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特開2023-138034二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータおよび二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138034
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータおよび二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/403 20210101AFI20230922BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20230922BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20230922BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20230922BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20230922BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230922BHJP
【FI】
H01M50/403 D
H01M50/414
H01M50/411
H01M50/449
H01M50/434
H01M50/443 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044516
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】富田 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】香川 靖之
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE01
5H021EE06
5H021EE15
5H021EE21
5H021EE23
5H021HH01
(57)【要約】
【課題】防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる二次電池セパレータ用コート材原料、その二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材、その二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える二次電池セパレータ、および、その二次電池セパレータを備える二次電池を提供すること。
【解決手段】二次電池セパレータ用コート材原料は、バインダー樹脂と、ピリチオン化合物と、水とを含む。ピリチオン化合物の含有割合が、二次電池セパレータ用コート材原料に対して、0.001質量%以上5.0質量%以下である。二次電池セパレータ用コート材原料のpH値は、8.2以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂と、ピリチオン化合物と、水とを含む二次電池セパレータ用コート材原料であって、
前記ピリチオン化合物の含有割合が、前記二次電池セパレータ用コート材原料に対して、0.001質量%以上5.0質量%以下であり、
pH値が、8.2以上である、二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項2】
前記バインダー樹脂が水分散された水分散液を含む、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項3】
前記バインダー樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位と、酸性基を有するビニルモノマーに由来する構成単位とを含む非水溶性ポリマーを含む、請求項1または2に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項4】
前記酸性基を有するビニルモノマーが、カルボキシ基含有ビニルモノマーである、請求項3に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項5】
pH値が、10.5以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料および無機粒子を含む、二次電池セパレータ用コート材。
【請求項7】
多孔膜と、
前記多孔膜の少なくとも片面に配置される請求項6に記載のセパレータ用コート材の塗布膜とを備える、二次電池セパレータ。
【請求項8】
正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置される請求項7に記載される二次電池セパレータとを備える、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータおよび二次電池に関する。詳しくは、本発明は、二次電池セパレータ用コート材原料、その二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材、その二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える二次電池セパレータ、および、その二次電池セパレータを備える二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池内には、正極と負極とを隔離し、電解液中のイオンを通過させるためのセパレータが備えられている。
【0003】
このようなセパレータとしては、例えば、ポリオレフィン多孔膜が知られている。
【0004】
一方、セパレータの表面には、耐熱性を付与する観点から、コート層が設けられる場合がある。
【0005】
このようなコート層を形成する材料として、例えば、バインダーとイソチアゾリン系化合物とを含む二次電池正極用水系バインダー組成物が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2012/029839号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の二次電池正極用水系バインダー組成物は、イソチアゾリン系化合物を含んでいるため、防腐性に優れる。
【0008】
一方、コート層を形成する材料には、目的および用途に応じて、貯蔵安定性が要求される場合がある。
【0009】
特許文献1の二次電池正極用水系バインダー組成物は、イソチアゾリン系化合物を含むため、貯蔵安定性が低下するという不具合がある。
【0010】
本発明は、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる二次電池セパレータ用コート材原料、その二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材、その二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える二次電池セパレータ、および、その二次電池セパレータを備える二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明[1]は、バインダー樹脂と、ピリチオン化合物と、水とを含む二次電池セパレータ用コート材原料であって、前記ピリチオン化合物の含有割合が、前記二次電池セパレータ用コート材原料に対して、0.001質量%以上5.0質量%以下であり、pH値が、8.2以上である、二次電池セパレータ用コート材原料である。
【0012】
本発明[2]は、前記バインダー樹脂が水分散された水分散液を含む、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含んでいる。
【0013】
本発明[3]は、前記バインダー樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位と、酸性基を有するビニルモノマーに由来する構成単位とを含む非水溶性ポリマーを含む、上記[1]または[2]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含んでいる。
【0014】
本発明[4]は、前記酸性基を有するビニルモノマーが、カルボキシ基含有ビニルモノマーである、上記[3]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含んでいる。
【0015】
本発明[5]は、pH値が、10.5以下である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含んでいる。
【0016】
本発明[6]は、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料および無機粒子を含む、二次電池セパレータ用コート材を含んでいる。
【0017】
本発明[7]は、多孔膜と、前記多孔膜の少なくとも片面に配置される請求項6に記載のセパレータ用コート材の塗布膜とを備える、二次電池セパレータを含んでいる。
【0018】
本発明[8]は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置される上記[7]に記載される二次電池セパレータとを備える、二次電池を含んでいる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、所定の割合で、ピリチオン化合物を含む。また、二次電池セパレータ用コート材原料のpH値は所定の値である。そのため、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる。
【0020】
本発明の二次電池セパレータ用コート材は、本発明の二次電池セパレータ用コート材原料を含む。そのため、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる。
【0021】
本発明の二次電池セパレータは、本発明の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える。そのため、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる。
【0022】
本発明の二次電池は、本発明の二次電池セパレータを備える。そのため、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<二次電池セパレータ用コート材原料>
二次電池セパレータ用コート材原料は、バインダー樹脂と、ピリチオン化合物と、水とを含む。すなわち、二次電池セパレータ用コート材原料は、水分散液として調製されている。
【0024】
[バインダー樹脂]
バインダー樹脂は、無機粒子(後述)が塗布膜(後述)から、脱離しないように結着するとともに、多孔膜(後述)と塗布膜(後述)とを接着するための成分(結着材)である。このような結着材であれば、バインダー樹脂としては、特に限定されない。
【0025】
バインダー樹脂は、必須成分として、非水溶性ポリマーを含み、任意成分として、水溶性ポリマーを含む。
【0026】
(非水溶性ポリマー)
非水溶性ポリマーは、非水溶性ポリマー原料を重合してなる重合体である。
【0027】
なお、非水溶性ポリマーとは、一旦乾燥させたポリマーを、水100mlに対し1gを24時間撹拌溶解させた後、300メッシュの金網でろ過した場合において、残存固形分が90%以上であるポリマーと定義される。
【0028】
非水溶性ポリマー原料は、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび酸性基を有するビニルモノマーを含む。つまり、非水溶性ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位と、酸性基を有するビニルモノマーに由来する構成単位とを含む。なお、(メタ)アクリルは、メタクリルおよび/アクリルである。
【0029】
非水溶性ポリマーが、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位と、酸性基を有するビニルモノマーに由来する構成単位とを含めば、二次電池セパレータ用コート材に使用した際の耐熱性に優れる。
【0030】
{(メタ)アクリル酸アルキルエステル}
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数1~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。炭素数1~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、炭素数1~4のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレート、および、炭素数5~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。炭素数1~4のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、および、t-ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。炭素数5~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、および、オクタデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、炭素数1~4のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、より好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、および、n-ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、さらに好ましくは、メチルメタクリレート、および、n-ブチルアクリレートが挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0033】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、52質量部以上、また、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0034】
{酸性基を有するビニルモノマー}
酸性基を有するビニルモノマーとして、例えば、カルボキシ基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマー、および、リン酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0035】
カルボキシ基含有ビニルモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能であり、カルボキシ基を含有するビニルモノマーである。
【0036】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、または、これらの塩が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、および、無水フマル酸が挙げられる。
【0037】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、モノカルボン酸が挙げられる。カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、より好ましくは、(メタ)アクリル酸が挙げられる。カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、さらに好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
【0038】
スルホン酸基含有ビニルモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能であり、スルホン酸基を含有するビニルモノマーである。
【0039】
スルホン酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、および、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸が挙げられる。また、スルホン酸基含有ビニルモノマーには、その塩が含まれる。スルホン酸基含有ビニルモノマーの塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、および、アンモニウム塩が挙げられる。具体的には、例えば、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、および、メタリルスルホン酸アンモニウムが挙げられる。
【0040】
リン酸基含有ビニルモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能であり、リン酸基を含有するビニルモノマーである。
【0041】
リン酸基含有ビニルモノマーとして、例えば、2-メタクロイロキシエチルアシッドフォスフェートが挙げられる。
【0042】
酸性基を有するビニルモノマーとして、二次電池セパレータ用コート材に使用した際の耐熱性の観点から、好ましくは、カルボキシ基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0043】
酸性基を有するビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0044】
酸性基を有するビニルモノマーの含有割合は、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、1.0質量部以上、好ましくは、3.0質量部以上、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、7.0質量部以下である。
【0045】
{非水溶性-共重合性モノマー}
また、非水溶性ポリマー原料は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび酸性基を有するビニルモノマーと共重合可能な共重合性モノマー(以下、非水溶性-共重合性モノマーと称する。)を含有することができる。
【0046】
非水溶性-共重合性モノマーとしては、例えば、官能基含有ビニルモノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニルモノマー、N-置換不飽和カルボン酸アミド、複素環式ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、α-オレフィン類、ジエン類、および、架橋性ビニルモノマーが挙げられる。
【0047】
官能基含有ビニルモノマー(酸性基を有するビニルモノマーを除く。)としては、例えば、水酸基含有ビニルモノマー、アミノ基含有ビニルモノマー、グリシジル基含有ビニルモノマー、シアノ基含有ビニルモノマー、および、アセトアセトキシ基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0048】
水酸基含有ビニルモノマーとして、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有ビニルモノマーとして、より好ましくは、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0049】
アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(N-メチルアミノ)エチル、および、(メタ)アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルが挙げられる。
【0050】
グリシジル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0051】
シアノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。シアノ基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、アクリロニトリルが挙げられる。
【0052】
アセトアセトキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチルが挙げられる。
【0053】
官能基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、水酸基含有ビニルモノマーおよびシアノ基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0054】
官能基含有ビニルモノマーの含有割合は、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、25質量部以上、好ましくは、35質量部以上、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0055】
とりわけ、水酸基含有ビニルモノマーの含有割合は、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、7質量部以下である。
【0056】
また、シアノ基含有ビニルモノマーの含有割合は、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0057】
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、および、プロピオン酸ビニルが挙げられる。
【0058】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、および、クロロスチレンが挙げられる。
【0059】
N-置換不飽和カルボン酸アミドとしては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが挙げられる。N-置換不飽和カルボン酸アミドとして、好ましくは、N-メチロールアクリルアミドが挙げられる。
【0060】
N-置換不飽和カルボン酸アミドの含有割合は、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0061】
複素環式ビニル化合物としては、例えば、ビニルピロリドンが挙げられる。
【0062】
ハロゲン化ビニリデン化合物としては、例えば、塩化ビニリデン、および、フッ化ビニリデンが挙げられる。
【0063】
α-オレフィン類としては、例えば、エチレン、および、プロピレンが挙げられる。
【0064】
ジエン類としては、例えば、ブタジエンが挙げられる。
【0065】
架橋性ビニルモノマーとしては、例えば、2つ以上のビニル基を含有するビニルモノマーが挙げられる。2つ以上のビニル基を含有するビニルモノマーとしては、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコール鎖含有ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、および、ペンタエリストールテトラアクリレートが挙げられる。
【0066】
非水溶性-共重合性モノマーとして、好ましくは、官能基含有ビニルモノマーおよびN-置換不飽和カルボン酸アミドが挙げられる。
【0067】
非水溶性-共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0068】
非水溶性-共重合性モノマーの含有割合は、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上、また、例えば、60質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、45質量部以下である。
【0069】
そして、非水溶性ポリマーは、非水溶性ポリマー原料を、後述する方法で、重合することにより得られる。
【0070】
このような非水溶性ポリマーは、水溶性ポリマーに対して、相対的に、疎水性を有する。
【0071】
(水溶性ポリマー)
水溶性ポリマーは、水溶性ポリマー原料を重合してなる重合体である。
【0072】
なお、水溶性ポリマーとは、一旦乾燥させたポリマーを、水100mlに対し1gを24時間撹拌溶解させた後、300メッシュの金網でろ過した場合において、残存固形分が0.1%以下であるポリマーと定義される。
【0073】
水溶性ポリマー原料は、例えば、メタクリルアミドおよびカルボキシ基含有ビニルモノマーを含む。
【0074】
{メタクリルアミド}
メタクリルアミドは、アクリルアミドと併用されていてもよく、また、メタクリルアミドが、アクリルアミドと併用されることなく、単独で使用されていてもよい。好ましくは、メタクリルアミドは、アクリルアミドと併用されることなく、単独で使用される。
【0075】
メタクリルアミドの含有割合は、水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、65質量部以上、また、例えば、85質量部以下、好ましくは、75質量部以下である。
【0076】
{カルボキシ基含有ビニルモノマー}
カルボキシ基含有ビニルモノマーは、メタクリルアミドと共重合可能であり、カルボキシ基を含有するビニルモノマーである。
【0077】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、例えば、上記した非水溶性ポリマーで詳述したカルボキシ基含有ビニルモノマーが挙げられる。カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、モノカルボン酸が挙げられる。カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、より好ましくは、(メタ)アクリル酸が挙げられる。カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、さらに好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
【0078】
カルボキシ基含有ビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0079】
カルボキシ基含有ビニルモノマーの含有割合は、水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、15質量部以上、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0080】
{水溶性-共重合性モノマー}
水溶性ポリマー原料は、メタクリルアミドおよびカルボキシ基含有ビニルモノマーと共重合可能な共重合性モノマー(以下、水溶性-共重合性モノマーと称する。)を含むこともできる。
【0081】
水溶性-共重合性モノマーとしては、例えば、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、上記官能基含有ビニルモノマー、上記酸性基を有するビニルモノマー(カルボキシ基含有ビニルモノマーを除く。)、上記ビニルエステル類、上記芳香族ビニルモノマー、上記N-置換不飽和カルボン酸アミド、上記複素環式ビニル化合物、上記ハロゲン化ビニリデン化合物、上記α-オレフィン類、上記ジエン類、および、上記架橋性ビニルモノマーが挙げられる。
【0082】
水溶性-共重合性モノマーとして、好ましくは、官能基含有ビニルモノマーが挙げられる。水溶性-共重合性モノマーとして、より好ましくは、水酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。水溶性-共重合性モノマーとして、さらに好ましくは、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0083】
水溶性-共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0084】
水溶性-共重合性モノマーの含有割合は、水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
【0085】
(バインダー樹脂の製造方法)
バインダー樹脂が、非水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーを含む場合において、バインダー樹脂の製造方法として、例えば、非水溶性ポリマー原料を重合し、非水溶性ポリマーを得た後に、非水溶性ポリマー存在下で、水溶性ポリマー原料を重合する方法(第1方法)、水溶性ポリマー原料を重合し、水溶性ポリマーを得た後に、水溶性ポリマー存在下で、非水溶性ポリマー原料を重合する方法(第2方法)が挙げられる。バインダー樹脂の製造方法として、好ましくは、第1方法が挙げられる。
【0086】
第1方法は、非水溶性ポリマー原料を重合して、非水溶性ポリマー得る第1工程と、非水溶性ポリマーの存在下で、水溶性ポリマー原料を重合して、水溶性ポリマーを得る第2工程とを備える。
【0087】
第1工程では、非水溶性ポリマー原料を重合する。
【0088】
具体的には、水に、非水溶性ポリマー原料および重合開始剤を配合し、水中において、非水溶性ポリマー原料を重合する。
【0089】
重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、水溶性開始剤、油溶性開始剤、および、レドックス系開始剤が挙げられる。水溶性開始剤としては、例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム)、過酸化水素、および、有機ハイドロパーオキサイド、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)酸が挙げられる。油溶性開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、および、アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
【0090】
重合開始剤として、好ましくは、水溶性開始剤が挙げられる。重合開始剤として、より好ましくは、過硫酸塩が挙げられる。重合開始剤として、さらに好ましくは、過硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0091】
重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0092】
重合開始剤の配合割合は、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、0.2質量部以上、さらに好ましくは、0.4質量部以上、また、例えば、3質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0093】
重合温度は、常圧下において、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上、また、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0094】
また、非水溶性ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、必要に応じて、乳化剤(界面活性剤)を配合することができる。
【0095】
乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤として、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸塩など)、脂肪族スルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、および、ラウリル硫酸アンモニウムが挙げられる。ノニオン性界面活性剤として、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、および、アルキルエーテル型が挙げられる。
【0096】
乳化剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0097】
また、非水溶性ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、公知の添加剤を適宜の割合で配合することができる。
【0098】
添加剤として、例えば、pH調整剤、金属イオン封止剤、および、分子量調節剤(連鎖移動剤)が挙げられる。金属イオン封止剤として、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびその塩が挙げられる。分子量調節剤(連鎖移動剤)として、例えば、メルカプタン類および低分子ハロゲン化合物が挙げられる。
【0099】
また、非水溶性ポリマーの重合前または非水溶性ポリマーの重合後には、中和剤(例えば、アンモニア)を配合し、pHを7以上11以下の範囲に調整することもできる。
【0100】
これにより、非水溶性ポリマー原料が重合され、非水溶性ポリマーが得られる。
【0101】
また、このような非水溶性ポリマーは、水に分散された水分散液として得られる。
【0102】
非水溶性ポリマーの水分散液において、非水溶性ポリマーの固形分濃度は、例えば、5質量%以上、また、例えば、50質量%以下である。
【0103】
第2工程では、非水溶性ポリマー存在下で、水溶性ポリマー原料を重合する。
【0104】
具体的には、非水溶性ポリマーを含む水分散液に、水溶性ポリマー原料および上記した重合開始剤を配合し、その後、好ましくは、エージングする。
【0105】
重合開始剤として、特に制限されないが、上記した非水溶性ポリマー原料の重合において詳述した重合開始剤が挙げられる。重合開始剤として、好ましくは、水溶性開始剤が挙げられる。重合開始剤として、より好ましくは、過硫酸塩が挙げられる。重合開始剤として、さらに好ましくは、過硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0106】
重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0107】
重合開始剤の配合割合は、水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、また、例えば、5質量部以下である。
【0108】
重合温度は、常圧下において、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上、また、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0109】
エージング温度は、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。エージング時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上、また、例えば、6時間以下、好ましくは、3時間以下である。
【0110】
水溶性ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、必要に応じて、上記した乳化剤(界面活性剤)および上記添加剤を適宜の割合で配合することができる。
【0111】
また、水溶性ポリマーの重合前または水溶性ポリマーの重合後には、アンモニアなどの中和剤を配合し、pHを7以上11以下の範囲に調整することもできる。
【0112】
これにより、水溶性ポリマー原料が重合され、水溶性ポリマーが得られる。
【0113】
これにより、非水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーを含むバインダー樹脂が得られる。そして、このようなバインダー樹脂は、水分散された水分散液として得られる。つまり、バインダー樹脂の水分散液が得られる。
【0114】
二次電池セパレータ用コート材原料が、バインダー樹脂の水分散液を含むと、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性を向上させることができる。
【0115】
また、バインダー樹脂の水分散液において、好ましくは、非水溶性ポリマーのエマルションが分散されるとともに、水溶性ポリマーが溶解している。
【0116】
また、このようなバインダー樹脂において、水溶性ポリマーの含有割合は、非水溶性ポリマー100質量部に対して、例えば、0質量部以上、好ましくは、10質量部以上、また、例えば、900質量部以下、好ましくは、500質量部以下である。
【0117】
また、バインダー樹脂の含有割合は、二次電池セパレータ用コート材原料に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0118】
[ピリチオン化合物]
ピリチオン化合物は、二次電池セパレータ用コート材原料に防腐性を付与する成分である。
【0119】
ピリチオン化合物として、例えば、ゾディウムピリチオン(ピリチオンナトリウム)およびジンクピリチオンが挙げられる。
【0120】
ピリチオン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0121】
ピリチオン化合物の含有割合は、二次電池セパレータ用コート材原料に対して、0.001質量%以上、好ましくは、0.01質量%以上、また、5.0質量%以下、好ましくは、3.0質量%以下、より好ましくは、1.0質量%以下である。
【0122】
ピリチオン化合物の含有割合が、上記下限以上であれば、防腐性および貯蔵安定性が向上する。
【0123】
一方、ピリチオン化合物の含有割合が、上記下限未満であれば、防腐性および貯蔵安定性が低下する。
【0124】
また、ピリチオン化合物の含有割合が、上記上限以下であれば、貯蔵安定性が向上する。
【0125】
一方、ピリチオン化合物の含有割合が、上記上限を超過すると、貯蔵安定性が低下する。
【0126】
(その他の成分)
二次電池セパレータ用コート材原料は、必要により、上記した非水溶性ポリマーを重合する際に配合される添加剤、および、上記した水溶性ポリマーを重合する際に配合される添加剤を適宜の割合で含む。
【0127】
また、二次電池セパレータ用コート材原料は、好ましくは、実質的に、他の防腐剤、とりわけ、イソチアゾリン化合物(例えば、ベンズイソチアゾリン、メチルイソチアゾリン)を含まない。
【0128】
二次電池セパレータ用コート材原料が、実質的に、他の防腐剤を含まなければ、貯蔵安定性をより一層向上できる。
【0129】
なお、二次電池セパレータ用コート材原料が、実質的に、他の防腐剤を含まないとは、他の防腐剤の含有割合が、二次電池セパレータ用コート材原料に対して、例えば、1質量%以下、好ましくは、0.1質量%以下、より好ましくは、0.01質量%以下、さらに好ましくは、0.001質量%以下、とりわけ好ましくは、0.0001質量%以下、特に好ましくは、0質量%であることを意味する。
【0130】
[二次電池セパレータ用コート材原料の調製]
二次電池セパレータ用コート材原料は、バインダー樹脂の水分散液(バインダー樹脂および水)と、ピリチオン化合物とを混合することにより調製される。
【0131】
具体的には、まず、バインダー樹脂に、水を添加し、バインダー樹脂の水分散液を調製した後、公知の塩基(例えば、アンモニア)を添加することにより、バインダー樹脂の水分散液のpH値を所定の値に調整した後、バインダー樹脂の水分散液に、ピリチオン化合物を添加する。
【0132】
得られる二次電池セパレータ用コート材原料のpH値は、8.2以上、好ましくは、8.7以上、また、例えば、14.0以下、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは、10.5以下、より好ましくは、10.0以下である。
【0133】
上記pH値が、上記下限以上であれば、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性が向上する。
【0134】
一方、pH値が、上記下限未満であれば、防腐性および貯蔵安定性が低下する。
【0135】
そして、このような二次電池セパレータ用コート材原料は、とりわけ、二次電池セパレータ用コート材の原料として、好適に用いることができる。
【0136】
<二次電池セパレータ用コート材>
二次電池セパレータ用コート材は、二次電池セパレータ用コート材原料と、無機粒子とを含む。
【0137】
無機粒子としては、例えば、酸化物、窒化物、炭化物、硫酸物、水酸化物、および、チタン酸カリウムが挙げられる。酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、および、酸化鉄が挙げられる。窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化チタン、および、窒化ホウ素が挙げられる。炭化物としては、例えば、シリコンカーバイド、および、炭酸カルシウムが挙げられる。硫酸物としては、例えば、硫酸マグネシウム、および、硫酸アルミニウムが挙げられる。水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、および、水酸化酸化アルミニウムが挙げられる。ケイ酸物としては、例えば、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、および、ガラスが挙げられる。
【0138】
無機粒子の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上、また、例えば、5μm以下、好ましくは、1μm以下である。
【0139】
無機粒子の平均粒子径の測定方法は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により粒子径分布曲線を作成し、50質量%相当粒子径を算出することにより求めることができる。
【0140】
無機粒子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0141】
無機粒子の配合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して、例えば、1000質量部以上、また、例えば、10000質量部以下、好ましくは、5000質量部以下である。
【0142】
そして、二次電池セパレータ用コート材を製造するには、まず、水に、無機粒子、および、必要により、分散剤を配合し、無機粒子分散液を調製する。分散剤を配合する場合には、二次電池セパレータ用コート材は、分散剤を含む。
【0143】
分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウムが挙げられる。
【0144】
分散剤の配合割合は、無機粒子100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0145】
分散剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0146】
次いで、無機粒子分散液に、二次電池セパレータ用コート材原料を配合し、撹拌する。
【0147】
撹拌方法は、特に限定されず、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、および、撹拌羽根が挙げられる。
【0148】
また、二次電池セパレータ用コート材には、必要により、親水性樹脂、湿潤剤、消泡剤、pH調製剤などの添加剤を、適宜の割合で配合することができる。つまり、二次電池セパレータ用コート材は、必要により、添加剤を含む。
【0149】
これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0150】
これにより、二次電池セパレータ用コート材が得られる。また、このような二次電池セパレータ用コート材は、水に分散された分散液として得られる。
【0151】
二次電池セパレータ用コート材の分散液の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上、また、例えば、50質量%以下である。
【0152】
二次電池セパレータ用コート材は、上記二次電池セパレータ用コート材原料を含む。そのため、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる。そして、このような二次電池セパレータ用コート材は、とりわけ、二次電池セパレータの製造において、好適に用いることができる。
【0153】
<二次電池セパレータ>
二次電池セパレータは、多孔膜と、多孔膜の少なくとも片面に配置される二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備える。
【0154】
[多孔膜]
多孔膜としては、例えば、ポリオレフィン多孔膜、および、芳香族ポリアミド多孔膜が挙げられる。ポリオレフィン多孔膜としては、例えば、ポリエチレン多孔膜およびポリプロピレン多孔膜が挙げられる。多孔膜として、好ましくは、ポリオレフィン多孔膜が挙げられる。多孔膜は、必要に応じて、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理およびプラズマ処理が挙げられる。
【0155】
多孔膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、また、例えば、40μm以下、好ましくは、20μm以下である。
【0156】
[塗布膜]
塗布膜は、多孔膜に耐熱性を付与するための耐熱層である。塗布膜は、二次電池セパレータ用コート材からなる。
【0157】
塗布膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上、また、例えば、10μm以下、好ましくは、8μm以下である。
【0158】
[二次電池セパレータの製造方法]
二次電池セパレータの製造方法は、多孔膜を準備する第3工程、および、多孔膜の少なくとも片面に、セパレータ用コート材を塗布する第4工程を備える。
【0159】
(第3工程)
第3工程では、多孔膜を準備する。
【0160】
第4工程では、多孔膜の少なくとも片面に、二次電池セパレータ用コート材(セパレータ用コート材の分散液)を塗布し、その後、必要により、乾燥させ、これにより塗布膜を得る。
【0161】
塗布方法としては、特に制限がなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、マイクログラビアコート法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、および、スプレー塗布法が挙げられる。
【0162】
乾燥温度は、例えば、40℃以上、また、例えば、80℃以下である。
【0163】
これにより、多孔膜と、多孔膜の少なくとも片面に配置される上記した二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備えた二次電池セパレータが製造される。
【0164】
なお、上記した説明では、多孔膜の少なくとも片面に、二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を配置したが、多孔膜の両面に、上記の塗布膜を配置することもできる。
【0165】
この二次電池セパレータは、上記した二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える。そのため、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる。そして、このような二次電池セパレータ料は、とりわけ、二次電池の製造において、好適に用いることができる。
【0166】
<二次電池>
二次電池は、正極と、負極と、正極および負極の間に配置される上記の二次電池セパレータと、正極、負極および上記の二次電池セパレータに含浸される電解質とを備える。
【0167】
正極としては、例えば、正極用集電体と、正極用集電体に積層される正極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0168】
正極用集電体としては、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスの導電材料が挙げられる。
【0169】
正極活物質としては、特に制限されないが、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有リン酸塩、リチウム含有硫酸塩などの公知の正極活物質が挙げられる。
【0170】
これら正極活物質は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0171】
負極としては、例えば、負極用集電体と、負極用集電体に積層される負極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0172】
負極用集電体としては、例えば、銅やニッケルの導電材料が挙げられる。
【0173】
負極活物質としては、特に制限されないが、炭素活物質が挙げられる。炭素活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボンが挙げられる。
【0174】
これら負極活物質は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0175】
電解質として、二次電池として、リチウムイオン電池が採用される場合には、例えば、リチウム塩が、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などのカーボネート化合物に溶解された溶液が挙げられる。
【0176】
そして、二次電池を製造するには、例えば、二次電池のセパレータを、正極と、負極との間に挟み込み、これらを電池筐体(セル)に収容して、電解質を電池筐体に注入する。これにより、二次電池を得ることができる。
【0177】
上記の二次電池は、上記の二次電池セパレータを備えているため、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる。
【0178】
<作用効果>
二次電池セパレータ用コート材原料は、所定の割合で、ピリチオン化合物を含む。また、二次電池セパレータ用コート材原料のpH値は所定の値である。そのため、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる。
【0179】
二次電池セパレータ用コート材は、上記二次電池セパレータ用コート材原料を含む。そのため、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる。
【0180】
二次電池セパレータは、上記二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える。そのため、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる。
【0181】
二次電池は、上記二次電池セパレータを備える。そのため、防腐性に優れるとともに、貯蔵安定性に優れる。
【0182】
<変形例>
上記した説明では、バインダー樹脂は、非水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーを含むが、上記したように、バインダー樹脂は、結着材であれば、特に限定されない。
【0183】
具体的には、バインダー樹脂は、水溶性ポリマーを含まず、非水溶性ポリマーのみを含んでもよい。このような場合には、好ましくは、バインダー樹脂は、非水溶性ポリマーの水分散液として調製される。
【0184】
また、バインダー樹脂は、非水溶性ポリマーを含まず、水溶性ポリマーのみを含んでもよい。このような場合には、バインダー樹脂は、水溶性ポリマーの水溶液として調製される。
【0185】
また、上記非水溶性ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を必須として含む(メタ)アクリル重合体であるが、例えば、非水溶性ポリマーとして、共役ジエン系重合体を選択することもできる。
【0186】
共役ジエン系重合体として、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン系重合体(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン系重合体(NBR)、水素化SBR、および、水素化NBRが挙げられる。
【0187】
非水溶性ポリマーが、共役ジエン系重合体である場合には、好ましくは、バインダー樹脂は、水溶性ポリマーを含まず、非水溶性ポリマー(共役ジエン系重合体)からなる。
【実施例0188】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0189】
<バインダー樹脂の製造>
製造例1
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに、蒸留水を360.9質量部仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで、過硫酸アンモニウムを0.5質量部添加してから、下記非水溶性ポリマー原料、乳化剤および水を3時間かけて連続的に添加した。次いで、3時間保持して、アンモニア水にてpH7.0に調整して、重合を完結させた。その後、水を適量加え、非水溶性ポリマーを含む水分散液(固形分濃度20.0質量%)を得た。
(非水溶性ポリマー原料)
n-ブチルアクリレート 45.0質量部
アクリロニトリル 35.0質量部
メチルメタクリレート 8.0質量部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 5.0質量部
メタクリル酸 5.0質量部
N-メチロールアクリルアミド 2.0質量部
ラウリル硫酸アンモニウム 0.4質量部
蒸留水 40.0質量部
次いで、非水溶性ポリマーを含む水分散液500質量部に、蒸留水を40質量部仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで、過硫酸アンモニウムを0.5部添加してから、下記水溶性ポリマー原料および水の混合物を攪拌しながら2時間かけて連続的に添加した後、同温度で2時間エージングした。その後、アンモニア水にてpH7.0に調整して、重合を完結させた。その後、水を適量加え、非水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーを含む水分散液(固形分濃度20.0質量%)を得た。
(水溶性ポリマー原料)
メタクリルアミド 17.5質量部
メタクリル酸 5.0質量部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 2.5質量部
蒸留水 52.5質量部
【0190】
<二次電池セパレータ用コート材原料の製造>
実施例1~実施例5、および、比較例1~比較例6
バインダー樹脂の水分散液に、アンモニア水を加え、pH値を表1に記載の値に調整した。その後、バインダー樹脂の水分散液に、ピリチオン化合物を配合した。これにより、二次電池セパレータ用コート材原料を製造した。二次電池セパレータ用コート材原料のpH値は、表1に記載の値と同じであった。
【0191】
但し、各成分の配合処方は、表1に従った。なお、表1に記載の値は、各成分の固形分の値である。また、比較例4および比較例5では、ピリチオン化合物に代えて、イソチアゾリン化合物を添加した。
【0192】
<評価>
[防腐性]
各実施例および各比較例の二次電池セパレータ用コート材原料について、防腐性を測定した。具体的には、各実施例および比較例の二次電池セパレータ用コート材原料を、約70℃の蒸留水で希釈し、0.25%の液を調製した。その希釈液に対して、微生物数が107個/mL以上の細菌懸濁液を0.2%添加し、滅菌済み割り箸で撹拌した。この際、同じ割り箸は異なる乳化液の撹拌に使用しなかった。37℃の恒温条件下で48時間培養し、培養後の乳化液に微生物測定器具(三愛石油社製、サンアイバイオチェッカーTTC)を浸漬させ、培地面に乳化液を付与した。乳化液を付与させた微生物測定器具を30℃の恒温条件下で48時間培養させた。培養後に微生物測定器具の培地面上の菌数を読み取った。防腐性について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
〇:微生物数が10個/mL未満
×:微生物数が10個/mL以上
【0193】
[貯蔵安定性]
各実施例および各比較例の二次電池セパレータ用コート材原料の粘度(保管前の粘度)を以下の手順で測定した。次いで、二次電池セパレータ用コート材原料を40℃で半年間保管し、その後、再度、粘度(保管後の粘度)を測定した。
【0194】
次いで、下記式(1)に基づいて、粘度変化率を算出した。
粘度変化率(ΔmPa・s/月)=(保管後の粘度-保管前の粘度)/6
【0195】
貯蔵安定性について、以下の基準に基づいて、評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
〇:粘度変化率が70以下であった。
×:粘度変化率が70を超過した。
(粘度測定)
二次電池セパレータ用コート材原料300gを1Lのディスポーザブルカップに入れ、アルミホイルでキャップした。次いで、これを25℃恒温槽に入れ、25℃になるまで放置した。次いで、アンカータイプのパドルを取り付けた撹拌機を用い、二次電池セパレータ用コート材原料を200rpmで10分間攪拌した。攪拌後、気泡が出ないようにゆっくりビーカーに移し、BMタイプの粘度計にて60rpmで直ちに粘度を測定した。
【0196】
【表1】