(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137973
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/73 20060101AFI20230922BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20230922BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20230922BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20230922BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20230922BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20230922BHJP
【FI】
C08G18/73
C08G18/08 038
C08G18/79
C08G18/42 069
C08L75/04
C08K3/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044438
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 達也
(72)【発明者】
【氏名】森田 裕史
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002CK031
4J002CK041
4J002CK051
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4J034RA15
(57)【要約】
【課題】優れた熱伝導性を有する硬化物を得ることができる熱伝導性組成物、および、その熱伝導性組成物の硬化物を提供すること。
【解決手段】熱伝導性組成物は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分と、熱伝導性フィラーとを含む。ポリイソシアネート成分炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート成分およびポリオール成分と、
熱伝導性フィラーと
を含む熱伝導性組成物であり、
前記ポリイソシアネート成分は、炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体を含む、熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記誘導体の平均イソシアネート基数が、2.7以上である、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート単量体が、ペンタメチレンジイソシアネートである、
請求項1または2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
前記誘導体が、イソシアヌレート誘導体である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
前記誘導体のイソシアネート基含有率が、21.0質量%以上である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
前記ポリオール成分が、ポリカプロラクトンポリオールおよび/またはひまし油ポリオールを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
前記熱伝導性フィラーが、水酸化アルミニウムおよび/または窒化アルミニウムを含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項8】
前記ポリイソシアネート成分および前記ポリオール成分の総量100質量部に対して、
前記熱伝導性フィラーが、200質量部以上である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やバッテリーなどを含む電子装置は、駆動時に熱を発生し、その熱による温度上昇は、動作不良および破壊などを誘発する。温度上昇を抑制するために、熱放散素材が用いられる。熱放散素材は、熱源からの熱を冷却する冷媒またはヒートシンクに効率的に伝達する。熱放散素材としては、例えば、高熱伝導性のポリウレタン樹脂組成物およびその硬化物が、知られている。
【0003】
高熱伝導性のポリウレタン樹脂組成物として、例えば、ポリウレタン樹脂および無機充填剤を含有するポリウレタン樹脂組成物が知られている。ポリウレタン樹脂としては、例えば、平均水酸基価103mgKOH/gのポリブタジエンポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体との反応生成物が、提案されている。無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムが、提案されている。さらに、これらを含むポリウレタン樹脂組成物に、さらに、可塑剤を添加することが、提案されている(例えば、特許文献1(実施例1)。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上記のポリウレタン樹脂組成物およびその硬化物は、十分な熱伝導性を有していない場合がある。
【0006】
本発明は、優れた熱伝導性を有する硬化物を得ることができる熱伝導性組成物、および、その熱伝導性組成物の硬化物である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分と、熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物であり、前記ポリイソシアネート成分は、炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体を含む、熱伝導性組成物を、含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、前記誘導体の平均イソシアネート基数が、2.7以上である、上記[1]に記載の熱伝導性組成物を、含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記ポリイソシアネート単量体が、ペンタメチレンジイソシアネートである、上記[1]または[2]に記載の熱伝導性組成物を、含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、前記誘導体が、イソシアヌレート誘導体である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物を、含んでいる。
【0011】
本発明[5]は、前記誘導体のイソシアネート基含有率が、21.0質量%以上である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物を、含んでいる。
【0012】
本発明[6]は、前記ポリオール成分が、ポリカプロラクトンポリオールおよび/またはひまし油ポリオールを含む、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物を、含んでいる。
【0013】
本発明[7]は、前記熱伝導性フィラーが、水酸化アルミニウムおよび/または窒化アルミニウムを含む、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物を、含んでいる。
【0014】
本発明[8]は、前記ポリイソシアネート成分および前記ポリオール成分の総量100質量部に対して、前記熱伝導性フィラーが、200質量部以上である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物を、含んでいる。
【0015】
本発明[9]は、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物の硬化物を、含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱伝導性組成物は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分と、熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物である。熱伝導性組成物において、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物は、熱伝導性フィラーを分散させるマトリックス樹脂を形成する。
【0017】
このような熱伝導性組成物において、ポリイソシアネート成分は、炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体を含む。このような場合、マトリックス樹脂は、比較的高い架橋密度を有する。そのため、マトリックス樹脂内における、熱伝導性フィラー間の距離が、比較的短くなる。その結果、上記の熱伝導性組成物によれば、優れた熱伝導性を有する硬化物が、得られる。
【0018】
さらに、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物は、ポリウレタン樹脂である。ポリウレタン樹脂は、熱伝導性フィラーに対して水素結合できる。そのため、上記の熱伝導性組成物によれば、マトリックス樹脂内における、熱伝導性フィラー間の距離を、さらに短くできる。その結果、上記の熱伝導性組成物によれば、優れた熱伝導性を有する硬化物が、得られる。
【0019】
本発明の硬化物は、上記の熱伝導性組成物の硬化物であるため、優れた熱伝導性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の熱伝導性組成物は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分と、熱伝導性フィラーとを含有する。
【0021】
(ポリイソシアネート成分)
ポリイソシアネート成分は、炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体を含む。
【0022】
炭素数5以下のポリイソシアネート単量体としては、例えば、炭素数5以下の脂肪族ポリイソシアネート単量体が挙げられる。より具体的には、例えば、炭素数5以下の直鎖脂肪族ポリイソシアネート単量体、および、炭素数5以下の脂環族ポリイソシアネート単量体が挙げられる。炭素数5以下のポリイソシアネート単量体として、好ましくは、炭素数5以下の直鎖脂肪族ポリイソシアネート単量体が挙げられる。
【0023】
炭素数5以下の直鎖脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、メタンジイソシアネート、1,2-エタンジイソシアネート、1,3-プロパンジイソシアネート、1,2-プロパンジイソシアネート、1,4-ブタンジイソシアネート、1,3-ブタンジイソシアネート、1,2-ブタンジイソシアネート、1,5-ペンタンジイソシアネート(ペンタメチレンジイソシアネート、PDI)、1,4-ペンタンジイソシアネート、1,3-ペンタンジイソシアネート、および、1,2-ペンタンジイソシアネートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。硬化物の熱伝導性、耐ブリード性および機械物性の観点から、好ましくは、1,5-ペンタンジイソシアネート(ペンタメチレンジイソシアネート)が挙げられる。
【0024】
誘導体としては、好ましくは、比較的高い平均イソシアネート基数を有する誘導体が挙げられる。なお、誘導体の平均イソシアネート基数の詳細は、後述する。
【0025】
比較的高い平均イソシアネート基数を有する誘導体としては、例えば、イソシアヌレート誘導体、および、ポリオール付加体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0026】
誘導体として、硬化物(後述)の熱伝導性、耐ブリード性および機械物性の観点から、好ましくは、イソシアヌレート誘導体が挙げられる。
【0027】
イソシアヌレート誘導体は、ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート化反応生成物である。イソシアヌレート誘導体は、公知の方法で得ることができる。例えば、ポリイソシアネート単量体を、公知のイソシアヌレート化触媒の存在下で、イソシアヌレート化反応させる。反応条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0028】
また、必要に応じて、イソシアヌレート化反応前に、ポリイソシアネート単量体が、公知のアルコール類で変性されていてもよい。また、イソシアヌレート誘導体に、アロファネート誘導体が含まれていてもよい。この場合、イソシアヌレート誘導体は、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体を含むイソシアヌレート誘導体組成物である。
【0029】
また、必要に応じて、イソシアヌレート化反応後、反応生成液から、未反応のポリイソシアネート単量体が分離されていてもよい。分離方法としては、例えば、蒸留法および抽出法が挙げられ、好ましくは、蒸留法が挙げられる。蒸留法としては、例えば、薄膜蒸留が挙げられる。なお、蒸留条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0030】
具体的には、イソシアヌレート誘導体は、例えば、以下の方法によって製造される。すなわち、この方法では、上記のポリイソシアネート単量体と、アルコール類とを反応させる。
【0031】
アルコール類としては、例えば、低分子量アルコールが挙げられる。低分子量アルコールは、1分子中に水酸基を1つ以上有し、比較的低分子量の有機化合物である。なお、比較的低分子量とは、分子量200未満を示す(以下同様)。
【0032】
低分子量アルコールとしては、例えば、脂肪族低分子量アルコールおよび芳香族低分子量アルコールが挙げられ、好ましくは、脂肪族低分子量アルコールが挙げられる。脂肪族低分子量アルコールとしては、例えば、炭素数1~12の脂肪族低分子量アルコールが挙げられる。また、脂肪族低分子量アルコールとしては、脂肪族低分子量モノオール(1価アルコール)および脂肪族低分子量ポリオール(2価以上のアルコール)が挙げられる。
【0033】
脂肪族低分子量モノオールは、1分子中に水酸基を1つ有し、比較的低分子量の脂肪族有機化合物である。脂肪族低分子量モノオールとしては、例えば、炭素数1~12の脂肪族低分子量1価アルコールが挙げられる。炭素数1~12の脂肪族低分子量1価アルコールとしては、例えば、炭素数1~12のアルキルアルコールが挙げられる。炭素数1~12のアルキルアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、および、ラウリルアルコールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0034】
脂肪族低分子量ポリオールは、1分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的低分子量の脂肪族有機化合物である。脂肪族低分子量ポリオールとしては、炭素数1~12の脂肪族低分子量ポリオールが挙げられる。また、脂肪族低分子量ポリオールとしては、例えば、脂肪族低分子量2価アルコールが挙げられる。
【0035】
より具体的には、脂肪族低分子量ポリオールとしては、例えば、炭素数1~12の脂肪族低分子量2価アルコールが挙げられる。炭素数1~12の脂肪族低分子量2価アルコールとしては、例えば、炭素数1~12のアルキレンジオールが挙げられる。炭素数1~12アルキレンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0036】
アルコール類は、単独使用または2種類以上併用できる。低分子量アルコールの分子量(併用される場合には、平均分子量の場合もある(以下同様))は、例えば、200未満、好ましくは、150未満である。また、低分子量アルコールの分子量は、例えば、40以上、好ましくは、50以上である。
【0037】
アルコール類の平均水酸基数は、例えば、1以上である。また、アルコール類の平均水酸基数は、例えば、3以下、好ましくは、2以下である。
【0038】
より具体的には、アルコール類として、好ましくは、炭素数1~12の脂肪族低分子量アルコールが挙げられ、より好ましくは、炭素数1~12の脂肪族低分子量1価アルコール、および、炭素数1~12の脂肪族低分子量2価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、炭素数1~12のアルキルアルコール、および、炭素数1~12のアルキレンジオールが挙げられ、さらに好ましくは、炭素数1~12のアルキルアルコールが挙げられ、さらに好ましくは、炭素数1~4のアルキルアルコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、イソブタノールが挙げられる。
【0039】
アルコール類は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0040】
ポリイソシアネート単量体とアルコール類との配合割合は、適宜設定される。より具体的には、アルコール類の水酸基に対する、ポリイソシアネート単量体のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、5を超過し、好ましくは、10以上、より好ましくは、50以上、さらに好ましくは、100以上、とりわけ好ましくは、300以上である。また、アルコール類の水酸基に対する、ポリイソシアネート単量体のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、2000以下、好ましくは、1000以下、より好ましくは、800以下、さらに好ましくは、600以下である。
【0041】
また、アルコール類が、ポリイソシアネート単量体100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上である。また、アルコール類が、ポリイソシアネート単量体100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、3質量部以下、さらに好ましくは、2質量部以下、とりわけ好ましくは、1質量部以下である。
【0042】
ポリイソシアネート単量体とアルコール類との反応条件は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、適宜設定される。より具体的には、環境条件は、不活性雰囲気および常圧である。また、反応温度が、例えば、20℃以上、好ましくは、40℃以上である。また、反応温度が、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.05時間以上、好ましくは、0.2時間以上である。また、反応時間が、例えば、10時間以下、好ましくは、6時間以下である。
【0043】
また、この方法では、必要に応じて、ポリイソシアネート単量体およびアルコール類に、ウレタン化触媒を配合できる。ウレタン化触媒としては、例えば、公知のアミン類、および、公知の有機金属化合物が挙げられる。なお、ウレタン化触媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0044】
これにより、ポリイソシアネート単量体とアルコール類とが、ウレタン化反応する。その結果、ウレタン化反応生成物が得られる。
【0045】
次いで、この方法では、ウレタン化反応生成物を、イソシアヌレート化反応させる。
【0046】
より具体的には、この方法では、ウレタン化反応生成物に、イソシアヌレート化触媒(トリマー化触媒)を配合し、加熱する。
【0047】
イソシアヌレート化触媒としては、イソシアネート基のイソシアヌレート化を促進可能な触媒であれば、特に制限されない。イソシアヌレート化触媒としては、例えば、3級アミン、マンニッヒ塩基、フリーデル・クラフツ触媒、アルキルカルボン酸の金属塩、有機金属化合物、ハロゲン置換有機リン化合物、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、および、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムの有機弱酸塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0048】
イソシアヌレート化触媒として、好ましくは、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムの有機弱酸塩が挙げられる。
【0049】
トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムとしては、例えば、N-(2-ヒドロキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、および、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウムが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0050】
また、有機弱酸塩としては、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、2-エチルヘキサン塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩および安息香酸塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0051】
イソシアヌレート化触媒の配合割合は、ポリイソシアネート単量体100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.03質量部以上である。また、イソシアヌレート化触媒の配合割合は、ポリイソシアネート単量体100質量部に対して、例えば、0.3質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下、より好ましくは、0.08質量部以下である。
【0052】
イソシアヌレート化反応の反応条件は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、適宜設定される。より具体的には、環境条件は、不活性雰囲気および常圧である。また、反応温度が、例えば、25℃以上、好ましくは、50℃以上である。また、反応温度が、例えば、150℃以下、好ましくは、100℃以下である。また、反応時間が、例えば、30分以上、好ましくは、45分以上である。また、反応時間が、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下である。
【0053】
そして、反応液の反応率(イソシアネート基転化率)が所定値に達した時点で、反応停止剤を反応液に添加する。反応を停止させるときのイソシアネート基の転化率は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上である。また、反応を停止させるときのイソシアネート基の転化率は、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、18質量%以下である。なお、イソシアネート基の転化率は、公知の方法で算出できる。
【0054】
反応停止剤としては、例えば、リン酸、モノクロロ酢酸、塩化ベンゾイル、ドデシルベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル、o-トルエンスルホンアミド、および、p-トルエンスルホンアミドが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。反応停止剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0055】
また、反応停止剤に代えて、触媒吸着剤を添加することもできる。触媒吸着剤としては、例えば、キレート樹脂およびイオン交換樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。触媒吸着剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0056】
これにより、イソシアヌレート化反応が停止する。
【0057】
また、上記の各反応では、公知の反応溶媒を添加できる。なお、反応溶媒の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。また、上記の各反応では、反応液を、精製できる。精製方法としては、例えば、蒸留および抽出が挙げられる。精製により、反応液から、未反応のポリイソシアネート単量体が除去される。また、ウレタン化触媒、イソシアヌレート化触媒、触媒失活剤、および/または反応溶媒が、ポリイソシアネート単量体とともに、除去される。
【0058】
上記の反応では、ポリイソシアネート単量体が、イソシアヌレート変性される。その結果、反応生成物として、ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体が得られる。
【0059】
炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体は、単独使用または2種類以上併用される。炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体として、硬化物(後述)の熱伝導性、耐ブリード性および機械物性の観点から、好ましくは、イソシアヌレート誘導体の単独使用が挙げられる。
【0060】
なお、イソシアヌレート誘導体は、副生成物として、アロファネート誘導体を含むことができる。換言すると、イソシアヌレート誘導体は、イソシアヌレート基を含み、さらに、アロファネート基を含むことができる。アロファネート基の含有割合は、イソシアヌレート基とアロファネート基との総量に対して、例えば、30質量%未満、好ましくは、20質量%未満、より好ましくは、10質量%未満である(以下同様)。
【0061】
誘導体(炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体)のイソシアネート基含有率は、熱伝導性、耐ブリード性および機械物性の観点から、例えば、15.0質量%以上、好ましくは、20.0質量%以上、より好ましくは、21.0質量%以上である。また、誘導体のイソシアネート基含有率は、熱伝導性、耐ブリード性および機械物性の観点から、例えば、50.0質量%以下、好ましくは、40.0質量%以下、より好ましくは、30.0質量%以下、さらに好ましくは、25.0質量%以下、とりわけ好ましくは、23.0質量%以下である。なお、イソシアネート基含有量は、後述する実施例に準拠して測定される。
【0062】
また、誘導体(炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体)の平均イソシアネート基数は、例えば、2.4以上、好ましくは、2.5以上、より好ましくは、2.6以上、さらに好ましくは、2.7以上、さらに好ましくは、2.8以上、より好ましくは、2.9以上、とりわけ好ましくは、3.0以上である。また、誘導体の平均イソシアネート基数は、例えば、6.0以下、好ましくは、5.0以下、より好ましくは、4.0以下、さらに好ましくは、3.5以下である。
【0063】
誘導体の平均イソシアネート基数が、上記下限を上回っていれば、後述するマトリックス樹脂の架橋密度を比較的高くできる。そのため、後述するマトリックス樹脂中で、後述する熱伝導性フィラー間の距離を、比較的短くできる。その結果、優れた熱伝導性を有する硬化物(後述)が得られる。
【0064】
なお、平均イソシアネート基数は、数平均分子量およびイソシアネート基当量に基づいて、下記式により算出される。
平均イソシアネート基数=数平均分子量/イソシアネート基当量
【0065】
上記式において、数平均分子量は、誘導体(炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体)の数平均分子量である。誘導体の数平均分子量は、例えば、300以上、好ましくは、400以上である。また、誘導体の数平均分子量は、例えば、1200以下、好ましくは、800以下である。なお、数平均分子量は、後述する実施例に準拠して測定される。
【0066】
上記式において、イソシアネート基当量は、誘導体(炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体)のイソシアネート基当量である。誘導体のイソシアネート基当量は、例えば、100以上、好ましくは、140以上である。また、誘導体のイソシアネート基当量は、例えば、280以下、好ましくは、200以下である。なお、イソシアネート基当量は、後述する実施例に準拠して、測定される。
【0067】
ポリイソシアネート成分が、上記した誘導体(炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体)を含んでいれば、後述するマトリックス樹脂の架橋密度を比較的高くできる。そのため、後述するマトリックス樹脂中で、後述する熱伝導性フィラー間の距離が、比較的短くなる。その結果、熱伝導率に優れた硬化物(後述)が得られる。
【0068】
ポリイソシアネート成分は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、上記した誘導体(炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体)の他に、例えば、炭素数5以下のポリイソシアネート単量体を、含むことができる。
【0069】
ポリイソシアネート成分において、炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の含有割合は、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、1質量%以下である。また、ポリイソシアネート成分において、炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の含有割合は、例えば、0質量%以上である。ポリイソシアネート成分は、好ましくは、炭素数5以下のポリイソシアネート単量体を含有しないか、または、不可避的不純物として微量含有する。
【0070】
また、ポリイソシアネート成分は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、上記した誘導体(炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体)の他に、例えば、炭素数6以上のポリイソシアネート単量体、および/または、炭素数6以上のポリイソシアネート単量体の誘導体を含むことができる。
【0071】
炭素数6以上のポリイソシアネート単量体としては、工業的に汎用される公知の炭素数6以上のポリイソシアネート単量体が挙げられる。より具体的には、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、および、キシリレンジイソシアネート(XDI)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0072】
炭素数6以上のポリイソシアネート単量体の誘導体としては、炭素数6以上のポリイソシアネート単量体から公知の方法で誘導される誘導体が挙げられる。より具体的には、誘導体としては、例えば、ウレトジオン誘導体、イソシアヌレート誘導体、アロファネート誘導体、ポリオール付加体、ビウレット誘導体、ウレア誘導体、オキサジアジントリオン誘導体およびカルボジイミド誘導体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。誘導体として、好ましくは、イソシアヌレート誘導体が挙げられる。
【0073】
ポリイソシアネート成分において、炭素数6以上のポリイソシアネート単量体、および、炭素数6以上のポリイソシアネート単量体の含有割合は、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、1質量%以下である。また、ポリイソシアネート成分において、炭素数6以上のポリイソシアネート単量体、および、炭素数6以上のポリイソシアネート単量体の含有割合は、例えば、0質量%以上である。とりわけ好ましくは、ポリイソシアネート成分は、炭素数6以上のポリイソシアネート単量体、および、炭素数6以上のポリイソシアネート単量体を、含有しない。
【0074】
ポリイソシアネート成分は、好ましくは、炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体からなり、より好ましくは、炭素数5以下の鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体の誘導体からなり、さらに好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体からなり、とりわけ好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体からなる。
【0075】
ポリイソシアネート成分の平均イソシアネート基数は、例えば、2.4以上、好ましくは、2.5以上、より好ましくは、2.6以上、さらに好ましくは、2.7以上、さらに好ましくは、2.8以上、より好ましくは、2.9以上、とりわけ好ましくは、3.0以上である。また、ポリイソシアネート成分の平均イソシアネート基数は、例えば、6.0以下、好ましくは、5.0以下、より好ましくは、4.0以下、さらに好ましくは、3.5以下である。
【0076】
ポリイソシアネート成分の平均イソシアネート基数が、上記下限を上回っていれば、後述するマトリックス樹脂の架橋密度を比較的高くできる。そのため、後述するマトリックス樹脂中で、後述する熱伝導性フィラー間の距離を、比較的短くできる。その結果、優れた熱伝導性を有する硬化物(後述)が得られる。
【0077】
ポリイソシアネート成分のイソシアネート基含有率(イソシアネート基濃度、NCO%)は、熱伝導性、耐ブリード性および機械物性の観点から、例えば、15.0質量%以上、好ましくは、20.0質量%以上、より好ましくは、21.0質量%以上である。また、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基含有率は、熱伝導性、耐ブリード性および機械物性の観点から、例えば、50.0質量%以下、好ましくは、40.0質量%以下、より好ましくは、30.0質量%以下、さらに好ましくは、25.0質量%以下、とりわけ好ましくは、23.0質量%以下である。
【0078】
ポリイソシアネート成分の割合は、熱伝導性組成物100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、2質量部以上、さらに好ましくは、3質量部以上、特に好ましくは、4質量部以上、最も好ましくは、5質量部以上である。また、ポリイソシアネート成分の割合は、熱伝導性組成物100質量部に対して、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下、さらに好ましくは、8質量部以下、特に好ましくは、7質量部以下である。
【0079】
(ポリオール成分)
ポリオール成分としては、例えば、マクロポリオールが挙げられる。
【0080】
マクロポリオールは、数平均分子量が、200以上のポリオールである。
【0081】
マクロポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、およびビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0082】
マクロポリオールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび植物油ポリオールが挙げられる。
【0083】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0084】
ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシトリエチレンポリオール、および、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。
【0085】
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物(結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール)が挙げられる。また、ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールも挙げられる。非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールでは、テトラヒドロフランと、アルキル置換テトラヒドロフランおよび/または2価アルコールとが共重合される。なお、結晶性とは、25℃において固体である性質を示す。また、非晶性とは、25℃において液体である性質を示す。
【0086】
ポリエステルポリオールとしては、縮合系ポリエステルポリオール、および開環系ポリエステルポリオールが挙げられる。縮合系ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール(後述)と公知の多塩基酸との縮合物が挙げられる。開環系ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンジオールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0087】
ポリエステルポリオールとして、好ましくは、開環系ポリエステルポリオール、より好ましくは、ポリカプロラクトンポリオール、さらに好ましくは、ポリカプロラクトンジオールが挙げられる。
【0088】
ポリカプロラクトンポリオールは、低分子量ポリオール(後述)を開始剤とするラクトンの開環重合により得られる。ラクトンとしては、例えば、β-ラクトン、γ-ラクトン、σ-ラクトン、およびε-ラクトンが挙げられる。
【0089】
このようなポリエステルポリオールは、市販品として入手することもでき、例えば、Capa2043(商品名、ポリカプロラクトンジオール、平均分子量約400、Ingevity社製)が挙げられる。
【0090】
植物油ポリオールとしては、例えば、ヤシ油ポリオール、およびひまし油ポリオールが挙げられる。好ましくは、ひまし油ポリオールが挙げられる。
【0091】
ひまし油ポリオールとしては、例えば、無変性ひまし油ポリオール、および、エステル変性ひまし油ポリオールが挙げられる。
【0092】
無変性ひまし油ポリオールとしては、例えば、ひまし油(水酸基を含有する植物油が挙げられる。
【0093】
エステル変性ひまし油ポリオールとしては、例えば、ひまし油脂肪酸(リシノレイン酸など)と公知のポリエーテルポリオールとのエステル反応生成物が挙げられる。
【0094】
マクロポリオールとして、カーボンニュートラルおよび熱伝導性の観点から、好ましくは、ポリカプロラクトンポリオールおよび/またはひまし油ポリオールが挙げられ、熱伝導性の観点から、より好ましくは、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
【0095】
マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、200以上、好ましくは、300以上であり、また、例えば、5000以下、好ましくは、2000以下、より好ましくは、1000以下、さらに好ましくは、900以下である。
【0096】
マクロポリオールの水酸基当量は、例えば、50以上、好ましくは、100以上、より
好ましくは、150以上であり、また、例えば、3000以下、好ましくは、2000以下、より好ましくは、1000以下、さらに好ましくは、500以下である。
【0097】
マクロポリオールの平均水酸基数は、ポリウレタン樹脂の架橋密度の観点から、例えば、1.8以上、好ましくは、2.0以上、より好ましくは、2.5以上である。また、マクロポリオールの平均水酸基数は、例えば、5.0以下、好ましくは、4.0以下、より好ましくは、3.5以下、さらに好ましくは、3.0以下である。
【0098】
ポリオール成分は、低分子量ポリオールを含むことができる。
【0099】
低分子量ポリオールは、数平均分子量が、200未満のポリオールである。
【0100】
低分子量ポリオールとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール、および、4価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0101】
低分子量ポリオールの割合は、マクロポリオール100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下、さらに好ましくは、0質量部である。すなわち、ポリオール成分は、とりわけ好ましくは、マクロポリオールからなる。
【0102】
ポリオール成分の割合は、熱伝導性組成物の総量に対して、例えば、2質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、7質量%以上、さらに好ましくは、7.5質量%以上である。また、ポリオール成分の割合は、熱伝導性組成物の総量に対して、例えば、例えば、40質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下、さらに好ましくは、12質量%以下である。
【0103】
また、ポリオール成分の割合は、ポリオール成分の水酸基に対する、イソシアネート成分のイソシアネート基が、所定の当量比となるように設定される。すなわち、ポリオール成分の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、0.5以上、好ましくは、0.7を超過し、より好ましくは、0.8以上であり、また、例えば、2.0以下、好ましくは、1.5以下、より好ましくは、1.2以下である。
【0104】
(熱伝導性フィラー)
熱伝導性フィラーとしては、例えば、無機粒子が挙げられ、そのような無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、および炭素系材料が挙げられる。無機粒子は、例示されるものに限定されず、任意に選択することができる。
【0105】
酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化チタン、酸化セリウム、および酸化ジルコニウムが挙げられる。また、酸化物として、チタン酸バリウムなどの遷移金属酸化物などや、さらには、金属イオンがドーピングされている、例えば、酸化インジウムスズ、および酸化アンチモンスズが挙げられる。
【0106】
水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、および水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0107】
窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、および窒化リチウムが挙げられる。
【0108】
これら熱伝導性フィラーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0109】
熱伝導性フィラーとしては、好ましくは、水酸化物および/または窒化物、より好ましくは、水酸化アルミニウムおよび/または窒化アルミニウム、さらに好ましくは、窒化アルミニウムが挙げられる。
【0110】
熱伝導性フィラーの形状としては、特に制限されず、例えば、球状、塊状、針状、不定形、および板状(鱗片状)が挙げられる。
【0111】
熱伝導性フィラーのサイズは特に制限されず、例えば、その最大の長さ(球状の場合は平均粒子径)が、例えば、1μm以上、好ましくは、2μm以上、より好ましくは、4μm以上、さらに好ましくは、6μm以上、特に好ましくは、8μm以上、最も好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、40μm以下、より好ましくは、30μm以下、さらに好ましくは、20μm以下、特に好ましくは、15μm以下である。
【0112】
熱伝導性フィラーの割合は、熱伝導性組成物に対して、例えば、40体積%以上、好ましくは、50体積%以上、より好ましくは、60体積%以上、さらに好ましくは、65質量%以上、また、例えば、80体積%以下、好ましくは、79体積%以下、より好ましくは、78体積%以下である。
【0113】
熱伝導性フィラーの割合は、熱伝導性組成物に対して、例えば、40質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上、特に好ましくは、83質量%以上、最も好ましくは、85質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下、より好ましくは、92質量%以下である。
【0114】
熱伝導性フィラーの割合は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、200質量部以上、好ましくは、400質量部以上、より好ましくは、450質量部以上、さらに好ましくは、500質量部以上、特に好ましくは、550質量部以上であり、また、例えば、6000質量部以下、好ましくは、3500質量部以下、より好ましくは、2000質量部以下、さらに好ましくは、1000質量部以下である。
【0115】
熱伝導性組成物は、以下の方法で製造できる。すなわち、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分と、熱伝導性フィラーとを、上記の割合で準備する。そして、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分のいずれか一方または両方に、熱伝導性フィラーを上記の割合で配合する。好ましくは、熱伝導性フィラーは、ポリイソシアネート成分(硬化剤)とポリオール成分(主剤)との質量比に分割して配合する。
【0116】
また、熱伝導性組成物は、添加剤を含有できる。添加剤としては、例えば、ウレタン化触媒およびシランカップリング剤が挙げられる。
【0117】
ウレタン化触媒としては、例えば、公知のウレタン化触媒が挙げられる。公知のウレタン化触媒としては、例えば、アミン類、および有機金属化合物が挙げられる。
【0118】
アミン類としては、例えば、3級アミン類、4級アンモニウム塩、およびイミダゾール類が挙げられる。3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、およびN-メチルモルホリンが挙げられる。4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムが挙げられる。イミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、および2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられる。これらアミン類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0119】
有機金属化合物としては、例えば、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機ニッケル化合物、有機コバルト化合物、有機銅化合物、および有機ビスマス化合物が挙げられる。有機錫化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、およびジブチル錫ジクロリドが挙げられる。有機鉛化合物としては、例えば、オクタン酸鉛、およびナフテン酸鉛が挙げられる。有機ニッケル化合物としては、例えば、ナフテン酸ニッケルが挙げられる。有機コバルト化合物としては、例えば、ナフテン酸コバルトが挙げられる。有機銅化合物としては、例えば、オクテン酸銅が挙げられる。有機ビスマス化合物としては、例えば、オクチル酸ビスマス、およびネオデカン酸ビスマスが挙げられる。これら有機金属化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0120】
また、これら有機金属化合物は、市販品として入手することができ、例えば、ネオスタンU-100(有機錫化合物、日東化成社製)、フォーメートTK-1(有機錫化合物、三井化学社製)、Fomrez UL-28(有機錫化合物、モメンティブ社製)、Stanoct(有機錫化合物、三菱化学社製)が挙げられる。
【0121】
これら触媒(アミン類および有機金属化合物)は、単独使用または2種類以上併用することができ、好ましくは、有機金属化合物であり、より好ましくは、有機錫化合物であり、さらに好ましくは、ジブチル錫ジラウレートである。
【0122】
触媒(有効成分量100%換算)の配合割合は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との総量100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上、より好ましくは、0.015質量部以上、さらに好ましくは、0.02質量部以上であり、また、例えば、0.2質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下、より好ましくは、0.075質量部以下、さらに好ましくは、0.05質量部以下、特に好ましくは、0.04質量部以下、最も好ましくは、0.035質量部以下である。
【0123】
ウレタン化触媒は、ポリイソシアネート成分および/またはポリオール成分に添加される。
【0124】
シランカップリング剤としては、例えば、公知のシランカップリング剤が挙げられる。公知のシランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン、およびエポキシシランが挙げられる。エポキシシランとしては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
【0125】
シランカップリング剤としては、市販品として入手することができ、例えば、KBM-403(商品名、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン社製)が挙げられる。
【0126】
これらシランカップリング剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。シランカップリング剤として、好ましくは、エポキシシラン、より好ましくは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0127】
シランカップリング剤の配合割合は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、より好ましくは、1.0質量部以上、さらに好ましくは、1.5質量部以上である。また、シランカップリング剤の配合割合は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との総量100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下、さらに好ましくは、20質量部以下である。
【0128】
シランカップリング剤は、ポリイソシアネート成分および/またはポリオール成分に添加される。
【0129】
さらに、熱伝導性組成物は、他の添加剤を含有できる。他の添加剤としては、例えば、反応溶媒、触媒、エポキシ樹脂、塗工性改良剤、レベリング剤、消泡剤、安定剤(酸化防止剤および紫外線吸収剤など)、増粘剤、沈降防止剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、充填剤、有機または無機微粒子、および防黴剤が挙げられる。添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜決定される。
【0130】
本発明は、上記した熱伝導性組成物の硬化物を含んでいる。硬化物は、上記の熱伝導性組成物を硬化させることにより得ることができる。
【0131】
具体的には、硬化物は、例えば、上記の熱伝導性組成物を公知の成型方法で成形し、その後、硬化させることにより得られる。成形方法としては、例えば、注型成形が挙げられる。乾燥条件および硬化条件としては、公知の乾燥条件および硬化条件であり、特に制限はなく、例えば、室温(25℃)で、1週間が挙げられる。
【0132】
上記の方法により、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分がウレタン化反応する。これにより、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の反応生成物として、ポリウレタン樹脂が得られる。そして、熱伝導性フィラーが、ポリウレタン樹脂(マトリックス樹脂)中に分散する。すなわち、上記の方法により、ポリウレタン樹脂と、ポリウレタン中に分散される熱伝導性フィラーとを備える硬化物が得られる。
【0133】
ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度は、例えば、1.0mmol/g以上、好ましくは、1.5mmol/g以上、より好ましくは、2.0mmol/g以上である。また、ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度は、例えば、4.0mmol/g以上、好ましくは、3.0mmol/g以上である。なお、ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度は、仕込み処方から算出される。
【0134】
ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度が上記範囲であれば、ポリウレタン樹脂中において、熱伝導性フィラーの粒子間距離を比較的近くできる。そのため、優れた熱伝導性が得られる。
【0135】
硬化物において、熱伝導性フィラーの分散形態は、特に制限されない。例えば、熱伝導性フィラーの各粒子は、ポリウレタン樹脂中において、互いに間隔を隔てて配置されていてもよい。また、熱伝導性フィラーの各粒子の少なくとも一部が互いに接触し、例えば、数珠状に配置されていてもよい。熱伝導性の観点から、好ましくは、熱伝導性フィラーの各粒子の少なくとも一部は、互いに接触している。熱伝導性フィラーの各粒子の少なくとも一部が接触していれば、とりわけ優れた熱伝導性が得られる。
【0136】
そして、上記の熱伝導性組成物は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分と、熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物である。熱伝導性組成物において、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物は、熱伝導性フィラーを分散させるマトリックス樹脂を形成する。
【0137】
このような熱伝導性組成物において、ポリイソシアネート成分は、炭素数5以下のポリイソシアネート単量体の誘導体を含む。このような場合、マトリックス樹脂は、比較的高い架橋密度を有する。そのため、マトリックス樹脂内における、熱伝導性フィラー間の距離が、比較的短くなる。その結果、上記の熱伝導性組成物によれば、優れた熱伝導性を有する硬化物が、得られる。
【0138】
さらに、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物は、ポリウレタン樹脂である。ポリウレタン樹脂は、熱伝導性フィラーに対して水素結合できる。そのため、上記の熱伝導性組成物によれば、マトリックス樹脂内における、熱伝導性フィラー間の距離を、さらに短くできる。その結果、上記の熱伝導性組成物によれば、優れた熱伝導性を有する硬化物が、得られる。
【0139】
また、上記の硬化物は、上記の熱伝導性組成物の硬化物であるため、優れた熱伝導性を有する。
【実施例0140】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0141】
<測定方法>
(1)イソシアネート基含有率
電位差滴定装置を用いて、JIS K-1603(2007年)に準拠したn-ジブチルアミン法により、イソシアネート基含有率を測定した。
【0142】
(2)平均イソシアネート基数
平均イソシアネート基数を、下記式により算出した。
平均イソシアネート基数=数平均分子量/イソシアネート基当量
【0143】
上記式中のイソシアネート基当量は、アミン当量と同義である。イソシアネート基当量(アミン当量)を、JIS K 1603-1(2007年)のA法またはB法により、測定した。
【0144】
また、上記式中の数平均分子量を、以下の方法で測定した。すなわち、サンプルを約0.03g採取し、メタノールでメチルウレタン化させた後、過剰のメタノールを除去し、テトラヒドロフラン10mLを添加して溶解させた。そして、得られた溶液を、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定した。
【0145】
分析装置 : 高速GPC装置 HLC-8320(東ソー製)
検出器 : 示差屈折検出器
溶離液 : テトラヒドロフラン
分離カラム :下記(1)~(4)を直列接続
(1)TSKgel guardcolum HXL-L 6.0×40(東ソー社製)
(2)TSKgel G1000HXL 7.8×300(東ソー社製)
(3)TSKgel G2000HXL 7.8×300(東ソー社製)
(4)TSKgel G3000HXL 7.8×300(東ソー社製)
測定温度 : 40℃
流速 : 1mL/min
サンプル注入量: 100μL
解析装置 : Eco SEC(東ソー社製)
・システム補正
標準物質名 : Polystyrene
検量線作成方法: 分子量の異なるTOSOH社製 TSKstandard Polystyreneを用い、リテンションタイムと分子量のグラフを作成。
【0146】
合成例1(ポリイソシアネートA)
温度計、攪拌装置、窒素導入管および冷却管が装着された反応器において、窒素雰囲気下、下記成分を混合し、混合物を得た。
1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI、三井化学社製、商品名:スタビオPDI)500質量部
2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール(別名:ジブチルヒドロキシトルエン、BHT、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.25質量部
テトラフェニル・ジプロピレングリコール・ジホスファイト(有機亜リン酸エステル、助触媒)0.25質量部
【0147】
次いで、混合物に、イソブタノール0.8質量部を加えた。また、混合物に、窒素を1時間導入した。そして、混合物を80℃に昇温し、3時間反応させた。その後、反応生成液を、60℃に降温した。
【0148】
次いで、反応生成液に、トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム・2-エチルヘキサノエート(イソシアヌレート化触媒)0.2質量部を加え、さらに、1.5時間反応させた。
【0149】
その後、反応生成液に、o-トルエンスルホンアミド(反応停止剤)を添加した。o-トルエンスルホンアミドの添加量は、PDI 100質量部に対して、0.01質量部であった。
【0150】
その後、反応生成液を、薄膜蒸留装置(温度150℃、真空度93.3Pa)により、残存モノマー量が1.0質量%以下になるまで精製した。これにより、ポリイソシアネートAを得た。
【0151】
ポリイソシアネートAは、PDIのイソシアヌレート誘導体を含んでいた。ポリイソシアネートAのイソシアネート基含有率は21.0質量%であった。ポリイソシアネートAの平均イソシアネート基数は3.1であった。
【0152】
合成例2(ポリイソシアネートB)
PDI500質量部を、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、三井化学社製、商品名:タケネート700)500質量部に変更した。また、イソブタノール0.8質量部を、イソブタノール4.5質量部に変更した。上記以外は、合成例1と同じ方法で、ポリイソシアネートBを得た。
【0153】
ポリイソシアネートBは、HDIのイソシアヌレート誘導体を含んでいた。ポリイソシアネートBのイソシアネート基含有率は22.4質量%であった。ポリイソシアネートBの平均イソシアネート基数は2.8であった。
【0154】
合成例3(ポリイソシアネートC)
イソブタノール0.8質量部を、イソブタノール6.5質量部に変更した。上記以外は、合成例1と同じ方法で、ポリイソシアネートCを得た。
【0155】
ポリイソシアネートCは、PDIのイソシアヌレート誘導体を含んでいた。ポリイソシアネートCのイソシアネート基含有率は24.0質量%であった。ポリイソシアネートCの平均イソシアネート基数は2.8であった。
【0156】
実施例1~12および比較例1~3
表1および表2に示す処方で、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を準備した。また、表1および表2に示す処方で、熱伝導性フィラーおよびシランカップリング剤を準備した。また、表1および表2に示す処方で、ウレタン化触媒を準備した。
【0157】
熱伝導性フィラーおよびシランカップリング剤を、以下の通り分割した。すなわち、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の総量に対する、ポリイソシアネート成分の質量比、および、ポリオール成分の質量比に応じて、熱伝導性フィラーおよびシランカップリング剤を、分割した。
【0158】
そして、ポリイソシアネート成分と、ポリイソシアネート成分の質量比に応じた量の熱伝導性フィラーと、ポリイソシアネート成分の質量比に応じた量のシランカップリング剤とを混合し、第1液を得た。
【0159】
また、ポリオール成分と、ポリオール成分の質量比に応じた量の熱伝導性フィラーと、ポリオール成分の質量比に応じた量のシランカップリング剤とを混合し、第2液を得た。
【0160】
第1液と、第2液と、ウレタン化触媒とを混合した。これにより、熱伝導性組成物を得た。
【0161】
<試験片の調製>
内径45mmの成形型に、熱伝導性組成物を注入し、室温(25℃)で7日放置して硬化させた。これにより、熱伝導性組成物の硬化物を得た。
【0162】
<熱伝導性(熱伝導率)の測定>
以下の方法で、硬化物の熱伝導率を測定した。すなわち、ホットディスク法による熱物性測定機(品番TPA-501、京都電子工業社製)を使用し、ISO/CD220074-2に準拠した方法で、硬化物の熱伝導率(23℃)を測定した。その結果を、表1~表2に示す。
【0163】
比較例4
下記成分を混合し、アクリル樹脂と熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物を得た。
【0164】
トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(ダイセル・オルネクス社製、商品名EBECRYL 160S、官能基数3、平均分子量約428)6.9質量部
分子量400のポリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学製、商品名ライトアクリレート9EG-A、PEG400ジアクリレート、官能基数2)8.1質量部
熱伝導性フィラー(日本軽金属社製、商品名V-325F、酸化アルミニウム(アルミナ))85質量部
シランカップリング剤(信越化学社製、商品名KBM-403、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン))1.7質量部
有機過酸化物(日本油脂社製、商品名パーブチルO(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド)3.0質量部
【0165】
<試験片の調製>
熱伝導性組成物を、120℃で1時間加熱した。これにより、熱伝導性組成物の硬化物を得た。
【0166】
<熱伝導性(熱伝導率)の測定>
実施例1と同じ方法で、硬化物の熱伝導率(23℃)を測定した。熱伝導率は、0.9W/m・Kであった。
【0167】
なお、比較例4の熱伝導性組成物の官能基数および分子量は、実施例9の熱伝導性組成物の官能基数および分子量に、近かった。しかしながら、比較例4の熱伝導率は、実施例9の熱伝導率よりも、大幅に低かった。このような結果は、以下の理由によるものと考察される。
【0168】
すなわち、アクリル樹脂は、熱伝導性フィラーに対して水素結合できない。そのため、比較例4の熱伝導性組成物中、熱伝導性フィラー間の距離が比較的大きくなる。一方、ポリウレタン樹脂は、熱伝導性フィラーに対して水素結合できる。そのため、実施例9の熱伝導性組成物中では、熱伝導性フィラー間の距離が比較的小さくなる。そのため、実施例9では、水素結合により熱伝導率が向上したものと推察される。
【0169】
【0170】
【0171】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
Capa2043:商品名、ポリカプロラクトンジオール、平均水酸基数2、平均分子量約400、Ingevity社製
Capa3041:商品名、ポリカプロラクトントリオール、平均水酸基数3、平均分子量425、Ingevity社製
Eterol 5100-1000:商品名、縮合系ポリエステルポリオール、平均水酸基数2、平均分子量1000、長興化学工業社製
PTMEG-650:ポリエーテルポリオール(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)、平均水酸基数2、平均分子量約650、Korea PTG社製
アクトコール D-400:ポリエーテルポリオール(ポリオキシプロピレングリコール)、平均水酸基数2、平均分子量約400、三井化学社製
ひまし油:型番ダイヤ、平均水酸基数2.5、伊藤製油社製
V-325F:商品名、酸化アルミニウム(アルミナ)、日本軽金属社製
TFZ-A10P:商品名、窒化アルミニウム、平均粒径10μm、東洋アルミ社製
BX053:商品名、水酸化アルミニウム、平均粒径6μm、日本軽金属社製
KBM-403:商品名、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン)、信越化学社製
ネオスタンU-100:商品名、ウレタン化触媒、ジブチル錫ジラウリレート(有機金属触媒、DBTDL)、日東化成社製