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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138024
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】簡易マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230922BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
A41D13/11 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044504
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】305037123
【氏名又は名称】KBセーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮原 和久
(72)【発明者】
【氏名】山下 昌浩
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA08
2E185BA20
2E185CC36
(57)【要約】
【課題】 繰り替えし何度も使用でき、外観に優れ、着用時にずれにくく、眼鏡が曇りにくく、顔面の蒸れ、息苦しさ、耳の痛みがない着用感に優れるマスクを提供することを目的とする。
【解決手段】 口鼻を含む顔面にフィルターを押さえるための簡易マスクであって、破断強度が680cN/20mm以上であり、破断伸度が360%以上であり、50%モジュラスが130cN/20mm以上であり、100%伸長回復率が90%以上であり、目付が60~90g/mである一層のポリウレタン弾性不織布からなり、口鼻を含む顔面を覆うための口鼻覆部と、耳に掛けるための一対の耳掛け部を備え、特定の形状の一対の耳挿入孔を有する簡易マスク。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口鼻を含む顔面にフィルターを押さえるための簡易マスクであって、一層のポリウレタン弾性不織布からなり、口鼻を含む顔面を覆うための口鼻覆部と、耳に掛けるための一対の耳掛け部を備え、
前記口鼻覆部は長方形であり、前記一対の耳掛け部は、それぞれが前記口鼻覆部の短辺と、前記短辺から外側へ向けて短辺の上端から短辺の下端へ連続して形成された曲線とで囲まれており、
前記口鼻覆部の短辺の中心同士を通る直線を簡易マスクの長軸としたときに、前記連続して形成された曲線は、前記短辺から離れるにつれて前記簡易マスクの長軸に近づく曲線であり、第1点及び第2点を通り、前記第1点及び前記第2点間の曲線は円弧であり、
前記口鼻覆部の長辺の長さが150~170mmであり、前記短辺の長さが110~130mmであり、前記円弧の中心点同士の距離が、330~350mmであり、前記円弧の中心点の曲率半径が40~50mmであり、前記第1点と第2点の距離が70~90mmであり、
前記マスクは、耳を通すための一対の耳挿入孔を有し、それぞれの耳挿入孔は、外側円、内側円、前記外側円と前記内側円の互いに交差しない二つの共通接線とで囲まれており、前記外側円は簡易マスクの長軸方向に長い楕円であり、前記楕円の長軸が57~69mmであり、前記楕円の短軸が53~63mmであり、前記内側円は半径が1~4mmであり、前記内側円は前記外側円と前記簡易マスクの重心との間に位置し、前記外側円の円周上で前記円弧の中心点に最も近い点を外側円頂点、前記内側円の円周上で簡易マスクの重心に最も近い点を内側円頂点としたときに、前記外側円頂点と内側頂点の距離が70~90mmであり、
前記簡易マスク及び前記耳挿入孔は前記簡易マスクの長軸に対して線対称の形状であり、前記ポリウレタン弾性不織布は、引張強度が680cN/20mm以上であり、破断伸度が360%以上であり、50%モジュラスが130cN/20mm以上であり、100%伸長回復率が90%以上であり、目付が60~90g/mmであることを特徴とする簡易マスク。
【請求項2】
前記一対の耳掛け部はいずれも外側円頂点と円弧の中心点との距離が10~20mmである請求項1記載の簡易マスク。
【請求項3】
前記ポリウレタン弾性不織布の通気度が280cc/cm/s以上である請求項1又は2記載の簡易マスク。
【請求項4】
前記ポリウレタン弾性不織布の厚さが0.25~0.4mmである請求項1~3記載の簡易マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
口鼻を含む顔面にフィルターを押さえるための簡易マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年花粉症対策やインフルエンザ対策、その他感染症対策等で飛沫を防ぐためにマスクを着用する人が増えている。マスクは優れた着用感が要求されている。また、ウイルスの流行によりマスクが品切れとなることもあり、昨今、マスクを洗濯して繰り返し使用する人がいる。洗濯が可能な織編物からマスクを自作する人もいる程、日々の生活の中でマスクに関する注目度が高まっており、着用感に優れるだけでなく、繰り返し何度も使用できることや優れた外観が求められている。
【0003】
一般的なマスクは、マスク本体と耳掛け部とからなり、マスク本体の材質としては綿などの天然繊維のガーゼ又は化学繊維の不織布が使用される。マスクの形状としては平型、プリーツ型及び立体型がある。例えば、平型のマスクには通常はガーゼを含む織布が使用され、プリーツ型及び立体型のマスクには通常は不織布が使用される。
【0004】
上記のガーゼを含む織布が使用される平型のマスクは、平型の生地が口鼻を含む顔面に密着するため、呼吸がしにくく、口を大きく動かして話をするとマスクがずれやすい。織布を多数重ねている場合には、長時間着用していると顔面が蒸れやすく、圧迫感及び耳の痛みを感じ、着用感は悪かった。また、洗濯する度にマスク全体が収縮してしまい、着用感が悪くなることもあり、繰り返し何度も使用できなかった。
【0005】
上記の不織布が使用されるプリーツ型及び立体型のマスクは、口鼻周辺に空間ができるため平型のマスクと比べると呼吸が楽であり、マスクもずれにくいが、平型のマスクと同様に長時間の着用により耳が痛くなる。また、いずれも洗濯する度に不織布が毛羽立ち、肌ざわりも悪くなり、繰り返し何度も使用できなかった。
【0006】
上記のように平型、プリーツ型及び立体型マスクはいずれも飛沫を防ぐことはできるが着用感に問題があった。例えば、口を大きく動かして話をするとマスクがずれ、マスクと鼻の間にできる隙間から呼気が出てメガネを曇らせる。また、マスクを長時間着用していると顔面の蒸れ、息苦しさ、耳の痛みを感じる。また、いずれも繰り返し何度も使用できるものではなかった。
【0007】
上記の着用感の問題を解決するために様々な工夫がされてきた。例えば耳の痛みを軽減するために耳掛け部の長さを調節できるマスクがある(特許文献1)。また、耳掛け部に保湿剤を塗布することで耳にかかる摩擦を軽減するマスクがある(特許文献2)。
【0008】
また、眼鏡の曇りの原因となるマスクと鼻の間にできる隙間をなくすために、鼻の外形に沿って変形かつ維持できる押さえ部材を鼻当て部材を備えたマスクがある(特許文献3)。
【0009】
繰り返し使用できる再利用性の高いマスクとして、ゴム紐に備えられた取付け器具をガーゼやハンカチなどの布の両端に挟んで耳掛け紐として緊急用マスクを自作する技術が開示されている。(特許文献4)
【0010】
また、耳掛け紐に備えられた取付け器具により両端を保持してマスクとして使用するためのマスク兼用ティッシュペーパーがある(特許文献5)。このようなものは両辺の端部がヒートシールされて強度が高くなっており、破れにくくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014-210153号公報
【特許文献2】特開2019-205788号公報
【特許文献3】特開2020-056123号公報
【特許文献4】特開2006-167389号公報
【特許文献5】特開2011-062269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1は耳掛け部の長さを長く調節して耳にかかる負荷を軽減するためマスクの密着性が低下し、マスクがずれやすくなる。
【0013】
特許文献2は洗浄すると耳掛け部に塗布された保湿剤が落ちてしまうため、一度洗浄すると耳の痛みを軽減する効果はなくなる。
【0014】
特許文献3は押さえ部材として樹脂製や、保形性のある固い部材を用いている。マスクを洗浄すると固い部材が飛び出てしまい、飛び出た部材が肌にあたり着用感が悪くなるため、繰り返し何度も使用できなかった。
【0015】
特許文献4はガーゼ又はハンカチ等の布を取り換えることで何度でも清潔な状態でマスクを使用できるが、ゴム紐でガーゼやハンカチを顔面に押さえているだけであり、一般的な平型マスクと同様の問題がある。すなわち、話をすると口を覆う布がずれやすく、鼻とマスクの間から呼気が漏れ眼鏡が曇ってしまう。また、通常のゴム紐では長時間の着用で耳が痛くなる。また、取付け器具が肌にあたり不快である。
【0016】
特許文献5は耳掛け用の掛け紐を着脱自在に取り付けてマスク本体として使用されるマスク兼用ティッシュペーパーであり、ティッシュペーパーがプリーツ型の形状をしているため話をしてもずれにくく、息苦しさも少ない。しかし、強度が高くなっているとはいえ、くしゃみによる濡れや、長時間の着用によりティッシュペーパーが破れてしまう。また、鼻とマスクの間から呼気が漏れて眼鏡が曇る。また、紐に工夫はされていないため長時間の着用で耳が痛くなり、耳掛け紐に備えられた取付け器具が肌にあたり不快である。
【0017】
上記のように、従来は、着用感に優れ、かつ繰り返し何度も使用できるマスクがなかった。
したがって、繰り替えし何度も使用でき、外観に優れ、着用時にずれにくく、眼鏡が曇りにくく、顔面の蒸れ、息苦しさ、耳の痛みがない着用感に優れるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、耳掛け紐に備えられた取付け器具などでフィルターを顔面に押さえるのではなく、口鼻を含む顔面にフィルターを押さえるための簡易マスクであれば、簡易マスク自体は直接口鼻に接触せず、口鼻に接触するフィルターの汚れが気になったときにフィルターを交換するだけで良く、清潔なまま繰り返し何度も使用できると考えた。
種々検討を重ねた結果、特定の物性の一層の不織布を用いた特定の形状の簡易マスクであれば、フィルターを顔面に優しく押さえることができ、数日間使用しても目立つ変形や汚れがつかず、着用感にも優れ、さらには着用中の外観にも優れる簡易マスクが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
口鼻を含む顔面にフィルターを押さえるための簡易マスクであって、一層のポリウレタン弾性不織布からなり、口鼻を含む顔面を覆うための口鼻覆部と、耳に掛けるための一対の耳掛け部を備え、
前記口鼻覆部は長方形であり、前記一対の耳掛け部は、それぞれが前記口鼻覆部の短辺と、前記短辺から外側へ向けて短辺の上端から短辺の下端へ連続して形成された曲線とで囲まれており、
前記口鼻覆部の短辺の中心同士を通る直線を簡易マスクの長軸としたときに、前記連続して形成された曲線は、前記短辺から離れるにつれて前記簡易マスクの長軸に近づく曲線であり、第1点及び第2点を通り、前記第1点及び前記第2点間の曲線は円弧であり、
前記口鼻覆部の長辺の長さが150~170mmであり、前記短辺の長さが110~130mmであり、前記円弧の中心点同士の距離が、330~350mmであり、前記円弧の中心点の曲率半径が40~50mmであり、前記第1点と第2点の距離が70~90mmであり、
前記マスクは、耳を通すための一対の耳挿入孔を有し、それぞれの耳挿入孔は、外側円、内側円、前記外側円と前記内側円の互いに交差しない二つの共通接線とで囲まれており、前記外側円は簡易マスクの長軸方向に長い楕円であり、前記楕円の長軸が57~69mmであり、前記楕円の短軸が53~63mmであり、前記内側円は半径が1~4mmであり、前記内側円は前記外側円と前記簡易マスクの重心との間に位置し、前記外側円の円周上で前記円弧の中心点に最も近い点を外側円頂点、前記内側円の円周上で簡易マスクの重心に最も近い点を内側円頂点としたときに、前記外側円頂点と内側頂点の距離が70~90mmであり、
前記簡易マスク及び前記耳挿入孔は前記簡易マスクの長軸に対して線対称の形状であり、
前記ポリウレタン弾性不織布は、引張強度が680cN/20mm以上であり、破断伸度が360%以上であり、50%モジュラスが130cN/20mm以上であり、100%伸長回復率が90%以上であり、目付が60~90g/mmであることを特徴とする簡易マスクによって達成される。
【0019】
また、前記一対の耳掛け部はいずれも外側円頂点と円弧の中心点との距離が10~20mmであることが好ましい。
【0020】
また、前記ポリウレタン弾性不織布の通気度が280cc/cm/s以上であることが好ましい。
【0021】
また、前記ポリウレタン弾性不織布の厚さが0.25~0.4mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、口鼻を含む顔面にティッシュペーパーなどのフィルターを押さえることができ、飛沫を防止し、汚れが気になればフィルターを交換するだけで良く、簡易マスクに汚れが直接付着しにくいため繰り返し使用でき、着用時に皺や弛みがなく外観に優れ、口を大きく動かして話をしてもマスクがずれることがなく、マスクと鼻の間にできる隙間から呼気が出てメガネを曇ることがなく、長時間着用しても顔面が蒸れにくく、息苦さがなく、耳が痛くならない簡易マスクを提供できる。また、フィルターを固定部材で固定せずに簡易マスクでフィルターを顔面に押さえるという特殊な着用方法にも関わらず着脱が容易であり、繰り返しの着脱でも破れなどの目立った傷が付きにくい。また、頬と重なる部分において開口が大きいため、マスク生地による圧迫感がなく、外気温が高くても蒸れにくく涼感が得られるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る簡易マスクの外観を示す平面図
図2】本発明の実施形態に係る簡易マスクの説明図
図3】本発明の簡易マスクにおける耳挿入孔の説明図
図4】本発明の簡易マスクにおける耳挿入孔の説明図
図5】本発明の簡易マスクにおける耳挿入孔の説明図
図6】本発明におけるフィルターの位置の説明図
図7】本発明の簡易マスクとは異なるマスクの形状の一例
図8】本発明の簡易マスクとは異なるマスクの形状の一例
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の簡易マスクは、口鼻を含む顔面にフィルター押さえるためのマスクである。フィルターとしてはティッシュペーパー、ガーゼ又はハンカチ等が挙げられ、フィルターのサイズを適宜調整して使用することができる。汚れが気になったときに新しいものとすぐさま取り換えることができる点で、ティッシュペーパーをフィルターとして利用することが好ましい。
【0025】
本発明の簡易マスクは、一層のポリウレタン弾性不織布からなる。ポリウレタン弾性不織布であれば、全体が伸縮しフィルターを顔面に優しく押さえることができる。また、顔面にフィットしやすいため鼻と簡易マスクとの間に隙間が空きにくく、口の動きに簡易マスクが追従して伸縮するため簡易マスク及びフィルターがずれにくい。
【0026】
以下、本発明を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の実施形態に係る簡易マスクの外観を示す平面図である。本発明の簡易マスク1は、口鼻を含む顔面を覆うための口鼻覆部2と、耳に掛けるための一対の耳掛け部3、3’を備える。口鼻覆部2は長方形であり、一対の耳掛け部3、3’は、それぞれが口鼻覆部の短辺4、4’と、短辺4、4’から口鼻覆部2の外側へ向けて短辺4、4’の上端から下端へ連続して形成された曲線とで囲まれている。なお、点線は説明のために描いた仮想直線である。
【0027】
図2に示すように、口鼻覆部2の短辺4、4’の中心同士を結ぶ仮想直線を長軸5とし
たときに、簡易マスク1は長軸5に対して線対称の形状である。
【0028】
前記口鼻覆部2の短辺4,4’の中心同士を通る直線を簡易マスク1の長軸5としたときに、前記連続して形成された曲線は、前記短辺4、4’から離れるにつれて前記簡易マスクの長軸5に近づく曲線であり、それぞれ第1点6と第2点7、第1点6’と第2点7’を通り、前記第1点6と第2点7間の曲線、前記第1点6’と第2点7’間の曲線は円弧である。
【0029】
本発明における口鼻覆部2の長辺の長さは150~170mmであることが必要である。また、155~165mmであることが好ましい。150mm以上であれば、フィルター全体を簡易マスクで覆いやすく、簡易マスクが顔面の大きさに対応し、フィルターを顔面に押さえるため、フィルターがずれにくい。170mm以下であれば、簡易マスクが弛むことなく顔面にフィットしやすいため、簡易マスク及びフィルターがずれにくい。
【0030】
本発明における口鼻覆部の短辺4,4’の長さは110~130mmであることが必要である。また、115~125mmであることが好ましい。110mm以上であれば、フィルター全体を簡易マスクで覆いやすく、簡易マスクが顔面の大きさに対応し、フィルターを顔面に押さえるため、フィルターがずれにくい。130mm以下であれば、簡易マスクが弛むことなく顔面にフィットしやすいため、簡易マスク及びフィルターがずれにくい。
【0031】
本発明における円弧の中心点8、8’は、長軸5上に位置し、本発明における円弧の中心点8,8’同士の距離は、330~350mmであることが必要である。また、335~345mmであることが好ましい。330mm以上であれば、簡易マスクを長時間着用しても耳が痛くなりにくく、350mm以下であれば、簡易マスクにテンションが適度にかかり、優しくフィルターを口鼻に押さえることができ、弛むことなく顔面にフィットしやすいため、簡易マスク及びフィルターがずれにくい。
【0032】
本発明における円弧の中心点8、8’の曲率半径は40~50mmであることが必要である。また、43~47mmであることが好ましい。40mm~50mmであれば、耳掛け部3、3’の中で極端に狭くなる箇所がなく、繰り替えしの着脱でも破断しにくく、局所的な負荷が耳にかかりにくいため、簡易マスクを長時間着用しても耳が痛くなりにくい。また、耳掛け部が耳の裏の形に沿って自然フィットし、皺や弛みも発生しにくい。
【0033】
本発明における第1点6と第2点7の距離、第1点6’と第2点7’の距離は、70~90mmであることが必要である。また、75~85mmであることが好ましい。70~90mmであれば、耳掛け部3、3’の中で極端に狭くなる箇所がなく、繰り替えしの着脱でも破断しにくく、局所的な負荷が耳にかかりにくいため、簡易マスクを長時間着用しても耳が痛くなりにくい。また、耳掛け部が耳の裏の形に沿って自然フィットし、皺や弛みも発生しにくい。
【0034】
本発明における口鼻覆部の短辺から外側へ向けて短辺の上端から短辺の下端へ連続して形成された曲線上の、短辺4、4’の上端と第1点6、6’の間の曲線及び短辺4,4’の下端から第2点7、7’の間の曲線は、短辺4、4’から離れるにつれて簡易マスクの長軸5に近づく連続した曲線であれば特に限定されないが、例えば曲率半径が170mm~300mmであると、緩やかな曲線が顔にフィットし、外観に優れる。
【0035】
本発明の簡易マスク1は、耳を通すための一対の耳挿入孔9,9’を有する。
本発明における耳挿入孔9、9’について、図3図5を用いて説明する。以下、耳挿
入孔9’に関しての説明は、耳挿入孔9と同様であるため省略する。尚、図3図5に示す点線は説明のための仮想線である。
【0036】
図3に示すように、本発明における耳挿入孔9は、外側円10と内側円11と互いに交差しない二つの共通接線12、12’で囲まれ、簡易マスクの長軸5に対して線対称の形状である。内側円11は、外側円10と簡易マスク1の重心との間に位置する。この形状であれば、頬にかかるあたりで均一に伸縮しやすく、皺や弛みが発生しにくく着用時の外観に優れる。また、着用中、頬の部分が大きく開口しているため、蒸れにくく涼しい。
【0037】
図4に示すように、外側円10は簡易マスクの長軸5方向に長い楕円であることが必要である。外側円10が簡易マスク1の長さ方向に長い楕円であることにより、着用時に簡易マスクの長軸方向に不織布が伸長されても皺や弛みが発生しにくく、着用時の外観に優れる。また、楕円の長軸13の長さが57~69mmであることが必要であり、好ましくは59~67mmである。また、楕円の短軸14の長さが53~63mmであることが必要であり、好ましくは56~60mmである。楕円の長軸の長さが57~69mmかつ楕円の短軸の長さが53~63mmであると、耳の裏に自然にフィットし、耳が痛くなりにくく、簡易マスク及びフィルターがずれにくい。また、耳掛け部3が均一に伸縮しやすく頬にかかるあたりで皺や弛みが発生しにくく、着用時の外観に優れる。また、耳挿入孔を必要以上に広げなくとも簡易マスクの着脱が容易であるため、繰り返し着脱しても耳掛け部3が破断しにくい。
【0038】
また、楕円の長軸13の長さに対する楕円の短軸14の長さの比率(楕円の短軸14の長さ/楕円の長軸13の長さ)が、0.95以下であることが好ましい。0.95以下であれば、皺や弛みが発生しにくく着用時の外観が優れる。
【0039】
本発明における内側円11の半径は1~4mmであることが必要である。また、1.5~2.5mmであることが好ましい。着脱の際、耳挿入孔9を上下に広げると、内側円に負荷が集中するが、1.0mm以上であれば、マスクを繰り返し使用しても、内側円の負荷を減らすことができ、この部分が破れにくい。また、4.0mm以下であれば、顔面にフィットし、皺や弛みが発生しにくく、着用時の外観に優れる。
【0040】
図5に示すように、外側円10の円周上で円弧の中心点8に最も近い点を外側円頂点15、内側円11の円周上で簡易マスクの重心に最も近い点を内側円頂点16としたときに、前記外側円頂点15と内側円頂点16の距離が70~90mmであることが必要である。また、75~85mmであることが好ましい。70mm以上であれば、耳挿入孔9が大きく開口しており、着用時に蒸れにくく涼しい。90m以下であるとフィルター全体を簡易マスクで覆いやすく、フィルターがずれにくい。
【0041】
本発明における外側円頂点15と円弧の中心点8の距離が10~20mmであることが好ましい。また、12~18mmであることがより好ましい。10mm以上であれば、繰り返しの着用でも耳掛け部3が破断しにくく、20mm以下であれば簡易マスクを長時間着用しても耳が痛くなりにくい。
【0042】
本発明の簡易マスクは例えばポリウレタン弾性不織布を用いて打ち抜き成形又は溶融切断することにより形成される。着用時の肌触りの点から、打ち抜き成形が好ましい。例えば打ち抜き成形の場合、簡易マスクの外周と耳挿入孔の外周の形状をした金型を用いてポリウレタン弾性不織布を打ち抜くことで簡易マスクが得られる。
【0043】
本発明におけるポリウレタン弾性不織布は、例えばエーテル系又はエステル系のポリウ
レタン樹脂から得られる。加水分解を起こさず、肌ざわりが良い点から、エーテル系ポリ
ウレタン樹脂が好ましい。
【0044】
本発明におけるポリウレタン弾性不織布はメルトブロー法により得られるものが好まし
い。メルトブロー紡糸法で得られる不織布は、伸縮性、柔軟性が良好である。
【0045】
本発明におけるポリウレタン弾性不織布は、MD方及びCD方向の破断強度が680c
N/20mm以上である。また、990cN/20mm以上であることが好ましい。680cN/20mm以上であれば、簡易マスクとしたときに繰り返しの着用でも破断しにくい。
【0046】
発明におけるポリウレタン弾性不織布は、MD方向及びCD方向の破断伸度が360%
以上である。また、390%以上であることが好ましい。360%以上であれば、簡易マスクとしたときに装着時に伸ばしても破断しにくい。
【0047】
本発明におけるポリウレタン弾性不織布は、MD方向及びCD方向の50%モジュラスが130cN/20mm以上である。また、180cN/20mm以上であることが好ましい。130cN/20mm以上であれば、簡易マスクとしたときにコシがあり、着脱が容易である。また、着用時に皺や弛みが発生しにくい。
【0048】
本発明におけるポリウレタン弾性不織布は、100%伸長回復率が90%以上である。また、93%以上であることが好ましい。90%以上であれば、伸長しても元のサイズに戻りやすく、顔面へ密着しやすい。
【0049】
本発明におけるポリウレタン弾性不織布は、目付が60~90g/mである。60g/m以上であれば、簡易マスクとしたときに、強度が優れたものとなる。また、フィルターが簡易マスク越しに透けて見えにくく、着用時の外観に優れる。また、90g/m以下であれば、簡易マスクを長時間着用しても顔面が蒸れにくく、息苦しさを感じにくい。
【0050】
本発明におけるポリウレタン弾性不織布は、通気度が280cc/cm/s以上であることが好ましい。280cc/cm/s以上であれば、長時間着用時しても顔面が蒸れにくく、息苦しさを感じにくい。
【0051】
本発明におけるポリウレタン弾性繊維不織布は、厚さが0.25~0.4mmであることが好ましい。0.25mm以上であれば、簡易マスクとしたときにコシがあり、着脱が容易である。また、皺や弛みが発生しにくい。また、0.4mm以下であれば、着用中に圧迫感を感じにくい。
【0052】
本発明の簡易マスクを着用する際、ティッシュペーパー又はガーゼなど適宜サイズ調整して使用することができる。例えばフィルターとして四つ折りにしたティッシュペーパーを使用した場合、図6のようにフィルター17の重心を簡易マスクの重心に合わせるように乗せた状態で、簡易マスクを装着し、口鼻と簡易マスクの口鼻覆部の間にフィルターが位置するように着用することが好ましい。
【実施例0053】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。実施例の説明中の不織布の物性は下記に示す方法により測定を実施した。
【0054】
(不織布の破断強度、破断伸度及び50%モジュラス)
JIS L1913 2010 6.3.1「一般不織布試験方法」の標準時に準拠して測定した。幅20mm、長さ100mmの試験片を採取し、引張試験機(オリエンテック製)を用いて、チャック間を50mmに設定して試験片を固定した。引張速度200mm/minで伸長させ、破断した時の強度を破断強度、破断した時の伸度を破断伸度とした。伸び50%時の引張応力を50%モジュラスとした。各測定は不織布のMD方向とCD方向とでそれぞれ測定した。
【0055】
(不織布の100%伸長回復率)
JIS L1096 2010 8.16.2「織物及び編物の生地試験方法」の伸長弾性率(伸長回復率)及び残留ひずみ率に準拠して測定した。幅20mm、長さ100mmの試験片を採取し、引張試験機(オリエンテック製)を用いて、チャック間を50mmに設定して試験片を固定した。引張速度200mm/minで100%伸長させた後に同じ速度で元の位置まで戻すサイクルを2回繰り返した。2サイクル目の伸長点から残留ひずみを求め、伸長回復率を算出した。
【0056】
(不織布の目付)
JIS L1913 2010 6.2「一般不織布試験方法」の単位面積当たりの質量に準拠して測定した。目付は100×100mmの試験片を採取し、重量を測定して1mあたりに換算した。
【0057】
(不織布の通気度)
JIS L1913 2010 6.8.1「一般不織布試験方法」のフラジール形法に準拠して測定した。約200×200mmの試験片を採取し、通気性試験機(TEXTEST製)を用いて測定した。
【0058】
(不織布の厚さ)
ダイヤルシックネスゲージSM-112(テクロック社製)を用いて測定した。
【0059】
[実施例1]
ジフェニルメタンジイソシアナートと、ポリテトラメチレングリコール(分子量1000)と、1,4-ブタンジオールからなるポリウレタン弾性体を、前述のメルトブロー法によって、不織布を得た。得られた不織布の物性は下記の表1に示すとおりである。得られた不織布から、MD方向が簡易マスクの長軸方向になるようにして、図2に示す様に一対の耳挿入孔9、9’を有し、長軸5に対して線対称の形状に打ち抜き成形をして表2に記載の形状の簡易マスクを得た。
【0060】
【表1】
【0061】
[実施例2]
口鼻覆部の長辺の長さを153mmとし、円弧の中心点8,8’同士の距離を333mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0062】
[実施例3]
口鼻覆部の短辺4,4’の長さを114mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0063】
[実施例4]
耳掛け部の円弧の中心点8,8’の曲率半径を48mmとし、第1点6と第2点7の距離、第1点6’と第2点7’の距離を86mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0064】
[実施例5]
耳挿入孔の外側円10の楕円の長軸13の長さを68mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0065】
[実施例6]
耳挿入孔の外側円10の楕円の短軸14の長さを61mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0066】
[実施例7]
耳挿入孔の内側円11の半径を3mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0067】
[実施例8]
耳挿入孔の外側円頂点15と内側円頂点16の距離を88mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0068】
[実施例9]
耳挿入孔の外側円頂点と耳掛け部の円弧の中心点の距離を19mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0069】
四つ折りにしたボックスティッシュペーパーをフィルター17として図6の様に用い、得られた簡易マスクを成人モニター5名に着用させた。一日8時間着用するテストを3日間行い、脱着の容易さ、簡易マスク又はフィルターのずれにくさ、眼鏡の曇り、顔面の蒸れ、息苦しさ、耳の痛みついて、以下の評価基準から選択させ、最も多く選択された評価を簡易マスクの評価結果とした。また、着用中皺や弛みがあるか外観を目視で確認した。テスト終了後に簡易マスクに破れ等の傷の有無を目視で行い、以下の評価基準で評価した。
<脱着の容易さ>
◎非常に容易
〇容易
×難しい
<簡易マスク又はフィルターのずれにくさ>
◎簡易マスク又はフィルターがずれない
○:簡易マスク又はフィルターに部分的なタルミが多少あるが、あまりずれない
×:大きく口を開けると簡易マスク又はフィルターがずれる
<眼鏡の曇り>
◎曇らない
○あまり曇らない
×曇る
<顔面の蒸れ>
◎:ほとんど蒸れを感じない
〇:多少蒸れを感じるが気にならない
×:蒸れを感じて不快
<息苦しさ>
◎:息苦しさを感じない
〇:息苦しさをあまり感じない
×:息苦しさを感じる
<耳の痛み>
◎:痛みを感じない
○:痛みをあまり感じない
△:痛みを多少感じる
×:痛みが強く不快
<外観>
◎:皺や弛みが全くない
○:皺や弛みが多少あるが気にならない
×:皺や弛みがあり外観が悪い
<傷の有無>
◎:傷がない
〇:多少傷がある
×:傷がある
【0070】
上記の結果から、実施例1~9の簡易マスクはいずれも、脱着が容易であり、簡易マスク又はフィルターがずれにくく、眼鏡の曇り、顔面の蒸れ、息苦しさ及び耳の痛みがなかった。また、着用中弛みもなく外観に優れていた。また、着用テスト後に簡易マスクの傷の有無を確認したところ、3日間の着用で破れた箇所もなく、繰り返し何度も使用でき再利用性に優れていた。これらの結果を表2に併せて示す。
【0071】
【表2】
【0072】
[比較例1]
耳掛け部の円弧の中心点8,8’の曲率半径を38mmとし、第1点6,6’と第2点7,7’の距離を64mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0073】
[比較例2]
耳挿入孔の外側円10の楕円の長軸13の長さを75mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0074】
[比較例3]
耳挿入孔の外側円10の楕円の短軸14の長さを50mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0075】
[比較例4]
耳挿入孔の内側円11の半径を0.5mmとしたこと以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0076】
[比較例5]
図7に示すように、耳挿入孔9,9’の内側円11に接する接線が外側円10の楕円の短軸の上下端に結ぶ直線であること以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。なお、点線は説明のための仮想直線である。
【0077】
[比較例6]
図8に示すように、耳掛け部3,3’が口鼻覆部の短辺4、4’と、短辺4,4’から外側へ向けて短辺の上端から下端へ連続して形成された円弧とで囲まれた形状であり、円弧の中心点の曲率半径が60mmであり、第1点と第2点の距離が120mmであり、口鼻覆部の長辺の長さが220mmであること以外は実施例1と同様にして簡易マスクを作製した。
【0078】
実施例1、比較例1~比較例6の結果を、表3及び表4に併せて示す。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
比較例1~6はいずれも、着脱が難しかったり、耳の痛みがあったり、皺や弛みが発生して着用時の外観が悪かったり、テスト後の簡易マスクに部分的に破れ傷が見られたりと問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の簡易マスクは、フィルターを口鼻に押さえて飛沫を防止するのに有用である。口鼻に接触するフィルターを交換すれば清潔を保つことができるため、繰り返し何度も使用できる。さらに、フィルターを口鼻に押さえる独特な使用方法であるがフィルターがずれることなく脱着が容易であり、着用感にも優れ、着用時の外観にも優れる。
【符号の説明】
【0083】
1 簡易マスク
2 口鼻覆部
3、3’ 耳掛け部
4、4’ 口鼻覆部の短辺
5 簡易マスクの長軸
6、6’ 第1点
7、7’ 第2点
8、8’ 円弧の中心点
9、9’ 耳挿入孔
10 外側円
11 内側円
12、12’ 共通接線
13 楕円の長軸
14 楕円の短軸
15 外側円頂点
16 内側円頂点
17 フィルター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8