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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137984
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ガス容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 11/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
F17C11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044454
(22)【出願日】2022-03-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/水素利用等高度化先端技術開発/水素貯蔵効率向上に向けた水素タンクの研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 拓大
(72)【発明者】
【氏名】榎本 健太郎
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB01
3E172AB04
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC04
3E172BD03
3E172DA36
3E172FA01
3E172FA07
3E172FA09
3E172FA10
3E172FA11
(57)【要約】
【課題】容器本体の内部空間でのガスの貯蔵量を十分に確保しつつ貯蔵部材の固定保持を実現すること。
【解決手段】ガス容器は、ガスを貯蔵する内部空間を有する筒状の容器本体と、容器本体の軸方向端部に取り付けられ、内部空間を容器本体の外部に連通させる連通路を有する口金と、内部空間に配置され、ガスを吸蔵すると共に放出する貯蔵部材と、を備える。貯蔵部材は、径方向外面に設けられた、互いに係合する凹部及び凸部の何れか一方を有する。容器本体は、径方向内面に設けられた、凹部及び凸部の何れか他方を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを貯蔵する内部空間を有する筒状の容器本体と、
前記容器本体の軸方向端部に取り付けられ、前記内部空間を前記容器本体の外部に連通させる連通路を有する口金と、
前記内部空間に配置され、ガスを吸蔵すると共に放出する貯蔵部材と、
を備え、
前記貯蔵部材は、径方向外面に設けられた、互いに係合する凹部及び凸部の何れか一方を有し、
前記容器本体は、径方向内面に設けられた、前記凹部及び前記凸部の何れか他方を有する、ガス容器。
【請求項2】
前記容器本体は、前記内部空間の温度変化又は内圧変化により前記貯蔵部材に比べて変形し易く、
前記凹部及び前記凸部は、前記容器本体及び前記貯蔵部材それぞれが変形したときに該凹部及び該凸部が互いに係合する状態が継続するように形成されている、請求項1に記載されたガス容器。
【請求項3】
前記凹部及び前記凸部は、前記容器本体に対する前記貯蔵部材の軸方向移動が規制されかつ軸中心回りの回転が規制されるように形成されている、請求項1又は2に記載されたガス容器。
【請求項4】
前記容器本体は、軸方向中央部に筒状に形成されたストレート部と、軸方向両端部にドーム状に形成されたドーム部と、を有し、
前記貯蔵部材は、前記ストレート部及び前記ドーム部の内面に沿うように形成されている、請求項1乃至3の何れか一項に記載されたガス容器。
【請求項5】
前記貯蔵部材は、前記容器本体にインサート成形により組み付けられている、請求項1乃至4の何れか一項に記載されたガス容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを吸蔵可能かつ放出可能なガス容器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などに搭載されて水素ガスや天然ガスなどのガスを貯蔵すると共に放出するガス容器(例えば、特許文献1)が知られている。特許文献1記載のガス容器は、水素吸蔵合金などの貯蔵部材を備えている。貯蔵部材は、容器本体の内部空間に収容されている。貯蔵部材は、貯蔵対象のガスを物理的又は化学的に吸蔵すると共に放出する。この貯蔵部材によれば、容器本体の内部空間に貯蔵可能なガスの量を増やすことができる。
【0003】
ところで、貯蔵部材をガス容器の内部空間に収容する構造としては、特許文献1に記載される如く、その内部空間に配置される収容部材を用いることがある。この収容部材は、例えば、軸方向に延在して筒状に形成され、区画壁により区画された収容空間が複数規則的に配置された形状に形成される。そして、収容部材は、軸方向端部にて連結部などを介して容器本体の軸方向端部などに固定される。そして、貯蔵部材は、収容部材の各収容空間の形状に倣って軸方向に延在しており、各収容空間に収容される。この構造によれば、貯蔵部材を、容器本体の内部空間に配置された収容部材の各収容空間に収容して保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-222200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のガス容器では、貯蔵部材を容器本体の内部空間に収容するのに、貯蔵部材を保持するための収容部材をその内部空間に収容することが必要である。このため、ガス容器内の構造が複雑化すると共に、内部空間における収容部材の体積分だけ貯蔵部材の体積が少なくなるので、内部空間にガスを貯蔵できる量が減少してしまう。
【0006】
一方、貯蔵部材を直接に容器本体の内部空間に収容すれば、貯蔵部材の体積が大きくなるので、内部空間でガスを貯蔵できる量を増大させることはできるが、この構造では、貯蔵部材が内部空間において容器本体に対して軸方向や軸中心回りの回転方向へ自由に相対移動できるものとすると、例えば粉末を固めて形成された貯蔵部材では、貯蔵部材と容器本体の内面との間での擦れ合いなどに起因して破損が生じて粉末化が促進されてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、容器本体の内部空間でのガスの貯蔵量を十分に確保しつつ貯蔵部材の固定保持を実現することが可能なガス容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ガスを貯蔵する内部空間を有する筒状の容器本体と、前記容器本体の軸方向端部に取り付けられ、前記内部空間を前記容器本体の外部に連通させる連通路を有する口金と、前記内部空間に配置され、ガスを吸蔵すると共に放出する貯蔵部材と、を備え、前記貯蔵部材は、径方向外面に設けられた、互いに係合する凹部及び凸部の何れか一方を有し、前記容器本体は、径方向内面に設けられた、前記凹部及び前記凸部の何れか他方を有する、ガス容器である。
【0009】
この構成によれば、容器本体の内部空間でのガスの貯蔵量を十分に確保しつつ貯蔵部材の固定保持を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るガス容器の斜視図である。
図2】実施形態のガス容器の断面図である。
図3】実施形態のガス容器の容器本体と貯蔵部材との係合部位の構造を表した図である。
図4】実施形態のガス容器が備える貯蔵部材の外面を外側から見た斜視図である。
図5】実施形態のガス容器が備える容器本体の内面を内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図5を用いて、本発明に係るガス容器の具体的な実施の形態について説明する。
【0012】
一実施形態に係るガス容器1は、ガスを貯蔵しかつその貯蔵したガスを放出する容器である。ガス容器1は、貯蔵するガスを燃料として用いる車両などに搭載される。ガス容器1が貯蔵するガスは、何れの種類のガスであってもよいが、水素ガスや天然ガス等の燃料ガスであることが好適である。また、ガス容器1が貯蔵可能なガスの圧力は、何れであってもよいが、高圧(例えば100MPaなど)であってもよい。すなわち、ガス容器1は、圧力容器ないしは耐圧容器であってよい。
【0013】
ガス容器1は、図1に示す如く、容器本体10と、口金20,30と、補強部材40と、貯蔵部材60と、を備えている。
【0014】
容器本体10は、ガスを貯蔵するためのライナーである。容器本体10は、内部空間11を有している。内部空間11は、所定量のガスを貯蔵することができる容量を有している。容器本体10は、内部空間11に貯蔵されたガスを透過しない或いは透過し難いガスバリア性を有する材料により構成されている。尚、容器本体10の材料は、ガス容器1の使用環境等に応じて選択されればよい。
【0015】
例えば、ガスが水素であるときは、容器本体10の材料は、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等である。尚、容器本体10の内部は、エチレン・ビニルアルコール高重合体(EVOH)等のガスバリア性に優れる材料でコートされていてもよい。また、ガス容器1が住宅用に用いられるときなど、ガス容器1の質量が大きくてもよいときは、容器本体10の材料は、アルミニウムやステンレススチール等の金属材料であってもよい。但し、容器本体10は、内部空間の温度変化や内圧変化により貯蔵部材60に比べて変形し易い材料により形成されていてよい。
【0016】
容器本体10は、内部空間11を内包するように筒状に形成されている。容器本体10は、例えば、内部空間11内でガスの圧力が均一に分散するような円筒状又は正多角形筒状などに形成されている。容器本体10ひいては内部空間11は、軸方向に延在している。また、容器本体10は、軸方向両端部において軸方向中央側から軸方向端側にかけて縮径するように形成されている。更に、容器本体10は、軸方向両端から軸方向の内部空間11側に折れ曲がって凹みが生じるように形成されている。内部空間11は、容器本体10の内面に沿いつつ柱状に形成されている。
【0017】
容器本体10は、ストレート部14と、ドーム部15,16と、を有している。ストレート部14は、容器本体10の軸方向中央部に軸方向に延在して筒状(例えば円筒状)に形成された部位である。ドーム部15,16は、容器本体10の軸方向両端部にドーム状(例えば半球殻状)に形成された部位である。容器本体10は、軸方向一端側から軸方向他端側にかけてドーム部15→ストレート部14→ドーム部16の順に連なって配置されている。
【0018】
容器本体10は、開口部12,13を有している。開口部12は、容器本体10の軸方向一端に開口する部位である。開口部13は、容器本体10の軸方向他端に開口する部位である。開口部12,13は、容器本体10のドーム部15,16に設けられている。開口部12には、口金20が挿入されている。また、開口部13には、口金30が挿入されている。
【0019】
口金20,30は、容器本体10の内部空間11と外部との間でガスを出入りさせる部材である。すなわち、口金20,30は、容器本体10の外部から内部空間11へのガスの導入や内部空間11から容器本体10の外部へのガスの放出などのために用いられる。口金20,30は、容器本体10の軸方向端部に取り付けられている。口金20,30と容器本体10との間には、容器本体10の内部空間11から外部へのガスの漏出を防止するためのOリングなどのシール部材が介在されている。口金20,30は、剛性確保のため、例えばアルミニウムやステンレススチール等の金属により形成されている。
【0020】
口金20,30は、連通路21,31を有している。連通路21,31は、容器本体10の内部空間を外部に連通させる通路である。連通路21,31は、図示しないガス管及びバルブに接続している。
【0021】
尚、ガス容器1は、口金20,30の連通路21,31の双方でガスを出入りさせるものであってもよいし、図2に示す如く、何れか一方(具体的には、連通路31)だけでガスを出入りさせると共に他方(具体的には、連通路21)に栓が装着されるものであってもよい。また、ガス容器1は、容器本体10の軸方向端部のうち何れか一方に、ガスを出入りさせる口金20又は口金30が取り付けられたものであってもよい。また、口金20,30は、ガス容器1の温度調整のため、熱交換媒体が循環する熱交換器として機能することとしてもよい。
【0022】
また、容器本体10は、口金20,30とは別体で形成されて、その形成後の口金20,30の挿入により口金20,30と一体化される。尚、容器本体10は、例えばインサート成形など、口金20,30に一体成形されてもよい。
【0023】
補強部材40は、容器本体10の径方向外面を被覆して容器本体10を補強する部材である。補強部材40は、特にガス容器1が耐圧容器である場合に用いられることが好適である。補強部材40は、例えば、樹脂を含浸した高強度繊維(すなわち、FRP)で構成されている。尚、この高強度繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等である。また、この高強度繊維に含浸される樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂などである。
【0024】
補強部材40は、例えば、樹脂を含浸した高強度繊維が容器本体10の外面に巻回されることによりヘリカル層やフープ層として形成されてよく、又は、樹脂及び高強度繊維を用いてシート状に形成されたヘリカル層やフープ層が容器本体10の外面に貼り付けられることにより形成されてよい。更に、補強部材40は、ヘリカル層やフープ層の形成後に樹脂が加熱硬化されたものであってもよい。
【0025】
貯蔵部材60は、ガスを吸蔵すると共に放出する部材である。貯蔵部材60は、容器本体10の内部空間11に収容されており、容器本体10に保持されている。貯蔵部材60は、内部空間11の形状に倣って柱状に形成されている。貯蔵部材60は、軸方向に延びている。貯蔵部材60を軸方向に直交する面で切断した断面は、内部空間11の断面に対応している。貯蔵部材60は、貯蔵対象のガスの種類に応じた材料により形成されている。貯蔵部材60の材料は、例えば、カーボンナノチューブ等の多孔性の炭素材料、多孔性の金属錯体(すなわちMOF)、ゼオライト、水素吸蔵合金、金属水素化物などである。
【0026】
貯蔵部材60は、一次粒子や二次粒子などの粉末を固めた状態すなわちペレット状に形成されていてよい。ペレット状の貯蔵部材60によれば、ガスに対する貯蔵部材60の接触面積を大きく確保することができるので、ガスの吸蔵放出性能を向上させることができる。尚、貯蔵部材60の体積は、ガス貯蔵量の確保のため、内部空間11の体積に対して100%に近いことが好ましいが、90%以上であればよい。貯蔵部材60は、貯蔵部材材料の粉末が架橋剤により架橋され又はバインダにより結着されることにより成形される。架橋剤やバインダは、例えば、シリコン系、エポキシ系、アミン系の材料により形成されている。
【0027】
尚、貯蔵部材60は、軸方向位置に応じて変化する性能を有していてもよい。例えば、貯蔵部材60は、軸方向中央部に比べて軸方向端部の耐破損性が高くなるように構成されていてよい。この耐破損性とは、粉末で固められた貯蔵部材60の粉末化のし難さを示す指標であってよい。この耐破損性は、強度、剛性、耐摩耗性、粘度、弾性力などに言い換えることができる。
【0028】
尚、貯蔵部材60の材料粉末を架橋する架橋剤等の量が多くなると、その量分だけ収容空間52に収容できる貯蔵部材60の量が減少し、貯蔵部材60がガスを貯蔵できる量が減少して貯蔵部材60の吸蔵放出性能が低下する。従って、貯蔵部材60において、軸方向中央部に比べて軸方向端部の耐破損性が高くなることは、軸方向中央部に比べて軸方向端部の吸蔵放出性能が低下することと同義である。
【0029】
貯蔵部材60は、容器本体10のストレート部14及びドーム部15,16の内面に沿うように形成されている。貯蔵部材60は、容器本体10にインサート成形により組み付けられて一体化される。貯蔵部材60は、ストレート部14に対応するストレート対応部61と、ドーム部15,16に対応するドーム対応部62,63と、を有している。
【0030】
ストレート対応部61は、貯蔵部材60の軸方向中央部に軸方向に延在する柱状(例えば円柱状)に形成された部位である。ストレート対応部61の径方向外面は、容器本体10のストレート部14の径方向内面に径方向で対向している。尚、ストレート対応部61は、図2に示す如く、軸中心部にシャフト部材を挿入するための空洞部61aが設けられたものであってもよい。このシャフト部材は、補強部材40の形成(例えば、フィラメントワインディング法による成形)時に容器本体10を回転させるための部材である。また、空洞部61aは、口金20,30の連通路21,31の径と同径であってよい。また、ストレート対応部61の軸方向端面は、容器本体10に口金20,30が取り付けられた際に、口金20,30の軸方向内面に接するものであってよい。
【0031】
ドーム対応部62,63は、貯蔵部材60の軸方向両端部にドーム状(例えば半球状)に形成された部位である。ドーム対応部62,63の湾曲した外面は、容器本体10のドーム部15,16の湾曲した内面に対向している。尚、ドーム対応部62,63は、半球体から口金20,30の挿入部分を除いたようなフープ状に形成されていてよい。ドーム対応部62,63は、ストレート対応部61の軸方向端面から軸方向外側に突出している。
【0032】
貯蔵部材60は、図2図3、及び図4に示す如く、凹部64を有している。凹部64は、貯蔵部材60の外面(具体的には、ストレート対応部61の径方向外面)に設けられて内側(具体的には、径方向内側)に凹む部位である。尚、凹部64は、ドーム対応部62,63の外面に設けられていてもよい。
【0033】
容器本体10は、図2図3、及び図5に示す如く、凸部17を有している。凸部17は、容器本体10の内面(具体的には、ストレート部14の径方向内面)に設けられて外側(具体的には、径方向外側)に突出する部位である。尚、凸部17は、ドーム部15,16の外面に設けられていてもよい。
【0034】
貯蔵部材60の凹部64と容器本体10の凸部17とは、互いに係合している。凹部64と凸部17との係合は、貯蔵部材60が内部空間11において容器本体10に対して軸方向に移動するのが規制されかつ軸中心回りに回転するのが規制されるように行われる。凹部64は、軸方向に向いた軸方向端面及び軸中心回りの回転方向に向いた回転方向端面を有している。凸部17は、軸方向に向いた軸方向端面及び軸中心回りの回転方向に向いた回転方向端面を有している。凹部64及び凸部17の軸方向端面同士は、軸方向に対して傾斜することなく対面していると共に、凹部64及び凸部17の回転方向端面同士は、回転方向に対して傾斜することなく対面している。
【0035】
尚、凹部64は、貯蔵部材60の外面に一箇所に設けられていてもよいし、点在するように複数箇所に設けられていてもよい。また、凸部17は、容器本体10の内面に一箇所に設けられていてもよいし、点在するように複数箇所に設けられていてもよい。そして、凹部64及び凸部17がそれぞれ複数箇所に設けられる構造では、それぞれ複数の凹部64及び凸部17が、図2図4、及び図5に示す如く、軸方向に間隔を空けて並ぶものとしてもよいし、回転方向に間隔を空けて並ぶものとしてもよい。
【0036】
また、凹部64及び凸部17は、容器本体10及び貯蔵部材60それぞれが内部空間11の温度上昇又は内圧上昇により変形したときに、凹部64及び凸部17が互いに係合する状態が継続するように形成されている。尚、この凹部64及び凸部17の形成は、特に、内部空間11において想定される最高温度や最大内圧が生じたときの容器本体10と貯蔵部材60との変形量の差を考慮して設定される。
【0037】
例えば、凸部17は、図3に示す如く、容器本体10の径方向内面の一般面から凸部17の先端までの長さHが、内部空間11において想定される最高温度や最大内圧が生じたときの容器本体10の径方向内面の一般面と貯蔵部材60の径方向外面の一般面との径方向距離Smaxに比して大きくなるように形成されている。
【0038】
以下、ガス容器1を製造する方法の一例を説明する。
まず、ストレート対応部61及びドーム対応部62,63が形成されたペレット状の貯蔵部材60を準備する。そして、容器本体10を成形するための成形金型に貯蔵部材60をインサート配置したうえでライナー樹脂を流し込むことにより容器本体10をインサート成形する。
【0039】
次に、インサート成形された容器本体10に口金20,30をシール部材と共に取り付けると共に、口金30の連通路31を介して空洞部61aに、容器本体10を回転させるためのシャフト部材を挿入する。そして、フィラメントワインディング(FW)法で容器本体10の外面に補強部材40を被覆する。最後に、シャフト部材を空洞部61aから抜いて、ガス容器1を製造する。
【0040】
ガス容器1の作用について説明する。
ガス容器1において、容器本体10の内部空間11には、ガスを吸蔵すると共に放出する貯蔵部材60が配置されている。貯蔵部材60は、径方向外面に設けられた凹部64を有している。容器本体10は、径方向内面に設けられた凸部17を有している。貯蔵部材60の凹部64と容器本体10の凸部17とは、互いに係合している。この係合は、貯蔵部材60が内部空間11において容器本体10に対して軸方向に移動するのが規制されると共に軸中心回りに回転するのが規制されるように行われるものである。
【0041】
このため、ガス容器1によれば、貯蔵部材60が内部空間11において容器本体10に対して軸方向に移動するのを規制することができると共に回転方向に回転するのを規制することができるので、内部空間11での貯蔵部材60の固定保持(具体的には、軸方向及び回転方向の双方の固定保持)を実現することができる。
【0042】
また、貯蔵部材60を容器本体10の内部空間11に収容するのに、その内部空間11に貯蔵部材60を保持するための別途の収容部材を用いることは不要である。すなわち、貯蔵部材60は、容器本体10の内部空間11に直接に収容されて、凹部64と凸部17との係合により容器本体10に固定保持される。この構造によれば、内部空間11において貯蔵部材60が占める体積を大きくすることができるので、内部空間11におけるガスの貯蔵量を増大させることができる。また、内部空間11内に上記の収容部材などの熱伝導を阻害する部材が存在しないので、内部空間11全体に亘って熱的な均一化を図ることができ、貯蔵部材60の温度の均一化を図ることができ、貯蔵部材60の吸蔵放出性能を向上させることができる。
【0043】
従って、ガス容器1によれば、容器本体10の内部空間11でのガスの貯蔵量を十分に確保しつつ、貯蔵部材60の固定保持を実現することができる。
【0044】
また、ガス容器1において、貯蔵部材60の凹部64と容器本体10の凸部17とは、上記の如く、互いに係合している。そして、この凹部64及び凸部17は、容器本体10及び貯蔵部材60それぞれが内部空間11の温度上昇又は内圧上昇により変形したときに、凹部64及び凸部17が互いに係合する状態が継続するように形成されている。このため、容器本体10及び貯蔵部材60(特に、容器本体10)が最大限変形しても、凹部64と凸部17とが互いに係合した状態が解除されず凹部64から凸部17が抜けて外れることが無いので、容器本体10に対して貯蔵部材60を固定保持して、貯蔵部材60が内部空間11において容器本体10に対して相対移動し或いは回転するのを確実に防止することができる。
【0045】
また、ガス容器1において、容器本体10は、軸方向中央部に筒状に形成されたストレート部14と、軸方向両端部にドーム状に形成されたドーム部15,16と、を有している。そして、貯蔵部材60は、ストレート部14及びドーム部15,16の内面に沿うように形成され、ストレート対応部61とドーム対応部62,63とを有している。すなわち、貯蔵部材60は、容器本体10のストレート部14の内面に沿うストレート対応部61だけでなく、容器本体10のドーム部15,16の内面に沿うドーム対応部62,63をも有している。
【0046】
この構造においては、貯蔵部材60が内部空間11において容器本体10に対して径方向に移動しようとしたときは、ストレート部14とストレート対応部61との接触及びドーム部15,16とドーム対応部62,63との接触によりその移動が規制される。また、貯蔵部材60が内部空間11において容器本体10に対して軸方向に移動しようとしたときは、ドーム部15,16とドーム対応部62,63との接触によりその移動が規制される。このため、ガス容器1によれば、貯蔵部材60が内部空間11において容器本体10に対して径方向だけでなく軸方向に移動するのを規制することができるので、内部空間11での貯蔵部材60の固定保持機能を向上させることができる。
【0047】
また、上記の構造においては、容器本体10の内部空間11に貯蔵部材60が容器本体10との間に隙間をほとんど生じさせることなく収容される。このため、貯蔵部材60を用いて内部空間11に貯蔵できるガスの量を最大化することができるので、ガス容器1のガス吸蔵放出効率を上げることができる。
【0048】
更に、ガス容器1において、貯蔵部材60は、容器本体10にインサート成形により組み付けられている。このため、容器本体10の内部空間11への貯蔵部材60の収容配置を確実に行うことができると共に、その収容配置を、貯蔵部材60の外面と容器本体10の内面との間にほとんど隙間を生じさせることなく実現することができる。
【0049】
ガス容器1において、ガスが口金30を介して容器本体10の内部空間11へ供給されると、そのガスは、まず、内部空間11において貯蔵部材60の空洞部61aを通って軸方向の口金20側に流れる。内部空間11に流入したガスは、空洞部61aを通りながら径方向外方の貯蔵部材60に徐々に吸蔵される。従って、ガス容器1によれば、内部空間11の全体にわたってガスを行き渡らせることができ、ガス濃度の均一化を図ることができる。これにより、貯蔵部材60におけるガスの吸蔵放出性能を充分に引き出してその貯蔵放出性能を向上させることができる。
【0050】
ところで、上記の実施形態においては、貯蔵部材60の凹部64と容器本体10の凸部17との係合が、貯蔵部材60が内部空間11において容器本体10に対して軸方向に移動するのが規制されかつ軸中心回りに回転するのが規制されるように行われる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
例えば、貯蔵部材60が内部空間11において容器本体10に対して回転方向に回転することが許容されるときは、凹部64及び凸部17のうち少なくとも凹部64は、その回転ができるように回転方向に環状に設けられていてよい。また、貯蔵部材60が内部空間11において容器本体10に対して軸方向に移動することが許容されるときは、凹部64及び凸部17のうち少なくとも凹部64は、その軸方向移動ができるように軸方向に直線状に延在して設けられていてもよい。更に、貯蔵部材60が内部空間11において容器本体10に対して螺旋方向に移動することが許容されるときは、凹部64及び凸部17のうち少なくとも凹部64は、その螺旋方向移動ができるように軸方向に対して螺旋状に延在して設けられていてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態においては、貯蔵部材60がインサートされた状態で容器本体10がインサート成形され、貯蔵部材60が容器本体10にインサート成形により組み付けられて一体化される。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、容器本体10が、射出成形などによりそれぞれ形成された筒状分体及びドーム状分体が溶着などにより一体化されて形成されるものであってよい。この変形形態では、貯蔵部材60が上記の筒状分体及び軸方向一方のドーム状分体に組み付けられ、その後に軸方向他方のドーム状分体がその筒状分体に溶着されることにより、貯蔵部材60が容器本体10に一体化されてよい。
【0053】
尚、本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:ガス容器、10:容器本体、11:内部空間、14:ストレート部、15,16:ドーム部、17:凸部、20,30:口金、60:貯蔵部材、61:ストレート対応部、62,63:ドーム対応部、64:凹部。
図1
図2
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図5