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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137919
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】液圧制御ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/34 20060101AFI20230922BHJP
   B62L 3/00 20060101ALI20230922BHJP
   B60G 13/08 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B60T8/34
B62L3/00 A
B60G13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044360
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】小島 健太
【テーマコード(参考)】
3D246
3D301
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246CA01
3D246DA01
3D246EA17
3D246GA17
3D246GB01
3D246GC14
3D246KA17
3D246LA17A
3D246LA33Z
3D246LA41Z
3D301AA74
3D301BA17
3D301DA33
3D301DB25
3D301DB35
3D301DB40
3D301EC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、車両における装置の搭載スペースを適切に節約することができる液圧制御ユニットを得るものである。
【解決手段】本発明に係る液圧制御ユニット5は、ブレーキ液の液圧を制御するためのブレーキ制御用バルブV1を含む液圧制御機構51とブレーキ制御用バルブV1の動作を制御するブレーキ制御回路52aを含む制御基板52とを備え、制御基板52は、車両のサスペンションの減衰力を制御するためのサスペンション制御用バルブV2の動作を制御するサスペンション制御回路52bと、閉状態においてブレーキ制御用バルブV1と電源B1との間を通電し開状態においてブレーキ制御用バルブV1と電源B1との間を遮断する第1リレーR1と、閉状態においてサスペンション制御用バルブV2と電源B1との間を通電し開状態においてサスペンション制御用バルブV2と電源B1との間を遮断する、第1リレーR1とは別の第2リレーR2とを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)の液圧制御ユニット(5)であって、
ブレーキ液の液圧を制御するためのブレーキ制御用バルブ(V1)を含む液圧制御機構(51)と、
前記ブレーキ制御用バルブ(V1)の動作を制御するブレーキ制御回路(52a)を含む制御基板(52)と、
を備え、
前記制御基板(52)は、
前記車両(100)のサスペンション(15、16)の減衰力を制御するためのサスペンション制御用バルブ(V2)の動作を制御するサスペンション制御回路(52b)と、
閉状態において前記ブレーキ制御用バルブ(V1)と電源(B1)との間を通電し、開状態において前記ブレーキ制御用バルブ(V1)と前記電源(B1)との間を遮断する第1リレー(R1)と、
閉状態において前記サスペンション制御用バルブ(V2)と前記電源(B1)との間を通電し、開状態において前記サスペンション制御用バルブ(V2)と前記電源(B1)との間を遮断する、前記第1リレー(R1)とは別の第2リレー(R2)と、
を含む、
液圧制御ユニット。
【請求項2】
前記ブレーキ制御回路(52a)と前記サスペンション制御回路(52b)とは、共通の通信ライン(L1)と接続されている、
請求項1に記載の液圧制御ユニット。
【請求項3】
前記ブレーキ制御回路(52a)と前記サスペンション制御回路(52b)とは、共通のグランドライン(L2)と接続されている、
請求項1又は2に記載の液圧制御ユニット。
【請求項4】
前記制御基板(52)は、前記サスペンション制御用バルブ(V2)の異常が生じている場合に、前記第1リレー(R1)を閉状態にし、前記第2リレー(R2)を開状態にする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット。
【請求項5】
前記制御基板(52)は、前記ブレーキ制御用バルブ(V1)の異常が生じている場合に、前記第1リレー(R1)を開状態にし、前記第2リレー(R2)を閉状態にする、
請求項1~4のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット。
【請求項6】
前記制御基板(52)は、前記ブレーキ制御用バルブ(V1)に電流を印加した状態で前記ブレーキ制御用バルブ(V1)の電気抵抗を検査する電気抵抗検査を実行する場合に、前記第1リレー(R1)を開状態にし、前記第2リレー(R2)を閉状態にする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット。
【請求項7】
前記車両(100)は、鞍乗り型車両である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、車両における装置の搭載スペースを適切に節約することができる液圧制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車輪に生じる制動力を制御するための液圧制御ユニットが設けられている(例えば、特許文献1を参照。)。液圧制御ユニットでは、バルブを含む液圧制御機構によって、ブレーキ液の液圧が制御される。液圧制御機構のバルブの動作は、液圧制御ユニットの制御基板によって制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-8674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両には、液圧制御ユニット以外の他の制御ユニットも搭載されている。各制御ユニットには、それぞれ制御基板が設けられ、各制御基板によって各種制御が行われている。このように、車両に様々な制御ユニットが別々に搭載されることは、車両の搭載スペース(つまり、装置を搭載可能な空間)を圧迫する一因となっている。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、車両における装置の搭載スペースを適切に節約することができる液圧制御ユニットを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液圧制御ユニットは、車両の液圧制御ユニットであって、ブレーキ液の液圧を制御するためのブレーキ制御用バルブを含む液圧制御機構と、前記ブレーキ制御用バルブの動作を制御するブレーキ制御回路を含む制御基板と、を備え、前記制御基板は、前記車両のサスペンションの減衰力を制御するためのサスペンション制御用バルブの動作を制御するサスペンション制御回路と、閉状態において前記ブレーキ制御用バルブと電源との間を通電し、開状態において前記ブレーキ制御用バルブと前記電源との間を遮断する第1リレーと、閉状態において前記サスペンション制御用バルブと前記電源との間を通電し、開状態において前記サスペンション制御用バルブと前記電源との間を遮断する、前記第1リレーとは別の第2リレーと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る液圧制御ユニットは、車両の液圧制御ユニットであって、ブレーキ液の液圧を制御するためのブレーキ制御用バルブを含む液圧制御機構と、ブレーキ制御用バルブの動作を制御するブレーキ制御回路を含む制御基板と、を備え、制御基板は、車両のサスペンションの減衰力を制御するためのサスペンション制御用バルブの動作を制御するサスペンション制御回路と、閉状態においてブレーキ制御用バルブと電源との間を通電し、開状態においてブレーキ制御用バルブと電源との間を遮断する第1リレーと、閉状態においてサスペンション制御用バルブと電源との間を通電し、開状態においてサスペンション制御用バルブと電源との間を遮断する、第1リレーとは別の第2リレーと、を含む。それにより、ブレーキ液の液圧を制御する機能とサスペンションの減衰力を制御する機能とが1つの制御ユニットである液圧制御ユニットに集約されるので、車両に搭載される制御ユニットの数を低減できる。具体的には、基板及び基板を収容する筐体を含むサスペンション制御ユニットが液圧制御ユニットとは別に車両に設けられることがなくなり、車両における装置の搭載スペースを節約することができる。さらに、ブレーキ制御用バルブ及びサスペンション制御用バルブの両方に電力を供給可能とした上で、一方のみに独立して電力を供給することができるので、ブレーキ液の液圧を制御する機能、及び、サスペンションの減衰力を制御する機能の両方を使えない状況の発生を抑制できる。ゆえに、ブレーキ液の液圧を制御する機能とサスペンションの減衰力を制御する機能とを液圧制御ユニットに集約した場合においても、これらの機能の両方を使えない状況が不要に発生することを抑制できる。よって、車両における装置の搭載スペースを適切に節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るブレーキシステムの概略構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る液圧制御ユニットの外観を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る液圧制御ユニットの制御基板を含む部品間の電気的な接続関係を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る制御基板の機能構成の一例を示すブロック図である。
図6】本発明の実施形態に係る制御基板が行う第1の処理例の流れを示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る制御基板が行う第2の処理例の流れを示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態に係る制御基板が行う第3の処理例の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る液圧制御ユニットについて、図面を用いて説明する。
【0010】
なお、以下では、二輪のモータサイクル(図1中の車両100を参照)に用いられる液圧制御ユニットについて説明しているが、本発明に係る液圧制御ユニットは、二輪のモータサイクル以外の他の車両に用いられるものであってもよい。例えば、本発明に係る液圧制御ユニットは、二輪のモータサイクル以外の他の鞍乗り型車両に用いられるものであってもよい。鞍乗り型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味する。鞍乗り型車両には、例えば、モータサイクル(自動二輪車、自動三輪車)、自転車、バギー等が含まれる。モータサイクルには、エンジンを動力源とする車両、電気モータを動力源とする車両等が含まれる。モータサイクルには、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な車両を意味する。自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。また、例えば、本発明に係る液圧制御ユニットは、鞍乗り型車両以外の他の車両(例えば、四輪車)に用いられるものであってもよい。
【0011】
また、以下では、液圧制御ユニットが前輪に生じる制動力、及び、後輪に生じる制動力の両方を制御する例を説明している。ただし、本発明に係る液圧制御ユニットは、前輪に生じる制動力、及び、後輪に生じる制動力の一方のみを制御するものであってもよい。
【0012】
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る液圧制御ユニットは、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。
【0013】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0014】
<車両の構成>
図1図5を参照して、本発明の実施形態に係る車両100の概略構成について説明する。
【0015】
図1は、車両100の概略構成を示す模式図である。車両100は、本発明に係る車両の一例に相当する二輪のモータサイクルである。図1に示されるように、車両100は、胴体1と、ハンドル2と、前輪3と、後輪4と、液圧制御ユニット5と、エンジン6とを備える。また、車両100は、ブレーキシステム10を備える。ブレーキシステム10は、第1ブレーキ操作部11と、前輪制動機構12と、第2ブレーキ操作部13と、後輪制動機構14とを含む。また、車両100は、フロントサスペンション15と、リアサスペンション16と、フロントフォーク17と、スイングアーム18とを備える。
【0016】
液圧制御ユニット5は、車両100の車輪に生じる制動力を制御するためのものである。液圧制御ユニット5は、ブレーキシステム10に含まれる。液圧制御ユニット5の詳細については、後述する。
【0017】
エンジン6は、車両100の動力源の一例に相当し、駆動輪である後輪4を駆動するための動力を出力可能である。例えば、エンジン6には、内部に燃焼室が形成される1又は複数の気筒と、燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁と、点火プラグとが設けられている。燃料噴射弁から燃料が噴射されることにより燃焼室内に空気及び燃料を含む混合気が形成され、当該混合気が点火プラグにより点火されて燃焼する。それにより、気筒内に設けられたピストンが往復運動し、クランクシャフトが回転するようになっている。また、エンジン6の吸気管には、スロットル弁が設けられており、スロットル弁の開度であるスロットル開度に応じて燃焼室への吸気量が変化するようになっている。なお、車両100の動力源として、エンジン6に替えて電気モータが用いられてもよい。
【0018】
フロントサスペンション15及びリアサスペンション16は、車両100のサスペンションの一例に相当し、胴体1と車輪との間に介在する。具体的には、フロントサスペンション15は、ハンドル2と前輪3とを接続するフロントフォーク17に設けられ、当該フロントサスペンション15の軸方向に沿って伸縮可能になっている。また、リアサスペンション16は、胴体1に搖動可能に支持され後輪4を旋回自在に保持するスイングアーム18と胴体1とを接続し、当該リアサスペンション16の軸方向に沿って伸縮可能になっている。各サスペンションの作動油の流路には、各サスペンションの減衰力を制御するためのサスペンション制御用バルブ(後述する図4のサスペンション制御用バルブV2を参照)が設けられている。
【0019】
ブレーキシステム10は、具体的には、第1ブレーキ操作部11、前輪制動機構12、第2ブレーキ操作部13及び後輪制動機構14に加えて、液圧制御ユニット5を備える。第1ブレーキ操作部11は、ハンドル2に設けられており、ライダーの手によって操作される。第1ブレーキ操作部11は、例えば、ブレーキレバーである。前輪制動機構12は、少なくとも第1ブレーキ操作部11に連動して前輪3を制動する。第2ブレーキ操作部13は、胴体1の下部に設けられており、ライダーの足によって操作される。第2ブレーキ操作部13は、例えば、ブレーキペダルである。後輪制動機構14は、少なくとも第2ブレーキ操作部13に連動して後輪4を制動する。液圧制御ユニット5は、前輪制動機構12によって前輪3に付与される制動力、及び、後輪制動機構14によって後輪4に付与される制動力を制御する機能を担うユニットである。
【0020】
図2は、ブレーキシステム10の概略構成を示す模式図である。図2に示されるように、前輪制動機構12及び後輪制動機構14のそれぞれは、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23に設けられているホイールシリンダ24と、マスタシリンダ21のブレーキ液をホイールシリンダ24に流通させる主流路25と、ホイールシリンダ24のブレーキ液を逃がす副流路26と、マスタシリンダ21のブレーキ液を副流路26に供給する供給流路27とを備える。
【0021】
主流路25には、込め弁(EV)31が設けられている。副流路26は、主流路25のうちの、込め弁31に対するホイールシリンダ24側とマスタシリンダ21側との間をバイパスする。副流路26には、上流側から順に、弛め弁(AV)32と、アキュムレータ33と、ポンプ34とが設けられている。主流路25のうちの、マスタシリンダ21側の端部と、副流路26の下流側端部が接続される箇所との間には、第1弁(USV)35が設けられている。供給流路27は、マスタシリンダ21と、副流路26のうちのポンプ34の吸込側との間を連通させる。供給流路27には、第2弁(HSV)36が設けられている。
【0022】
込め弁31は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁32は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。第1弁35は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。第2弁36は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
【0023】
液圧制御ユニット5は、ブレーキ液の液圧を制御するための液圧制御機構51と、液圧制御機構51の動作を制御する制御基板52とを備える。液圧制御機構51は、上述した込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33、ポンプ34、第1弁35及び第2弁36等のコンポーネントを含む。特に、込め弁31、弛め弁32、第1弁35及び第2弁36は、ブレーキ液の液圧を制御するためのブレーキ制御用バルブV1の一例に相当する。液圧制御機構51は、上述した主流路25、副流路26及び供給流路27等の流路が内部に形成されている基体51aを含み、基体51aに上記のコンポーネントが設けられる。
【0024】
なお、基体51aは、1つの部材によって形成されていてもよく、複数の部材によって形成されていてもよい。また、基体51aが複数の部材によって形成されている場合、各コンポーネントは、異なる部材に分かれて設けられていてもよい。
【0025】
液圧制御機構51の動作が制御基板52によって制御されることにより、前輪制動機構12によって前輪3に生じる制動力、及び、後輪制動機構14によって後輪4に生じる制動力が制御される。制御基板52は、液圧制御機構51の動作を、例えば、車両100の走行状態に応じて制御する。
【0026】
例えば、通常状態(つまり、後述されるアンチロックブレーキ制御等が実行されない状態)では、制御基板52によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1弁35が開放され、第2弁36が閉鎖される。その状態で、第1ブレーキ操作部11が操作されると、前輪制動機構12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3に制動力が付与される。また、第2ブレーキ操作部13が操作されると、後輪制動機構14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4に制動力が付与される。
【0027】
アンチロックブレーキ制御は、例えば、車輪(具体的には、前輪3又は後輪4)にロック又はロックの可能性が生じた場合に実行され、当該車輪に付与される制動力をライダーによるブレーキ操作部の操作によらずに減少させる動作である。例えば、アンチロックブレーキ制御が実行されている状態では、制御基板52によって、込め弁31が閉鎖され、弛め弁32が開放され、第1弁35が開放され、第2弁36が閉鎖される。その状態で、制御基板52によってポンプ34が駆動されることにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が減少し、車輪に付与される制動力が減少する。
【0028】
制御基板52は、車両100において検出される各種情報を用いて、各種制御を実行する。例えば、図1に示されるように、車両100は、前輪車輪速センサ41と、後輪車輪速センサ42と、フロントストロークセンサ43と、リアストロークセンサ44と、慣性計測装置45とを備える。これらのセンサの検出結果は、制御基板52に出力される。
【0029】
前輪車輪速センサ41は、前輪3の車輪速(例えば、前輪3の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。前輪車輪速センサ41が、前輪3の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。前輪車輪速センサ41は、前輪3に設けられている。
【0030】
後輪車輪速センサ42は、後輪4の車輪速(例えば、後輪4の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。後輪車輪速センサ42が、後輪4の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。後輪車輪速センサ42は、後輪4に設けられている。
【0031】
フロントストロークセンサ43は、フロントサスペンション15のストローク量を検出し、検出結果を出力する。フロントストロークセンサ43が、フロントサスペンション15のストローク量に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。フロントストロークセンサ43は、フロントサスペンション15に設けられている。
【0032】
リアストロークセンサ44は、リアサスペンション16のストローク量を検出し、検出結果を出力する。リアストロークセンサ44が、リアサスペンション16のストローク量に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。リアストロークセンサ44は、リアサスペンション16に設けられている。
【0033】
慣性計測装置45は、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサを備えており、車両100の姿勢を検出する。慣性計測装置45は、例えば、車両100の胴体に設けられている。例えば、慣性計測装置45は、車両100のリーン角及びピッチ角を検出し、検出結果を出力する。慣性計測装置45が、車両100のリーン角及びピッチ角に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。慣性計測装置45が、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサの一部のみを備えていてもよい。
【0034】
図3は、液圧制御ユニット5の外観を示す斜視図である。図3に示されるように、液圧制御ユニット5は、基体51aを含む液圧制御機構51と、制御基板52と、制御基板52を収容するケース53とを備える。
【0035】
基体51aは、例えば、金属材料によって形成されており、略直方体形状を有する。基体51aの外面には、各流路と連通している複数のポート51bが形成されており、各ポート51bには、マスタシリンダ21又はホイールシリンダ24と接続されているブレーキ液管が取り付けられる。
【0036】
制御基板52は、ブレーキ制御回路52aと、サスペンション制御回路52bと、統合制御回路52cとを含む。ブレーキ制御回路52aは、ブレーキ制御用バルブV1の動作を制御する。それにより、車両100の車輪に作用するブレーキ液の液圧を制御することができる。サスペンション制御回路52bは、サスペンション制御用バルブ(後述する図4のサスペンション制御用バルブV2を参照)の動作を制御する。それにより、フロントサスペンション15及びリアサスペンション16の減衰力を制御することができる。なお、フロントサスペンション15及びリアサスペンション16の両方について減衰力の制御が行われてもよく、フロントサスペンション15及びリアサスペンション16の一方についてのみ減衰力の制御が行われてもよい。統合制御回路52cは、ブレーキ制御回路52a及びサスペンション制御回路52bの動作を統合的に制御する。なお、統合制御回路52cが制御基板52から省略されてもよい。
【0037】
ケース53は、例えば、樹脂材料によって形成されており、開口が形成された中空の略直方体形状を有している。ケース53は、ケース53の開口が基体51aに塞がれるように、ボルト等によって基体51aに取り付けられている。例えば、ケース53は、基体51aに直接的に保持されていてもよく、他の部材を介して間接的に保持されていてもよい。このようなケース53内に、制御基板52が収容される。具体的には、基体51aとケース53によって画成される空間内に制御基板52が収容される。
【0038】
以上説明したように、液圧制御ユニット5の制御基板52は、ブレーキ制御用バルブV1の動作を制御するブレーキ制御回路52aと、サスペンション制御用バルブV2の動作を制御するサスペンション制御回路52bとを含む。それにより、ブレーキ液の液圧を制御する機能とサスペンションの減衰力を制御する機能とが1つの制御ユニットである液圧制御ユニット5に集約されるので、車両100に搭載される制御ユニットの数を低減できる。具体的には、基板及び基板を収容する筐体を含むサスペンション制御ユニットが液圧制御ユニット5とは別に車両100に設けられることがなくなり、車両100における装置の搭載スペースを節約することができる。
【0039】
図4は、液圧制御ユニット5の制御基板52を含む部品間の電気的な接続関係を示す模式図である。図4に示されるように、車両100には、ブレーキ制御用バルブV1を含む液圧制御ユニット5と、サスペンション制御用バルブV2と、電源B1とが設けられており、これらの構成要素が互いに電気的に接続されている。なお、図4では、ブレーキ制御用バルブV1及びサスペンション制御用バルブV2の各バルブの数が4つである例が示されているが、各バルブの数は特に限定されず4つ以外であってもよい。
【0040】
液圧制御ユニット5の制御基板52において、ブレーキ制御回路52aとサスペンション制御回路52bと統合制御回路52cとは、共通する通信ラインL1と接続されている。それにより、制御基板52内に設けられる通信ラインL1を各制御回路で共有することによって、ノイズが低減されること等に起因して通信が安定化された上で、ブレーキ制御回路52a、サスペンション制御回路52b及び統合制御回路52cは、通信ラインL1を介して、液圧制御ユニット5の外部の装置を通信することができる。また、各制御回路の間で、通信ラインL1(例えば、SPI通信ライン)を介して互いに直接的に通信することもできる。なお、通信ラインL1は、種々の通信規格の通信ラインであってよく、SPI通信ラインに限定されない。
【0041】
また、液圧制御ユニット5の制御基板52において、ブレーキ制御回路52aとサスペンション制御回路52bと統合制御回路52cとは、共通するグランドラインL2と接続されている。それにより、各制御回路の基準電位が制御基板52内に設けられるグランドラインL2によって設定されることによって、ノイズが低減されること等に起因して通信を安定化できる。ゆえに、各制御回路と各装置との通信が適切に実現される。
【0042】
また、液圧制御ユニット5の制御基板52において、ブレーキ制御回路52aとサスペンション制御回路52bと統合制御回路52cとは、共通する電源ラインL3と接続されている。それにより、各制御回路への電力の供給が制御基板52内に設けられる電源ラインL3によって実現されることによって、各制御回路へ安定的に電力を供給できる。なお、電源ラインL3と接続される電源は、図4に示される電源B1とは別の電源である。
【0043】
ブレーキ制御回路52aは、ブレーキ制御用バルブV1と電気的に接続されている。それにより、ブレーキ制御回路52aとブレーキ制御用バルブV1との間で信号の入出力が可能となっている。サスペンション制御回路52bは、サスペンション制御用バルブV2と電気的に接続されている。それにより、サスペンション制御回路52bとサスペンション制御用バルブV2との間で信号の入出力が可能となっている。
【0044】
制御基板52には、ブレーキ制御回路52a、サスペンション制御回路52b及び統合制御回路52cに加えて、第1リレーR1及び第2リレーR2が設けられている。第1リレーR1と第2リレーR2とは、互いに異なる別々のリレーである。第1リレーR1及び第2リレーR2の各リレーは、設置位置における通電の可否を切り替える。リレーが閉状態である場合、当該リレーを電流が通過可能な状態になる。一方、リレーが開状態である場合、当該リレーを電流が通過不可能な状態になる。各リレーは、例えば、1又は2以上の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を含む半導体リレーである。ただし、各リレーの構成は特に限定されず、半導体リレーでなくてもよい。ここで、ブレーキ制御用バルブV1及びサスペンション制御用バルブV2は、共通の電源B1から供給される電力によって駆動される。各リレーは、電源B1から各バルブへの通電の可否を切り替える。
【0045】
ブレーキ制御用バルブV1は、第1リレーR1を介して、電源B1と接続される。ゆえに、第1リレーR1が閉状態である場合、電源B1からブレーキ制御用バルブV1へ電流が流れることができる状態となる。一方、第1リレーR1が開状態である場合、電源B1からブレーキ制御用バルブV1へ電流が流れることができない状態となる。つまり、第1リレーR1は、閉状態においてブレーキ制御用バルブV1と電源B1との間を通電し、開状態においてブレーキ制御用バルブV1と電源B1との間を遮断する。
【0046】
第1リレーR1が閉状態である場合、ブレーキ制御回路52aは、電源B1から供給される電力を用いてブレーキ制御用バルブV1を駆動できる。ゆえに、ブレーキ液の液圧を制御する機能を使える状況になる。一方、第1リレーR1が開状態である場合、電源B1からブレーキ制御用バルブV1に電力が供給されないので、ブレーキ制御回路52aは、ブレーキ制御用バルブV1を駆動できない。ゆえに、ブレーキ液の液圧を制御する機能を使えない状況になる。
【0047】
第1リレーR1は、ブレーキ制御回路52aと電気的に接続されており、ブレーキ制御回路52aと第1リレーR1との間で信号の入出力が可能となっている。ゆえに、ブレーキ制御回路52aは、第1リレーR1の開閉動作を制御できる。
【0048】
サスペンション制御用バルブV2は、第2リレーR2を介して、電源B1と接続される。ゆえに、第2リレーR2が閉状態である場合、電源B1からサスペンション制御用バルブV2へ電流が流れることができる状態となる。一方、第2リレーR2が開状態である場合、電源B1からサスペンション制御用バルブV2へ電流が流れることができない状態となる。つまり、第2リレーR2は、閉状態においてサスペンション制御用バルブV2と電源B1との間を通電し、開状態においてサスペンション制御用バルブV2と電源B1との間を遮断する。
【0049】
第2リレーR2が閉状態である場合、サスペンション制御回路52bは、電源B1から供給される電力を用いてサスペンション制御用バルブV2を駆動できる。ゆえに、サスペンションの減衰力を制御する機能を使える状況になる。一方、第2リレーR2が開状態である場合、電源B1からサスペンション制御用バルブV2に電力が供給されないので、サスペンション制御回路52bは、サスペンション制御用バルブV2を駆動できない。ゆえに、サスペンションの減衰力を制御する機能を使えない状況になる。
【0050】
第2リレーR2は、サスペンション制御回路52bと電気的に接続されており、サスペンション制御回路52bと第2リレーR2との間で信号の入出力が可能となっている。ゆえに、サスペンション制御回路52bは、第2リレーR2の開閉動作を制御できる。
【0051】
以上説明したように、液圧制御ユニット5の制御基板52は、閉状態においてブレーキ制御用バルブV1と電源B1との間を通電し、開状態においてブレーキ制御用バルブV1と電源B1との間を遮断する第1リレーR1と、閉状態においてサスペンション制御用バルブV2と電源B1との間を通電し、開状態においてサスペンション制御用バルブV2と電源B1との間を遮断する、第1リレーR1とは別の第2リレーR2とを含む。
【0052】
ここで、例えば、コスト等を考慮し、ブレーキ制御用バルブV1及びサスペンション制御用バルブV2が共通の1つのリレーを介して電源B1と接続される場合が考えられる。この場合、ブレーキ制御用バルブV1及びサスペンション制御用バルブV2の一方のみに電力を供給することはできない。この場合、例えば、ブレーキ制御用バルブV1及びサスペンション制御用バルブV2の一方のみに異常が生じている場合において、リレーを開状態にして、ブレーキ制御用バルブV1及びサスペンション制御用バルブV2の両方への電力の供給を停止する必要が生じる。つまり、本来であれば使用できる正常なバルブを使用できず、ブレーキ液の液圧を制御する機能、及び、サスペンションの減衰力を制御する機能の両方を使えない状況が不要に発生してしまう。
【0053】
一方、本実施形態に係る液圧制御ユニット5では、ブレーキ制御用バルブV1及びサスペンション制御用バルブV2の両方に電力を供給可能とした上で、一方のみに独立して電力を供給することができる。ゆえに、例えば、ブレーキ制御用バルブV1及びサスペンション制御用バルブV2の一方のみに異常が生じている場合等において、ブレーキ液の液圧を制御する機能、及び、サスペンションの減衰力を制御する機能の両方を使えない状況の発生を抑制できる。
【0054】
図5は、制御基板52の機能構成の一例を示すブロック図である。図5に示されるように、制御基板52は、例えば、取得部61と、制御部62とを含む。取得部61及び制御部62の機能は、制御基板52に設けられる上述した各種回路に含まれるマイコン、マイクロプロセッサユニット等よって実現される。
【0055】
取得部61は、車両100内の各種センサから情報を取得する。例えば、取得部61は、前輪車輪速センサ41、後輪車輪速センサ42、フロントストロークセンサ43、リアストロークセンサ44及び慣性計測装置45から情報を取得する。
【0056】
制御部62は、車両100内の各種装置の動作を制御する。例えば、制御部62は、ブレーキ制御部62aと、サスペンション制御部62bと、リレー制御部62cとを含む。ブレーキ制御部62aは、ブレーキ制御用バルブV1の動作を制御する。ブレーキ制御部62aの機能は、主にブレーキ制御回路52aによって実現される。サスペンション制御部62bは、サスペンション制御用バルブV2の動作を制御する。サスペンション制御部62bの機能は、主にサスペンション制御回路52bによって実現される。リレー制御部62cは、第1リレーR1及び第2リレーR2の動作を制御する。リレー制御部62cの機能は、主にブレーキ制御回路52a及びサスペンション制御回路52bによって実現される。
【0057】
上述したように、制御基板52は、車両100において検出される各種情報を用いて、各種制御を実行する。例えば、ブレーキ制御部62aは、前輪車輪速センサ41の検出結果、及び、後輪車輪速センサ42の検出結果を用いて、アンチロックブレーキ制御を実行する。また、例えば、サスペンション制御部62bは、フロントストロークセンサ43の検出結果、リアストロークセンサ44の検出結果、及び、慣性計測装置45の検出結果を用いて、各サスペンションの減衰力の制御を実行する。
【0058】
ここで、ブレーキ液の液圧の制御、及び、サスペンションの減衰力の制御は、互いに協調して実行されることが好ましい。例えば、ブレーキ制御部62aが車両100の姿勢を安定化するためのブレーキ液の液圧の制御を実行する際に、サスペンション制御部62bが車両100の姿勢が安定化されるようにサスペンションの減衰力の制御を実行する場合がある。このような場合に、サスペンション制御部62bは、ブレーキ制御部62aによるブレーキ液の液圧の制御が車両100の姿勢に与える影響に基づいてサスペンションの減衰力の制御を行うことが好ましい。一方、ブレーキ制御部62aは、サスペンション制御部62bによるサスペンションの減衰力の制御が車両100の姿勢に与える影響に基づいてブレーキ液の液圧の制御を行うことが好ましい。このような協調制御は、例えば、統合制御回路52cによって実現される。
【0059】
<液圧制御ユニットの動作>
図6図8を参照して、本発明の実施形態に係る液圧制御ユニット5の動作について説明する。
【0060】
上述したように、液圧制御ユニット5では、ブレーキ制御用バルブV1及びサスペンション制御用バルブV2の両方に電力を供給可能とした上で、一方のみに独立して電力を供給することができるので、ブレーキ液の液圧を制御する機能、及び、サスペンションの減衰力を制御する機能の両方を使えない状況の発生を抑制できる。以下、制御基板52による電力供給に関する制御の処理例として、第1の処理例、第2の処理例及び第3の処理例をこの順に説明する。
【0061】
図6は、制御基板52が行う第1の処理例の流れを示すフローチャートである。図6におけるステップS101は、図6に示される制御フローの開始に対応する。
【0062】
図6に示される第1の処理例の制御フローが開始されると、ステップS102において、制御基板52は、サスペンション制御用バルブV2の異常が生じているか否かを判定する。
【0063】
サスペンション制御用バルブV2の異常は、サスペンション制御用バルブV2を適切に制御できなくなるような状態を意味する。例えば、サスペンション制御用バルブV2の異常としては、サスペンション制御用バルブV2の可動部が固着してしまっている状態、又は、サスペンション制御用バルブV2と制御基板52とによって形成される回路において短絡や断線が生じている状態等が挙げられる。制御基板52は、例えば、サスペンション制御用バルブV2に通電した際の電流値等に基づいて、サスペンション制御用バルブV2の異常が生じているか否かを判定できる。
【0064】
サスペンション制御用バルブV2の異常が生じていると判定された場合(ステップS102/YES)、ステップS103に進む。ステップS103において、制御基板52は、第1リレーR1を閉状態にし、第2リレーR2を開状態にし、ステップS102に戻る。一方、サスペンション制御用バルブV2の異常が生じていないと判定された場合(ステップS102/NO)、ステップS104に進む。ステップS104において、制御基板52は、第1リレーR1及び第2リレーR2の両方を閉状態にし、ステップS102に戻る。
【0065】
上記のように、第1の処理例では、サスペンション制御用バルブV2の異常が生じている場合に、第1リレーR1が閉状態になり、第2リレーR2が開状態になる。それにより、ブレーキ制御回路52aは、電源B1から供給される電力を用いてブレーキ制御用バルブV1を駆動できる。ゆえに、ブレーキ液の液圧を制御する機能を使える状況になる。一方、電源B1からサスペンション制御用バルブV2に電力が供給されないので、サスペンション制御回路52bは、サスペンション制御用バルブV2を駆動できない。ゆえに、サスペンションの減衰力を制御する機能を使えない状況になる。よって、サスペンション制御用バルブV2の異常の発生に伴いサスペンションの減衰力を制御する機能を使えなくなるものの、ブレーキ液の液圧を制御する機能を使える状況が維持される。このように、サスペンション制御用バルブV2の異常が生じている場合において、ブレーキ液の液圧を制御する機能、及び、サスペンションの減衰力を制御する機能の両方を使えない状況が不要に発生することが抑制される。
【0066】
図7は、制御基板52が行う第2の処理例の流れを示すフローチャートである。図7におけるステップS201は、図7に示される制御フローの開始に対応する。
【0067】
図7に示される第2の処理例の制御フローが開始されると、ステップS202において、制御基板52は、ブレーキ制御用バルブV1の異常が生じているか否かを判定する。
【0068】
ブレーキ制御用バルブV1の異常は、ブレーキ制御用バルブV1を適切に制御できなくなるような状態を意味する。例えば、ブレーキ制御用バルブV1の異常としては、ブレーキ制御用バルブV1の可動部が固着してしまっている状態、又は、ブレーキ制御用バルブV1と制御基板52とによって形成される回路において短絡や断線が生じている状態等が挙げられる。制御基板52は、例えば、ブレーキ制御用バルブV1に通電した際の電流値等に基づいて、ブレーキ制御用バルブV1の異常が生じているか否かを判定できる。
【0069】
ブレーキ制御用バルブV1の異常が生じていると判定された場合(ステップS202/YES)、ステップS203に進む。ステップS203において、制御基板52は、第1リレーR1を開状態にし、第2リレーR2を閉状態にし、ステップS202に戻る。一方、ブレーキ制御用バルブV1の異常が生じていないと判定された場合(ステップS202/NO)、ステップS204に進む。ステップS204において、制御基板52は、第1リレーR1及び第2リレーR2の両方を閉状態にし、ステップS202に戻る。
【0070】
上記のように、第2の処理例では、ブレーキ制御用バルブV1の異常が生じている場合に、第1リレーR1が開状態になり、第2リレーR2が閉状態になる。それにより、電源B1からブレーキ制御用バルブV1に電力が供給されないので、ブレーキ制御回路52aは、ブレーキ制御用バルブV1を駆動できない。ゆえに、ブレーキ液の液圧を制御する機能を使えない状況になる。一方、サスペンション制御回路52bは、電源B1から供給される電力を用いてサスペンション制御用バルブV2を駆動できる。ゆえに、サスペンションの減衰力を制御する機能を使える状況になる。よって、ブレーキ制御用バルブV1の異常の発生に伴いブレーキ液の液圧を制御する機能を使えなくなるものの、サスペンションの減衰力を制御する機能を使える状況が維持される。このように、ブレーキ制御用バルブV1の異常が生じている場合において、ブレーキ液の液圧を制御する機能、及び、サスペンションの減衰力を制御する機能の両方を使えない状況が不要に発生することが抑制される。
【0071】
図8は、制御基板52が行う第3の処理例の流れを示すフローチャートである。図8におけるステップS301は、図8に示される制御フローの開始に対応する。
【0072】
図8に示される第3の処理例の制御フローが開始されると、ステップS302において、制御基板52は、ブレーキ制御用バルブV1の検査の開始条件が満たされているか否かを判定する。
【0073】
ブレーキ制御用バルブV1の検査は、例えば、設定時間(例えば、20秒等)間隔で繰り返し実行される。ゆえに、ブレーキ制御用バルブV1の検査の開始条件として、例えば、前回の検査から設定時間が経過したこと、との条件が用いられる。なお、ブレーキ制御用バルブV1の検査は、ブレーキ制御用バルブV1が駆動されていない状態で実行される。ゆえに、詳細には、ブレーキ制御用バルブV1の検査の開始条件として、例えば、前回の検査から設定時間が経過し、かつ、ブレーキ制御用バルブV1が駆動されていないとの条件が用いられる。
【0074】
ブレーキ制御用バルブV1の検査の開始条件が満たされていないと判定された場合(ステップS302/NO)、ステップS302の処理が繰り返される。一方、ブレーキ制御用バルブV1の検査の開始条件が満たされていると判定された場合(ステップS302/YES)、ステップS303に進む。
【0075】
ステップS303において、制御基板52は、第1リレーR1を開状態にし、第2リレーR2を閉状態にする。
【0076】
ステップS303の次に、ステップS304において、制御基板52は、ブレーキ制御用バルブV1の検査を実行する。
【0077】
ブレーキ制御用バルブV1の検査では、ブレーキ制御用バルブV1を含む電気回路の不具合の有無(例えば、断線の有無等)、及び、ブレーキ制御用バルブV1自体の不具合(例えば、固着の有無等)の有無等が検査される。このように、ブレーキ制御用バルブV1の検査では、複数種類の検査が行われる。このような複数種類の検査の中に、電気抵抗検査がある。電気抵抗検査では、制御基板52は、ブレーキ制御用バルブV1に電流を印加した状態でブレーキ制御用バルブV1の電気抵抗を検査する。具体的には、電気抵抗検査では、ブレーキ制御回路52aからブレーキ制御用バルブV1に微小な電流が印加され、その際の電圧降下量に基づいて、ブレーキ制御用バルブV1の電気抵抗の値が確認される。このような電気抵抗検査では、ブレーキ制御用バルブV1と電源B1との間を遮断する必要がある。ゆえに、ステップS303において、第1リレーR1が事前に開状態になる。
【0078】
ステップS304の次に、ステップS305において、制御基板52は、第1リレーR1及び第2リレーR2の両方を閉状態にし、ステップS302に戻る。
【0079】
上記のように、第3の処理例では、ブレーキ制御用バルブV1の電気抵抗検査が実行される場合に、第1リレーR1が開状態になり、第2リレーR2が閉状態になる。それにより、ブレーキ制御回路52aは、ブレーキ制御用バルブV1と電源B1との間が遮断された状態で、電気抵抗検査を適切に実行することができる。一方、サスペンション制御回路52bは、電源B1から供給される電力を用いてサスペンション制御用バルブV2を駆動できる。ゆえに、サスペンションの減衰力を制御する機能を使える状況になる。よって、ブレーキ制御用バルブV1の電気抵抗検査が実行される場合において、サスペンションの減衰力を制御する機能を使える状況が維持される。このように、ブレーキ制御用バルブV1の電気抵抗検査が実行される場合において、ブレーキ液の液圧を制御する機能、及び、サスペンションの減衰力を制御する機能の両方を使えない状況が不要に発生することが抑制される。
【0080】
なお、上記では、制御基板52による電力供給に関する制御の処理例として、第1の処理例、第2の処理例及び第3の処理例をそれぞれ説明した。ただし、制御基板52は、第1の処理例、第2の処理例及び第3の処理例を組み合わせて実行してもよい。例えば、制御基板52は、第1の処理例及び第2の処理例の両方を実行してもよい。なお、この場合、制御基板52は、ブレーキ制御用バルブV1の異常が生じている場合、サスペンション制御用バルブV2の異常の有無によらず、第1リレーR1を開状態にする。また、制御基板52は、サスペンション制御用バルブV2の異常が生じている場合、ブレーキ制御用バルブV1の異常の有無によらず、第2リレーR2を開状態にする。また、例えば、制御基板52は、第1の処理例及び第3の処理例の両方を実行してもよい。なお、この場合、制御基板52は、サスペンション制御用バルブV2の異常が生じている場合、ブレーキ制御用バルブV1の検査を実行しているか否かによらず、第2リレーR2を開状態にする。また、例えば、制御基板52は、第2の処理例及び第3の処理例の両方を実行してもよい。なお、この場合、制御基板52は、ブレーキ制御用バルブV1の異常が生じている場合、ブレーキ制御用バルブV1の検査を禁止する。また、例えば、制御基板52は、第1の処理例、第2の処理例及び第3の処理例の全てを実行してもよい。
【0081】
<液圧制御ユニットの効果>
本発明の実施形態に係る液圧制御ユニット5の効果について説明する。
【0082】
液圧制御ユニット5は、ブレーキ液の液圧を制御するためのブレーキ制御用バルブV1を含む液圧制御機構51と、ブレーキ制御用バルブV1の動作を制御するブレーキ制御回路52aを含む制御基板52とを備える。そして、制御基板52は、車両100のサスペンション(上記の例ではフロントサスペンション15及びリアサスペンション16)の減衰力を制御するためのサスペンション制御用バルブV2の動作を制御するサスペンション制御回路52bと、閉状態においてブレーキ制御用バルブV1と電源B1との間を通電し、開状態においてブレーキ制御用バルブV1と電源B1との間を遮断する第1リレーR1と、閉状態においてサスペンション制御用バルブV2と電源B1との間を通電し、開状態においてサスペンション制御用バルブV2と電源B1との間を遮断する、第1リレーR1とは別の第2リレーR2とを含む。
【0083】
それにより、ブレーキ液の液圧を制御する機能とサスペンションの減衰力を制御する機能とが1つの制御ユニットである液圧制御ユニット5に集約されるので、車両100に搭載される制御ユニットの数を低減できる。具体的には、基板及び基板を収容する筐体を含むサスペンション制御ユニットが液圧制御ユニット5とは別に車両100に設けられることがなくなり、車両100における装置の搭載スペースを節約することができる。さらに、ブレーキ制御用バルブV1及びサスペンション制御用バルブV2の両方に電力を供給可能とした上で、一方のみに独立して電力を供給することができるので、ブレーキ液の液圧を制御する機能、及び、サスペンションの減衰力を制御する機能の両方を使えない状況の発生を抑制できる。ゆえに、ブレーキ液の液圧を制御する機能とサスペンションの減衰力を制御する機能とを液圧制御ユニット5に集約した場合においても、これらの機能の両方を使えない状況が不要に発生することを抑制できる。よって、車両100における装置の搭載スペースを適切に節約することができる。
【0084】
さらに、液圧制御ユニット5では、ブレーキ制御用バルブV1及びサスペンション制御用バルブV2が共通の1つのリレーを介して電源B1と接続される場合と異なり、電源B1から各バルブに送られる電流が各リレーに分散されるので、各リレーに流れる電流が低減される。それにより、各リレーでの発熱量を小さくすることができる。ゆえに、定格が小さいリレーを採用できる。
【0085】
好ましくは、液圧制御ユニット5において、ブレーキ制御回路52aとサスペンション制御回路52bとは、共通の通信ラインL1と接続されている。それにより、制御基板52内に設けられる通信ラインL1を各制御回路で共有することによって、ノイズが低減されること等に起因して通信が安定化された上で、各制御回路と液圧制御ユニット5の外部の装置との通信を実現できる。また、各制御回路の間で、通信ラインL1を介して互いに直接的に通信することもできる。
【0086】
好ましくは、液圧制御ユニット5において、ブレーキ制御回路52aとサスペンション制御回路52bとは、共通のグランドラインL2と接続されている。それにより、各制御回路の基準電位が制御基板52内に設けられるグランドラインL2によって設定されることによって、ノイズが低減されること等に起因して通信を安定化できる。ゆえに、各制御回路と各装置との通信が適切に実現される。
【0087】
好ましくは、液圧制御ユニット5において、制御基板52は、サスペンション制御用バルブV2の異常が生じている場合に、第1リレーR1を閉状態にし、第2リレーR2を開状態にする。それにより、サスペンション制御用バルブV2の異常の発生に伴いサスペンションの減衰力を制御する機能を使えなくなるものの、ブレーキ液の液圧を制御する機能を使える状況が維持される。このように、サスペンション制御用バルブV2の異常が生じている場合において、ブレーキ液の液圧を制御する機能、及び、サスペンションの減衰力を制御する機能の両方を使えない状況が不要に発生することが抑制される。
【0088】
好ましくは、液圧制御ユニット5において、制御基板52は、ブレーキ制御用バルブV1の異常が生じている場合に、第1リレーR1を開状態にし、第2リレーR2を閉状態にする。それにより、ブレーキ制御用バルブV1の異常の発生に伴いブレーキ液の液圧を制御する機能を使えなくなるものの、サスペンションの減衰力を制御する機能を使える状況が維持される。このように、ブレーキ制御用バルブV1の異常が生じている場合において、ブレーキ液の液圧を制御する機能、及び、サスペンションの減衰力を制御する機能の両方を使えない状況が不要に発生することが抑制される。
【0089】
好ましくは、液圧制御ユニット5において、制御基板52は、ブレーキ制御用バルブV1に電流を印加した状態でブレーキ制御用バルブV1の電気抵抗を検査する電気抵抗検査を実行する場合に、第1リレーR1を開状態にし、第2リレーR2を閉状態にする。それにより、ブレーキ制御用バルブV1の電気抵抗検査が実行される場合において、サスペンションの減衰力を制御する機能を使える状況が維持されるので、ブレーキ液の液圧を制御する機能、及び、サスペンションの減衰力を制御する機能の両方を使えない状況が不要に発生することが抑制される。
【0090】
好ましくは、液圧制御ユニット5において、車両100は、鞍乗り型車両である。それにより、鞍乗り型車両における装置の搭載スペースを適切に節約することができる。鞍乗り型車両における装置の搭載スペースは、他の車両の搭載スペースと比べて狭いので、鞍乗り型車両における装置の搭載スペースを適切に節約することは特に有効である。
【0091】
本発明は実施形態の説明に限定されない。例えば、実施形態の一部のみが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、3a ロータ、4 後輪、4a ロータ、5 液圧制御ユニット、6 エンジン、10 ブレーキシステム、11 第1ブレーキ操作部、12 前輪制動機構、13 第2ブレーキ操作部、14 後輪制動機構、15 フロントサスペンション、16 リアサスペンション、17 フロントフォーク、18 スイングアーム、21 マスタシリンダ、22 リザーバ、23 ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、25 主流路、26 副流路、27 供給流路、31 込め弁、32 弛め弁、33 アキュムレータ、34 ポンプ、35 第1弁、36 第2弁、41 前輪車輪速センサ、42 後輪車輪速センサ、43 フロントストロークセンサ、44 リアストロークセンサ、51 液圧制御機構、51a 基体、51b ポート、52 制御基板、52a ブレーキ制御回路、52b サスペンション制御回路、52c 統合制御回路、53 ケース、61 取得部、62 制御部、62a ブレーキ制御部、62b サスペンション制御部、62c リレー制御部、100 車両、B1 電源、L1 通信ライン、L2 グランドライン、L3 電源ライン、R1 第1リレー、R2 第2リレー、V1 ブレーキ制御用バルブ、V2 サスペンション制御用バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8