(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137911
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】遮音構造及び建具装置
(51)【国際特許分類】
E06B 7/22 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
E06B7/22 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044348
(22)【出願日】2022-03-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片渕 郁哉
(72)【発明者】
【氏名】村岡 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】山下 英吾
【テーマコード(参考)】
2E036
【Fターム(参考)】
2E036AA05
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EA08
2E036EB03
2E036FB01
2E036GA07
2E036HB01
(57)【要約】
【課題】建具の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた遮音構造及びそれを備えた建具装置を提供する。
【解決手段】遮音構造50は、吊戸30の戸尻側端部と方立部材14とに互いに向かってそれぞれ突出するように設けられた各2つの突出部材54,55を備えている。各2つの突出部材54,55の突出高さは、吊戸側では戸先側から戸尻側へ向かうほど高くなり、方立部材側では戸先側から戸尻側へ向かうほど低くなる。吊戸30が閉位置にあるときに、吊戸側と方立部材側の突出部材54,55が1つずつ前後方向に対応し、吊戸側の各突出部材54,55の先端部が対応する突出部材54,55の先端部に吊戸30の戸尻側から当接することにより、吊戸側の2つの突出部材54,55と方立部材側の2つの突出部材54,55との間に、四周が囲まれた閉空間60が形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に移動することにより左右方向に延びる壁の開口を開閉する建具と、該建具が上記開口を閉塞する閉位置にあるときに上記建具の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分を有する相手材との間に設けられる遮音構造であって、
上記建具の上記戸尻側端部に設けられ、該建具の上端部から下端部に亘って延び、上記建具の上記相手材との対向面から上記相手材側に突出する複数の第1突出部材と、
上記相手材の上記重複部分に設けられ、上記相手材の上端部から下端部に亘って延び、上記相手材の上記建具との対向面から上記建具側に突出する複数の第2突出部材とを備え、
上記複数の第1突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなり、
上記複数の第2突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなり、
上記複数の第1及び第2突出部材は、上記建具が上記閉位置にあるときに、上記第1突出部材と上記第2突出部材とが1つずつ前後方向に対応すると共に、上記各第1突出部材の先端部が対応する上記第2突出部材の先端部に上記建具の戸尻側から当接することにより、左右方向に隣り合う2つの上記第1突出部材と該2つの上記第1突出部材に対応する2つの上記第2突出部材との間に、四周が囲まれた閉空間が形成されるように設けられている
ことを特徴とする遮音構造。
【請求項2】
請求項1に記載の遮音構造において、
上記第1突出部材及び上記第2突出部材は、可撓性を有する板状部材によって構成されている
ことを特徴とする遮音構造。
【請求項3】
請求項2に記載の遮音構造において、
上記複数の第1突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い上記第1突出部材は、基端部に他の部分よりも薄い薄肉部を有し、
上記複数の第2突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い上記第2突出部材は、基端部に他の部分よりも薄い薄肉部を有している
ことを特徴とする遮音構造。
【請求項4】
請求項1に記載の遮音構造において、
上記第1突出部材は、上記第2突出部材と当接する部分が湾曲面で構成され、
上記第2突出部材は、上記第1突出部材と当接する部分が湾曲面で構成されている
ことを特徴とする遮音構造。
【請求項5】
左右方向に移動することにより左右方向に延びる壁の開口を開閉する建具と、
上記建具が上記開口を閉塞する閉位置にあるときに上記建具の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分を有する相手材と、
上記建具と上記相手材との間に設けられる遮音構造とを備えた建具装置であって、
上記遮音構造は、請求項1~4のいずれか1つに記載の遮音構造である
ことを特徴とする建具装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸や吊戸等の左右にスライド移動する建具に用いられる遮音構造、及びそれを備えた建具装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、引戸や吊戸等の左右にスライド移動する建具を備えた建具装置では、指詰めを防止する観点で、建具同士の隙間や建具と建具枠の隙間が広く形成されるようになっている。このような建具装置では、指詰めは防止できても、建具によって仕切られる2つの室間での音漏れが問題となる。この問題に対し、建具同士の隙間や建具と建具枠の隙間に遮音構造を設け、2つの室間での音漏れを抑制するようにした建具装置が提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された建具装置に設けられる遮音構造は、引戸本体の戸尻側端部と、建具を閉めたときに引戸本体の戸尻側端部と前後方向に重なる相手材の重複部分とに設けられた2つの三角柱状のパッキンによって構成されている。上記建具装置では、建具を閉めたときに、2つの三角柱状のパッキンが当接することにより音漏れを抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記遮音構造では、2つの三角柱状のパッキンの接触面積が大きいため、当接時(建具を閉じる際)に互いに作用する反発力や摩擦力が大きくなる。そのため、建具を閉めたときに2つのパッキンに互いに作用する大きな反発力や摩擦力により、建具が閉まらず、遮音性能を逆に低下させるおそれがある。
【0006】
ところで、引戸や吊戸等のスライド移動する建具の中には、建具を閉める際に、戸先が建具枠に所定距離まで近づいたところで建具がゆっくり閉まるように建具の移動をアシストするアシスト機構が設けられたものがある。このようなアシスト機構が設けられた建具でも、アシスト機構のアシスト力はさほど大きくないので、上記遮音構造では、2つのパッキンの当接時に互いに大きな反発力や摩擦力が作用して建具が閉まらなくなり、遮音性能を低下させるおそれがある。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、建具の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた遮音構造及びそれを備えた建具装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、建具及び相手材に互いに向かって突出する突出部材を複数ずつ設け、建具が閉位置にあるときに複数の突出部材の先端部のみが当接するように構成することにより、建具と相手材との間の隙間に複数の薄い障壁が構築されると共に、複数の障壁の間に四周が閉塞された遮音空間が区画されるようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明は、左右方向に移動することにより左右方向に延びる壁の開口を開閉する建具と、該建具が上記開口を閉塞する閉位置にあるときに上記建具の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分を有する相手材との間に設けられる遮音構造を前提とするものである。
【0010】
そして、第1の発明は、上記建具の上記戸尻側端部に設けられ、該建具の上端部から下端部に亘って延び、上記建具の上記相手材との対向面から上記相手材側に突出する複数の第1突出部材と、上記相手材の上記重複部分に設けられ、上記相手材の上端部から下端部に亘って延び、上記相手材の上記建具との対向面から上記建具側に突出する複数の第2突出部材とを備え、上記複数の第1突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなり、上記複数の第2突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなり、上記複数の第1及び第2突出部材は、上記建具が上記閉位置にあるときに、上記第1突出部材と上記第2突出部材とが1つずつ前後方向に対応すると共に、上記各第1突出部材の先端部が対応する上記第2突出部材の先端部に上記建具の戸尻側から当接することにより、左右方向に隣り合う2つの上記第1突出部材と該2つの上記第1突出部材に対応する2つの上記第2突出部材との間に、四周が囲まれた閉空間が形成されるように設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、建具が開口を閉塞する閉位置にあるときに、前後方向に対向する建具の戸尻側端部と相手材の重複部分とに、互いの対向面から互いに向かって突出する第1及び第2突出部材を複数ずつ設けることとしている。また、建具に設けられる複数の第1突出部材を、左右方向において建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなるように形成し、相手材に設けられる複数の第2突出部材を、左右方向において建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなるように形成している。さらに、複数の第1及び第2突出部材は、建具が閉位置にあるときに、各第1突出部材の先端部が前後方向に対応する第2突出部材の先端部に建具の戸尻側から当接し、これにより、左右方向に隣り合う2つの第1突出部材とこれに対応する2つの第2突出部材との間に四周が囲まれた閉空間が形成されるように設けられている。このような構成により、建具を閉位置に移動させると、建具と相手材との間に形成される隙間において、複数の第1突出部材とこれに対応する第2突出部材の先端部どうしが当接することにより、上記隙間に互いの先端部が当接する複数の第1及び第2突出部材によって複数の障壁が構築される。従来の遮音構造では、建具と相手材との間の隙間で一対の三角柱状パッキンが当接することにより、上記隙間に一重の厚い障壁が構築されるところ、上記構成によれば、建具と相手材との隙間に上述の一重の厚い障壁よりも薄い障壁を複数構築することにより、従来の遮音構造と遜色のない優れた遮音性能を有する遮音構造を提供することができる。
【0012】
また、第1の発明では、建具が閉位置にあるときに、複数の第1突出部材の先端部と複数の第2突出部材の先端部とが当接することにより、左右方向に隣り合う2つの第1突出部材とこれに当接する2つの第2突出部材との間に四周が囲まれた閉空間が形成されるように構成されている。よって、第1の発明によれば、このように隣り合う2つの障壁の間に閉空間が形成されることにより、障壁を通り抜ける音波を閉空間で減衰させることができる。このような構成によっても遮音性能が向上する。
【0013】
さらに、第1の発明では、建具を閉位置に移動させる際に、複数の第1突出部材と第2突出部材とが当接することとなるが、先端部どうしが当接するだけであるため、従来の遮音構造のように、当接時に互いに大きな反発力や摩擦力が作用することがなく、建具のスムーズな開閉動作を阻害することもない。
【0014】
以上により、第1の発明によれば、建具の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた遮音構造を提供することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、上記第1突出部材及び上記第2突出部材は、可撓性を有する板状部材によって構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明では、第1突出部材及び第2突出部材が可撓性を有する板状部材によって構成されているため、可撓性を有する突出部材の先端部どうしが当接する際に互いに撓むことで衝突の衝撃が緩和され、互いに作用する反発力や摩擦力も低減される。よって、第2の発明によれば、建具のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。また、このような構成によれば、上述した建具を閉める際に、建具がゆっくり閉まるように建具の移動をアシストするアシスト機構が設けられた建具においても、建具のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。
【0017】
また、第2の発明によれば、上述のように第1突出部材及び第2突出部材を、互いの先端部が当接する際に互いに撓むように可撓性を有する板状部材によって構成することにより、第1突出部材及び第2突出部材の設置位置が所望の位置から多少ずれていても、先端部どうしを確実に当接させることができる。よって、上記構成によれば、建具が閉位置にあるときに、建具と相手材との間の隙間に複数の障壁を確実に構築することができるため、優れた遮音性能を確実に実現することができる。
【0018】
第3の発明は、第2の発明において、上記複数の第1突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い上記第1突出部材は、基端部に他の部分よりも薄い薄肉部を有し、上記複数の第2突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い上記第2突出部材は、基端部に他の部分よりも薄い薄肉部を有していることを特徴とするものである。
【0019】
第3の発明では、複数の第1突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い第1突出部材には基端部に薄肉部を設け、同様に、複数の第2突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い第2突出部材には基端部に薄肉部を設けることとした。このような構成により、剛性の高い突出高さが最も高い可撓性を有する突出部材が対応する突出部材と当接する際により撓み易くなる。よって、第3の発明によれば、建具のよりスムーズで且つより確実な開閉動作を実現することができる。
【0020】
第4の発明は、第3の発明において、上記第1突出部材は、上記第2突出部材と当接する部分が湾曲面で構成され、上記第2突出部材は、上記第1突出部材と当接する部分が湾曲面で構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
第4の発明では、第1突出部材及び第2突出部材の互いに当接する部分が湾曲面で構成されているため、当接部分が小さく、当接時に互いに作用する反発力や摩擦力が小さくなる。よって、第4の発明によれば、建具のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。
【0022】
第5の発明は、左右方向に移動することにより左右方向に延びる壁の開口を開閉する建具と、上記建具が上記開口を閉塞する閉位置にあるときに上記建具の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分を有する相手材と、上記建具と上記相手材との間に設けられる遮音構造とを備えた建具装置であって、上記遮音構造は、第1~第4のいずれか1つの発明に係る遮音構造であることを特徴とするものである。
【0023】
第5の発明では、第1~第4の発明に係る遮音構造を備えているため、建具の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた第1~第4の発明と同様の効果を有する遮音構造を備えた建具装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した如く、本発明によると、建具及び相手材に互いに向かって突出する突出部材を複数ずつ設け、建具が閉位置にあるときに複数の突出部材の先端部のみが当接するように構成することにより、建具と相手材との間の隙間に複数の薄い障壁が構築されると共に、複数の障壁の間に四周が閉塞された遮音空間が区画されるようにしたため、建具の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた遮音構造及びそれを備えた建具装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る遮音構造を備えた吊戸装置の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の吊戸装置の遮音構造が設けられた部分を拡大した平面図であり、(A)は、吊戸が開位置にあるときを示し、(B)は吊戸が閉位置にあるときを示している。
【
図3】
図3は、第1及び第2パッキンの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る吊戸装置の遮音構造が設けられた部分を拡大した平面図であり、(A)は、吊戸が開位置にあるときを示し、(B)は吊戸が閉位置にあるときを示している。
【
図5】
図5は、実施形態3に係る吊戸装置の遮音構造が設けられた部分を拡大した平面図であり、(A)は、吊戸が開位置にあるときを示し、(B)は吊戸が閉位置にあるときを示している。
【
図6】
図6は、実施形態4に係る吊戸装置の遮音構造が設けられた部分を拡大した平面図であり、(A)は、吊戸が開位置にあるときを示し、(B)は吊戸が閉位置にあるときを示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0027】
《発明の実施形態1》
-吊戸装置の構成-
図1は、本発明の実施形態1に係る遮音構造50を備えた吊戸装置(建具装置)100の正面図である。以下では、説明の便宜上、
図1の左側、右側、上側、下側を、それぞれ「左」、「右」、「上」、「下」として説明する。また、
図1の紙面直交方向において手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。また、吊戸30の幅方向(左右方向)に関し、開口2の閉塞時に当接する左縦枠11側(
図1の左側)を戸先側、逆側(
図1の右側)を戸尻側と言う。
【0028】
図1に示すように、吊戸装置100は、建物の壁Wに形成された正面視において矩形状の切り欠き部1に施工される。吊戸装置100は、建具枠10と、控え壁20と、吊戸30と、遮音構造50とを備えている。切り欠き部1に建具枠10と控え壁20とを施工することにより、吊戸30によって開閉される開口2が区画される。
【0029】
[建具枠]
建具枠10は、左縦枠11と、右縦枠12と、鴨居13と、方立部材14とを有している。左縦枠11及び右縦枠12は、上下方向に平行に延びる木製の板状部材によって構成されている。左縦枠11は、幅(前後方向の長さ)が切り欠き部1の奥行と同程度の長さとなるように形成されている。右縦枠12は、幅が切り欠き部1の奥行よりも控え壁20の厚さ分だけ短い長さとなるように形成されている。
【0030】
鴨居13は、左右方向に水平に延びる木製の板状部材によって構成されている。鴨居13は、左縦枠11及び右縦枠12の上端部を連結するように左縦枠11及び右縦枠12に取り付けられている。鴨居13は、開口2に対面する左側部分13aの幅(前後方向の長さ)が切り欠き部1の奥行と同程度の長さとなり、開口2の右側にあって開口2に対面しない右側部分13bの幅が切り欠き部1の奥行よりも控え壁20の厚さ分だけ短い長さとなるように形成されている。
【0031】
方立部材14は、左縦枠11及び右縦枠12に平行に上下方向に延びる木製の板状部材によって構成されている。方立部材14は、幅(前後方向の長さ)が切り欠き部1の奥行よりも短く控え壁20の厚さ以上の長さとなるように形成されている。方立部材14は、上端部の右側面を鴨居13の右側部分13bの左端面に当接させた状態で鴨居13に取り付けられている。
【0032】
方立部材14には、前面に切り欠き溝15が形成されている。切り欠き溝15は、横断面が矩形状であり、方立部材14の上端から下端に亘るように形成されている。切り欠き溝15には、横断面がL字形状で方立部材14の上端から下端に亘る長さのアルミニウム製のカバー部材16が取り付けられている。切り欠き溝15の溝内面は、カバー部材16によって覆われている。切り欠き溝15は、カバー部材16は、後述する遮音構造50の第2パッキン52の基板部材53が嵌まる大きさに形成されている。
【0033】
建具枠10は、左縦枠11と右縦枠12と鴨居13と方立部材14とを組み立てた状態で、壁Wの切り欠き部1に施工される。
【0034】
[控え壁]
控え壁20は、方立部材14と鴨居13の右側部分13bと右縦枠12と床面Fとによって囲まれる部分に構築されている。控え壁20は、いかなる構成であってもよいが、例えば、複数の芯材を格子状に組んだ下地の前後にパネル材を貼り付け、壁紙等で化粧することによって構成することができる。このように建具枠10と控え壁20を切り欠き部1に施工することにより、壁Wには、建具枠10の左縦枠11と鴨居13の左側部分13aと方立部材14と床面Fとによって矩形状に区画される開口2が形成される。
【0035】
[吊戸]
吊戸30は、鴨居13に左右方向にスライド移動可能に吊り下げ支持されている。具体的には、吊戸30の上端部には、吊り車装置(図示省略)が取り付けられ、この吊車装置が、鴨居13の下端面に形成された左側部分13aから右側部分13bに亘って左右方向に延びるレール溝(図示省略)内に設けられた吊り下げ用ガイドレール(図示省略)にスライド可能に係合することにより、鴨居13に左右方向にスライド移動可能に吊り下げ支持されている。
【0036】
吊戸30の左端部(戸先側の端部)の前後面には、引手31,31が取り付けられている。吊戸30は、開口2の前側において左端面(戸先側の端面)が左縦枠11に当接する閉位置まで移動すると、右端部(戸尻側の端部)が方立部材14と前後方向に重なる幅に形成されている。吊戸30は、閉位置において開口2を閉塞する高さに形成されている。吊戸30は、左端面が左縦枠11に当接する閉位置から右端面(戸尻側の端面)が右縦枠12に当接する全開位置までスライド移動可能に構成されている。
【0037】
吊戸30の戸尻側端部には、後面に切り欠き溝32が形成されている。切り欠き溝32は、横断面が矩形状であり、吊戸30の上端から下端に亘るように形成されている。切り欠き溝32には、横断面がL字形状で吊戸30の上端から下端に亘る長さのアルミニウム製のカバー部材33が取り付けられている。切り欠き溝32の溝内面は、カバー部材33によって覆われている。切り欠き溝32は、カバー部材33は、後述する遮音構造50の第1パッキン51の基板部材53が嵌まる大きさに形成されている。
【0038】
[遮音構造]
図1及び
図2に示すように、遮音構造50は、吊戸30の戸尻側端部に設けられる第1パッキン51と、方立部材14に設けられる第2パッキン52とを備えている。なお、本実施形態1では、方立部材14が、吊戸(建具)30が開口2を閉塞する閉位置にあるときに全部が吊戸30の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分となる相手材を構成する。
【0039】
本実施形態1では、第1パッキン51と第2パッキン52とは同一の構成を有している。
図3に示すように、第1及び第2パッキン51,52は、基板部材53と、2つの突出部材54,55とをそれぞれ有している。本実施形態1では、第1及び第2パッキン51,52において、基板部材53と2つの突出部材54,55は合成樹脂(軟質ゴム)で一体に形成されている。
【0040】
基板部材53は、上下方向に長く延びる帯板状部材である。基板部材53は、例えば厚さが2.0~3.0mmであり、吊戸30の上端から下端に亘る長さに形成されている。
【0041】
2つの突出部材54,55は、上下方向に長く延びる帯板状部材である。2つの突出部材54,55は、可撓性を有する板状部材に形成されるように、例えば厚さが1.0~2.5mmと薄く形成されている。2つの突出部材54,55は、吊戸30の上端から下端に亘る長さに形成されている。2つの突出部材54,55は、基板部材53の幅方向の両端部から基板部材53に垂直な方向に突出するように設けられている。
【0042】
突出部材55は、突出部材54よりも突出高さが高くなるように形成されている。例えば、突出部材54の突出高さは6.0~10.0mmであり、突出部材55の突出高さは12.0~16.0mmである。
【0043】
突出高さの高い突出部材55の基板部材53に連続する基端部には、外面(突出部材54との対向面の裏面)に溝57が形成されている。溝57は、突出部材55の上端から下端に亘るように形成されている。本実施形態1では、溝57は、横断面が直径0.5~0.7mmの半円形状となるように形成されている。突出部材55は、溝57により、該溝57が形成された部分が他の部分よりも薄い薄肉部となっている。
【0044】
図2に示すように、第1パッキン51は、吊戸30の戸尻側端部の後面に形成された切り欠き溝32内のカバー部材33に例えば接着シール等によって固定されている。第1パッキン51は、2つの突出部材54,55のうち、突出高さの高い突出部材55が、突出高さの低い突出部材54よりも左右方向において右側(吊戸30の戸尻側)に配置される向きで、基板部材53の前面をカバー部材33の長辺部分の後面に固定する。第1パッキン51をこのような向きで吊戸30に取り付けることにより、遮音構造50の吊戸30の戸尻側端部に設けられる第1パッキン51の複数の突出部材(第1突出部材)54,55は、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなる。
【0045】
図2に示すように、第2パッキン52は、方立部材14の前面に形成された切り欠き溝15内のカバー部材16に例えば接着シール等によって固定されている。第2パッキン52は、2つの突出部材54,55のうち、突出高さの高い突出部材55が、突出高さの低い突出部材54よりも左右方向において左側(吊戸30の戸先側)に配置される向きで、基板部材53の後面をカバー部材16の長辺部分の前面に固定する。第2パッキン52をこのような向きで方立部材14に取り付けることにより、遮音構造50の方立部材14(相手材の重複部分)に設けられる第2パッキン52の複数の突出部材(第2突出部材)54,55は、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなる。
【0046】
図2(B)に示すように、第1及び第2パッキン51,52は、吊戸30が開口2を閉塞する閉位置にあるときに、前後方向に対向すると共に、第1パッキン51の2つの突出部材54,55の先端部(突出方向において先端から1.0~2.0mmまでの部分)が第2パッキン52の対応する突出部材55,54の先端部(突出方向において先端から1.0~2.0mmまでの部分)に右側(戸尻側)から当接するように設けられている。具体的には、吊戸30が閉位置にあるときに、第1パッキン51の突出高さの低い突出部材54の先端部の左側面が、第2パッキン52の突出高さの高い突出部材55の先端部の右側面に当接し、第1パッキン51の突出高さの高い突出部材55の先端部の左側面が、第2パッキン52の突出高さの低い突出部材54の先端部の右側面に当接する。
【0047】
なお、吊戸30が
図2(A)に示す開口2を閉塞しない開位置から
図2(B)に示す開口2を閉塞する閉位置に移動する際に、第1パッキン51の各突出部材54,55が、対応する第2パッキン52の突出部材55,54以外の突出部材55,54とは当接しないように、第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の突出高さ及び互いに当接する前後方向(突出方向)の範囲が設定されている。つまり、第1及び第2パッキン51,52が2つの突出部材54,55をそれぞれ備える本実施形態1では、吊戸30を開位置から閉位置まで移動させる際に、第1及び第2パッキン51,52の突出高さの低い突出部材54,54どうし及び突出高さの高い突出部材55,55どうしが当接しないように第1及び第2パッキン51,52が構成及び配置されている。
【0048】
また、第1及び第2パッキン51,52は、吊戸30が
図2(B)に示す閉位置にあるときに、第1パッキン51の各突出部材54,55がそれぞれ対応する第2パッキン52の突出部材55,54に確実に当接するが、それぞれ対応する第2パッキン52の突出部材55,54を乗り越えない位置に配置されている。例えば、本実施形態1では、吊戸30が閉位置よりも僅かに戸尻側にずれた位置にあるときに、第1及び第2パッキン51,52の対応する突出部材54,55の先端部どうしが当接するように、第1及び第2パッキン51,52が配置されている。第1及び第2パッキン51,52をこのように配置することにより、吊戸30を
図2(A)に示す開位置から
図2(B)に示す閉位置に移動させると、吊戸30が閉位置よりも僅かに戸尻側にずれた位置にあるときに、第1及び第2パッキン51,52の対応する突出部材54,55の先端部どうしが当接し、そこから吊戸30がさらに戸先側へ移動することにより、吊戸30が
図2(B)に示す閉位置にあるときには、第1及び第2パッキン51,52の対応する突出部材54,55が互いに撓んだ状態で先端部どうしが当接した状態となる。
【0049】
-遮音構造の作用-
次に、遮音構造50の遮音作用について説明する。
【0050】
図2(A)に示すように、吊戸30が開口2を閉塞しない開位置にあるとき、吊戸30の戸尻側端部に設けられた第1パッキン51は、方立部材14に取り付けられた第2パッキン52から離れた位置にあり、第2パッキン52と前後方向に対向しない。
【0051】
吊戸30を上記開位置から開口2を閉塞する
図2(B)に示す閉位置に移動させると、吊戸30の戸尻側端部が方立部材14に前後方向に対向し、第1パッキン51が第2パッキン52と前後方向に対向する。そして、第1パッキン51の突出高さの低い突出部材54の先端部が、第2パッキン52の突出高さの高い突出部材55の先端部に当接し、第1パッキン51の突出高さの高い突出部材55の先端部が、第2パッキン52の突出高さの低い突出部材54の先端部に当接する。そして、吊戸30は、第1パッキン51の2つの突出部材54,55の先端部が第2パッキン52の対応する突出部材55,54の先端部に当接する位置からわずかに戸先側へ移動したところで左縦枠11に当接する閉位置(
図2(B)の位置)に至る。吊戸30が閉位置にあるとき、第1パッキン51の2つの突出部材54,55と第2パッキン52の対応する突出部材55,54とは共に撓んだ状態で先端部どうしが当接した状態となる。このように第1及び第2パッキン51,52の突出部材54,55が、互いの先端部が当接する際に互いに撓むように構成されているため、第1及び第2パッキン51,52の対応する突出部材54,55の先端部どうしが当接する際に互いに撓むことで衝突の衝撃が緩和され、互いに作用する反発力や摩擦力も低減される。よって、吊戸30をスムーズに且つ確実に閉じることができる。
【0052】
また、吊戸30が
図2(B)に示す閉位置にあるときに、第1パッキン51の2つの突出部材54,55の先端部は、第2パッキン52の対応する突出部材55,54の先端部に当接しており、第1パッキン51の2つの突出部材(第1突出部材)54,55と第2パッキン52の突出部材(第2突出部材)55,54との間に、四周が囲まれた閉空間60が形成される。
【0053】
以上のように、吊戸30が閉位置にあるときに、吊戸30の戸尻側端部と方立部材14との間に形成される隙間は、互いの先端部が当接する第1パッキン51の2つの突出部材54,55と第2パッキン52の突出部材55,54とで構成される二重の薄い障壁によって二重に塞がれることとなる。よって、一重の厚い障壁を有する遮音構造と遜色ない遮音性能を発揮することができる。また、二重の障壁の間に閉空間60が形成されることにより、障壁を通り抜ける音波が閉空間60で減衰するため、このことによっても遮音性能が向上する。
【0054】
なお、吊戸30に設けられる第1パッキン51の2つの突出部材54,55は、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなるように形成され、方立部材14に設けられる第2パッキン52の2つの突出部材54,55は、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなるように形成されている。そのため、吊戸30を
図2(B)に示す閉位置から開ける際には、第1及び第2パッキン51,52は、突出部材54,55どうしが当接することなく離れていく。
【0055】
-実施形態1の効果-
本実施形態1の遮音構造50では、吊戸30が開口2を閉塞する閉位置にあるときに、前後方向に対向する吊戸30の戸尻側端部と方立部材14(相手材の重複部分)とに、互いの対向面から互いに向かって突出する突出部材54,55を2つ(複数)ずつ設けることとしている。また、吊戸30に設けられる第1パッキン51の2つ(複数)の突出部材54,55を、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなるように形成し、方立部材14に設けられる第2パッキン52の2つ(複数)の突出部材54,55を、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなるように形成している。さらに、第1及び第2パッキン51,52の複数の突出部材54,55は、吊戸30が閉位置にあるときに、第1パッキン51の各突出部材54,55の先端部が前後方向に対応する第2パッキン52の突出部材54,55の先端部に吊戸30の戸尻側から当接し、これにより、第1パッキン51の左右方向に隣り合う2つの突出部材54,55とこれに対応する第2パッキン52の2つの突出部材55,54との間に四周が囲まれた閉空間60が形成されるように設けられている。このような構成により、吊戸30を閉位置に移動させると、吊戸30と方立部材14との間に形成される隙間において、第1パッキン51の複数の突出部材54,55とこれに対応する第2パッキン52の突出部材55,54の先端部どうしが当接することにより、上記隙間に互いの先端部が当接する第1及び第2パッキン51,52の複数の突出部材54,55によって複数の障壁が構築される。従来の遮音構造では、建具と相手材との間の隙間で一対の三角柱状パッキンが当接することにより、上記隙間に一重厚い障壁が構築されるところ、上記遮音構造50によれば、吊戸30と方立部材14との隙間に上述の一重の厚い障壁よりも薄い障壁を複数構築することにより、従来の遮音構造と遜色のない優れた遮音性能を有する遮音構造50を提供することができる。
【0056】
また、本実施形態1の遮音構造50では、吊戸30が閉位置にあるときに、第1パッキン51の2つ(複数)の突出部材54,55の先端部と第2パッキン52の2つ(複数)の突出部材55,54の先端部とが当接することにより、左右方向に隣り合う第1パッキン51の2つの突出部材54,55とこれに当接する第2パッキン52の2つの突出部材55,54との間に、四周が囲まれた閉空間60が形成されるように構成されている。よって、本実施形態1の遮音構造50によれば、このように隣り合う2つの障壁の間に閉空間60が形成されることにより、障壁を通り抜ける音波を閉空間60で減衰させることができる。このような構成によっても遮音性能が向上する。
【0057】
さらに、本実施形態1の遮音構造50では、吊戸30を閉位置に移動させる際に、第1パッキン51の2つ(複数)の突出部材54,55と第2パッキン52の2つ(複数)の突出部材55,54とが当接することとなるが、先端部どうしが当接するだけであるため、従来の遮音構造のように、当接時に互いに大きな反発力や摩擦力が作用することがなく、吊戸30のスムーズな開閉動作を阻害することもない。
【0058】
以上により、本実施形態1の遮音構造50によれば、吊戸30の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた遮音構造50を提供することができる。
【0059】
また、本実施形態1の遮音構造50では、第1及び第2パッキン51,52の複数の突出部材54,55が可撓性を有する板状部材によって構成されているため、可撓性を有する突出部材54,55の先端部どうしが当接する際に互いに撓むことで衝突の衝撃が緩和され、互いに作用する反発力や摩擦力も低減される。よって、本実施形態1の遮音構造50によれば、吊戸30のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。また、このような構成によれば、吊戸30に、吊戸30を閉める際に、吊戸30がゆっくり閉まるように吊戸30の移動をアシストするアシスト機構が設けられている場合においても、吊戸30のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。
【0060】
また、本実施形態1の遮音構造50によれば、上述のように第1及び第2パッキン51,52の突出部材54,55を、互いの先端部が当接する際に互いに撓むように可撓性を有する板状部材によって構成することにより、第1及び第2パッキン51,52の設置位置が所望の位置から多少ずれていても、第1及び第2パッキン51,52の突出部材54,55の先端部どうしを確実に当接させることができる。よって、上記構成によれば、吊戸30が閉位置にあるときに、吊戸30と方立部材14との間の隙間に複数の障壁を確実に構築することができるため、優れた遮音性能を確実に実現することができる。
【0061】
また、本実施形態1の遮音構造50では、第1及び第2パッキン51,52の複数の突出部材54,55のうち少なくとも突出高さが最も高い突出部材55には、基端部に薄肉部を設けることとしている。このような構成により、剛性の高い突出高さが最も高い可撓性を有する突出部材55が対応する突出部材54と当接する際により撓み易くなる。よって、本実施形態1の遮音構造50によれば、吊戸30がより閉じ易くなり、吊戸30のよりスムーズで且つより確実な開閉動作を実現することができる。
【0062】
また、本実施形態1では、上記遮音構造50を備えているため、吊戸30の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた遮音構造50を備えた建具装置100を提供することができる。
【0063】
《発明の実施形態2》
図4に示すように、実施形態2に係る遮音構造50を備えた吊戸装置(建具装置)100は、実施形態1の第1及び第2パッキン51,52の突出部材54,55の構成を変更したものである。
【0064】
具体的には、実施形態2では、突出部材54,55が、横断面が円形状の長尺の筒状部材によって構成されている。実施形態2の突出部材54,55は、横断面形状が異なるだけで、長さ及び突出高さは実施形態1の突出部材54,55と同様に構成されている。
【0065】
実施形態2の遮音構造50では、吊戸30を閉める際に、第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の互いに当接する部分が湾曲面で構成されることとなり、実施形態1の遮音構造50に比べて当接部分が小さくなる。そのため、第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の当接時に互いに作用する反発力や摩擦力が小さくなる。よって、実施形態2によれば、吊戸30のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。
【0066】
《発明の実施形態3》
図5に示すように、実施形態3に係る遮音構造50を備えた吊戸装置(建具装置)100は、実施形態1の第1及び第2パッキン51,52の突出部材54,55の構成を変更したものである。
【0067】
具体的には、実施形態3では、突出部材54,55が、横断面において湾曲する帯板状部材によって構成されている。実施形態3の突出部材54,55は、横断面形状が異なるだけで、長さ及び突出高さは実施形態1の突出部材54,55と同様に構成されている。
【0068】
実施形態2の遮音構造50では、吊戸30を閉める際に、第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の互いに当接する部分が湾曲面で構成されることとなり、実施形態1の遮音構造50に比べて当接部分が小さくなる。そのため、第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の当接時に互いに作用する反発力や摩擦力が小さくなる。よって、実施形態3によれば、吊戸30のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。
【0069】
《発明の実施形態4》
図6に示すように、実施形態4に係る遮音構造50を備えた吊戸装置(建具装置)100は、実施形態1の第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の間に更に1つ突出部材56を追加し、全ての突出部材54~56に溝57を形成することとしたものである。追加した突出部材56は、突出部材54よりも突出高さが高く、突出部材55よりも突出高さが低い。その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0070】
実施形態4によっても実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0071】
《その他の実施形態》
上記実施形態1~4では、本発明に係る遮音構造50を、吊戸30と方立部材14との隙間に適用する例について説明していたが、本発明に係る遮音構造50は、引戸と方立部材の間、引き違い戸の2つの戸の間にも適用可能である。
【0072】
また、上記実施形態1~4では、第1及び第2パッキン51,52が同一の構成を有していたが、本発明に係る遮音構造50は、第1及び第2パッキン51,52が同一の構成を有するものでなくてもよい。建具(吊戸30)が閉位置にあるときに、建具の戸尻側端部と前後方向に対向する相手材の重複部分(方立部材14全体)とのそれぞれから互いに向かって突出する複数の突出部材54,55をそれぞれ備え、建具側の複数の突出部材54,55は左右方向において左側から右側へ向かうほど突出高さが高くなり、相手材側の複数の突出部材54,55は左右方向において左側から右側へ向かうほど突出高さが低くなるように構成され、建具が閉位置にあるときに前後方向に対応する突出部材54,55の先端部どうしが当接するものであればいかなる構成のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、引戸や吊戸等の左右にスライド移動する建具に用いられる遮音構造、及びそれを備えた建具装置に有用である。
【符号の説明】
【0074】
2 開口
14 方立部材
30 吊戸(建具)
50 遮音構造
54 突出部材
55 突出部材
60 閉空間
100 吊戸装置(建具装置)
W 壁
【手続補正書】
【提出日】2023-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸や吊戸等の左右にスライド移動する建具に用いられる遮音構造、及びそれを備えた建具装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、引戸や吊戸等の左右にスライド移動する建具を備えた建具装置では、指詰めを防止する観点で、建具同士の隙間や建具と建具枠の隙間が広く形成されるようになっている。このような建具装置では、指詰めは防止できても、建具によって仕切られる2つの室間での音漏れが問題となる。この問題に対し、建具同士の隙間や建具と建具枠の隙間に遮音構造を設け、2つの室間での音漏れを抑制するようにした建具装置が提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された建具装置に設けられる遮音構造は、引戸本体の戸尻側端部と、建具を閉めたときに引戸本体の戸尻側端部と前後方向に重なる相手材の重複部分とに設けられた2つの三角柱状のパッキンによって構成されている。上記建具装置では、建具を閉めたときに、2つの三角柱状のパッキンが当接することにより音漏れを抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記遮音構造では、2つの三角柱状のパッキンの接触面積が大きいため、当接時(建具を閉じる際)に互いに作用する反発力や摩擦力が大きくなる。そのため、建具を閉めたときに2つのパッキンに互いに作用する大きな反発力や摩擦力により、建具が閉まらず、遮音性能を逆に低下させるおそれがある。
【0006】
ところで、引戸や吊戸等のスライド移動する建具の中には、建具を閉める際に、戸先が建具枠に所定距離まで近づいたところで建具がゆっくり閉まるように建具の移動をアシストするアシスト機構が設けられたものがある。このようなアシスト機構が設けられた建具でも、アシスト機構のアシスト力はさほど大きくないので、上記遮音構造では、2つのパッキンの当接時に互いに大きな反発力や摩擦力が作用して建具が閉まらなくなり、遮音性能を低下させるおそれがある。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、建具の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた遮音構造及びそれを備えた建具装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、建具及び相手材に互いに向かって突出する突出部材を複数ずつ設け、建具が閉位置にあるときに複数の突出部材の先端部のみが当接するように構成することにより、建具と相手材との間の隙間に複数の薄い障壁が構築されると共に、複数の障壁の間に四周が閉塞された遮音空間が区画されるようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明は、左右方向に移動することにより左右方向に延びる壁の開口を開閉する建具と、該建具が上記開口を閉塞する閉位置にあるときに上記建具の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分を有する相手材との間に設けられる遮音構造を前提とするものである。
【0010】
そして、第1の発明は、上記建具の上記戸尻側端部に設けられ、該建具の上端部から下端部に亘って延び、上記建具の上記相手材との対向面から上記相手材側に突出する複数の第1突出部材と、上記相手材の上記重複部分に設けられ、上記相手材の上端部から下端部に亘って延び、上記相手材の上記建具との対向面から上記建具側に突出する複数の第2突出部材とを備え、上記複数の第1突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなり、上記複数の第2突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなり、上記複数の第1及び第2突出部材は、上記建具が上記閉位置にあるときに、上記第1突出部材と上記第2突出部材とが1つずつ前後方向に対応すると共に、上記各第1突出部材の先端部が対応する上記第2突出部材の先端部に上記建具の戸尻側から当接することにより、左右方向に隣り合う上記第1突出部材及び該第1突出部材に対応する上記第2突出部材の組み合わせの間に、四周が囲まれた閉空間が形成されるように設けられ、上記複数の第1及び第2突出部材は、上記建具が上記開口を閉塞しない開位置から上記閉位置に移動する際に、上記各第1突出部材が、対応する上記第2突出部材以外の上記第2突出部材とは当接しないように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、建具が開口を閉塞する閉位置にあるときに、前後方向に対向する建具の戸尻側端部と相手材の重複部分とに、互いの対向面から互いに向かって突出する第1及び第2突出部材を複数ずつ設けることとしている。また、建具に設けられる複数の第1突出部材を、左右方向において建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなるように形成し、相手材に設けられる複数の第2突出部材を、左右方向において建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなるように形成している。さらに、複数の第1及び第2突出部材は、建具が閉位置にあるときに、各第1突出部材の先端部が前後方向に対応する第2突出部材の先端部に建具の戸尻側から当接し、これにより、左右方向に隣り合う第1突出部材及びこれに対応する第2突出部材の組み合わせの間に四周が囲まれた閉空間が形成されるように設けられている。このような構成により、建具を閉位置に移動させると、建具と相手材との間に形成される隙間において、複数の第1突出部材とこれに対応する第2突出部材の先端部どうしが当接することにより、上記隙間に互いの先端部が当接する複数の第1及び第2突出部材によって複数の障壁が構築される。従来の遮音構造では、建具と相手材との間の隙間で一対の三角柱状パッキンが当接することにより、上記隙間に一重の厚い障壁が構築されるところ、上記構成によれば、建具と相手材との隙間に上述の一重の厚い障壁よりも薄い障壁を複数構築することにより、従来の遮音構造と遜色のない優れた遮音性能を有する遮音構造を提供することができる。
【0012】
また、第1の発明では、建具が閉位置にあるときに、複数の第1突出部材の先端部と複数の第2突出部材の先端部とが当接することにより、左右方向に隣り合う第1突出部材及びこれに当接する第2突出部材の組み合わせの間に四周が囲まれた閉空間が形成されるように構成されている。よって、第1の発明によれば、このように隣り合う2つの障壁の間に閉空間が形成されることにより、障壁を通り抜ける音波を閉空間で減衰させることができる。このような構成によっても遮音性能が向上する。
【0013】
さらに、第1の発明では、建具を閉位置に移動させる際に、複数の第1突出部材と該第1突出部材に対応する第2突出部材とが当接することとなるが、先端部どうしが当接するだけであるため、従来の遮音構造のように、当接時に互いに大きな反発力や摩擦力が作用することがなく、また、各第1突出部材は、対応する第2突出部材以外の第2突出部材とは当接しないため、建具のスムーズな開閉動作を阻害することもない。
【0014】
以上により、第1の発明によれば、建具の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた遮音構造を提供することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、上記第1突出部材及び上記第2突出部材は、可撓性を有する板状部材によって構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明では、第1突出部材及び第2突出部材が可撓性を有する板状部材によって構成されているため、可撓性を有する突出部材の先端部どうしが当接する際に互いに撓むことで衝突の衝撃が緩和され、互いに作用する反発力や摩擦力も低減される。よって、第2の発明によれば、建具のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。また、このような構成によれば、上述した建具を閉める際に、建具がゆっくり閉まるように建具の移動をアシストするアシスト機構が設けられた建具においても、建具のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。
【0017】
また、第2の発明によれば、上述のように第1突出部材及び第2突出部材を、互いの先端部が当接する際に互いに撓むように可撓性を有する板状部材によって構成することにより、第1突出部材及び第2突出部材の設置位置が所望の位置から多少ずれていても、先端部どうしを確実に当接させることができる。よって、上記構成によれば、建具が閉位置にあるときに、建具と相手材との間の隙間に複数の障壁を確実に構築することができるため、優れた遮音性能を確実に実現することができる。
【0018】
第3の発明は、左右方向に移動することにより左右方向に延びる壁の開口を開閉する建具と、該建具が上記開口を閉塞する閉位置にあるときに上記建具の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分を有する相手材との間に設けられる遮音構造であって、上記建具の上記戸尻側端部に設けられ、該建具の上端部から下端部に亘って延び、上記建具の上記相手材との対向面から上記相手材側に突出する複数の第1突出部材と、上記相手材の上記重複部分に設けられ、上記相手材の上端部から下端部に亘って延び、上記相手材の上記建具との対向面から上記建具側に突出する複数の第2突出部材とを備え、上記複数の第1突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなり、上記複数の第2突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなり、上記複数の第1及び第2突出部材は、上記建具が上記閉位置にあるときに、上記第1突出部材と上記第2突出部材とが1つずつ前後方向に対応すると共に、上記各第1突出部材の先端部が対応する上記第2突出部材の先端部に上記建具の戸尻側から当接することにより、左右方向に隣り合う上記第1突出部材及び該第1突出部材に対応する上記第2突出部材の組み合わせの間に、四周が囲まれた閉空間が形成されるように設けられ、上記第1突出部材及び上記第2突出部材は、可撓性を有する板状部材によって構成され、上記複数の第1突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い上記第1突出部材は、基端部に他の部分よりも薄い薄肉部を有し、上記複数の第2突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い上記第2突出部材は、基端部に他の部分よりも薄い薄肉部を有していることを特徴とするものである。
【0019】
第3の発明では、複数の第1突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い第1突出部材には基端部に薄肉部を設け、同様に、複数の第2突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い第2突出部材には基端部に薄肉部を設けることとした。このような構成により、剛性の高い突出高さが最も高い可撓性を有する突出部材が対応する突出部材と当接する際により撓み易くなる。よって、第3の発明によれば、建具のよりスムーズで且つより確実な開閉動作を実現することができる。
【0020】
第4の発明は、第1の発明において、上記第1突出部材は、上記第2突出部材と当接する部分が湾曲面で構成され、上記第2突出部材は、上記第1突出部材と当接する部分が湾曲面で構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
第4の発明では、第1突出部材及び第2突出部材の互いに当接する部分が湾曲面で構成されているため、当接部分が小さく、当接時に互いに作用する反発力や摩擦力が小さくなる。よって、第4の発明によれば、建具のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。
【0022】
第5の発明は、左右方向に移動することにより左右方向に延びる壁の開口を開閉する建具と、上記建具が上記開口を閉塞する閉位置にあるときに上記建具の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分を有する相手材と、上記建具と上記相手材との間に設けられる遮音構造とを備えた建具装置であって、上記遮音構造は、第1~第4のいずれか1つの発明に係る遮音構造であることを特徴とするものである。
【0023】
第5の発明では、第1~第4の発明に係る遮音構造を備えているため、建具の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた第1~第4の発明と同様の効果を有する遮音構造を備えた建具装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した如く、本発明によると、建具及び相手材に互いに向かって突出する突出部材を複数ずつ設け、建具が閉位置にあるときに複数の突出部材の先端部のみが当接するように構成することにより、建具と相手材との間の隙間に複数の薄い障壁が構築されると共に、複数の障壁の間に四周が閉塞された遮音空間が区画されるようにしたため、建具の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた遮音構造及びそれを備えた建具装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る遮音構造を備えた吊戸装置の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の吊戸装置の遮音構造が設けられた部分を拡大した平面図であり、(A)は、吊戸が開位置にあるときを示し、(B)は吊戸が閉位置にあるときを示している。
【
図3】
図3は、第1及び第2パッキンの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る吊戸装置の遮音構造が設けられた部分を拡大した平面図であり、(A)は、吊戸が開位置にあるときを示し、(B)は吊戸が閉位置にあるときを示している。
【
図5】
図5は、実施形態3に係る吊戸装置の遮音構造が設けられた部分を拡大した平面図であり、(A)は、吊戸が開位置にあるときを示し、(B)は吊戸が閉位置にあるときを示している。
【
図6】
図6は、実施形態4に係る吊戸装置の遮音構造が設けられた部分を拡大した平面図であり、(A)は、吊戸が開位置にあるときを示し、(B)は吊戸が閉位置にあるときを示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0027】
《発明の実施形態1》
-吊戸装置の構成-
図1は、本発明の実施形態1に係る遮音構造50を備えた吊戸装置(建具装置)100の正面図である。以下では、説明の便宜上、
図1の左側、右側、上側、下側を、それぞれ「左」、「右」、「上」、「下」として説明する。また、
図1の紙面直交方向において手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。また、吊戸30の幅方向(左右方向)に関し、開口2の閉塞時に当接する左縦枠11側(
図1の左側)を戸先側、逆側(
図1の右側)を戸尻側と言う。
【0028】
図1に示すように、吊戸装置100は、建物の壁Wに形成された正面視において矩形状の切り欠き部1に施工される。吊戸装置100は、建具枠10と、控え壁20と、吊戸30と、遮音構造50とを備えている。切り欠き部1に建具枠10と控え壁20とを施工することにより、吊戸30によって開閉される開口2が区画される。
【0029】
[建具枠]
建具枠10は、左縦枠11と、右縦枠12と、鴨居13と、方立部材14とを有している。左縦枠11及び右縦枠12は、上下方向に平行に延びる木製の板状部材によって構成されている。左縦枠11は、幅(前後方向の長さ)が切り欠き部1の奥行と同程度の長さとなるように形成されている。右縦枠12は、幅が切り欠き部1の奥行よりも控え壁20の厚さ分だけ短い長さとなるように形成されている。
【0030】
鴨居13は、左右方向に水平に延びる木製の板状部材によって構成されている。鴨居13は、左縦枠11及び右縦枠12の上端部を連結するように左縦枠11及び右縦枠12に取り付けられている。鴨居13は、開口2に対面する左側部分13aの幅(前後方向の長さ)が切り欠き部1の奥行と同程度の長さとなり、開口2の右側にあって開口2に対面しない右側部分13bの幅が切り欠き部1の奥行よりも控え壁20の厚さ分だけ短い長さとなるように形成されている。
【0031】
方立部材14は、左縦枠11及び右縦枠12に平行に上下方向に延びる木製の板状部材によって構成されている。方立部材14は、幅(前後方向の長さ)が切り欠き部1の奥行よりも短く控え壁20の厚さ以上の長さとなるように形成されている。方立部材14は、上端部の右側面を鴨居13の右側部分13bの左端面に当接させた状態で鴨居13に取り付けられている。
【0032】
方立部材14には、前面に切り欠き溝15が形成されている。切り欠き溝15は、横断面が矩形状であり、方立部材14の上端から下端に亘るように形成されている。切り欠き溝15には、横断面がL字形状で方立部材14の上端から下端に亘る長さのアルミニウム製のカバー部材16が取り付けられている。切り欠き溝15の溝内面は、カバー部材16によって覆われている。切り欠き溝15は、カバー部材16は、後述する遮音構造50の第2パッキン52の基板部材53が嵌まる大きさに形成されている。
【0033】
建具枠10は、左縦枠11と右縦枠12と鴨居13と方立部材14とを組み立てた状態で、壁Wの切り欠き部1に施工される。
【0034】
[控え壁]
控え壁20は、方立部材14と鴨居13の右側部分13bと右縦枠12と床面Fとによって囲まれる部分に構築されている。控え壁20は、いかなる構成であってもよいが、例えば、複数の芯材を格子状に組んだ下地の前後にパネル材を貼り付け、壁紙等で化粧することによって構成することができる。このように建具枠10と控え壁20を切り欠き部1に施工することにより、壁Wには、建具枠10の左縦枠11と鴨居13の左側部分13aと方立部材14と床面Fとによって矩形状に区画される開口2が形成される。
【0035】
[吊戸]
吊戸30は、鴨居13に左右方向にスライド移動可能に吊り下げ支持されている。具体的には、吊戸30の上端部には、吊り車装置(図示省略)が取り付けられ、この吊車装置が、鴨居13の下端面に形成された左側部分13aから右側部分13bに亘って左右方向に延びるレール溝(図示省略)内に設けられた吊り下げ用ガイドレール(図示省略)にスライド可能に係合することにより、鴨居13に左右方向にスライド移動可能に吊り下げ支持されている。
【0036】
吊戸30の左端部(戸先側の端部)の前後面には、引手31,31が取り付けられている。吊戸30は、開口2の前側において左端面(戸先側の端面)が左縦枠11に当接する閉位置まで移動すると、右端部(戸尻側の端部)が方立部材14と前後方向に重なる幅に形成されている。吊戸30は、閉位置において開口2を閉塞する高さに形成されている。吊戸30は、左端面が左縦枠11に当接する閉位置から右端面(戸尻側の端面)が右縦枠12に当接する全開位置までスライド移動可能に構成されている。
【0037】
吊戸30の戸尻側端部には、後面に切り欠き溝32が形成されている。切り欠き溝32は、横断面が矩形状であり、吊戸30の上端から下端に亘るように形成されている。切り欠き溝32には、横断面がL字形状で吊戸30の上端から下端に亘る長さのアルミニウム製のカバー部材33が取り付けられている。切り欠き溝32の溝内面は、カバー部材33によって覆われている。切り欠き溝32は、カバー部材33は、後述する遮音構造50の第1パッキン51の基板部材53が嵌まる大きさに形成されている。
【0038】
[遮音構造]
図1及び
図2に示すように、遮音構造50は、吊戸30の戸尻側端部に設けられる第1パッキン51と、方立部材14に設けられる第2パッキン52とを備えている。なお、本実施形態1では、方立部材14が、吊戸(建具)30が開口2を閉塞する閉位置にあるときに全部が吊戸30の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分となる相手材を構成する。
【0039】
本実施形態1では、第1パッキン51と第2パッキン52とは同一の構成を有している。
図3に示すように、第1及び第2パッキン51,52は、基板部材53と、2つの突出部材54,55とをそれぞれ有している。本実施形態1では、第1及び第2パッキン51,52において、基板部材53と2つの突出部材54,55は合成樹脂(軟質ゴム)で一体に形成されている。
【0040】
基板部材53は、上下方向に長く延びる帯板状部材である。基板部材53は、例えば厚さが2.0~3.0mmであり、吊戸30の上端から下端に亘る長さに形成されている。
【0041】
2つの突出部材54,55は、上下方向に長く延びる帯板状部材である。2つの突出部材54,55は、可撓性を有する板状部材に形成されるように、例えば厚さが1.0~2.5mmと薄く形成されている。2つの突出部材54,55は、吊戸30の上端から下端に亘る長さに形成されている。2つの突出部材54,55は、基板部材53の幅方向の両端部から基板部材53に垂直な方向に突出するように設けられている。
【0042】
突出部材55は、突出部材54よりも突出高さが高くなるように形成されている。例えば、突出部材54の突出高さは6.0~10.0mmであり、突出部材55の突出高さは12.0~16.0mmである。
【0043】
突出高さの高い突出部材55の基板部材53に連続する基端部には、外面(突出部材54との対向面の裏面)に溝57が形成されている。溝57は、突出部材55の上端から下端に亘るように形成されている。本実施形態1では、溝57は、横断面が直径0.5~0.7mmの半円形状となるように形成されている。突出部材55は、溝57により、該溝57が形成された部分が他の部分よりも薄い薄肉部となっている。
【0044】
図2に示すように、第1パッキン51は、吊戸30の戸尻側端部の後面に形成された切り欠き溝32内のカバー部材33に例えば接着シール等によって固定されている。第1パッキン51は、2つの突出部材54,55のうち、突出高さの高い突出部材55が、突出高さの低い突出部材54よりも左右方向において右側(吊戸30の戸尻側)に配置される向きで、基板部材53の前面をカバー部材33の長辺部分の後面に固定する。第1パッキン51をこのような向きで吊戸30に取り付けることにより、遮音構造50の吊戸30の戸尻側端部に設けられる第1パッキン51の複数の突出部材(第1突出部材)54,55は、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなる。
【0045】
図2に示すように、第2パッキン52は、方立部材14の前面に形成された切り欠き溝15内のカバー部材16に例えば接着シール等によって固定されている。第2パッキン52は、2つの突出部材54,55のうち、突出高さの高い突出部材55が、突出高さの低い突出部材54よりも左右方向において左側(吊戸30の戸先側)に配置される向きで、基板部材53の後面をカバー部材16の長辺部分の前面に固定する。第2パッキン52をこのような向きで方立部材14に取り付けることにより、遮音構造50の方立部材14(相手材の重複部分)に設けられる第2パッキン52の複数の突出部材(第2突出部材)54,55は、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなる。
【0046】
図2(B)に示すように、第1及び第2パッキン51,52は、吊戸30が開口2を閉塞する閉位置にあるときに、前後方向に対向すると共に、第1パッキン51の2つの突出部材54,55の先端部(突出方向において先端から1.0~2.0mmまでの部分)が第2パッキン52の対応する突出部材55,54の先端部(突出方向において先端から1.0~2.0mmまでの部分)に右側(戸尻側)から当接するように設けられている。具体的には、吊戸30が閉位置にあるときに、第1パッキン51の突出高さの低い突出部材54の先端部の左側面が、第2パッキン52の突出高さの高い突出部材55の先端部の右側面に当接し、第1パッキン51の突出高さの高い突出部材55の先端部の左側面が、第2パッキン52の突出高さの低い突出部材54の先端部の右側面に当接する。
【0047】
なお、吊戸30が
図2(A)に示す開口2を閉塞しない開位置から
図2(B)に示す開口2を閉塞する閉位置に移動する際に、第1パッキン51の各突出部材54,55が、対応する第2パッキン52の突出部材55,54以外の突出部材55,54とは当接しないように、第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の突出高さ及び互いに当接する前後方向(突出方向)の範囲が設定されている。つまり、第1及び第2パッキン51,52が2つの突出部材54,55をそれぞれ備える本実施形態1では、吊戸30を開位置から閉位置まで移動させる際に、第1及び第2パッキン51,52の突出高さの低い突出部材54,54どうし及び突出高さの高い突出部材55,55どうしが当接しないように第1及び第2パッキン51,52が構成及び配置されている。
【0048】
また、第1及び第2パッキン51,52は、吊戸30が
図2(B)に示す閉位置にあるときに、第1パッキン51の各突出部材54,55がそれぞれ対応する第2パッキン52の突出部材55,54に確実に当接するが、それぞれ対応する第2パッキン52の突出部材55,54を乗り越えない位置に配置されている。例えば、本実施形態1では、吊戸30が閉位置よりも僅かに戸尻側にずれた位置にあるときに、第1及び第2パッキン51,52の対応する突出部材54,55の先端部どうしが当接するように、第1及び第2パッキン51,52が配置されている。第1及び第2パッキン51,52をこのように配置することにより、吊戸30を
図2(A)に示す開位置から
図2(B)に示す閉位置に移動させると、吊戸30が閉位置よりも僅かに戸尻側にずれた位置にあるときに、第1及び第2パッキン51,52の対応する突出部材54,55の先端部どうしが当接し、そこから吊戸30がさらに戸先側へ移動することにより、吊戸30が
図2(B)に示す閉位置にあるときには、第1及び第2パッキン51,52の対応する突出部材54,55が互いに撓んだ状態で先端部どうしが当接した状態となる。
【0049】
-遮音構造の作用-
次に、遮音構造50の遮音作用について説明する。
【0050】
図2(A)に示すように、吊戸30が開口2を閉塞しない開位置にあるとき、吊戸30の戸尻側端部に設けられた第1パッキン51は、方立部材14に取り付けられた第2パッキン52から離れた位置にあり、第2パッキン52と前後方向に対向しない。
【0051】
吊戸30を上記開位置から開口2を閉塞する
図2(B)に示す閉位置に移動させると、吊戸30の戸尻側端部が方立部材14に前後方向に対向し、第1パッキン51が第2パッキン52と前後方向に対向する。そして、第1パッキン51の突出高さの低い突出部材54の先端部が、第2パッキン52の突出高さの高い突出部材55の先端部に当接し、第1パッキン51の突出高さの高い突出部材55の先端部が、第2パッキン52の突出高さの低い突出部材54の先端部に当接する。そして、吊戸30は、第1パッキン51の2つの突出部材54,55の先端部が第2パッキン52の対応する突出部材55,54の先端部に当接する位置からわずかに戸先側へ移動したところで左縦枠11に当接する閉位置(
図2(B)の位置)に至る。吊戸30が閉位置にあるとき、第1パッキン51の2つの突出部材54,55と第2パッキン52の対応する突出部材55,54とは共に撓んだ状態で先端部どうしが当接した状態となる。このように第1及び第2パッキン51,52の突出部材54,55が、互いの先端部が当接する際に互いに撓むように構成されているため、第1及び第2パッキン51,52の対応する突出部材54,55の先端部どうしが当接する際に互いに撓むことで衝突の衝撃が緩和され、互いに作用する反発力や摩擦力も低減される。よって、吊戸30をスムーズに且つ確実に閉じることができる。
【0052】
また、吊戸30が
図2(B)に示す閉位置にあるときに、第1パッキン51の2つの突出部材54,55の先端部は、第2パッキン52の対応する突出部材55,54の先端部に当接しており、第1パッキン51の2つの突出部材(第1突出部材)54,55と第2パッキン52の突出部材(第2突出部材)55,54との間に、四周が囲まれた閉空間60が形成される。
【0053】
以上のように、吊戸30が閉位置にあるときに、吊戸30の戸尻側端部と方立部材14との間に形成される隙間は、互いの先端部が当接する第1パッキン51の2つの突出部材54,55と第2パッキン52の突出部材55,54とで構成される二重の薄い障壁によって二重に塞がれることとなる。よって、一重の厚い障壁を有する遮音構造と遜色ない遮音性能を発揮することができる。また、二重の障壁の間に閉空間60が形成されることにより、障壁を通り抜ける音波が閉空間60で減衰するため、このことによっても遮音性能が向上する。
【0054】
なお、吊戸30に設けられる第1パッキン51の2つの突出部材54,55は、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなるように形成され、方立部材14に設けられる第2パッキン52の2つの突出部材54,55は、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなるように形成されている。そのため、吊戸30を
図2(B)に示す閉位置から開ける際には、第1及び第2パッキン51,52は、突出部材54,55どうしが当接することなく離れていく。
【0055】
-実施形態1の効果-
本実施形態1の遮音構造50では、吊戸30が開口2を閉塞する閉位置にあるときに、前後方向に対向する吊戸30の戸尻側端部と方立部材14(相手材の重複部分)とに、互いの対向面から互いに向かって突出する突出部材54,55を2つ(複数)ずつ設けることとしている。また、吊戸30に設けられる第1パッキン51の2つ(複数)の突出部材54,55を、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなるように形成し、方立部材14に設けられる第2パッキン52の2つ(複数)の突出部材54,55を、左右方向において吊戸30の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなるように形成している。さらに、第1及び第2パッキン51,52の複数の突出部材54,55は、吊戸30が閉位置にあるときに、第1パッキン51の各突出部材54,55の先端部が前後方向に対応する第2パッキン52の突出部材54,55の先端部に吊戸30の戸尻側から当接し、これにより、第1パッキン51の左右方向に隣り合う2つの突出部材54,55とこれに対応する第2パッキン52の2つの突出部材55,54との間に四周が囲まれた閉空間60が形成されるように設けられている。このような構成により、吊戸30を閉位置に移動させると、吊戸30と方立部材14との間に形成される隙間において、第1パッキン51の複数の突出部材54,55とこれに対応する第2パッキン52の突出部材55,54の先端部どうしが当接することにより、上記隙間に互いの先端部が当接する第1及び第2パッキン51,52の複数の突出部材54,55によって複数の障壁が構築される。従来の遮音構造では、建具と相手材との間の隙間で一対の三角柱状パッキンが当接することにより、上記隙間に一重厚い障壁が構築されるところ、上記遮音構造50によれば、吊戸30と方立部材14との隙間に上述の一重の厚い障壁よりも薄い障壁を複数構築することにより、従来の遮音構造と遜色のない優れた遮音性能を有する遮音構造50を提供することができる。
【0056】
また、本実施形態1の遮音構造50では、吊戸30が閉位置にあるときに、第1パッキン51の2つ(複数)の突出部材54,55の先端部と第2パッキン52の2つ(複数)の突出部材55,54の先端部とが当接することにより、左右方向に隣り合う第1パッキン51の2つの突出部材54,55とこれに当接する第2パッキン52の2つの突出部材55,54との間に、四周が囲まれた閉空間60が形成されるように構成されている。よって、本実施形態1の遮音構造50によれば、このように隣り合う2つの障壁の間に閉空間60が形成されることにより、障壁を通り抜ける音波を閉空間60で減衰させることができる。このような構成によっても遮音性能が向上する。
【0057】
さらに、本実施形態1の遮音構造50では、吊戸30を閉位置に移動させる際に、第1パッキン51の2つ(複数)の突出部材54,55と第2パッキン52の2つ(複数)の突出部材55,54とが当接することとなるが、先端部どうしが当接するだけであるため、従来の遮音構造のように、当接時に互いに大きな反発力や摩擦力が作用することがなく、吊戸30のスムーズな開閉動作を阻害することもない。
【0058】
以上により、本実施形態1の遮音構造50によれば、吊戸30の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた遮音構造50を提供することができる。
【0059】
また、本実施形態1の遮音構造50では、第1及び第2パッキン51,52の複数の突出部材54,55が可撓性を有する板状部材によって構成されているため、可撓性を有する突出部材54,55の先端部どうしが当接する際に互いに撓むことで衝突の衝撃が緩和され、互いに作用する反発力や摩擦力も低減される。よって、本実施形態1の遮音構造50によれば、吊戸30のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。また、このような構成によれば、吊戸30に、吊戸30を閉める際に、吊戸30がゆっくり閉まるように吊戸30の移動をアシストするアシスト機構が設けられている場合においても、吊戸30のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。
【0060】
また、本実施形態1の遮音構造50によれば、上述のように第1及び第2パッキン51,52の突出部材54,55を、互いの先端部が当接する際に互いに撓むように可撓性を有する板状部材によって構成することにより、第1及び第2パッキン51,52の設置位置が所望の位置から多少ずれていても、第1及び第2パッキン51,52の突出部材54,55の先端部どうしを確実に当接させることができる。よって、上記構成によれば、吊戸30が閉位置にあるときに、吊戸30と方立部材14との間の隙間に複数の障壁を確実に構築することができるため、優れた遮音性能を確実に実現することができる。
【0061】
また、本実施形態1の遮音構造50では、第1及び第2パッキン51,52の複数の突出部材54,55のうち少なくとも突出高さが最も高い突出部材55には、基端部に薄肉部を設けることとしている。このような構成により、剛性の高い突出高さが最も高い可撓性を有する突出部材55が対応する突出部材54と当接する際により撓み易くなる。よって、本実施形態1の遮音構造50によれば、吊戸30がより閉じ易くなり、吊戸30のよりスムーズで且つより確実な開閉動作を実現することができる。
【0062】
また、本実施形態1では、上記遮音構造50を備えているため、吊戸30の開閉動作を阻害することのない遮音性能に優れた遮音構造50を備えた建具装置100を提供することができる。
【0063】
《発明の実施形態2》
図4に示すように、実施形態2に係る遮音構造50を備えた吊戸装置(建具装置)100は、実施形態1の第1及び第2パッキン51,52の突出部材54,55の構成を変更したものである。
【0064】
具体的には、実施形態2では、突出部材54,55が、横断面が円形状の長尺の筒状部材によって構成されている。実施形態2の突出部材54,55は、横断面形状が異なるだけで、長さ及び突出高さは実施形態1の突出部材54,55と同様に構成されている。
【0065】
実施形態2の遮音構造50では、吊戸30を閉める際に、第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の互いに当接する部分が湾曲面で構成されることとなり、実施形態1の遮音構造50に比べて当接部分が小さくなる。そのため、第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の当接時に互いに作用する反発力や摩擦力が小さくなる。よって、実施形態2によれば、吊戸30のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。
【0066】
《発明の実施形態3》
図5に示すように、実施形態3に係る遮音構造50を備えた吊戸装置(建具装置)100は、実施形態1の第1及び第2パッキン51,52の突出部材54,55の構成を変更したものである。
【0067】
具体的には、実施形態3では、突出部材54,55が、横断面において湾曲する帯板状部材によって構成されている。実施形態3の突出部材54,55は、横断面形状が異なるだけで、長さ及び突出高さは実施形態1の突出部材54,55と同様に構成されている。
【0068】
実施形態2の遮音構造50では、吊戸30を閉める際に、第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の互いに当接する部分が湾曲面で構成されることとなり、実施形態1の遮音構造50に比べて当接部分が小さくなる。そのため、第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の当接時に互いに作用する反発力や摩擦力が小さくなる。よって、実施形態3によれば、吊戸30のスムーズで且つ確実な開閉動作を実現することができる。
【0069】
《発明の実施形態4》
図6に示すように、実施形態4に係る遮音構造50を備えた吊戸装置(建具装置)100は、実施形態1の第1及び第2パッキン51,52の2つの突出部材54,55の間に更に1つ突出部材56を追加し、全ての突出部材54~56に溝57を形成することとしたものである。追加した突出部材56は、突出部材54よりも突出高さが高く、突出部材55よりも突出高さが低い。その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0070】
実施形態4によっても実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0071】
《その他の実施形態》
上記実施形態1~4では、本発明に係る遮音構造50を、吊戸30と方立部材14との隙間に適用する例について説明していたが、本発明に係る遮音構造50は、引戸と方立部材の間、引き違い戸の2つの戸の間にも適用可能である。
【0072】
また、上記実施形態1~4では、第1及び第2パッキン51,52が同一の構成を有していたが、本発明に係る遮音構造50は、第1及び第2パッキン51,52が同一の構成を有するものでなくてもよい。建具(吊戸30)が閉位置にあるときに、建具の戸尻側端部と前後方向に対向する相手材の重複部分(方立部材14全体)とのそれぞれから互いに向かって突出する複数の突出部材54,55をそれぞれ備え、建具側の複数の突出部材54,55は左右方向において左側から右側へ向かうほど突出高さが高くなり、相手材側の複数の突出部材54,55は左右方向において左側から右側へ向かうほど突出高さが低くなるように構成され、建具が閉位置にあるときに前後方向に対応する突出部材54,55の先端部どうしが当接するものであればいかなる構成のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、引戸や吊戸等の左右にスライド移動する建具に用いられる遮音構造、及びそれを備えた建具装置に有用である。
【符号の説明】
【0074】
2 開口
14 方立部材
30 吊戸(建具)
50 遮音構造
54 突出部材
55 突出部材
60 閉空間
100 吊戸装置(建具装置)
W 壁
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に移動することにより左右方向に延びる壁の開口を開閉する建具と、該建具が上記開口を閉塞する閉位置にあるときに上記建具の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分を有する相手材との間に設けられる遮音構造であって、
上記建具の上記戸尻側端部に設けられ、該建具の上端部から下端部に亘って延び、上記建具の上記相手材との対向面から上記相手材側に突出する複数の第1突出部材と、
上記相手材の上記重複部分に設けられ、上記相手材の上端部から下端部に亘って延び、上記相手材の上記建具との対向面から上記建具側に突出する複数の第2突出部材とを備え、
上記複数の第1突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなり、
上記複数の第2突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなり、
上記複数の第1及び第2突出部材は、上記建具が上記閉位置にあるときに、上記第1突出部材と上記第2突出部材とが1つずつ前後方向に対応すると共に、上記各第1突出部材の先端部が対応する上記第2突出部材の先端部に上記建具の戸尻側から当接することにより、左右方向に隣り合う上記第1突出部材及び該第1突出部材に対応する上記第2突出部材の組み合わせの間に、四周が囲まれた閉空間が形成されるように設けられ、
上記複数の第1及び第2突出部材は、上記建具が上記開口を閉塞しない開位置から上記閉位置に移動する際に、上記各第1突出部材が、対応する上記第2突出部材以外の上記第2突出部材とは当接しないように構成されている
ことを特徴とする遮音構造。
【請求項2】
請求項1に記載の遮音構造において、
上記第1突出部材及び上記第2突出部材は、可撓性を有する板状部材によって構成されている
ことを特徴とする遮音構造。
【請求項3】
左右方向に移動することにより左右方向に延びる壁の開口を開閉する建具と、該建具が上記開口を閉塞する閉位置にあるときに上記建具の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分を有する相手材との間に設けられる遮音構造であって、
上記建具の上記戸尻側端部に設けられ、該建具の上端部から下端部に亘って延び、上記建具の上記相手材との対向面から上記相手材側に突出する複数の第1突出部材と、
上記相手材の上記重複部分に設けられ、上記相手材の上端部から下端部に亘って延び、上記相手材の上記建具との対向面から上記建具側に突出する複数の第2突出部材とを備え、
上記複数の第1突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが高くなり、
上記複数の第2突出部材は、左右方向に間隔を空けて配置され、左右方向において上記建具の戸先側から戸尻側へ向かうほど突出高さが低くなり、
上記複数の第1及び第2突出部材は、上記建具が上記閉位置にあるときに、上記第1突出部材と上記第2突出部材とが1つずつ前後方向に対応すると共に、上記各第1突出部材の先端部が対応する上記第2突出部材の先端部に上記建具の戸尻側から当接することにより、左右方向に隣り合う上記第1突出部材及び該第1突出部材に対応する上記第2突出部材の組み合わせの間に、四周が囲まれた閉空間が形成されるように設けられ、
上記第1突出部材及び上記第2突出部材は、可撓性を有する板状部材によって構成され、
上記複数の第1突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い上記第1突出部材は、基端部に他の部分よりも薄い薄肉部を有し、
上記複数の第2突出部材のうち少なくとも突出高さが最も高い上記第2突出部材は、基端部に他の部分よりも薄い薄肉部を有している
ことを特徴とする遮音構造。
【請求項4】
請求項1に記載の遮音構造において、
上記第1突出部材は、上記第2突出部材と当接する部分が湾曲面で構成され、
上記第2突出部材は、上記第1突出部材と当接する部分が湾曲面で構成されている
ことを特徴とする遮音構造。
【請求項5】
左右方向に移動することにより左右方向に延びる壁の開口を開閉する建具と、
上記建具が上記開口を閉塞する閉位置にあるときに上記建具の戸尻側端部と前後方向に重なる重複部分を有する相手材と、
上記建具と上記相手材との間に設けられる遮音構造とを備えた建具装置であって、
上記遮音構造は、請求項1~4のいずれか1つに記載の遮音構造である
ことを特徴とする建具装置。