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特開2023-137867電動アクチュエータ、電動アクチュエータの取外方法および電動アクチュエータの取付方法
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  • 特開-電動アクチュエータ、電動アクチュエータの取外方法および電動アクチュエータの取付方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137867
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ、電動アクチュエータの取外方法および電動アクチュエータの取付方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20230922BHJP
   E02B 13/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A01G25/00 501E
A01G25/00 501D
E02B13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044280
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】平尾 和弘
(72)【発明者】
【氏名】井内 友昭
(72)【発明者】
【氏名】四元 友治
(72)【発明者】
【氏名】西沢 博貴
(57)【要約】      (修正有)
【課題】送水制御装置に対する脱着作業を容易に行うことができる電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】電動アクチュエータは、本体ケース44を有するアクチュエータ本体40と、本体ケースの下端部に着脱可能に取り付けられる取付台42とを備える。取付台は、本体ケースの下端部に嵌め入れられる嵌合部72と、嵌合部に形成されるねじ孔72aとを有する。本体ケースは、ねじ孔と対応する位置に形成される挿通孔68、挿通孔から本体ケースの下端まで延びるスリット80、およびねじ38の頭部38aによって係止される抜止部を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を備える送水制御装置に取り付けられて、前記変位機構を作動させる電動アクチュエータであって、
前記変位機構を駆動する駆動機構と、前記駆動機構を収容する縦筒状の本体ケースとを有するアクチュエータ本体、および
前記本体ケースの下端部にねじを用いて着脱可能に取り付けられる取付台を備え、
前記取付台は、
前記本体ケースの下端部に嵌め入れられる嵌合部、および
前記嵌合部に形成され、前記ねじと螺合するねじ孔を有し、
前記本体ケースは、
前記ねじ孔と対応する位置に形成され、前記ねじの軸部が挿通される挿通孔、
前記挿通孔から前記本体ケースの下端まで延びるように形成され、前記ねじの軸部の上下方向の通過を許容するスリット、および
前記スリットの両側または前記挿通孔の周縁部に形成され、前記ねじの頭部によって係止されることで当該本体ケースの上方向への抜けを防止する抜止部を備える、電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記抜止部は、前記挿通孔の周縁部に形成され、前記ねじの頭部の少なくとも一部が入り込む窪み部を含む、請求項1記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記抜止部は、前記スリットの両側に形成され、前記本体ケースの外側面から突出する突出部を含む、請求項1記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記本体ケースは、前記ねじの頭部の上側の位置において当該本体ケースの外側面から突出し、前記突出部と同じ突出高さを有する目安部を備える、請求項3記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記送水制御装置に取り付けられた請求項1から4のいずれかに記載の電動アクチュエータを当該送水制御装置から取り外す電動アクチュエータの取外方法であって、
(a)前記ねじの頭部による前記抜止部の係止が解除されるまで前記ねじを緩めるステップ、および
(b)前記ステップ(a)の後、前記ねじを前記取付台に取り付けたまま、前記スリットに前記ねじの軸部を通しつつ前記本体ケースを持ち上げることで、前記アクチュエータ本体を前記取付台から取り外すステップを含む、電動アクチュエータの取外方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)の後、前記取付台は、前記送水制御装置に取り付けたままにしておく、請求項5記載の電動アクチュエータの取外方法。
【請求項7】
前記送水制御装置に請求項1から4のいずれかに記載の電動アクチュエータを取り付ける電動アクチュエータの取付方法であって、
(a)前記送水制御装置に前記取付台を取り付けるステップ、
(b)前記取付台の前記ねじ孔に前記ねじを所定回転分だけ螺合させて取り付けるステップ、および
(c)前記ステップ(b)の後、前記スリット内に前記ねじの軸部を通しつつ前記本体ケースの下端部に前記取付台の前記嵌合部を嵌め入れ、前記ねじを締め付けることで前記取付台に前記アクチュエータ本体を固定するステップを含む、電動アクチュエータの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動アクチュエータ、電動アクチュエータの取外方法および電動アクチュエータの取付方法に関し、特にたとえば、圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を備える送水制御装置に取り付けられて変位機構を作動させる、電動アクチュエータ、電動アクチュエータの取外方法および電動アクチュエータの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動アクチュエータの一例が特許文献1に開示される。特許文献1の電動アクチュエータは、給水栓の上に取り付けられて弁体(開閉機構)を駆動する装置であって、モータ等の駆動機構が収容される本体ケースを備える。本体ケースは、その下端部に着脱可能に設けられる取付台を有しており、本体ケースと取付台とは、複数のねじによって連結固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-89317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術を雪の多い地域(いわゆる豪雪地帯)に適用すると、積雪量が多くなったときに、雪の重み等で電動アクチュエータが損傷してしまう恐れが生じる。このため現状では、冬場の休耕期などには送水制御装置から電動アクチュエータを取り外すことで対応している。
【0005】
しかしながら、特許文献1の電動アクチュエータを送水制御装置から取り外す際には、送水制御装置の軸と電動アクチュエータの回転軸とを切り離すと共に、アクチュエータ本体と取付台とを連結固定している複数のねじを取り外さなければならない。このため、電動アクチュエータの設置台数が多い場合には、その取外作業およびその後の取付作業(つまり脱着作業)には労力を要する。特に、送水制御装置が桝内に設置されている場合には、空間に余裕がないので、ねじ回し(スクリュードライバ)を使うことができず、L型レンチなどを用いてねじを取り外すことになり、より労力を要する。また、取り外したねじを落として紛失してしまうという問題も生じる。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、電動アクチュエータ、電動アクチュエータの取外方法および電動アクチュエータの取付方法を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、送水制御装置に対する脱着作業を容易に行うことができる、電動アクチュエータ、電動アクチュエータの取外方法および電動アクチュエータの取付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を備える送水制御装置に取り付けられて、変位機構を作動させる電動アクチュエータであって、変位機構を駆動する駆動機構と、駆動機構を収容する縦筒状の本体ケースとを有するアクチュエータ本体、および本体ケースの下端部にねじを用いて着脱可能に取り付けられる取付台を備え、取付台は、本体ケースの下端部に嵌め入れられる嵌合部、および嵌合部に形成され、ねじと螺合するねじ孔を有し、本体ケースは、ねじ孔と対応する位置に形成され、ねじの軸部が挿通される挿通孔、挿通孔から本体ケースの下端まで延びるように形成され、ねじの軸部の上下方向の通過を許容するスリット、およびスリットの両側または挿通孔の周縁部に形成され、ねじの頭部によって係止されることで当該本体ケースの上方向への抜けを防止する抜止部を備える、電動アクチュエータである。
【0009】
第1の発明では、電動アクチュエータは、アクチュエータ本体と取付台とを備える。アクチュエータ本体は、駆動機構とこれを収容する縦筒状の本体ケースとを有する。取付台は、電動アクチュエータを送水制御装置に取り付けるための取付台であって、本体ケースの下端部に対して、ねじを用いて着脱可能に取り付けられる。この取付台は、本体ケースの下端部に嵌め入れられる嵌合部と、嵌合部に形成されるねじ孔とを有する。また、本体ケースは、ねじ孔と対応する位置に形成され、ねじの軸部が挿通される挿通孔を有する。そして、本体ケースには、挿通孔から本体ケースの下端まで延びるスリットが形成される。このスリットは、ねじの軸部の上下方向の通過を許容する幅を有している。このようなスリットを本体ケースが有することで、ねじを少し緩めるだけで、アクチュエータ本体を取付台から上方向に取り外すことが可能になる。さらに、本体ケースには、スリットの両側または挿通孔の周縁部に、ねじの頭部によって係止されることで本体ケースの上方向への抜けを防止する抜止部が形成される。このような抜止部を本体ケースが有することで、万一ねじが緩んでしまった場合でも、本体ケースの上方向への抜けが防止され、アクチュエータ本体の転倒が防止される。
【0010】
第1の発明によれば、挿通孔から本体ケースの下端まで延びるスリットを本体ケースに形成したので、ねじを緩めるだけでアクチュエータ本体と取付台とを分離することができる。したがって、送水制御装置に対する電動アクチュエータの脱着作業を容易にかつ短時間で実行できると共に、ねじの紛失も防止できる。また、本体ケースに抜止部を形成したので、スリットを形成したことに起因するアクチュエータ本体の転倒を適切に防止できる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、抜止部は、挿通孔の周縁部に形成され、ねじの頭部の少なくとも一部が入り込む窪み部を含む。
【0012】
第2の発明では、挿通孔の周縁部に形成した窪み部が抜止部として用いられる。
【0013】
第3の発明は、第1の発明に従属し、抜止部は、スリットの両側に形成され、本体ケースの外側面から突出する突出部を含む。
【0014】
第3の発明では、スリットの両側に形成された突出部が抜止部として用いられる。
【0015】
第4の発明は、第3の発明に従属し、本体ケースは、ねじの頭部の上側の位置において当該本体ケースの外側面から突出し、突出部と同じ突出高さを有する目安部を備える。
【0016】
第4の発明によれば、ねじの頭部による突出部(抜止部)の係止が解除されているかどうかを容易に目視で確認することができる。
【0017】
第5の発明は、送水制御装置に取り付けられた第1から第4のいずれかの発明に係る電動アクチュエータを当該送水制御装置から取り外す電動アクチュエータの取外方法であって、(a)ねじの頭部による抜止部の係止が解除されるまでねじを緩めるステップ、および(b)ステップ(a)の後、ねじを取付台に取り付けたまま、スリットにねじの軸部を通しつつ本体ケースを持ち上げることで、アクチュエータ本体を取付台から取り外すステップを含む、電動アクチュエータの取外方法である。
【0018】
第5の発明によれば、水制御装置に対する電動アクチュエータの取外作業を容易にかつ短時間で行うことができる。
【0019】
第6の発明は、第5の発明に従属し、ステップ(b)の後、取付台は、送水制御装置に取り付けたままにしておく。
【0020】
第6の発明によれば、送水制御装置に電動アクチュエータを再度取り付ける(再設置する)ときの作業負担を低減できる。
【0021】
第7の発明は、送水制御装置に第1から第4のいずれかの発明に係る電動アクチュエータを取り付ける電動アクチュエータの取付方法であって、(a)送水制御装置に取付台を取り付けるステップ、(b)取付台のねじ孔にねじを所定回転分だけ螺合させて取り付けるステップ、および(c)ステップ(b)の後、スリット内にねじの軸部を通しつつ本体ケースの下端部に取付台の嵌合部を嵌め入れ、ねじを締め付けることで取付台にアクチュエータ本体を固定するステップを含む、電動アクチュエータの取付方法である。
【0022】
第7の発明によれば、送水制御装置に対する電動アクチュエータの取付作業を容易にかつ短時間で実行できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、送水制御装置に対する電動アクチュエータの脱着作業を容易にかつ短時間で実行できると共に、ねじの紛失も防止できる。また、スリットを形成したことに起因するアクチュエータ本体の転倒を適切に防止できる。
【0024】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の一実施例である電動アクチュエータを備える圃場水管理システムを示す図である。
図2】給水栓の一例を示す断面図である。
図3】電動アクチュエータを示す断面図である。
図4】アクチュエータ本体を示す断面図である。
図5】取付台を示す断面図である。
図6】電動アクチュエータを取り付けた給水栓を示す断面図である。
図7】電動アクチュエータが備える本体ケースの挿通孔周辺部分を示す図である。
図8】電動アクチュエータが備える本体ケースの挿通孔周辺部分を示す断面図である。
図9】取付台からアクチュエータ本体を取り外すときの作業工程を説明するための図である。
図10】この発明の他の実施例の電動アクチュエータが備える本体ケースの挿通孔周辺部分を示す図である。
図11図10の本体ケースの挿通孔周辺部分を示す斜視図である。
図12】この発明のさらに他の実施例の電動アクチュエータが備える本体ケースの挿通孔周辺部分を示す斜視図である。
図13】この発明のさらに他の実施例の電動アクチュエータが備える本体ケースの挿通孔周辺部分を示す斜視図である。
図14図13に示す実施例において取付台からアクチュエータ本体を取り外すときの作業工程を説明するための図である。
図15】この発明のさらに他の実施例の電動アクチュエータで用いるねじを示す図である。
図16図15に示すねじを用いてアクチュエータ本体と取付台とを固定した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照して、この発明の一実施例である電動アクチュエータ16は、圃場100に設置される給水栓12および落水口14などの送水制御装置に取り付けられて、送水制御装置が有する変位機構を作動させる。詳細は後述するように、電動アクチュエータ16は、モータ50等の駆動機構を有するアクチュエータ本体40と、送水制御装置に対して電動アクチュエータ16(アクチュエータ本体40)を取り付けるための取付台42とを備える。
【0027】
この実施例では、電動アクチュエータ16は、圃場水管理システム10に用いられる。以下では、先ず、圃場水管理システム10の構成の一例について簡単に説明する。ただし、圃場水管理システム10の構成(給水栓12、落水口14および電動アクチュエータ16の具体的構成など)については、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0028】
図1に示すように、圃場水管理システム10は、圃場100の水管理を遠隔操作または予め記憶されたプログラムに基づく自動制御などによって行う圃場用設備である。この実施例では、圃場水管理システム10は、給水栓12と落水口14とを備えており、給水栓12および落水口14のそれぞれには、電動アクチュエータ16が取り付けられる。つまり、給水栓12および落水口14の変位機構を駆動する電動アクチュエータとしては、同じ構造を有する電動アクチュエータ16が用いられる。
【0029】
図示は省略するが、圃場100には、圃場水位を検出する超音波センサ等の水位センサ、気温や水温を検出する各温度センサ、気圧を検出する圧力センサ、土壌水分を検出する土壌水分センサ等のセンサ端末が適宜設けられる。センサ端末は、配線を介して電動アクチュエータ16と接続される。或いは、無線により管理サーバ等に接続される。
【0030】
また、この実施例では、圃場水管理システム10は、畦畔102によって区画された複数の耕作区を含むシステムとなっている。給水栓12および落水口14のそれぞれは、各耕作区に設置され、これらに取り付けられた各電動アクチュエータ16は、特定小電力無線規格(920MHz帯)に従った無線通信方法によって中継機(親機)と無線通信可能に接続される。そして、各電動アクチュエータ16は、この中継機およびネットワーク上に設けられた管理サーバ等を経由して、ユーザが所有するスマートフォン、タブレット端末、PDAおよびPCのような遠隔操作端末と無線通信可能に接続される。ただし、電動アクチュエータ16は、中継機を介さずに、管理サーバまたは遠隔操作端末などの外部機器と無線通信を行うようにしてもよい。
【0031】
なお、この無線通信においては、クラウドコンピューティングを利用するとよい。たとえば、各電動アクチュエータ16で取得された情報(給水栓12のバルブ開度および落水口14の排水口高さなどの送水制御装置の状態に関する情報、およびセンサ端末から受信した圃場水位などのセンサ情報など)を管理サーバの一例であるクラウドサーバに随時送信して記憶しておく。ユーザは、遠隔操作端末からクラウドサーバにアクセスすることで、各電動アクチュエータ16で取得された情報を確認し、遠隔操作端末を用いて各電動アクチュエータ16を遠隔操作することで、圃場100の水管理を行うことができる。
【0032】
給水栓12(給水バルブ)は、圃場100への給水を制御するための給水装置であって、弁軸および弁体などを含む変位機構を有する。この実施例では、一般的に広く普及している、弁軸の軸回転に伴い弁軸及び弁体が上下動する方式の給水栓12を用いている。
【0033】
図2を参照して簡単に説明すると、給水栓12は、円筒状の弁箱20を備える。弁箱20の上半部は、ドーム状の飛散防止カバー22によって覆われており、弁箱20の側壁上部には、複数の吐水口24が周方向に並ぶように形成される。また、弁箱20の上端部には、内周面に雌ねじが形成された軸受26が設けられ、この軸受26には、飛散防止カバー22を貫通するように、外周面に雄ねじが形成された弁軸28が螺合されている。この弁軸28の下端には、下面に止水ゴム30aを有する円板状の弁体30が設けられる。また、弁箱20内の略中央部には、通水口32aを有する弁座32が設けられる。このような給水栓12において、弁軸28に対して軸線回りの回転力が加えられると、送りねじ機構によって弁軸28および弁体30が上下動し、弁座32の通水口32aが開閉される。すなわち、この実施例の給水栓12は、弁軸28の回転に伴い上下動する弁体30を含む変位機構を備える。
【0034】
図1に戻って、このような給水栓12は、畦畔102に設けられた給水桝104内に配置され、畦畔102の下に敷設される用水パイプライン106から分岐して圃場100内まで延びる分岐管108の下流側端部に取り付けられる。そして、給水栓12の上には、電動アクチュエータ16が取り付けられ、電動アクチュエータ16によって給水栓12の変位機構(弁軸28および弁体30)が作動される。
【0035】
一方、落水口14は、圃場100からの排水を制御するための排水装置であって、仕切体などを含む変位機構を有する。この実施例では、水位設定機能を有する落水口14を用いている。簡単に説明すると、落水口14は、上端開口が排水口として機能する円筒状の仕切体34を備えており、この仕切体34が上下動することで、排水口を任意の高さに調整することが可能である。
【0036】
このような落水口14は、畦畔102に設けられた排水桝110内に配置され、排水路112まで延びる排水管114の上流側端部に取り付けられる。そして、落水口14には、電動アクチュエータ16が取り付けられ、電動アクチュエータ16によって落水口14の変位機構(仕切体34)が上下動される。ただし、落水口14に電動アクチュエータ16を取り付ける際には、電動アクチュエータ16の回転軸56(図3参照)の回転力を上下方向(軸方向)の力に変換して仕切体34に伝達可能なアダプタ36が用いられる。
【0037】
図1と共に図3を参照して、電動アクチュエータ16は、給水栓12および落水口14などの送水制御装置の変位機構を作動させるための装置であって、アクチュエータ本体40と、送水制御装置にアクチュエータ本体40を取り付けるための取付台42とを備える。
【0038】
図3および図4に示すように、アクチュエータ本体40は、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成された縦筒状(この実施例では円筒状)の本体ケース44を備える。
【0039】
本体ケース44の上には、太陽電池パネル60が着脱可能に取り付けられる。太陽電池パネル60は、屈曲板状の金属製の保持体62によって所定角度となるように支持される。
【0040】
また、本体ケース44の内部には、電子基板46と、蓄電池48と、モータ50およびメインギア52等を含む駆動機構とが収容される。
【0041】
電子基板46には、図示は省略するが、CPUおよびメモリ等を含む制御部、および無線通信モジュール等を含む無線通信部などが配設される。制御部には、モータ50、操作パネル58、無線通信部およびセンサ端末などが電気的に接続される。制御部のCPUは、電動アクチュエータ16の全体制御を司り、モータ50等の駆動を制御する。メモリは、ROM、RAMおよびHDDなどを包括的に示したものであり、電動アクチュエータ16の動作を制御する制御プログラムを記憶したり、CPUが動作する際のワークエリアとして機能したりする。また、無線通信部は、アンテナと接続され、アンテナを介して中継機などの外部機器と無線通信を行う。
【0042】
蓄電池48は、太陽電池パネル60によって発電された電力を蓄電する。モータ50は、蓄電池48に蓄えられた電力によって駆動される。このモータ50の出力軸50aの先端部には、小ギア54が設けられており、メインギア52は、この小ギア54と連結されることで、モータ50からの駆動力を受けて軸線回りに回転する。
【0043】
メインギア52は、両ボス型のギアであり、メインギア52の軸部には、略円柱状の回転軸56が挿通される。この回転軸56の下端部には、給水栓12の弁軸28の上端部などと連結されるカップリング部56aが形成される。また、メインギア52の軸部の内周面には、軸方向に沿って延びるキー溝52aが形成され、回転軸56の外周面には、キー溝52aと嵌合される滑りキー56bが軸方向に沿って延びるように形成される。これによって、回転軸56は、メインギア52が回転すると共に回転し、かつメインギア52の軸部に対して軸方向に摺動可能となる。
【0044】
また、本体ケース44の外側面には、使用者による操作指示を受け付けるための操作パネル58が設けられる。操作パネル58には、主電源スイッチ、上昇ボタン、下降ボタン、および電動アクチュエータ16の動作モード(遠隔モード、自動モードまたは手動モード等)を切り替えるための選択ボタン等が適宜設けられる。この操作パネル58には、センサ端末から延びる配線を接続するための接続端子なども設けられる。
【0045】
さらに、本体ケース44の上端部には、その外側面から外方に突出するハンドル部64(把持部)が設けられる。ハンドル部64は、円環板状(鍔状)または棒状などに形成される。このようなハンドル部64を設けることで、アクチュエータ本体40を持ち上げ易くなる。また、本体ケース44の下部には、回転軸56などの動作確認および清掃などの維持管理作業を行うための点検口66が形成される。
【0046】
さらにまた、本体ケース44の下端部には、周方向に所定間隔で並ぶ複数(この実施例では、点検口66が形成された方向を除く3方向に3つ)の挿通孔68が形成される。複数の挿通孔68は、ねじ38の軸部38b(図9参照)が挿通される部分であり、後述する取付台42のねじ孔72aと対応する位置に形成される。
【0047】
図3および図5に示すように、取付台42は、本体ケース44の下端部にねじ38を用いて着脱可能に取り付けられる。この取付台42は、本体ケース44の底壁としても用いられる。取付台42は、送水制御装置に取り付けられる円板状の取付台本体70を備え、アルミニウムおよびステンレス等の金属または合成樹脂によって形成される。取付台本体70の中央部には、送水制御装置の軸(弁軸28など)が挿通される通孔70aが形成される。また、取付台本体70には、通孔70aの周囲に、複数の取付孔70bが形成されており、この取付孔70bを用いて給水栓12の上面などに取付台42(延いては電動アクチュエータ16)がねじ止めされる。
【0048】
また、取付台本体70の周縁部には、短円筒状の嵌合部72が上方に突出するように設けられる。嵌合部72は、電動アクチュエータ16の本体ケース44の下端部に嵌め込まれる部分であり、この嵌合部72には、周方向に所定間隔で並ぶ複数のねじ孔72aが形成される。ねじ孔72aの内周面には、ねじ38の軸部38b(図9参照)に形成される雄ねじと螺合する雌ねじが形成されている。また、取付台本体70の周縁部には、嵌合部72よりも外方に突出する鍔状の支持部74が形成される。この支持部74によって本体ケース44の下端を支持すると共に、挿通孔68を介してねじ孔72aにねじ38を締結することで、本体ケース44の下端部に取付台42が着脱可能に連結固定される(図3参照)。
【0049】
図6に示すように、給水栓12に電動アクチュエータ16を取り付ける際には、先ず、アクチュエータ本体40から取付台42を取り外し、取付台本体70を軸受26に対してねじ止めすることで、給水栓12の上に取付台42を固定する。次に、取付台42の嵌合部72を本体ケース44の下端部に嵌め入れるようにして、取付台42上にアクチュエータ本体40を載置する。その後、給水栓12の弁軸28の上端部と電動アクチュエータ16の回転軸56のカップリング部56aとを回転不可に連結すると共に、ねじ38を用いて本体ケース44と取付台42とを固定する。
【0050】
電動アクチュエータ16を取り付けた給水栓12においては、たとえば、ユーザが遠隔操作端末を用いて管理サーバにアクセスし、給水栓12を全閉、全開または任意の開度とするため等の操作指示(制御信号)を送信すると、この操作指示に応じた制御信号が管理サーバから中継機を介して電動アクチュエータ16に対して送信される。電動アクチュエータ16の制御部は、受信した制御信号に応じてモータ50を駆動させる。このモータ50の駆動力は、メインギア52に伝達されて、メインギア52と共に回転軸56が回転する。これにより、回転軸56に固定的に連結された給水栓12の弁軸28に対して、回転力が付与される。回転力が加えられた弁軸28は、機構によって上下動され、弁体30が全開位置および全閉位置などに移動される。
【0051】
同様に、図示は省略するが、落水口14に電動アクチュエータ16を取り付ける際には、先ず、アクチュエータ本体40から取付台42を取り外し、取付台本体70を落水口14に設けた台座に対してねじ止めすることで、落水口14の上に取付台42を固定する。次に、取付台42の嵌合部72を本体ケース44の下端部に嵌め入れるようにして、取付台42上にアクチュエータ本体40を載置する。その後、アダプタ36の連結軸の上端部を回転軸56のカップリング部56aに対して回転不可に連結すると共に、ねじ38を用いて本体ケース44と取付台42とを固定する。電動アクチュエータ16を取り付けた落水口14においては、ユーザが落水口14の排水口高さ(仕切体34の高さ位置)を設定するための操作指示を送信すると、電動アクチュエータ16の制御部は、制御信号に応じてモータ50を駆動させ、落水口14の排水口高さを変更する。
【0052】
このような電動アクチュエータ16は、冬場の休耕期などには送水制御装置から取り外される。したがって、電動アクチュエータ16の取外作業およびその後の取付作業(つまり脱着作業)は、容易に実行できることが好ましい。特に、複数のねじを取り外すことには労力を要し、また、取り外したねじを落として紛失してしまうという問題も生じるので、ねじの取外作業を簡略化できることが好ましい。
【0053】
そこで、この実施例では、本体ケース44の下端部に対して以下の構成を採用することで、電動アクチュエータ16の脱着作業を容易に行えるようにした。以下、具体的に説明する。
【0054】
図7および図8に示すように、本体ケース44の下端部(取付台42の嵌合部72との嵌合部分)には、取付台42のねじ孔72aと対応する位置に、複数の挿通孔68が形成される。挿通孔68は、ねじ38の軸部38bの径と同じか少し大きい径を有する。
【0055】
また、本体ケース44の下端部には、挿通孔68のそれぞれから本体ケース44の下端まで延びるスリット80が形成される。これらスリット80は、ねじ38の軸部38bの上下方向の通過を許容する幅、つまりねじ38の軸部38bの径と同じか少し大きい幅を有している。このようなスリット80を本体ケース44に形成することで、ねじ38を少し(たとえば2回転分)緩めるだけで、アクチュエータ本体40を取付台42から取り外す(上方向に引き抜く)ことが可能になる。したがって、電動アクチュエータ16の脱着作業を簡略化することができる。
【0056】
ただし、本体ケース44の下端部に単にスリット80を形成するだけでは、万一ねじ38が緩んでしまった場合に、取付台42に対してアクチュエータ本体40が上下方向に移動可能となり、力がかかるとアクチュエータ本体40が転倒する恐れが生じる。そこで、この実施例では、本体ケース44(延いてはアクチュエータ本体40)の上方向への抜けを防止する抜止部を本体ケース44の下端部外側面に形成するようにした。
【0057】
具体的には、この実施例では、挿通孔68の周縁部にねじ38の頭部38aの径と同じか少し大きい径を有する円環状の窪み部82を形成し、この窪み部82(具体的には、窪み部82の内周面下端部)を抜止部として用いる。すなわち、本体ケース44の下端部外側面には、挿通孔68の周縁部に、ねじ38の頭部38aの少なくとも一部が入り込む窪み部82が形成される。そして、この窪み部82がねじ38の頭部38aによって係止されることで、取付台42からの本体ケース44の上方向への抜けが防止される。窪み部82の深さD、つまり抜止部とねじ38の頭部38aとの係止幅は、想定されるねじ38の緩み量に安全率を掛け合わせた大きさに設定され、たとえば1.5mm(M5のねじ38を用いるとしてその2回転分に相当)である。これにより、万一ねじ38が緩んでしまった場合でも、抜止部である窪み部82とねじ38の頭部38aとの係合が適切に保持される。
【0058】
次に、図9を参照して、送水制御装置に取り付けられた電動アクチュエータ16を送水制御装置から取り外す方法(電動アクチュエータ16の取外方法)について説明する。図9(a)に示すように、送水制御装置に電動アクチュエータ16を取り付けた状態では、送水制御装置に連結固定された取付台42に対して、アクチュエータ本体40の本体ケース44の下端部がねじ38によって連結固定されている。この状態では、ねじ38とねじ孔72aとの締結力によって、本体ケース44の下端部がねじ38の頭部38aと取付台42の嵌合部72との間で締め付けられる(挟み込まれる)ことで、取付台42と本体ケース44とが強固に連結固定されている。また、万一ねじ38が緩んでしまった場合でも、窪み部82がねじ38の頭部38aによって係止されることで、取付台42からの本体ケース44の上方向への抜けが防止される。
【0059】
そして、送水制御装置から電動アクチュエータ16を取り外すときには、先ず、図9(b)に示すように、ねじ38の頭部38aによる窪み部82の係止が解除されるまで、つまりねじ38の頭部38a全体が窪み部82の外に出るまで、ねじ38を緩める。この実施例では、窪み部82の深さDは、ねじ38の2回転分に相当する大きさであるので、ねじ38を2回転+α(たとえば3~4回転分)だけ緩めるとよい。次に、送水制御装置の軸の上端部と電動アクチュエータ16の回転軸56のカップリング部56aとの連結を解除する。その後、ねじ38を取付台42のねじ孔72aに取り付けたまま、スリット80にねじ38の軸部38bを通しつつ本体ケース44を持ち上げることで、アクチュエータ本体40を取付台42(延いては送水制御装置)から取り外す。
【0060】
アクチュエータ本体40を取付台42から取り外した後、送水制御装置に残された取付台42およびねじ38は、送水制御装置から取り外してもよいが、送水制御装置に取り付けたまま電動アクチュエータ16の取外作業を終了することが好ましい。冬場の休耕期などが終わって送水制御装置に電動アクチュエータ16を再度取り付ける(再設置する)際に、取付台42およびねじ38をそのまま用いることで、電動アクチュエータ16の取付作業をより簡略化できるからである。
【0061】
続いて、送水制御装置に電動アクチュエータ16を取り付ける方法(電動アクチュエータ16の取付方法)について説明する。ここでは先ず、アクチュエータ本体40から取付台42を取り外した後、送水制御装置に取付台42を取り付ける。すなわち、取付台本体70に形成される取付孔70bを用いて送水制御装置に取付台42をねじ止めする。次に、取付台42のねじ孔72aにねじ38を所定回転分だけ螺合させて取り付ける。すなわち、ねじ38の頭部38aと取付台42の嵌合部72との間を本体ケース44の下端部が通過できるだけのねじ38の軸部38bの長さを残して、ねじ孔72aにねじ38を取り付ける。アクチュエータ本体40が無い状態で取付台42にねじ38を取り付けることで、アクチュエータ本体40が邪魔になることなく、取付台42に対してねじ38を容易に取り付けることができる。
【0062】
ただし、取付台42のねじ孔72aにねじ38を取り付けてから、送水制御装置に取付台42を取り付けることもできる。また、送水制御装置に対して電動アクチュエータ16を再設置する場合であって、前回の電動アクチュエータ16の取外時に取付台42およびねじ38を送水制御装置に取り付けたままにしておいた場合には、この取付台42およびねじ38の取付作業は省略される。
【0063】
取付台42およびねじ38の取付作業が終了すると、スリット80内にねじ38の軸部38bを通しつつ、本体ケース44の下端部に取付台42の嵌合部72を嵌め入れることで、取付台42上にアクチュエータ本体40を載置する。その後、ねじ38を完全に締め付けることで、取付台42にアクチュエータ本体40を連結固定する。また、送水制御装置の軸の上端部と電動アクチュエータ16の回転軸56のカップリング部56aとを回転不可に連結する。なお、ねじ38の締付作業とカップリング部56aの連結作業とは、どちらを先に行っても構わない。以上により、電動アクチュエータ16の取付作業が終了する。
【0064】
以上のように、この実施例によれば、挿通孔68から本体ケース44の下端まで延びるスリット80を本体ケース44に形成したので、ねじ38を取り外すことなく、ねじ38を緩めるだけでアクチュエータ本体40と取付台42とを分離することができる。したがって、送水制御装置に対する電動アクチュエータ16脱着作業を容易にかつ短時間で実行できると共に、ねじ38の紛失も防止できる。
【0065】
また、本体ケース44に抜止部(窪み部82)を形成したので、万一ねじ38が緩んでしまった場合でも、本体ケース44の上方向への抜けが防止される。したがって、スリット80を形成したことに起因するアクチュエータ本体40の転倒を適切に防止できる。
【0066】
なお、図10および図11に示す実施例のように、スリット80の下端部(下端角部)には、下方に向かうに従って幅広となるテーパ状の第1面取部84を形成することもできる。これにより、本体ケース44の下端部に取付台42の嵌合部72を嵌め入れるときに、ねじ38の軸部38bがスリット80内に入り易くなる。また、本体ケース44の下端の外側面側角部には、下方に向かうに従い縮径するテーパ状の第2面取部86を形成することもできる。これにより、本体ケース44の下端部に取付台42の嵌合部72を嵌め入れるときに、ねじ38の頭部38aと取付台42の嵌合部72との間に本体ケース44の下端部が入り易くなる。
【0067】
また、上述の実施例では、ねじ38の頭部38aによって係止される抜止部として窪み部82を用いたが、これに限定されない。図12に示す実施例のように、スリット80の両側において、本体ケース44の外側面から突出する突出部88を形成し、これら突出部88(具体的には、突出部88の上面)を抜止部として用いることもできる。
【0068】
さらに、突出部88を抜止部として用いる場合には、図13に示す実施例のように、ねじ38の頭部38aの上側の位置において、本体ケースの外側面から突出する目安部90を形成するとよい。この目安部90は、突出部88と同じ突出高さを有しており、ねじ38の頭部38aによる突出部88の係止が解除されているかどうかを目視で確認するための目安として用いられる。
【0069】
すなわち、図14(a)に示すように、ねじ38の頭部38aが目安部90の外面(突出端面)よりも内側に入り込んでいる場合には、ねじ38の頭部38aによって突出部88が係止されている状態であると判断できる。一方、図14(b)に示すように、ねじ38の頭部38a全体が目安部90の外面よりも外側に出た場合には、ねじ38の頭部38aによる突出部88の係止が解除された状態であると判断できる。送水制御装置が桝内に設置されている場合、ねじ38の緩め量はねじ38を上方から見て確認することになるが、ねじ38の頭部38aよりも下側に配置される突出部88と頭部38aとの位置関係は分かり難い。これに対して、図13に示す実施例のように目安部90をねじ38の頭部38aよりも上側に配置しておくことで、ねじ38の頭部38aによる突出部88の係止が解除されているかどうかを容易に目視で確認することができる。
【0070】
ただし、この発明で言う「同じ」突出高さとは、厳密に同じのみを意味するのではなく、「ほぼ同じ」という意味も含む概念として使用している。たとえば、目安部90の突出高さは、突出部88の突出高さよりも少し大きくても構わない。
【0071】
さらに、図15および図16に示す実施例のように、ねじ38の頭部38aの先端部には、外側面から外方に突出する円環状の鍔部38cを形成することもできる。この鍔部38cは、本体ケース44の外側面に対する締付面として機能する。このように、ねじ38の頭部38aに形成した鍔部38cによって本体ケース44の外側面を押え付ける(つまり厚みの大きい部分を押え付ける)ことで、本体ケース44の厚みが薄い場合でも、ねじ38の締付力によって本体ケース44が破損してしまうことを防止できる。
【0072】
なお、上述の各実施例では、本体ケース44を円筒状に形成しているが、角筒状などに形成することもできる。この場合、取付台42の嵌合部72も短角筒状などになり、挿通孔68およびねじ孔72aなどは、平面部に形成されることになる。
【0073】
また、上述の各実施例では、電動アクチュエータ16の本体ケース44の内部に、電子基板46、蓄電池48、モータ50およびメインギア52等を収容しているが、これに限定されない。たとえば、モータ50およびメインギア52等の駆動機構のみを本体ケース44内に収容し、電子基板46および蓄電池48などは、本体ケース44の外部に設けた他のケース内に配置することもできる。すなわち、駆動機構を含む駆動装置と電子基板46(制御部)を含む制御装置とに電動アクチュエータ16を分割し、送水制御装置に取り付ける部分を駆動装置のみで構成することもできる。
【0074】
また、上述の各実施例では、電動アクチュエータ16は、太陽電池パネル60を備えるようにしたが、容量の大きい蓄電池48を用いる場合には、必ずしも太陽電池パネル60を備える必要はない。また、商用電源などの他の電源を使用できる環境に圃場水管理システム10が適用される場合には、電動アクチュエータ16は、必ずしも太陽電池パネル60および蓄電池48を備える必要はない。
【0075】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 …圃場水管理システム
12 …給水栓(送水制御装置)
14 …落水口(送水制御装置)
16 …電動アクチュエータ
38 …ねじ
40 …アクチュエータ本体
42 …取付台
44 …本体ケース
68 …挿通孔
72a …ねじ孔
80 …スリット
82 …窪み部(抜止部)
88 …突出部(抜止部)
90 …目安部
100 …圃場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16