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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138081
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】送受信回路
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H04L25/02 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044576
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】王 凱立
(72)【発明者】
【氏名】石原 寛明
【テーマコード(参考)】
5K029
【Fターム(参考)】
5K029AA18
5K029FF10
5K029JJ03
(57)【要約】
【課題】簡易な回路構成の送受信回路を提供する。
【解決手段】本開示の送受信回路は、信号を送受信可能な第1の回路と、信号を送受信可能な第2の回路と、第1の回路と第2の回路とを電気的に絶縁するとともに、第1の回路および第2の回路の一方から送信された信号を他方に伝送可能な絶縁素子とを備え、第1の回路は、第1のクロック信号が入力される第1の端子を備え、第1のクロック信号を高周波化して第2のクロック信号を生成し、当該第2のクロック信号を送信し、絶縁素子は、第1の回路からの第2のクロック信号を第3のクロック信号として第2の回路に伝送し、第2の回路は、絶縁素子からの第3のクロック信号を受信し、当該第3のクロック信号に応じて、第1のデータ信号を送信し、絶縁素子は、第2の回路からの第1のデータ信号を第2のデータ信号として伝送し、第1の回路は、絶縁素子からの第2のデータ信号を受信する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送受信可能な第1の回路と、
信号を送受信可能な第2の回路と、
前記第1の回路と前記第2の回路とを電気的に絶縁するとともに、前記第1の回路または前記第2の回路の一方から送信された信号を他方に伝送可能な絶縁素子と
を備え、
前記第1の回路は、第1のクロック信号が入力される第1の端子を備え、前記第1のクロック信号を高周波化して第2のクロック信号を生成し、該第2のクロック信号を送信し、
前記絶縁素子は、前記第1の回路からの前記第2のクロック信号を第3のクロック信号として前記第2の回路に伝送し、
前記第2の回路は、前記絶縁素子からの前記第3のクロック信号に応じて、第1のデータ信号を送信し、
前記絶縁素子は、前記第2の回路からの前記第1のデータ信号を第2のデータ信号として伝送し、
前記第1の回路は、前記絶縁素子からの前記第2のデータ信号を受信する、送受信回路。
【請求項2】
前記第1の回路は、第1の送信モードおよび第1の受信モードを有し、
前記第1の回路は、前記第1のクロック信号が入力されると、前記第1の送信モードに切り替わって前記第2のクロック信号を送信し、該第2のクロック信号の送信が完了すると、前記第1の受信モードに切り替わり、
前記第1の回路は、前記第1の受信モードにおいて、前記絶縁素子からの前記第2のデータ信号を受信する、請求項1に記載の送受信回路。
【請求項3】
前記第1の回路は、第1の送信回路および第1の受信回路を含み、
前記第1の送信モードにおいて、前記第1の送信回路は、該第1の送信回路内に含まれる信号の送信を担う回路部分に動作電力が供給される動作状態であり、かつ前記第1の受信回路は、該第1の受信回路内に含まれる信号の受信を担う回路部分に動作電力が供給されない停止状態であり、
前記第1の受信モードにおいて、前記第1の送信回路は停止状態であり、かつ前記第1の受信回路は動作状態である、請求項2に記載の送受信回路。
【請求項4】
前記第1の回路は、前記第2のクロック信号の送信が完了してから所定の切り替え時間が経過した後に、前記第1の受信モードに切り替わる、請求項3に記載の送受信回路。
【請求項5】
前記第1の回路は、前記第1の受信モードにおいて、前記絶縁素子からの前記第2のデータ信号を受信すると、第1の待機モードに切り替わり、
前記第1の待機モードにおいて、前記第1の送信回路および前記第1の受信回路はともに停止状態である、請求項3または4に記載の送受信回路。
【請求項6】
前記第2の回路は、第2の送信モードおよび第2の受信モードを有し、
前記第2の回路は、前記第2の受信モードにおいて、前記絶縁素子からの前記第3のクロック信号を受信すると、前記第2の送信モードに切り替わり、
前記第2の回路は、前記第2の送信モードにおいて、前記第1のデータ信号を送信し、該第1のデータ信号の送信が完了すると、前記第2の受信モードに切り替わる、請求項1~5のいずれか一項に記載の送受信回路。
【請求項7】
前記第2の回路は、第2の送信回路および第2の受信回路を含み、
前記第2の送信モードにおいて、前記第2の送信回路は、該第2の送信回路内に含まれる信号の送信を担う回路部分に動作電力が供給される動作状態であり、かつ前記第2の受信回路は、該第2の受信回路内に含まれる信号の受信を担う回路部分に動作電力が供給されない停止状態であり、
前記第2の受信モードにおいて、前記第2の送信回路は停止状態であり、かつ前記第2の受信回路は動作状態である、請求項6に記載の送受信回路。
【請求項8】
前記第2の回路は、前記第3のクロック信号の受信が完了してから所定の待機時間が経過した後に、前記第2の送信モードに切り替わる、請求項7に記載の送受信回路。
【請求項9】
前記第2の回路は、前記第2の送信モードが所定の時間継続すると、前記第2の受信モードに切り替わる、請求項6~8のいずれか一項に記載の送受信回路。
【請求項10】
前記第2の回路は、前記第2の送信モードへの切り替わりに応じて時間をカウントするタイマ回路をさらに含み、該タイマ回路によって前記所定の時間が経過したことが検知されると、前記第2の受信モードに切り替わる、請求項9に記載の送受信回路。
【請求項11】
前記絶縁素子は単一の絶縁素子であり、前記第2のクロック信号および前記第1のデータ信号はともに前記単一の絶縁素子によって伝送される、請求項1~10のいずれか一項に記載の送受信回路。
【請求項12】
前記絶縁素子は、第1の絶縁素子および第2の絶縁素子を含み、
前記第2のクロック信号は前記第1の絶縁素子によって伝送され、前記第1のデータ信号は前記第2の絶縁素子によって伝送される、請求項1~10のいずれか一項に記載の送受信回路。
【請求項13】
前記絶縁素子は、変圧器、変流器またはキャパシタによって構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の送受信回路。
【請求項14】
前記第2のクロック信号および前記第3のクロック信号、並びに、前記第1のデータ信号および前記第2のデータ信号は、電圧パルスまたは電流パルスである、請求項1~13のいずれか一項に記載の送受信回路。
【請求項15】
前記第1の回路は、前記第1のクロック信号のポジティブエッジ、ネガティブエッジ、または、ポジティブエッジおよびネガティブエッジの両方を検出することによって、前記第1のクロック信号の受信を判定し、
前記第2の回路は、前記第3のクロック信号のポジティブエッジ、ネガティブエッジ、または、ポジティブエッジおよびネガティブエッジの両方を検出することによって、前記第3のクロック信号の受信を判定する、請求項1~14のいずれか一項に記載の送受信回路。
【請求項16】
前記第2の回路にデータ信号を供給する信号処理回路をさらに備え、
前記第2の回路は、前記第3のクロック信号を低周波化して第4のクロック信号を生成し、該第4のクロック信号を前記信号処理回路に入力し、
前記信号処理回路は、前記第2の回路から入力される前記第4のクロック信号に同期して前記データ信号を供給し、
前記第2の回路は、前記信号処理回路から供給される前記データ信号を高周波化して前記第1のデータ信号を生成する、請求項1~15のいずれか一項に記載の送受信回路。
【請求項17】
前記信号処理回路は、A/D変換器を含む、請求項16に記載の送受信回路。
【請求項18】
前記A/D変換器は、ΔΣ変調器によって構成される、請求項17に記載の送受信回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送受信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器または変流器等の絶縁素子を介して接続された2つの回路間で双方向に信号を伝送可能な送受信回路が知られている。通常、このような送受信回路では、一方の回路から他方の回路への伝送用の絶縁素子と、他方の回路から一方の回路への伝送用の絶縁素子という、2つの絶縁素子が用いられる。
【0003】
特許文献1には、単一の絶縁素子によって双方向の伝送が可能な送受信回路が記載されている。しかしながら、特許文献1では、単一の絶縁素子によって双方向の伝送を実現するのと引き替えに、受信タイミング回路等の追加の回路が必要になる。結果として、送受信回路の全体としては、必ずしも簡易な回路構成とはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10389434号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためのものであり、簡易な回路構成の送受信回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示に係る送受信回路は、信号を送受信可能な第1の回路と、信号を送受信可能な第2の回路と、第1の回路と第2の回路とを電気的に絶縁するとともに、第1の回路および第2の回路の一方から送信された信号を他方に伝送可能な絶縁素子とを備え、第1の回路は、第1のクロック信号が入力される第1の端子を備え、第1のクロック信号を高周波化して第2のクロック信号を生成し、絶縁素子を介して第2の回路に第2のクロック信号を送信し、第2の回路は、絶縁素子を介して第2のクロック信号が遅延された第3のクロック信号を受信し、当該第3のクロック信号に応じて、絶縁素子を介して第1の回路に第1のデータ信号を送信し、第1の回路は、絶縁素子を介して第1のデータ信号が遅延された第2のデータ信号を受信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1に係る送受信回路の構成を示す図。
図2】実施の形態1に係る送受信回路の動作の概略を説明するタイミングチャート。
図3】実施の形態1に係る送受信回路の動作の詳細を説明するタイミングチャート。
図4】実施の形態2に係る送受信回路の動作を説明するタイミングチャート。
図5】実施の形態3に係る送受信回路の動作を説明するタイミングチャート。
図6】第1の変形例に係る送受信回路の構成を示す図。
図7】第2の変形例に係る送受信回路の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。図面において同一又は対応する要素には同じ参照符号を付して、詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係る送受信回路100の構成を示す図である。送受信回路100は、信号を送受信可能な第1の回路10と、信号を送受信可能な第2の回路20と、単一の変圧器または変流器によって構成される絶縁素子30と、信号処理回路40とを備えている。第1の回路10は第1の領域R1に配置されており、第2の回路20は第2の領域R2に配置されている。第1の回路10と第2の回路20とは、絶縁素子30を介して接続されている。第1の回路10と第2の回路20とは、電気的には絶縁されているが磁気的には結合されているため、一方の回路から送信された信号は絶縁素子30を介して他方の回路に伝送される。
【0010】
第1の回路10は、第1の送信回路11と、第1の受信回路12と、これら2つの回路の動作を制御する第1の制御回路13とを含んでいる。また、第1の回路10は、送受信回路100の外部から第1のクロック信号CLK1が周期的に入力される第1の端子10aを備えている。第1の送信回路11には、第1の端子10aを介して、第1のクロック信号CLK1が周期的に入力される。後述するように、第1のクロック信号CLK1は、例えば第1の回路10の動作モードの切り替えに用いられる。第1の送信回路11の出力11aおよび11bは、絶縁素子30の1次側31に接続されている。第1の受信回路12の入力12aおよび12bも、絶縁素子30の1次側31に接続されている。
【0011】
第1の回路10の第1の端子10aに第1のクロック信号CLK1が入力されると、第1の回路10は、当該第1のクロック信号CLK1を高周波化して第2のクロック信号を生成して送信する。絶縁素子30は、第1の回路10からの第2のクロック信号CLK2を、若干の時間遅延を伴って第3のクロック信号CLK3として伝送する。第2の回路20は、絶縁素子30からの第3のクロック信号CLK3を受信する。
【0012】
第1の回路10は、第1の送信モードおよび第1の受信モードという2つの動作モードを有している。第1の送信モードでは、第1の送信回路11は、当該第1の送信回路11内に含まれる信号の送信を担う回路部分に動作電力が供給されて電力消費が発生する動作状態となり、第1の受信回路12は、当該第1の受信回路12内に含まれる信号の受信を担う回路部分に動作電力が供給されず電力消費が発生しない停止状態となる。一方、第1の受信モードでは、第1の送信回路11は、当該第1の送信回路11内に含まれる信号の送信を担う回路部分に動作電力が供給されず電力消費が発生しない停止状態となり、第1の受信回路12は、当該第1の受信回路12内に含まれる信号の受信を担う回路部分に動作電力が供給されて電力消費が発生する動作状態となる。なお、第1の送信回路11および第1の受信回路12は、動作状態または停止状態のいずれの状態においても、制御回路13からの制御信号の受信を担う回路部分には、常に動作電力が供給される。
【0013】
第2の回路20は、第2の送信回路21と、第2の受信回路22と、これら2つの回路の動作を制御する第2の制御回路23とを含んでいる。第2の送信回路21には、信号処理回路40からデータ信号DATAが入力される。第2の受信回路22によって受信される第3のクロック信号CLK3は、低周波化されて第4のクロック信号CLK4となり、信号処理回路40のクロック端子41に入力される。先述した第1のクロック信号CLK1が送受信回路100の外部から入力されるクロック信号であるのに対して、第2のクロック信号CLK2および第3のクロック信号CLK3は、送受信回路100の内部で用いられるクロック信号である。第3のクロック信号CLK3は、例えば第2の回路20によるデータ信号DATAの出力に用いられる。第2の送信回路21の出力21aおよび21bは、絶縁素子30の2次側32に接続されている。第2の受信回路22の入力22aおよび22bも、絶縁素子30の2次側32に接続されている。
【0014】
第2の回路20は、第2の送信モードおよび第2の受信モードという2つの動作モードを有している。第2の送信モードでは、第2の送信回路21は、当該第2の送信回路21内に含まれる信号の送信を担う回路部分に動作電力が供給されて電力消費が発生する動作状態となり、第2の受信回路22は、当該第2の受信回路22内に含まれる信号の受信を担う回路部分に動作電力が供給されず電力消費が発生しない停止状態となる。一方、第2の受信モードでは、第2の送信回路21は、当該第2の送信回路21内に含まれる信号の送信を担う回路部分に動作電力が供給されず電力消費が発生しない停止状態となり、第2の受信回路22は、当該第2の受信回路22内に含まれる信号の受信を担う回路部分に動作電力が供給されて電力消費が発生する動作状態となる。なお、第2の送信回路21および第2の受信回路22は、動作状態または停止状態のいずれの状態においても、制御回路23からの制御信号の受信を担う回路部分には、常に動作電力が供給される。
【0015】
信号処理回路40は、クロック端子41に第4のクロック信号CLK4が入力される度に、出力端子42から0または1の値を有する1ビットのデータ信号DATAを出力する。詳細には、信号処理回路40は、アナログ/ディジタル(A/D)変換器43と、パラレル/シリアル(P/S)変換器44とを含んでいる。A/D変換器43は、外部から入力されるアナログ信号を複数ビットのディジタル信号に変換して出力する。P/S変換器44は、A/D変換器43から出力された複数ビットのディジタル信号、すなわちパラレルのビット信号をシリアルのビット信号に変換して出力する。P/S変換器44から出力されたシリアルのビット信号は、クロック端子41に第4のクロック信号CLK4が入力される度に、出力端子42からデータ信号DATAとして1ビットずつ出力される。
【0016】
信号処理回路40に入力されるアナログ信号の種類は特に限定されるものではないが、一例として、電流センサーまたは電圧センサーから出力されるセンサー信号であってもよい。この場合、送受信回路100は、測定対象の電圧値または電流値を第1の回路10から第2の回路20に絶縁素子30を介して伝送する電圧測定回路または電流測定回路として機能する。また、A/D変換器43の具体的な構成も特に限定されるものではないが、一例として、A/D変換器43はΔΣ変調器によって構成することができる。
【0017】
信号処理回路40の出力端子42から出力されたデータ信号DATAは、第2の回路20によって高周波化されて第1のデータ信号DATA1として送信される。絶縁素子30は、第2の回路20からの第1のデータ信号DATA1を、若干の時間遅延を伴って第2のデータ信号CLK2として伝送する。第1の回路10は、絶縁素子30からの第2のデータ信号DATA2を受信する。第1の回路10は、受信された第2のデータ信号DATA2を低周波化して元のデータ信号DATAを復元する。
【0018】
次に、本実施の形態1に係る送受信回路100の動作の概略について、図2のタイミングチャートを参照して説明する。図2の初期状態、すなわちタイミングチャートの左端において、第1の回路10は第1の受信モードであり、第2の回路20は第2の受信モードである。
【0019】
時刻t1において、第1のクロック信号CLK1が入力されると、第1の回路10は、第1の受信モードから第1の送信モードに切り替わり、第2のクロック信号CLK2を送信する(S1)。その後、第1の回路10は、時刻t5において、第1の送信モードから第1の受信モードに切り替わる。絶縁素子30は、第1の回路10からの第2のクロック信号CLK2を、若干の時間遅延を伴って第3のクロック信号CLK3として伝送する。
【0020】
第2の回路20は、絶縁素子30からの第3のクロック信号CLK3を受信すると(S2)、第2の受信モードから第2の送信モードに切り替わり、第1のデータ信号DATA1を送信する(S3)。その後、第2の回路20は、時刻t10において、第2の送信モードから第2の受信モードに切り替わる。絶縁素子30は、第2の回路20からの第1のデータ信号DATA1を、若干の時間遅延を伴って第2のデータ信号DATA2として伝送する。
【0021】
第1の回路10は、絶縁素子30からの第2のデータ信号DATA2を受信する(S4)。その後、時刻t11において、第1のクロック信号CLK1が再び入力されると、第1の回路10は、第1の受信モードから第1の送信モードに再び切り替わり、これ以降、第1のクロック信号CLK1が入力される度に、上記の動作が繰り返される。
【0022】
図2のタイミングチャートの動作について、第1の回路10に含まれる第1の送信回路11および第1の受信回路12、並びに、第2の回路20に含まれる第2の送信回路21および第2の受信回路22の動作として詳細に示すと、図3のようになる。以下、本実施の形態1に係る送受信回路100の動作の詳細について、図3のタイミングチャートを参照して説明する。
【0023】
まず、本実施の形態1では、第1~第4のクロック信号CLK1~4、データ信号DATA、および第1~第2のデータ信号DATA1~2の各信号は、電圧パルスまたは電流パルスである。また、第1のクロック信号CLK1および第3のクロック信号CLK3の受信の判定は、パルスのポジティブエッジ(立ち上がり)を検出することによって行われる。
【0024】
図3の初期状態、すなわちタイミングチャートの左端において、第1の回路10は、第1の受信モードである。したがって、第1の送信回路11は停止状態であり、第1の受信回路12は動作状態である。また、第2の回路20は、第2の受信モードである。したがって、第2の送信回路21は停止状態であり、第2の受信回路22は動作状態である。
【0025】
時刻t1において、第1のクロック信号CLK1が入力されると、第1の回路10は、第1の受信モードから第1の送信モードに切り替わる。詳細には、第1の制御回路13が、第1の送信回路11内に含まれる信号の送信を担う回路部分への動作電力の供給を開始することにより、第1の送信回路11を動作状態にするとともに、第1の受信回路12内に含まれる信号の受信を担う回路部分への動作電力の供給を停止することにより、第1の受信回路12を停止状態にする。この状態において、第1の送信回路11は、第2のクロック信号CLK2を送信する(S1)。
【0026】
時刻t3において第2のクロック信号CLK2の送信が完了すると、第1の回路10は、第1の送信モードから第1の受信モードに切り替わる。詳細には、第1の制御回路13が、第1の送信回路11内に含まれる信号の送信を担う回路部分への動作電力の供給を停止することにより、第1の送信回路11を停止状態にするとともに、第1の受信回路12内に含まれる信号の受信を担う回路部分への動作電力の供給を開始することにより、第1の受信回路12を動作状態にする。ただし、第1の送信回路11の残留送信信号が減衰して消失するのを待つために、切り替えには一定の時間を要する。図3では、時刻t3からt5の「切替」の期間がこれに相当する。切り替え時間は、予め設計値として定められている。
【0027】
一方、時刻t2からt4において、第2の回路20の第2の受信回路22は、絶縁素子30からの第3のクロック信号CLK3を受信する(S2)。受信された第3のクロック信号CLK3は、低周波化されて第4のクロック信号CLK4となり、信号処理回路40のクロック端子41に入力される。これにより、信号処理回路40の出力端子42からは、0または1の値を有する1ビットのデータ信号DATAが出力され、当該データ信号DATAは第2の送信回路21に入力される。なお、信号処理回路40から出力されるデータ信号DATAは、次に第4のクロック信号CLK4が入力されるまでの間、同一の値を保持し続ける。また、図3において、時刻t1と時刻t2の時間差および時刻t3と時刻t4の時間差は、第2のクロック信号CLK2が絶縁素子30を介して伝送される過程で発生する遅延を表している。
【0028】
時刻t4において第3のクロック信号CLK3の受信が完了すると、第2の受信回路22は、上述した第1の回路10の第1の送信回路11の残留送信信号が減衰して消失するのを待つために一定時間待機する。図3では、時刻t4からt6の期間がこの待機時間に相当する。待機時間は、予め設計値として定められている。
【0029】
時刻t6において、第2の回路20は、第2の受信モードから第2の送信モードに切り替わる。詳細には、第2の制御回路23が、第2の送信回路21内に含まれる信号の送信を担う回路部分への動作電力の供給を開始することにより、第2の送信回路21を動作状態にするとともに、第2の受信回路22内に含まれる信号の受信を担う回路部分への動作電力の供給を停止することにより、第2の受信回路22を停止状態にする。この状態において、第2の送信回路21は、第1のデータ信号DATA1を送信する(S3)。この第1のデータ信号DATA1は、先に第4のクロック信号CLK4を信号処理回路40のクロック端子41に入力した際に、信号処理回路40の出力端子42から出力されたデータ信号DATAを高周波化したものである。
【0030】
時刻t8において第1のデータ信号DATA1の送信が完了すると、第2の回路20は、第2の送信モードから第2の受信モードに切り替わる。詳細には、第2の制御回路23が、第2の送信回路21内に含まれる信号の送信を担う回路部分への動作電力の供給を停止することにより、第2の送信回路21を停止状態にするとともに、第2の送信回路22内に含まれる信号の送信を担う回路部分への動作電力の供給を開始することにより、第2の受信回路22を動作状態にする。ここでも、第2の送信回路21の残留送信信号が減衰して消失するのを待つために、切り替えには一定の時間を要する。図3では、時刻t8からt10の「切替」の期間がこれに相当する。この切り替え時間も、予め設計値として定められている。ただし、この切り替えは、次に第3のクロック信号CLK3が受信されるまでの間に完了する必要がある。
【0031】
一方、時刻t7からt9において、第1の回路10の第1の受信回路12は、絶縁素子30からの第2のデータ信号DATA2を受信する(S4)。受信された第2のデータ信号DATA2は、低周波化されてデータ信号DATAに復元された後、送受信回路100の外部に出力され、目的に応じて様々に利用される。一例として、信号処理回路40に入力されるアナログ信号が電圧センサーまたは電流センサーから出力されるセンサー信号であり、送受信回路100が電圧測定回路または電流測定回路として機能する場合には、データ信号DATAは、測定対象の電圧値または電流値のディジタル表現の一部を構成する。第2のデータ信号DATA2の受信が完了した後も、第1の回路10は、第1のクロック信号CLK1が再び入力されるのを待つために、第1の受信モードを継続する。
【0032】
時刻t11において、第1のクロック信号CLK1が再び入力されると、第1の回路10は、第1の受信モードから第1の送信モードに再び切り替わり、これ以降、第1のクロック信号CLK1が入力される度に、上記の動作が繰り返される。これにより、第1の回路10は、第1のクロック信号CLK1が入力される度に、第2の回路20から絶縁素子30を介して、1ビットのデータ信号DATAに対応する高周波化された第2のデータ信号DATAを繰り返し受信することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態1に係る送受信回路100では、第1の回路10は、第1のクロック信号CLK1が入力される第1の端子10aを備え、第1のクロック信号CLK1を高周波化して第2のクロック信号CLK2を生成して送信する(S1)。絶縁素子30は、第1の回路10からの第2のクロック信号CLK2を第3のクロック信号CLK3として伝送する。第2の回路20は、絶縁素子30からの第3のクロック信号CLK3を受信し(S2)、当該第3のクロック信号CLK3に応じて、第1のデータ信号DATA1を送信する(S3)。絶縁素子30は、第2の回路20からの第1のデータ信号DATA1を第2のデータ信号DATA2として伝送する。第1の回路10は、絶縁素子30からの第2のデータ信号DATA2を受信する(S4)。
【0034】
上記の特徴により、本実施の形態1に係る送受信回路100では、簡易な回路構成によって双方向の伝送を実現することができる。
【0035】
また、第1の回路10は、第1の送信モードおよび第1の受信モードという2つの動作モードを有している。第1の送信モードでは、第1の送信回路11のみが動作状態であり、当該第1の送信回路11内に含まれる信号の送信を担う回路部分には動作電力が供給されて電力消費が発生するが、第1の受信回路12は停止状態であり、当該第1の受信回路12内に含まれる信号の受信を担う回路部分には動作電力が供給されず電力消費が発生しない。一方、第1の受信モードでは、第1の受信回路12は動作状態であり、当該第1の受信回路12内に含まれる信号の受信を担う回路部分には動作電力が供給されて電力消費が発生するが、第1の送信回路11は停止状態であり、当該第1の送信回路11内に含まれる信号の送信を担う回路部分には動作電力が供給されず電力消費が発生しない。
【0036】
同様に、第2の回路20は、第2の送信モードおよび第2の受信モードという2つの動作モードを有している。第2の送信モードでは、第2の送信回路21のみが動作状態であり、当該第2の送信回路21内に含まれる信号の送信を担う回路部分には動作電力が供給されて電力消費が発生するが、第2の受信回路22は停止状態であり、当該第2の受信回路22内に含まれる信号の受信を担う回路部分には動作電力が供給されず電力消費が発生しない。一方、第2の受信モードでは、第2の受信回路22のみが動作状態であり、当該第2の受信回路22内に含まれる信号の受信を担う回路部分には動作電力が供給されて電力消費が発生するが、第2の送信回路21は停止状態であり、当該第2の送信回路21内に含まれる信号の受信を担う回路部分には動作電力が供給されず電力消費が発生しない。
【0037】
上記の特徴により、第1の回路10と第2の回路20との間の双方向の伝送、具体的には第2のクロック信号CLK2および第1のデータ信号DATA1の伝送を、単一の絶縁素子30によって行うことができる。これにより、従来の絶縁素子を2つ用いる送受信回路に比べて、部品点数を削減することができる。また、第1の送信回路11の動作中に第1の受信回路12は停止状態であり、第1の受信回路12の動作中に第1の送信回路11は停止状態であるため、第1の回路10は低消費電力である。同様に、第2の送信回路21の動作中に第2の受信回路22は停止状態であり、第2の受信回路22の動作中に第2の送信回路21は停止状態であるため、第2の回路20も低消費電力である。
【0038】
また、第1の回路10は、第1の送信モードにおいて、第2のクロック信号CLK2の送信が完了してから所定の切り替え時間(図3の時刻t3からt5の時間)が経過した後に、第1の受信モードに切り替わる。同様に、第2の回路20は、第2の受信モードにおいて、第3のクロック信号CLK3の受信が完了してから所定の待機時間(図3の時刻t4からt6の時間)が経過した後に、第2の送信モードに切り替わる。このような特徴により、第1の送信回路11の残留送信信号の影響を受けることなく、第1のデータ信号DATA1の伝送を行うことができる。
【0039】
(実施の形態2)
上記の実施の形態1では、第1の回路10は、第1の送信モードおよび第1の受信モードという2つの動作モードを有していた。これに対して、本実施の形態2に係る第1の回路10は、第1の送信モードおよび第1の受信モードに加えて、第1の待機モードを有している。第1の待機モードでは、第1の送信回路11および第1の受信回路12はともに停止状態となる。
【0040】
図4の初期状態、すなわちタイミングチャートの左端において、第1の回路10は、第1の待機モードである。したがって、第1の送信回路11および第1の受信回路12はともに停止状態である。
【0041】
時刻t1において、第1のクロック信号CLK1が入力されると、第1の回路10は、第1の待機モードから第1の送信モードに切り替わる。詳細には、第1の制御回路13が、第1の送信回路11を動作状態にするとともに、第1の受信回路12を停止状態のままにする。以降、時刻t9までの動作は、実施の形態1と同様である。
【0042】
時刻t9において第2のデータ信号DATA2の受信が完了すると、第1の回路10は、第1の受信モードから第1の待機モードに切り替わる。詳細には、第1の制御回路13が、第1の送信回路11および第1の受信回路12をともに停止状態にする。
【0043】
時刻t11において、第1のクロック信号CLK1が再び入力されると、第1の回路10は、第1の待機モードから第1の送信モードに再び切り替わり、これ以降、第1のクロック信号CLK1が入力される度に、上記の動作が繰り返される。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態2に係る送受信回路100では、第1の回路10は、第1の送信モードおよび第1の受信モードに加えて、第1の待機モードを有している。第1の待機モードでは、第1の送信回路11および第1の受信回路12は、ともに停止状態である。
【0045】
上述した実施の形態1では、図3において、左端の初期状態から時刻t1までの期間、および時刻t9からt11までの期間は、第1の受信モードであった。したがって、第1の送信回路11は停止しているが、第1の受信回路は動作状態であり、第1の受信回路12によって電力が消費される。これに対して、本実施の形態2では、図4において、左端の初期状態から時刻t1までの期間、および時刻t9からt11までの期間は、第1の待機モードである。したがって、第1の送信回路11および第1の受信回路12がともに停止しており、第1の回路10の消費電力は実施の形態1よりもさらに低くなる。これにより、本実施の形態2に係る送受信回路100は、実施の形態1よりもさらに低消費電力である。
【0046】
(実施の形態3)
先述した実施の形態1では、第2の回路20は、時刻t8で第1のデータ信号DATA1の送信が完了すると、第2の送信モードから第2の受信モードに切り替わっていた。しかしながら、何らかのエラーが発生してモードの切り替えに失敗してしまうと、第2の回路20は第2の送信モードのまま固定されてしまう。その場合、次の第3のクロックCLK3を受信することができず、結果として第2の回路20から第1の回路10への第1のデータ信号DATA1の送信が停止してしまう。このような事象に対する安全策として、本実施の形態3に係る送受信回路100では、第2の回路20は、第2の送信モードが所定の時間継続すると、第2の受信モードに切り替わる。詳細には、第2の制御回路23が、内蔵タイマ回路によって所定のタイムアウト時間が経過したことを検知すると、第2の送信回路21を停止状態にするとともに、第2の受信回路22を動作状態にする。
【0047】
図5の例では、第2の制御回路23は、時刻t6で第2の送信モードに切り替わったタイミングで内蔵タイマをスタートさせ、内蔵タイマによって所定のタイムアウト時間ΔTが経過したことを検知すると、時刻t30において、第2の送信回路21を停止状態にするとともに、第2の受信回路22を動作状態にする。ここで、所定のタイムアウト時間ΔTは、第1のデータ信号DATA1の送信に通常要する時間に所望のマージンを加算した値として予め決定される。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態3に係る送受信回路100では、第2の回路20は、第2の送信モードが所定の時間継続すると、第2の受信モードに切り替わる。これにより、第2の回路20が第2の送信モードのまま固定されてしまうことが防止される。図5の例では、第2の回路20は、第1の回路10から受信される2つ目および3つ目の第3のクロック信号CLK3に応答して第1のデータ信号DATA1を返送することはできないが、4つ目の第3のクロック信号CLK3からは、通常通り第1のデータ信号DATA1を返送できる状態に復帰する。
【0049】
(変形例)
上記の実施の形態1~3では、単一の絶縁素子30によって双方向の伝送が行われる構成を示したが、複数の絶縁素子を用いることができない訳ではない。一例として、図6に示されるように、単一の絶縁素子30に代えて、第1の絶縁素子230Aと第2の絶縁素子230Bとを設け、第2のクロック信号CLK2は第1の絶縁素子230Aを介して伝送し、第1のデータ信号DATA1は第2の絶縁素子230Bを介して伝送するようにしてもよい。これにより、第1の送信回路11と第2の受信回路22のパスと、第2の送信回路21と第1の受信回路12のパスを分けて動作させることが可能となる。また、単一の絶縁素子30として、図1に示されるような磁気結合の変圧器または変流器に代えて、図7に示されるような電界結合のキャパシタを用いてもよい。
【0050】
また、上記の実施の形態1~3では、第1のクロック信号CLK1および第3のクロック信号CLK3の受信の判定は、電圧パルスまたは電流パルスのポジティブエッジを検出することによって行われていた。これに代えて、各クロック信号の受信の判定は、電圧パルスまたは電流パルスのネガティブエッジ(立ち下がり)、または、ポジティブエッジおよびネガティブエッジの両方を検出することによって行ってもよい。
【0051】
本開示の幾つかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は例として提示したものであり、開示の範囲を限定することは意図していない、これらの実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、開示の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された開示とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
10 第1の回路
10a 第1の端子
11 第1の送信回路
11a 出力
11b 出力
12 第1の受信回路
12a 入力
12b 入力
20 第2の回路
21 第2の送信回路
21a 出力
21b 出力
22 第2の受信回路
22a 入力
22b 入力
30 絶縁素子
31 1次側
32 2次側
40 信号処理回路
41 クロック端子
42 出力端子
43 A/D変換器
44 P/S変換器
100 送受信回路
200 送受信回路
230A 第1の絶縁素子
230B 第2の絶縁素子
300 送受信回路
330 絶縁素子
331 1次側
332 2次側
CLK1 第1のクロック信号
CLK2 第2のクロック信号
CLK3 第3のクロック信号
CLK4 第4のクロック信号
DATA データ信号
DATA1 第1のデータ信号
DATA2 第2のデータ信号
R1 第1の領域
R2 第2の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7