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  • 特開-空調システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137988
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/64 20180101AFI20230922BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20230922BHJP
   F24F 120/00 20180101ALN20230922BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F11/70
F24F120:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044459
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中満 達也
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 康佑
(72)【発明者】
【氏名】小松 正佳
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA04
3L260AB02
3L260BA02
3L260BA25
3L260CA05
3L260FA03
(57)【要約】
【課題】 在室者の空調に関する特性に合致した空調制御が可能となり得る空調システムの一例を開示する。
【解決手段】 空調システム1は、在室者特定部5Cにより特定された在室者についての特性情報を利用して空調能力を制御可能である。在室者特定部5Cは在室者を特定する。記憶部9には、予め登録された者についての空調に関する特性情報(「暑がり」や「寒がり」等の情報)が予め記憶されている。これにより、当該空調システム1では、在室者の空調に関する特性に合致した空調制御が可能となり得る。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空調を行う空調システムにおいて、
空調対象となる室内に居る者(以下、在室者という。)を特定する在室者特定部と、
予め登録された者についての空調に関する特性情報が予め記憶されている記憶部と、
空調能力を制御する制御部であって、前記在室者特定部により特定された在室者についての前記特性情報を利用して空調能力を制御する個人制御機能を有する制御部と
を備える空調システム。
【請求項2】
前記制御部は、温熱指標が予め決められた範囲となるように空調能力を制御する通常制御機能を有する請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記通常制御機能による空調能力制御では前記特性情報に応じた空調能力制御ができないと判断したときに、前記個人制御機能を実行する請求項2に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の空調システムは、予測平均温冷感申告(PMV)を利用した空調制御が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-11905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空調対象となる室内に居る者(以下、在室者という。)が、例えば、平均的な者に比べて暑がりである場合、又は平均的な者に比べて寒がりである場合において、仮に、平均的な者に合わせた空調制御が実行されると、当該空調制御は、その在室者の空調に関する特性に合致しない状態となる。
【0005】
本開示は、在室者の空調に関する特性に合致した空調制御が可能となり得る空調システムの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
室内の空調を行う空調システムは、例えば、空調対象となる室内に居る者(以下、在室者という。)を特定する在室者特定部(5C)と、予め登録された者についての空調に関する特性情報が予め記憶されている記憶部(9)と、空調能力を制御する制御部(5A)であって、在室者特定部(5C)により特定された在室者についての特性情報を利用して空調能力を制御する個人制御機能を有する制御部(5A)とを備えることが望ましい。
【0007】
これにより、当該空調システムでは、在室者の空調に関する特性に合致した空調制御が可能となり得る。
【0008】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る空調システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0011】
なお、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。
【0012】
(第1実施形態)
<1.空調システムの構成>
本実施形態は、オフィスビル等の建物の空調システムに本開示に係る空調システムの一例が適用されたものである。なお、当該建物においては、多数の事務作業者が在室又は出入りするため、本実施形態に係る空調システムは、特に有効である。
【0013】
本実施形態に係る空調システム1は、図1に示されるように、カメラ3、制御装置5、空調機7及び記憶部9等を少なくとも備える。カメラ3は、空調対象となる室内を撮影する可視光カメラである。つまり、カメラ3は、可視光を撮像素子にて捉え、撮影した画像を電子画像(電子データ)として出力可能な電子カメラである。
【0014】
空調機7は、室内に供給する空気を加熱又は冷却可能である。具体的には、当該空調機7は、熱交換器(図示せず。)及び送風機(図示せず。)等を少なくとも有する。熱交換器は、冷熱又は温熱を発生する。送風機は、室内の空気を吸い込んで熱交換器に供給するとともに、当該熱交換器で冷却又は加熱された空気を室内に供給する。
【0015】
制御装置5は、空調制御部5A、温熱指標算出部5B及び在室者特定部5C等を少なくとも有する。なお、制御装置5は、GPU又はCPU、ROM及びRAM等を有するコンピュータにて構成されている。
【0016】
そして、本実施形態では、ソフトウェアがGPU又はCPUにて実行されることにより、空調制御部5A、温熱指標算出部5B及び在室者特定部5Cが実現される。なお、当該ソフトウェアは、ROM等不揮発性記憶部に予め記憶されている。
【0017】
本実施形態に係る空調システムは、温度センサS1、湿度センサS2、放射温度センサS3及び風速センサS4等も有する。温度センサS1は室内空気の温度を検出する。湿度センサS2は、室内空気の相対湿度を検出する。
【0018】
放射温度センサS3は、室内に存在する物(例えば、PCやプリンタ等の放射体)の温度や日射温度を検出する。風速センサS4は、室内気流の風速を検出する。そして、これらセンサS1~S4の検出値は、制御装置5に入力されている。
【0019】
<2.空調能力の制御>
空調制御部5Aは、温熱指標算出部5B及び在室者特定部5Cと協働して空調機7で発生させる冷熱、温熱及び送風量(以下、これらを総称して空調能力という。)を制御する。
【0020】
<在室者特定部>
在室者特定部5Cは、カメラ3にて取得された電子画像を利用して、室内に居る者(以下、在室者という。)を特定する。「在室者を特定する」とは、例えば、「当該在室者は、○○部△△課のAさんである」等のように、他の在室者と区別可能な程度まで特定することをいう。
【0021】
本実施形態に係る在室者特定部5Cは、いわゆる「顔認証システム」を用いて在室者を特定している。当該顔認証システムに用いる顔認証サーバ(図示せず。)は、制御装置5と通信可能に接続されている。
【0022】
顔認証サーバには、少なくとも「顔認証」に用いる顔面画像データベースが記憶されている。なお、顔面画像データベースが記憶されている「顔認証」とカメラ3にて取得された顔面画像データとの照合は、在室者特定部5C又は顔認証サーバにて実行される。
【0023】
<温熱指標算出部>
温熱指標算出部5Bは、カメラ3にて取得された電子画像を利用して、在室者の着衣量及び活動量を算出するとともに、少なくとも当該算出された着衣量及び活動量を利用して温熱指標を算出する。
【0024】
着衣量の算出は、例えば、以下の手法により算出される。すなわち、温熱指標算出部5Bは、既存のモデルで人を検知して、その人をクロッピングした後、クロッピングされた人の電子画像から顔画像の画素を取得する。次に、温熱指標算出部5Bは、肌の画素と顔画像の画素が類似する箇所を露出部と判定して、着衣量を推定する。
【0025】
活動量の算出は、例えば、以下の手法により算出される。すなわち、温熱指標算出部5Bは、電子画像から物体検出をした後、既に作成済みのAIモデルを利用して人の姿勢情報を推定する。
【0026】
次に、温熱指標算出部5Bは、既に作成済みのAIモデルを利用して活動量を推定する。これにより、温熱指標算出部5Bは、活動量については、在室者が座位であるか、在室者が立位であるか、又は在室者が移動中であるかを推定できる。
【0027】
温熱指標とは、温熱感覚を簡易的な一元尺度として表現したものである。温熱指標として、本実施形態では、例えば、予測平均温冷感申告(以下、PMVという。)を用いている。PMVは、人間の体温調節に与える6つの要素、つまり、室内温度、室内湿度、平均放射温度、活動量、着衣量及び気流速度から、大多数の人が感じる温冷感を数値化したものである。
【0028】
なお、PMVは、冷房及び暖房を問わず、共通の指標である。具体的には、PMVが-0.5と0.5との間の範囲内であれば、一般的に快適な環境と言われている。因みに、PMV標は、ISO規格(ISO-7730)で国際標準化されている指標値である。
【0029】
このため、温熱指標算出部5Bは、温度センサS1、湿度センサS2、放射温度センサS3及び風速センサS4の検出値、並びに算出された着衣量及び活動量を利用してISO規格に従って温熱指標を算出する。
【0030】
このとき、温熱指標算出部5Bは、着衣量については、在室者の着衣が半袖又は長袖であるかを推定して温熱指標を算出する。なお、半袖又は長袖であるかの推定は、例えば、以下の手法により算出される。
【0031】
すなわち、温熱指標算出部5Bは、電子画像から物体検出の検出をした後、既に作成済みのAIモデルにより、人の服装、つまり半袖又は長袖であるか否かを推定するとともに、周知の手法にて信頼度Pを推定する。
【0032】
このとき、信頼度Pが第1閾値Th1以上であれば、温熱指標算出部5Bは、人の服装に関する推定、つまり半袖であるかは長袖であるの推定が正しいと判断する。信頼度Pが第1閾値Th1未満の場合は、以下の手法により半袖であるか長袖であるかを判定する。
【0033】
すなわち、温熱指標算出部5Bは、既に作成済みのAIモデルにより、人体の領域Hを推定した後、既に作成済みのAIモデルにより、肌の露出量Sを推定する。そして、温熱指標算出部5Bは、人体部分における肌の領域の割合(S/H)が第2閾値Th2以上の場合は、半袖と判定し、肌の領域の割合(S/H)が閾値Th2未満の場合は長袖と判定する。
【0034】
<空調制御部>
空調制御部5Aは、少なくとも通常制御機能及び個人制御機能が実行可能である。
【0035】
<通常制御機能>
通常制御機能は、温熱指標算出部5Bにより算出された温熱指標を利用して、温熱指標が最適範囲となるように、空調機7で発生する空調能力を制御する機能である。
【0036】
最適範囲とは、例えば、PMVが-0.5と0.5との範囲をいう。そして、空調制御部5Aは、例えば、PMVが-0.5未満となる場合には、空調風の温度を上昇させ、PMVが0.5より大きい場合には、空調風の温度を低下させる。
【0037】
<個人制御機能>
個人制御機能は、在室者特定部5Cにより特定された在室者についての特性情報を利用して空調能力を制御する機能である。特性情報は、予め登録された者についての空調に関する特性を示す情報である。
【0038】
具体的には、当該特性情報には、「Aさんは、暑がりである」、「Bさんは、かなり暑がりである。」、「Cさんは少し寒がりである」等の情報が少なくとも含まれている。なお、それらの特性情報は、数値化されて記憶部9に予め記憶されている。
【0039】
「特性情報を利用して空調能力を制御する」とは、例えば、在室者として「Aさん」が特定された場合には、空調制御部5Aは、通常制御機能による空調能力制御では特性情報に応じた空調能力制御ができないと判断し、冷房能力を現時より大きくする。
【0040】
つまり、空調制御部5Aは、現時の温熱指標が最適範囲にある場合であっても、「Aさんは、暑がりである」ため、現時の空調能力では、「Aさんの特性に応じた空調能力制御ができない」と判断し、冷房能力を現時より大きくする。
【0041】
なお、空調制御部5Aは、同一室内に特性の異なる者が混在している場合は、数値化された特性情報の平均値を利用して個人制御機能を実行する。具体的には、空調制御部5Aは、例えば、平均値が0の場合には現時の空調能力を維持し、平均値が0以外の値の場合には、現時の空調能力を大きくする。
【0042】
<3.本実施形態に係る空調システムの特徴>
本実施形態に係る空調システム1では、在室者特定部5Cにより特定された在室者についての特性情報を利用して空調能力を制御可能であるので、当該空調システム1では、在室者の空調に関する特性に合致した空調制御が可能となり得る。
【0043】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、オフィスビルに本開示に係る空調システムを適用した例であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ショッピングセンター等の商業施設にも適用することが可能である。
【0044】
上述の実施形態に係る在室者特定部は、いわゆる「顔認証システム」を用いて在室者を特定した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、近距離無線技術、やスマートホン等の携帯端末機を利用した位置特定技術(ビーコン)にて在室者特定部が構成されていてもよい。
【0045】
上述の温熱指標算出部は、「PMV」を用いて温冷感を特定した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、SET*(標準新有効温度:Standard new Effective Temperature)を用いて温冷感特定部が構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1… 空調システム
3… カメラ
5… 制御装置
5A… 空調制御部
5B… 温熱指標算出部
5C… 在室者特定部
S1… 温度センサ
S2… 湿度センサ
S3… 放射温度センサ
S4… 風速センサ
図1