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特開2023-137890粒状物成分測定方法及び粒状物成分測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137890
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】粒状物成分測定方法及び粒状物成分測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/53 20060101AFI20230922BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20230922BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20230922BHJP
【FI】
G01N21/53 Z
G01N21/3563
G01N21/359
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044314
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】山内 駿
(72)【発明者】
【氏名】▲配▼島 康仁
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB08
2G059BB11
2G059CC09
2G059CC12
2G059DD05
2G059DD12
2G059DD13
2G059EE02
2G059EE12
2G059HH01
2G059JJ01
2G059MM03
2G059MM05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】成分測定精度を向上させ、又試料分析に要する時間の短縮を図り、分析データとしての精度、信頼性を向上させる粒状物成分測定方法及び粒状物成分測定装置を提供する。
【解決手段】空間に充填された粒状物に検査光を照射し、反射光を受光して分光法により粒状物の成分を測定する粒状物成分測定方法に於いて、測定毎に前記粒状物に変位を与えて複数回測定し、測定結果を平均化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間に充填された粒状物に検査光を照射し、反射光を受光して分光法により粒状物の成分を測定する粒状物成分測定方法に於いて、測定毎に前記粒状物に変位を与えて複数回測定し、測定結果を平均化する粒状物成分測定方法。
【請求項2】
前記粒状物に間欠的に変位を与え、粒状物が静止状態で測定を行う請求項1に記載の粒状物成分測定方法。
【請求項3】
前記粒状物を流動又は撹拌し、粒状物に動的変位が与えられている状態で測定を行う請求項1に記載の粒状物成分測定方法。
【請求項4】
粒状物が充填される空間を有する試料保持装置と、該試料保持装置に取付けられる少なくとも1つの成分分析装置とを有し、前記空間に面する基板には検出窓が設けられ、前記成分分析装置は前記検出窓を透して前記粒状物に検査光を照射し、該粒状物からの反射光を受光して分光分析により成分測定する様構成され、前記試料保持装置は、前記粒状物に変位を与える変位付与手段を有し、該変位付与手段により前記粒状物に変位が与えられ、前記成分分析装置は測定毎に変位が与えられた粒状物を複数回測定を行い、測定結果を平均化する様構成された粒状物成分測定装置。
【請求項5】
前記空間に面し、対向する2つの基板にそれぞれ検出窓が設けられ、該検出窓にそれぞれ成分分析装置が設けられ、各成分分析装置によりそれぞれ前記検出窓を透して前記粒状物の成分が測定される様構成された請求項4に記載の粒状物成分測定装置。
【請求項6】
前記成分分析装置の1つは基準成分分析装置であり、他方の成分分析装置の測定結果が前記基準成分分析装置の測定結果で較正される請求項5に記載の粒状物成分測定装置。
【請求項7】
前記2つの成分分析装置は同一方式の又は異なる方式の成分分析装置である請求項5に記載の粒状物成分測定装置。
【請求項8】
前記空間の上端に上部開閉弁が設けれ、下端に下部開閉弁が設けられ、少なくとも下部開閉弁の開閉により前記空間内部の粒状物に変位が与えられる様構成された請求項5に記載の粒状物成分測定装置。
【請求項9】
少なくとも前記下部開閉弁が所定の開度で開かれ、前記粒状物が排出され、前記空間内部の粒状物が流動する様にした請求項8に記載の粒状物成分測定装置。
【請求項10】
前記空間の下端部から空気が吐出され、前記粒状物が浮遊動又は撹拌される様に構成された請求項5に記載の粒状物成分測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物、例えば穀物に含まれている成分を分光法により測定する粒状物成分測定方法、及び粒状物成分測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
穀物を測定対象として、穀物に含まれている成分を光学的に分析する分析装置が知られている。
【0003】
穀物に含まれている成分を分析し、分析結果に基づき成分の含有率、例えばタンパク・水分含有率を測定することで、測定対象の穀物の品質を測定することができる。
【0004】
穀物の品質を測定し、所定の品質に保持することは、安定した品質の穀物の供給をする上で重要である。
【0005】
従来、穀物を分光分析する場合、収穫された穀物から適宜、分析用試料をサンプリングし、サンプリングされた試料を所定の容器に充填し、この容器を分析装置にセットして容器中の試料の成分分析を行っている。
【0006】
この為、試料のサンプリングから分析装置にセットする迄、更に試料の交換等の手順が複雑であり、1試料を分析する為に要する時間が長くなると言う問題があった。
【0007】
又、測定対象の状態の相違が測定結果に影響を及し、測定結果にバラツキが生じる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-114488号公報
【特許文献2】特開2016-133473号公報
【特許文献3】特開2019-198334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、成分測定精度を向上させる粒状物成分測定方法を提供し、又試料分析に要する時間の短縮を図り、分析データとしての精度、信頼性を向上させる粒状物成分測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、空間に充填された粒状物に検査光を照射し、反射光を受光して分光法により粒状物の成分を測定する粒状物成分測定方法に於いて、測定毎に前記粒状物に変位を与えて複数回測定し、測定結果を平均化する粒状物成分測定方法に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記粒状物に間欠的に変位を与え、粒状物が静止状態で測定を行う粒状物成分測定方法に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記粒状物を流動又は撹拌し、粒状物に動的変位が与えられている状態で測定を行う粒状物成分測定方法に係るものである。
【0013】
又本発明は、粒状物が充填される空間を有する試料保持装置と、該試料保持装置に取付けられる少なくとも1つの成分分析装置とを有し、前記空間に面する基板には検出窓が設けられ、前記成分分析装置は前記検出窓を透して前記粒状物に検査光を照射し、該粒状物からの反射光を受光して分光分析により成分測定する様構成され、前記試料保持装置は、前記粒状物に変位を与える変位付与手段を有し、該変位付与手段により前記粒状物に変位が与えられ、前記成分分析装置は測定毎に変位が与えられた粒状物を複数回測定を行い、測定結果を平均化する様構成された粒状物成分測定装置に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記空間に面し、対向する2つの基板にそれぞれ検出窓が設けられ、該検出窓にそれぞれ成分分析装置が設けられ、各成分分析装置によりそれぞれ前記検出窓を透して前記粒状物の成分が測定される様構成された粒状物成分測定装置に係るものである。
【0015】
又本発明は、前記成分分析装置の1つは基準成分分析装置であり、他方の成分分析装置の測定結果が前記基準成分分析装置の測定結果で較正される粒状物成分測定装置に係るものである。
【0016】
又本発明は、前記2つの成分分析装置は同一方式の又は異なる方式の成分分析装置である粒状物成分測定装置に係るものである。
【0017】
又本発明は、前記空間の上端に上部開閉弁が設けれ、下端に下部開閉弁が設けられ、少なくとも下部開閉弁の開閉により前記空間内部の粒状物に変位が与えられる様構成された粒状物成分測定装置に係るものである。
【0018】
又本発明は、少なくとも前記下部開閉弁が所定の開度で開かれ、前記粒状物が排出され、前記空間内部の粒状物が流動する様にした粒状物成分測定装置に係るものである。
【0019】
更に又本発明は、前記空間の下端部から空気が吐出され、前記粒状物が浮遊動又は撹拌される様に構成された粒状物成分測定装置に係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、空間に充填された粒状物に検査光を照射し、反射光を受光して分光法により粒状物の成分を測定する粒状物成分測定方法に於いて、測定毎に前記粒状物に変位を与えて複数回測定し、測定結果を平均化するので、粒状物との状態の相違が測定結果に及ぼす影響を排除し、測定結果の精度の信頼性を向上させることができる。
【0021】
又本発明によれば、粒状物が充填される空間を有する試料保持装置と、該試料保持装置に取付けられる少なくとも1つの成分分析装置とを有し、前記空間に面する基板には検出窓が設けられ、前記成分分析装置は前記検出窓を透して前記粒状物に検査光を照射し、該粒状物からの反射光を受光して分光分析により成分測定する様構成され、前記試料保持装置は、前記粒状物に変位を与える変位付与手段を有し、該変位付与手段により前記粒状物に変位が与えられ、前記成分分析装置は測定毎に変位が与えられた粒状物を複数回測定を行い、測定結果を平均化する様構成されたので、前記空間に粒状物を充填、該空間から粒状物を排出するだけで粒状物(試料)のセット、交換が簡単に行え、又、粒状物との状態の相違が測定結果に及ぼす影響を排除し、測定結果の精度の信頼性を向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例に係る粒状物成分測定装置の斜視図である。
図2】本実施例の試料保持装置の断面図である。
図3】流動小麦と静止小麦の分光データの比較を示すグラフである。
図4】前記試料保持装置の斜視図である。
図5図4のA矢視図である。
図6】該試料保持装置の斜視図である。
図7】該試料保持装置の斜視図である。
図8】光源として白色LEDを用いた第1成分分析装置の概略構成図である。
図9】本実施例の光学フィルタの光学特性(波長透過特性)を示すグラフである。
図10】該光学フィルタの減光作用を示すグラフである。
図11】キャリブレーション時の反射分光データと実測時の反射分光データを示している。
図12】光源としてハロゲンランプを使用した第2成分分析装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0024】
図1は、本実施例に係る粒状物成分測定装置51の概略構成を示し、該粒状物成分測定装置51がテーブル52に設置された状態を示している。又、図2は試料保持装置53(後述)に試料9が充填された状態を示している。
【0025】
尚、前記粒状物成分測定装置51が設置されるものとしては、前記テーブル52に限らず前記粒状物成分測定装置51を安定に支持できるものであればよい。
【0026】
前記粒状物成分測定装置51は、主に試料を貯溜する試料保持装置53、前記試料容器に試料を導入する試料導入筒54、前記試料保持装置53の一側壁に取付けられる第1成分分析装置55、前記一側面と対向する側面に設けられる第2成分分析装置56を具備する。
【0027】
前記試料保持装置53の各側壁には検出窓(後述)が設けられており、前記第1成分分析装置55、前記第2成分分析装置56はそれぞれ検出窓を通して検出光を試料に照射し、試料からの反射光を前記検出窓を透して受光する様になっている。
【0028】
前記第1成分分析装置55、前記第2成分分析装置56は同一方式の分光分析装置であってもよく、異なる方式の分光分析装置であってもよい。又、相互の検出光の干渉を防止する為、前記第1成分分析装置55と前記第2成分分析装置56の光軸をずらしてある。本実施例では上下方向にずらしている。尚、図示では前記第1成分分析装置55と前記第2成分分析装置56は異なる側壁に対向する様に設けられているが、同一の側壁に上下に配設してもよい。
【0029】
前記試料保持装置53は、貯溜する粒状物に間欠又は連続的な変位を与える変位付与手段(後述)を具備する。
【0030】
該変位付与手段としては、粒状物に振動を与える振動器であっても、撹拌棒を回転、若しくは往復させて粒状物を撹拌させる攪拌機であっても、或は粒状物を所定量間欠的に排出する手段であっても、或は前記試料保持装置53内部で粒状物に流動状態を実現する手段であってもよい。尚、流動状態を実現する場合、前記試料保持装置53の底部から上方に空気を吐出し、粒状物を浮遊動又は撹拌させてもよく、或は前記試料導入筒54から前記試料保持装置53に試料を供給しつつ、該試料保持装置53の底部より試料を排出してもよい。
【0031】
本実施例の基本的な測定方法としては、測定毎に粒状物に変位が与えられ、測定毎に異なった状態で粒状物の測定が行われる。
【0032】
粒状物に変位を与えて測定する方法としては、粒状物に間欠的に変位を与え、粒状物が静止している状態で測定を行ってもよく、動的に変位が与えられている状態で測定してもよい。
【0033】
尚、動的に変位が与えられている場合として、粒状物に振動を与える、或は粒状物を流動させる等種々の状態が考えられる。
【0034】
先ず、本発明者は粒状物が静止した状態と、粒状物に動的な変位が与えられている状態とで、それぞれ分光分析を行い、動的な変位が分析結果に及す影響を測定した。
【0035】
図3は、粒状物が小麦であり、静止した小麦と流動状態の小麦についてそれぞれ分光分析した結果を示している。図3中、横軸は波長、縦軸は受光強度であり、Aの曲線が静止状態、Bの曲線が流動状態を示している。又、流動状態に於いて、小麦の移動速度は0.05m/秒程度とした。
【0036】
図3で示される様に、静止状態の分析結果と流動状態の分析結果とは殆ど差異がなく、小麦の流動が分析結果に影響しないことを確認した。図3の分析結果は、小麦であるが、他の粒状物、例えば、米、大豆であっても同様の結果が得られる。
【0037】
従って、本実施例では測定対象の粒状物が動的に変位した状態での測定をしている。動的に変位している状態で、複数回測定することで測定結果が平均化され、測定精度が向上する。尚、上記実施例では前記試料保持装置53に前記第1成分分析装置55、前記第2成分分析装置56の2つの成分分析装置を設けたが、1つの成分分析装置を設けてもよい。
【0038】
図1図2図4図7を参照して、前記試料保持装置53について説明する。
【0039】
該試料保持装置53は下端に底基板58を有している。該底基板58に第1縦基板59が垂直に設けられている。前記底基板58と平行な棚基板61が前記第1縦基板59に設けられ、該棚基板61を天板とし、該棚基板61と前記第1縦基板59の下部及び横板62によって囲繞される空間が前記棚基板61の下側に形成され、該空間には引出し63が出し入れ可能に設けられる。
【0040】
前記第1縦基板59と平行な第2縦基板60が前記棚基板61に垂直に設けられる。前記第1縦基板59と前記第2縦基板60とは所定の間隔で対峙しており、この間隔は既知の値となっている。
【0041】
前記第1縦基板59と前記第2縦基板60とを連結する側板65,65が設けられ、前記第1縦基板59と前記第2縦基板60と前記側板65,65によって前記棚基板61の上方に断面が矩形で上下に延在する柱状の空間64が形成される。
【0042】
前記棚基板61には、前記空間64に連通する排出口(図示せず)が設けられ、該排出口は下部開閉弁(図示せず)によって開閉可能になっている。該下部開閉弁は、手動で開閉する様にしてもよく、ソレノイド等のアクチュエータによって開閉される様にしてもよい。又、手動で開閉する場合、前記引出し63に開閉弁としての機能を持たせてもよい。例えば、前記引出し63の上蓋、底板の少なくとも上蓋に弁孔を設け、引出しの出入れにより、弁孔と前記空間64が間欠的に一致する様にしてもよい。
【0043】
前記空間64の上端には弁ユニット66が設けられる。該弁ユニット66に前記試料導入筒54の下端が固着され、該試料導入筒54は前記弁ユニット66を介して前記空間64の上端に設けられる。
【0044】
前記試料導入筒54は漏斗形状(即ち、倒立円錐形状)となっている。尚、前記試料導入筒54の形状は漏斗形状に限られるものではなく、試料を前記空間64に円滑に導入する形状であればよい。
【0045】
前記弁ユニット66は上部開閉弁67を有し、該上部開閉弁67により前記弁ユニット66の下端の開口が開閉される。而して、前記上部開閉弁67が開状態で前記試料導入筒54は前記空間64に連通し、前記上部開閉弁67が閉、前記下部開閉弁が閉の状態で前記空間64は密閉された状態となる。
【0046】
前記上部開閉弁67の開閉は手動で行ってもよく、前記弁ユニット66がソレノイド等のアクチュエータを有し、該アクチュエータによって前記上部開閉弁67を開閉させてもよい。本実施例では、前記下部開閉弁、前記上部開閉弁67はアクチュエータによって開閉されているものとする。
【0047】
上記実施例に於いて、前記上部開閉弁67を開、前記下部開閉弁を閉とし、前記試料導入筒54に試料を投入することで、前記空間64に試料が充填される。充填後、前記上部開閉弁67が閉じられる。
【0048】
試料が前記空間64に充填されることで、測定が可能となるが、測定状態で下部開閉弁を間欠的に開閉とすることで、前記空間64内の試料が間欠的に排出され、該空間64内で試料の移動が発生する。即ち、試料(粒状物)に動的な変位が与えられる。従って、前記下部開閉弁は変位付与手段として機能する。
【0049】
又、前記下部開閉弁の開度を調整し、試料(粒状物)が所定量連続的に排出される様にすることで、前記空間64内部の試料を流動状態とすることができる。この場合も、前記下部開閉弁は変位付与手段として機能する。又、前記上部開閉弁67を開とし、試料を連続的に供給してもよい。
【0050】
又、前記棚基板61に複数の空気噴出口を設け、該空気噴出口より空気を噴出し、前記試料を噴出空気で撹拌又は浮遊動する様にしてもよい。この場合、前記空気噴出口、噴出される空気は、変位付与手段として機能する。その他、変位付与手段としては、上記した様に、振動器、撹拌棒等、種々考えられる。
【0051】
測定が完了した試料は、前記引出し63に排出され、試料の試料保持装置53からの取出しは、前記引出し63を引出して行われる。
【0052】
従って、試料の供給は、前記試料導入筒54に投入するだけでよく、又取出しは前記引出し63により簡単に行える。従って、試料の交換は簡単に行える。
【0053】
尚、テーブル52の下側に、大型の容器を設け、測定済の試料を直接、該容器に排出する様にしてもよい。
【0054】
前記第1縦基板59の前記空間64に面する部分に、第1検出窓70が設けられ、該第1検出窓70はガラス等の透明部材によって気密に閉塞されている。又、前記第2縦基板60の前記空間64に面する部分に第2検出窓71が設けられ該第2検出窓71はガラス等の透明部材によって気密に閉塞されている。尚、ガラス等の透明部材は検出窓以外にセンサの受光部分にあってもよい。
【0055】
前記第1検出窓70、前記第2検出窓71は上下方向にずれた位置に設けられている。
【0056】
前記第1検出窓70の中心と前記第1成分分析装置55の検出光射出光軸とが合致する様に、前記第1成分分析装置55が前記第1縦基板59に取付けられる。前記第1成分分析装置55は前記第1縦基板59に対して着脱可能となっている。
【0057】
前記第2検出窓71の中心と前記第2成分分析装置56の検出光射出光軸とが合致する様に、前記第2成分分析装置56が前記第2縦基板60に取付けられる。前記第2成分分析装置56は前記第2縦基板60に対して着脱可能となっている。
【0058】
先ず、光源として白色LEDを用いた前記第1成分分析装置55について図8を参照して説明する。
【0059】
図8中、2は筐体であり、該筐体2の内部に成分検出センサ3、制御部4、記憶部5、電源部6、表示部7等が設けられている。該電源部6は、前記成分検出センサ3、前記制御部4、前記表示部7等に、所要の電力を供給する。又、図8中、9は前記空間64に充填された試料を示している。
【0060】
前記記憶部5には、前記第1成分分析装置55が分光計測を実行する為の種々のプログラム、分光計測で得られた分光データに基づき水、タンパク質の含有率等を演算するプログラムが格納され、又前記記憶部5には分光計測で得られた分光データが格納される。
【0061】
前記制御部4は前記記憶部5に格納されたプログラムを実行し、前記分光器11、前記キャリブレーション部14、前記ドライバ18等について所要のタイミングで、所要の制御を行う。又、前記制御部4は、下部開閉弁の開閉、前記上部開閉弁67の開閉についても制御を実行する。
【0062】
尚、記憶部5としては、RAM、ROM、FlashROM、DRAM等の半導体メモリ、HDD等の磁気記録メモリが用いられる。又前記制御部4としては本実施例に特化されたCPU、或は汎用性CPU、埋込みCPU、マイクロプロセッサ等が用いられる。
【0063】
次に、前記成分検出センサ3について説明する。
【0064】
該成分検出センサ3は、主に分光器11、光源部12、受光部13、キャリブレーション部14を具備する。前記分光器11、前記光源部12、前記受光部13、前記キャリブレーション部14をセンサケース15に収納し、前記成分検出センサ3をユニット化してもよい。
【0065】
前記分光器11、前記光源部12、前記受光部13、前記キャリブレーション部14へは前記電源部6から電力がそれぞれ供給される。
【0066】
前記分光器11は、検出素子としてSi単結晶が用いられるエネルギー分散型のSi検出器を有し、検出素子が受光した光を分光分析する様になっている。又、Si検出器による分析可能な範囲は、1100nm以下の波長の近赤外光となっている。
【0067】
前記光源部12は発光源として、白色光を発する白色LED17と該白色LED17を発光させるドライバ18を有し、該ドライバ18には前記電源部6から電力が供給され、前記制御部4によって発光が制御されている。
【0068】
前記白色LED17の光路(光軸)上に光学フィルタ21が配設される。後述する様に、該光学フィルタ21は、可視光域の光を遮断又は減光し、成分検出に必要な波長帯を透過する光学特性を有する。
【0069】
前記白色LED17は、市販の白色LED17を使用することができ、発光素子とレンズが一体化されたものであり、前記発光素子からの光線が平行光、或は所定の広がり角になる様に設定されている。又、本実施例では、試料迄の投光距離を短くすることができるので、前記白色LED17から発せられる光をレンズ等の光学系を介することなく、試料9に直接照射することができる。従って、本実施例では投光光学系を省略できる。
【0070】
次に、本実施例では試料に含有される水分子、タンパク質を構成する分子を分光解析で検出する。
【0071】
水は1940nm、1450nm、1190nm、970nm及び760nmに比較的強い吸収を示す。又、タンパク質は色々な官能基による吸収が重なった複雑なスペクトルを示すが、2180nm、2050nmに特徴的な吸収バンドを持つことが分っている。
【0072】
従って、近赤外分光では1000nm以上の長波長を用いるのが好ましいが、この波長帯域では高価なInGaAs検出器を使用しなければならない。そこで、本実施例では、波長1100nm以下の波長範囲を利用して近赤外分光を行うこととし、Si検出器の使用を可能としている。
【0073】
前記白色LED17からは白色光が発せられ、白色光には略全域の波長帯が含まれている。成分検出に必要な波長帯以外の光について、遮断することが好ましい。又、白色LEDの特徴として、赤外域(900nm)より長波長域の出力が可視域より大幅に小さいので(例えば1/10)、可視光域で分光感度が飽和することを避けなければならない。
【0074】
図9は、前記光学フィルタ21の光学特性を示すグラフであり、縦軸が透過率、横軸が波長を示している。
【0075】
又、図9中、曲線Aは、本実施例で要求する波長/透過率曲線であり、曲線Bは、本実施例に用いられた実際の光学フィルタ21の波長/透過率曲線である。
【0076】
曲線A、曲線Bは略一致しており、前記光学フィルタ21は本実施例で用いられる950nm~1100nmの波長帯での透過率が略100%となっている。
【0077】
即ち、前記光学フィルタ21は、波長1100nm~950nmの波長範囲を略100%透過し、950nm以下の波長域(可視光域)の光を略0%にカットする光学特性を有している。
【0078】
尚、本実施例では、前記光学フィルタ21の光学特性を、可視域透過率2.5%、赤外域の透過率が略100%としている。可視域の光についても2.5%の透過を許すことで、後述する様に、水分子、タンパク質分子以外の分子について光分析が可能となる。
【0079】
尚、使用される白色LED17によって、前記光学フィルタ21の最適な透過率は異なるものと考えられ、上記透過率に限定されるものではない。
【0080】
従って、前記試料9に照射される光は、波長1100nm~950nmの波長範囲となっている。照射される光が、成分検出に必要な波長帯に限定されることで、検出結果のS/Nが向上する。又、可視光域で分光感度が飽和することも回避できる。
【0081】
前記白色LED17から発せられた光20は、光学フィルタ21を透過し、更に前記第1検出窓70を透して前記試料9に照射される。
【0082】
前記光学フィルタ21、前記第1検出窓70は、前記白色LED17の光軸に対して所定の角度傾斜している。前記光学フィルタ21、前記第1検出窓70で反射した光が、前記白色LED17に入らない様にし、前記白色LED17での発光状態が不安定になることを防止している。尚、図示では、前記光学フィルタ21、前記第1検出窓70はそれぞれ光軸に対して45゜傾斜しているが、この角度に限定されるものではない。
【0083】
前記光学フィルタ21では、前記波長1100nm以下の波長を透過するが、同時に前記光学フィルタ21の表面で白色光を反射する。本実施例では、該白色光の反射光軸上に、光吸収板23が設けられる。該光吸収板23は前記光学フィルタ21からの反射光を吸収する。該光吸収板23は、前記光学フィルタ21で反射された光が筐体2の内部で乱反射し、前記分光器11による検出結果に影響を与えることを防止する。
【0084】
前記試料9で反射された拡散反射光は、集光レンズ24により集光され、前記分光器11に入射される。
【0085】
該分光器11は入射された反射光を光分析し、分光データを前記制御部4に出力する。
【0086】
該制御部4は、分光データに基づき反射拡散スペクトルを取得し、更に、水分、タンパク質の含有量を演算し、反射拡散スペクトル、分光データ、タンパク含有率、水分含有率等の演算結果、等を前記表示部7に表示する。
【0087】
次に、本実施例では測定精度を保証する為、前記キャリブレーション部14を具備している。
【0088】
該キャリブレーション部14は、少なくとも標準白色反射板25と、白色板挿脱部26とを有する。
【0089】
前記白色板挿脱部26は前記標準白色反射板25を前記白色LED17から発せられる光路中に挿脱するものである。前記試料9の成分分析の前後、或は前後のいずれか、或は所定時間毎に前記標準白色反射板25が光路中に挿入され、該標準白色反射板25に前記光20が照射され、該標準白色反射板25からの反射光がキャリブレーション用の基準光として、前記分光器11で検出される。又、前記白色板挿脱部26の駆動、駆動のタイミングは前記制御部4によって制御される。
【0090】
次に、前記光学フィルタ21と前記標準白色反射板25との関係について説明する。
【0091】
上記した様に、本実施例では950nm~1100nmの波長域(特に1000nm~1100nm)の光線を必要としており、この帯域の波長の光強度が測定に適したものとする様に前記白色LED17を発光させると、可視領域の波長(950nm以下の波長)での光強度が強くなり、前記分光器11の受光検出器が飽和してしまう。
【0092】
図10は、前記標準白色反射板25を光路中に挿入して得られた標準白色反射板の反射分光データを示している。図10に於いて、縦軸が受光信号の強度、横軸が波長を示している。又、図中、曲線Aは前記光学フィルタ21が無い状態での反射分光データであり、950nm以下の波長で受光検出器が飽和している。
【0093】
次に、曲線Bは前記光学フィルタ21を透して光20を照射した場合の標準白色反射板の反射分光データを示している。前記光学フィルタ21を設けることで、全波長域で飽和させることなく、反射分光データを取得できたことを示している。
【0094】
図11は、前記光学フィルタ21を設けた状態での、標準白色反射板の反射分光データを曲線Aとして、試料9(本実施例では小麦)からの反射分光データを曲線Bとして示している。図11に於いて、縦軸が受光信号の強度、横軸が波長を示している。
【0095】
曲線Aは、キャリブレーション状態の反射分光データを示している。
【0096】
曲線Bは、全波長域で試料からの反射光も計測に必要な光強度が得られることを示しており、前記光学フィルタ21の有効性を示している。従って、前記白色LED17と前記光学フィルタ21の組合わせで、穀物以外の測定対象についても成分分析が可能である。
【0097】
次に、光源としてハロゲンランプを使用した前記第2成分分析装置56について図12を参照して説明する。
【0098】
図12は、前記第2成分分析装置56の概略を示しており、ハロゲンランプを使用した前記第2成分分析装置56では、光源部30、測定光学系31、分光器32が分離独立した構成となっており、前記測定光学系31が図1中の第2成分分析装置56として前記第2縦基板60に取付けられている。前記光源部30、前記測定光学系31、前記分光器32間は光ファイバ33によって連結されている。
【0099】
前記光源部30(ハロゲンランプ)で発光された光は光ファイバ33により、測定光学系31に導かれ、該測定光学系31から検出光34として測定対象(図示せず)に照射される。測定対象で反射された検出光34(反射検出光34′)は測定光学系31で受光され、光ファイバ35を介して分光器32に入射される。該分光器32では、反射検出光34′を光分析し、特定波長帯での光吸収量を検出し、穀物のタンパク・水分含有率を測定する。
【0100】
上記穀物成分分析装置に用いられているハロゲンランプは、高発熱量、高消費電力であるので、測定に発熱の影響を与えない様、各ユニット間は前記光ファイバ33,35で連結されている。
【0101】
本実施例では、試料の設定は前記試料導入筒54に試料を投入するだけでよく、簡単であり、又、試料の取出しも、前記引出し63により引出せばよく、試料の交換も簡単である。
【0102】
前記第1成分分析装置55で測定した分析結果、前記第2成分分析装置56で測定した分析結果は、前記第1成分分析装置55の前記制御部4又は前記第2成分分析装置56の制御部に入力され、平均化される様にしてもよい。或は、前記第1成分分析装置55、前記第2成分分析装置56に接続可能な端末に入力され、平均化される様にしてもよい。
【0103】
本実施例では、同一の試料を複数の成分分析装置により、同時に測定することができるので、複数の成分分析装置の測定結果を平均化することで、成分分析装置の個体差の影響を相殺した測定結果が得られる。又、複数の成分分析装置の内の1つを基準装置とし、基準装置の測定結果に基づき他の成分分析装置の測定結果を較正することが可能となる。又、異なる方式の成分分析装置を設け、機種毎の測定結果を比較し、一方の測定結果で他方の測定結果補正し、或は両者の測定結果を平均化してもよい。
【0104】
又、本実施例では、粒状物(測定対象)を変位させつつ、複数回測定を行うので、測定対象の状態の相違による測定結果のバラツキが相殺され、精度の高い測定結果が得られる。
【0105】
又、本実施例では、流動状態の測定対象について、測定可能であるので、収穫中の穀物の一部を前記試料保持装置53に流動させることで、リアルタイムで測定できる。従って、本実施例に係る粒状物成分測定装置を農業機械等に搭載することで、収穫しつつ穀物の品質を測定することができる。
【符号の説明】
【0106】
2 筐体
3 成分検出センサ
4 制御部
5 記憶部
6 電源部
7 表示部
9 試料
11 分光器
14 キャリブレーション部
17 白色LED
21 光学フィルタ
23 光吸収板
24 集光レンズ
25 標準白色反射板
26 白色板挿脱部
51 粒状物成分測定装置
53 試料保持装置
54 試料導入筒
55 第1成分分析装置
56 第2成分分析装置
59 第1縦基板
60 第2縦基板
63 引出し
64 空間
66 弁ユニット
70 第1検出窓
71 第2検出窓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12