(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013807
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】無線計測モジュールおよび状態量計測システム
(51)【国際特許分類】
G01D 11/24 20060101AFI20230119BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G01D11/24 A
G08C17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118234
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】311012538
【氏名又は名称】株式会社立山科学ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 計行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】西田 与志雄
(72)【発明者】
【氏名】福島 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋一
(72)【発明者】
【氏名】往蔵 洋志
【テーマコード(参考)】
2F073
【Fターム(参考)】
2F073AA03
2F073AA11
2F073AA19
2F073AA31
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073AB05
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC12
2F073CD11
2F073DE02
2F073DE06
2F073DE13
2F073EE01
2F073EE11
2F073EF09
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073FG04
2F073GG01
2F073GG05
(57)【要約】
【課題】構造体の状態量を計測する際の修理コストを低減する無線計測モジュールおよび状態量計測システムを提案する。
【解決手段】本発明の送信機10は、構造体に固定され、構造体の状態量を検出するセンサ11と、状態量のアナログデータをデジタルデータに変換するAFE基板13と、電池14と、無線機15と、AFE基板13と無線機15を制御する中継基板16と、を備え、AFE基板13と、電池14と、無線機15とがそれぞれ、着脱可能なソケット(131,141,151,161~163)で中継基板16と接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体に固定され、前記構造体の状態量を検出するセンサと、
前記状態量のアナログデータをデジタルデータに変換するAD変換基板と、
電池と、
無線機と、
前記AD変換基板と前記無線機を制御する中継基板と、を備え、
前記AD変換基板と、前記電池と、前記無線機とがそれぞれ、着脱可能なソケットで前記中継基板と接続されている無線計測モジュール。
【請求項2】
前記AD変換基板と、前記電池と、前記無線機と、前記中継基板とを収容するボックスを備え、
前記ボックスは、開閉可能な蓋部と、
前記センサと前記AD変換基板を接続する配線が挿通される孔部を備える請求項1に記載の無線計測モジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線計測モジュールと、
前記無線計測モジュールと無線で通信する受信機と、
前記受信機と通信可能に接続されている計算機と、を備え、
前記受信機と前記計算機は移動体に搭載されており、
前記移動体と前記無線計測モジュールとの距離が所定距離以下になった場合、前記無線機が前記デジタルデータを前記受信機に送信する状態量計測システム。
【請求項4】
前記計算機は不揮発性の記憶部を備える請求項3に記載の状態量計測システム。
【請求項5】
前記AD変換基板は、前記中継基板からの制御信号に従い間欠動作をするとともに、
前記計算機は、第1期間内に収集された前記アナログデータの集合が変換された前記デジタルデータの集合に対して、所定数のデジタルデータを用いて前記状態量の移動平均値を計算する処理、前記デジタルデータの集合の所定期間内に収集されたデジタルデータを用いて前記状態量の平均値を計算する処理、および、前記第1期間の検出開始タイミングから前記第1期間中の第1タイミングまでの第2期間内に収集された前記デジタルデータを破棄する処理のうち少なくとも1つの処理をする請求項3または請求項4に記載の状態量計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線計測モジュールおよび状態量計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、山岳トンネルなどの電波が届きにくい環境に配置されている構造体のひずみを無線で計測する技術に関する研究や開発が盛んである。例えば、特許文献1には、計測現場付近に設置されている子機と、子機を制御する親機との間で無線通信をするひずみ計測システムについて開示されている。子機は、計測箇所に設置されるひずみゲージ式センサが検出したアナログデータ信号をデジタルデータ信号に変換し、デジタルデータ信号を無線通信信号に変調し、アンテナ部を介して無線通信信号を無線信号(電磁波)として親機に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の子機などの従来の無線計測モジュールは、建設現場に構築されている多数の構造体ごとに用意する必要があり、持ち運びや取り付けの利便性に鑑みてパッケージ化(一体化)されていた。つまり、従来の無線計測モジュールでは、無線計測モジュールの複数の構成要素が分離不可能に組付けられる構成がとられていた。しかし、このような従来の構成では、構成要素の1つでも故障した場合、故障した構成要素のみを交換できず、すべての構成要素を交換しなければならなかった。その結果、構造体の状態量(ひずみ等)を計測する際の修理コストがかさんでしまうという問題があった。
このような観点から、本発明は、構造体の状態量を計測する際の修理コストを低減する無線計測モジュールおよび状態量計測システムを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、構造体に固定され、前記構造体の状態量を検出するセンサと、前記状態量のアナログデータをデジタルデータに変換するAD変換基板と、電池と、無線機と、前記AD変換基板と前記無線機を制御する中継基板と、を備え、前記AD変換基板と、前記電池と、前記無線機とがそれぞれ、着脱可能なソケットで前記中継基板と接続されている無線計測モジュールである。
かかる構成によれば、AD変換基板が故障した場合、故障したAD変換基板を中継基板から分離できるため、AD変換基板のみを交換できる。また、電池が故障あるいは消耗した場合、故障等した電池を中継基板から分離できるため、電池のみを交換できる。また、無線機が故障した場合、故障した無線機を中継基板から分離できるため、無線機のみを交換できる。また、中継基板が故障した場合、故障した中継基板をAD変換基板と電池と無線機とからそれぞれ分離できるため、中継基板のみを交換できる。つまり、AD変換基板、電池、無線機および中継基板のうち少なくとも1つが故障してもAD変換基板、電池、無線機および中継基板のすべてを交換する必要がない。よって、無線計測モジュールの修理コストを低減できる。
【0006】
また、前記AD変換基板と、前記電池と、前記無線機と、前記中継基板とを収容するボックスを備え、前記ボックスは、開閉可能な蓋部と、前記センサと前記AD変換基板を接続する配線が挿通される孔部を備えることが好ましい。
かかる構成によれば、ボックス内に水分が浸入し難くなるので、AD変換基板、電池、無線機および中継基板が水分に起因して故障することを防止できると共に、故障あるいは消耗した構成要素の交換作業を容易に行うことができる。
【0007】
また、本発明は、前記無線計測モジュールと、前記無線計測モジュールと無線で通信する受信機と、前記受信機と通信可能に接続されている計算機と、を備え、前記受信機と前記計算機は移動体に搭載されており、前記移動体と前記無線計測モジュールとの距離が所定距離以下になった場合、前記無線機が前記デジタルデータを前記受信機に送信する状態量計測システムである。
かかる構成によれば、山岳トンネルなどの電波が届きにくい環境に無線計測モジュールが配置されていても、受信機を搭載した移動体を無線計測モジュールに近づけることができる。このため、受信機はすべての無線計測モジュールと通信できる。
【0008】
また、前記計算機は不揮発性の記憶部を備えることが好ましい。
かかる構成によれば、移動体に搭載されている電源の供給が無くなったとしても、計算機が受信機から取得したデータ、つまり、受信機が無線計測モジュールから取得したデジタルデータの消失を防止できる。
【0009】
また、前記AD変換基板は、前記中継基板からの制御信号に従い間欠動作をするとともに、前記計算機は、第1期間内に収集された前記アナログデータの集合が変換された前記デジタルデータの集合に対して、所定数のデジタルデータを用いて前記状態量の移動平均値を計算する処理、前記デジタルデータの集合のうち所定期間内に収集されたデジタルデータを用いて前記状態量の平均値を計算する処理、および、前記第1期間の検出開始タイミングから前記第1期間中の第1タイミングまでの第2期間内に収集された前記デジタルデータを破棄する処理のうち少なくとも1つの処理をすることが好ましい。
かかる構成によれば、デジタルデータの信頼性を向上できるため、構造体の状態量の計測精度を向上できる。AD変換基板として安価なAFE基板を用いる場合、収集したアナログデータにある程度のばらつきがあり動作の初期変動が大きいことが確認されている。AFE基板が間欠動作をした場合にはなおさらである。AEF基板が常時動作した場合には動作の初期変動の影響を排除できるが、電池の消耗が著しいので好ましい手法ではない。本発明によれば、計算機が動作の初期変動を低減または除去させる処理を行うため、間欠動作であってもデジタルデータの信頼性を向上でき、構造体の状態量の計測精度を向上できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構造体の状態量を計測する際の修理コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の状態量計測システムの全体構成図である。
【
図3】第2実施形態の状態量計測システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0013】
<第1実施形態>
[構成]
図1に示すように、第1実施形態の状態量計測システムは、複数の送信機10と、受信機20と、ルータ30と、パソコン40とを備えている。
送信機10は、山岳トンネルなどにおいて覆工や支保工等の構造体の状態量を計測する無線計測モジュールである。状態量は、例えば、構造体のひずみ量であるが、これに限定されず、変位、速度、加速度、土圧、水圧、傾斜角度などでもよい。送信機10は、構造体自体または構造体の付近に適宜配置されている。送信機10の各々は、構造体の任意の1箇所に固定されるセンサ11を備えており、当該箇所の状態量を計測できる。センサ11は、例えば、ひずみゲージセンサであるが、これに限定されない。センサ11は、配線17により送信機10の本体(ボックス12)と電気的に接続している。送信機10は、受信機20との無線通信により、状態量を示すデータを受信機20に送信できる。
受信機20は、送信機10の各々からのデータを受信する機器である。受信機20は、送信機10の各々と通信可能な距離をとる位置に固定して配置できる(固定通信方式)。受信機20は、例えば、最大200台の送信機10と通信し、送信機10の各々から受信したデータを記憶できる。なお、送信機10と受信機20の無線通信の搬送波において、複数の周波数を用意することができ、例えば、送信機10が受信機20との通信に用いる搬送波の周波数を7種類用意でき、受信機20は最大7台の送信機10と同時に無線通信できる。また、無線通信の不具合を考慮して、受信機20のメモリ(図示略)は、例えば、100件のデータを記憶できる。
ルータ30は、受信機20と通信可能に接続されている中継機器である。ルータ30は、パソコン40との無線通信により、受信機20が記憶するデータをパソコン40に送信できる。
パソコン40は、ルータ30から受信したデータを処理する計算機である。パソコン40は、入力部、出力部、制御部、および、記憶部といったハードウェアを備える。例えば、制御部がCPU(Central Processing Unit)から構成される場合、その制御部を含むコンピュータによる情報処理は、CPUによるプログラム実行処理で実現される。また、そのコンピュータに含まれる記憶部は、CPUの指令により、そのコンピュータの機能を実現するためのさまざまなプログラムを記憶する。これによりソフトウェアとハードウェアの協働が実現される。前記プログラムは、記録媒体に記録したり、ネットワークを経由したりすることで提供可能となる。出力部は、画面表示をする表示部の機能を含めてもよい。
【0014】
図2に示すように、送信機10は、センサ11(
図2では図示略)と、ボックス12と、AFE(アナログ・フロント・エンド)基板13と、電池14と、無線機15と、中継基板16とを備えている。
ボックス12は、送信機10の筐体である。ボックス12は、基部121と、蓋部122とを備えている。基部121は、AFE基板13と、電池14と、無線機15と、中継基板16を収容できる。蓋部122は、ボックス12の上部を構成する部位である。蓋部122は、ヒンジ等(図示略)で基部121と連結しており、基部121に対して開閉可能である。
例えば、基部121は、高さ調整部材(図示略)を用いて、AFE基板13と、無線機15と、中継基板16の各々の高さ位置を調整できる。また、基部121の上縁部には孔部121aが形成されている。孔部121aは、センサ11とAFE基板13とを接続する配線17を挿通させることができる。図示は省略するが、孔部121aに止水用のシール材を設けてもよい。
【0015】
AFE基板13は、センサ11が検出した状態量のデータ、つまり、アナログデータをデジタルデータに変換する回路が搭載されているAD変換基板である。AFE基板13は、アナログデータを増幅する機能を有する。AFE基板13は、ソケット131を備える。ソケット131は、中継基板16のソケット161と着脱可能に連結し、AFE基板13と中継基板16を電気的に接続する部材である。
電池14は、AFE基板13と、無線機15と、中継基板16に電力を供給する。電池14は、ソケット141を備える。ソケット141は、中継基板16のソケット162と着脱可能に連結し、電池14と中継基板16を電気的に接続する部材である。
無線機15は、受信機20との無線通信用のICチップが搭載された基板である。無線機15は、ソケット151を備える。ソケット151は、中継基板16のソケット163と着脱可能に連結し、無線機15と中継基板16を電気的に接続する部材である。
中継基板16は、AFE基板13と無線機15を制御する回路が搭載されている基板である。中継基板16は、ソケット161,162,163を備える。例えば、中継基板16は、送信機10の動作のピッチ、センサ11による計測のピッチ、計測数、無線機15によるデータの送信ピッチなどを決定したり、データを記憶したりできる。
【0016】
[動作]
送信機10は、中継基板16の制御に従い、間欠動作をする。送信機10の起動中、センサ11は、所定タイミングごとに対象の構造体のひずみ量をアナログデータとして検出する。ここで、電池14は、センサ11の検出動作時にのみセンサ11に電力を供給でき、電力消費を低減できる。AFE基板13は、センサ11により検出されたアナログデータを増幅し、デジタルデータに変換する。無線機15は、デジタルデータを無線通信で受信機20に送信する。受信機20は、送信機10の各々から受信したデジタルデータを記憶しており、所定のタイミングでルータ30を経由してデジタルデータをパソコン40に送信する。パソコン40は、デジタルデータを処理して構造体のひずみ量を解析する。
【0017】
(部品交換)
送信機10において、AFE基板13が故障した場合、作業員は、ボックス12の蓋部122を開け、AFE基板13のソケット131を中継基板16のソケット161から引き抜き、故障したAFE基板13を取り外すことができる。その後、新品のAFE基板13のソケット131を中継基板16のソケット161に連結できる。このように、故障したAFE基板13を中継基板16から分離できるため、AFE基板13のみを交換できる。
また、電池14が故障または消耗した場合、作業員は、ボックス12の蓋部122を開け、電池14のソケット141を中継基板16のソケット162から引き抜き、故障等した電池14を取り外すことができる。その後、新品の電池14のソケット141を中継基板16のソケット162に連結できる。このように、故障等した電池14を中継基板16から分離できるため、電池14のみを交換できる。
また、無線機15が故障した場合、作業員は、ボックス12の蓋部122を開け、無線機15のソケット151を中継基板16のソケット163から引き抜き、故障した無線機15を取り外すことができる。その後、新品の無線機15のソケット151を中継基板16のソケット163に連結できる。このように、故障した無線機15を中継基板16から分離できるため、無線機15のみを交換できる。
また、中継基板16が故障した場合、作業員は、ボックス12の蓋部122を開け、中継基板16のソケット161~163の各々をソケット131,141,151から引き抜き、故障した中継基板16を取り外すことができる。その後、新品の中継基板16のソケット161~163の各々をソケット131,141,151に連結できる。このように、故障した中継基板16をAFE基板13と、電池14と、無線機15から分離できるため、中継基板16のみを交換できる。
【0018】
上記のように、AFE基板13、電池14、無線機15および中継基板16のうち少なくとも1つが故障してもAFE基板13、電池14、無線機15および中継基板16のすべてを交換する必要がない。よって、送信機10の修理コストを低減できる。
また、従来では、ひずみ量のアナログデータをデジタルデータに変換するデータロガーが高価であったため、無線計測モジュールの修理コストがかさんでいた。第1実施形態によれば、データロガーよりも安価なAFE基板13を用いるため、AFE基板13の故障に対し、送信機10の修理コストを低減できる。
【0019】
(防水性)
AFE基板13と、電池14と、無線機15と、中継基板16は、ボックス12の基部121に収容されている。また、センサ11とAFE基板13を接続する配線17は、孔部121aに挿通されている。よって、ボックス12の蓋部122を閉じることで、ボックス12内に水分が浸入し難くなるので、AFE基板13、電池14、無線機15および中継基板16が水分に起因して故障することを防止できる。また、例えば、孔部121aと配線17との隙間をパッキンやシール材で充填したり、孔部121aの孔径と配線17の直径を一致させたりすることにより、蓋部122を閉じたボックス12の内部への水分の浸入を確実に防止できる。
【0020】
(無線治具)
受信機20は、送信機10の識別子を記憶しており、送信機10ごとのデジタルデータを記憶できる。受信機20が故障した場合、新品の受信機20に交換して送信機10との通信を行うことになるが、従来では、交換した受信機20に対して、すべての送信機10に対する設定情報を再登録する必要があり、煩雑であるという問題があった。なお、設定情報は、例えば、送信機10のID、動作ピッチ、計測ピッチ、測定回数、送信ピッチ、無線チャンネル、時計を含むことができるが、これらに限定されない。
そこで、無線治具を用いて、すべての送信機10の設定情報を更新する手法を導入するとよい。無線治具は、例えば、タブレット端末とすることができるがこれに限定されない。例えば、作業員は無線治具を用いて、交換した受信機20と無線通信し、すべての送信機10の設定情報を更新する。なお、例えば、パソコン40は送信機10の設定情報を記憶しており、無線治具はパソコン40から設定情報を取得できる。無線治具を用いて受信機20と通信することで、受信機20の故障に対するメンテナンス作業を簡略化できる。
【0021】
<第2実施形態>
第2実施形態の説明の際、第1実施形態との相違点について主に説明し、重複点についての説明は省略する。
[構成]
図3に示すように、第2実施形態の状態量計測システムは、第1実施形態の送信機10、受信機20、ルータ30、パソコン40に加え、さらにノートパソコン50を備えている。また、受信機20およびノートパソコン50は、移動体60に搭載されている。また、受信機20およびノートパソコン50は、例えばLANケーブルで通信可能に接続されている。
ノートパソコン50は、受信機20から受信したデータを処理する計算機である。ノートパソコン50は、パソコン40と同様、入力部、出力部、制御部、および、記憶部といったハードウェアを備える。
移動体60は、例えば、バッテリーカーや工事用車両であるが、これに限定されない。
【0022】
[動作]
移動体60は、山岳トンネルなどの電波が届きにくい環境に配置されている送信機10に近づくことができる。よって、移動体60に搭載されている受信機20は、送信機10と通信可能になる所定距離以下にまで送信機10に近づくことができ、すべての送信機10と確実に通信できる(移動通信方式)。送信機10の動作や、送信機10と受信機20とのやり取りは第1実施形態と同じである。また、第2実施形態のような移動通信方式では、受信機20は、同時に通信可能な送信機10の数や、蓄積しているデータの件数に基づいて通信用のスロットを割り当て、送信機10と確実に通信できるように設定できる。
なお、送信機10は、通常は停止しており、受信機20が所定距離以下にまで送信機10に近づいたことをトリガとして起動し、ひずみ等の状態量の検出の動作を行うようにしてもよい。これにより、送信機10の電力消費をより低減できる。
【0023】
受信機20は、送信機10の各々から受信したデジタルデータを記憶しており、所定のタイミングでデジタルデータをノートパソコン50に送信する。ノートパソコン50は、デジタルデータを処理して構造体の状態量を解析できる。ここで、ノートパソコン50の記憶部は、不揮発性の記憶部とすることができる。これにより、移動体60に搭載されている電源の供給が無くなり、ノートパソコン50が強制終了したとしても、ノートパソコン50が受信機20から取得したデジタルデータの消失を防止できる。また、ノートパソコン50は、パソコン40との無線通信により、受信機20から受信したデジタルデータや、当該データの処理結果(ひずみ量の解析結果など)をパソコン40に送信できる。
【0024】
(計測方法)
AFE基板13は安価であるが、センサ11から収集したアナログデータにある程度のばらつきがあり動作の初期変動が大きいことが確認されている。AFE基板13が間欠動作をした場合にはなおさらである。AEF基板13が常時動作をした場合には動作の初期変動の影響を排除できるが、電池14の消耗が著しいので好ましい手法ではない。そこで、ノートパソコン50は、受信機20から受信したデジタルデータに対して、動作の初期変動を低減または除去させる処理を行うことができる。当該処理は、送信機10ごとに行われる。
【0025】
例えば、ノートパソコン50は、第1期間T1内に収集されたアナログデータの集合(データ数N1)が変換されたデジタルデータの集合(データ数N1)に対して、所定数(N1よりも小さい数)のデジタルデータを用いてひずみ量の移動平均値を計算する処理(第1処理)を実行できる。第1期間T1は、送信機10の間欠動作の各動作期間全体とすることができる。また、例えば、収集されるアナログデータのサンプリング間隔は一定(T1/N1)であり、第1期間よりも十分に短いとする。第1処理により、時系列に並んでいるデジタルデータが平滑化される。例えば、20以上のデジタルデータを用いた移動平均をとると、ひずみ量のばらつきを1/10程度に低減できる。
また、例えば、ノートパソコン50は、デジタルデータの集合のうち所定期間T3(第1期間T1よりも短い)内に収集されたデジタルデータを用いてひずみ量の平均値を計算する処理(第2処理)を実行できる。ばらつきの大きなデジタルデータは、ある一定の周期で分布することが確認されている。よって、例えば、ノートパソコン50は、デジタルデータの分布から最大周期を上記所定期間T3として特定し、特定した最大周期内のデジタルデータを平均化できる。第2処理により、第1処理で対応できないほどばらつきが大きなデジタルデータに対しても、ばらつきを低減できる。
また、例えば、ノートパソコン50は、第1期間T1の検出開始タイミングから第1期間中の第1タイミングまでの第2期間T2(T1>T2)内に収集されたデジタルデータを破棄する処理(第3処理)を実行できる。第2期間T2は、送信機10の起動から初期変動が落ち着くまでの期間とすることができる。
【0026】
第1~第3処理により、ノートパソコン50は、送信機10の動作の初期変動を低減または除去させる処理を行うため、間欠動作であってもデジタルデータの信頼性を向上でき、構造体のひずみ量の計測精度を向上できる。その結果、デジタルデータの信頼性を向上でき、構造体のひずみ量の計測精度を向上できる。
なお、第1実施形態においては、パソコン40が上記第1~第3処理を実行できる。
【0027】
[変形例]
(a):AFE基板13は、AD変換基板の一例であり、他の種類のAD変換基板を用いてもよい。
(b):センサ11とAFE基板13とをソケットで連結し、電気的に接続できるようにしてもよい。これにより、センサ11が故障した場合、故障したセンサ11をAFE基板13から取り外すことができる。その後、新品のセンサ11をAFE基板13にソケットで接続できる。このように故障したセンサ11をAFE基板13から分離できるため、センサ11のみを交換できる。AFE基板13が故障した場合についても同様である。また、1枚のAFE基板13に対して複数のセンサ11が電気的に接続してもよい。この場合、複数のセンサ11の一部または全部がAFE基板13とソケットで連結し、電気的に接続できるようにしてもよい。
(c):孔部121aは、ボックス12の壁部の任意の位置に設けることができる。
(d):送信機10は、間欠動作をしてもよいが、特に規則性のない動的な動作をしてもよい。
(e):第2実施形態は、AFE基板13で変換されたデジタルデータに対して、ノートパソコン50が第1~第3処理を行うものであった。しかし、例えば、デジタルデータの一部または全部に対して、中継基板16が第1~第3処理を行い、第1~第3処理の処理結果を送信機10から受信機20を中継してノートパソコン50に送信するようにしてもよい。
(f):第1実施形態のパソコン40、や第2実施形態のパソコン40、ノートパソコン50などの計算機が行う処理や、処理結果の記憶は、仮想化技術が用いられるクラウドサービス(例;IaaS(Infrastructure as a Service))や、ハイパーバイザを備えたサーバーの処理、記憶などとして実現してもよい。
【0028】
(g):本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
(h):本実施形態で説明したソフトウェアをハードウェアとして実現することもでき、ハードウェアをソフトウェアとして実現することもできる。
(i):その他、本発明の構成要素について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 送信機(無線計測モジュール)
11 センサ
12 ボックス
13 AFE基板(AD変換基板)
14 電池
15 無線機
16 中継基板
17 配線
20 受信機
30 ルータ
40 パソコン
50 ノートパソコン
60 移動体
121 基部
121a 孔部
122 蓋部
131,141,151,161,162,163 ソケット