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  • 特開-酵母抽出物による乳化剤 図1
  • 特開-酵母抽出物による乳化剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138032
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】酵母抽出物による乳化剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/52 20220101AFI20230922BHJP
   C12N 1/16 20060101ALI20230922BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20230922BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20230922BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230922BHJP
   A61K 36/06 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C09K23/52
C12N1/16 J
A23L29/10
A61K8/9728
A61K8/06
A61K36/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044514
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 雄典
【テーマコード(参考)】
4B035
4B065
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE02
4B035LE03
4B035LG12
4B035LG50
4B035LK13
4B035LP21
4B065AA72X
4B065BA22
4B065BD16
4B065CA22
4B065CA41
4B065CA50
4C083AA031
4C083AA032
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE07
4C087AA01
4C087BC11
4C087MA22
4C087NA20
(57)【要約】
【課題】
酵母抽出物を用いて乳化剤を作成すること
【解決手段】
酵母由来の食物繊維を含む抽出物を利用することで乳化剤の作成が可能となる。
【産業上の利用可能性】
本発明を用いることで、化学合成物質や食品添加物などを用いなくて食品や化粧品及び医薬品の乳化液作成に利用することが出来る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母抽出物を含有する乳化剤であって、前記酵母抽出物が食物繊維を30%以上含有する乳化剤。
【請求項2】
食物繊維を30%以上含有する酵母抽出物を用いた乳化方法。
【請求項3】
請求項1に記載の乳化剤を含有する組成物であって、前記組成物が化粧料組成物、医薬組成物または食品組成物である、組成物。
に係るものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酵母由来の食物繊維を有効成分として含有する酵母抽出物を利用した乳化剤にかかるものである
【背景技術】
【0002】
食品や化粧品など様々な日常品は水に油脂などを溶解混合して液状製品としたものが多く流通している。しかしながら、元来水と油は混合しにくい為これらを乳化するために界面活性剤などが利用されている。例えば特許文献1には、化粧材向けの界面活性剤として脂肪酸エステルが用いられている。また、特許文献2には分散させるためとしてキトサン誘導体が用いられている。
【0003】
また、近年は安全・安心志向の高まりで天然由来の成分が求められており、例えば特許文献3には、酵母からRNAやペプチド、食物繊維を含む抽出物を食品用乳化剤として利用する方法が記載されている。特許文献4には食用酵母を培養して得られる 培養液中の糖とタンパク質を有する成分に乳化安定性があるとの記載されている。しかしながら、RNAやペプチド、たんぱく質を含有する素材を乳化剤に利用する場合、2層に分離しやすいことが課題となっていた。また食品の場合は異味、異臭などがある点や、化粧品原料として用いる場合は、着色やべたつきなどを感じやすく不快であるといったことが課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-169438
【特許文献2】特開2021―172727
【特許文献3】特開2012-231747
【特許文献4】特開2007 - 216218
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、酵母由来の食物繊維を含有する酵母抽出物を利用した乳化剤にかかるものである
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、酵母由来の食物繊維を含む抽出物を乳化剤とすることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は
(1) 酵母抽出物を含有する乳化剤
(2) 食物繊維を30%以上含有する酵母抽出物を含む乳化剤
(3) 前記組成物が化粧料組成物または医薬組成物または食品組成物である、(1)または(2)記載の組成物
に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の酵母由来の食物繊維を含む抽出物は、食品として知られている酵母から抽出できるため、比較的容易かつ安価に生産でき、安全に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の乳化剤は、熱水等による酵母菌体を洗浄後、酵素処理し、可溶性成分を酵母菌体から抽出することで得ることができる。
【0010】
本発明の食物繊維を含む抽出物の製造に用いられる酵母は、一般的に用いられている酵母であれば使用することができる。具体的には、パン酵母、ビール酵母(サッカロマイセス・セルビシエ)トルラ酵母(キャンディダ・ユティリス)などを挙げることができる。この中でも、特にトルラ酵母が望ましい。酵母の培養方法は、一般的な食品製造で採用されている培養方法で良い。使用する酵母により、当業者が採用できる方法で培養し、酵母菌体を得る。
【0011】
本発明で、使用する酵母菌体は、酵母から水可溶性エキス成分を分離除去した後の菌体を用いるのが好ましい。可溶性エキス成分の分離除去方法は、特に制限がない。一般的には、酵母を培養し、酵母菌体を集菌後、熱水抽出法、酵素抽出法、又は酸、若しくはアルカリ抽出法、さらには、これらの組み合わせによる抽出により、水可溶性エキスの成分を酵母菌体から除去する。また、本発明では、一般に販売されている例えば、三菱商事ライフサイエンス社製の「KR酵母」、「GL酵母」などを用いることもできる。
【0012】
上記の菌体にグルカナーゼを作用させる。グルカナーゼの作用条件は、使用する酵素の至適条件により、ph、温度、反応時間、添加量を調整する。例えば、長瀬ケムテックス製のグルカナーゼ製剤「デナチームGEL-L1」の場合、酵母抽出物をpH4~7、望ましくはpH5~6に調整し、25~75℃、望ましくは30~60℃で、酵母菌体重量に対して酵素を0.05~2%、望ましくは0.1~1%添加し、1~30時間、望ましくは10~15時間反応させる。
【0013】
グルカナーゼを作用させた後、水不溶性成分を除去する。除去方法に制限はなく、遠心分離、ろ過による分離などを採用することができる。
【0014】
こうして得られる本願発明の乳化剤は、食物繊維を含有するものである。
本発明では、酵母抽出物を乳化効果のある組成物として使用することもでき、また他の素材との混合物にして使用してもよい。本発明では、乳化剤中の食物繊維含量は、乳化組成物中に30重量%以上含有することが好ましい。さらに好ましくは、40重量%以上であり、特に好ましくは50重量%以上である。なお、本発明の食物繊維含量は、乾燥組成物中の含量であり、酵素―HPLC法により測定した含量を示す。
【0015】
本発明品では、前段までの方法により得られる酵母由来の組成物以外に、必要に応じて、他の物質を混合することができる。例えば、蛋白質、糖、多糖類など、本発明品が添加されるものに応じて、適宜選択することができる。
【0016】
本発明品は、上記の酵母抽出物を有効成分として含むものであり、その形態は特に限定されるものではない。噴霧乾燥、ドラムドライ乾燥、凍結乾燥などにより、水分を除去した状態、水溶液の状態など、適宜採用することができる。
【0017】
本発明の乳化剤を使用して、乳化する方法は、乳化を必要とする食品、医薬品、化粧品に添加し、乳化する方法は、水相に混合させる方法で良い。
【0018】
本発明で乳化する際の添加量は、油状物質の重量に対して、1~20重量%を添加する。好ましくは、5~15重量%の重量を添加する。
【0019】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例0020】
(本願発明の抽出物の製造)
「KR酵母」(三菱商事ライフサイエンス社製)10gを固形分 10%(10g/100 mL)となるように調整した。調整後60℃、pH6.5にて、デナチームGEL―1を0.05gとなるよう添加した。添加後撹拌しながら、3時間反応し、反応後、それぞれを遠心分離し、上清を食物繊維含有抽出物として回収した。回収後、噴霧乾燥し、乾燥物を2.5g得た。得られた乾燥物の食物繊維含量は51%であった。
【実施例0021】
油状物質であるホモサレート10g、実施例1で得られた抽出物1gを純水に添加して20mlの混合液を作成した。混合液を手で軽く混合した。その後、静置して24時間後の外観を確認した。
【比較例1】
【0022】
実施例1で得られた抽出物の代わりに市販の酵母エキス(食物繊維含量22%)を用いたこと以外は実施例2と同様に行った。
【比較例2】
【0023】
実施例1で得られた抽出物を用いないこと以外は実施例2と同様に行った。
【0024】
図1に示した通り、実施例2と比較例1、比較例2について外観を確認したところ実施例2は均一に混合していたのに対し、比較例1、比較例2では2層に分離しており、実施例2では乳化液となっていたことが確認できた。
【実施例0025】
市販の植物油10g、実施例1で得られた抽出物1gを純水に添加して20mlの混合液を作成した。混合液を手で軽く混合した。その後、静置して24時間後の外観を確認した。
【比較例3】
【0026】
実施例1で得られた抽出物の代わりに市販の難消化デキストリン(食物繊維含量80%)を用いたこと以外は実施例2と同様に行った。
【比較例4】
【0027】
実施例1で得られた抽出物を用いないこと以外は実施例3と同様に行った。
【0028】
図2に示した通り、実施例3と比較例3、比較例4ついて外観を確認したところ実施例2は均一に混合していたのに対し、比較例3、比較例4では2層に分離しており、実施例2では乳化液となっていたことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例2等の乳化状態
図2】実施例3等の乳化状態
図1
図2