(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138046
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】設置角算出装置、設置角算出方法、及び設置角算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G01P 21/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G01P21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044536
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徳祥
(72)【発明者】
【氏名】牧戸 知史
(72)【発明者】
【氏名】武藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】宮島 朗
(72)【発明者】
【氏名】宝地 卓
(57)【要約】
【課題】路面の傾斜に関わらず、慣性計測装置のロール、ピッチ、及びヨーの各々の方向における設置角を精度よく算出する。
【解決手段】IMUの出力に基づいて当該IMUのピッチ方向のピッチ姿勢角及びロール方向のロール姿勢角を推定する姿勢角推定部40と、推定したピッチ姿勢角及びロール姿勢角を用いて算出した当該IMUのピッチ方向のピッチ設置角及びヨー方向のヨー設置角に基づいて、当該IMUの出力を、当該IMUのX軸を車体のX軸に一致させた場合の状態に補正する補正部44と、補正した当該IMUの出力に基づいて算出した重力加速度成分から水平面に対する当該IMUのY軸の角度である第1ロール角を算出し、水平面に対する車体のY軸の角度である第2ロール角を算出する車体ロール角算出部46と、第1ロール角と第2ロール角とを比較して当該IMUのロール方向の設置角を算出するロール設置角算出部48と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性計測装置の出力に基づいて水平面に対する前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ姿勢角及びロール方向のロール姿勢角を推定する姿勢角推定部と、
前記ピッチ姿勢角及び前記ロール姿勢角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力に基づいて前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ設置角及びヨー方向のヨー設置角の各々を算出するピッチ・ヨー設置角算出部と、
前記水平面に対する車体のY軸の角度である車体ロール角を算出する車体ロール角算出部と、
前記ピッチ・ヨー設置角算出部で算出した前記慣性計測装置のピッチ設置角及びヨー設置角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力から算出した前記水平面に対する前記慣性計測装置のY軸の角度である慣性計測装置ロール角と、前記車体ロール角と、を比較して前記慣性計測装置のロール方向の設置角を算出するロール設置角算出部と、
を含む設置角算出装置。
【請求項2】
前記車体のY軸方向に平行して、所定以上の距離を隔てて各々が同じ高さに設置され、衛星からの測位情報を各々取得可能な第1アンテナ、及び第2アンテナを含み、
前記車体ロール角算出部は、前記第1アンテナ、及び前記第2アンテナの各々で取得した測位情報により、前記第1アンテナと前記第2アンテナと間の相対測位演算を行うことで、前記車体ロール角を算出する請求項1に記載の設置角算出装置。
【請求項3】
前記車体の前方及び後方のいずれかの画像を取得する撮像装置を含み、
前記車体ロール角算出部は、前記撮像装置で取得した画像から抽出した建造物の鉛直方向のエッジの集合が示すベクトルと、前記画像の傾きを示す前記画像のフレームの縦方向に平行なベクトルとのなす角を前記車体ロール角として算出する請求項1に記載の設置角算出装置。
【請求項4】
前記姿勢角推定部は、前記慣性計測装置の加速度出力に基づき、前記水平面に対する前記慣性計測装置の前記ピッチ姿勢角及び前記ロール姿勢角を推定する請求項1~3のいずれか1項に記載の設置角算出装置。
【請求項5】
ロール設置角算出部は、前記ピッチ設置角及び前記ヨー設置角に基づいて、前記慣性計測装置の出力を、前記慣性計測装置のX軸を車体のX軸に一致させた場合の状態に補正する請求項1~4のいずれか1項に記載の設置角算出装置。
【請求項6】
前記車体の旋回状態及び加減速に基づいて前記車体の運動状態を判定する運動状態判定部をさらに備え、
前記ピッチ・ヨー設置角算出部は、前記運動状態判定部が前記車体が直進運動かつ加減速大と判定した場合に、前記慣性計測装置の加速度出力から、前記ピッチ姿勢角及び前記ロール姿勢角を含む重力加速度成分を控除して得た並進加速度成分のZ軸方向の成分を、前記並進加速度成分のX軸方向の成分で除算して得た商の逆正接として前記ピッチ設置角を算出すると共に、前記並進加速度成分のY軸方向の成分を、前記並進加速度成分のX軸方向の成分の2乗と、前記並進加速度成分のZ軸方向の成分の2乗との和の平方根で除算して得た商の逆正接として前記ヨー設置角を算出する請求項5に記載の設置角算出装置。
【請求項7】
前記ロール設置角算出部は、前記補正した前記慣性計測装置の出力に基づいて算出した重力加速度成分のY軸方向の成分が前記慣性計測装置ロール角と重力加速度との積に近似することに基づいて前記慣性計測装置ロール角を算出する請求項1~6のいずれか1項に記載の設置角算出装置。
【請求項8】
慣性計測装置の出力に基づいて水平面に対する前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ姿勢角及びロール方向のロール姿勢角を推定する工程と、
前記ピッチ姿勢角及び前記ロール姿勢角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力に基づいて前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ設置角及びヨー方向のヨー設置角の各々を算出する工程と、
前記水平面に対する車体のY軸の角度である車体ロール角を算出する工程と、
前記ピッチ設置角及び前記ヨー設置角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力から算出した前記水平面に対する前記慣性計測装置のY軸の角度である慣性計測装置ロール角と、前記車体ロール角と、を比較して前記慣性計測装置のロール方向の設置角を算出する工程と
を含む設置角算出方法。
【請求項9】
コンピュータを、
慣性計測装置の出力に基づいて水平面に対する前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ姿勢角及びロール方向のロール姿勢角を推定する姿勢角推定部、前記ピッチ姿勢角及び前記ロール姿勢角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力に基づいて前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ設置角及びヨー方向のヨー設置角の各々を算出するピッチ・ヨー設置角算出部、前記水平面に対する車体のY軸の角度である車体ロール角を算出する車体ロール角算出部と、前記ピッチ・ヨー設置角算出部で算出した前記慣性計測装置のピッチ設置角及びヨー設置角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力から算出した前記水平面に対する前記慣性計測装置のY軸の角度である慣性計測装置ロール角と、前記車体ロール角と、を比較して前記慣性計測装置のロール方向の設置角を算出するロール設置角算出部として機能させる、設置角算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IMU(Inertial Measurement Unit)等の慣性計測装置の設置角算出装置、設置角算出方法、及び設置角算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に取り付けられた装置で計測したセンサ値は、車両に設置する位置や座標軸が想定とずれているために発生する誤差(設置角度、取り付け位置)が含まれるため、このような誤差を含むセンサ値を補正する技術がある。
【0003】
特許文献1には、車載装置の設置角度が変更された場合において車載装置による処理の精度を維持する取付け角度検出装置の発明が開示されている。特許文献1に記載の角度検出装置は、例えば車両が停止している場合、又は当該車両が一定速で走行している場合等の、当該車両の進行方向の加速度成分がゼロの場合における加速度センサの出力を積算し、平均化させた値を算出することにより、ピッチ姿勢角を算出する。
【0004】
また、特許文献2には、実走行状態において、電子機器の筐体の設置角度を算出することのできる設置角度算出装置の発明が開示されている。特許文献2に記載の角度算出装置は、車両が水平面上を走行していることを前提として、筐体の設置角度の候補を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4739378号公報
【特許文献2】特開2007-107951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2の各々に記載の技術は、いずれも水平面を走行していることを前提として推定を行っているので、勾配のある路面走行時は、設置角度の推定誤差が発生するという問題がある。
【0007】
図14(A)は車体200が水平面を走行している場合、
図14(B)は水平面64に対して2%(1.15度)程度の横断勾配を有する斜面62を車体200が走行している場合、を各々示した説明図である。
図14(A)、(B)において、車体200の水平面進行方向をX軸、車体200の中心部から水平面横方向をY軸、鉛直方向をZ軸としている。横断勾配αは、車体200のY軸方向における、水平面64に対する斜面62の傾斜である。また、ロール角φはX軸回りの、ピッチ角θはY軸回りの、ヨー角ψはZ軸回りの各々の角度である。
【0008】
一般の路面は水はけ等のために、完全な水平面となる場合は稀であり、ほとんどの場合、
図14(B)に示したような横断勾配αが存在する。横断勾配αは、車体200がX軸方向に走行するのであれば、車体200の進行方向に対する設置角度に相当するヨー角ψ及びピッチ角θの算出において無視できるので、水平面での走行を前提とした特許文献1及び特許文献2の各々に開示された装置でも車体200の進行方向に対する設置角度に相当するヨー角ψ及びピッチ角θは算出できる。しかしながら、
図14(B)に示したように、ロール角φは横断勾配αと同じ方向の角度を示すので、車体200に対してではなく水平面64を基準とした姿勢角を求める特許文献1及び特許文献2の各々に記載の技術では、ロール方向の設置角は算出できない。
【0009】
これは、車体座標系のX軸方向が水平面でなくても車両運動状態から基準とする軸方向が求められるのに対し、車体座標系のY軸方向は車体のロール角φで変化する場合に基準方向を定めるための情報が存在しないためである。従って、車体200に対する慣性計測装置のロール設置角は、水平面に対するロール角だけでは求められず、車体200のロール角の情報が必要となる。
【0010】
特許文献1では、水平面64を前提とすると、車体座標系のY軸方向が水平方向(車体のロール角が0)になるため、水平面に対するロール角を慣性計測装置の設置角と見なしていた。しかし、車体のロール角が0でない場合、この前提が崩れるため、慣性計測装置のロール設置角を求めることはできない。また、特許文献2に記載の技術では、ロール角についての記載が存在しない。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みて成されたものであり、路面の傾斜に関わらず、慣性計測装置のロール、ピッチ、及びヨーの各々の方向における設置角を精度よく算出することができる設置角算出装置、設置角算出方法、及び設置角算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に係る設置角算出装置は、慣性計測装置の出力に基づいて水平面に対する前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ姿勢角及びロール方向のロール姿勢角を推定する姿勢角推定部と、前記ピッチ姿勢角及び前記ロール姿勢角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力に基づいて前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ設置角及びヨー方向のヨー設置角の各々を算出するピッチ・ヨー設置角算出部と、前記水平面に対する車体のY軸の角度である車体ロール角を算出する車体ロール角算出部と、前記ピッチ・ヨー設置角算出部で算出した前記慣性計測装置のピッチ設置角及びヨー設置角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力から算出した前記水平面に対する前記慣性計測装置のY軸の角度である慣性計測装置ロール角と、前記車体ロール角と、を比較して前記慣性計測装置のロール方向の設置角を算出するロール設置角算出部と、を含む。
【0013】
請求項2に係る設置角算出装置は、前記車体のY軸方向に平行して、所定以上の距離を隔てて各々が同じ高さに設置され、衛星からの測位情報を各々取得可能な第1アンテナ、及び第2アンテナを含み、前記車体ロール角算出部は、前記第1アンテナ、及び前記第2アンテナの各々で取得した測位情報により、前記第1アンテナと前記第2アンテナと間の相対測位演算を行うことで、前記車体ロール角を算出する。
【0014】
請求項3に係る設置角算出装置は、前記車体の前方及び後方のいずれかの画像を取得する撮像装置を含み、前記車体ロール角算出部は、前記撮像装置で取得した画像から抽出した建造物の鉛直方向のエッジの集合が示すベクトルと、前記画像の傾きを示す前記画像のフレームの縦方向に平行なベクトルとのなす角を前記車体ロール角として算出する。
【0015】
請求項4に係る設置角算出装置は、前記姿勢角推定部は、前記慣性計測装置の加速度出力に基づき、前記水平面に対する前記慣性計測装置の前記ピッチ姿勢角及び前記ロール姿勢角を推定する。
【0016】
請求項5に係る設置角算出装置は、ロール設置角算出部は、前記ピッチ設置角及び前記ヨー設置角に基づいて、前記慣性計測装置の出力を、前記慣性計測装置のX軸を車体のX軸に一致させた場合の状態に補正する。
【0017】
請求項6に係る設置角算出装置は、前記車体の旋回状態及び加減速に基づいて前記車体の運動状態を判定する運動状態判定部をさらに備え、前記ピッチ・ヨー設置角算出部は、前記運動状態判定部が前記車体が直進運動かつ加減速大と判定した場合に、前記慣性計測装置の加速度出力から、前記ピッチ姿勢角及び前記ロール姿勢角を含む重力加速度成分を控除して得た並進加速度成分のZ軸方向の成分を、前記並進加速度成分のX軸方向の成分で除算して得た商の逆正接として前記ピッチ設置角を算出すると共に、前記並進加速度成分のY軸方向の成分を、前記並進加速度成分のX軸方向の成分の2乗と、前記並進加速度成分のZ軸方向の成分の2乗との和の平方根で除算して得た商の逆正接として前記ヨー設置角を算出する。
【0018】
請求項7に係る設置角算出装置は、前記ロール設置角算出部は、前記補正した前記慣性計測装置の出力に基づいて算出した重力加速度成分のY軸方向の成分が前記慣性計測装置ロール角と重力加速度との積に近似することに基づいて前記慣性計測装置ロール角を算出する。
【0019】
請求項8に係る設置角算出方法は、慣性計測装置の出力に基づいて水平面に対する前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ姿勢角及びロール方向のロール姿勢角を推定する工程と、前記ピッチ姿勢角及び前記ロール姿勢角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力に基づいて前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ設置角及びヨー方向のヨー設置角の各々を算出する工程と、前記水平面に対する車体のY軸の角度である車体ロール角を算出する工程と、前記ピッチ設置角及び前記ヨー設置角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力から算出した前記水平面に対する前記慣性計測装置のY軸の角度である慣性計測装置ロール角と、前記車体ロール角と、を比較して前記慣性計測装置のロール方向の設置角を算出する。
【0020】
請求項9に係る設置角算出プログラムは、コンピュータを、慣性計測装置の出力に基づいて水平面に対する前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ姿勢角及びロール方向のロール姿勢角を推定する姿勢角推定部、前記ピッチ姿勢角及び前記ロール姿勢角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力に基づいて前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ設置角及びヨー方向のヨー設置角の各々を算出するピッチ・ヨー設置角算出部、前記水平面に対する車体のY軸の角度である車体ロール角を算出する車体ロール角算出部と、前記ピッチ・ヨー設置角算出部で算出した前記慣性計測装置のピッチ設置角及びヨー設置角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力から算出した前記水平面に対する前記慣性計測装置のY軸の角度である慣性計測装置ロール角と、前記車体ロール角と、を比較して前記慣性計測装置のロール方向の設置角を算出するロール設置角算出部として機能させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の設置角算出装置、設置角算出方法、及び設置角算出プログラムによれば、路面の傾斜に関わらず、慣性計測装置のロール、ピッチ、及びヨーの各々の方向における設置角を精度よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る設置角算出装置の構成の一例を示したブロック図である。
【
図2】(A)は本発明の第1実施形態における第1GNSSアンテナ及び第2GNSSアンテナの配置の一例を示した概略図であり、(B)は第1GNSSアンテナ及び第2GNSSアンテナの一般的な配置の一例を示した概略図である。
【
図3】演算装置の具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る設置角算出装置の処理の流れの概略を示したブロック図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る設置角算出装置の処理の一例を示したフローチャートである。
【
図6】
図5のステップS100におけるピッチ・ヨー方向設置角推定の処理の一例を示したフローチャートである。
【
図7】交差点等における停車のための減速区間の重力加速度の影響を想定した場合において、IMUが備える加速度センサの出力における、車体の減速の影響と姿勢角の影響との関係の一例を表したグラフである。
【
図8】並進加速度成分の向きと水平面との関係を示した説明図である。
【
図9】本発明の第1実施形態の手法で推定するピッチ方向設置角を説明するための図である。
【
図10】(A)は、車体のヨー方向設置角にずれがある場合を、(B)は、車体のヨー方向設置角にずれがない場合を各々示した概略図である。
【
図11】相対測位による第2ロール角の算出の説明図である。
【
図12】本発明の第2実施形態において、撮像装置で取得した車体前方の画像の一例である。
【
図13】(A)は、設置角算出装置の最小限の構成の一例を、(B)は、本発明の第1実施形態に係る設置角算出装置の最小限の構成の一例を、(C)は、本発明の第2実施形態に係る設置角算出装置の最小限の構成の一例を、各々示した概略図である。
【
図14】(A)は車体が水平面を走行している場合、(B)は水平面に対して2%(1.15度)程度の横断勾配を有する斜面を車体200が走行している場合、を各々示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る設置角算出装置10の構成の一例を示したブロック図である。設置角算出装置10は、演算装置14の演算に必要なデータ及び演算装置14による演算結果を記憶する記憶装置18と、撮像装置22が取得した画像情報からエッジを抽出する画像情報処理部20と、画像情報処理部20が抽出したエッジ、車速センサ24が検出した車体200の前後速度、3軸のジャイロと3方向の加速度計によって、3次元の角速度と加速度とが検出可能なIMU26が検出した車体200の方位角の角速度及び加速度、第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30の各々で衛星から受信したGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)の情報、並びに地図情報データベース34に格納された地図情報が各々入力される入力装置12と、入力装置12から入力された入力データ及び記憶装置18に記憶されたデータに基づいてIMU26の設置角度の算出及び車体200の自己位置の推定の演算を行なうコンピュータ等で構成された演算装置14と、車体200の外界との無線通信が可能なV2X通信部36と、演算装置14による演算結果等を表示可能なCRT又はLCD等で構成された表示装置16と、で構成されている。
【0024】
本実施形態に係る撮像装置22は車載カメラ等であり、一例として、撮影により取得した車両周辺の画像情報を解析して走路の白線、及び建造物等をエッジとして検出する。IMU26は、走行時の車両の挙動を示す3軸の角速度(ピッチレート、ロールレート、ヨーレート)と3軸の加速度(前後加速度、横加速度、上下加速度)とが検出可能な慣性計測装置である。
【0025】
図2(A)は本実施形態における第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30の配置の一例を示した概略図であり、
図2(B)は第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30の一般的な配置の一例を示した概略図である。
【0026】
図2(A)に示したように、本実施形態では、第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30の各々を、車体200の横方向であるY軸方向に配置している。本実施形態では、車体200の方位角の情報と、ロール角の情報とを取得するために、
図2(A)に示したように第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30を車体200の横方向に配置する。
【0027】
本実施形態では、第1GNSSアンテナ28と第2GNSSアンテナ30との各々を車体200のY軸方向に平行して、所定以上の距離を隔てて同じ高さに設置する。車体形状は多くの場合、左右対称のため、2つのGNSSアンテナを同じ高さに設置することは容易である。横方向に2つのGNSSアンテナを配置することにより、2つのGNSSアンテナ間の相対測位演算を行い、車体200の座標Y軸の水平面に対する角度である第2ロール角を算出する。第1GNSSアンテナ28と第2GNSSアンテナ30との間の所定以上の距離は、第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30の基線長を可能な限り長くするために、例えば、車体200のルーフの横幅に近い値である。
【0028】
図2(B)に示した第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30の一般的な配置は、第1GNSSアンテナ28と第2GNSSアンテナ30との距離である基線長を可能な限り長くするためのものである。第1GNSSアンテナ28と第2GNSSアンテナ30との基線長を長くすることにより、車体200の方位角の算出精度を高めることができる。しかしながら、車体200のロール角の推定には適さない。第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30で取得した情報に基づく第2ロール角の算出の詳細については後述する。
【0029】
図3は、演算装置14の具体的な構成の一例を示すブロック図である。演算装置14は、一種のコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)14B、ROM(Read Only Memory)14A、RAM(Random Access Memory)14C、及び入出力ポート14Dを備える。
【0030】
演算装置14では、CPU14B、ROM14A、RAM14C、及び入出力ポート14Dがアドレスバス、データバス、及び制御バス等の各種バスを介して互いに接続されている。入出力ポート14Dには、各種の入出力機器として、入力装置12、ハードディスク(HDD)等である記憶装置18、表示装置16、及びV2X通信部36等が各々接続されている。
【0031】
記憶装置18には、設置角算出のための設置角算出プログラムがインストールされている。本実施形態では、CPU14Bが設置角算出プログラムを実行することにより、設置角算出を実行する。また、CPU14Bは、設置角算出プログラムによる処理結果を表示装置16に表示させる。なお、本実施形態の設置角算出プログラムを演算装置14にインストールするには、幾つかの方法があるが、例えば、設置角算出プログラムをセットアッププログラムと共にCD-ROMやDVD等に記憶しておき、入出力装置であるディスクドライブ等にディスクをセットし、CPU14Bに対してセットアッププログラムを実行することにより記憶装置18に設置角算出プログラムをインストールする。または、公衆電話回線又はネットワークを介して演算装置14と接続される他の情報処理機器と通信することで、記憶装置18に設置角算出プログラムをインストールするようにしてもよい。
【0032】
次に、演算装置14のCPU14Bが設置角算出プログラムを実行することで実現される各種機能について説明する。設置角算出プログラムは、IMU26が出力した情報に基づいて水平面に対するピッチ姿勢角及びロール姿勢角を推定する姿勢角推定機能、車体200の旋回状態及び加減速に基づいて車体200の運動状態を判定する運動状態判定機能、ピッチ姿勢角及びヨー姿勢角を用いてIMU26の座標軸と車体200の座標軸とのピッチ方向、及びヨー方向における各々のずれを、ピッチ設置角、及びヨー設置角として算出し、算出したピッチ設置角、及びヨー設置角に基づいて、IMU26の出力を、IMU26のX軸を車体200のX軸に一致させた場合の状態に補正する補正機能、X軸を補正したIMU26で検出した情報に基づく重力加速度成分から水平面に対するIMU26のY軸の角度である第1ロール角を算出すると共に、第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30の各々で衛星から取得した情報に基づいて車体200のY軸の角度である第2ロール角を算出する車体ロール角算出機能、並びに第1ロール角と第2ロール角とを比較してIMU26のロール設置角を算出するロール設置角算出機能として機能させる。CPU14Bは、設置角算出プログラムを実行することにより、姿勢角推定部40、運動状態判定部42、補正部44、車体ロール角算出部46及びロール設置角算出部48として機能する。
【0033】
図4は、本実施形態に係る設置角算出装置10の処理の流れの概略を示したブロック図である。ブロックB100では、ジャイロセンサであるIMU26がヨー方向の角速度であるヨーレートを検出して出力する。
【0034】
ブロックB102では、ジャイロセンサであるIMU26が、ピッチ方向の角速度であるピッチレート、及びロール方向の角速度であるロールレートの各々を検出して出力する。
【0035】
ブロックB104では、IMU26に含まれる加速度センサが前後加速度Gx、横速度Gy、及び上下加速度Gzを検出して出力する。
【0036】
ブロックB106では、IMU26が出力したピッチレート、ロールレート、前後加速度Gx、横速度Gy、及び上下加速度Gzに基づいて、水平面に対するピッチ姿勢角及びロール姿勢角を算出する。
【0037】
ブロックB108では、算出されたピッチ姿勢角及びロール姿勢角に基づき、ブロックB104で出力した前後加速度Gx、横速度Gy、及び上下加速度Gzから重力加速度成分、及びゼロ点誤差成分の影響を補正して、補正後の並進加速度成分を出力する。
【0038】
ブロックB110では、車体200が直進かつ加減速大の状態であることを判定する。判定の条件は、例えば、ヨーレートが閾値以下、かつ、前後加速度Gxが閾値以上であるか否かである。ブロックB110では、ブロックB110Aにおいてヨーレートが閾値以下か否かを判定し、ブロックB110Bにおいて前後加速度Gxが閾値以上であるか否かを判定する。ブロックB110Aにおいてヨーレートが閾値以下であると判定した場合、車体200は直進状態であり、ブロックB110Bにおいて前後加速度Gxが閾値以上であると判定した場合、車体200は加減速大の状態である。
【0039】
ブロックB112では、ブロックB110で車体200が直進状態かつ加減速大にある場合に、ブロックB108で出力した並進加速度成分に基づいて、ピッチ方向の設置角、及びヨー方向の設置角の各々を算出して出力する。
【0040】
ブロックB114では、ブロックB112で出力したピッチ方向及びヨー方向の各々の設置角に従ってIMU26のX軸を車体200のX軸に一致させることにより、ピッチ方向の設置角、及びヨー方向の設置角の各々を補正する。実際には、IMU26の搭載位置を変更するわけではないので、IMU26の座標軸の補正という表現には語弊があるが、本実施形態では、IMU26の出力を、ピッチ方向の設置角、及びヨー方向の設置角等で補正することを、便宜上、IMU26の座標軸の補正と称する。
【0041】
ブロックB116では、IMU26のX軸補正後の重力加速度成分に基づき、水平面に対するIMU26のY軸の角度である第1ロール角を算出する。
【0042】
ブロックB118では、第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30の各々で、衛星から測位に必要な情報を取得する。
【0043】
ブロックB120では、車体200の横方向に、所定以上の距離を隔てて同じ高さに設置した第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30の各々による測位結果から車体200のY軸の水平面に対する角度である第2ロール角を算出する。
【0044】
ブロックB122では、第1ロール角と第2ロール角とを比較することにより、車体の座標軸に対するIMU26のロール方向の設置角を算出して、出力する。
【0045】
図5は、本実施形態に係る設置角算出装置10の処理の一例を示したフローチャートである。ステップS100では、IMU26のピッチ方向及びヨー方向の各々の設置角を推定する。
【0046】
図6は、
図5のステップS100におけるピッチ・ヨー方向設置角推定の処理の一例を示したフローチャートである。ステップS200では、IMU26の出力に基づき、水平面に対するピッチ姿勢角及びロール姿勢角を算出すると共に、算出したピッチ姿勢角及びロール姿勢角に基づき、IMU26の出力から重力加速度成分、及びゼロ点誤差成分の影響を補正して、補正後の加速度センサ値を求める重力加速度成分による補正処理を行う。
【0047】
以下に、重力加速度成分の補正の例を説明する。
図7は、交差点等における停車のための減速区間の重力加速度の影響を想定した場合において、IMU26が備える加速度センサの出力における、車体の減速の影響と姿勢角の影響との関係の一例を表したグラフである。
図7の上段のグラフが車両の減速による出力、下段のグラフが車両の姿勢角に影響された重力加速度成分の出力を示している。上段のグラフの値と下段のグラフの値との和が加速度センサの出力になる。従って、加速度センサの出力から姿勢角による重力加速度成分の影響を控除する補正が必要になる。直進又は加減速時の車体の姿勢角変化は、主に「加減速による慣性と路面縦勾配による車体のピッチ角変動」、及び「路面横勾配による車体のロール角変動」が考えられる。重力加速度成分の補正では、
図7の下段の成分(姿勢角に基づく成分)を差し引いて補正することによって、ピッチ角方向の設置角誤差をより精度よく推定できる。なお、姿勢角推定において加速度センサの出力に含まれるゼロ点誤差については後述する。
【0048】
加速度センサの出力G
x、G
y、G
zの各々は、下記の式(1)に示したように、[1]~[3]の3つの成分の和で表される。式(1)において、[1]は、加速度センサの姿勢角による重力加速度成分を、[2]は、回転(旋回)運動の遠心力に対応する成分を、[3]は、並進運動の加速度成分を、各々示している。
・・・(1)
【0049】
上記の式(1)において、θはピッチ姿勢角、φはロール姿勢角、Uは前後速度、Vは左右速度、Wは上下速度、Pはロール方向の角速度であるロールレート、Qはピッチ方向の角速度であるピッチレート、Rはヨー方向の角速度であるヨーレートを、各々示している。
【0050】
車体の運動を考えた場合、停車時及び一定速度で直進する定常走行時は、加速度センサの出力は、[1]の姿勢角重力成分のみとなるため、加速度センサの出力から容易に姿勢角を求めることができる。直進走行中は[2]の回転(旋回)運動に対応する成分は無視してよい。また、直進かつ加減速の場合は、[3]の成分として車体の進行方向に沿って並進加速度GVが発生する。
【0051】
直進かつ加減速時において、車両直進方向に対して慣性計測装置の設置角にずれがある場合、上記[3]の成分である車両の並進加速度GVの成分の一部が、設置角のずれによりGy,Gzにも出力され、その分Gxの出力も変化する。この性質を利用して、設置角を推定する。
【0052】
重力加速度成分の補正では、上記[1]の姿勢角による重力加速度成分を除去することにより、上記[3]の成分だけを取り出すことで、設置角の推定精度を向上させることができる。なお、姿勢角推定に誤差があると、重力加速度成分が精度よく除去できない問題がある。姿勢角推定の誤差要因としては、加速度センサのゼロ点誤差がある。
【0053】
重力加速度成分の除去は、姿勢角(ピッチ姿勢角・ロール姿勢角)を
図4のブロックB106に示したように推定しておき、推定ピッチ姿勢角θ^、推定ロール姿勢角φ^から下記の式(2)で求められる重力加速度成分を、加速度センサの出力から控除すればよい(推定ピッチ姿勢角θ^、及び推定ロール姿勢角φ^の記号は、式ではθ及びφの上に^付きで表される)。姿勢角の推定は、相補フィルタやカルマンフィルタを用いて推定してもよい。IMU26の出力を観測値として、当該観測値に対する予測値を推定することで、姿勢角推定精度が改善できる。
・・・(2)
【0054】
式(2)に入力される推定姿勢角(θ^,φ^)に加速度センサのゼロ点誤差の影響が含まれている場合であっても、重力加速度成分と共にゼロ点誤差の影響が差し引かれることを次に説明する。
【0055】
上述のように、水平面基準のピッチ姿勢角及びロール姿勢角を推定する場合、加速度センサの出力Gx、Gy、Gzにゼロ点誤差が含まれていると、停車時であってもGx
2+Gy
2+Gz
2=g2が成立しない場合がある。かかる場合は、Gx
2+Gy
2+Gz
2=g2が成立するように、例えば、Gzを予め補正した後、姿勢角推定、及び重力加速度成分の補正を行う。
【0056】
並進加速度成分G
xについて、ゼロ点誤差がない場合と、ある場合とを比較して説明する。なお、並進加速度成分G
xの向きと水平面との関係を
図8に示す。
【0057】
G
xにゼロ点誤差がない場合について説明する。停車時にピッチ姿勢角θの時、G
xに表れる重力成分は、下記の式(3-1)で表される。かかる式(3-1)を用いてピッチ姿勢角θを推定することができる。
・・・(3-1)
【0058】
ピッチ姿勢角θの状態で、IMU26のX軸方向に車両運動による加速度G
Vxが加わる時、加速度センサで検出される値は、下記の式(3-2)となる。
・・・(3-2)
【0059】
ピッチ姿勢角θが分かっていれば、下記の式(3-3)のように、加速度センサの出力G
xから重力加速度成分G
gxを控除することで、車体200の並進加速度成分である車両加速度G
vxが求められる。
・・・(3-3)
【0060】
次に、G
xにゼロ点誤差がある場合について説明する。停車時にピッチ姿勢角θの時、G
xに表れる重力成分にゼロ点誤差Z
xが加わるため、重力加速度成分G’
gxは、下記の式(4-1)で表される。
・・・(4-1)
【0061】
推定ピッチ姿勢角θ^は、ゼロ点誤差Zxを含んで推定される。この段階で正しいピッチ姿勢角θは不明である。
【0062】
ピッチ姿勢角θの状態で、IMU26のX軸方向に車両運動による加速度G
Vxが加わる時、加速度センサで検出される値は、下記の式(4-2)で表される。
・・・(4-2)
【0063】
下記の式(4-3)のように、加速度センサの出力G
xから、推定ピッチ姿勢角θ^に基づく重力加速度成分G’
gx(=-g・sinθ^)を控除すると、車体200の並進加速度成分である車両加速度G
vxが求められる。
・・・(4-3)
【0064】
式(3-3)と式(4-3)とを比較すると、算出する車両加速度は同じであることから、加速度センサで検出した前後加速度Gxにゼロ点誤差Zxが含まれていても、ゼロ点誤差がない時と同様に、車両加速度が正しく求められることが分かる。以上から、推定ピッチ姿勢角θ^に基づく重力加速度成分にはGxのゼロ点誤差の影響が含まれており、Gxの検出値から両者を合わせて控除することができることが分かる。この時、ゼロ点誤差の値は未知のままで求める必要がない。従って、Gxのゼロ点誤差の補正を要しない。
【0065】
Gxと同様にして、IMU26の出力Gyにゼロ点誤差が含まれていても、車両加速度を正しく求めることができる。Gyを考える際には、推定ピッチ姿勢角、推定ロール姿勢角に基づく重力加速度成分を控除することになる。以下、Gyについて、ゼロ点誤差がない場合と、ある場合とを比較して説明する。
【0066】
G
yにゼロ点誤差がない場合について説明する。停車時にピッチ姿勢角θ、ロール姿勢角φの時、G
yに表れる重力成分は、下記の式(5-1)で表される。かかる式(5-1)を用いてロール角φを推定することができる。なお、ピッチ姿勢角θは上記G
xの過程で推定済みとする。
・・・(5-1)
【0067】
ピッチ姿勢角θ、ロール姿勢角φの状態で、IMU26のY軸方向に車両運動による加速度G
Vyが加わる時、IMU26で検出される値は、下記の式(5-2)で表される。
・・・(5-2)
【0068】
ピッチ姿勢角θ、及びロール姿勢角φが分かっていれば、下記の式(5-3)に示したように、加速度センサの出力であるG
yから重力加速度成分G
gyを控除することで、車体200の並進加速度成分である車両加速度G
vyが求められる。
・・・(5-3)
【0069】
次に、G
yにゼロ点誤差がある場合について説明する。停車時にピッチ姿勢角θ、ロール姿勢角φの時、G
yに表れる重力成分にゼロ点誤差Z
yが加わるため、重力加速度成分G’
gyは、下記の式(6-1)で表される。
・・・(6-1)
【0070】
推定ロール角φ^は、推定ピッチ姿勢角θ^を用いて、推定できるが、Gx、Gyのゼロ点誤差の影響が含まれる。
【0071】
ピッチ姿勢角θ、ロール姿勢角φの状態で、IMU26のY軸方向に車両運動による加速度G
Vyが加わる時、加速度センサで検出される値であるG’
yは、下記の式(6-2)で表される。
・・・(6-2)
【0072】
下記の式(6-3)に示したように、推定ロール角φ^、推定ピッチ姿勢角θ^を用いて、加速度センサで検出される値であるG’
yから重力加速度成分G’
gyを控除すると、車体200の並進加速度成分である車両加速度G
vyが得られる。
・・・(6-3)
【0073】
(5-3)と(6-3)とを比べると、求められる車両加速度は同じであることがわかる。
【0074】
同様にして、加速度センサの出力Gzにゼロ点誤差が含まれていても、車両加速度を正しく求めることができる。Gzを考える際には、推定ピッチ姿勢角、推定ロール姿勢角に基づく重力加速度成分と共に、Gzのゼロ点誤差の補正を行った上で控除することになる。以下、Gzについて、ゼロ点誤差がない場合と、ある場合とを比較して説明する。
【0075】
G
zにゼロ点誤差がない場合について説明する。停車時にピッチ姿勢角θ、ロール姿勢角φの時、G
zに表れる重力成分は、下記の式(7-1)で表される。上記G
x及びG
yの過程で求めたロール姿勢角φ、ピッチ姿勢角θはこの式を満たす。
・・・(7-1)
【0076】
ピッチ姿勢角θ、ロール姿勢角φの状態で、IMU26のZ軸方向に車両運動による加速度G
Vzが加わる時、IMU26で検出される値であるG
zは、下記の式(7-2)で表される。
・・・(7-2)
【0077】
ピッチ姿勢角θ、及びロール姿勢角φが分かっていれば、下記の式(7-3)に示したように、IMU26で検出される値であるG
zから重力加速度成分G
gzを控除することで、車体200の並進加速度成分である車両加速度G
vzが得られる。
・・・(7-3)
【0078】
次に、G
zにゼロ点誤差がある場合について説明する。停車時にピッチ姿勢角θ、ロール姿勢角φの時、G
zに表れる重力成分にゼロ点誤差Z
zが加わるため、重力加速度成分G´
gzは下記の式(8-1)で表される。
・・・(8-1)
【0079】
ここで、推定ロール姿勢角φ^、推定ピッチ姿勢角θ^を上式に代入すると、Gx、Gyのゼロ点誤差の影響が含まれているため、上式を満たさない場合がある。上式を満たさない場合について説明する。
【0080】
ゼロ点誤差を含んだIMU26の出力G’x、G’y、G’zを用いて求めた推定姿勢角(推定ロール姿勢角φ^、推定ピッチ姿勢角θ^)は、真値に対して誤差を持つ。この時、各ゼロ点誤差Zx、Zy、Zzは独立に発生するため、停車時であってもGx
2+Gy
2+Gz
2=g2が成立しない場合がある。この場合、推定姿勢角を用いてゼロ点誤差を控除するには、Gx
2+Gy
2+Gz
2=g2が成立するように、例えば、Gzのゼロ点を修正しておいてから、推定姿勢角を求め、重力加速度成分の補正を行えばよい(なお、ゼロ点を正しく補正しておく必要はない)。
【0081】
ピッチ姿勢角θ、ロール姿勢角φの状態で、IMU26のZ軸方向に車両運動による加速度G
Vzが加わる時、IMU26で検出される値は、下記の式(8-2)となる。
・・・(8-2)
【0082】
下記の式(8-3)に示したように、推定ロール姿勢角φ^、推定ピッチ姿勢角θ^を用いて、加速度センサで検出される値であるG’
zから重力加速度成分G’
gzを控除すると、車体200の並進加速度成分である車両加速度G
vzが得られる。
・・・(8-3)
【0083】
(7-3)と(8-3)を比べると、求められる車両加速度は同じであることがわかる。
【0084】
以上説明した手順により、
図6のステップS200における重力加速度成分の補正を行った後、ステップS202では、車体200が直進かつ加減速大の状態であるか否かを判定する。ステップS202では、IMU26で検出したヨーレートが所定のヨーレート閾値以下の場合に車体200が直進状態であると判定する。また、ステップS202では、前後加速度Gxが所定の前後加速度閾値以上の場合に、車体200が加減速大の状態であると判定する。車体200が直進かつ加減速大の状態である場合には、手順をステップS204に移行する。加減速大の状態でない場合には、手順をステップS200に戻して処理を繰り返す。所定のヨーレート閾値、及び所定の前後加速度閾値の各々は、設計段階でのシミュレーション、又は実車を用いた試験等を通じて具体的に決定する。
【0085】
ステップS204では、補正後の加速度センサ値のセンサ比を出力する。センサ比により、ピッチ方向設置角θEの正接、及びヨー方向設置角ψEの正接を各々算出する。
【0086】
図9は、本実施形態の手法で推定するピッチ方向設置角を説明するための図である。IMU26のX軸を座標軸I
x、IMU26のZ軸を座標軸I
zとし、ピッチ方向設置角θ
E、座標軸I
xと水平面との角度であるIMUのピッチ姿勢角θ
g、路面勾配θ
Rについて、
図9の場合、θ
g=θ
R+θ
Eとなる。本発明の実施形態では、θ
Eのピッチ方向設置角を推定する。これに対して、従来技術では水平面を走行する際のピッチ姿勢角θ
gをピッチ方向の取付け角としている。水平面走行時は、θ
R=0となるためである。
【0087】
図9に示したピッチ方向設置角θ
gと車体の直進方向とにずれがある場合を想定して、補正の処理について説明する。車体が傾斜している路面で停車している場合、IMU26からは、水平面に対するピッチ姿勢角θ
gに対応した下記の式(9)の重力加速度成分が出力される。また、停車時の車体のロール姿勢角は0になる。
・・・(9)
【0088】
傾斜路面上を車体が並進加速度G
Vで直進走行する場合、IMU26の出力は、式(1)の重力加速度成分を第1項とし、ピッチ方向設置角θ
Eに対応した加速度成分を第2項とした、下記の式(10)のようになる。
・・・(10)
【0089】
従って、式(10)から式(9)で示した重力加速度成分を減算することにより、以下の式(11)のようなピッチ方向設置角θ
Eに対応した加速度成分のみを抽出できる。
・・・(11)
【0090】
式(11)におけるG
*
zを、同じく式(11)におけるG
*
xで除算して得た商は、補正後の加速度センサ値の比であり、以下の式(12)のように、ピッチ方向設置角の正接となる。そして、ピッチ方向設置角の正接の逆正接(arctan)は、ピッチ方向設置角θ
Eとなる。
・・・(12)
【0091】
なお、IMU26の出力にノイズ成分が混在している場合、並進加速度GVが大きい値であるほど、当該ノイズの影響は低下する。本実施形態では、ステップS202で車体の加減速が大である場合に加速度センサ値の比の算出を限定することにより、精度良くピッチ方向設置角θEの正接を算出することができる。
【0092】
図10(A)は、車体200のヨー方向設置角にずれがある場合を、
図10(B)は、車体200のヨー方向設置角にずれがない場合を各々示した概略図である。
図10(B)に示したように、ヨー方向設置角にずれがない場合、車体の座標軸=IMU座標軸となる。車両が直進状態で加減速を行う場合、車体前後加速度を並進加速度G
vとすると、IMU26の出力は、下記の式(13)で表される。
・・・(13)
【0093】
図10(A)に示したように、ヨー方向設置角にずれがある場合、IMU26の設置角が車体のX軸とずれていると、加速度センサの出力は、下記の式(14)で表される。
・・・(14)
【0094】
式(14)の2行目の式の左辺を、式(14)の1行目の左辺で除算して得た商は、補正後の加速度センサ値の比であり、以下の式(15)のように、ヨー方向設置角の正接となる。そして、ヨー方向設置角の正接の逆正接は、ヨー方向設置角ψ
Eとなる。
・・・(15)
【0095】
ステップS206では、ピッチ方向設置角の正接を示す加速度センサ比、及びヨー方向設置角の正接を示す加速度センサ比の各々のサンプル数が所定値に達したか否かを判定すする。センサ比にはノイズ成分の影響があるため、本実施形態では、例えば、十分なサンプル数でセンサ比の値を平均化する。十分なサンプル数で平均化することにより、センサ比及びその逆正接は、ほぼ一定値になる。平均化は逆正接を算出する前でも後でもよい。
【0096】
ステップS206で、サンプル数が所定値に達した場合は手順をステップS208に移行し、サンプル数が所定値に達していない場合は手順をステップS200に移行してセンサ比の算出を継続する。
【0097】
ステップS208では、ヨー方向設置角、及びピッチ方向設置角を算出して処理をリターンする。前述のように、ヨー方向設置角、及びピッチ方向設置角は、センサ比の逆正接である。
【0098】
以上で、
図5のステップS100におけるピッチ・ヨー方向におけるIMU26の設置角の推定は終了し、手順は、
図5のステップS102に移行する。ステップS102では、ピッチ・ヨー方向におけるIMU26の座標軸を補正する。
【0099】
上記で求めた設置角に基づきIMU26の座標軸を補正するには、IMU26のY軸を回転軸としてZX平面上でピッチ設置角θEだけ回転し、その後、IMU26のZ軸を回転軸としてXY平面上でヨー設置角ψEだけ回転する。その結果、IMU26のX軸方向が車体200のX軸方向に一致する。実際には、IMU26の搭載位置を変更するわけではないが、本実施形態では、IMU26の出力を、ピッチ設置角θE、ヨー設置角ψE及び後述するロール設置角φEで補正することを、便宜上、IMU26の座標軸の補正と称する。
【0100】
ステップS104では、設置角によるIMU26の座標軸の補正後の加速度センサ出力を求め、重力加速度成分に基づき、水平面に対する補正後のIMU26のY軸方向の角度、すなわち、ロール方向の角度である第1ロール角を算出する。
【0101】
第1ロール角φ'
1は、以下のようにして算出する。前述のように、Y軸方向の重力加速度成分は、下記の式(16)で表される。式(16)中のφ
1は、補正後のロール姿勢角である。
・・・(16)
【0102】
第1ロール角φ'
1は、水平面に対する補正後のIMU26のY軸方向の角度なので、式(16)に示したY軸方向の重力加速度成分は、下記の式(17)のようになる。
・・・(17)
【0103】
一般的な走行環境では、ロール姿勢角の絶対値は小さいため、sinφ'
1≒φ'
1と近似することができるので、式(16)及び式(17)から下記の式(18)が得られる。
・・・(18)
【0104】
補正後のロール姿勢角φ
1は、以下のようにして算出する。Z軸方向の重力加速度成分は、下記の式(19)で表されるので、上述の式(16)で示したG
gyを、式(19)で示したG
gzで除算して得た商は、以下の式(20)のように、補正後のロール姿勢角φ
1の正接となる。そして、補正後のロール姿勢角φ
1の正接の逆正接は、補正後のロール姿勢角φ
1となる。式(16)で示したG
gy、式(18)右辺に示したcosθ、及び式(19)で示したG
gzの各々は、一例として、X軸を補正したIMU26の出力に基づいて推定したピッチ姿勢角θとロール姿勢角と重力加速度gとを用いて算出する。
・・・(19)
・・・(20)
【0105】
ステップS106では、第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30の、2つのアンテナ間の相対測位演算を行うことで、車体200の座標Y軸の水平面に対する角度である第2ロール角φ2を算出する。本実施形態では、一例として、RTK-GNSS(Real Time Kinematic GNSS)等の位置推定の誤差をセンチメートル単位にまで抑制できる演算手法により、第2ロール角φ2を算出する。
【0106】
具体的には、
図11に示したように、RTK-GNSS等によって算出された、第1GNSSアンテナ28及び第2GNSSアンテナ30の各々の座標Z軸方向の位置の偏差をδ、第1GNSSアンテナ28と第2GNSSアンテナ30との間の距離をσとすると、δ/σは、下記の式(21)に示すように、第2ロール角φ
2の正接となる。そして、第2ロール角φ
2の正接の逆正接は、第2ロール角φ
2となる。
・・・(21)
【0107】
ステップS108では、ステップS104で算出した第1ロール角φ'1と、ステップS106で算出した第2ロール角φ2とを比較することで、車体200の座標軸に対するロール設置角φEを算出して処理を終了する。しかしながら、本実施形態では、第1ロール角φ'1と、ステップS106で算出した第2ロール角φ2との比較に限定されない。例えば、補正後のロール姿勢角φ1と、φ2/cosθとを比較してもよい。
【0108】
以上説明したように、本実施形態によれば、IMU26の座標軸をピッチ方向・ヨー方向だけでなくロール方向も、車体200の座標軸に合わせることが可能となる。その結果、IMU26の設置角のずれに起因する車両の推測航法の誤差を低減することができ、車両の姿勢角、運動及び走行軌跡をより精度よく推定することができる。
【0109】
[第2実施形態]
続いて本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る設置角算出装置の構成は、第1実施形態の設置角算出装置10と同様なので、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0110】
前述のように、第1実施形態では、
図5のステップS106において、GNSSによる相対測位で第2ロール角φ
2を算出した。本実施形態では、車載カメラである撮像装置22で取得した画像から第2ロール角φ
2を算出する。なお、本実施形態では、撮像装置22の座標軸は、車体200の座標軸と一致していることを前提とする。
【0111】
図12は、撮像装置22で取得した車体200前方の画像の一例である。一般に、建物の壁面等の人口建造物のエッジ、又は電信柱、若しくは標識等の支柱部分等は、路面の傾斜にかかわらず鉛直に設置される場合が多い。従って、車体200の前方、又は後方を捉えた撮像装置22の画像からエッジを検出すると、鉛直方向のエッジを数多く検出できる。また、鉛直方向のエッジは全て同じ向きを示す。
【0112】
本実施形態では、
図12に示したような画像から鉛直方向に近いエッジを抽出し、抽出したエッジから統計的に外れ値を除去し、平均化することでエッジの鉛直方向を算出する。そして、鉛直方向に対する画像の傾きから車体200の第2ロール角φ
2を算出する。
【0113】
図12において、エッジの鉛直方向をベクトル70、画像の傾きを示す、画像のフレームの縦方向に平行なベクトルをベクトル72とすると、第2ロール角φ
2の余弦は、下記の式(22)で表される。そして、第2ロール角φ
2の余弦の逆余弦(arccos)は第2ロール角φ
2となる。
・・・(22)
【0114】
上述のように、画像に基づいて第2ロール角φ
2を算出した後は、第1実施形態と同様に、
図5のステップS104で算出した第1ロール角φ
1と、画像に基づいて算出した第2ロール角φ
2とを比較することで、車体200の座標軸に対するロール設置角φ
Eを算出して処理を終了する。
【0115】
以上説明したように、本実施形態によれば、撮像装置22で取得した画像から算出した第2ロール角φ2を用いて、IMU26の、車体200の座標軸に対するロール設置角φEを算出する。GNSSは、衛星との通信状態によっては、測位に係る情報を適切に取得できない場合があるが、本実施形態では、衛星との通信状態にかかわりなくIMU26の、車体200の座標軸に対するロール設置角φEを算出できる。
【0116】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、撮像装置22で取得した画像は、車体200前方の画像のみならず、車体200後方の画像でもよい。
【0117】
例えば、上述した実施形態では、車両運動状態の判定をヨーレートと前後加速度Gxのみを用いていたがこれに限定されるものではない。例えば、他のセンサも使用できる場合は、次の何れかの判定を組み合わせてもよい。直進判定については、[1-1]直進判定について、ヨーレートがある閾値以下、[1-2](ヨーレート×車速)がある閾値下記の式(旋回で発生する横加速度で判定)、[1-3]舵角がある閾値以下、の判定手法が挙げられる。加減速大の判定については、[2-1]Gxの絶対値がある閾値以上、[2-2]車速の平均変化量がある閾値以上、[2-3]Gx
2+Gy
2の平方根がある閾値以上(ヨー方向設置角が大きくずれている場合)、[2-4]Gx
2+Gy
2+Gz
2の平方根がある閾値以上(ピッチ方向設置角も大きくずれている場合)、[2-5]アクセル開度がある閾値以上、ブレーキ圧もしくは踏力がある閾値以上、等の操作状態から判定、の判定手法が挙げられる。
【0118】
車両運動状態判定のその他のバリエーションとして、直進かつ加減速の大きい場合をより具体的に限定すると、停車状態から発進するための発進加速がある閾値以上、又は定速直進状態から停車するための減速度がある閾値以上、の場面において、推定するようにしてもよい。また、例えば自動運転システムの場合、車両の制御情報でどのような走行をするかが分かるため、「直進かつ加減速大」という設置角推定に適した走行条件を車両制御情報から判断するようにしてもよい。
【0119】
また、第1実施形態、及び第2実施形態では、設置角算出装置は
図1及び
図3に示した構成としたが、これに限定されない。
図13(A)は、設置角算出装置の最小限の構成の一例であり、演算装置14AにはIMU26、第1ロール角を算出するためのGNSS測距部60、及び第2ロール角を算出するための第2ロール角算出部62が接続されている。
【0120】
図13(B)は、第1実施形態に係る設置角算出装置の最小限の構成の一例であり、演算装置14AにはIMU26、第1GNSS測距部70、及び第2GNSS測距部72が接続されている。
【0121】
図13(C)は、第2実施形態に係る設置角算出装置の最小限の構成の一例であり、演算装置14AにはIMU26、第1ロール角等を算出するためのGNSS測距部60、及び撮像装置22が接続されている。
【0122】
図13(A)~(C)に示したように、設置角算出装置は、IMU26と演算装置とを核にした最小限の構成でもIMU26の設置角を算出することができる。
【0123】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した設置角算出処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、設置角算出処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0124】
また、上記各実施形態では、設置角算出処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0125】
なお、特許請求の範囲に記載の「慣性計測装置ロール角」は、明細書の発明の詳細な説明に記載の「第1ロール角」に、同「車体ロール角」は、明細書の発明の詳細な説明に記載の「第2ロール角」に、各々該当する。
【0126】
(付記項1)
メモリと、
前記メモリに接続された少なくとも1つのプロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、
慣性計測装置の出力に基づいて水平面に対する前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ姿勢角及びロール方向のロール姿勢角を推定し、前記ピッチ姿勢角及び前記ロール姿勢角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力に基づいて前記慣性計測装置のピッチ方向のピッチ設置角及びヨー方向のヨー設置角の各々を算出し、前記水平面に対する車体のY軸の角度である車体ロール角を算出し、前記ピッチ設置角及び前記ヨー設置角を用いて補正した前記慣性計測装置の出力から算出した前記水平面に対する前記慣性計測装置のY軸の角度である慣性計測装置ロール角と、前記車体ロール角と、を比較して前記慣性計測装置のロール方向の設置角を算出する、
ように構成されている設置角算出装置。
【符号の説明】
【0127】
10 設置角算出装置
12 入力装置
14 演算装置
14A ROM
14B CPU
14C RAM
14D 入出力ポート
16 表示装置
18 記憶装置
20 画像情報処理部
22 撮像装置
26 IMU
28 第1GNSSアンテナ
30 第2GNSSアンテナ
34 地図情報データベース
40 姿勢角推定部
42 運動状態判定部
44 補正部
46 車体ロール角算出部
48 ロール設置角算出部
70、72 ベクトル
200 車体