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2023-138078表皮一体成形シートパッド及び車両用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138078
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】表皮一体成形シートパッド及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20230922BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20230922BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20230922BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B60N2/58
B60N2/90
B68G7/05 C
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044573
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利春
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA06
3B084JC01
3B087DE03
3B087DE08
(57)【要約】
【課題】センサ等の装置が表皮及びパッド材と共に一体成形され、シートクッションの意匠性に制約が生じることなく、簡単な構成でセンサ等の装置の動作不良を抑制することが可能な表皮一体成形シートパッド及び車両用シートを得る。
【解決手段】シート表皮16の裏面17にポケット部材32が設けられポケット部材32内に着座センサユニット38が収容された状態でシートパッド14及びシート表皮16と一体に成形されるため、シート表皮16の意匠面19側に着座センサユニット38を挿入するための開口部は不要であり、意匠性に制約は生じない。表皮一体パッド18の成形時において、ポケット部材32は厚さ方向に沿って圧縮されるため開口部32Dは閉じた状態となる。これにより、表皮一体パッド18の成形時において、ポケット部材32内にシートパッド14の原料が浸入しないようにすることができ、着座センサユニット38の動作不良が抑制される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションの一部を構成するパッド材と、
前記パッド材が一体に成形され、当該パッド材における前記シートクッションの意匠面側を被覆する表皮と、
前記表皮の裏面に設けられ、乗員が着座した状態で作動可能な装置が収容された状態で前記パッド材及び前記表皮と一体に成形されたポケット部材と、
を有する表皮一体成形シートパッド。
【請求項2】
前記表皮は複数の表皮片で構成され、隣り合う前記表皮片同士を縫製する縫製部に前記ポケット部材の端部が共縫いされている請求項1に記載の表皮一体成形シートパッド。
【請求項3】
前記装置を挿入する前記ポケット部材の開口部を前記ポケット部材の外側から当該ポケット部材の奥行き方向に沿って覆うカバー部材が前記表皮の裏面に設けられている請求項1又は請求項2に記載の表皮一体成形シートパッド。
【請求項4】
前記ポケット部材の奥行き方向に沿った前記カバー部材の一端部が前記縫製部に共縫いされている請求項2を引用する請求項3に記載の表皮一体成形シートパッド。
【請求項5】
前記ポケット部材に対して前記装置の位置を決める位置決め手段が設けられている請求項1~請求項4の何れか1項に記載の表皮一体成形シートパッド。
【請求項6】
前記装置は、乗員が着座した状態を検知可能なシート状の着座センサユニットであり、
前記着座センサユニットは、
乗員が着座したことを感知するセンサ部と、
前記センサ部と車両側の制御装置と電気的に接続されるハーネス部と、
を含んで構成され、
前記位置決め手段は、
前記ポケット部材において、前記着座センサユニットを挿入する開口部に沿って配置され、前記ハーネス部の幅に合わせて形成された第1位置決め部を含んで構成されている請求項5に記載の表皮一体成形シートパッド。
【請求項7】
前記第1位置決め部は、前記ハーネス部の幅に合わせて形成された一対の第1ノッチ部とされている請求項6に記載の表皮一体成形シートパッド。
【請求項8】
前記位置決め手段は、
前記ハーネス部に形成され、前記ポケット部材内に前記センサ部が収容された状態で前記開口部と重なる第2位置決め部をさらに含んで構成されている請求項6又は請求項7に記載の表皮一体成形シートパッド。
【請求項9】
前記第2位置決め部は、前記ハーネス部に形成された第2ノッチ部とされている請求項8に記載の表皮一体成形シートパッド。
【請求項10】
乗員が着座するシートクッションに対して、請求項1~請求項9の何れか1項に記載の前記表皮一体成形シートパッドが適用されている車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮一体成形シートパッド及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シートクッションにおけるカバーリング作業の廃止による部品点数の削減、又はシートクッションのパッド材におけるインバース形状の実現を可能とするため、パッド材と表皮を一体成形する技術が用いられている。
【0003】
一方、シートクッションに対して、例えば、着座センサ等のセンサが配設される場合があり、上記技術のように、パッド材と表皮を一体成形する場合、センサを含めてパッド材と表皮が一体成形されることになるが、パッド材の原料、接着剤等がセンサに付着してしまうと、センサが動作不良を起こす可能性が高い。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、センサを保護部材で挟み、セットピンでパッド材及び表皮を成形する金型内に保護部材をセットすることによって、パッド材及び表皮の一体成形を可能とした技術が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、表皮の裏面側に袋状のポケット部材を縫製すると共に表皮の表面側にポケット部材の開口部を形成しており、パッド材の表面に表皮が被覆された状態で、当該開口部を通じてセンサを収容可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-193689号公報
【特許文献2】特開2020-93079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された先行技術では、センサを保護する保護部品の点数が多く、パッド材及び表皮の一体成形時には、センサ自体の位置決め工程が発生し、作業工数が増えてしまう。
【0008】
また、上記特許文献2に記載された先行技術では、シートクッションの意匠面側にポケット部材の開口部が形成されるため、意匠性に制約が生じる。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、センサ等の装置が表皮及びパッド材と共に一体成形され、シートクッションの意匠性に制約が生じることなく、簡単な構成でセンサ等の装置の動作不良を抑制することが可能な表皮一体成形シートパッド及び車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドは、乗員が着座するシートクッションの一部を構成するパッド材と、前記パッド材が一体に成形され、当該パッド材における前記シートクッションの意匠面側を被覆する表皮と、前記表皮の裏面に設けられ、乗員が着座した状態で作動可能な装置が収容された状態で前記パッド材及び前記表皮と一体に成形されたポケット部材と、を有する。
【0011】
請求項1に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドでは、パッド材、表皮及びポケット部材を含んで構成されている。パッド材は、乗員が着座するシートクッションの一部を構成し、表皮はパッド材と一体に成形され、当該パッド材におけるシートクッションの意匠面側を被覆する。
【0012】
また、本発明では、ポケット部材は、表皮の裏面に設けられており、乗員が着座した状態で作動可能な装置(センサ等の装置)が収容された状態でパッド材及び表皮と一体に成形される。したがって、本発明では、表皮の意匠面側に装置を挿入するための開口部を形成する必要は無く、シートクッションの意匠性に制約は生じない。
【0013】
ここで、表皮一体成形シートパッドは、例えば、当該表皮一体成形シートパッドを成形する金型のキャビティ面に沿って表皮を配置させた状態で、当該金型内にパッド材の原料となる発泡材を注入し、金型内で発泡材を発泡させ表皮とパッド材を一体化させる。
【0014】
表皮一体成形シートパッドの成形時には、金型内で形成される空間部から金型のキャビティ面へ向かって発泡材を介して押圧力(金型内の内圧)が生じるため、金型のキャビティ面に沿って配置された表皮には、当該表皮の厚さ方向に沿って表皮の裏面側から表面側へ向かって当該押圧力が作用する。
【0015】
つまり、表皮の裏面に設けられたポケット部材には、当該ポケット部材の厚さ方向に沿って押圧力が作用する。したがって、表皮一体成形シートパッドの成形時において、ポケット部材は厚さ方向に沿って圧縮され、ポケット部材の開口部は閉じた状態となる。
【0016】
これにより、本発明では、表皮一体成形シートパッドの成形時において、ポケット部材の内部にパッド材の原料が浸入しないようにすることが可能となる。このように、表皮一体成形シートパッドの成形時において、ポケット部材の内部にパッド材の原料が浸入しないようにすることで、ポケット部材の内部にセンサ等の装置が収容された状態で、表皮一体成形シートパッドを成形することが可能となる。
【0017】
そして、表皮一体成形シートパッドの成形時において、ポケット部材の内部にパッド材の原料が浸入しないようにすることで、ポケット部材の内部に収容されたセンサ等の装置において、動作不良を抑制することが可能となる。
【0018】
なお、「乗員が着座した状態で作動可能な装置」として、例えば、着座センサ、温度センサ等のセンサの他、シート状ヒータ、スピーカの一部を構成するボイスコイル等が挙げられる。
【0019】
請求項2に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドは、請求項1に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドにおいて、前記表皮は複数の表皮片で構成され、隣り合う前記表皮片同士を縫製する縫製部に前記ポケット部材の端部が共縫いされている。
【0020】
請求項2に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドでは、表皮が複数の表皮片で構成されており、隣り合う表皮片同士は縫製部を介して縫製されている。この縫製部にポケット部材の端部が共縫いされている。
【0021】
例えば、表皮の裏面に対してポケット部材を両面テープ等によって接着させることによってポケット部材を表皮の裏面に設けることもできるが、この場合、ポケット部材を表皮の裏面に接着させる接着作業が必要となる。
【0022】
これに対して、本発明では、表皮片同士を縫製する縫製部にポケット部材の端部を共縫いさせることによって、ポケット部材の有無に関係なく元々表皮の形成において必要な縫製作業を利用してポケット部材を表皮の裏面に設けることができる。したがって、本発明では、ポケット部材を表皮の裏面に接着させる接着作業を削減することができ、コストを抑制することが可能となる。
【0023】
請求項3に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドは、請求項1又は請求項2に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドにおいて、前記装置を挿入する前記ポケット部材の開口部を前記ポケット部材の外側から当該ポケット部材の奥行き方向に沿って覆うカバー部材が前記表皮の裏面に設けられている。
【0024】
請求項3に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドでは、表皮の裏面にカバー部材が設けられている。このカバー部材によって、センサ等の装置を挿入するポケット部材の開口部がポケット部材の外側から当該ポケット部材の奥行き方向に沿って覆われるようになっている。これにより、表皮一体成形シートパッドの成形時において、より確実にポケット部材の内部にパッド材の原料が浸入しないようにすることができる。
【0025】
請求項4に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドは、請求項3に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドにおいて、前記ポケット部材の奥行き方向に沿った前記カバー部材の一端部が前記縫製部に共縫いされている。
【0026】
請求項4に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドでは、ポケット部材の奥行き方向に沿ったカバー部材の一端部が縫製部に共縫いされているため、カバー部材を表皮の裏面に接着させる接着作業を削減することができ、コストを抑制することが可能となる。
【0027】
請求項5に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドは、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドにおいて、前記ポケット部材に対して前記装置の位置を決める位置決め手段が設けられている。
【0028】
請求項5に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドでは、位置決め手段が設けられており、当該位置決め手段によって、ポケット部材に対してセンサ等の装置の位置が設定される。
【0029】
ここで、ポケット部材は表皮の裏面に設けられるが、例えば、当該ポケット部材を表皮に対して縫製した場合、ポケット部材の縫製部が表皮一体成形シートパッドの意匠面側に出てしまう。このため、表皮において、例えば、表皮片同士を縫製する縫製部にポケット部材の側端部を共縫いさせることによって、ポケット部材の側端部が縫製できると共にポケット部材専用の縫製部をなくすことができ、ポケット部材を目立たないようにすることができる。
【0030】
一方、表皮片同士を縫製する縫製部は、一般に、シートクッションにおけるシート幅方向の中央部と両側部をそれぞれ縫製する。このため、シートクッションにおけるシート幅方向の中央部にポケット部材を設けた場合、センサ等の装置によっては、当該装置に対してポケット部材が大き過ぎてしまう場合がある。
【0031】
このような場合、ポケット部材内にセンサ等の装置が収容された状態で、当該装置とポケット部材との間で遊びが生じることになる。したがって、ここでは、ポケット部材に対してセンサ等の装置を位置決めする必要がある。このため、本発明では、位置決め手段が設けられることによって、当該位置決め手段によって、ポケット部材に対してセンサ等の装置の位置を設定することができる。
【0032】
請求項6に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドは、請求項5に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドにおいて、前記装置は、乗員が着座した状態を検知可能なシート状の着座センサユニットであり、前記着座センサユニットは、乗員が着座したことを感知するセンサ部と、前記センサ部と車両側の制御装置と電気的に接続されるハーネス部と、を含んで構成され、前記位置決め手段は、前記ポケット部材において、前記着座センサユニットを挿入する開口部に沿って配置され、前記ハーネス部の幅に合わせて形成された第1位置決め部を含んで構成されている。
【0033】
請求項6に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドでは、乗員が着座した状態で作動可能な装置は、乗員が着座した状態を検知可能なシート状の着座センサユニットである。当該着座センサユニットは、センサ部及びハーネス部を含んで構成されており、センサ部によって、乗員が着座したことが感知される。当該ハーネス部によって、センサ部と車両側の制御装置とが電気的に接続される。
【0034】
また、位置決め手段は、第1位置決め部を含んで構成されている。第1位置決め部は、ポケット部材において、着座センサユニットを挿入する開口部に沿って配置されており、着座センサユニットのハーネス部の幅に合わせて形成されている。
【0035】
ポケット部材内に着座センサユニットを挿入させるとき、ポケット部材の開口部に形成された第1位置決め部によって、着座センサユニットのハーネス部の位置を合わせることによって、ポケット部材の幅方向に対して着座センサユニットの位置を決めることができる。
【0036】
請求項7に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドは、請求項6に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドにおいて、前記第1位置決め部は、前記ハーネス部の幅に合わせて形成された一対の第1ノッチ部とされている。
【0037】
請求項7に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドでは、第1位置決め部は、着座センサユニットのハーネス部の幅に合わせて形成された一対の第1ノッチ部とされており、第1ノッチ部と第1ノッチ部の間に着座センサユニットのハーネス部を配置することによって、ポケット部材の幅方向に対して着座センサユニットの位置を決めることができる。
【0038】
請求項8に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドは、請求項6又は請求項7に記載の表皮一体成形シートパッドにおいて、前記位置決め手段は、前記ハーネス部に形成され、前記ポケット部材内に前記センサ部が収容された状態で前記開口部と重なる第2位置決め部をさらに含んで構成されている。
【0039】
請求項8に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドでは、位置決め手段は、第2位置決め部をさらに含んで構成されている。第2位置決め部は、着座センサユニットのハーネス部に形成されており、ポケット部材内に着座センサユニットのセンサ部が収容された状態でポケット部材の開口部と重なるように設定されている。
【0040】
前述のように、ポケット部材は表皮の裏面に設けられるため、当該ポケット部材を表皮に対して縫製した場合、ポケット部材の縫製部が表皮一体成形シートパッドの意匠面側に出てしまう。このため、表皮において、表皮片同士を縫製する縫製部にポケット部材の端部を共縫いさせることによって、ポケット部材専用の縫製部をなくすことができ、ポケット部材を目立たないようにすることができる。
【0041】
また、前述のように、表皮は、シートクッションにおけるシート幅方向の中央部と両側部をそれぞれ縫製するが、これ以外にも、シートクッションにおけるシート幅方向の中央部において、シート幅方向に沿って縫製部が設けられる場合がある。この場合、当該縫製部によってポケット部材の底端部を共縫いすることで、ポケット部材の底端部が縫製できると共にポケット部材専用の縫製部をなくすことができ、ポケット部材を目立たないようにすることができる。
【0042】
一方、当該縫製部によってポケット部材の底端部を共縫いする場合、ポケット部材内に着座センサユニットが収容された状態で、着座センサユニットの先端とポケット部材の底端部との間で遊びが生じる場合がある。この場合、ポケット部材の奥行き方向に対して着座センサユニットを位置決めする必要がある。
【0043】
本発明では、第2位置決め部によって、ポケット部材内に着座センサユニットのセンサ部が収容された状態で、着座センサユニットのハーネス部に形成された第2位置決め部とポケット部材の開口部とを重ねることによって、ポケット部材の奥行き方向に対して着座センサユニットの位置を決めることができる。
【0044】
請求項9に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドは、請求項8に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドにおいて、前記第2位置決め部は、前記ハーネス部に形成された第2ノッチ部とされている。
【0045】
請求項9に記載の発明に係る表皮一体成形シートパッドでは、第2位置決め部は、着座センサユニットのハーネス部に形成された第2ノッチ部とされており、第2ノッチ部とポケット部材の開口部の位置が重なることによって、ポケット部材の奥行き方向に対して着座センサユニットの位置を決めることができる。
【0046】
請求項10に記載の発明に係る車両用シートは、乗員が着座するシートクッションに対して、請求項1~請求項9の何れか1項に記載の前記表皮一体成形シートパッドが適用されている。
【0047】
請求項10に記載の発明に係る車両用シートでは、乗員が着座するシートクッションに対して表皮一体成形シートパッドが適用されることによって、カバーリング作業が廃止され、部品点数が削減される。また、車両用シートにおいて、シートクッションの意匠面に影響を与えることなく、センサ等の装置をポケット部材の内部に収容させることができる。
【発明の効果】
【0048】
以上説明したように、本発明によれば、センサ等の装置が表皮及びパッド材と共に一体成形され、シートクッションの意匠性に制約が生じることなく、簡単な構成でセンサ等の装置の動作不良を抑制することが可能な表皮一体成形シートパッド及び車両用シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本実施形態に係る表皮一体成形シートパッドが適用された車両用シートのシートクッションを示す平面図である。
図2】本実施形態に係る表皮一体成形シートパッドが適用された車両用シートのシートクッションにおいて車両前後方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
図3図1に示すA-A線に沿って切断したときの拡大断面図である。
図4】本実施形態に係る表皮一体成形シートパッドにおいて要部を説明するための分解正面図である。
図5】本実施形態に係る表皮一体成形シートパッドにおいて要部を説明するための正面図である。
図6】比較例として示す図5に対応する正面図である。
図7】本実施形態に係る表皮一体成形シートパッドが成形されるときの状態を説明するための概略断面図である。
図8】本実施形態に係る表皮一体成形シートパッドが適用された車両用シートのシートクッションの変形例1を示す図1に対応する平面図である。
図9】本実施形態に係る表皮一体成形シートパッドにおいて要部を説明するための図4に対応する分解正面図である。
図10】本実施形態に係る表皮一体成形シートパッドが適用された車両用シートのシートクッションの変形例2を示す図1に対応する平面図である。
図11図10に示すB-B線に沿って切断したときの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る表皮一体成形シートパッドについて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは、車両用シートの前方向(着座者の向く方向)を示しており、矢印UPは車両用シートの上方向を示し、矢印RHは車両用シートの右方向を示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両用シートの前後、車両用シートの上下、進行方向を向いた場合の車両用シートの左右を示すものとする。
【0051】
(表皮一体成形シートパッドの構成)
まず、本実施の形態に係る表皮一体成形シートパッドの構成について説明する。
【0052】
図1に示されるように、車両用シート10は、フロントシート(図示省略)よりも車両前後方向の後方側に配置されたリヤシートであり、乗員が着座するシートクッション12と、図示はしないがシートクッション12の後端部12Aから立設されシートクッション12に着座した乗員の上体を支持するシートバックと、シートバックの上端部に取り付けられシートクッション12に着座した乗員の頭部を支持するヘッドレストと、を備えている。
【0053】
なお、当該ヘッドレストは、左右セパレートタイプの車両用シートに適用されてもよいし、ベンチシートタイプの車両用シートに適用されてもよい。このため、ヘッドレストは、適用されるシートに応じて、その形状は適宜変更可能である。勿論、ヘッドレストについては必ずしも必要ではない。
【0054】
図2に示されるように、当該シートクッション12は、骨格部材であるシートフレーム(図示省略)と、シートパッド(パッド材)14と、シートパッド14を被覆するシート表皮(表皮)16と、を備えている(後述する)。
【0055】
本実施形態では、シートパッド14とシート表皮16は一体に成形されており、シートパッド14の上面14A、前面14B、後面14C、両側面14D(図1参照)はシート表皮16によって被覆されている。このように、シート表皮16が一体に成形されたシートパッド14を以下表皮一体パッド(表皮一体成形シートパッド)18と称する。
【0056】
一方、図1に示されるように、シートクッション12は、車両の右側に配置されるシートクッション12Rと、車両の左側に配置されるシートクッション12Lと、を含んで構成されている。シートクッション12Rとシートクッション12Lの間には、例えば、図示はしないがアームレストが前倒した状態で配置可能とされる。
【0057】
ここで、シートクッション12R、12Lは、それぞれシート幅方向の中央部にメイン部20が設けられており、メイン部20に乗員の臀部及び大腿部が配置される。メイン部20の車両幅方向の外側には、サイド部22が設けられている。シートクッション12Rのメイン部20とシートクッション12Lのメイン部20の間には、センタ部24が設けられ、センタ部24の上方側にアームレストが配置可能とされる。なお、このアームレストは必ずしも必要ではない。
【0058】
本実施形態では、シート表皮16は、シートクッション12のメイン部20、サイド部22及びセンタ部24に合わせて複数の表皮片16A、16B、16Cで構成されており、隣り合う表皮片16Aと表皮片16Bは縫製部26によって縫製されており、表皮片16Aと表皮片16Cは縫製部28によって縫製されている。なお、表皮片16Aは、シート前後方向の前後で表皮片16A1と表皮片16A2に分かれており、表皮片16A1と表皮片16A2は、縫製部30によって縫製されている。
【0059】
ここで、本実施形態では、図1図2に示されるように、シートクッション12Lのメイン部20の後部20A側には、シート表皮16の裏面17にポケット部材32が設けられている。なお、ここでは、シートクッション12L側のみにポケット部材32が図示されているが、シートクッション12R側にもポケット部材32が設けられている。
【0060】
本実施形態では、図1に示すシートクッション12Rとシートクッション12Lは、略同じ構成であるため、以下の説明では、シートクッション12Rとシートクッション12Lの区別は行わず、シートクッション12として説明する。
【0061】
当該シートクッション12に設けられたポケット部材32は、例えば、平面視で略矩形状を成しており、シートパッド14の原料が含浸しないシート部材で形成されている。例えば、当該シート部材の材質として、ポリ塩化ビニル(PVC)、フィルムラミネートしたスラブウレタン等、通気性が無く一般的な表皮材に使用される程度の硬さを有するものが好ましい。
【0062】
本実施形態では、ポケット部材32の側端部32A、32Bは、縫製部26、28にそれぞれ共縫いされており、図3に示されるように、ポケット部材32の底端部32Cは縫製部30に共縫いされている。本実施形態では、ポケット部材32は、シート表皮16の裏面17との間でいわゆるポケット部が形成されているが、ポケット部材32のみによってポケット部が形成されてもよい。ここで、図3は、図1に示すA-A線に沿って切断したときの要部が拡大された断面図が示されている。なお、図3では、見やすさを考慮して、シートパッド14のハッチングは図示していない。
【0063】
また、本実施形態では、図3図5に示されるように、ポケット部材32の内部33には着座センサユニット(装置)38が収容されており、位置決め部35によって、ポケット部材32に対して着座センサユニット38の位置が設定可能とされている。
【0064】
具体的に説明すると、本実施形態では、図3図4に示されるように、ポケット部材32の開口部32Dには、第1位置決め部35Aとして、ポケット部材32の底端部32C側へ向かってくさび状に切り欠かれた一対のノッチ部34、36が当該開口部32Dに沿って配置されている。ノッチ部34とノッチ部36の離間距離は、後述する着座センサユニット38のハーネス部40の幅寸法と略同じになるように設定されている。
【0065】
なお、ここでは、ポケット部材32の内部33に着座センサユニット38が収容されていることを示すため着座センサユニット38の板厚を厚く図示しているが、着座センサユニット38はシート状を成しており、実際には薄く形成されている。
【0066】
一方、着座センサユニット38は、シート状を成しており、正面視でH字状を成すセンサ部46と、帯状を成すハーネス部40とを含んで構成され、当該センサ部46によって、乗員が着座したことが感知される。なお、本実施形態では、センサ部46はH字状を成しているが、センサ部46の形状はH字状に限るものではない。
【0067】
また、当該ハーネス部40には、第2位置決め部35Bとして、当該ハーネス部40の幅方向に沿ってくさび状に切り欠かれたノッチ部48が形成されている。ハーネス部40は、図示はしないが、車両側の制御装置としての車載用ECU(ECU;Electronic Control Unit、以下単に「ECU」と称する)と電気的に接続されており、当該ハーネス部40によってECUとセンサ部46とが接続されている。
【0068】
ECUは、CPU、ROM、RAM、ストレージ及び通信インタフェースを有し、これらの各構成部は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。また、ECUは、機能構成として、制御部を有する。制御部の機能構成は、CPUがROM又はストレージに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。当該制御部は、シートクッション12(図1参照)に乗員が着座していることを検知し、これにより、例えば、リヤシート側において、ヒータ等の空調装置が制御されるように設定されてもよい。
【0069】
ところで、本実施形態では、一例として、表皮一体パッド18(図2参照)を成形する成形用型(以下、「金型」と称する)は、アルミニウム合金で形成されている。当該金型は、図7に示す下型42及び上型(図示省略)を含んで構成されており、上型と下型42の間には空間部44が形成され、この空間部44内にシートパッドの原料となるウレタン等の発泡材が注入される。
【0070】
ここで、表皮一体パッド18を成形する際、下型42には、キャビティ面42Aに沿ってシート表皮16が配置される。この状態で、発泡材を注入して上型を閉止させ、発泡材が発泡することによってシートパッド14(図2参照)がシート表皮16と一体に成形される。
【0071】
(表皮一体成形シートパッドの作用及び効果)
次に、本実施の形態に係る表皮一体成形シートパッドの作用及び効果について説明する。
【0072】
図2に示されるように、本実施形態では、シート表皮16はシートパッド14と一体に成形されており、当該シートパッド14におけるシートクッション12の意匠面19(上面14A、前面14B、後面14C、両側面14D)側を被覆している。このように、シート表皮16とシートパッド14が一体に成形されることによって、本実施形態では、カバーリング作業が廃止され、部品点数が削減される。
【0073】
また、本実施形態では、シート表皮16の裏面17には、ポケット部材32が設けられており、ポケット部材32には、着座センサユニット38が収容されている。つまり、本実施形態では、着座センサユニット38が収容された状態で、シートパッド14及びシート表皮16と一体に成形されている。
【0074】
したがって、本実施形態では、シート表皮16の意匠面19側に着座センサユニット38を挿入するための開口部を形成する必要は無く、シートクッション12の意匠性に制約は生じない。
【0075】
ここで、シートパッド14とシート表皮16が一体成形されて形成された表皮一体パッド18は、図7に示されるように、当該表皮一体パッド18を成形する金型41の一部を構成する下型42側にシート表皮16を配置させた状態で、当該金型41内にシートパッド14(図2参照)の原料となる発泡材を注入し、金型41内で発泡材を発泡させシート表皮16とシートパッド14を一体化させる。
【0076】
表皮一体パッド18の成形時には、金型41の下型42側にシート表皮16を配置し、金型41の他部を構成する上型(図示省略)との間で形成される空間部44から下型42のキャビティ面42Aへ向かって発泡材を介して押圧力(矢印方向)が生じる。
【0077】
これにより、下型42側に配置されたシート表皮16には、当該シート表皮16の厚さ方向(矢印方向)に沿ってシート表皮16の裏面17側から表面(意匠面19)側へ向かって当該押圧力が作用することになる。
【0078】
つまり、シート表皮16の裏面17に設けられたポケット部材32には、当該ポケット部材32の厚さ方向に沿って押圧力が作用する。したがって、表皮一体パッド18の成形時において、ポケット部材32は厚さ方向に沿って圧縮され、ポケット部材32の開口部32Dは閉じた状態となる。
【0079】
これにより、本実施形態では、表皮一体パッド18の成形時において、ポケット部材32の内部33にシートパッド14の原料が浸入しないようにすることが可能となる。なお、着座センサユニット38のハーネス部40は、金型41において、上型と下型42が当接する図示しないパーティングラインから外に出すようにする。
【0080】
このように、表皮一体パッド18の成形時において、ポケット部材32の内部33にシートパッド14(図2参照)の原料が浸入しないようにすることで、ポケット部材32の内部33に収容された着座センサユニット38において、動作不良を抑制することが可能となる。言い換えると、本実施形態では、ポケット部材32の内部33に着座センサユニット38等の装置が収容された状態で、表皮一体パッド18(図2参照)を成形することが可能となる。
【0081】
すなわち、本実施形態によれば、図2に示されるように、着座センサユニット38等の装置がシート表皮16及びシートパッド14と共に一体成形され、シートクッション12の意匠性に制約が生じることなく、簡単な構成で着座センサユニット38等の装置の動作不良を抑制することが可能となる。これにより、歩留まりを向上させることができ、結果的に製造コストを削減することができる。
【0082】
なお、本実施形態によれば、前述のように、表皮一体パッド18の成形時において、ポケット部材32は厚さ方向に沿って圧縮され、ポケット部材32の開口部32Dは閉じた状態となるが、着座センサユニット38等の装置をポケット部材32の内部33に挿入後、必要に応じて接着等によりポケット部材32の開口部32Dを閉じてもよいのは勿論のことである。
【0083】
また、比較例として、例えば、シートパッド14の表面にシート表皮16を被覆する場合、図示はしないが、シートパッドがインバース形状を成していると、シートパッドに対してシート表皮が浮いてしまい、接着剤によってシートパッドとシート表皮の間を接着させる必要が生じる。
【0084】
これに対して、本実施形態では、シートパッド14及びシート表皮16が一体成形されるため、シートパッドに対してシート表皮が浮くことはない。つまり、本実施形態では、シートパッドにおけるインバース形状の実現が可能となり、シートクッション12におけるデザインの自由度が向上する。
【0085】
また、本実施形態によれば、着座センサユニット38等の装置をシート表皮16及びシートパッド14と共に一体成形することができるため、シート表皮16及びシートパッド14を一体成形させた後に、シート表皮16とシートパッド14の間に着座センサユニット38等の装置を配設させる必要は無く、製造コストを削減することができる。
【0086】
また、本実施形態では、図1に示されるように、シート表皮16が複数の表皮片16A、16B、16Cで構成されており、隣り合う表皮片16Aと表皮片16B同士は縫製部26を介して縫製され、隣り合う表皮片16Aと表皮片16C同士は縫製部28を介して縫製されている。この縫製部26、28にポケット部材32の側端部32A、32Bがそれぞれ共縫いされている。
【0087】
例えば、比較例として、図示はしないが、シート表皮16の裏面17(図2参照)に対してポケット部材32を両面テープ等によって接着させることによってポケット部材32をシート表皮16の裏面17に設けることもできるが、この場合、ポケット部材32をシート表皮16の裏面17に接着させる接着作業が必要となる。
【0088】
これに対して、本実施形態では、表皮片16A、16B、16C同士を縫製する縫製部26、28にポケット部材32の側端部32A、32Bを共縫いさせることによって、ポケット部材32の有無に関係なく元々必要な縫製作業を利用してポケット部材32をシート表皮16の裏面17に設けることができる。したがって、本実施形態では、ポケット部材32をシート表皮16の裏面17に接着させる接着作業を削減することができ、コストを抑制することが可能となる。
【0089】
ここで、本実施形態では、図4図5に示されるように、位置決め部35によって、ポケット部材32に対して着座センサユニット38等の装置の位置が設定される。また、図3に示されるように、ポケット部材32はシート表皮16の裏面17に設けられる。
【0090】
例えば、比較例として、図示はしないが、当該ポケット部材32をシート表皮16に対して縫製した場合、ポケット部材32の縫製部が表皮一体パッド18の意匠面19側に出てしまう。
【0091】
このため、本実施形態では、図1に示されるように、シート表皮16において、表皮片16A、16B、16C同士を縫製する縫製部26、28にポケット部材32の側端部32A、32Bを共縫いさせている。これにより、本実施形態では、ポケット部材32の側端部32A、32Bが縫製できると共にポケット部材専用の縫製部をなくすことができ、ポケット部材32を目立たないようにすることができる。
【0092】
一方、表皮片16A、16B、16C同士を縫製する縫製部26、28は、シートクッション12のメイン部20とサイド部22、センタ部24をそれぞれ縫製する。このため、シートクッション12のメイン部20にポケット部材32を設けた場合、着座センサユニット38等の装置によっては、当該着座センサユニット38に対してポケット部材32が大き過ぎてしまう場合がある。
【0093】
このような場合、ポケット部材32内に着座センサユニット38等の装置が収容された状態で、当該着座センサユニット38とポケット部材32との間で遊びが生じることになり、図6に示されるように、ポケット部材32に対して着座センサユニット38がシート幅方向にずれたり傾いたりした状態で配置される可能性がある。
【0094】
このため、図5に示されるように、ポケット部材32に対して、着座センサユニット38等の装置を位置決めする必要がある。したがって、本実施形態では、図4図5に示されるように、当該位置決め部35が設けられることによって、当該位置決め部35によって、ポケット部材32に対して着座センサユニット38等の装置の位置を設定することができる。
【0095】
ここで、図1に示されるように、シートクッション12のメイン部20とサイド部22、センタ部24を縫製する以外にも、シートクッション12のメイン部20において、シート幅方向に沿って縫製部30が設けられる場合がある。
【0096】
この場合、図3に示されるように、当該縫製部30によってポケット部材32の底端部32Cを共縫いすることで、ポケット部材32の底端部32Cが縫製できると共にポケット部材専用の縫製部をなくすことができ、ポケット部材32を目立たないようにすることができる。
【0097】
当該縫製部30によってポケット部材32の底端部32Cを共縫いする場合、図5に示されるように、ポケット部材32内に着座センサユニット38が収容された状態で、着座センサユニット38の先端38Aとポケット部材32の底端部32Cとの間で遊びが生じる場合がある。この場合、ポケット部材32の奥行き方向に対して着座センサユニット38を位置決めする必要がある。
【0098】
以上のことから、本実施形態では、位置決め部35として、ポケット部材32側に設けられた第1位置決め部35Aと、着座センサユニット38側に設けられた第2位置決め部35Bと、を含んで構成されている。
【0099】
具体的に説明すると、第1位置決め部35Aは、ポケット部材32において、着座センサユニット38を挿入する開口部32Dに沿って配置され、着座センサユニット38のハーネス部40の幅に合わせて形成された一対のノッチ部34、36である。当該ノッチ部34とノッチ部36の間に着座センサユニット38のハーネス部40を配置することによって、ポケット部材32の幅方向に対して着座センサユニット38の位置を決めることができる。
【0100】
なお、本実施形態では、ハーネス部40は帯状を成しており、ハーネス部40及びノッチ部34、36によって、ポケット部材32の幅方向に対する着座センサユニット38の位置を決めているが、ハーネス部40の形状は帯状に限るものではない。例えば、図示はしないが、ハーネス部40が線状を成していてもよい。この場合、1つのノッチ部によってポケット部材32の幅方向に対して着座センサユニット38の位置が決められるようにしてもよい。
【0101】
また、第2位置決め部35Bは、着座センサユニット38のハーネス部40に形成され、ポケット部材32内に着座センサユニット38のセンサ部46が収容された状態で、ポケット部材32の開口部32Dと重なるノッチ部48である。当該ノッチ部48とポケット部材32の開口部32Dとを重ねることによって、ポケット部材32の奥行き方向に対して着座センサユニット38の位置を決めることができる。
【0102】
以上のように、本実施形態では、ポケット部材32に対して、幅方向及び奥行き方向に着座センサユニット38の位置を決めることができる。このようにして、ポケット部材32に対して幅方向及び奥行き方向に位置決めされた着座センサユニット38では、両面テープ等の接着剤を介してポケット部材32の内面側にセンサ部46を接着させる。
【0103】
ここで、着座センサユニット38は、表皮一体パッド18の成形時において、シートパッド14の原料、接着剤等がセンサ部46に付着することで動作不良を起こす可能性がある。このため、着座センサユニット38のセンサ部46は、ポケット部材32の奥方側に配置される方がよい。したがって、ノッチ部48では、当該ノッチ部48がポケット部材32から完全に露出しないようにする。
【0104】
また、本実施形態では、第1位置決め部35A、第2位置決め部35Bとして、くさび状に切り欠かれたノッチ部34、36、48を例に挙げたが、ポケット部材32に対して、幅方向及び奥行き方向に着座センサユニット38を位置決めすることができればよいため、これに限るものではない。例えば、目印となる位置決め線であってもよい。
【0105】
さらに、本実施形態では、図1図2に示されるように、シートクッション12のメイン部20の後部20A側にポケット部材32が設けられ、ポケット部材32の内部33に着座センサユニット38が収容されている。
【0106】
(本実施形態の補足事項)
本実施形態では、図1に示されるように、ポケット部材32の側端部32A、32Bは、縫製部26、28にそれぞれ共縫いされているが、ポケット部材32の側端部32A、32Bのうち、いずれか一方のみが縫製部26、28に共縫いされてもよい。
【0107】
また、変形例1として、図8に示されるように、両面テープ50等の接着によりポケット部材52をシート表皮16の裏面17に接着してもよいのは勿論のことである。この場合、図9に示されるように、ポケット部材52は、着座センサユニット38の大きさに合わせて形成されることになる。このため、着座センサユニット38は当該ポケット部材52の内部に収容された状態で位置決めされる。したがって、ここでは、図4に示す位置決め部35は不要となる。
【0108】
また、変形例2として、ポケット部材32の内部33にシートパッド14の原料が浸入しないようにするため、図10図11に示されるように、ポケット部材32に対してさらに開口部32Dを塞ぐカバー54が設けられてもよい。なお、図11は、図10に示すB-B線に沿って切断したときの要部が拡大された断面図が示されている。また、図11では、見やすさを考慮して、シートパッド14のハッチングは図示していない。
【0109】
本実施形態では、図11に示されるように、カバー54におけるポケット部材32の奥行き方向に沿った一端部54Aは、縫製部56で共縫いされる。これにより、本実施形態では、当該カバー54が設けられてもカバー専用の縫製部をなくすことができ、カバー54を目立たないようにすることができる。
【0110】
また、カバー54には、例えば、当該カバー54の幅方向の中央部にポケット部材32側を開口として略矩形状に切り欠かれた切欠き部58が形成されている。この切欠き部58を通じてハーネス部40を外部に露出させることが可能となる。
【0111】
このように、本実施形態では、当該カバー54によって、着座センサユニット38を挿入するポケット部材32の開口部32Dがポケット部材32の外側から当該ポケット部材32の奥行き方向に沿って覆われるようになっている。これにより、表皮一体パッド18の成形時において、より確実にポケット部材32の内部33にシートパッド14の原料が浸入しないようにすることができる。
【0112】
また、以上の本実施形態では、ポケット部材32内に収容させる装置として着座センサユニット38を例に挙げているが、これに限るものではなく、温度センサ等他のセンサでもよく、さらにはシート状ヒータ、ボイスコイル等、センサ以外の装置でも収容可能である。
【0113】
さらに、以上の本実施形態では、ポケット部材32の開口部32Dを任意の位置に設定することができる。つまり、ポケット部材32の開口部32Dの向き(センサ等の装置の挿入方向)を自由に設定することができる。これにより、センサ等の装置の挿入時において、図示はしないが、シートクッション12の裏面側、車体フロア側に設けられた部品と干渉しないようすることができる。
【0114】
また、ポケット部材32の位置についてはこれに限るものではない。つまり、ポケット部材32の位置については、ポケット部材32の内部33に収容される装置によって適宜変更とされる。例えば、シートクッション12の前面14B側、側面14D側にポケット部材32が設けられてもよい。
【0115】
また、以上の実施形態では、図1に示されるように、車両用シート10のシートクッション12に適用させた例について説明したが、本発明では、これに限らず、車両用シート10のシートバックに適用されてもよい。さらには、車両用シート10に限らず、図示はしないがマッサージ用シート等に適用されてもよい。
【0116】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能である。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0117】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートパッド(パッド材)
16 シート表皮(表皮)
16A 表皮片
16A1 表皮片
16A2 表皮片
16B 表皮片
16C 表皮片
17 裏面(表皮の裏面)
18 表皮一体パッド(表皮一体成形シートパッド)
20A 後部(シートクッションにおけるシート前後方向の後部)
26 縫製部
28 縫製部
30 縫製部
32 ポケット部材
32A 側端部(ポケット部材の端部)
32B 側端部(ポケット部材の端部)
32C 底端部(ポケット部材の端部)
32D 開口部(ポケット部材の開口部)
34 ノッチ部(第1ノッチ部、第1位置決め部、位置決め手段)
35 位置決め部(位置決め手段)
35A 第1位置決め部(位置決め手段)
35B 第2位置決め部(位置決め手段)
36 ノッチ部(第1ノッチ部、第1位置決め部、位置決め手段)
38 着座センサユニット(装置)
40 ハーネス部(着座センサユニット)
46 センサ部(着座センサユニット)
48 ノッチ部(第2ノッチ部、第2位置決め部、位置決め手段)
52 ポケット部材
54 カバー(カバー部材)
54A 一端部(カバー部材の一端部)
56 縫製部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11