登録しておいて、ユーザが歩行パターン作成を実行する時に、必要に応じて運動支援装置1としてのスマートフォン、パーソナルコンピュータ、スマートウォッチ等に読み込まれるようにしておいてもよい。
【0034】
経路線形情報取得部118は、サーバコンピュータ3等の外部装置から、歩行パターンを作成しようとするウォーキング経路に関する線形情報を取得する機能を有する。ここで、「線形情報」とは、ウォーキングエクササイズを実施する経路の起点から終点まで、その経路上の位置に対して曲線区間の始終点及び曲線半径、勾配区間の始終点及び傾斜角度を記録してなる情報である。本実施形態の運動支援装置1は、経路ごとの歩行パターンを作成する場合、速歩と通常歩行との配分に加えて、経路上の曲線、勾配が、速歩を行うのに適合しているかを判断基準として歩行パターンを作成する。曲線、勾配に加え、経路線形情報には、経路上における注目すべき場所(見どころ)(ポイント・オブ・インタレスト(Point Of Interest、POI))を含めてもよい。その他、経路線形情報には、経路においてインターバルウォーキングエクササイズを実施する場合の歩行パターンを決める基準となる他の情報を適宜含めることができる。
【0035】
図5に、あるウォーキング経路についての経路上の位置と曲線との関係を表した平面線形の模式図を、
図6に、同ウォーキング経路についての経路上の位置と勾配との関係を表した縦断線形の模式図を示している。
図5を参照すると、この例示経路は周回経路であって、概ね直線区間、緩い曲線区間、急な曲線区間の組み合わせで構成されている。
図5に例示する周回経路は、距離s=0の地点を起点として、時計回りに、次のような平面線形を有している。
【0036】
経路上の区間 曲線半径R
0-C1 R≧Y
C1-C2 R<Y
C2-C3 ST
C3-C4 R<Y
C4-C5 ST
C5-C6 R<Y
C6-S R≧Y
【0037】
ここで、
図5に示すように、符号C1,C2,…は、それぞれが経路上の曲線変化点を表している。符号Rは曲線半径を、符号Yは経路上の緩曲線と急曲線との閾値に設定している曲線半径の値を、符号STは直線区間を表している。符号Nは通常歩行区間を、符号Fは速歩区間を示している。本実施形態では、曲線半径R=Yを閾値として、それよりも急な曲線区間は速歩に適さない区間であるとして、歩行パターン設定時には速歩設定から除外するようにしている。なお、経路の平面線形と歩行パターンの関係は、上記の例に限られることなく、例えば、曲線半径R≧Yの曲線であってもS字曲線が連続しているような、速歩では歩きにくい、ないしは脚によくない影響を与える恐れがあると考えられる区間については速歩に設定しないようにあらかじめ規定しておくことができる。各曲線変化点は、経路上における直線と曲線との接続点であり、例えば直線区間で0であった曲率が、ある有限値に変化する点等として設定される。経路上のある区間における曲線半径Rとしては、当該区間における曲線半径の平均値を採用したり、最小曲線半径を採用したりすることができる。
【0038】
図6に、
図5の例のウォーキング経路についての距離と標高との関係を表した模式縦断面図を示している。
図6を参照すると、この例示経路は
図4のような曲線とともに、いくつかの勾配区間を含んでいる。
図5に例示する経路は、距離s=0の地点を起点として、次のような縦断線形を有している。
【0039】
経路上の区間 勾配U,D
0-G1 L
G1-G2 U>X
G2-G3 L
G3-G4 D>X
G4-G5 L
G5-S U≦X
【0040】
ここで、符号G1,G2,…は、それぞれが経路縦断面上の勾配変化点を表している。符号Xは緩勾配と急勾配との閾値に設定している傾斜角度Xの値を、符号Lは水平(平坦)区間を表している。符号U,Dは、それぞれ上り勾配、下り勾配を示している。本実施形態では、上り勾配、下り勾配それぞれについて、U,D=Xを閾値として、それよりも急な上り勾配及び下り勾配区間は速歩に適さない区間であるとして、歩行パターン設定時には速歩設定から除外するようにしている。なお、経路の縦断線形と歩行パターンの関係は、上記の例に限られることなく、例えば、上り勾配と下り勾配とで傾斜角度Xの閾値を変える等、適宜設定することができる。各勾配変化点は、経路上における平坦部と勾配との接続点である。経路上のある区間における勾配としては、当該区間における勾配の平均値を採用したり、最急勾配値を採用したりすることができる。
【0041】
経路線形情報は、経路線形情報取得部118が外部装置から取得することもできるが、運動支援装置1がセンサ部17、GNSS部18を備えている場合には、運動支援装置1自体が経路線形情報をデータとして取得するようにすることもできる。例えば
図5,
図6に例示したような周回経路の場合、スマートウォッチ等のセンサ部17、GNSS部18を備えた運動支援装置1を所持した、あるいは装着したユーザが当該経路に沿って歩行、走行等の移動運動をすることにより、センサ部17が検出するユーザの位置座標と高度情報に基づいて、経路の曲線及び勾配に関する情報を含む経路線形情報を取得することができる。具体的には、例えば、GNSS部18の測位信号からユーザの位置座標を、センサ部17の圧力センサにより気圧を検出することができるので、それらの検出データからユーザの平面位置座標の変化と、気圧の関係が得られる。経路線形情報取得部118は、その関係を用いて、
図5,
図6に相当する経路平面線形及び縦断線形を生成することができる。周回経路の起点に戻ったことは、GNSS部18の出力から、起点の位置情報と同じ位置情報を示す地点に戻ったことで検出すればよい。なお、運動支援装置1により経路線形情報を取得する場合には、ユーザが経路上で入力部14から見どころとしてのPOIを入力することができるようにしてもよい。
【0042】
区間設定部としての移動運動パターン設定部119は、取得した経路線形情報及びユーザ情報を利用して、当該ユーザがそのウォーキング経路でインターバルウォーキングエクササイズを実行するのに適した歩行パターンを作成する機能を有する。移動運動パターン設定部119は、まず例えばユーザの性別、年齢等に基づいてあらかじめ格納している速歩時の速度と通常歩行時の速度とを読み出す。移動運動パターン設定部119は、前記速歩時の速度と通常歩行時の速度とを用いて、経路線形情報から得た経路上を所定の時間ずつ速歩と通常歩行とを繰り返すインターバルウォーキングを実行する場合の歩行パターンを経路に沿って設定する。ここでは、歩行パターンには経路線形情報は反映されていない。次いで移動運動パターン設定部119は、
図5,
図6に例示される経路線形情報を参照して、インターバルウォーキングの基本パターンに従って経路上に設定した歩行パターンについて、速歩の設定から除外されている区間を、通常歩行に変更する処理を実行する。これにより、基本パターンにおいて急勾配区間や急曲線区間に設定されていた速歩区間があれば、それぞれ通常歩行区間に変更される。移動運動パターン設定部119は、このようにして経路線形情報に基づいて修正された歩行パターンをサーバコンピュータ3に登録する。なお、歩行パターンを作成する際に、速歩区間については運動効果を高めるべく一定の距離を閾値としてその閾値よりも長い距離を設定するようにしてもよい。
【0043】
図7に、移動運動パターン設定部119が作成した歩行パターンの出力表示例を示している。経路の概略平面線形に沿って、速歩区間が斜線パターン部で、通常歩行区間がドットパターン部として示されている。
図5、
図6において一定閾値を超える急勾配、急曲線として特定されていた区間は通常歩行区間に指定されていることがわかる。同時に、急勾配や急曲線が存在しない区間であっても、インターバルウォーキングの基本的なパターンに従って、速歩区間と通常歩行区間が交互に設定されていることがわかる。
図7の例では、POIとして指定されている「巨樹」の付近も通常歩行区間に設定されている。このように、移動運動パターン設定部119は、効果的なインターバルウォーキングの歩行パターンを、経路の線形を考慮しつつ自動的に作成することができる。
【0044】
<運動支援装置によるデータ処理>
次に本実施形態の運動支援装置1による歩行パターン設定処理について説明する。
図8に、歩行パターン設定処理のデータ処理フローを例示するフローチャートを示している。歩行パターン設定処理は、身体の移動の一形態である歩行によって効果的な運動効果を得ようとするインターバルウォーキングに適した歩行パターンを、歩行経路の線形を考慮して設定するためのデータ処理である。歩行パターン設定処理は、歩行パターン設定のサービスを受けようとするユーザによる設定開始の操作入力によって開始される。
【0045】
ユーザ情報取得部117は、ユーザが入力部14を通じて入力した自身のID、年齢、性別、身長、体重等を含むユーザ情報を取得し、当該ユーザに適した速歩、通常歩行の速度(ペース)と、速歩と通常歩行のそれぞれの繰り返し時間を設定する(ステップS11)。
【0046】
経路線形情報取得部118は、サーバコンピュータ3等の外部装置から、インターバルウォーキングエクササイズを実施しようとする経路の線形情報を取得する(ステップS12)。この経路は、ユーザがサーバコンピュータ3に登録されている既存経路の中から選択可能に構成してもよいし、あるいは、運動支援装置1と連携させた地図アプリ等において所望の経路を地図上で設定可能とするとともに、その経路に関する曲線、高度、POI等の情報を経路線形情報として取得可能に構成してもよい。あるいは、公園や運動施設に設けられた周回経路においては、運動支援装置1を所持した、又は装着したユーザが当該周回経路を一周する過程でセンサ部17により検出された当該経路の高度情報、曲線情報に基づいて経路線形情報を生成して利用するようにしてもよい。
【0047】
移動運動パターン設定部119は、ステップS11で設定したユーザに適したインターバルウォーキングのパターンを用いて、対象の経路に沿った標準歩行パターンを設定する(ステップS13)。この標準歩行パターンは、ステップS11で設定したユーザのインターバルウォーキングの速度と繰り返し時間、及びステップS12で取得された経路の概形に基づいて生成されており、経路線形情報は考慮されていない。
【0048】
移動運動パターン設定部119は、上記の標準歩行パターンを、経路線形情報と対比する(ステップS14)。
【0049】
移動運動パターン設定部119は、標準歩行パターンにおいて、経路線形情報と整合しない箇所があるかを判定する(ステップS15)。整合しない箇所がないと判定した場合(ステップS15:NO)、移動運動パターン設定部119は、標準歩行パターンを処理対象としている経路についての歩行パターンと決定する(ステップS17)。このように、標準歩行パターンをそのまま適用することができる経路の例としては、起伏が緩やかで急曲線がない、平坦な公園内に設けられたジョギング・ウォーキング用の周回経路等が考えられる。
【0050】
ステップS15において、移動運動パターン設定部119が標準歩行パターンと経路線形情報との間に整合しない箇所があると判定した場合(ステップS15:YES)、移動運動パターン設定部119は、所定の閾値を超える急勾配、急曲線の区間に設定されている速歩区間を通常歩行区間に変更する修正を実行する(ステップS16)。一般に、この修正処理により、標準歩行パターンにおいて適切に確保されていた速歩と通常歩行との繰り返し時間が変更されることになる。移動運動パターン設定部119は、修正後の歩行パターンにおいても、可及的に標準歩行パターンに近づけるべく、各速歩区間、各通常歩行区間の長さを調整することができるのが望ましい。例えば、急曲線や急勾配に対応させて設定した通常歩行区間が標準より短いような場合、その区間の長さができるだけ標準歩行パターンでの長さに近づくように伸ばす処理等を実行することができる。
【0051】
ステップS16で修正された歩行パターンは、ステップS17において対象の経路における歩行パターンとして決定される。移動運動パターン設定部119は、ステップS17において決定された歩行パターンを出力して処理を終了する(ステップS18)。
【0052】
<決定された歩行パターンの修正>
移動運動パターン設定部119により決定された歩行パターンは、実際にユーザがその歩行パターンに基づいてインターバルウォーキングを実行した結果に従ってさらに修正することができる。
図9に、歩行パターン修正処理の処理フロー例を示すフローチャートを示している。歩行パターン修正処理は、移動運動パターン設定部119によって実行され、ユーザが運動支援装置1に対して入力部14からインターバルウォーキング開始を入力することをもって開始される。
【0053】
本実施形態では、運動支援装置1が経路線形情報を考慮して作成した歩行パターンを、実際にその歩行パターンに沿ってユーザがウォーキングを実行したときに得られるユーザの心拍数情報に基づいて修正する処理を付加することができる。前記したように、インターバルウォーキングでは、ユーザ(エクササイズ実施者)の最大酸素摂取量(VO2max)を指標として、例えば速歩区間ではVO2maxの70%を超えるように、通常歩行区間ではVO2maxの40%を下回るように歩行速度を設定することが推奨されている。歩行速度の目安としては、ユーザの心拍数を同様に用いることができる。運動時目標心拍数を求めるために広く用いられている「カルボーネン法」によれば、運動時の目標心拍数HRは、
HR=(220-年齢-安静時心拍数)×運動強度+安静時心拍数
なる計算式によって求めることができ、目標心拍数は、個人差がある安静時心拍数、所望の運動強度によって変わってくる。本実施形態では、ユーザの性別、年齢等に応じてあらかじめ運動時目標心拍数のモデル値を設定しておき、速歩速度、通常歩行速度の修正目安とする。
【0054】
図9に例示する歩行パターン修正処理において、移動運動パターン設定部119は、運動支援装置1、あるいは運動支援装置1と連携するスマートウォッチ等の端末装置2のセンサ部17に設けられている心拍センサからユーザの心拍数を取得する(ステップS21)。取得した心拍数データは、経路上の位置情報とともに主記憶部12に記憶しておくことにより、速歩区間でのデータであるか通常歩行区間でのデータであるか区別することができる。
【0055】
移動運動パターン設定部119は、まず取得した心拍数データを、例えば主記憶部12にあらかじめ記憶させておいた速歩区間での目標心拍数と比較する(ステップS22)。取得した心拍数データが目標心拍数よりも低いと判定した場合(ステップS23:YES)、移動運動パターン設定部119は、同速歩区間での心拍数が目標心拍数に達するように、該当する速歩区間の距離を延長する(ステップS24)。この場合の距離の延長度合いは、あらかじめテストを実施して決定しておくことができる。
【0056】
次に、移動運動パターン設定部119は、取得した心拍数データを、例えば主記憶部12にあらかじめ記憶させておいた通常歩行区間での目標心拍数と比較する(ステップS25)。取得した心拍数データが目標心拍数よりも高いと判定した場合(ステップS26:YES)、移動運動パターン設定部119は、同通常歩行区間での心拍数が目標心拍数を下回るように、該当する通常歩行区間の距離を延長する(ステップS27)。この場合の距離の延長度合いは、あらかじめテストを実施して決定しておくことができる。
【0057】
移動運動パターン設定部119は、修正された歩行パターンを主記憶部12又は補助記憶部13に格納するとともに出力部15を介して出力して歩行パターン修正処理を終了する(ステップS28)。
【0058】
このように、インターバルウォーキングを行うユーザの心拍数に応じて歩行パターンを修正することにより、速歩においては必要な運動強度を得られるように心拍数を上昇させるとともに、通常歩行においては身体に負荷がかかりすぎないように十分心拍数を下げるような効果的な歩行パターンを設定することができる。
【0059】
また、インターバルウォーキングを実施している最中において、設定された歩行パターンは、ユーザに対し、運動支援装置1の出力部15を介して視覚的、もしくは聴覚的手法により提示することができる。提示をする際には振動を発生するような触覚的な手段を併用してもよく、出力されるタイミングはパターンの切り替わりと同時でもよいし、「まもなく速歩区間です」などと、事前に知らしめる方法をとってもよい。また触覚的な手段はそれ単独で報知手段として用いることもできる。これにより、効果的な運動パターンをより確実に遂行できるため、ユーザにとって適切な運動効果をもたらすことが期待できる。
【0060】
(実施形態2)
本発明の第2の実施形態について説明する。前記の実施形態に関して説明した運動支援装置1は、ユーザが通常歩行と速歩とを所定の時間間隔で繰り返すインターバルウォーキングを行う際の歩行パターンを作成する機能を備えていた。第2実施形態に係る運動支援装置1は、その機能を、ウォーキングにとどまらず、ランニング、ジョギングを含む、身体の移動運動全般に拡張して適用しようとするものである。ここでは、このようなユーザすなわちエクササイズの実施者が移動運動を行う経路における移動運動のパターン、すなわち、ランニング、ジョギング、ウォーキングを行う区間の設定を、当該経路の線形情報に基づいて調整、設定する機能が運動支援装置1によって実現される。
【0061】
<第2実施形態による運動支援装置1の構成と機能>
<<運動支援装置1の構成>>
本実施形態の運動支援装置1は、基本的に第1実施形態における運動支援装置1と同等の構成を備えている。第1実施形態との機能の差異に基づき、第1実施形態の処理部11に備えられている移動運動パターン設定部は、ウォーキングだけでなく、ランニング、ジョギング等の走行を含むパターンを設定する。
【0062】
<<運動支援装置1の機能>>
ここでは、第2実施形態における移動運動パターン設定機能を実現する移動運動パターン設定部119の機能に注目して説明する。理解を容易にするため、ランニング等の移動運動をしようとする経路の線形情報は、
図5、
図6と同一であるものとする。
【0063】
図10に、
図5に対応する経路の平面線形を例示している。本実施形態では、移動運動の形態としてウォーキング、ジョギング、ランニングの3つを想定し、それぞれ、W、J、Ruの符号で表すものとする。符号Y1、Y2はそれぞれ、、経路上の曲線を、曲線半径に応じて分類する場合に用いる閾値を示している。ここでは、Y2>Y1、すなわち、曲線半径がY1からY2へ向けて大となる、すなわち緩やかになるものとする。第2実施形態では、経路上のある区間の曲線に関して、R=Y1,Y2(Y2>Y1)を閾値として、R<Y1の場合にはウォーキングのみが、Y2>R≧Y1の場合にはウォーキング又はジョギングが、R≧Y2の場合にはウォーキング、ジョギング、又はランニングが割り当て可能となるように設定されている。このような設定により、スピードを上げて通過しにくい急曲線や曲がり角ではウォーキングが、それより緩い曲線では加えてジョギングやランニングが割り当てられ、ユーザが安全に経路上で運動することができるようにしている。
【0064】
図11に、
図6に対応する経路の縦断線形を示している。符号X1、X2はそれぞれ、、経路上の勾配を、その勾配の傾斜角度に応じて分類する場合に用いる閾値を示している。ここでは、X2>X1、すなわち、勾配がX1からX2へ向けて大となる、すなわち急になるものとする。第2実施形態においては、経路上の上り勾配U、下り勾配Dと運動形態との関係について、閾値X1,X2(X2>X1)に関し、U,D>X2の場合には、ウォーキングのみが、X2≧U,D>X1の場合にはウォーキング又はジョギングが、X1≧U,Dの場合にはウォーキング、ジョギング、又はランニングが割り当て可能であるように設定されている。これは、勾配が急になるほど走ったり歩いたりするときの脚への負担(衝撃力)が増大するため、勾配に応じてジョギングやランニングが割り当てられないようにしているものである。これにより、ユーザが運動する場合の過度の身体的負荷を予防するようにしている。なお、上り勾配Uに関しては、過度の急勾配でなければランニングやジョギングすることによってむしろ運動効果が高まる場合もあると考えられるので、適宜の閾値を設定してジョギングやランニングが割り当て可能となるようにしてもよい。
【0065】
図12に、第2実施形態に係る運動支援装置1により、
図10、
図11に例示した経路について作成した運動パターンの出力例を示している。
図12の例では、経路の概略平面線形に沿って、ランニング区間が斜線パターン部で、ジョギング区間がドットパターン部で、ウォーキング区間が白抜きブランク部として示されている。
図10,11において一定閾値を超える急勾配、急曲線として特定されていた区間はウォーキング区間に指定されていることがわかる。同時に、急勾配や急曲線が存在しない区間であっても、所定の規則性に従ってランニング、ジョギング、ウォーキングが配置されている。ランニング、ジョギング、ウォーキング各区間の距離設定や配置は、運動効果を向上すべく策定されるトレーニング計画に基づいて定めることができる。あるいは、経路線形情報に基づいて移動運動パターン設定部119が設定した運動パターンをそのまま採用するようにしてもよい。このように、移動運動パターン設定部119は、第1実施形態と同様に、ランニングやジョギングを含む移動運動を実施する経路の線形を考慮しつつ自動的に運動パターンを作成することができる。
【0066】
<第2実施形態の運動支援装置によるデータ処理>
次に第2実施形態の運動支援装置1による移動運動パターン設定処理について説明する。
図13に、移動運動パターン設定処理のデータ処理フローを例示するフローチャートを示している。移動運動パターン設定処理は、移動運動の一形態であるランニングを主体としてジョギング、ウォーキングを併用することにより効果的な運動効果を得ようとする場合に適した移動運動パターンを、経路の線形を考慮して設定するためのデータ処理である。移動運動パターン設定処理は、移動運動パターン設定のサービスを受けようとするユーザによる設定開始の操作入力によって開始される。
【0067】
ユーザは、自身が実施しようとする移動運動パターンを、入力部14を通じて入力する(ステップS31)。本実施形態では、いわゆるインターバルトレーニングにおける移動運動パターンが、ユーザの目的、嗜好等によって多岐にわたると考えられるため、初期の移動運動パターンはユーザによって与えられるものとしている。この点、例えばインターバルトレーニングのモデルパターンをサーバコンピュータ3に用意しておき、ユーザが選択できるようにしてもよい。なお、ユーザが設定する移動運動パターンは、第1実施形態の
図1に関して例示した標準歩行パターンに準じる形態で設定することができる。
【0068】
経路線形情報取得部118は、サーバコンピュータ3等の外部装置から、エクササイズを実施しようとする経路の線形情報を取得する(ステップS32)。経路線形情報の取得の態様は、第1実施形態の場合と同様である。
【0069】
移動運動パターン設定部119は、ステップS31で設定した移動運動パターンを、経路線形情報と対比する(ステップS33)。
【0070】
移動運動パターン設定部119は、設定されている運動パターンにおいて、経路線形情報と整合しない箇所があるかを判定する(ステップS34)。整合しない箇所がないと判定した場合(ステップS34:NO)、移動運動パターン設定部119は、ステップS31で設定されていた移動運動パターンを処理対象としている経路についての移動運動パターンと決定する(ステップS36)。
【0071】
ステップS34において、移動運動パターン設定部119が当初設定された運動パターンと経路線形情報との間に整合しない箇所があると判定した場合(ステップS34:YES)、移動運動パターン設定部119は、所定の閾値を超える勾配、曲線の区間に設定されているランニング、ジョギングを、ウォーキングに変更する等の修正を実行する(ステップS35)。この際、第1実施形態と同様に、移動運動パターン設定部119は、修正後の移動運動パターンにおいても、可及的に当初設定の移動運動パターンに近づけるべく、各区間の長さを調整することができるのが望ましい。
【0072】
ステップS35で修正された運動パターンは、ステップS36において対象の経路における運動パターンとして決定される。移動運動パターン設定部119は、ステップS36において決定された運動パターンを出力して処理を終了する(ステップS37)。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、ユーザの心拍数等の生体情報に基づいて、設定した移動運動パターンを修正する処理を実行させてもよい。
【0073】
以上説明したように、本発明の実施形態における運動支援装置1は、ユーザが移動運動を行う経路に関する情報である経路情報を取得する経路情報取得部としての経路線形情報取得部118と、取得した前記経路情報に基づいて、前記経路について、前記ユーザが第1の速度で歩行又は走行する区間である第1の区間と、前記ユーザが前記第1の速度より低い第2の速度で歩行又は走行する区間である第2の区間とを設定する区間設定部119とを備えている。
【0074】
このようにすれば、経路の状況に応じて、ユーザが適切な運動効果を享受することができる歩行又は走行パターンを作成することができる。
【0075】
経路線形情報取得部118は、前記ユーザが移動運動を行う経路の線形に関する情報を前記経路情報として取得し、区間設定部119は、前記ユーザが移動運動を行う経路の線形に関する情報に基づいて前記第1の区間と前記第2の区間とを設定するとしてもよい。
【0076】
このようにすれば、ユーザが歩行又は走行する経路の線形に基づいて、好適な歩行又は走行パターンを作成することができる。
【0077】
前記経路線形情報が、前記経路における位置と前記経路上の勾配との対応関係を示す勾配情報と、前記経路における位置と前記経路上の曲線との対応関係を示す曲線情報とを含んでおり、移動運動パターン設定部119は、前記経路において、前記第1の速度での歩行又は走行に適した区間として、当該区間における前記勾配が所定の閾値より小さい、及び前記曲線の半径が所定の閾値より大きいという条件を満足するように設定することができる。
【0078】
このようにすれば、経路上の急な勾配や曲線を避けて、より早く移動運動を行うべき区間を設定し、ユーザの運動効果をより高めることができる。
【0079】
前記移動運動パターン設定部119が、前記経路において、前記第1の速度で少なくとも第1の距離移動運動することと、前記第2の速度で少なくとも第2の距離移動運動することを反復するように前記第1の区間及び前記第2の区間を前記経路上に設定するとしてもよい。
【0080】
このようにすれば、ユーザの運動効果を高めるインターバルウォーキング等のインターバルトレーニングに適した移動運動パターンを作成することができる。
【0081】
移動運動パターン設定部119が、前記第1の区間を設定する場合、前記第1の区間の長さを所定の閾値以上となるように設定するとしてもよい。
【0082】
このようにすれば、より速く歩行又は走行する区間として、ユーザに適切な負荷を与えるような所定の距離を確保することができる。
【0083】
前記移動運動パターン設定部119が、前記経路上に設定された前記第1の区間及び前記第2の区間を、視覚、聴覚、及び触覚のうちの少なくともいずれかの感覚を通じて識別可能な態様で出力するとしてもよい。
【0084】
このようにすれば、ユーザは、ある移動運動の経路のために作成された歩行又は走行パターンを、視覚、聴覚、及び触覚のうちの少なくともいずれかの感覚を通じて容易に把握することができる。
【0085】
前記移動運動は、ユーザが歩くことと、ユーザが走ることとの少なくともいずれかを含んでいるとしてよい。
【0086】
このようにすれば、ウォーキング、ランニングなど、ユーザのニーズに応じた移動運動のパターンを提供することができる。
【0087】
ユーザが前記経路に沿って移動運動したときに、前記経路に沿って検出される前記ユーザの時系列の位置情報に基づいて、前記経路についての経路線形情報を取得するとしてもよい。
【0088】
このようにすれば、周回路等の移動運動のための経路をユーザが歩行又は走行することで、その経路についての経路線形情報を取得することができる。
【0089】
前記経路線形情報に、前記経路上の注目すべき場所が記録されており、前記区間設定部が、前記経路上の前記注目すべき場所の近傍を、前記第2の区間に設定するとしてもよい。
【0090】
このようにすれば、ユーザに、経路上の注目すべき場所の近傍ではよりゆっくり歩行又は走行するように促すことができる。
【0091】
前記移動運動パターン設定部119が、前記ユーザについて取得される生体情報に基づいて、前記第1の区間及び前記第2の区間又はそのいずれか一方の設定距離を調整するとしてもよい。
【0092】
このようにすれば、ユーザの心拍数等に生体情報の変化に基づいて、より速く歩行又は走行する区間とより遅く歩行又は走行する区間の距離を、よりユーザにとっての運動効果形構えられるように設定することができる。
【0093】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。換言すると、
図3の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が運動支援装置1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図3の例に限定されない。また、一つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。本実施形態における機能的構成は、演算処理を実行するプロセッサによって実現され、本実施形態に用いることが可能なプロセッサには、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを含む。
【0094】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0095】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるUSBメモリ等のリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されているROMや、補助記憶部13に含まれるハードディスク等で構成される。
【0096】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【0097】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、上記実施形態と変形例の各構成を組み合わせることも可能である。更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0098】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
ユーザが移動運動を行う経路に関する情報である経路情報を取得する経路情報取得部と、
取得した前記経路情報に基づいて、前記経路について、前記ユーザが第1の速度で移動運動する区間である第1の区間と、前記ユーザが前記第1の速度より低い第2の速度で移動運動する区間である第2の区間とを設定する区間設定部と、
を備えている情報処理装置。
[付記2]
前記経路情報取得部は、前記ユーザが移動運動を行う経路の線形に関する情報を前記経路情報として取得し、
前記区間設定部は、前記ユーザが移動運動を行う経路の線形に関する情報に基づいて前記第1の区間と前記第2の区間とを設定する、付記1に記載の情報処理装置。
[付記3]
前記経路情報が、前記経路における位置と前記経路上における勾配に関する情報と、前記経路における位置と前記経路上における曲線に関する情報とを含んでおり、前記区間設定部は、前記経路において、前記第1の速度での移動運動に適した区間として、当該区間における前記勾配が所定の閾値より小さい、及び前記曲線の半径が所定の閾値より大きいという条件を満足するように設定する、付記1または2に記載の情報処理装置。
[付記4]
前記区間設定部が、前記経路において、前記第1の速度で少なくとも第1の距離移動運動することと、前記第2の速度で少なくとも第2の距離移動運動することを反復するように前記第1の区間及び前記第2の区間を前記経路上に設定する、付記1~3のいずれかに記載の情報処理装置。
[付記5]
前記区間設定部が、前記第1の区間を設定する場合、前記第1の区間の長さを所定の閾値以上となるように設定する、付記1~4のいずれかに記載の情報処理装置。
[付記6]
前記区間設定部が、前記経路上に設定された前記第1の区間及び前記第2の区間を、視覚、聴覚、及び触覚のうちの少なくともいずれかの感覚を通じて識別可能な態様で出力する、付記1~5のいずれかに記載の情報処理装置。
[付記7]
前記移動運動は、ユーザが歩くことと、ユーザが走ることとの少なくともいずれかを含んでいる、付記1~6のいずれかに記載の情報処理装置。
[付記8]
ユーザが前記経路に沿って移動運動したときに、前記経路に沿って検出される前記ユーザの時系列の位置情報に基づいて、前記経路についての経路線形情報を取得する、付記1~7のいずれかに記載の情報処理装置。
[付記9]
前記経路線形情報に、前記経路上の注目すべき場所が記録されており、前記区間設定部が、前記経路上の前記注目すべき場所の近傍を、前記第2の区間に設定する、付記1~8のいずれかに記載の情報処理装置。
[付記10]
前記区間設定部が、前記ユーザについて取得される生体情報に基づいて、前記第1の区間及び前記第2の区間又はそのいずれか一方の設定距離を調整する、付記1~9のいずれかに記載の情報処理装置。
[付記11]
情報処理装置が、
ユーザが移動運動する経路に関する情報である経路情報を取得する処理と、
取得した前記経路情報に基づいて、前記経路について、前記ユーザが第1の速度で移動する区間である第1の区間と、前記ユーザが前記第1の速度より低い第2の速度で移動する区間である第2の区間とを設定する処理と、
を実行する情報処理方法。
[付記12]
情報処理装置に、
ユーザが移動運動する経路に関する情報である経路情報を取得する処理と、
取得した前記経路情報に基づいて、前記経路について、前記ユーザが第1の速度で移動する区間である第1の区間と、前記ユーザが前記第1の速度より低い第2の速度で移動する区間である第2の区間とを設定する処理と、
を実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0099】
S 運動支援システム
1 運動支援装置
2 端末装置
3 サーバコンピュータ
11 処理部
117 ユーザ情報取得部
118 経路線形情報取得部
119 移動運動パターン設定部