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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138057
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/61 20220101AFI20230922BHJP
   H04L 49/55 20220101ALI20230922BHJP
【FI】
H04L67/61
H04L49/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044548
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】真島 道明
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA11
5K030HC13
5K030JA10
5K030JA11
5K030MD01
(57)【要約】
【課題】一方のコントローラから他方のコントローラにデータを送信する際に、異なる優先度のデータを効率的に送信することができる制御システムを提供する。
【解決手段】本開示の制御システムは、2つのコントローラを互いに通信可能に接続するネットワーク回線を備える。第1のコントローラの制御部は、第1のデータから、第1の周期で繰り返し送信が開始される単一のパケットを生成するとともに、第2のデータを分割して、第2の周期で送信が開始される複数のパケットを生成する、パケット生成処理と、単一のパケットおよび複数のパケットを、ネットワーク回線を介して第2のコントローラに送信する、パケット送信処理とを実行する。パケット送信処理において、単一のパケットは複数のパケットよりも優先して送信され、複数のパケットの各サイズは、第1の周期およびネットワーク回線の転送レートに基づいて決定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコントローラと、
第2のコントローラと、
前記第1のコントローラと前記第2のコントローラとを互いに通信可能に接続するネットワーク回線と
を備える制御システムであって、
前記第1のコントローラの制御部は、
第1のデータから、第1の周期で繰り返し送信が開始される単一のパケットを生成するとともに、第2のデータを分割して、第2の周期で送信が開始される複数のパケットを生成する、パケット生成処理と、
前記単一のパケットおよび前記複数のパケットを、前記ネットワーク回線を介して前記第2のコントローラに送信する、パケット送信処理と
を実行し、
前記パケット送信処理において、前記単一のパケットは前記複数のパケットよりも優先して送信され、
前記複数のパケットの各サイズは、前記第1の周期および前記ネットワーク回線の転送レートに基づいて決定される、制御システム。
【請求項2】
前記複数のパケットの末尾のパケットを除く各サイズは、以下の式に従って決定され、
ΔS=(T1/N)*R
上式において、ΔSは前記複数のパケットの各サイズ、T1は前記第1の周期、Nは所定の正数、Rは前記ネットワーク回線の転送レートである、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記第1のデータは2種類以上のデータを含む、請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記第1の周期は前記第2の周期よりも短い、請求項1~3のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記第1のデータのサイズは前記第2のデータのサイズよりも小さい、請求項1~4のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記パケット生成処理および前記パケット送信処理の実行に先立って、以下の条件が成立しているか否かを判定し、
(T1-E1) > S1/R
(T2-E1)-(T2-E2)/T1*(S1/R) > S2/R
上式において、T1は前記第1の周期、E1は前記第1のデータの生成に要する時間、S1は前記第1のデータのサイズ、T2は前記第2の周期、E2は前記第2のデータの生成に要する時間、S2は前記第2のデータのサイズ、Rは前記ネットワーク回線の送信レートである、請求項2に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は制御システムに係り、特に2つのコントローラを含む二重化構成を有する制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業プラント等の制御システムにおいて、一過性の故障を回避するために、コントローラを二重化する構成が知られている。コントローラを二重化するためには、稼働状態(オンライン側)のコントローラの時々刻々と変化するデータを待機状態(スタンバイ側)のコントローラに送信し、両者のデータを等値化する必要がある。両者は互いに相手局の状態を監視しており、オンライン側に異常が発生した場合には、直ちにスタンバイ側がオンラインに昇格して動作を継続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-181240号公報
【特許文献2】特開2008-211682号公報
【特許文献3】特開2005-267236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においてコントローラを二重化する場合には、一方のコントローラから他方のコントローラにデータを送信するために、専用のハードウェアを構築する必要がある。また、専用のハードウェアを構築することなく、例えばイーサネット等の既存のネットワーク回線を用いてデータを送信する場合には、優先度の異なる複数のデータが存在する場合に、それらを効率的に送信することが困難であるという問題がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためのものであり、二重化された構成を有する制御システムにおいて、一方のコントローラから他方のコントローラにデータを送信する際に、異なる優先度のデータを効率的に送信することができる、制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示に係る制御システムは、第1のコントローラと、第2のコントローラと、第1のコントローラと第2のコントローラとを互いに通信可能に接続するネットワーク回線とを備える制御システムであって、第1のコントローラの制御部は、第1のデータから、第1の周期で繰り返し送信が開始される単一のパケットを生成するとともに、第2のデータを分割して、第2の周期で送信が開始される複数のパケットを生成する、パケット生成処理と、単一のパケットおよび複数のパケットを、ネットワーク回線を介して第2のコントローラに送信する、パケット送信処理とを実行し、パケット送信処理において、単一のパケットは複数のパケットよりも優先して送信され、複数のパケットの各サイズは、第1の周期およびネットワーク回線の転送レートに基づいて決定される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1に係る制御システムの構成を示す図。
図2】実施の形態1に係るパケット生成処理を説明するフローチャート。
図3】実施の形態1に係るデータフローを示す図。
図4】実施の形態1に係るパケット送信処理を説明するフローチャート。
図5】実施の形態1に係るパケットの流れの一例を示すタイミングチャート。
図6】従来技術に係るパケットの流れの一例を示すタイミングチャート。
図7】実施の形態1の変形例に係るパケットの流れの一例を示すタイミングチャート。
図8】実施の形態1の別の変形例に係るパケットの流れの一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、図面を参照しながら、本開示の実施の形態について説明する。なお、以降の説明では、本開示に係る制御システムを産業プラントの制御に使用する例に基づいて説明する。ただし、本開示に係る制御システムの適用可能な範囲は、産業プラントの制御に限定されるものではない。また、図面において同一または対応する要素には同じ参照符号を付して、詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係る産業プラントの制御システム100の構成を示す図である。制御システム100は、コントローラ1と、パーソナルコンピュータ(PC)2と、監視装置3と、イーサネットハブ(HUB)4を含む監視イーサネット5と、I/O機器6を含むI/Oネットワーク7とを備えている。
【0010】
コントローラ1は、DCS(Distributed Control System)またはPLC(Programable Logic Controller)等の産業用コントローラである。コントローラ1は、制御対象に取り付けられた図示しないセンサー等からI/O機器6およびI/Oネットワーク7を介して受信される信号に基づいて、産業プラントの状態を収集する。コントローラ1は、収集されたプラントの状態に基づいて各種の演算を実行し、演算結果に基づいて、I/Oネットワーク7およびI/O機器6を介して、制御対象に取り付けられた図示しないアクチュエータ等を動作させることにより、産業プラントを制御する。
【0011】
PC2は、エンジニアリングツールを備える情報処理装置である。エンジニアリングツールは、コントローラ1を管理するプログラムであり、例えば、コントローラ1で実行されるアプリケーションプログラムの生成、生成されたアプリケーションプログラムのコントローラ1への送信、コントローラ1で実行される処理の監視等を行う。監視装置3は、オペレータが産業プラントの状態を監視するためのコンピュータである。HUB4は、監視イーサネット5上を流れるパケットを中継するための周知のネットワーク機器である。
【0012】
I/O機器6は、制御対象に取り付けられた各種装置との間で信号の入出力を行うための機器である。I/O機器6は、制御対象に取り付けられたセンサー等からの信号が入力されるAI(Analog Input)機器またはDI(Digital Input)機器等を含んでいる。また、I/O機器6は、制御対象に取り付けられたアクチュエータ等への信号を出力するAO(Analog Output)機器またはDO(Digital Output)機器等を含んでいる。
【0013】
本実施の形態1に係るコントローラ1は、同一構成の第1のコントローラ10および第2のコントローラ20を含む二重化構成を有している。先述したように、コントローラを二重化するためには、稼働状態(オンライン側)のコントローラの時々刻々と変化するデータを待機状態(スタンバイ側)のコントローラに送信し、両者のデータを等値化する必要がある。両者は互いに相手局の状態を監視しており、オンライン側に異常が発生した場合には、直ちにスタンバイ側がオンラインに昇格して動作を継続する。
【0014】
本実施の形態1では、通常は第1のコントローラ10が稼働状態であり、第2のコントローラ20が待機状態である。そのため、以降の説明では、第1のコントローラが稼働状態であり、第2のコントローラ20が待機状態であるとして説明する。第1のコントローラ10が待機状態であり、第2のコントローラ20が稼働状態である場合には、以降の説明における両者の関係が入れ替わる。
【0015】
第1のコントローラ10は、産業プラントの「制御データ」を記憶する第1の記憶部11と、自局である第1のコントローラ10の動作状態を表す「自局情報」を記憶する第2の記憶部12と、相手局である第2のコントローラ20の動作状態を表す「相手局情報」を記憶する第3の記憶部13と、自局の動作を制御する制御部14とを含んでいる。
【0016】
第2のコントローラ20は、産業プラントの「制御データ」を記憶する第1の記憶部21と、自局である第2のコントローラ20の動作状態を表す「自局情報」を記憶する第2の記憶部22と、相手局である第1のコントローラ10の動作状態を表す「相手局情報」を記憶する第3の記憶部23と、自局の動作を制御する制御部24とを含んでいる。
【0017】
第1のコントローラ10と第2のコントローラ20とは、トラッキングイーサネット30を介して互いに通信可能に接続されている。第1のコントローラ10の制御部14は、自局の第1の記憶部11に記憶されている制御データを、トラッキングイーサネット30を介して第2のコントローラ20に送信する。これを受信した第2のコントローラ20の制御部24は、受信された制御データによって、自局の第1の記憶部21に記憶されている制御データを更新する。
【0018】
また、第1のコントローラ10の制御部14は、自局の第2の記憶部12に記憶されている自局情報を、トラッキングイーサネット30を介して第2のコントローラ20に送信する。これを受信した第2のコントローラ20の制御部24は、受信された情報によって自局の第3の記憶部23に記憶されている相手局情報を更新する。
【0019】
同様に、第2のコントローラ20の制御部24は、自局の第2の記憶部22に記憶されている自局情報を、トラッキングイーサネット30を介して第1のコントローラ10に送信する。これを受信した第1のコントローラの制御部14は、受信された情報によって自局の第3の記憶部13に記憶されている相手局情報を更新する。
【0020】
次に、本実施の形態1に係る制御システム100における、第1のコントローラ10から第2のコントローラ20に制御データを送信する際の処理について詳細に説明する。
【0021】
第1のコントローラ10の制御部14は、高速スキャンタスクと標準スキャンタスクという2つのタスクをそれぞれ所定の周期で繰り返し実行する。詳細には、高速スキャンタスクと標準スキャンタスクは、制御部14によって実行されるリアルタイムOS上で動作するタスクであり、両者は見かけ上は並列に動作する。
【0022】
高速スキャンタスクは、第1の周期T1で繰り返し実行される。高速スキャンタスクでは、第1の記憶部11に記憶されている制御データの中で予め決定されている特に重要なデータのみがスキャンされ、第1のサイズS1の高速スキャンデータが作成される。標準スキャンタスクは、第2の周期T2で繰り返し実行される。標準スキャンタスクでは、第1の記憶部11に記憶されている制御データがすべてスキャンされ、第2のサイズS2の標準スキャンデータが作成される。
【0023】
本実施の形態1において、高速スキャンタスクの第1の周期T1は、標準スキャンタスクの第2の周期T2よりも短く、T1<T2である。また、高速スキャンデータの第1のサイズS1は、標準スキャンデータの第2のサイズS2よりも小さく、S1<S2である。また、トラッキングイーサネット30を介して送信される際に、高速スキャンデータは優先度の高いデータとして送信され、標準スキャンデータは優先度の低いデータとして送信される。
【0024】
第1のコントローラ10の制御部14は、高速スキャンタスクと標準スキャンタスクのそれぞれの完了時に、図2のフローチャートに示されるパケット生成処理を実行する。パケット生成処理では、優先度の高い高速スキャンデータから単一のパケットが生成されるとともに、優先度の低い標準スキャンデータを分割して複数のパケットが生成される。以降の説明では、一例として、標準スキャンデータを分割して6個のパケットが生成されるが、生成されるパケットの数は標準スキャンデータのサイズ等に依存して異なる。以降の説明では、図3に示されるデータフローも併せて参照されたい。
【0025】
図2のステップS101において、制御部14は、現在処理しているスキャンデータよりも優先度の高いスキャンデータが存在するか否かを判定する。詳細には、現在処理しているスキャンデータが高速スキャンデータ41である場合には、それよりも優先度の高いスキャンデータは存在しないため、処理フローはNOに進む。一方、現在処理しているスキャンデータが標準スキャンデータ51である場合には、それよりも優先度の高いスキャンデータ、すなわち高速スキャンデータ41が存在するため、処理フローはYESに進む。
【0026】
ステップ102において、制御部14は、優先度の高い高速スキャンデータ41から生成される単一のパケット42のサイズを設定する。詳細には、単一のパケット42のサイズは、高速スキャンデータ41の第1のサイズS1と等しくなるように設定される。トラッキングイーサネット30の場合、ジャンボフレームを用いることにより、このような設定を行うことができる。
【0027】
ステップS103において、制御部14は、上記のステップS102で生成された単一のパケット42を、第1のキュー43の末尾に追加する。第1のキュー43は、次に述べる第2のキュー53よりも優先度の高いキューである。
【0028】
一方、ステップS104において、制御部14は、優先度の低い標準スキャンデータ51を分割して生成される複数のパケット52a~52fの各サイズを設定する。詳細には、末尾のパケット52fを除いて、複数のパケット52a~52eの各サイズはすべて等しく、以下の式(1)に従って設定される。
【0029】
ΔS=(T1/N)*R (1)
【0030】
ただし、上式において、ΔSは複数のパケット52a~52eの各サイズ、T1は高速スキャンタスクの第1の周期、Nは所定の正数、Rはトラッキングイーサネット30の送信レートである。また、末尾のパケット52fのサイズは、上記のΔSよりも小さい。
【0031】
上記の式(1)は、高速スキャンタスクの第1の周期T1の1/Nの時間の間に、トラッキングイーサネット30を介して送信可能なデータのサイズを意味している。例えば、高速スキャンタスクの第1の周期T1=1秒、所定の正数N=10、トラッキングイーサネット30の送信レートR=1Gbpsの場合、複数のパケット52a~52eの各サイズΔSは、ΔS≒12Mバイトに設定される。式(1)の定義より、末尾のパケット52fを除く複数のパケット52a~52eのうちの1つのパケットを送信するのに要する時間は、1/10=0.1秒である。また、末尾のパケット52fを送信するのに要する時間は、0.1秒よりも短い。
【0032】
ステップS105において、制御部14は、上記のステップS104で生成された複数のパケット52a~52fを、第2のキュー53に追加する。第2のキュー53は、上述した第1のキュー43よりも優先度の低いキューである。
【0033】
ステップS105において、制御部14は、図4のフローチャートに示されるパケット送信処理を呼び出す。
【0034】
図4のフローチャートに示されるパケット送信処理は、図2のパケット生成処理のステップS105から呼び出されるか、あるいは、図4のパケット送信処理のステップS205の送信完了割り込みから呼び出される。
【0035】
図4のステップS201において、第1のコントローラ10の制御部14は、パケット送信処理の実行中であるか否かを判定する。詳細には、送信中フラグの値が1である場合には、パケット送信処理の実行中であると判定される(S201=YES)。この場合、処理フローはリターンに進み、図4のパケット送信処理は終了する。一方、送信中フラグの値が0である場合には、パケット送信処理の実行中でないと判定される(S201=NO)。この場合、処理フローはステップS202に進む。
【0036】
ステップS202において、制御部14は、第1のキュー43および第2のキュー53がともに空である否かを判定する。詳細には、第1のキュー43および第2のキュー53がともに空である場合(S202=YES)には、処理フローはリターンに進み、図4のパケット送信処理は終了する。一方、第1のキュー43または第2のキュー53のいずれかまたは両方にパケットが入っている場合(S202=NO)には、処理フローはステップS203に進む。
【0037】
ステップS203において、制御部14は、送信中フラグの値を1に設定する。ステップS204において、制御部14は、優先度の高いキューの先頭からパケットを1つ取り出す。詳細には、第1のキュー43にパケットが入っている場合には、制御部14は、第1のキュー43の先頭からパケット42を1つ取り出す。一方、第1のキュー43が空である場合には、制御部14は、第2のキュー53の先頭からパケット52a~52fのうちの1つを取り出す。
【0038】
ステップS205において、制御部14は、上記のステップS204で取り出した1つのパケットを、トラッキングイーサネット30を介して第2のコントローラ20に送信する。ステップS206において、制御部24は、送信中フラグの値を0に設定し、送信完了割り込みを発生させる。
【0039】
上記の図2および図4の処理が実行される際の第1のコントローラ10から第2のコントローラ20に送信されるパケットの流れは、図5のタイミングチャートに示されるようになる。優先度の高い高速スキャンデータ41から生成された単一のパケット42が第1の周期T1で繰り返し送信される空き時間に、優先度の低い標準スキャンデータ51を分割して生成された複数のパケット52a~52fが送信される。なお、図5の中の下向きの三角印は、パケットの送信が開始されるタイミングを示している。
【0040】
図5では、優先度の低い標準スキャンデータ51から生成された複数のパケット52a~52fのうちの1つのパケット52aの送信中に、優先度の高い高速スキャンデータ41から生成された単一のパケット42の送信タイミングがやってきたとしても、現在送信中の優先度の低い1つのパケット52aの送信が完了すれば、直ちに優先度の高い単一のパケット42の送信が開始される。このように、優先度の高い高速スキャンデータ41から生成された単一のパケット42の送信開始までの遅延時間は、優先度の低い標準スキャンデータ51から生成された複数のパケット52a~52fのうちの1つのパケットの送信に要する時間よりも必ず短くなる。したがって、優先度の高い高速スキャンデータ41から生成された単一のパケット42の送信遅延を極力抑えながら、優先度の低い標準スキャンデータ51から生成された複数のパケット52a~52fの送信を併せて行うことができる。
【0041】
図6は、本実施の形態1のように優先度の低い標準スキャンデータ51を分割せずに単一のパケット652によって送信する場合の第1のコントローラ10から第2のコントローラ20に送信されるパケットの流れの一例を示すタイミングチャートである。この場合、優先度の低い標準スキャンデータ51から生成された単一のパケット652の送信中に、優先度の高い高速スキャンデータ41から生成された単一のパケット42の送信タイミングがやってきたとしても、単一のパケット42の送信が開始されるのは、パケット652の送信が完了した後である。そのため、優先度の高い高速スキャンデータ41から生成された単一のパケット42の送信遅延が大きくなってしまう。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態1に係る第1のコントローラ10の制御部14は、高速スキャンデータ41から、第1の周期で繰り返し送信が開始される単一のパケット42を生成するとともに、標準スキャンデータ51を分割して、第2の周期で繰り返し送信が開始される複数のパケット52a~52fを生成し、単一のパケット42および複数のパケット52a~52fを、トラッキングイーサネット30を介して第2のコントローラ20に送信する。
【0043】
この際、優先度の高い高速スキャンデータ41から生成された単一のパケット42は、優先度の低い標準スキャンデータ51から生成された複数のパケット52a~52fよりも優先して送信され、複数のパケット52a~52fの各サイズは、第1の周期T1およびトラッキングイーサネット30の送信レートRに基づいて決定される。
【0044】
上記の特徴により、本実施の形態1に係る制御システム100では、第1のコントローラ10から第2のコントローラ20にデータを送信する際に、優先度の高いデータの送信遅延を抑えながら、優先度の低いデータの送信を併せて行うことができる。したがって、本実施の形態1に係る制御システム100では、一方のコントローラから他方のコントローラにデータを送信する際に、異なる優先度のデータを効率的に送信することができる。
【0045】
なお、上記の実施の形態1では、優先度の高いデータとして高速スキャンデータを送信するとともに、優先度の低いデータとして標準スキャンデータを送信する例を示したが、優先度の高いデータは、2種類以上存在してもよい。図7は、優先度の高いデータとして自局情報および高速スキャンデータを送信するとともに、優先度の低いデータとして標準スキャンデータを送信する場合のタイミングチャートである。優先度の高い自局情報から生成された単一のパケット62と、同じく優先度の高い高速スキャンデータから生成された単一のパケット42とが繰り返し送信される空き時間に、優先度の低い標準スキャンデータを分割して生成された複数のパケット52a~52fが送信される。
【0046】
また、優先度の高いデータは、2種類以上のデータを含んでもよい。図8は、優先度の高いデータとして自局情報と高速スキャンデータを送信するとともに、優先度の低いデータとして標準スキャンデータを送信する場合のタイミングチャートである。優先度の高い自局情報と高速スキャンデータとを結合したデータから生成された単一のパケット72が繰り返し送信される空き時間に、優先度の低い標準スキャンデータを分割して生成された複数のパケット52a~52fが送信される。
【0047】
また、上記の実施の形態1において、トラッキングイーサネット30でパケットの渋滞が発生するか否かを事前に判定する処理を追加してもよい。詳細には、第1のコントローラ10の制御部14は、図2および図4の処理の実行に先立って、下記の2つの条件が成立するか否かを判定する。
【0048】
(T1-E1) > S1/R
(T2-E1)-(T2-E2)/T1*(S1/R) > S2/R
【0049】
ただし、上式において、T1は高速スキャンタスクの周期、E1は高速スキャンタスクの実行時間、S1は高速スキャンデータのサイズ、T2は標準スキャンタスクの周期、E2は標準スキャンタスクの実行時間、S2は標準スキャンデータのサイズ、Rはトラッキングイーサネット30の送信レートである。また、標準スキャンタスクの実行時間E2には、高速スキャンタスクが割り込んだ時間が含まれる。
【0050】
上記の2つの条件が成立する場合には、トラッキングイーサネット30でパケットの渋滞は発生しない。一方、上記の2つの条件が成立しない場合には、トラッキングイーサネット30でパケットの渋滞が発生する。この場合、第1のコントローラ10の制御部14は、二重化が正しく動作しないことをオペレータに警告することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 コントローラ
2 パーソナルコンピュータ
3 監視装置
4 イーサネットハブ
5 監視イーサネット
6 I/O機器
7 I/Oネットワーク
10 第1のコントローラ
11 第1の記憶部
12 第2の記憶部
13 第3の記憶部
14 制御部
20 第2のコントローラ
21 第1の記憶部
22 第2の記憶部
23 第3の記憶部
24 制御部
30 トラッキングイーサネット(ネットワーク回線)
41 高速スキャンデータ(第1のデータ)
42 単一のパケット
43 第1のキュー
51 標準スキャンデータ(第2のデータ)
52 複数のパケット
53 第2のキュー
652 単一のパケット
62 単一のパケット
72 単一のパケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8