(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137943
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ガス容器
(51)【国際特許分類】
F17C 11/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
F17C11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044392
(22)【出願日】2022-03-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/水素利用等高度化先端技術開発/水素貯蔵効率向上に向けた水素タンクの研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】本郷 博昭
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB01
3E172AB04
3E172BA01
3E172BB05
3E172BC01
3E172BC04
3E172BC07
3E172BC08
3E172BD03
3E172DA36
3E172FA01
3E172FA08
3E172FA10
(57)【要約】
【課題】ガス容器における充填ガスの貯蔵放出性能を向上させ得る技術を提供すること。
【解決手段】
ガス容器1の内部空間18に貯蔵部60を配置し、このうち貯蔵部60を、凹凸形状の保持面61hを有し熱伝導材製である板状基体61と、前記保持面61hに保持され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材50と、を含む貯蔵複合体68が巻回されたハニカム構造を有するか、または、当該貯蔵複合体68が複数重ねられたハニカム構造を有するものとする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する容器本体と、前記容器本体の外部と前記内部空間とを連絡する口金と、前記内部空間に配置されている貯蔵部と、を具備し、
前記貯蔵部は、
凹凸形状の保持面を有し熱伝導材製である板状基体と、前記保持面に保持され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材と、を含む貯蔵複合体が巻回されたハニカム構造を有する、ガス容器。
【請求項2】
内部空間を有する容器本体と、前記容器本体の外部と前記内部空間とを連絡する口金と、前記内部空間に配置されている貯蔵部と、を具備し、
前記貯蔵部は、
凹凸形状の保持面を有し熱伝導材製である板状基体と、前記保持面に保持され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材と、を含む貯蔵複合体が複数重ねられたハニカム構造を有する、ガス容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスなどのガスを貯蔵および放出するためのガス容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両や各種装置の燃料として、水素ガスや天然ガス等を用いる技術が提案されている。これらのガスを貯蔵および放出するためのガス容器についても盛んに検討がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に紹介されているガス容器は、その内部空間に、貯蔵材の一種である水素吸蔵合金を収容するものである。
貯蔵材は、貯蔵の対象となるガス(以下、必要に応じて充填ガスと称する)を物理的または化学的に吸蔵し、および、放出する。これら貯蔵材によると、内部空間に貯蔵可能なガスの量を増大させることができる。
【0004】
一方、貯蔵材は、充填ガスを吸蔵および放出する際に温度変化を伴う。
【0005】
例えば、特許文献1に紹介されているように、貯蔵材が水素吸蔵合金であれば、温度変化により貯蔵材の体積変化が生じる。このような場合、貯蔵材の温度変化量やその速度、すなわち貯蔵材の体積変化量やその速度が過大になると、ガス容器に変形等の機械強度の低下が生じる虞がある。
【0006】
さらに、貯蔵材による充填ガスの吸蔵及び放出に雰囲気の温度が深く関係することにより、貯蔵材への充填ガスの吸蔵、および、当該貯蔵材からの充填ガスの放出を円滑に行うためには、貯蔵材の温度を内部空間全体にわたって均一化することが肝要と考えられる。
【0007】
特許文献1に紹介されているガス容器における内部空間には、熱交換媒体の通路である熱媒管と、当該熱媒管から延出するフィン部とが配置されている。
当該ガス容器によると、熱媒管に熱交換媒体を流通させることで、内部空間内のガス貯蔵材の温度を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、既述したように、上記特許文献1に紹介されているガス容器では、熱媒管に熱交換媒体を流通させることで内部空間内のガス貯蔵材の温度を制御している。
しかし、この種のガス容器であっても、充填ガスの貯蔵放出性能に優れるとは言い難い。
【0010】
本発明の発明者は、ガス容器における充填ガスの貯蔵放出性能を向上させるべく、当該特許文献1に紹介されているような従来型のガス容器では充分な充填ガスの貯蔵放出性能が得られない理由を検討した。そして、鋭意研究の結果、当該従来型のガス容器においては、内部空間で依然として温度のムラが生じており、これにより、従来型のガス容器では、充填ガスの吸蔵放出量や速度が頭打ちになっているという着想を得た。
【0011】
本発明の発明者はさらなる鋭意研究を重ね、上記した内部空間における当該温度のムラを解消または緩和するために、内部空間にハニカム構造の貯蔵部を配置することに到達した。当該貯蔵部は、熱伝導材製の区画壁により区画形成された複数の副空間を有し、当該副空間に貯蔵材が収容保持されたものである。
【0012】
当該貯蔵部における区画壁は、熱伝導材製であるため熱交換器として機能する。そして当該貯蔵部は、当該区画壁が張り巡らされることにより熱的に均一化される。当然乍ら、当該区画壁により区画形成された副空間に収容保持されている貯蔵材もまた熱的に均一化される。
これにより、当該ハニカム構造の貯蔵部を有するガス容器によると、充填ガスの貯蔵放出性能の向上を実現し得ると考えられる。
【0013】
ここで、本発明の発明者は、当該ハニカム構造の貯蔵部を有するガス容器に満足せず、充填ガスの貯蔵放出性能を更に向上させることを志向した。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ハニカム構造の貯蔵部を有するガス容器において、充填ガスの貯蔵放出性能を、より一層向上させ得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の第1態様のガス容器は、
内部空間を有する容器本体と、前記容器本体の外部と前記内部空間とを連絡する口金と、前記内部空間に配置されている貯蔵部と、を具備し、
前記貯蔵部は、
凹凸形状の保持面を有し熱伝導材製である板状基体と、前記保持面に保持され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材と、を含む貯蔵複合体が巻回されたハニカム構造を有する、ガス容器である。
【0016】
また、上記課題を解決する本発明の第2態様のガス容器は、
内部空間を有する容器本体と、前記容器本体の外部と前記内部空間とを連絡する口金と、前記内部空間に配置されている貯蔵部と、を具備し、
前記貯蔵部は、
凹凸形状の保持面を有し熱伝導材製である板状基体と、前記保持面に保持され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材と、を含む貯蔵複合体が複数重ねられたハニカム構造を有する、ガス容器である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、ハニカム構造の貯蔵部を有するガス容器における充填ガスの貯蔵放出性能を、より一層向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1のガス容器を模式的に説明する説明図である。
【
図2】実施例1のガス容器の軸方向断面を模式的に表す説明図である。
【
図3】実施例1のガス容器における要部を分解した様子を模式的に説明する説明図である。
【
図4】実施例1のガス容器における収容部材を模式的に説明する説明図である。
【
図5】実施例1のガス容器における貯蔵部を製造している様子を模式的に説明する説明図である。
【
図6】実施例2のガス容器における貯蔵部を製造している様子を模式的に説明する説明図である。
【
図7】実施例3のガス容器における貯蔵部を製造している様子を模式的に説明する説明図である。
【
図8】実施例4のガス容器における貯蔵部を製造している様子を模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のガス容器は、充填ガスを吸蔵および放出するための貯蔵材を有する。そして、当該貯蔵材を収容する容器本体の内部空間は、ハニカム構造をなす貯蔵部が配置されている。
【0020】
貯蔵部は、板状基体により複数の副空間に区画され、貯蔵材は各副空間に収容保持されている。より詳しくは、板状基体は凹凸形状の保持面を有し、貯蔵材は当該保持面に保持されている。すなわち、当該板状基体および貯蔵材は複合され1つの部材として扱われる。本明細書では、板状基体および貯蔵材の複合体を、貯蔵複合体と称する。
【0021】
本発明の第1態様のガス容器における貯蔵部は、当該貯蔵複合体が巻回されたハニカム構造をなす。また、本発明の第2態様のガス容器における貯蔵部は、当該貯蔵複合体が複数重ねられたハニカム構造をなす。
何れの場合にも、貯蔵部においては、板状基体が三次元状に架け渡されることで副空間が区画形成され、板状基体の保持面に保持されている貯蔵材は当該副空間に収容される。本発明の第1態様のガス容器および第2態様のガス容器において、板状基体は、上記した区画壁として機能するといい得る。
【0022】
板状基体は、熱伝導材製であるために、本発明のガス容器における内部空間において熱交換器として機能する。このため、内部空間が熱的に均一化され、当該板状基体に保持されている貯蔵材もまた熱的に均一化される。これにより、本発明のガス容器では、充填ガスの貯蔵放出性能がより一層向上する。
【0023】
ここで、一般的なハニカム構造の貯蔵部は非常に複雑な形状であるために、当該貯蔵部を製造する工程は非常に煩雑である。
先ず、板状基体を三次元的に架け渡してハニカム状に形成する工程は多くの工数を有する。それだけでなく、当該板状基体により区画された副空間に貯蔵材を充填する工程は緻密な作業を要し非常に煩雑である。
【0024】
すなわち、ハニカム構造の貯蔵部は数多くの副空間を有するものであり、各々の副空間は比較的小径かつ長尺なものである。このため、例えば貯蔵材として一次粒子や当該一次粒子が凝集した二次粒子からなる粉末を用いる場合には、比較的小径かつ長尺である多数の副空間の各々に、当該貯蔵材の粉末を直接充填する必要がある。
【0025】
しかし、貯蔵材の粉末を副空間に充填する工程は多くの工数を有し、その上、充分な量の貯蔵材の粉末を副空間に充填すること自体が非常に困難である。また、このような製造方法によると、各副空間への貯蔵材の充填量がばらつく問題が生じ易い。さらには、粉末状の貯蔵材は取り扱い性に劣る問題もある。
【0026】
上記した貯蔵材の粉末にかえて、貯蔵材の粉末を副空間と同じ形状に固めた貯蔵材ペレットを予め準備し、当該貯蔵材ペレットを各副空間に挿入する場合には、貯蔵材の取り扱い性が向上する。
したがってこの場合には、貯蔵材の粉末を直接充填する場合に比べて、ガス容器の製造工程を簡略化でき、各副空間に対する貯蔵材の充填量を増大させ、かつ、当該充填量のばらつきを低減できる可能性がある。
【0027】
しかし実際にこの種のガス容器を製造すると、貯蔵材ペレットを副空間に挿入する際に貯蔵材ペレットと区画壁とが擦れ合うことで、当該貯蔵材ペレットの表面が削れて、ガス容器の内部空間に収容保持される貯蔵材の総量が予定量に満たなくなる問題が生じる。
したがってこの場合にも、ガス容器の内部空間に充分な量の貯蔵材を収容保持し難く、この場合にも、ガス容器における充填ガスの貯蔵放出性能を向上させることは困難であった。
【0028】
これに対して、本発明のガス容器では、凹凸形状の保持面を有し熱伝導材製である板状基体と、当該板状基体の保持面に保持され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材と、を含む貯蔵複合体を準備し、当該貯蔵複合体を巻回するか、または、当該貯蔵複合体を複数重ねることによって、ハニカム構造を有する貯蔵部を製造することができる。したがって、本発明のガス容器における貯蔵部は容易に製造することができ、上記したような各副空間に充分な量の貯蔵材を収容保持させ難い問題や、各副空間への貯蔵材の充填量がばらつく問題等も生じ難い。
【0029】
これにより、本発明のガス容器によると、ハニカム形状の収容部材を有するガス容器における充填ガスの貯蔵放出性能を、より一層向上させることが可能である。
また、本発明のガス容器は容易に製造できるため、当然乍ら、ガス容器の製造コストを低減できる利点もある。
【0030】
以下、本発明のガス容器をその構成要素毎に説明する。
なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限x及び上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、並びに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで新たな数値範囲を構成し得る。更に、上記の何れかの数値範囲内から任意に選択した数値を新たな数値範囲の上限、下限の数値とすることができる。
【0031】
本発明のガス容器に収容する充填ガスの種類は特に限定せず、ガス容器内における当該充填ガスの圧力もまた特に限定しないが、本発明のガス容器は、水素ガスや天然ガス等の燃料ガスを高圧で充填する所謂耐圧容器として具現化するのが特に好適である。
【0032】
本発明のガス容器は、容器本体、口金、および貯蔵部を有する。
【0033】
このうち容器本体は、対象となる充填ガスを収容するための内部空間を有するものである。このような容器本体の材料としては、当該充填ガスを透過し難い所謂ガスバリア性を有する材料を選択するのが好適である。
【0034】
具体的には、容器本体の材料は、充填ガスの種類やガス容器を設置する環境等に応じて適宜適切に選択すれば良い。
【0035】
例えば充填ガスが水素ガスであれば、容器本体の材料として、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等を用いるのが好適である。容器本体の内部を、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のガスバリア性に優れる材料でコートするのも好適である。
本発明のガス容器が住宅等に設置されるものである等、ガス容器の質量が多少大きくても良い場合には、容器本体の材料としてアルミニウムやステンレススチール等の金属材料を選択しても良い。
【0036】
容器本体の形状は特に限定しないが、例えば円筒状や正多角形筒状等の、充填ガスに因る内圧が均一に分散する形状を有するのが好適である。
【0037】
容器本体は、口金に一体成形しても良いし、口金とは別体で形成しても良い。
例えば予め形成した口金をインサートとして、容器本体をインサート成形しても良い。または、予め形成した容器本体に口金を挿入することで、両者を一体化しても良い。
容器本体外部への充填ガスの漏出を抑制するため、口金と容器本体との間には、Oリング等のシール部材を介在させるのが好適である。
【0038】
口金の材料もまた特に限定しないが、口金にはある程度の剛性が要求されるため、当該口金用の材料としてはアルミニウム、アルミニウム合金又はステンレススチール等の金属材料を選択するのが好適である。
【0039】
口金は、容器本体の外部と容器本体に設けられた内部空間とを連絡し、充填ガスの出入り口として機能する。
【0040】
口金は、一つの容器本体に対して少なくとも一つあれば良いが、一つの容器本体に対して複数あっても良い。例えば、容器本体が円筒状である場合には、容器本体における軸方向の両端部に口金を一体化しても良い。
この場合、二つの口金の双方を、充填ガスの出入口として用いても良いし、一方の口金に栓をしても良い。また、後述する実施例のように、口金の一方を充填ガスの出入口として用い、他方を熱交換媒体の流通する熱交換器として利用しても良い。
勿論、本発明のガス容器は、口金とは別の熱交換器を有しても良い。
【0041】
本発明のガス容器を耐圧容器として用いる場合、容器本体の外部を補強層で被覆するのが好適である。
【0042】
補強層は、一般的な耐圧容器同様に、樹脂を含浸した高強度繊維(所謂FRP)で構成すれば良い。高強度繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等を採用すれば良く、当該高強度繊維に含浸される樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を採用すれば良い。
【0043】
補強層を形成する方法としては一般的な方法を採用すれば良く、例えば、樹脂材料を含浸させた高強度繊維を容器本体に対して巻回してヘリカル層やフープ層を形成し、さらに、樹脂材料を加熱硬化させる方法を採用し得る。または、樹脂および高強度繊維を材料とする当該ヘリカル層やフープ層をシート状に形成したものを、容器本体に貼り付け、さらに、樹脂材料を加熱硬化させる方法を採用することも可能である。
【0044】
貯蔵部は、容器本体の内部空間に配置される。また、当該貯蔵部は、板状基体と貯蔵材とを含む貯蔵複合体が巻回された、または、当該貯蔵複合体が複数重ねられたハニカム構造を有する。
【0045】
より具体的には、貯蔵複合体における板状基体は、凹凸形状の保持面を有し、熱伝導材製である。貯蔵材は、当該板状基体の保持面に保持され、充填ガスを吸蔵および放出する。
【0046】
貯蔵複合体のうち板状基体の形状は、凹凸形状の保持面を有しかつ板状であれば良く、特に限定されない。また、板状基体は単層構造であっても良いし多層構造であっても良い。
例えば、板状基体は、平板状をなす基層の一面に、波板状をなす凹凸層が積層された二層構造であっても良い。この場合、凹凸層における基層とは逆側の面が保持面である。
また例えば、板状基体は、波板状をなす凹凸層の単層構造であっても良い。この場合凹凸層における一方の面が保持面である。
さらには、板状基体は、その一面側に凸条部が所定間隔で縞状に配列する単層構造であっても良い。この場合凸条部を有する面が保持面である。
これに限らず、板状基体は種々の形状をなし得る。
【0047】
既述したように、板状基体は、熱伝導材製であり、熱交換器として機能する。本明細書において、熱伝導材とは、25℃の常温における熱伝導率が空気よりも高い材料を意味し、具体的には、ステンレススチール、アルミニウム、アルミナ、炭化ケイ素等に代表される各種の金属、合金、セラミックス等を挙げることができる。
【0048】
板状基体は、板状の材料を、溶着または接着等により一体化することで製造しても良いし、セラミックスの原料スラリーを押出成形および焼成等することで製造しても良い。
【0049】
既述したように、本発明の第1態様のガス容器における貯蔵部は、板状基体と貯蔵材とを含む貯蔵複合体が巻回されたハニカム構造を有する。当該態様においては、貯蔵部に含まれる板状基体は、貯蔵部の径方向内側-外側方向において渦巻き状に重ねられた層状をなし、その層間に複数の副空間を区画形成するといい得る。
また、本発明の第2態様のガス容器における貯蔵部は、板状基体と貯蔵材とを含む貯蔵複合体が複数重ねられたハニカム構造を有する。当該態様においては、貯蔵部に含まれる板状基体は、貯蔵複合体の重ね方向に配列する層状をなし、その層間に複数の副空間を区画形成するといい得る。
【0050】
各副空間は完全に隔てられていても良いし、部分的に連絡していても良い。例えば貯蔵部が、貯蔵複合体が巻回されたハニカム構造を有する場合には、副空間は径方向内側から外側に向けて渦巻き状に連絡していても良い。
【0051】
なお、貯蔵部が、貯蔵複合体が巻回されたハニカム構造を有する場合にも、貯蔵複合体が複数重ねられたハニカム構造を有する場合にも、凹凸面の形状や凹凸差の大きさに応じて、副空間をより細分化することが可能であり、隣り合う副空間を完全に隔てることも可能である。
【0052】
具体的には、上記したように板状基体は貯蔵部において層状をなし、その層間に複数の副空間を区画形成するものであるために、凹凸形状の保持面が当該板状基体の隣り合う層間に架け渡されていれば、隣り合う副空間を完全に隔て得る。
【0053】
例えば、板状基体の保持面が凹凸差の大きな凹凸面であれば、渦巻き状に重ねられた板状基体における径方向内側-外側方向の層間に、当該保持面が架け渡され、副空間が渦巻きの周方向に区画される。
【0054】
本発明のガス容器において、隣り合う二つの副空間が完全に隔てられている場合には、貯蔵材を板状基体によって安定的に保持でき、板状基体、ひいては貯蔵部からの貯蔵材の脱離等を効果的に抑制し得る利点がある。
【0055】
また、本発明のガス容器において、隣り合う二つの副空間が連絡する場合には、当該隣り合う二つの副空間において充填ガスが流通可能である。このため、この場合には、内部空間の全体を充填ガスの濃度的に均一化することが可能であり、貯蔵材における充填ガスの吸蔵放出性能を充分に引き出すことができ、その結果、ガス容器全体としての充填ガスの貯蔵放出性能をより向上させることが可能である。
【0056】
なお、上記したように保持面の凹凸差を適宜適切に調整することによって、隣り合う二つの副空間を連絡させ、または、完全に隔てることが可能であるが、板状基体に貫通孔状の連絡口を設け、当該連絡口によって隣り合う二つの副空間を連絡させても良い。
【0057】
上記した連絡口の形状や数は特に限定されない。連絡口の大きさは、副空間に収容保持される貯蔵材の移動を抑制できる程度であれば良く、貯蔵材の大きさ等に応じて適宜適切に設定すれば良い。
【0058】
具体的には、貯蔵材が一次粒子であるか、または、当該一次粒子が凝集した二次粒子である場合には、連絡口は、開口径50~500μm程度の小径の開口であるのが良い。貯蔵材が、当該一次粒子や二次粒子の貯蔵材を架橋または結着したペレット状をなす場合には、連絡口は、開口径1mm以上の比較的大径の開口であるのが良い。
【0059】
更には、当該大径の開口をメッシュ等の通気材で覆っても良い。例えば、板状基体を、板状をなし貫通孔状の連絡口を有する主壁部と、当該主壁部に取り付けられたメッシュ状のフィルタ部と、の二層構造にしても良い。フィルタ部は主壁部の表面全体を覆っても良いし、連絡口およびその周縁部のみを覆っても良い。
【0060】
本発明のガス容器においては、複数の副空間の全てが貯蔵材を収容保持しても良いし、複数の副空間の一部が貯蔵材を収容保持せず、残部が貯蔵材を収容保持しても良い。本明細書では、必要に応じて、貯蔵材を収容保持しない副空間を空洞部と称する。
【0061】
内部空間の全体を充填ガスの濃度的に均一化するためには、本発明のガス容器は上記した空洞部を有するのが好適である。当該空洞部は、貯蔵材を収容保持していないことから、充填ガスの流路として機能し得る。
【0062】
貯蔵材は、板状基体の保持面に保持されて副空間に収容され、充填ガスを吸蔵および放出する。このような貯蔵材としては、本発明のガス容器に貯蔵すべき充填ガスの種類に応じたものを適宜適切に選択すれば良い。
【0063】
例えば充填ガスが水素である場合、貯蔵材としては、カーボンナノチューブ等の多孔性の炭素材料、多孔性の金属錯体(所謂MOF)、ゼオライト、水素吸蔵合金、金属水素化物等を例示できる。
【0064】
各貯蔵材は種々の形状をなし得る。貯蔵材の充填ガス吸蔵放出性能を充分に引き出すためには、充填ガスに対する貯蔵材の接触面積を大きくするのが好ましく、比表面積の大きな一次粒子および/または二次粒子の貯蔵材を使用するのが好適である。
また、貯蔵材ひいては本発明のガス容器の取り扱い性を考慮すると、当該一次粒子および/または二次粒子の貯蔵材を架橋剤により架橋するか、またはバインダにて結着した状態で、板状基体の保持面に保持するのが好適である。
【0065】
ここで、本発明の第1態様のガス容器において、貯蔵部は、板状基体と貯蔵材とを含む貯蔵複合体が巻回されたハニカム構造を有する。つまり、第1態様のガス容器における貯蔵複合体は、少なくとも巻回される時点において、可撓性を有する必要がある。
【0066】
このため、上記したように貯蔵材を架橋剤により架橋する場合には、架橋反応が進行し難い条件、例えば架橋剤の添加直後や常温下等で、架橋剤と貯蔵材とを含むスラリーを板状基体の保持面に保持して貯蔵複合体を形成し、その後、得られた貯蔵複合体を巻回するのが好適である。巻回後の貯蔵複合体を加熱し、架橋反応を進行させても良い。
また、貯蔵材をバインダにて結着する場合にも、バインダの効果が進行し難い条件、例えばバインダの添加直後、二液型のバインダにおける第2剤の添加直後、または常温下等で、バインダと貯蔵材と含むスラリーを、板状基体の保持面に保持して貯蔵複合体を形成し、その後、得られた貯蔵複合体を巻回するのが好適である。この場合にも、巻回後の貯蔵複合体を加熱し、バインダの硬化反応を進行させても良い。
【0067】
本発明の第2態様のガス容器においても同様に、貯蔵複合体は、少なくとも重ね合わされる時点において、可撓性を有するのが好適である。したがって、この場合にも上記した第1態様のガス容器の場合と同様に、スラリー状の貯蔵材を板状基体の保持面に保持して貯蔵複合体を形成し、その後、得られた貯蔵複合体を重ね合わせるのが好適である。当然乍ら、その後、重ねられた貯蔵複合体を加熱し、架橋反応やバインダの硬化反応を進行させても良い。
【0068】
以上説明した本発明の実施形態および後述する実施例から、さらに、以下の2つの発明を抽出することが可能である。
【0069】
内部空間を有する容器本体と、前記容器本体の外部と前記内部空間とを連絡する口金と、前記内部空間に配置されている貯蔵部と、を具備するガス容器を製造する方法であって、
凹凸形状の保持面を有し熱伝導材製である板状基体と、前記保持面に保持され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材と、を含む貯蔵複合体を、巻回することで、ハニカム構造を有する前記貯蔵部を製造する工程を含む、ガス容器の製造方法。
【0070】
内部空間を有する容器本体と、前記容器本体の外部と前記内部空間とを連絡する口金と、前記内部空間に配置されている貯蔵部と、を具備するガス容器を製造する方法であって、
凹凸形状の保持面を有し熱伝導材製である板状基体と、前記保持面に保持され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材と、を含む貯蔵複合体を、複数重ねることで、ハニカム構造を有する前記貯蔵部を製造する工程を含む、ガス容器の製造方法。
【0071】
以下、具体例を挙げて本発明のガス容器を説明する。
【0072】
(実施例1)
実施例1のガス容器は、車両に搭載され、充填ガスの一種である水素ガスを貯蔵および放出するため耐圧容器である。
実施例1のガス容器を模式的に説明する説明図を
図1に示す。実施例1のガス容器における要部の軸方向断面を模式的に表す説明図を
図2に示す。実施例1のガス容器における要部を分解した様子を模式的に説明する説明図を
図3に示す。実施例1のガス容器における貯蔵部を模式的に説明する説明図を
図4に示す。実施例1のガス容器における貯蔵部を製造している様子を説明する説明図を
図5に示す。
以下、軸方向とは各図に示す方向を指すものとする。
【0073】
図1~
図3に示すように、実施例1のガス容器1は、容器本体10、口金20、口金30、補強層40、貯蔵部60、および、連結部70を有する。
【0074】
容器本体10は、ポリエチレン樹脂製であり、軸方向の両端部が縮径した略円筒状をなす、所謂樹脂ライナーである。
図2に示すように、略筒状をなす容器本体10の内部には、内部空間18が形成されている。
【0075】
容器本体10は、4つのライナー分体(第1ライナー分体11、第2ライナー分体12、第3ライナー分体13、第4ライナー分体14)が溶着され一体化されたものである。当該4つのライナー分体は、容器本体10がその軸方向に直交する方向に四分割されたものといい得る。
【0076】
第1ライナー分体11および第2ライナー分体12は同型の円筒状をなし、第3ライナー分体13および第4ライナー分体14は同型のドーム状をなす。
各分体は、軸方向に沿って、第3ライナー分体13、第1ライナー分体11、第2ライナー分体12、第4ライナー分体14の順に配列している。
【0077】
容器本体10の軸方向の両端部は各々開口している。当該開口の一方を第1開口部15と称し、他方を第2開口部16と称する。第1開口部15は第3ライナー分体13に設けられ、第2開口部16は第4ライナー分体14に設けられている。
第1開口部15および第2開口部16には、各々、Oリングを介して、金属製の口金(口金20、口金30)が装着されている。
【0078】
口金20は熱交換媒体が循環する熱交換流路21を一体に有する。
口金30には、図略のバルブおよびガス供給管が取り付けられている。
口金30は、当該ガス供給管およびバルブを介して、充填ガスである水素ガスが出入りする、充填ガス出入口として機能する。なお、口金20は実質的に目詰めされ、充填ガス出入口としては機能しないが、熱交換器として機能する。
【0079】
図1に示すように、容器本体10の外面は、FPR製の補強層40で覆われている。
【0080】
図2に示すように、容器本体10の内部空間18には、貯蔵部60が配置されている。
【0081】
図3および
図4に示すように、貯蔵部60はハニカム構造を有する。
当該貯蔵部60は、後述するように、板状基体61と貯蔵材50とを含む貯蔵複合体68(
図5参照)が巻回されたものである。
貯蔵部60は、板状基体61によって区画された副空間62が複数配列するともいい得る。
【0082】
板状基体61はステンレススチールの一種であるSUS316L製であり、当該板状基体61の厚さ、具体的には後述する基層66の板厚および凹凸層67の板厚は、各々0.1mmである。
【0083】
図2および
図3に示すように、貯蔵部60の中心部は中空であり、当該中心部には筒状をなす連結部70が一体化されている。連結部70は、板状基体61と同じ材料からなり、口金20に向けて軸方向に延びている。
【0084】
以下、実施例1のガス容器1を製造する方法を説明する。
【0085】
先ず、容器本体10を構成する4つのライナー分体(第1ライナー分体11、第2ライナー分体12、第3ライナー分体13、第4ライナー分体14)を各々射出成形した。
このうち第3ライナー分体13(
図3参照)の第1開口部15に、Oリングとともに口金20を装着した。また、第4ライナー分体14の第2開口部16にも、Oリングとともに口金20を装着した。
【0086】
平板状の板状基体61(
図5参照)を準備した。当該板状基体61は、平板状をなす基層66の一面に、波板状をなす凹凸層67が積層された二層構造をなす。基層66と凹凸層67とは別々に形成され、重ねられたものである。当該板状基体61において、凹凸層67における基層66とは逆側の面は、凹凸形状をなす保持面61hである。
【0087】
上記した凹凸層67の保持面61hに、スラリー状の貯蔵材50を塗布して保持させた。加えて、凹凸層67の保持面61hの裏面61b、すなわち、凹凸層67のうち基層66側の面にもスラリー状の貯蔵材50を塗布して保持させた。基層66と、貯蔵材50を保持した凹凸層67とを重ねて、二層構造をなす略平板状の板状基体61と、当該板状基体61の保持面61hおよび裏面61bに各々貯蔵材50が保持された貯蔵複合体68を得た。
【0088】
貯蔵複合体68の一端部に、筒状をなす連結部70をあてがい、当該連結部70を中心として貯蔵複合体68を巻回し、その後、加熱することで、貯蔵材50を架橋させかつ板状基体61に固着させた。これにより、ハニカム構造を有する貯蔵部60を得た。
【0089】
その後、口金30に対して固定した貯蔵部60を、第2ライナー分体12および第1ライナー分体11に挿入し、第1ライナー分体11、第2ライナー分体12および第4ライナー分体14を溶着して、一体化した。
さらに、貯蔵部60に一体化した連結部70を口金20に接触させつつ、貯蔵部60を口金20に対して固定した。そして、第1ライナー分体11、第2ライナー分体12および第4ライナー分体14の一体品と第3ライナー分体13とを溶着して、容器本体10を得た。
【0090】
このようにして得られた容器本体10の表面に、FRP製の補強層40を形成し、実施例1のガス容器1を得た。
【0091】
実施例1のガス容器1の作用について以下に説明する。
【0092】
実施例1のガス容器1において、容器本体10の内部空間18には、貯蔵材50を収容保持する貯蔵部60が配置されている。
【0093】
貯蔵部60は、板状基体61により複数の副空間62が区画形成され、当該副空間62に貯蔵材50が収容保持されたハニカム構造をなす。板状基体61は、熱伝導材製であり、熱交換器として機能する。このような板状基体61が存在することで、内部空間18はその全体にわたって熱的に均一化され、当該内部空間18に収容されている貯蔵材50の温度もまた均一化される。
【0094】
さらに、板状基体61の凹凸層67は、渦巻き状に重ねられた板状基体61における径方向内側-外側方向に離れた二つの基層66を連結し、凹凸層67の保持面61hは、当該二つの基層66に架け渡されている。このように、板状基体61が貯蔵部60の全体に張り巡らされることで、内部空間18がより一層熱的に均一化される。
【0095】
さらに、板状基体61は、連結部70を介して口金20に接触し、当該口金20に熱的に連絡されている。口金20には熱交換媒体が循環する熱交換流路21が一体に設けられているため、板状基体61は当該熱交換媒体と間接的に熱交換する。
【0096】
これにより内部空間18は効率良くかつ迅速に温度調節され、当該内部空間18にある貯蔵材50もまた効率良くかつ迅速に温度調節される。したがって、実施例1のガス容器1では、当該内部空間18において、貯蔵材50への充填ガスの吸蔵、および、貯蔵材50からの充填ガスの放出が円滑に行われる。
【0097】
ガス容器1において、充填ガスが図略のバルブおよび口金30を経て容器本体10の内部空間18へ供給されると、当該充填ガスは、内部空間18に配置されている貯蔵部60の軸方向端面69(
図2参照)を経て貯蔵部60の各副空間62に流入する。
【0098】
副空間62に流入した充填ガスは、当該副空間62に収容保持されている貯蔵材50に徐々に吸蔵されつつ、口金30側から口金20側に流通する。これにより、内部空間18に配置されている貯蔵材50の全体に充填ガスが供給される。
【0099】
実施例1のガス容器1によると、内部空間18を熱的に均一化したことで、貯蔵材50の吸蔵放出性能を充分に引き出すことができ、ガス容器1としての充填ガスの貯蔵放出性能が向上する。
また、ハニカム構造を有する貯蔵部60を形成するにあたり、凹凸形状の保持面61hを有し熱伝導材製である板状基体61と、上記した保持面61hに保持され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材50と、を含む貯蔵複合体68を巻回する方法を採用したことにより、実施例1のガス容器1では、副空間62に貯蔵材50を充填する作業を非常に容易に行い得る。そして、その結果、各副空間62への貯蔵材50の充填量を精密にコントロールすることが可能である。このことによっても、実施例1のガス容器1によると、貯蔵材50の吸蔵放出性能を充分に引き出すことができ、ガス容器1としての充填ガスの貯蔵放出性能が向上する。さらに、実施例1のガス容器によると、その製造コストを低減できる利点もある。
【0100】
(実施例2)
実施例2のガス容器は、貯蔵部の構造以外は実施例1のガス容器と概略同じものである。したがって、以下、実施例1のガス容器との相違点を中心に、実施例2のガス容器について説明する。
実施例2のガス容器における貯蔵部を製造している様子を説明する説明図を
図6に示す。
【0101】
図6に示すように、実施例2のガス容器における貯蔵部60は、複数の貯蔵複合体68が重ねられたものである。
貯蔵複合体68は、波板状をなす単層構造の板状基体61と、当該板状基体の保持面61hに載置されたスラリー状の貯蔵材50とを含む。
貯蔵複合体68を複数重ね、加熱することで、保持面61hの裏面61bにも貯蔵材が充填されたハニカム構造の貯蔵部60が得られた。
【0102】
実施例2のガス容器によっても、図略の内部空間が熱的に均一化され、また、貯蔵材50の吸蔵放出性能が充分に引き出されることで、ガス容器としての充填ガスの貯蔵放出性能が向上する。さらに、実施例2のガス容器によっても、その製造コストが低減される。
【0103】
(実施例3)
実施例3のガス容器は、貯蔵部の構造以外は実施例1のガス容器と概略同じものである。したがって、以下、実施例1のガス容器との相違点を中心に、実施例3のガス容器について説明する。
実施例3のガス容器における貯蔵部を製造している様子を説明する説明図を
図7に示す。
【0104】
実施例3のガス容器における貯蔵部は、実施例2のガス容器と同様に、複数の貯蔵複合体が重ねられたものである。
図7に示すように、貯蔵複合体における板状基体61は、その一面側に、軸方向に延びる複数の凸条部64を有する単層構造をなす。凸条部64は、軸方向に直交する方向において、所定間隔で縞状に配列している。
板状基体61のうち当該凸条部64を有する面が保持面61hであり、当該保持面61hにはスラリー状の貯蔵材(図略)が塗布される。これにより、実施例3のガス容器における貯蔵複合体が得られる。実施例2と同様に、当該貯蔵複合体を複数重ね、加熱することで、実施例3のガス容器における貯蔵部が得られる。
【0105】
実施例3のガス容器によっても、図略の内部空間が熱的に均一化され、また、図略の貯蔵材の吸蔵放出性能が充分に引き出されることで、ガス容器としての充填ガスの貯蔵放出性能が向上する。さらに、実施例3のガス容器によっても、その製造コストが低減される。
【0106】
(実施例4)
実施例4のガス容器は、貯蔵部の構造以外は実施例1のガス容器と概略同じものである。したがって、以下、実施例1のガス容器との相違点を中心に、実施例4のガス容器について説明する。
実施例4のガス容器における貯蔵部を製造している様子を説明する説明図を
図8に示す。
【0107】
実施例4のガス容器における貯蔵部もまた、複数の貯蔵複合体が重ねられたものである。
貯蔵複合体における板状基体61は、
図8に示すように、その一面側に複数の突起65を有する単層構造をなす。突起65は、軸方向および当該軸方向に直交する方向において、所定間隔で島状に配列している。
板状基体61のうち当該突起65を有する面が保持面61hであり、当該保持面61hにはスラリー状の貯蔵材(図略)が塗布される。これにより、実施例4のガス容器における貯蔵複合体が得られる。当該貯蔵複合体を複数重ね、加熱することで、実施例4のガス容器における貯蔵部が得られる。
【0108】
実施例4のガス容器によっても、図略の内部空間が熱的に均一化され、また、図略の貯蔵材の吸蔵放出性能が充分に引き出されることで、ガス容器としての充填ガスの貯蔵放出性能が向上する。さらに、実施例4のガス容器によっても、その製造コストが低減される。
【0109】
本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0110】
1:ガス容器 10:容器本体
18:内部空間 20:口金
30:口金 50:貯蔵材
60:貯蔵部 61:板状基体
61h:保持面 62:副空間
68:貯蔵複合体