(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137901
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 45/00 20180101AFI20230922BHJP
F21S 41/00 20180101ALI20230922BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20230922BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20230922BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230922BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20230922BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20230922BHJP
【FI】
F21S45/00
F21S41/00
F21V23/00 160
F21W102:13
F21Y115:10
F21W103:20
F21W103:55
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044330
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇波 佳苗
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014BA03
(57)【要約】
【課題】車両用灯具のハウジングに固定する配線に起因する不具合を低減する車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具1は、ハウジング10とアウターカバー5とで形成された灯室6内に複数のランプユニット3,4,5とそれらを制御するための信号が流れる配線コード12を備える。ハウジング10にはコード保持構造20が一体に形成されている。コード保持構造20は、第1の方向に突出する板形状の第1突出壁21および第2突出壁22からなる。第1突出壁21の壁面23と第2突出壁22の壁面28は直交しており、第2突出壁22の壁面28と第1突出壁21の外縁面24とで配線コード12を保持する保持空間を形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のハウジングとアウターカバーとにより形成された灯室内に、前記アウターカバーを透過して前記灯室外に向かって光を照射する第1のランプユニットおよび第2のランプユニットと、前記第1のランプユニットおよび前記第2のランプユニットに電気的に接続する複数の配線コードとを備え、
前記第1のランプユニットおよび前記第2のランプユニットのそれぞれには、光源を備えており、
前記ハウジングには、前記配線コードを保持するコード保持構造が一体に形成されており、
前記コード保持構造は、前記ハウジング側から第1の方向に突出する第1突出壁および第2突出壁を有する一対の突出壁からなり、
前記第1突出壁は、板形状を有し、前記ハウジングから延びる一対の壁面と、前記一対の壁面を板厚方向で連結する外縁面とを備え、
前記外縁面には、前記第2突出壁側に位置するコード保持側面と、前記第2突出壁側と反対に位置する反対側側面と、前記コード保持側面から前記反対側側面に向かうに従って前記第1方向側に向かって徐々に傾斜するガイド側面とを有するとともに、前記コード保持側面と前記ガイド側面とが滑らかに連なっており、
前記第2突出壁は、
前記ハウジング側から片持ち梁状に延びる基端部と、前記基端部から前記第1突出壁側に向かって傾斜して延びる傾斜部と、傾斜部の先端から前記第1方向に沿って延びる先端部を有し、
前記基端部、前記傾斜部および前記先端部は、前記基端部から前記先端部に亘って前記ハウジングから延びる一対の壁面と、前記一対の壁面を板厚方向で連結する外縁面とを備えた板形状とされ、
前記第2突出壁の一対の壁面は、前記第1突出壁側に位置するコード保持壁面と、前記第1突出壁側と反対方向に位置する反対側壁面からなり、
前記コード保持壁面の面内方向は、前記第1突出壁の一対壁面と直交しており、
前記基端部および前記傾斜部における前記コード保持壁面と、前記第1突出壁のコード保持側面とは、互いに離間して対向して位置するとともに、その間の空間に前記配線コードを保持可能な保持空間を形成し、
前記保持空間は、前記基端部における前記コード保持壁面と当該コード保持壁面に対向する位置の前記コード保持側面との間の距離に比べて、前記傾斜部における前記コード保持壁面と当該コード保持壁面に対向する位置の前記コード保持側面との間の距離が狭くなるように形成されており、
前記先端部は、当該先端部における前記コード保持壁面と当該コード保持壁面に対向する位置の前記ガイド側面との間の距離が、前記第1の方向に向かうに従って離れるように拡開する形状とされ、
前記第1方向は、前記ハウジングを成形する際の金型の型開き方向であることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第2突出壁は、前記コード保持壁面の面内方向と直交する方向においてバネ性を有する板形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記配線コードは、前記第1のランプユニットまたは第2のランプユニットとコネクタ部との間を接続する配線コードであり、
前記配線コードは、前記第1のランプユニットまたは第2のランプユニットとコネクタ部との間で、少なくとも2箇所で前記コード保持構造によって保持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記配線コードは、前記第1突出壁を中心に屈曲していることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具におけるコードの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両用灯具においては、光源としてLEDを用いたものが多く採用されている。例えば、車両の前部左右に配置されるヘッドランプは、ハウジングとその凹部開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に、LED光源、そのLED光源を実装する光源基板、LED光源から出射する光を車両前方へと反射させるリフレクタ等の光学部品、LED光源を駆動制御する制御回路等を収容して構成されている。斯かるヘッドランプにおいては、制御回路と光源とがコードによって電気的に接続されるが、コードはクランプ等の支持部材によってハウジング等の灯体にクランプされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の車両用灯具では、
図7に示したようにハウジングの背面上部に、基端が前記ハウジングに固定された脚部と、脚部から片持ち梁状に延びており先端側に固定される固定部と、を備えた車体取付部90にコードクランプ構造を形成している。コードクランプ構造は、脚部に設けた2箇所の輪郭リブ91と、脚部から片持ち梁状に延びており輪郭リブ91の端部との間にコードCをクランプするための爪部92とを備えている。爪部92の自由端93と輪郭リブ91の端部との間の間隔は、コードCの径より小さく設定されている。これによりコードCがその間隔から脱落するのを防止することができる。また、爪部92には脚部の中央部には固定部から爪部92まで延びる中央部リブ94も形成して車体取付部90の補強がなされている。爪部92の両側に2箇所の輪郭リブ91を設けて互い違いになるように形成されている。ハウジングと車体取付部90は樹脂材料を用いて一体に射出成形により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
爪部92は、スライド機構付きの金型を用いないと車体取付部90と一体的に形成することができない。また、車体取付部90をハウジングと一体に形成するためには、ハウジング形状に合せて形成しなければならないため、ハウジングを形成するための一対の金型の開き方向は凹部開口部の形状に合せる必要がある。そのため、車体取付部90を形成するための金型構造が複雑になり易い。結果として金型が高価なものとなる。さらに、スライド機構を採用するために不良品の発生率がスライド機構を用いない場合に比べて高くなり易い。スライド機構のメンテナンスも必要になる、という問題点がある。
【0006】
また、近年の車両用灯具の高機能化の進展に伴って配線量が増加する傾向にある。それに伴い、車両用灯具の製造する際に多くのコードがあるため、車両用灯具内の光学部品に干渉して照射する配光特性が部分的に暗くなったり、他部品と干渉してコードが傷つくなどの不具合が生じたりするおそれがある。また、配線量の増加に伴い複数のコードクランプ構造が必要となっている。複数のコードクランプ構造の全てをスライド機構で形成しようとすると、金型構造がより一層複雑化し高価になる、という問題点がある。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたもので、成形しやすいコード保持構造によって、車両用灯具の配線に起因する不具合を低減することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、前記課題を達成するために、下記[1]から[4]の車両用灯具を提供する。
【0009】
[1] 樹脂製のハウジングとアウターカバーとにより形成された灯室内に、前記アウターカバーを透過して前記灯室外に向かって光を照射する第1のランプユニットおよび第2のランプユニットと、前記第1のランプユニットおよび前記第2のランプユニットに電気的に接続する複数の配線コードとを備え、
前記第1のランプユニットおよび前記第2のランプユニットのそれぞれには、光源を備えており、
前記ハウジングには、前記配線コードを保持するコード保持構造が一体に形成されており、
前記コード保持構造は、前記ハウジング側から第1の方向に突出する第1突出壁および第2突出壁を有する一対の突出壁からなり、
前記第1突出壁は、板形状を有し、前記ハウジングから延びる一対の壁面と、前記一対の壁面を板厚方向で連結する外縁面とを備え、
前記外縁面には、前記第2突出壁側に位置するコード保持側面と、前記第2突出壁側と反対に位置する反対側側面と、前記コード保持側面から前記反対側側面に向かうに従って前記第1方向側に向かって徐々に傾斜するガイド側面とを有するとともに、前記コード保持側面と前記ガイド側面とが滑らかに連なっており、
前記第2突出壁は、
前記ハウジング側から片持ち梁状に延びる基端部と、前記基端部から前記第1突出壁側に向かって傾斜して延びる傾斜部と、傾斜部の先端から前記第1方向に沿って延びる先端部を有し、
前記基端部、前記傾斜部および前記先端部は、前記基端部から前記先端部に亘って前記ハウジングから延びる一対の壁面と、前記一対の壁面を板厚方向で連結する外縁面とを備えた板形状とされ、
前記第2突出壁の一対の壁面は、前記第1突出壁側に位置するコード保持壁面と、前記第1突出壁側と反対方向に位置する反対側壁面からなり、
前記コード保持壁面の面内方向は、前記第1突出壁の一対壁面と直交しており、
前記基端部および前記傾斜部における前記コード保持壁面と、前記第1突出壁のコード保持側面とは、互いに離間して対向して位置するとともに、その間の空間に前記配線コードを保持可能な保持空間を形成し、
前記保持空間は、前記基端部における前記コード保持壁面と当該コード保持壁面に対向する位置の前記コード保持側面との間の距離に比べて、前記傾斜部における前記コード保持壁面と当該コード保持壁面に対向する位置の前記コード保持側面との間の距離が狭くなるように形成されており、
前記先端部は、当該先端部における前記コード保持壁面と当該コード保持壁面に対向する位置の前記ガイド側面との間の距離が、前記第1の方向に向かうに従って離れるように拡開する形状とされ、
前記第1方向は、前記ハウジングを成形する際の金型の型開き方向であることを特徴とする車両用灯具。
【0010】
[2] 前記第2突出壁は、前記コード保持壁面の面内方向と直交する方向においてバネ性を有する板形状とされていることを特徴とする上記[1]に記載の車両用灯具。
[3] 前記配線コードは、前記第1のランプユニットまたは第2のランプユニットとコネクタ部との間を接続する配線コードであり、
前記配線コードは、前記第1のランプユニットまたは第2のランプユニットとコネクタ部との間で、少なくとも2箇所で前記コード保持構造によって保持されていることを特徴とする
上記[1]又は[2]に記載の車両用灯具。
[4] 前記配線コードは、前記第1突出壁を中心に屈曲していることを特徴とする[2]に記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、他部品と干渉して配線コードが傷つくなどの不具合が生じたりすることを防止することができる。また、成形しやすく配線コードの固定が簡単なコード保持構造を備えた車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図である。
【
図3】
図3は、ハウジングの背面に設けたコード保持構造20を背面側からの斜め上方向から見たときの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のコード保持構造のA-A線に沿った断面図である、
【
図5】
図5は、コード保持構造に配線コードを嵌め込むときの様子を模式的に示した斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の断面図における要部を拡大して示す説明図である。
【
図7】
図7は、従来の配線コードの固定構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る車両用灯具について好適な実施の形態を挙げて、図面を参照して説明する。以下の説明では、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、車両(自動車)に設置した状態において車両用灯具が照射する光の照射方向の中心軸指すものとする。従って「前」は当該灯具の光の主たる照射方向(前照灯の場合には運転者から見た方向、すなわち自動車の進行方向)に相当し、「後」は前方の反対方向(前照灯の場合には運転者の背面方向)に相当し、「左」は前方に向かって照射するときの運転者からみて左側(前照灯の場合に運転者からみて左側、すなわち車両の走行方向の左側)に相当する。「下」は路面側(運転者の足元側)に相当する。
【0014】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用灯具1を示す正面図であり、車両の左前方隅部に配設する前照灯を例に説明する。前照灯は自動車の進行方向前方を照射する車両用灯具である。車両用灯具1は、前照灯としての機能以外に複数の照明機能を発揮するために複数の機能の照明ユニットを備えている。例えば車両前方を照射する前照灯ユニット、方向指示を行うターンランプユニット、デイタイムランニングライトユニット(DRLユニット)などが内蔵されている。このように複数の照射機能ユニットを備え車両前方に設けるランプは、フロントコンビネーションランプもしくはヘッドランプとも称される。なお、本実施形態においてユニットとは、複数の発光もしくは反射機能を奏する車両用灯具において、少なくとも一つの機能を発揮する光学系を含む複数部材からなる塊りを意味する。各ユニットが一体化して独立してハンドリングができるように組立られているサブアッセイ品である場合と、独立してのハンドリングができないが、他のユニットや車両用灯具のハウジングもしくはアウターカバーに取り付けることによりひと塊りの構成となるサブアッセイ品の場合がある。光学系とは、光源と、光源からの出射光を所望の方向に向かって照射するための反射面や屈折レンズなどの光学部材との塊りを意味する。
【0015】
図1において、符号2で示すエリアが前照灯ユニットであり、走行ビーム配光とすれ違い配光とを1つのランプユニットにて切替可能としている。前照灯ユニット2より車両中央側の位置にDRLユニット3を備える。DRLユニット3の下側から前照灯ユニット2の下側に延びてターンランプユニット4が位置している。前照灯ユニット2、DRLユニット3およびターンランプユニット4は、前方側が開口するハウジング10内に取り付けて固定されている。ハウジング10の開口部はアウターカバー5にて覆われており、ハウジング10とアウターカバーとで囲まれた空間が灯室6となる。DRLユニット3、ターンランプユニット4が、本発明における第1のランプユニット、第2のランプユニットに相当する。
【0016】
図2は、
図1のハウジング10を後ろ側の一部を拡大して示す背面図であり、車両用灯具1の背面に相当する。配線コード12は、
図2において破線で示した位置に設けられ、ここでは説明を簡単にするために図示していない。ハウジング10には、光源を取り付けるための複数のソケット取付孔11が形成されている。ソケット取付穴11に取付られる図示しないソケットに配線コード12の端部に設けたコネクタを接続して電気的に接続する。また、図示しない電源(バッテリー)および車両用灯具のスイッチなどと接続するためのコネクタ部16も設けられている。コネクタ部16には、
図2において下側から図示しない電源などと接続している配線コードを有するコネクタを着脱可能に固定する。
【0017】
符号11a、11bは、LEDが搭載されたカプラー付ソケットを取り付けるソケット取付孔11であり、同時に光源取付孔としても機能する。
図2においては、DRLユニット3の光源を固定する光源取付孔11aと、ターンランプユニット4の光源を固定する光源取付孔11bを示している。前照灯ユニット2に接続するソケット取付孔は省略している。光源取付孔11a,11bのそれぞれには、LEDが搭載されたカプラー付ソケットをハウジング背面側から灯室6内に嵌め込んで固定する。このようなLEDが搭載されたカプラー付ソケットは、例えば本出願人による特願2017-244973号に記載の光源ユニットを用いることができる。LED光源のソケット部をハウジング10(車両用灯具1)の背面(後面)側に設けられた光源取付孔11に着脱自在に取り付けることによって、その前面側を灯室6の内側に配置することが可能となっている。ソケット部の背面(後面)側にはヒートシンクが一体に取り付けられており、LEDを搭載した回路基板と絶縁した状態で熱的に結合している。また、回路基板からソケット部の背面(後面)側に向かってリード端子が延びており、そのリード端子がソケット部の端子を構成する。LEDが搭載されたカプラー付ソケットのソケット部に配線コード12を図示しないコネクタを用いて接続される。
【0018】
なお、前照灯ユニット2の光源は、前照灯ユニット2に固定され図示しないLED基板に実装されたLEDであり、LEDが搭載されたカプラー付ソケットを使用しない。その代わりにハウジングに設けた図示しないソケット取付孔11には、灯室6の内側において引き回された図示しない配線と接続している図示しないコネクタが固定されている。灯室内においては前照灯ユニットの光源であるLEDを実装したLED基板と前記したコネクタが図示しない配線コードにより電気的に接続されている。灯室外においては前記したコネクタに、配線コード12が電気的に接続することで給電と点灯制御が行われる。
【0019】
ハウジング10の背面には、コード保持構造20がハウジング10と一体に形成されている。また、図示しない電源(バッテリー)および車両用灯具のスイッチなどと接続するためのコネクタ部16も設けられている。また、車両用灯具1を車体に取り付けるための取付脚部13もハウジング10と一体に形成されている。また、符号14は、前照灯ユニット2の光軸を調整するためのエーミングネジ、符号15が調整器具ガイドである。前照灯ユニット2は公知のエーミング構造を介してハウジング10に固定されている。ドライバーなどの調整器具を用いてエーミングネジを回転することで、前照灯ユニット2をハウジング10に対して近づけるもしくは離すように調整することができ、これにより前照灯ユニット2の光軸を調整することができる。
【0020】
図3は、ハウジング10の背面に設けたコード保持構造20を背面斜め上方向から見たときの斜視図、
図4は、
図3のコード保持構造のA-A線に沿った断面図である。コード保持構造20は、ハウジング10から突出する第1突出壁21および第2突出壁22からなる。一対の突出壁21,22が前記ハウジングと一体に形成されている。ハウジング10、第1突出壁21および第2突出壁22はABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂などの弾性を有する熱可塑性樹脂材料を用いて射出成形技術によって一体に形成される。本実施形態では突出壁22をバネ性を持たせるためにPP(ポリプロピレン)樹脂を用いた。
【0021】
ハウジング10は、灯室6を形成するために周囲に比べて中央が後側に凹み前方側に開口した概略箱形状をなしている。金型から成形品を取り出す際に、そのままの状態で離型できない形状となるアンダーカットが形成されないように形成することが好ましい。第1突出壁21および第2突出壁22もアンダーカットとならない形状とすることで、成形工程における不良品の発生が低減され歩留まりが向上する。また、金型構造を簡素化することができコスト低減を図ることができる。本実施形態では、第1突出壁21は、
図3に示したようにシンプルな板形状であり、金型の型開き方向である第1方向Dに沿って形成しているためアンダーカットとならずに、簡易な金型構造にて成形することができる。第2突出壁22は、
図3に示したように第1突出壁21に比べて屈曲している部分を有する。そのためにアンダーカットが生じやすい。しかしながら、本実施形態においては、粘性および弾性を有する樹脂材料を用い、且つ折れ曲がりの度合いを小さくして第1方向Dに沿った方向に延びる板形状とすることで、2方向抜き金型においても金型から離型できる形状としている。
【0022】
第1突出壁21は、ハウジング10から延びる一対の壁面23と、一対の壁面23を板厚方向で連結する外縁面24とを備える。互いに対向する壁面23、23が板形状の板面となり、平行に形成されている。厳密にはハウジング10から離れている位置、すなわち先端側に向かって小幅となるようにして、僅かにくさび型となるようにしている。先端をハウジング側に比べて小幅とすることで、金型からの離型性を向上させることができるからである。外縁面24には、第2突出壁22側に位置するコード保持側面24aと、第2突出壁22側と反対に位置する反対側側面24bと、コード保持側面24aから反対側側面24bに向かって傾斜するガイド側面24cとを有する。ガイド側面24cは、ハウジング10から離れた先端側に向かうにつれて、コード保持側面24aから反対側側面24bに向かう傾斜面である。
【0023】
第2突出壁22は、大別してハウジング10側から順に片持ち梁状に延びる基端部25と、基端部25から第1突出壁21側に向かって傾斜しながら延びる傾斜部26と、傾斜部26の先端から前記第1方向Dに沿って延びる先端部27の3箇所の部分からなる。基端部25と先端部27が概ね平行に形成されている。第2突出壁22も第1突出壁21と同様に全体として板形状に近似する形状として、射出成形技術による成形時に不具合が生じにくい構造とされている。全体として板形状をなす基端部25、傾斜部26および先端部27は、基端部25から先端部27に亘ってハウジング10側から延びる一対の壁面28と、一対の壁面28を板厚方向で連結する外縁面29とを備える。第2突出壁22の一対の壁面28は、第1突出壁21側に位置するコード保持壁面28aと、第1突出壁21側と反対方向に位置する反対側壁面28bからなる。
【0024】
概ね板形状に形成した第1突出壁21と第2突出壁22は、
図3に示したように互いの板面が直交するように形成されている。具体的には、
図3において第1突出壁21の板面(壁面23)が紙面において上下方向になる向きとし、紙面において左右方向が厚み方向となる向きにて形成されている。それに対して、第2突出壁22は、板面(壁面23)が紙面において左右方向になる向きであり、厚み方向が紙面における上下方向となるように形成されている。換言すれば、コード保持壁面28aの面内方向は、第1突出壁の一対の壁面23と直交している。直交とは厳密な意味での90度を示すものではない。概ね90度とみなせるような角度を意味する。本実施形態においては、ハウジング10と同時に成形可能な形状とするので、ハウジング10の形状によっては、金型の抜き方向の関係から90度ではなく、例えば互いの壁面の交差角度が90度から10数度外れている場合も直交に含まれるものとする。
【0025】
第1突出壁21のコード保持側面24aと、第2突出壁22の基端部25および傾斜部26の領域におけるコード保持壁面28aとは、
図3および
図4に示したように互いに離間して対向する位置に設置される。これにより、両者の間の空間に配線コード12を保持可能な保持空間30を形成する。なお、
図3は配線コード12を保持空間30に挿入する前の状態を示し、
図4では配線コード12を保持空間30に挿入した後の状態を図示している。
【0026】
保持空間30の大きさは、ハウジング10側の大きさと、ハウジング10から離れた位置(先端側)における大きさとが異なり、先端側の大きさがハウジング側よりも狭くなっている。具体的には、基端部25におけるコード保持壁面28aとその位置に対向する位置の前記コード保持側面24aとの間の距離H1に比べて、傾斜部26におけるコード保持壁面28aとその位置に対向する位置の前記コード保持側面24aとの間の距離H2が狭くなるように形成されている。また、距離H2は、配線コード12の短径Cよりも小さくなるように、例えば配線コード12の短径Cに対してC×1/2からC×3/4の大きさとなるように形成されている。これにより保持空間30内に配線コード12を挿入したときに、容易に抜けにくい構造とすることができる。距離H1は、配線コード12の短径Cと同一か短径Cに対して10%程度大きいもしくは小さい距離としている。短径Cにより小さい距離としたときには配線コード12をつぶしながら挟み込むものとなる。短径Cにより大きい距離としたときには配線コード12を移動できる遊び分の距離があるので、配線コードCの取付作業が容易になる。コード保持構造20にて保持するコードの実際の短径Cの大きさに合わせて短径Cと同一距離にて設計することが好ましい。従って、ハウジング10に設ける複数のコード保持構造20の全てを同一寸法として形成する必要はない。
【0027】
また、先端部27は、先端部27におけるコード保持壁面28aとこれに対向する位置のガイド側面24cとの間の距離が、
図4に示したようにハウジング10から離れるに従って(第1の方向Dに向かうに従って)距離が大きくなるように拡開形状とされている。これにより、配線コード12を保持空間30内に挿入し易くすることができる。コード保持壁面28aおよびコード保持側面24aは、いずれも滑らかに連続した形状となるように形成されている。これにより、配線コード12を挿入する際に配線コード12が傷つくことを防止するとともに、スムーズに挿入できるように形成されている。
【0028】
また、第2突出壁22は、コード保持壁面28aの面内方向と直交する方向においてバネ性を有するように板形状に形成されている。これにより、先端部27とガイド側面24cとの間の隙間から保持空間30内に配線コード12を挿入する際に、
図5に示したように第2突出壁22が保持空間30を広げる方向に可動する。
図5は、コード保持構造20に配線コード12を嵌め込むときの様子を模式的に示したもので、第2突出壁22が配線コード20を保持空間に導入する際にひろがる様子を点線にて示している。第2突出壁22は、バネ性を有するので保持空間30に挿入した後には、第2突出壁22は
図4に示すように配線コード12の短径Cよりも小さい距離H2となる。これにより、挿入した配線コード12が抜けにくくなる。
【0029】
一方、第1突出壁21は、配線コード12を保持する機能が担う固定側となるのでバネ性を持たないようにする。そのために第2突出壁22と直交するものとしている。具体的には、ハウジングの壁面側(基端部側)において保持空間30を通る方向の距離である距離W1、言い換えると基端部側における第1突出壁21の幅に相当する距離W1は、配線コード12を固定するために配線コード12の短径Cに対して2倍から4倍の距離を持つ大きさに形成している。傾斜部26側における距離W2も短径Cに対して2倍から4倍の距離を持つ大きさに形成する。ただし、距離W2<距離W1となるようにする。このようにすることで、第1突出壁21を変形しないようにするので安定して配線コード12を保持することができる。また、配線コード12を取り付ける際に第1突出壁21が破損しにくくなり、組付け作業作業の面からも好ましい。
【0030】
図6は、ハウジング10を射出成形にて形成する際の金型を示すもので、コード保持構造20の部分を拡大して示す断面図である。固定側の金型と可動側の金型がパーティングラインPLを境界として突き合わせる。固定側の金型と可動側の金型との間に隙間に形成したキャビティCにゲートCを通して溶融した樹脂材料を加圧注入する。キャビティに注入された樹脂材料が冷却されてハウジング10を形成する。符号Gは樹脂を注入するゲートであり固定側の金型からキャビティCに注入するダイレクトゲートである。キャビティCに溶融樹脂を注入した後に、可動側の金型を矢印Dの方向に可動させて金型を開く。この図においては
図3に示したハウジング10の背面側にコード保持構造20を形成する場合を示している。従って、型開き方向Dは、ハウジング10の背面側から灯室6となる凹部側に向かう方向である。また、第1突出壁21および第2突出壁22は型開き方向Dと平行であり、ハウジング10の背面にほぼ直交する方向としている。第1突出壁21は型開き方向Dに対して傾斜した抜き角を設けて製品が離型しやすくしている。同様に第2突出壁22にも抜き角を設定している。また、第2突出壁22は、保持空間30に対応する箇所があるため、アンダーカットとなるが無理抜きができるように形成している。具体的には先端部27および基端部25を型開き方向Dと平行にし、先端部27にも抜き角を設定する。これにより可動側の金型を固定側の金型から離れるように型開き方向Dに移動させたときに先端部27および傾斜部26が変形しながら金型から離形する。
【0031】
複数の配線コード12のそれぞれの一方の端部には、前照灯ユニット2、DRLユニット3およびターンランプユニット4のそれぞれが接続されている。他方の端部には、
図2に示したように1個のコネクタ17が設けられており、コネクタ17がハウジング10の背面に設けたコネクタ部16に固定されている。コネクタ17には、車両用灯具1を車両に取り付けたときに、前述したように車両に設けた電源(バッテリー)などと接続された配線と接続される。本実施形態では、コネクタ17から3つの配線コード12に分岐している。このような配線コードはハーネスとも称される。
図2において破線で示した配線コード12を引き回すラインは、コネクタ17からDRLユニット3の光源を固定する光源取付孔11aまでのDRLユニット用のライン12aと、コネクタ17からターンランプユニット4の光源を固定する光源取付孔11bまでのターンランプユニット用のライン12bと、コネクタ17から図示しない前照灯ユニット2に接続するソケット取付孔まで引き回すライン12cを備える。
【0032】
ライン12aは、コネクタ17と光源取付孔11aとの間に3箇所のコード保持構造20を通る。すなわち、ライン12aにて引き回される配線コード12は3箇所のコード保持構造で固定される。3箇所のコード保持構造20を光源取付孔11a側から順に符号20a1,20a2,20a3にて図示する。コード保持構造11a2および11a3においては、配線コード12を屈曲して引き回す。このとき、コード保持構造11a2および11a3のそれぞれを中心としてライン12aが屈曲する鋭角側に第1突出壁21が位置し、鈍角側に第2突出壁22が位置するように形成している。鋭角側に第1突出壁21が位置するようにすることで、配線コード12が屈曲する際に第1突出壁21のコード保持側面24aを中心に屈曲することになる。コード保持側面24aは、板形状とした第1突出壁21の板厚方向の側面に相当する外縁面24である。それ故、配線コード12を屈曲するときにかかる応力は、殆どが第1突出壁の外縁面24に加えられるものであり、第2突出壁22に加えられる応力は小さい。
【0033】
また、保持空間30において配線コードが接触するコード保持側面24aとコード保持側壁面28aとを比べると、コード保持側壁面28aの方がコード保持側面24aよりも面積が広い。さらに、コード保持側壁面28aを備える第2突出壁22が配線コード12を嵌め込む際の可動片であり、第1突出壁21が固定片となる。従って応力に対して変形しにくい第1突出壁21を屈曲する際の鋭角側に位置するようにするのが好ましい。特に本実施形態では、コード保持側面24aは、第1突出壁21の板厚方向の側面であるので、屈曲前後の配線コードは、いろいろな方向の屈曲にも対応できる。それ故、屈曲方向に合せてコード保持構造11を形成する向きを調整しなくても多くの屈曲に対応できるので、同じ向きにて形成したコード保持構造11で対応することができ、コード保持構造11を射出成形にて形成する際の金型構造を簡単にすることができる。なお、コード保持構造11の向きとは、例えば第1突出壁21の壁面23の面内方向である。
【0034】
また、コード保持構造11a1においても、配線コード12は屈曲している。しかしながら、コード保持構造11a1では鋭角側に第1突出壁21が位置せず、鈍角側に第1突出壁21が位置するように引き回している。これは、光源取付孔11aに取り付けるDRLユニット3の光源は、光源取付孔11aに挿脱可能なものとしているため、DRLユニット3の光源に取り付けられている部分の近傍領域における配線コード12は、移動可能な範囲を広くしないと光源取付孔11aへの取付、離脱作業が行いにくいからである。ライン12aは、コネクタ17と光源取付孔11aとの間に3箇所のコード保持構造11としたが、コード保持構造11a2を省略して3箇所としても良い。少なくとも2箇所のコード保持構造11で固定することで、コネクタとの距離が離れていて、且つ、屈曲部が必要なラインの引き回しであっても配線コード12を屈曲部を設けて確実に保持することができる。
【0035】
ライン12bは、コネクタ17と光源取付孔11bとの間に1箇所のコード保持構造11を設けている。1箇所のコード保持構造11を符号11b1にて図示する。ライン12bにおいては、コネクタ17と光源取付孔11bとの間の距離がライン12aに比べて近く、光源取付孔11bの径の2倍程度でしかない。このように光源取付孔11bの径の3倍に満たない長さならば、配線コード12が他部品と干渉しないように屈曲部を設ける必要性も小さい。そこで、配線コードの浮き上がりや脱落を予防する事を目的として1箇所のコード保持構造11b1のみを設けている。
【0036】
ライン12cは、コネクタ17とハウジングに設けた図示しないソケット取付孔11との間に複数箇所のコード保持構造11を通る。
図2においては、コネクタ17側から順に符号11c1,11c2の2箇所を図示する。コード保持構造11c2においては、配線コード12を屈曲して引き回す。このとき、コード保持構造11c2を中心としてライン12cが屈曲する鋭角側に第1突出壁21が位置し、鈍角側に第2突出壁22が位置するように形成している。配線コード12を屈曲するときにかかる応力が第1突出壁の外縁面24に加えられるものである。また、コード保持構造11c1においても、配線コード12は屈曲している。しかしながら、コード保持構造11c1では鋭角側に第1突出壁21が位置せず、鈍角側に第1突出壁21が位置するように引き回している。これは、コード保持構造11c1の近くに位置するコネクタ17はハウジング10に挿脱可能なものとしているため、配線コード12の移動可能な範囲を広くするために、バネ性を有する第2突出壁22を鋭角側にして可動可能にして保持するようにしているためである。
【0037】
上記した実施形態では、コード保持構造20をハウジング10の背面側に複数個所形成していた。コード保持構造20はハウジング10の内側(灯室6側)の面に設けても良い。灯室6内において配線コードを引き回すこともあるからである。また、配線コードはランプユニットと接続するコードに限るものではない。例えば前照灯ユニット2をすれ違いビーム配光と走行ビーム配光の切替を機械式の手段で行う場合には、ソレノイドなどの機械的な可動部材を制御するための配線コードも必要となる。このように灯室6内に収納されたランプユニット2,3,4の何れかの一部を可動させるために用いる配線コードや、ランプユニット2,3,4の何れかと同期させる制御などに用いる配線コードなど、ランプユニットと協働するために引き回される配線コードの保持も本発明の対象であり、本発明におけるランプユニットはランプユニットの制御に関する信号が流れる配線コードが接続される電子部品も広義の意味でランプユニットに含まれるものとする。
【0038】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその趣旨から逸脱することなく他の様々な形で構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。例えば、車両用灯具として前照灯を例に説明したが、リアコンビネーションランプなど、他の機能の車両用灯具であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
四輪自動車の車両用灯具に限らず、二輪車の車両用灯具など様々な種類の車両用灯具にも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1…車両用灯具
2…前照灯ユニット
3…DRLユニット
4…ターンランプユニット
5…アウターカバー
6…灯室
10…ハウジング
11…ソケット取付孔
11a,11b…光源取付孔
12…配線コード
17…コネクタ
20…コード保持構造
21…第1突出壁
22…第2突出壁
23…第1突出壁の壁面
24…第1突出壁の外縁面
24a…コード保持側面
24b…反対側側面
24c…ガイド側面
25…基端部
26…傾斜部
27…先端部
28…第2突出壁の壁面
28a…コード保持壁面
28b…反対側壁面
29…第2突出壁の外縁面
30…保持空間
D…第1方向