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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137941
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】五徳爪の被膜形成装置
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/10 20060101AFI20230922BHJP
   F24C 3/02 20210101ALI20230922BHJP
【FI】
F24C15/10 E
F24C3/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044389
(22)【出願日】2022-03-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】512177894
【氏名又は名称】西田 向伯
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉本 真太
(57)【要約】
【課題】複数の五徳爪それぞれに対して、被膜を円滑かつ均一に形成する。
【解決手段】軸A0が通る中心Cから放射状の軌跡上に延設されるとともに周方向に等角度間隔にて配置される複数本の金属製の五徳爪210と、五徳爪210を支持する略円環状の金属製の五徳プレート220と、を有する五徳200の五徳爪210の外表面に対し、液剤を用いた被膜形成を行う被膜形成装置100は、装置本体10と、装置本体10を支持する支持部20と、を有する。装置本体10は、五徳200を把持可能な把持部14と、把持部14を軸A0まわりに回動させる回動駆動部13と、軸A0が鉛直方向に対し傾くようにしつつ回動駆動部13を支持するスライダー部12と、スライダー部12を鉛直上下方向に駆動する上下動駆動部11と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸心を直交する平面内において前記軸心を中心とした放射状の軌跡上に延設されるとともに周方向に等角度間隔にて配置され、載置される調理容器の底面を支持する、複数本の金属製の五徳爪と、前記複数本の五徳爪を互いに連結しつつそれら複数本の五徳爪を支持する、略円環状の金属製の五徳プレートと、を有する五徳の、前記複数本の五徳爪の外表面に対し、所定の液剤を用いた被膜形成を行う五徳爪の被膜形成装置であって、
装置本体と、
前記装置本体を所定の設置面に対して支持する支持部と、
を有し、
前記装置本体は、
前記五徳を把持可能な把持部と、
前記把持部を前記軸心まわりに回動させる回動駆動部と、
前記回動駆動部を、前記軸心が鉛直方向に対し所定角度だけ傾くようにしつつ支持するスライダー部と、
前記スライダー部を鉛直上下方向に駆動する上下動駆動部と、
を有することを特徴とする五徳爪の被膜形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の五徳爪の被膜形成装置において、
前記複数本の五徳爪それぞれを所定の停止位置に順次位置決めするように、前記回動駆動部を制御する回転制御部と、
前記スライダー部を、
所定の下降開始位置から下降終了位置まで途中で停止させることなく下降させ、かつ前記下降終了位置から所定の上昇終了位置まで途中の複数個所で停止させつつ上昇させるように、前記上下動駆動部を制御する上下動制御部と、
を有することを特徴とする五徳爪の被膜形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の五徳爪の被膜形成装置において、
前記回転制御部及び前記上下動制御部は、
前記複数本のうち1本の前記五徳爪を前記停止位置に位置決めする第1処理と、
前記第1処理において前記1本の五徳爪が前記停止位置に位置決めされた状態で、前記スライダー部を前記下降開始位置から前記下降終了位置まで下降させた後に前記上昇終了位置まで上昇させる第2処理と、
を、前記複数本の五徳爪それぞれに対して順次実行するように、前記回動駆動部及び前記上下動駆動部を互いに連携して制御する
ことを特徴とする五徳爪の被膜形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の五徳爪の被膜形成装置において、
前記スライダー部は、
前記上下動駆動部により鉛直上下方向に移動する移動体と、
前記移動体に対し首振り可能に設けられるとともに当該首振り角度を手動設定可能な回転ステージと、
を有することを特徴とする五徳爪の被覆形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の五徳爪の被覆形成装置において、
前記支持部は、
前記装置本体の下部に設けられた基台部と、
前記基台部の下部に設けられ、当該基台部の下部と前記設置面との高さ間隔を調整可能な少なくとも1つの高さ調整機構と、
を有することを特徴とする五徳爪の被覆形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理容器が載置される五徳が有する五徳爪に対し、被膜を形成するための五徳爪の被膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、五徳(ゴトクとも称呼する場合もある)の耐久性を向上する等の目的で、五徳爪に対し被膜を形成する手法が知られている。この種の手法は、下記特許文献1にて開示されている。当該開示されている手法は、例えば、「ゴトクの爪(線状構成体2)にコーティング材の微粒子を衝突させて酸化皮膜6を形成する」手法、「溶融したコーティング材中に浸漬させる」手法、「母材とコーティング材の間に接合材料を介在させて炉中で溶融することで母材とコーティング材を密着させる」手法、「ゴトクの爪(線材構成体22)の母材表面の全面或いは一部に酸化皮膜6を溶射加工にて設ける」手法、等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-308953号公報(明細書段落[0051][0056][0061]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、五徳爪に対し被膜を形成するときの手法が、概念的に開示されているのみであり、具体的な被膜形成装置については、開示されていない。複数の五徳爪それぞれに対して、被膜を円滑かつ均一に形成できる装置は、提唱されていなかった。
【0005】
本発明の目的は、複数の五徳爪それぞれに対して、被膜を円滑かつ均一に形成できる五徳爪の被膜形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明の五徳爪の被膜形成装置は、所定の軸心を直交する平面内において前記軸心を中心とした放射状の軌跡上に延設されるとともに周方向に等角度間隔にて配置され、載置される調理容器の底面を支持する、複数本の金属製の五徳爪と、前記複数本の五徳爪を互いに連結しつつそれら複数本の五徳爪を支持する、略円環状の金属製の五徳プレートと、を有する五徳の、前記複数本の五徳爪の外表面に対し、所定の液剤を用いた被膜形成を行う。本願発明の五徳爪の被膜形成装置は、装置本体と、前記装置本体を所定の設置面に対して支持する支持部と、を有し、前記装置本体は、前記五徳を把持可能な把持部と、前記把持部を前記軸心まわりに回動させる回動駆動部と、前記回動駆動部を、前記軸心が鉛直方向に対し所定角度だけ傾くようにしつつ支持するスライダー部と、前記スライダー部を鉛直上下方向に駆動する上下動駆動部と、を有することを特徴とする。
【0007】
これによれば、把持部により五徳を把持した状態で、回動駆動部により軸心回りに五徳を回転させることができる。回動駆動部は、スライダー部により傾けられて、軸心に対して傾斜させることができる。このように、五徳を傾斜状態で回転させることで、複数本の五徳爪を所定位置に順次位置決めすることが可能となる。また、位置決めした状態において、スライダー部を上下動させることができる。これにより、位置決めされた1本の五徳爪のみを、薬剤にてディップすることができる。傾斜状態の五徳の回転による位置決めと、スライダー部の上下動とを繰り返すことで、全ての五徳爪に対して薬剤を均一に被覆でき、生産性を向上できる。
【0008】
また、本願発明の五徳爪の被膜形成装置は、前記複数本の五徳爪それぞれを所定の停止位置に順次位置決めするように、前記回動駆動部を制御する回転制御部と、前記スライダー部を、所定の下降開始位置から下降終了位置まで途中で停止させることなく下降させ、かつ前記下降終了位置から所定の上昇終了位置まで途中の複数個所で停止させつつ上昇させるように、前記上下動駆動部を制御する上下動制御部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本願発明の五徳爪の被膜形成装置において、前記回転制御部及び前記上下動制御部は、前記複数本のうち1本の前記五徳爪を前記停止位置に位置決めする第1処理と、前記第1処理において前記1本の五徳爪が前記停止位置に位置決めされた状態で、前記スライダー部を前記下降開始位置から前記下降終了位置まで下降させた後に前記上昇終了位置まで上昇させる第2処理と、を、前記複数本の五徳爪それぞれに対して順次実行するように、前記回動駆動部及び前記上下動駆動部を互いに連携して制御することを特徴とする。
【0010】
また、本願発明の五徳爪の被膜形成装置において、前記スライダー部は、前記上下動駆動部により鉛直上下方向に移動する移動体と、前記移動体に対し首振り可能に設けられるとともに当該首振り角度を手動設定可能な回転ステージと、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本願発明の五徳爪の被膜形成装置において、前記支持部は、前記装置本体の下部に設けられた基台部と、前記基台部の下部に設けられ、当該基台部の下部と前記設置面との高さ間隔を調整可能な少なくとも1つの高さ調整機構と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の五徳爪それぞれに対して、被膜を円滑かつ均一に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る五徳爪の被膜形成装置に適用される五徳の平面図及び側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る五徳爪の被膜形成装置の全体構成図である。
図3図2に示す被膜形成装置の正面図及び側面図である。
図4図2に示す被膜形成装置の平面図である。
図5図2に示す被膜形成装置が備える回動駆動部、スライダー部、及び上下動駆動部の斜視拡大図であって、スライダー部の上下動を説明するための図である。
図6図2に示す被膜形成装置が備える回動駆動部、スライダー部、及び上下動駆動部の斜視拡大図であって、スライダー部の首振りを説明するための図である。
図7図2に示す被膜形成装置が備える把持部の斜視拡大図であって、把持部による五徳の把持を説明するための図である。
図8図2に示す被膜形成装置が備えるコントローラ、位置センサ、回転駆動モータ、及び、上下動駆動モータの機能ブロック図である。
図9図2に示す被膜形成装置が備える把持部に把持された五徳が、軸心回りに回転している状態の斜視図、及び、回転していた五徳が位置センサの検出により停止した状態の斜視図である。
図10】五徳爪に被膜を形成する場合における、図2に示す被膜形成装置の実際の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
<被膜形成装置>
本発明の実施形態に係る五徳爪の被膜形成装置100は、五徳200の五徳爪210の外表面に対し、所定の液剤を用いた被膜形成を行うためのものである。
【0016】
図1に示すように、五徳200は、五徳爪210、及び、五徳プレート220を備える。複数本の金属製の五徳爪210は、五徳プレート220に、互いに連結されつつ、それぞれ支持されている。略円環状の金属製の五徳プレート220は、中心C、及び、軸A0が規定される。軸A0は、中心Cを通り、五徳プレート220の径方向に対し略垂直に延びている。即ち、中心Cは、軸A0の軸心に相当する。
【0017】
図1(a)に示すように、複数の五徳爪210は、軸心を直交する平面内において、軸心を中心とした放射状の軌跡上に延設される。五徳爪210の本数は、本実施形態では6本である。6本の五徳爪211,212,213,214,215,216は、中心Cをもつ略正六角形の平面において、中心Cから6個の各頂点に向けて延びる6本の線上に、それぞれ位置している。6本の五徳爪211,212,213,214,215,216は、それぞれ周方向に等角度間隔にて配置される。五徳プレート220の周上における隣り合う2つの五徳爪210の各位置から、中心Cに向かう2線の成す角は、略60°となっている。
【0018】
図1(b)に示すように、五徳爪210は、調理容器KWが載置される場合、その底面を支持するようになっている。五徳爪210の形状は、この例では「コの字状」「略L字状」となっているが、五徳爪210の形状、本数は、調理容器KWの載置が可能な態様であれば、限定されない。
【0019】
図2図3、及び、図4に示すように、本発明の実施形態に係る五徳爪の被膜形成装置100は、装置本体10、支持部20、及び、コントローラ30を備えている。装置本体10は、支持部20により、設置面ISに対して支持される。コントローラ30は、設置面IS上に装置本体10に隣り合うよう載置されている。コントローラ30は、装置本体10と図示しないハーネス等を介して、電気的に接続されるようになっている。
【0020】
被膜形成装置100の前側であって、被膜形成装置100により把持されている五徳200の下方には、薬剤容器CNが設置されている。薬剤容器CNは、上部開口を有し、被膜形成を可能とする液状の薬剤を貯留可能となっている。当該開口は、上部から五徳爪210が侵入可能な大きさであり、五徳爪210が侵入した場合に、貯留されている薬剤にて五徳爪210がディップされるようになっている。なお、被膜形成装置100の操作者から見て、手前及び奥手、左及び右、上及び下、における方向は、各図面の矢印にて示す、前・後、左・右、上・下、における方向にそれぞれ対応している。
【0021】
支持部20は、基台部21、及び、調整機構22を備えている。基台部21は、平面視にて略H字状を呈している。基台部21は、装置本体10の下部に設けられている。基台部21の重心に対応する位置に、装置本体10の上下動駆動部11の下端部が接続されている。装置本体10が接続された支持部20は、略水平な設置面ISに載置されている。
【0022】
基台部21の四隅近傍には、調整機構22が1個ずつ設けられている。4個の調整機構22は、基台部21の下部にそれぞれ設けられ、基台部21の下部および設置面ISの間に、それぞれ介装されている。4個の調整機構22は、例えば、螺子式アジャスタ等であり、基台部21の下部と設置面ISとの高さ間隔を、個々調整可能となっている。
【0023】
図2図4に示す状態では、一例として、前方2個の調整機構22にて上記高さ間隔を大きく、後方2個の調整機構22にて上記高さ間隔を小さくしている。これにより、基台部21の上部における装置本体10は、全体として若干後方に傾斜している。図3(b)の側面図に示すように、鉛直上下方向に対する後述する軸A1の傾斜角TA1(即ち、設置面ISに対する基台部21の傾斜角)は、調整可能である。傾斜角TA1は、例えば、最大10°であってもよい。
【0024】
装置本体10は、上下動駆動部11、スライダー部12、回動駆動部13、把持部14、及び、位置センサSNを備えている。上下動駆動部11は、スライダー部12を鉛直上下方向に駆動するようになっている。スライダー部12は、回動駆動部13を、軸心(上記軸A0、後述する軸A3)が、鉛直上下方向に対し所定角度だけ傾くようにしつつ支持するようになっている。回動駆動部13は、五徳200を把持可能な把持部14を、軸心(上記軸A0、後述する軸A3)まわりに回動させるようになっている。
【0025】
上下動駆動部11は、支柱部材11a、上下駆動モータ11b、及び、レール部11cを備えている。支柱部材11aは、略四角柱状を呈しており、その下端底面にて、基台部21と接続されている。支柱部材11aは、基台部21から上方向に伸びており、支柱部材11aの伸長方向の軸を軸A1と称呼する。支柱部材11aの上端頂面には、上下駆動モータ11bが設けられている。上下駆動モータ11bは、例えば、ステッピングモータ等であり、所定の動力伝達機構を介して、スライダー部12を上下方向に駆動する。
【0026】
上記所定の動力伝達機構としては、例えば、軸A1に沿って伸長し、且つ、スライダー部12(移動体12a)と螺合するシャフト等であって、軸A1回りに回転したときに、スライダー部12(移動体12a)が軸A1の方向に並進可能となる機構であってもよい。また、これに代えて、軸A1の方向に移動するベルト等であって、スライダー部12(移動体12a)が係合され、一体的に軸A1の方向に並進可能となる機構が用いられてもよい。
【0027】
レール部11cは、支柱部材11aの前面において、軸A1に沿って設けられている。レール部11cは、支柱部材11aの表面から溝状に凹んでおり、スライダー部12の一部が係合される。スライダー部12(移動体12a)が係合された状態で、軸A1に沿ったスライド移動が、案内されるようになっている。上下駆動モータ11bの回転駆動が変換されて、スライダー部12は、軸A1に沿ってスライド移動可能となっている。即ち、上下動駆動部11は、リニアスライドレールガイドとしての機能を奏する。
【0028】
図5に示すように、スライダー部12は、移動体12a、回転ステージ12b、及び、支持部材12cを備えている。移動体12aは、略矩形の平板であり、その後面が支柱部材11aの前面に対向している。移動体12aの後面であって、支柱部材11aへの対向面には、後側に突出する係合部位(図示せず)が設けられている。当該係合部位は、レール部11cに係合されている。
【0029】
移動体12aがレール部11cに係合されることで、移動体12aは、上下動駆動部11により、鉛直上下方向に(軸A1に沿って)スライド移動するようになっている。また、移動体12aの前面は、他の部材を固定可能となる。移動体12aがスライド移動する場合、移動体12aに固定された部材も、一体的にスライド移動する。
【0030】
移動体12aは、例えば、実線にて示す位置から下降する場合、当該位置を下降開始位置P1として、所定の第1速度V1にて途中で停止させることなく下降する。そして、下降する移動体12aは、例えば、破線にて示す位置を下降終了位置P2として一旦停止する。移動体12aは、例えば、下降終了位置P2から上昇する場合、第2速度V2にて上昇する。そして、上昇する移動体12aは、例えば、実線にて示す位置を上昇終了位置P3として一旦停止する。なお詳細には、移動体12aは、下降終了位置P2から上昇終了位置P3までの間、途中の複数個所で所定期間停止しつつ上昇する。各上昇区間における第2速度V2の値は、例えば各区間ごとに適宜に可変に調整される(各区間において共通の速度で上昇するのではない)。このような上昇動作及び一時停止を小刻みに繰返すこと、及び、その上昇動作時の上昇速度を適宜に調整すること、はこの種の装置において既に行われている公知の手法により行えば足りる。以下適宜、これらの各区間において上昇速度が可変に調整される内容、及び、各区間の境界でその都度上昇を一時停止させる内容、も含めて、単に「下降終了位置P2から上昇終了位置P3までの間、第2速度V2で上昇する」等と称する。この移動体12aの作動は、上下駆動モータ11bの駆動が、コントローラ30にて制御されることで、達成される。
【0031】
下降開始位置P1、下降終了位置P2、上昇終了位置P3、第1速度V1、及び、第2速度V2は、コントローラ30にて、それぞれ独立して設定可能となっている。下降開始位置P1および上昇終了位置P3は、同位置、又は、異なる位置であってもよい。下降開始位置P1、下降終了位置P2、上昇終了位置P3は、上下駆動モータ11bの駆動時間および回転速度が調整されることで、それぞれ変更可能となっている。第1速度V1、第2速度V2は、上下駆動モータ11bの回転速度が調整されることで、それぞれ変更可能となっている。
【0032】
図6に示すように、回転ステージ12bは、移動体12aに対し首振り可能に設けられるとともに、当該首振り角度を手動設定可能となっている。回転ステージ12bは、基部12b1、回転部12b2、及び、調整部12b3を備えている。
【0033】
基部12b1は略矩形の板を含み、回転部12b2は略円形の板で構成されている。基部12b1及び回転部12b2は、各板が前後方向に重なるように、且つ、それぞれの中心を貫く軸A2の回りに相対回転可能に接続されている。ダイヤル式の調整部12b3を、手動で回動させるのに応じて、上記相対回転の度合いが調整されるようになっている。基部12b1の後面は、移動体12aの前面と固定されて、回転部12b2の前面は、他の部材を固定可能となる。
【0034】
これにより、移動体12aに対して軸A2を中心として、回転部12b2(及び回転部12b2に固定された部材)が首振り可能となり、当該首振り角度が調整部12b3にて手動設定可能となっている。なお、軸A2は、前後方向に沿っており、上記軸A1と直交する。
【0035】
支持部材12cは、回転ステージ12bに固定されている。支持部材12cは、第1支持部12c1、及び、第2支持部12bで構成されている。第1、第2支持部12c1は、それぞれ略矩形の平板であり、一方が他方の一辺から互いに略垂直となるよう立設されている。即ち、支持部材12cは、側面視にて略L字状を呈している。第1支持部12c1の後面は、回転部12b2の前面と固定されて、第2支持部12c2は、第1支持部12c1の下部から前方に向かい突出する。当該突出する第2支持部12c2における上面、及び、下面は、他の部材を固定可能となる。
【0036】
第2支持部12c2における上面には、位置センサSNが設けられている。位置センサSNは、本実施形態では、対象物の存在を非接触で検出可能な光学式センサである。位置センサSNのレーザヘッドは、光源及び受光部を備えている。レーザヘッドは、第2支持部12c2の上面に固定された支持棒にて、第2支持部12c2の右端より右側に位置するよう支持されている。
【0037】
レーザヘッドは、その光源及び受光部が下向きとなるよう配置される。これにより、下方に位置する対象物に向け射出光を照射可能となっており、且つ、当該対象物から反射した反射光を受光可能となっている(図9を参照)。ここにおいて、「下方に位置する対象物」は、五徳200の五徳爪210に相当する。なお、五徳爪210の位置決めについては、後に詳述する。また、位置センサSNは、光学式センサに限られず、例えば、電波式又は音波式センサ、画像認識のためのカメラ等であってもよい。
【0038】
図5、及び、図6に示すように、第2支持部12c2における下面には、回動駆動部13が設けられている。回動駆動部13は、回転テーブル13a、シャフト13b、及び、回転駆動モータ13cを備えている。回転テーブル13aは、略直方体状の筐体であり、底面における略中央部にてシャフト13bを回動可能にチャックしている。シャフト13bは、上方の一端にて回転テーブル13aにチャックされ、回転テーブル13aから下方向に伸びている。シャフト13bの伸長方向の軸を軸A3と称呼する。なお、軸A3は、上記軸A2と直交する。
【0039】
図6に示すように、回転ステージ12b(回転部12b2)が軸A2を中心として、移動体12aに対し回転する場合、破線のように、支持部材12cを介して回動駆動部13も回転する。従って、シャフト13b及び軸A3も追従して、軸A2を中心として回転する。このため、図3(a)の正面図に示すように、軸A1に対する軸A3の傾斜角TA2は、調整可能となる。傾斜角TA2は、例えば、鋭角であってもよい。
【0040】
回転テーブル13aの内部には、回転駆動モータ13cが内蔵されている。回転駆動モータ13cは、例えば、ステッピングモータ等であり、軸A3を中心としてシャフト13bを回転駆動する。シャフト13bは、下方の他端にて把持部14が設けられるようになっている(図7を参照)。把持部14にて五徳200が把持されている状態において、回転駆動モータ13cによりシャフト13bが回転駆動されると、把持部14及び五徳200も、軸A3を中心として一体的に回転するようになっている。
【0041】
図7に示すように、把持部14は、移動部材14a、固定部材14b、突出部材14c、係合部材14d、及び、リンク部材14eを備えている。移動部材14aは、環状を呈しており、シャフト13bに同軸的に篏合されている。移動部材14aは、軸A3に沿って、シャフト13bに対し相対的にスライド移動となっている。固定部材14bは、シャフト13bの下方先端部に固定されている。即ち、移動部材14aは、固定部材14bに対し、近接方向および遠隔方向の2方向に移動可能となっている。
【0042】
突出部材14cは、一端が固定部材14bの側面に固定され、他端が径方向外側に突出するようになっている。突出部材14cは、雄螺子構造となっており、係合部材14dと螺合可能である。係合部材14dは、略直方体を呈しており、内部に雌螺子構造を有し、径方向内側から突出部材14cが螺合されている。係合部材14dの径方向外側の端部には、径方向内側に凹む凹部が設けられている。当該凹部にて、五徳プレート220を係止可能となっている。突出部材14c、及び、係合部材14dは、相対回転可能となっており、係合部材14dは、固定部材14bに対し、近接方向および遠隔方向の2方向に移動可能となっている。
【0043】
リンク部材14eは、一端が係合部材14dと回転可能に接続され、他端が移動部材14aと回転可能に接続されている。係合部材14dが、固定部材14bに対し近接方向に移動する場合、リンク部材14eは、移動部材14aを押し上げ固定部材14bに対し遠隔方向に移動させる。一方、係合部材14dが、固定部材14bに対し遠隔方向に移動する場合、リンク部材14eは、移動部材14aを引き下げ固定部材14bに対し近接方向に移動させる。
【0044】
把持部14を構成する各部材の個数は任意であるが、本実施形態では、移動部材14a、及び、固定部材14bはそれぞれ1個であり、突出部材14c、係合部材14d、及び、リンク部材14eはそれぞれ4個である。これに代えて、突出部材14c、係合部材14d、及び、リンク部材14eは、2個であってもよい。
【0045】
五徳200を把持部14にて把持させる場合、先ず、図7の破線にて示すように、係合部材14dを固定部材14bに対し近接方向に移動させておき、移動部材14aを固定部材14bに対し遠隔方向に移動させておく。具体的には、固定部材14bから係合部材14dの凹部までの直線距離が、五徳プレート200の半径よりも小さい状態で、把持部14の各部材の位置を維持しておく。
【0046】
次いで、五徳爪210における調理容器KWの載置部位を下側に向けた状態で、中心Cが固定部材14bに重なるよう、且つ、軸A0がシャフト13bの軸A3に重なるように、五徳200をシャフト13bの先端近傍に位置させて、姿勢及び位置を維持する。次いで、図7の破線に示す状態から、係合部材14dを固定部材14bに対し遠隔方向に移動させていく。これと同時に、移動部材14aは固定部材14bに対し近接方向に移動していくとともに、係合部材14dが五徳プレート220に近接していく。そして、全ての係合部材14dの凹部が、五徳プレート220を、径方向内側からそれぞれ係止した時点で各部材の移動は停止し、把持部14による五徳200の把持が達成される。把持部14から五徳200を取り外す場合には、逆の手順を経て、五徳200の取り外しが可能となる。
【0047】
このように、五徳200が被膜形成装置100に取り付けられた状態においては、シャフト13bの軸A3回りの回動に追従して、把持部14、及び、五徳200が一体的に、軸A0を中心として回転可能となる。また、傾斜角TA1、TA2の調整に応じて、五徳200と接続される各部材の傾斜と一体的に、五徳200そのものも傾斜可能となる。また、スライダー部12の軸A1に沿ったスライド移動に応じて、五徳200と接続される各部材のスライド移動と一体的に、五徳200そのものもスライド移動可能となる(図3図6図7を参照)。
【0048】
図8に示すように、コントローラ30は、入力装置31、表示装置32、及び、制御装置33を備えている。入力装置31は、例えば、ボタン、スイッチ等であり、操作者により操作パラメータ等を入力可能となっている。入力された操作パラメータは、図示しない記憶装置等で更新可能に記憶され、制御装置33にて読出可能となっている。ここにおいて、「操作パラメータ」は、例えば、下降開始位置P1、下降終了位置P2、上昇終了位置P3、第1速度V1、第2速度V2、五徳爪210の被覆回数N等である。
【0049】
表示装置32は、例えば、表示パネル等であり、操作者により視認可能となっている。表示装置32は、制御装置33の出力指示に応じて、入力装置31にて入力された操作パラメータ、装置の作動状態等が、表示可能となっている。
【0050】
制御装置33は、CPU、電気回路等を有しており、入力装置31、表示装置32、位置センサSN、回転駆動モータ13c、及び、上下動駆動モータ11bと、バス、インターフェイス等を介して、電気的に接続されている。制御装置33は、位置センサSNからの検出信号を受信するようになっている。制御装置33は、操作パラメータに基づく演算処理に応じた駆動信号を、回転駆動モータ13c、及び、上下動駆動モータ11bに、それぞれ送信するようになっている。
【0051】
制御装置33は、回転制御部33a、及び、上下動制御部33bを備えている。回転制御部33aは、複数の五徳爪210それぞれを、所定の停止位置に順次位置決めするように、回動駆動部13の回転駆動モータ13cを駆動制御する。上下動制御部33bは、スライダー部12の移動体12aを、下降開始位置P1から下降終了位置P2まで第1速度V1で下降させ、かつ下降終了位置P2から上昇終了位置P3まで第2速度V2で上昇させるように、上下動駆動部11の上下動駆動モータ11bを駆動制御する(図5を参照)。
【0052】
<五徳爪の位置決め>
図9に示すように、五徳200が把持部14に把持されている状態において、位置センサSNが用いられ、五徳爪210の位置決めが実行される。五徳200は、軸A0,A3を中心として、回動駆動部13により、平面視において時計回り及び反時計回りのうちの一方向に回転する。本実施形態では、説明の便宜上、五徳200は、平面視において反時計回りに回転するものとするが、これに限定されない。本実施形態における五徳200は、6個の五徳爪211,212,213,214,215,216を備えている(図1を参照)。これらの6個の五徳爪211~216は、五徳200の回転に追従して、反時計回りの動径方向に移動していく。
【0053】
図9(a)に示すように、位置センサSNは、光源から下方の五徳爪211~216に向けて、射出光L1を常時照射する。射出光L1は、五徳プレート220の円周外側であって、五徳爪211,216の間隙の空間を、進行しているものとする。この場合。位置センサSNの受光部は反射光を検出せず、回転制御部33aにより、回転駆動モータ13cを駆動し続ける。このため、五徳爪211の反時計回りの移動が継続する。即ち、五徳爪216が射出光L1から遠隔していくのに対し、五徳爪211は、射出光L1に近接していく。
【0054】
図9(b)に示すように、五徳爪211が射出光L1に近接していくと、やがて、五徳爪211が射出光L1の光路と交差する。このとき、五徳爪211上に射出光L1の照射点PLが形成される。これと同時に、照射点PLから位置センサSNの受光部に向かう反射光L2が形成される。受光部により反射光L2が検出されると、回転制御部33aは、回転駆動モータ13cの駆動を一旦停止する。これにより、五徳200の回転、及び、五徳爪211~216の移動も停止し、図9(b)に示す状態が維持される。
【0055】
図9(b)に示すように、移動停止している五徳爪211~216のうち、1本の五徳爪210が、後の上下動制御部33bによる制御により上下動し、鉛直下方の薬剤容器CNにてディップされるよう位置決めされる。即ち、複数本(本実施形態では6本)のうち、1本の五徳爪210がディップ可能となる停止位置に位置決めされる。位置決めされる1本の五徳爪210は、例えば、図9(b)において照射光L1の光路と交差した五徳爪211でもよいし、それ以外の五徳爪212~216のうちの何れか1つであってもよい。より具体的には、例えば、軸A1に対し軸A0,A3が傾斜角TA2にて傾斜している状態において(図3(a)を参照)、複数本のうち、最も下方に位置する1本の五徳爪210が、位置決めされるようにしてもよい。以下、上述のように位置決めする処理を、第1処理と称呼する場合もある。
【0056】
次いで、上記第1処理において1本の五徳爪210が上記停止位置に位置決めされた状態(即ち、図9(b)に示す状態)で、スライダー部12(移動体12a)を下降開始位置P1から下降終了位置P2まで下降させた後に、上昇終了位置P3まで上昇させるよう、上下動制御部33bは、上下動駆動モータ11bを駆動する(図5を参照)。これにより、上記第1処理にて位置決めされた五徳爪210が、下方の薬剤容器CNにてディップされるようになっている。以下、上述のようにスライダー部12を下降・上昇させる処理を、第2処理と称呼する場合もある。
【0057】
以降、上記第1処理、及び、上記第2処理が、残りの五徳爪それぞれに対して順次実行されていく。即ち、五徳爪212,213,214,215,216がこの順に射出光L1の光路と交差する度に、回転駆動モータ13cの駆動が一旦停止する。それぞれ停止する度に位置決めされるとともに、スライダー部12を下降・上昇させるよう、上下動駆動モータ11bを駆動する。このように、回転制御部33a及び上下動制御部33bは、上記第1処理及び上記第2処理を、複数本(本実施形態では6本)の五徳爪210それぞれに対して順次実行するように、回動駆動部13及び上下動駆動部11を互いに連携して制御する。
【0058】
<実際の作動>
上述のように構成された被膜形成装置100の一連の作動について、図10に示すフローチャートを参照しつつ説明する。五徳200の被膜を形成する場合、薬剤を貯留した薬剤容器CNを予め設置した状態から開始する。先ず、ステップST1にて、手動により、五徳200を把持部14に把持させて取り付ける(図7を参照)。
【0059】
次に、ステップST2にて、手動により、傾斜角TA1,TA2をそれぞれ調整する(図3を参照)。傾斜角TA1は、支持部20の調整機構22を操作して調整される。傾斜角TA2は、回転ステージ12bの調整部12b3を操作して調整される(図6を参照)。傾斜角TA1,TA2の調整は、五徳200を把持部14に把持させた状態で行われる。これにより、薬剤容器CNの設置位置に対する五徳200の位置や、薬剤をディップする際の五徳200の姿勢が、適切なものとなるよう微調整される。
【0060】
次に、ステップST3にて、五徳200の五徳爪210の被覆回数N、下降開始位置P1、下降終了位置P2、上昇終了位置P3、第1速度V1、及び、第2速度V2を入力する。これらの操作パラメータは、コントローラ30の入力装置31に、手動にてそれぞれ入力・設定される。上記操作パラメータが入力されると、コントローラ30の表示装置32にて、対応する数値等が直ちに表示される(図8を参照)。入力・設定された操作パラメータは、コントローラ30にて記憶される。
【0061】
被覆回数Nは、五徳爪210の本数と、1本あたりの被覆回数と、を乗じた数であってもよい。なお、本実施形態のように五徳爪211,212,213,214,215,216の全てを各1回被覆する場合、被覆回数Nに「6」が入力され、各2回被覆する場合、被覆回数Nに「12」が入力される。以下、一例として被覆回数Nを「6」とした場合について、説明する。
【0062】
下降開始位置P1、下降終了位置P2、及び、上昇終了位置P3は、薬剤容器CNにおける薬剤の液面高さ等に基づいて、決定される位置であってもよい。第1速度V1、及び、第2速度V2は、五徳爪210の材質に対する薬剤の濡れ方等に応じて、調整される速度であってもよい。
【0063】
次に、ステップST4にて、初期値として被覆完了回数kに「0」を入力する。被覆完了回数kの入力は、制御装置33により実行される。被覆完了回数kは、1本の五徳爪210の被覆処理が1回完了する度に、インクリメントされる数である。被覆完了回数kは、k=0,1,2,・・・,Nの何れかで表される整数となる。
【0064】
次に、ステップST5にて、被覆完了回数kが、上記設定された被覆回数Nと等しいか否か、を判定する。この判定は、制御装置33により実行される。現時点において、k=0、N=6であるため、ステップST5では「No」と判定される。
【0065】
次に、ステップST6にて、移動体12aが下降開始位置P1に移動するよう、上下動駆動モータ11bを駆動する。上下動駆動モータ11bの駆動は、制御装置33の上下動制御部33bにより実行される。ここにおいて、下降開始位置P1は、ステップST3にて入力・設定されたものである。
【0066】
次に、ステップST7にて、五徳200が軸A0,A3を中心として回転するよう、回転駆動モータ13cを駆動する。回転駆動モータ13cの駆動は、制御装置33の回転制御部33aにより実行される。
【0067】
次に、ステップST8にて、位置センサSNが反射光L2を検出したか否か、を判定する。この判定は、制御装置33の回転制御部33aにより実行される。図9(a)に示すように、五徳爪211~216が射出光L1の光路と交差しない限り、ステップST8にて「No」と判定されてステップST7に戻り、回転駆動モータ13cの駆動が継続される。
【0068】
一方、図9(b)に示すように、五徳爪211~216の何れかが射出光L1の光路と交差し、位置センサSNが反射光L2を検出すると、ステップST8にて「Yes」と判定される。
【0069】
次に、ステップST9にて、五徳200の回転が停止するよう、回転駆動モータ13cを停止する。回転駆動モータ13cの停止は、制御装置33の回転制御部33aにより実行される。これにより、五徳爪210が停止位置に位置決めされる。
【0070】
次に、ステップST10にて、移動体12aが下降終了位置P2に第1速度V1で下降するよう、上下動駆動モータ11bを駆動する。上下動駆動モータ11bの駆動は、制御装置33の上下動制御部33bにより実行される。ここにおいて、下降終了位置P2、及び、第1速度V1は、ステップST3にて入力・設定されたものである。これにより、移動体12aが下降開始位置P1から下降終了位置P2に下降するのに追従して、五徳200も下降し、五徳爪210の1つが第1速度V1をもって薬剤容器CNの薬剤内部に侵入する。
【0071】
次に、ステップST11にて、移動体12aが上昇終了位置P3に第2速度V2で上昇するよう、上下動駆動モータ11bを駆動する。上下動駆動モータ11bの駆動は、制御装置33の上下動制御部33bにより実行される。ここにおいて、上昇終了位置P3、及び、第2速度V2は、ステップST3にて入力・設定されたものである。これにより、移動体12aが下降終了位置P2から上昇終了位置P3に上昇するのに追従して、五徳200も上昇し、薬剤内部に侵入していた五徳爪210の1つが、第1速度V2をもって薬剤容器CNから引き上げられる。引き上げられた五徳爪210にて、薬剤の被覆が達成される。
【0072】
次に、ステップST12にて、被覆完了回数数kをインクリメントした値である「k+1」に更新し、ステップST5に戻る。被覆完了回数kの更新は、制御装置33により実行される。ここにおいて、「0」であった被覆完了回数kは、「1」に更新される。
【0073】
以降、被覆完了回数kが「6」よりも小さい場合に、ステップST5では「No」と判定され、ステップST5~ST12の処理が繰り返し実行されていく。これにより、五徳爪211,212,213,214,215,216が1本ずつ薬剤にて被覆されるのに対応して、被覆完了回数kが1,2,3,4,5,6と順に増加していく。そして、被覆完了回数kが「6」になったとき、ステップST5にて「Yes」と判定されて、五徳200の被膜形成が終了する。
【0074】
ここにおいて、ステップST7,ST8,ST9が上記第1処理に相当する。また、ステップST10,ST11が上記第2処理に相当する。
【0075】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の実施形態に係る五徳爪の被膜形成装置100によれば、把持部14により五徳200を把持した状態で、回動駆動部13により中心C、軸A0回りに五徳200を回転させることができる。回動駆動部13は、スライダー部12により傾けられて、軸A1に対して軸A0,A3を、傾斜角TA2だけ傾斜させることができる。このように、五徳200を傾斜状態で回転させることで、複数本の五徳爪210を所定位置に順次位置決めすることが可能となる。また、位置決めした状態において、スライダー部12を上下動させることができる。これにより、位置決めされた1本の五徳爪210のみを、薬剤にてディップすることができる。傾斜状態の五徳200の回転による位置決めと、スライダー部12の上下動とを繰り返すことで、全ての五徳爪210に対して薬剤を均一に被覆でき、生産性を向上できる。
【0076】
本発明の実施形態では特に、回転制御部33aにより回動駆動部13を制御することで位置決めされ、上下動制御部33bにより上下動駆動部11を制御することで、スライダー部12を上下動させる。スライダー部12の上下動において、下降開始位置P1、下降終了位置P2、上昇終了位置P3、第1速度V1、及び、第2速度V2を入力・設定しておくことができる。このため、傾斜状態の五徳200の回転による位置決めと、スライダー部12の上下動とを、自動的に実行できる。
【0077】
本発明の実施形態では特に、回転制御部33a及び上下動制御部33bにより、複数本のうち1本の五徳爪210を停止位置に位置決めする第1処理と、第1処理において1本の五徳爪210が停止位置に位置決めされた状態で、スライダー部12を下降開始位置P1から下降終了位置P2まで下降させた後に上昇終了位置P3まで上昇させる第2処理と、が実行される。上記第1処理、及び、上記第2処理は、複数本の五徳爪210それぞれに対して順次実行される。このため、傾斜状態の五徳200の回転による位置決めと、スライダー部12の上下動とを、全ての五徳爪210に対応するよう自動的に繰り返すことができる。
【0078】
本発明の実施形態では特に、前記スライダー部12が、移動体12a、及び、回転ステージ12bを備える。移動体12aは、上下動駆動部11により鉛直上下方向に移動する。回転ステージ12bは、移動体12aに対し首振り可能に設けられるとともに首振り角度を手動設定可能となっている。これによれば、被覆の対象とする五徳爪210の本数、形状、角度等に応じて、最適な傾斜角TA2の設定を手動で行うことができる。
【0079】
本発明の実施形態では特に、支持部20が、基台部21、及び、調整機構22を備える。基台部21は、装置本体10の下部に設けられる。調整機構22は、基台部21の下部に設けられ、当該基台部21の下部と設置面ISとの高さ間隔を調整可能となっている。これによれば、装置本体10全体の前後方向における傾斜角TA1を、調整可能となる。この結果、前述したように五徳爪210の形状が「コの字状」「略L字状」等であっても、その「コの字状」「略L字状」等における肉厚部分の上端部に、薬剤の液溜まりが生じる事象を防止できる。
【0080】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0081】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0082】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0083】
10 装置本体
11 上下動駆動部
11b 上下動駆動モータ
12 スライダー部
12a 移動体
12b 回転ステージ
13 回動駆動部
13c 回転駆動モータ
14 把持部
20 支持部
21 基台部
22 調整機構
30 コントローラ
33 制御装置
33a 回転制御部
33b 上下動制御部
100 被膜形成装置
200 五徳
210 五徳爪
211~216 五徳爪
220 五徳プレート
A0 軸
A1 軸
A2 軸
A3 軸
C 中心
IS 設置面
P1 下降開始位置
P2 下降終了位置
P3 上昇終了位置
SN 位置センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10