(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137895
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ルーバー取り付け方法、ルーバー取り付け構造、及び、ルーバー吊りレール
(51)【国際特許分類】
E04B 9/36 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
E04B9/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044321
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000225304
【氏名又は名称】株式会社内外テクノス
(71)【出願人】
【識別番号】593123683
【氏名又は名称】株式会社オクジュー
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晃一郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 敦
(72)【発明者】
【氏名】堀池 隆弥
(72)【発明者】
【氏名】坂田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】三谷 勝章
(72)【発明者】
【氏名】我妻 信行
(72)【発明者】
【氏名】本田 信一
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 健
(57)【要約】
【課題】取り付け作業が簡略化されたルーバー取り付け方法等を実現することにある。
【解決手段】上部構造に吊り部材を設置する吊り部材設置工程と、前記吊り部材の下部に下地金物を設置する下地金物設置工程と、前記下地金物にルーバー吊りレールを設置するルーバー吊りレール設置工程と、前記ルーバー吊りレールに天井材を嵌合させる天井材嵌合工程と、前記ルーバー吊りレールにルーバーを設置するルーバー設置工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造に吊り部材を設置する吊り部材設置工程と、
前記吊り部材の下部に下地金物を設置する下地金物設置工程と、
前記下地金物にルーバー吊りレールを設置するルーバー吊りレール設置工程と、
前記ルーバー吊りレールに天井材を嵌合させる天井材嵌合工程と、
前記ルーバー吊りレールにルーバーを設置するルーバー設置工程と、
を有することを特徴とするルーバー取り付け方法。
【請求項2】
ルーバー吊りレールを、前後方向に延在するように設置するルーバー吊りレール設置工程と、
ルーバー吊り金物の上部を前記ルーバー吊りレールに係合させ、前記ルーバー吊りレールの吊りレール部において該上部を前後方向にスライドさせて位置調整を行った後に、該上部を前記吊りレール部の所定位置に固定する上部連結工程と、
ルーバーを、前記前後方向と直交する左右方向に延在するように、前記ルーバー吊り金物の下部に係合させ、前記ルーバーのルーバーレール部において該下部を左右方向にスライドさせて位置調整を行った後に、該下部を前記ルーバーレール部の所定位置に固定する下部連結工程と、
前記左右方向及び前記前後方向と直交する上下方向に伸縮する前記ルーバー吊り金物の伸縮機構により、前記ルーバーの前記ルーバー吊りレールに対する上下方向における位置を調整する上下方向位置調整工程と、
を有することを特徴とするルーバー取り付け方法。
【請求項3】
上部構造に設けられた吊り部材と、
前記吊り部材の下部に設けられた下地金物と、
前記下地金物に設けられたルーバー吊りレールと、
ルーバーと、
上部が前記ルーバー吊りレールと係合し、下部が前記ルーバーと係合するルーバー吊り金物と、
前記ルーバー吊りレールに嵌合する天井材と、を有することを特徴とするルーバー取り付け構造。
【請求項4】
前後方向に延在するルーバー吊りレールと、前記前後方向と直交する左右方向に延在するルーバーと、上部が前記ルーバー吊りレールと係合し、下部が前記ルーバーと係合するルーバー吊り金物と、を有し、
前記ルーバー吊りレールは、前記ルーバー吊り金物の前記上部が前後方向にスライド可能な吊りレール部を備え、該上部は、前記吊りレール部の所定位置に固定されており、
前記ルーバーは、前記ルーバー吊り金物の前記下部が左右方向にスライド可能なルーバーレール部を備え、該下部は、前記ルーバーレール部の所定位置に固定されており、
前記ルーバー吊り金物は、前記左右方向及び前記前後方向と直交する上下方向に伸縮する伸縮機構を備えることを特徴とするルーバー取り付け構造。
【請求項5】
ルーバーを吊るためのルーバー吊り金物を係合させるための係合部と、天井材を嵌合させるための嵌合部と、を有することを特徴とするルーバー吊りレール。
【請求項6】
請求項5に記載のルーバー吊りレールであって、
前記係合部は、前記ルーバー吊り金物がスライド可能な吊りレール部であることを特徴とするルーバー吊りレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーバー取り付け方法、ルーバー取り付け構造、及び、ルーバー吊りレールに関する。
【背景技術】
【0002】
上階スラブ等の上部構造に、幾つかの部材を介して、ルーバーを取り付けるルーバー取り付け方法ついては、既によく知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例に係るルーバー取り付け方法は、部材の加工や調整に時間を要するため、効率的な施工が行えず、施工コストも高くなるという問題があった。すなわち、従来は、ルーバーの取り付けを行う際に、煩雑な作業を実施しなければならず、取り付け作業が簡略化されることが要請されていた。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、取り付け作業が簡略化されたルーバー取り付け方法等を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
主たる本発明は、上部構造に吊り部材を設置する吊り部材設置工程と、
前記吊り部材の下部に下地金物を設置する下地金物設置工程と、
前記下地金物にルーバー吊りレールを設置するルーバー吊りレール設置工程と、
前記ルーバー吊りレールに天井材を嵌合させる天井材嵌合工程と、
前記ルーバー吊りレールにルーバーを設置するルーバー設置工程と、
を有することを特徴とするルーバー取り付け方法である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、取り付け作業が簡略化されたルーバー取り付け方法等を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係るルーバー取り付け構造1を示した概略正面図である。
【
図2】本実施の形態に係るルーバー取り付け構造1を示した概略側面図である。
【
図3】野縁本体32と野縁固定クリップ34を示した概略正面図である。
【
図4】レール固定クリップ26を示した概略分解図である。
【
図5】ルーバー吊りレール40を示した概略正面図である。
【
図6】本実施形態に係るルーバー取り付け方法に係る取り付け手順を示した図である。
【
図7】吊り部材設置工程と下地金物設置工程を説明するための説明図である。
【
図8】下地金物設置工程とルーバー吊りレール設置工程を説明するための説明図である。
【
図9】野縁設置工程と天井材設置工程を説明するための説明図である。
【
図10】ルーバー設置工程(特に、上部連結工程)を説明するための説明図である。
【
図11】ナット挿入部46aを示した概略側面図である。
【
図12】ナット挿入部46aを示した概略下面図である。
【
図13】第二ナット62の寸法を説明するための説明図である。
【
図14】ルーバー設置工程(特に、下部連結工程)を説明するための説明図である。
【
図15】本実施の形態に係るルーバー取り付け方法を作業者が実施する実施イメージ図である。
【
図16】ルーバー吊りレール40に加熱発泡体80が設けられている様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0011】
上部構造に吊り部材を設置する吊り部材設置工程と、
前記吊り部材の下部に下地金物を設置する下地金物設置工程と、
前記下地金物にルーバー吊りレールを設置するルーバー吊りレール設置工程と、
前記ルーバー吊りレールに天井材を嵌合させる天井材嵌合工程と、
前記ルーバー吊りレールにルーバーを設置するルーバー設置工程と、
を有することを特徴とするルーバー取り付け方法。
【0012】
このようなルーバー取り付け方法によれば、天井材を嵌合させて天井材を支持する機能をルーバー吊りレールに持たせたので、ルーバー吊りレールとルーバーを繋ぐ部材(ルーバー吊り金物)を貫通させるための穴を天井材に開ける必要がなくなり、そのため、穴についての位置合わせを行う必要もなくなる。したがって、部材の加工や調整に要する時間を節約できるため、効率的な施工を行うことができ、施工コストも抑えることができる。すなわち、取り付け作業が簡略化されたルーバー取り付け方法を実現することが可能となる。
【0013】
ルーバー吊りレールを、前後方向に延在するように設置するルーバー吊りレール設置工程と、
ルーバー吊り金物の上部を前記ルーバー吊りレールに係合させ、前記ルーバー吊りレールの吊りレール部において該上部を前後方向にスライドさせて位置調整を行った後に、該上部を前記吊りレール部の所定位置に固定する上部連結工程と、
ルーバーを、前記前後方向と直交する左右方向に延在するように、前記ルーバー吊り金物の下部に係合させ、前記ルーバーのルーバーレール部において該下部を左右方向にスライドさせて位置調整を行った後に、該下部を前記ルーバーレール部の所定位置に固定する下部連結工程と、
前記左右方向及び前記前後方向と直交する上下方向に伸縮する前記ルーバー吊り金物の伸縮機構により、前記ルーバーの前記ルーバー吊りレールに対する上下方向における位置を調整する上下方向位置調整工程と、
を有することを特徴とするルーバー取り付け方法。
【0014】
このようなルーバー取り付け方法によれば、ルーバーの取り付けの際に、スライド機構及び伸縮機構を用いて、上下方向、左右方向、前後方向の3次元で、ルーバーを所望の位置に簡便に位置決め(位置調整)することができる。したがって、部材の加工(スライドや伸縮には部材の加工は伴わない)や調整に要する時間を節約できるため、効率的な施工
を行うことができ、施工コストも抑えることができる。すなわち、取り付け作業が簡略化されたルーバー取り付け方法を実現することが可能となる。
【0015】
上部構造に設けられた吊り部材と、
前記吊り部材の下部に設けられた下地金物と、
前記下地金物に設けられたルーバー吊りレールと、
ルーバーと、
上部が前記ルーバー吊りレールと係合し、下部が前記ルーバーと係合するルーバー吊り金物と、
前記ルーバー吊りレールに嵌合する天井材と、を有することを特徴とするルーバー取り付け構造。
【0016】
このようなルーバー取り付け構造によれば、ルーバー吊り金物を係合させるルーバー吊りレールに、天井材を嵌合させて天井材を支持する機能を持たせたので、ルーバー吊り金物を貫通させるための穴を天井材に開ける必要がなくなり、そのため、穴についての位置合わせを行う必要もなくなる。したがって、部材の加工や調整に要する時間を節約できるため、効率的な施工を行うことができ、施工コストも抑えることができる。すなわち、取り付け作業が簡略化されたルーバー取り付け構造を実現することが可能となる。
【0017】
前後方向に延在するルーバー吊りレールと、前記前後方向と直交する左右方向に延在するルーバーと、上部が前記ルーバー吊りレールと係合し、下部が前記ルーバーと係合するルーバー吊り金物と、を有し、
前記ルーバー吊りレールは、前記ルーバー吊り金物の前記上部が前後方向にスライド可能な吊りレール部を備え、該上部は、前記吊りレール部の所定位置に固定されており、
前記ルーバーは、前記ルーバー吊り金物の前記下部が左右方向にスライド可能なルーバーレール部を備え、該下部は、前記ルーバーレール部の所定位置に固定されており、
前記ルーバー吊り金物は、前記左右方向及び前記前後方向と直交する上下方向に伸縮する伸縮機構を備えることを特徴とするルーバー取り付け構造。
【0018】
このようなルーバー取り付け構造によれば、ルーバーの取り付けの際に、スライド機構及び伸縮機構を用いて、上下方向、左右方向、前後方向の3次元で、ルーバーを所望の位置に簡便に位置決め(位置調整)することができる。したがって、部材の加工(スライドや伸縮には部材の加工は伴わない)や調整に要する時間を節約できるため、効率的な施工を行うことができ、施工コストも抑えることができる。すなわち、取り付け作業が簡略化されたルーバー取り付け構造を実現することが可能となる。
【0019】
ルーバーを吊るためのルーバー吊り金物を係合させるための係合部と、天井材を嵌合させるための嵌合部と、を有することを特徴とするルーバー吊りレール。
【0020】
このようなルーバー吊りレールによれば、天井材を嵌合させて天井材を支持する機能をルーバー吊りレールに持たせたので、ルーバー吊りレールとルーバーを繋ぐ部材(ルーバー吊り金物)を貫通させるための穴を天井材に開ける必要がなくなり、そのため、穴についての位置合わせを行う必要もなくなる。したがって、部材の加工や調整に要する時間を節約できるため、効率的な施工を行うことができ、施工コストも抑えることができる。すなわち、取り付け作業を簡略化させるルーバー吊りレールを実現することが可能となる。
【0021】
かかるルーバー吊りレールであって、
前記係合部は、前記ルーバー吊り金物がスライド可能な吊りレール部であることが望ましい。
【0022】
このようなルーバー吊りレールによれば、ルーバーの取り付けの際に、スライド機構を用いて、ルーバーを所望の位置に簡便に位置決め(位置調整)することができる。したがって、部材の加工(スライドには部材の加工は伴わない)や調整に要する時間を節約できるため、効率的な施工を行うことができ、施工コストも抑えることができる。すなわち、取り付け作業を簡略化させるルーバー吊りレールを実現することが可能となる。
【0023】
===本実施の形態に係るルーバー取り付け構造1について===
本実施の形態に係るルーバー取り付け構造1について、
図1乃至
図5を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係るルーバー取り付け構造1を示した概略正面図である。
図2は、本実施の形態に係るルーバー取り付け構造1を示した概略側面図である。
図3は、野縁本体32と野縁固定クリップ34を示した概略正面図である。
図4は、レール固定クリップ26を示した概略分解図である。
図5は、ルーバー吊りレール40を示した概略正面図である。
図1においては、左右方向(水平方向)と上下方向(高さ方向)が示され、
図2においては、前後方向(水平方向)と上下方向が示されている。前後方向と左右方向は互いに直交し、上下方向は、左右方向及び前後方向と直交する方向である。なお、
図1及び
図2においては、野縁固定クリップ34の記載を省略しているが、当該野縁固定クリップ34については、
図9を参照しつつ説明する。また、
図2においては、吊り部材10の記載を省略している(すなわち、吊り部材10の側面図を省略している)が、当該吊り部材10については、
図7の右図を参照しつつ説明する。
【0024】
このルーバー取り付け構造1は、上部構造の一例としての上階スラブ(不図示)に幾つかの部材を介してルーバー70が取り付けられる取り付け構造であり、吊り部材10と、下地金物20と、野縁30と、ルーバー吊りレール40(ルーバー吊りボルトレール)と、天井材50と、ルーバー吊り金物60と、ルーバー70と、を有している。
【0025】
吊り部材10は、下地金物20(野縁受22)を吊るためのものである。この吊り部材10は、上階スラブに設けられており、吊りボルト12と、ハンガー14と、ハンガーナット16と、ハンガービス18と、を備えている。なお、図示はしていないが、当該吊り部材10は、複数設けられており、左右方向に並んだ複数の吊り部材10で一つの野縁受22を支持する(吊る)ようになっている。
【0026】
吊りボルト12は、下地金物20(野縁受22)を吊るための長尺のボルトであり、長手方向が上下方向に沿うように設けられている。そして、吊りボルト12の上端部が、上階スラブに固定されている。
【0027】
ハンガー14は吊りボルト12に下地金物20(野縁受22)を固定するための金属製の部材である。このハンガー14は、吊りボルト12の下部に2つのハンガーナット16により取り付けられている(
図7参照)。また、ハンガー14の下部には、下地金物20(野縁受22)を収容するための収容部14aが設けられており、当該収容部14aに下地金物20(野縁受22)が収容された状態で下地金物20(野縁受22)がハンガー14にハンガービス18により固定されている。
【0028】
下地金物20は、野縁30及びルーバー吊りレール40を取り付けるための下地となる金物である。この下地金物20は、吊り部材10の下部に設けられており、野縁受22と、レール固定クリップ26と、を備えている。
【0029】
野縁受22は、野縁30とルーバー吊りレール40を支持するためのものである。この野縁受22は、断面がコの字状の長尺な金属製の部材であり、長手方向が左右方向に沿うようにハンガー14に設けられている(左右方向に延在している)。なお、図示はしていないが、当該野縁受22は、複数備えられており、複数の野縁受22が、互いに間隔を隔
てて前後方向に並ぶように設けられている。
【0030】
レール固定クリップ26は、ルーバー吊りレール40を野縁受22に取り付けるための金属製の部材である。レール固定クリップ26は、第一部材26aと第二部材26bの二部材に分かれている。そして、
図4に示すように、第一部材26aと第二部材26bとが野縁受22を挟んだ状態で、第一部材26aと第二部材26bが第一ボルト26c及び第一ナット26dで固定されることにより、レール固定クリップ26が野縁受22に固定されている。また、レール固定クリップ26の下部には、ルーバー吊りレール40を係止するためのクリップ側係止部26eが設けられている。そして、当該クリップ側係止部26eにルーバー吊りレール40のレール側係止部42aが引っ掛けられることにより、ルーバー吊りレール40とレール固定クリップ26が連結されている。なお、図示はしていないが、一つの野縁受22に対して、複数(本実施の形態においては、2つ)のレール固定クリップ26が互いに間隔を隔てて左右方向に並ぶように設けられており、各々のレール固定クリップ26は異なるルーバー吊りレール40に連結されている(を支持している)。
【0031】
野縁30は、天井材50を取り付ける(支持する)ためのものであり、野縁本体32と野縁固定クリップ34とを備えている。
【0032】
野縁固定クリップ34は、野縁本体32を野縁受22に取り付けるための金属製の部材である(
図9参照)。野縁固定クリップ34は、野縁受22に固定されており、また、野縁固定クリップ34の下部には、
図3に示すように、野縁本体32を係止するためのクリップ側係止部34aが設けられている。そして、当該クリップ側係止部34aに野縁本体32の野縁側係止部32aが引っ掛けられることにより、野縁本体32と野縁固定クリップ34が連結されている。なお、一つの野縁受22に対して、複数の野縁固定クリップ34が互いに間隔を隔てて左右方向に並ぶように設けられており、各々の野縁固定クリップ34は異なる野縁本体32に連結されている(を支持している)。
【0033】
野縁本体32は、断面がコの字状の長尺な金属製の部材であり、長手方向が前後方向に沿うように設けられている(前後方向に延在している)。また、野縁本体32は、野縁受22の下方に位置し、野縁受22に野縁固定クリップ34を介して取り付けられている(下地金物20に設けられている)。
図3に示すように、コの字状の野縁本体32の開口32bは上方を向いており、野縁本体32の上部には、野縁側係止部32aが設けられている。そして、野縁側係止部32aが野縁固定クリップ34のクリップ側係止部34aに引っ掛けられることにより、野縁本体32と野縁固定クリップ34が連結され、野縁本体32が野縁固定クリップ34により吊られている。そして、野縁本体32(野縁30)には、ボードビス56により天井材50(下地石膏ボード52)が固定されている。なお、当該野縁本体32は、複数備えられており、複数の野縁本体32が、互いに間隔を隔てて左右方向に並ぶように設けられている。また、互いに異なる野縁受22に取り付けられ、かつ、前後方向に並んだ複数の野縁固定クリップ34により、一つの野縁本体32が吊られている。
【0034】
ルーバー吊りレール40は、ルーバー吊り金物60を介して、ルーバー70を吊るためのものであるが、本実施の形態においては、天井材50を支持する(天井材50が取り付けられる部材としての)役割も果たす。このルーバー吊りレール40は、長尺な金属製の部材であり、長手方向が前後方向に沿うように設けられている(前後方向に延在している)。なお、図示はしていないが、ルーバー吊りレール40は、複数(本実施の形態においては、2つ)備えられており、2つのルーバー吊りレール40が、互いに間隔を隔てて左右方向に並ぶように設けられている。また、互いに異なる野縁受22に取り付けられ、かつ、前後方向に並んだ複数のレール固定クリップ26により、一つのルーバー吊りレール
40が吊られている。
【0035】
ルーバー吊りレール40は、
図5に示すように、横板部40aと、横板部40aの両端から上方へ延出した2つの上方延出部40bと、各々の上方延出部40bの上端から内側へ延出した2つの内側延出部40cと、各々の内側延出部40cの内側端から下方へ突出した2つの下方突出片40dを備えている。さらに、ルーバー吊りレール40は、横板部40aの中間部(横板部40aの両端から、横板部40aの横方向における長さの略1/3の長さだけ内側の位置)から下方へ延出した2つの下方延出部40eと、各々の下方延出部40eの下端から外側へ突出した2つの外側突出片40fと、各々の下方延出部40eの中間部から内側へ突出した2つの上方リブ40gと、当該中間部から内側へ突出し、上方リブ40gよりも下方に位置する下方リブ40hと、を備えている。そして、いずれの部分も、ルーバー吊りレール40の全長に亘って設けられている(ただし、後述するナット挿入部46aにおける下方リブ40hは除く)。
【0036】
ルーバー吊りレール40は、野縁受22の下方に位置し、野縁受22にレール固定クリップ26を介して取り付けられている(下地金物20に設けられている)。ここで、横板部40a、上方延出部40b、内側延出部40c、下方突出片40dが、レール固定クリップ26と係合するクリップ係合部42の役割を果たす。すなわち、ルーバー吊りレール40の上部には、クリップ係合部42が設けられており、横板部40a、上方延出部40b、内側延出部40cにより囲まれたクリップ係合部42内の収容空間にレール固定クリップ26の下部が収容されている。そして、内側延出部40c及び下方突出片40dによりレール側係止部42aが構成され、当該レール側係止部42aがレール固定クリップ26のクリップ側係止部26eに引っ掛けられることにより、ルーバー吊りレール40とレール固定クリップ26が連結されている。
【0037】
また、ルーバー吊りレール40に天井材50が嵌合することにより、天井材50がルーバー吊りレール40により支持されている。ここで、横板部40a、下方延出部40e、外側突出片40fが、天井材50を嵌合させるための嵌合部44(窪み部)の役割を果たす。つまり、横板部40a、下方延出部40e、外側突出片40fにより窪み部が形成されており、当該窪み部に天井材50が嵌合される。すなわち、ルーバー吊りレールの下部かつ側方部には、嵌合部44が設けられており、当該嵌合部44に天井材50(下地石膏ボード52及び上張り岩綿吸音板54)の端部が嵌合している。なお、嵌合部44はルーバー吊りレール40の左方部と右方部に設けられており、左方部に設けられた嵌合部44には天井材50の右端部が嵌合し、右方部に設けられた嵌合部44には天井材50の左端部が嵌合している。
【0038】
また、ルーバー吊りレール40には、ルーバー70を吊るためのルーバー吊り金物60の上部が係合し、ルーバー吊りレール40にルーバー吊り金物60が固定されている。ここで、横板部40a、下方延出部40e、上方リブ40g、下方リブ40hが、ルーバー吊り金物60を係合させるための吊り金物係合部(係合部に相当)の役割を果たす。すなわち、ルーバー吊り金物60の下部かつ中央部には、吊り金物係合部が設けられており、横板部40a、下方延出部40eにより囲まれた吊り金物係合部内の収容空間にルーバー吊り金物60の上部が収容されている。そして、ルーバー吊り金物60の上部には、ルーバー吊りボルト61(の上部)と第二ナット62が設けられており、第二ナット62は、収容空間内で上方リブ40gと下方リブ40hの間に位置し(上方リブ40g及び下方リブ40hは第二ナット62をガイドするガイド部としての役割を果たしている)、ルーバー吊りボルト61の上端は、収容空間内で横板部40aに当接している。ルーバー吊りボルト61が締められ、ルーバー吊りボルト61が横板部40aに当接することにより生じる反力により、ルーバー吊り金物60がルーバー吊りレール40に固定されている。このように、本実施の形態においては、当接による反力を利用することで、2つのナットによ
りルーバー吊りボルト61をルーバー吊りレール40に固定するのではなく、1つのみの第二ナット62の利用だけで済むので、部品点数の削減や取り付け作業の簡易化等のメリットが生ずる。
【0039】
また、当該吊り金物係合部は、ルーバー吊り金物60がスライド可能な吊りレール部46となっている。詳細については後述するが、ルーバー設置工程においては、吊りレール部46においてルーバー吊り金物60の上部を前後方向にスライドさせて適宜位置調整を行ってから、当該上部を吊りレール部46の所定位置(調整により決められた位置)に固定するようになっている。すなわち、ルーバー吊りレール40は、ルーバー吊り金物60の上部が前後方向にスライド可能な吊りレール部46を備え、当該上部は、吊りレール部46の所定位置(調整により決められた位置)に固定されている。
【0040】
天井材50は、野縁30(野縁本体32)の下方に位置する矩形状のボードであり、法線方向が上下方向に沿うように設けられている。天井材50は、下地石膏ボード52と下地石膏ボード52の下方に位置する上張り岩綿吸音板54とにより構成されており、双方のボードは、上下方向において重なった状態となっている。下地石膏ボード52は、ボードビス56により野縁30(野縁本体32)に固定され、上張り岩綿吸音板54は、接着剤により下地石膏ボード52に固定されている。
【0041】
また、天井材50の上下方向における位置は、ルーバー吊りレール40の下部(嵌合部44)と一致している。すなわち、天井材50は、当該下部(嵌合部44)の側方に位置し、天井材50(重ねられた下地石膏ボード52及び上張り岩綿吸音板54)の左右方向における端部が当該嵌合部44に嵌合している。このように、天井材50は、野縁30(野縁本体32)とルーバー吊りレール40の双方により支持されている。
【0042】
ルーバー吊り金物60は、ルーバー70を吊るためのものである。このルーバー吊り金物60は、上下方向において、ルーバー吊りレール40とルーバー70の間に位置しており、上部がルーバー吊りレール40と係合し、下部がルーバー70と係合している。すなわち、ルーバー吊り金物60は、ルーバー吊りレール40に取り付けられており、ルーバー吊り金物60には、ルーバー70が取り付けられている。なお、当該ルーバー吊り金物60は、一つのルーバー吊りレール40に対して複数設けられており、各々のルーバー吊り金物60は、互いに異なるルーバー70を吊っている。
【0043】
ルーバー吊り金物60は、ルーバー吊りボルト61と、第二ナット62と、第三ナット63と、第四ナット64と、ルーバー吊りZ金物65と、ワッシャー66と、第二ボルト67と、第五ナット68と、を備えている。
【0044】
ルーバー吊りボルト61は、長尺の全ネジボルトであり、長手方向が上下方向に沿うように設けられている。そして、ルーバー吊りボルト61の上部には第二ナット62が設けられており、ルーバー吊りボルト61の上部及び第二ナット62は、ルーバー吊りレール40の吊りレール部46の収容空間内に収容され、当該ルーバー吊りレール40(吊りレール部46)と係合している。
【0045】
ルーバー吊りZ金物65は、Z字形状の金属製の部材であり、上方横板部65aと、縦板部65bと、下方横板部65cとを有している。このルーバー吊りZ金物65は、ルーバー吊りボルト61の下部に取り付けられている。すなわち、ルーバー吊りZ金物65の上方横板部65aには孔が設けられており、当該孔をルーバー吊りボルト61が貫通した状態で、当該上方横板部65aを上下方向に挟んだ2つのナット(第三ナット63及び第四ナット64)により、ルーバー吊りZ金物65がルーバー吊りボルト61に固定されている。
【0046】
なお、ルーバー吊りZ金物65(上方横板部65a)のルーバー吊りボルト61における上下方向における固定位置は調整可能となっている。すなわち、ルーバー吊りボルト61のどこにルーバー吊りZ金物65(上方横板部65a)を固定するかを、固定前に調整することができるようになっている。かかる調整により、ルーバー吊り金物60の長さ(換言すれば、ルーバー70のルーバー吊りレール40に対する上下方向における位置)を変更することが可能となる。つまり、本実施の形態に係るルーバー吊り金物60は、上下方向に伸縮する伸縮機構(ルーバー吊りボルト61、ルーバー吊りZ金物65、第三ナット63及び第四ナット64により構成される)を備えている。
【0047】
また、ルーバー吊りZ金物65はルーバー70に取り付けられており、このことにより、ルーバー吊り金物60の下部がルーバー70と係合している。すなわち、ルーバー吊りZ金物65の下方横板部65cにも孔が設けられており、ルーバー70(ルーバーレール部70a)内に頭部が埋め込まれた第二ボルト67が当該孔を貫通した状態で、下方横板部65cの上方に設けられたワッシャー66及び第五ナット68により第二ボルト67が締められることにより、ルーバー吊りZ金物65がルーバー70に固定されている。
【0048】
ルーバー70は、ルーバー吊り金物60の下方に位置する矩形状の部材である。このルーバー70は、法線方向が前後方向に沿い、長手方向が左右方向に沿う(左右方向に延在する)ように設けられている。ルーバー70は、ルーバー本体としてのルーバー材72と、ボルトスロットレール74と、ドリルビス76と、たる栓78と、を備えている。なお、図示はしていないが、一つのルーバー70が、互いに異なるルーバー吊りレール40に設けられた複数(本実施の形態においては、2つ)のルーバー吊り金物60により吊られている。
【0049】
ルーバー材72は、木製の部材であり、ルーバー材72の上部には、ボルトスロットレール74が設けられている。このボルトスロットレール74は、長尺な金属製の部材であり、長手方向がルーバー材72の長手方向に沿うように、ルーバー材72の上部に埋め込まれている。ボルトスロットレール74は、レール本体74aと被固定部74bとを有している。また、ボルトスロットレール74(被固定部74b)は、ドリルビス76によりルーバー材72に固定されており、ドリルビス76を打つためにルーバー材72に開けられた穴部がたる栓78で塞がれている。そして、上記構成により、ルーバー70の上部には、ルーバー吊り金物60の下部を係合させるための吊り金物係合部が形成されている。
【0050】
すなわち、ルーバー吊り金物60の第二ボルト67が、その頭部が吊り金物係合部(ボルトスロットレール74)内の収容空間に収容された状態で(換言すれば、頭部がルーバー70内に埋め込まれた状態で)、当該頭部がネジ先よりも下方に位置するように設けられ、ネジ部はルーバー70の上方において、ルーバー70から露出している。さらに、ルーバー70(吊り金物係合部)の上方には、ルーバー70と接するように、ルーバー吊り金物60のルーバー吊りZ金物65(下方横板部65c)が設けられ、下方横板部65cに備えられた孔を第二ボルト67が貫通している。そして、かかる状態で、第二ボルト67が、下方横板部65cの上方に設けられたワッシャー66及び第五ナット68により締められることにより、ルーバー70がルーバー吊り金物60(ルーバー吊りZ金物65)に固定されている。
【0051】
また、前記吊り金物係合部は、ルーバー吊り金物60がスライド可能なルーバーレール部70aとなっている。詳細については後述するが、ルーバー設置工程においては、ルーバーレール部70aにおいてルーバー吊り金物60の下部を左右方向にスライドさせて適宜位置調整を行ってから、当該下部をルーバーレール部70aの所定位置(調整により決
められた位置)に固定するようになっている。すなわち、ルーバー70は、ルーバー吊り金物60の下部が左右方向にスライド可能なルーバーレール部70aを備え、当該下部は、ルーバーレール部70aの所定位置(調整により決められた位置)に固定されている。
【0052】
===本実施の形態に係るルーバー取り付け方法について===
次に、本実施の形態に係るルーバー取り付け方法(上記ルーバー取り付け構造1を製造する製造方法)について、
図6乃至
図15を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係るルーバー取り付け方法に係る取り付け手順を示した図である。
図7は、吊り部材設置工程と下地金物設置工程を説明するための説明図である。
図8は、下地金物設置工程とルーバー吊りレール設置工程を説明するための説明図である。
図9は、野縁設置工程と天井材設置工程を説明するための説明図である。
図10は、ルーバー設置工程(特に、上部連結工程)を説明するための説明図である。
図11は、ナット挿入部46aを示した概略側面図である。
図12は、ナット挿入部46aを示した概略下面図(ナット挿入部46aを下から見た図)である。
図13は、第二ナット62の寸法を説明するための説明図である。
図14は、ルーバー設置工程(特に、下部連結工程)を説明するための説明図である。
図15は、本実施の形態に係るルーバー取り付け方法を作業者が実施する実施イメージ図である。なお、
図7乃至
図10、
図14、
図15の左図は概略正面図であり、右図は概略側面図である。
【0053】
先ず、上部構造(上階スラブ)に吊り部材10を設置する(ステップS1の吊り部材設置工程)。すなわち、吊りボルト12(の上端部)を、上階スラブ(不図示)に固定し、固定された吊りボルト12にハンガー14をハンガーナット16により固定する(
図7参照)。
【0054】
次に、吊り部材10の下部に下地金物20を設置する(ステップS2の下地金物設置工程)。先ず、ハンガー14に野縁受22を左右方向に延在するように設置する(
図7参照)。すなわち、ハンガー14に設けられた収容部14aに野縁受22を収容し、当該野縁受22をハンガービス18によりハンガー14に固定する。次に、野縁受22にレール固定クリップ26を取り付ける(
図8参照)。すなわち、レール固定クリップ26の第一部材26aと第二部材26bとで野縁受22を前後方向に挟むようにした状態で、第一部材26aと第二部材26bを第一ボルト26c及び第一ナット26dで固定する。
【0055】
次に、
図8に示すように、下地金物20(レール固定クリップ26)にルーバー吊りレール40を前後方向に延在するように設置する(ステップS3のルーバー吊りレール設置工程)。すなわち、レール固定クリップ26のクリップ側係止部26eにルーバー吊りレール40のレール側係止部42aを引っ掛けることにより、レール固定クリップ26にルーバー吊りレール40を連結する。また、
図9に示すように、ルーバー吊りレール設置工程に並行して、野縁受22に野縁30を設置する工程も行う(ステップS3の野縁設置工程)。すなわち、野縁受22に野縁固定クリップ34を取り付けて、当該野縁固定クリップ34に野縁本体32を前後方向に延在するように取り付ける。
【0056】
次に、
図9に示すように、野縁30(野縁本体32)及びルーバー吊りレール40に天井材50を設置する(ステップS4の天井材設置工程)。本実施の形態においては、下地石膏ボード52を設置してから上張り岩綿吸音板54を設置する。先ず、下地石膏ボード52を、野縁本体32と接するように、野縁本体32の下方に位置させる。この際に、下地石膏ボード52の端部がルーバー吊りレール40の嵌合部44に接するように、下地石膏ボード52を設ける。そして、下地石膏ボード52をボードビス56により野縁本体32に固定する。
【0057】
次に、上張り岩綿吸音板54を、下地石膏ボード52と接するように、下地石膏ボード
52の下方に位置させる。この際に、上張り岩綿吸音板54の端部がルーバー吊りレール40の嵌合部44に接するように、上張り岩綿吸音板54を設ける。そして、上張り岩綿吸音板54をタッカー(不図示)で下地石膏ボード52に仮止めしてから接着剤で貼付する。上張り岩綿吸音板54の設置が完了すると、重ねられた下地石膏ボード52と上張り岩綿吸音板54の端部が嵌合部44(窪み部)に嵌合することとなる。すなわち、本実施の形態に係る天井材設置工程には、ルーバー吊りレール40に天井材50を嵌合させる天井材嵌合工程が含まれている。なお、上張り岩綿吸音板54の設置後には、天井材50の仕上げ(パテ処理及び塗装)を実施する。
【0058】
次に、ルーバー吊りレール40にルーバー70を設置する(ステップS5のルーバー設置工程)。先ず、ルーバー吊り金物60の上部をルーバー吊りレール40に係合させる(
図10参照)。具体的には、ルーバー吊りボルト61に第二ナット62と第三ナット63が取り付けられた状態で、当該ルーバー吊りボルト61の上部と第二ナット62をルーバー吊りレール40の吊り金物係合部(吊りレール部46)に挿入する(第二ナット62については、上方リブ40gと下方リブ40hの間に位置するようにする)。
【0059】
なお、
図11及び
図12に示すように、吊りレール部46には、下方リブ40hが切り欠かれた箇所(便宜上、ナット挿入部46aと呼ぶ)が設けられている。そのため、ナット挿入部46aを通過させれば、ルーバー吊りボルト61を上方向に移動させて、第二ナット62を上方リブ40gと下方リブ40hの間に位置させることができる(
図11の矢印A参照)。しかしながら、ナット挿入部46aを用いることなく、吊りレール部46の端面(小口面)からルーバー吊りボルト61の上部と第二ナット62を吊りレール部46に挿入するようにしてもよい(
図11の矢印B参照)。
【0060】
ルーバー吊りボルト61の上部と第二ナット62を吊りレール部46に挿入して、ルーバー吊り金物60の上部をルーバー吊りレール40に係合させたら、吊りレール部46において該上部を前後方向にスライドさせて適宜位置調整を行う。そして、位置調整後に、該上部を吊りレール部46の所定位置(調整により決められた位置)に固定する。具体的には、ルーバー吊りボルト61の下端部にドリル100を接続し、ドリル100でルーバー吊りボルト61を締める。
【0061】
なお、本実施の形態に係る第二ナット62は六角ナットとなっており、六角形の互いに対向する辺間の距離をL1(
図13参照)、互いに対向する頂点間の距離をL2(
図13参照)、吊りレール部46の左右方向における内幅(対向する下方延出部40e間の距離。
図5参照)をL3としたときに、L1<L3<L2の関係を有している(
図12等の図面では、L1=L3のように見えるが、実際には微小な隙間が空いている)。L3<L2の関係を有しているため、ルーバー吊りボルト61を締める際には、第二ナット62は下方延出部40eに引っかかって回転せず、ルーバー吊りボルト61のみが回転しながら上方へ移動する。一方で、L1<L3の関係を有しているため、前記位置調整の際には、第二ナット62は前後方向に移動可能である。
【0062】
ルーバー吊りボルト61が回転しながら上方へ移動すると、やがて吊りレール部46の横板部40a(上面)に当接する。そして、ルーバー吊りボルト61が横板部40aに当接することにより生じる反力により、ルーバー吊りボルト61(ルーバー吊り金物60)がルーバー吊りレール40に固定される。
【0063】
このように、本実施の形態に係るルーバー設置工程には、ルーバー吊り金物60の上部をルーバー吊りレール40に係合させ、ルーバー吊りレール40の吊りレール部46において該上部を前後方向にスライドさせて位置調整を行った後に、該上部を吊りレール部46の所定位置に固定する上部連結工程が含まれている。
【0064】
次に、ルーバー吊りZ金物65をルーバー吊りボルト61の下部に取り付ける(
図10及び
図14参照)。すなわち、ルーバー吊りボルト61に、ルーバー吊りZ金物65を嵌め込み、予めルーバー吊りボルト61に取り付けられている第三ナット63と今回新たに取り付ける第四ナット64とでルーバー吊りZ金物65を挟むようにしてルーバー吊りZ金物65をルーバー吊りボルト61に固定する。また、固定の前には、ルーバー吊りZ金物65のルーバー吊りボルト61における上下方向における固定位置を適宜調整することにより、ルーバー吊り金物60の長さ(ルーバー70のルーバー吊りレール40に対する上下方向における位置)を調整する。すなわち、本実施の形態に係るルーバー設置工程には、上下方向に伸縮するルーバー吊り金物60の伸縮機構により、ルーバー70のルーバー吊りレール40に対する上下方向における位置を調整する上下方向位置調整工程が含まれている。なお、かかる位置調整は、このタイミングではなく、ルーバー吊り金物60にルーバー70を取り付けた後に行ってもよいし、このタイミングに加えて、ルーバー吊り金物60にルーバー70を取り付けた後に再度行ってもよい。
【0065】
次に、ルーバー材72、ボルトスロットレール74、ドリルビス76、たる栓78を用いてルーバー70を作製する(
図14参照)。すなわち、ルーバー材72の上部にボルトスロットレール74を埋め込み、ドリルビス76によりボルトスロットレール74をルーバー材72に固定する。そして、ドリルビス76を打つためにルーバー材72に開けられた穴部をたる栓78で塞ぐ。
【0066】
次に、ルーバー70を、左右方向に延在するように、ルーバー吊り金物60の下部に係合させる(
図14参照)。具体的には、吊り金物係合部(ルーバーレール部70a)内に第二ボルト67の頭部が埋め込まれ、かつ、当該第二ボルト67がルーバー吊りZ金物65を貫通した状態で、第二ボルト67をワッシャー66及び第五ナット68により締めることにより、ルーバー吊りZ金物65にルーバー70を固定する。
【0067】
なお、固定前に、ルーバーレール部70aにおいてルーバー吊り金物60の下部(すなわち、第二ボルト67)を左右方向にスライドさせて適宜位置調整を行う。つまり、ルーバー70をルーバー吊り金物60に対し左右方向に動かして適宜位置調整を行う。そして、位置調整後に、該下部をルーバーレール部70aの所定位置(調整により決められた位置)に固定する。また、当該位置調整は、ルーバー吊りZ金物65とルーバー70が連結されており、かつ、第五ナット68で第二ボルト67が完全には締められてはいない状態で行うが、ルーバー吊りZ金物65とルーバー70が連結されていない
図14の左図のような状態で行うこととしてもよい。この場合には、ルーバー吊り金物60の下部である第二ボルト67をルーバー70に対して左右方向に動かして適宜位置調整を行う。このように、本実施の形態に係るルーバー設置工程には、ルーバー70を、左右方向に延在するように、ルーバー吊り金物60の下部に係合させ、ルーバー70のルーバーレール部70aにおいて該下部を左右方向にスライドさせて位置調整を行った後に、該下部をルーバーレール部70aの所定位置に固定する下部連結工程が含まれている。
【0068】
ルーバー設置工程が終了すると、
図1及び
図2に示したルーバー取り付け構造1を得ることができる。なお、
図15に、本実施の形態に係るルーバー取り付け方法を作業者が実施する実施イメージ図を示す。
【0069】
===本実施の形態に係るルーバー取り付け方法及びルーバー取り付け構造1の有効性について===
上述したとおり、本実施の形態に係るルーバー取り付け方法は、上部構造に吊り部材10を設置する吊り部材設置工程と、吊り部材10の下部に下地金物20を設置する下地金物設置工程と、下地金物20にルーバー吊りレール40を設置するルーバー吊りレール設
置工程と、ルーバー吊りレール40に天井材50を嵌合させる天井材嵌合工程と、ルーバー吊りレール40にルーバー70を設置するルーバー設置工程と、を有することとした。また、本実施の形態に係るルーバー取り付け構造1は、上部構造に設けられた吊り部材10と、吊り部材10の下部に設けられた下地金物20と、下地金物20に設けられたルーバー吊りレール40と、ルーバー70と、上部がルーバー吊りレール40と係合し、下部がルーバー70と係合するルーバー吊り金物60と、ルーバー吊りレール40に嵌合する天井材50と、を有することとした。また、本実施の形態に係るルーバー吊りレール40は、ルーバー70を吊るためのルーバー吊り金物60を係合させるための吊り金物係合部(吊りレール部46)と、天井材50を嵌合させるための嵌合部44と、を有することとした。すなわち、本実施の形態においては、ルーバー吊りレール40に、ルーバー吊り金物60を係合させて、ルーバー70を吊る機能だけでなく、天井材50を嵌合させて天井材50を支持する機能も持たせることとした。そのため、以下のメリットが生ずる。
【0070】
従来例においても、ルーバー吊り金物を係合させて、ルーバーを吊る機能を有する金物係合部(なお、この金物係合部はレールではなかった)が存在した。しかしながら、この金物係合部は、天井材より上方に設けられていたため、ルーバー吊り金物(ルーバー吊りボルト61に相当する部材)を貫通させるための穴を天井材に開ける必要があった。また、穴は天井材の決められた位置に開けなければならないので、位置合わせが非常に大変であった。このように、従来例においては、部材の加工や調整に時間を要するため、効率的な施工が行えず、施工コストも高くなるという問題があった。すなわち、従来は、ルーバーの取り付けを行う際に、煩雑な作業を実施しなければならず、取り付け作業が簡略化されることが要請されていた。
【0071】
これに対し、本実施の形態においては、ルーバー吊り金物60を係合させるルーバー吊りレール40に、天井材50を嵌合させて天井材50を支持する機能を持たせたので、ルーバー吊り金物60(ルーバー吊りボルト61)を貫通させるための穴を天井材に開ける必要がなくなり、そのため、穴についての位置合わせを行う必要もなくなる。したがって、部材の加工や調整に要する時間を節約できるため、効率的な施工を行うことができ、施工コストも抑えることができる。すなわち、本実施の形態によれば、取り付け作業が簡略化されたルーバー取り付け方法等を実現することが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態に係るルーバー取り付け方法は、ルーバー吊りレール40を、前後方向に延在するように設置するルーバー吊りレール設置工程と、ルーバー吊り金物60の上部をルーバー吊りレール40に係合させ、ルーバー吊りレール40の吊りレール部46において該上部を前後方向にスライドさせて位置調整を行った後に、該上部を吊りレール部46の所定位置に固定する上部連結工程と、ルーバー70を、前後方向と直交する左右方向に延在するように、ルーバー吊り金物60の下部に係合させ、ルーバー70のルーバーレール部70aにおいて該下部を左右方向にスライドさせて位置調整を行った後に、該下部をルーバーレール部70aの所定位置に固定する下部連結工程と、左右方向及び前後方向と直交する上下方向に伸縮するルーバー吊り金物60の伸縮機構により、ルーバー70のルーバー吊りレール40に対する上下方向における位置を調整する上下方向位置調整工程と、を有することとした。また、本実施の形態に係るルーバー取り付け構造1は、前後方向に延在するルーバー吊りレール40と、前後方向と直交する左右方向に延在するルーバー70と、上部がルーバー吊りレール40と係合し、下部がルーバー70と係合するルーバー吊り金物60と、を有し、ルーバー吊りレール40は、ルーバー吊り金物60の前記上部が前後方向にスライド可能な吊りレール部46を備え、該上部は、吊りレール部46の所定位置に固定されており、ルーバー70は、ルーバー吊り金物60の前記下部が左右方向にスライド可能なルーバーレール部70aを備え、該下部は、ルーバーレール部70aの所定位置に固定されており、ルーバー吊り金物60は、左右方向及び前後方向と直交する上下方向に伸縮する伸縮機構を備えることとした。また、本実施の形態に係るル
ーバー吊りレール40は、その係合部(吊り金物係合部)が、ルーバー吊り金物60がスライド可能な吊りレール部46であることとした。
【0073】
そのため、ルーバー70の取り付けの際に、スライド機構及び伸縮機構を用いて、上下方向、左右方向、前後方向の3次元で、ルーバー70を所望の位置に簡便に位置決め(位置調整)することができる。したがって、部材の加工(スライドや伸縮には部材の加工は伴わない)や調整に要する時間を節約できるため、効率的な施工を行うことができ、施工コストも抑えることができる。すなわち、本実施の形態によれば、取り付け作業が簡略化されたルーバー取り付け方法等を実現することが可能となる。
【0074】
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0075】
上記実施の形態においては、ルーバー材72にボルトスロットレール74を埋め込むことで、ルーバー70(ルーバーレール部70a)を作製することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ルーバー材72をボルトスロットレール74と同じ金属製の材料として、双方を一体成型するようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態においては、ボルトスロットレール74のレール本体74aと被固定部74bの双方がルーバー材72に埋め込まれていたが、被固定部74bのみをルーバー材72に埋め込む(レール本体74aはルーバー材72から露出している)こととしてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態においては、上下方向位置調整を行うためのルーバー吊り金物60の伸縮機構として(通常の)ナット(第三ナット63及び第四ナット64)が用いられていたが、当該ナットの代わりにプッシュロックナット(例えば、株式会社コクサイ製の「六角プッシュロックナット」や「プッシュロックナット」。一般的に先付けナットとも呼ばれているもの)やクリップ(先付けナットのようにルーバー吊りボルト61に予め差し込んでおくようなものではなく、後付けで横から差し込めるような、一般的に後付けナットとも呼ばれているもの)等を用いることとしてもよい。これらの部材を用いることで更なる作業効率の向上を実現することができる。
【0078】
また、上記実施の形態においては、下方に位置する天井材50として、上張り岩綿吸音板54を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、上張り石膏ボードであっても構わない。
【0079】
また、
図16に示すように、ルーバー吊りレール40に加熱発泡体80(ここでは、加熱発泡ゴム)を設けることとしてもよい。かかる例において、加熱発泡体80は、ルーバー吊りレール40の吊り金物係合部(吊りレール部46)に挿入されており、ルーバー吊りレール40の二つの外側突出片40f間に位置する開口を塞いでいる(
図16の左図参照)。そして、このことにより、以下のメリットが生ずる。第一に、火災時に当該加熱発泡体80が加熱され発泡することで不燃断熱層を形成して、ルーバー吊りレール40(吊りレール部46)の溶融を抑制し、ルーバー吊りレール40(吊りレール部46)に係合したルーバー吊り金物60により吊られたルーバー70の脱落を防ぐことが可能となる。第二に、ルーバー吊りレール40の吊り金物係合部(吊りレール部46)の内部を目隠しして意匠性を高めることが可能となる。なお、加熱発泡体80は、吊り金物係合部(吊りレール部46)に押し込むことで、装着させることができる。また、吊り金物係合部(吊
りレール部46)にはルーバー吊り金物60が係合している(固定されている)ため、吊り金物係合部(吊りレール部46)のうちのルーバー吊り金物60が位置する箇所を避けるように、加熱発泡体80がルーバー吊りレール40に設けられている(
図16の右図参照)。したがって、一つのルーバー吊りレール40に対して複数の加熱発泡体80が設けられており、各々の加熱発泡体80は、ルーバー吊りレール40の前後方向における両端に位置する加熱発泡体80を除いて、二つのルーバー吊り金物60間に位置している。なお、
図16は、ルーバー吊りレール40に加熱発泡体80が設けられている様子を示した図である(左図は概略側面図であり、右図は概略下面図(加熱発泡体80を下から見た図)である)。
【符号の説明】
【0080】
1 ルーバー取り付け構造
10 吊り部材
12 吊りボルト
14 ハンガー
14a 収容部
16 ハンガーナット
18 ハンガービス
20 下地金物
22 野縁受
26 レール固定クリップ
26a 第一部材
26b 第二部材
26c 第一ボルト
26d 第一ナット
26e クリップ側係止部
30 野縁
32 野縁本体
32a 野縁側係止部
32b 開口
34 野縁固定クリップ
34a クリップ側係止部
40 ルーバー吊りレール
40a 横板部
40b 上方延出部
40c 内側延出部
40d 下方突出片
40e 下方延出部
40f 外側突出片
40g 上方リブ
40h 下方リブ
42 クリップ係合部
42a レール側係止部
44 嵌合部
46 吊りレール部(係合部)
46a ナット挿入部
50 天井材
52 下地石膏ボード
54 上張り岩綿吸音板
56 ボードビス
60 ルーバー吊り金物
61 ルーバー吊りボルト
62 第二ナット
63 第三ナット
64 第四ナット
65 ルーバー吊りZ金物
65a 上方横板部
65b 縦板部
65c 下方横板部
66 ワッシャー
67 第二ボルト
68 第五ナット
70 ルーバー
70a ルーバーレール部
72 ルーバー材
74 ボルトスロットレール
74a レール本体
74b 被固定部
76 ドリルビス
78 たる栓
80 加熱発泡体
100 ドリル