(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138090
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】熱転写シート
(51)【国際特許分類】
B41M 5/40 20060101AFI20230922BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20230922BHJP
B41M 5/382 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B41M5/40 440
B41M5/42 410
B41M5/382 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044587
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】本橋 晃
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111BA03
2H111BA07
2H111BA08
2H111BA14
2H111BA53
2H111BA68
(57)【要約】
【課題】帯電を抑制でき、電極腐食故障も生じにくい熱転写シートを提供する。
【解決手段】熱転写シート1は、シート状の基材10と、基材の第一面10aに形成され、下引き層24と、下引き層上に設けられた色層とを有する着色層20と、第一面上において、着色層のない部位に設けられた保護層40と、基材において、第一面と反対側の第二面10bに形成された帯電防止層50と、帯電防止層上に設けられたバックコート層60とを備える。帯電防止層は、帯電防止剤としてイオン性物質を含まない帯電防止剤のみを含有し、バックコート層側からJIS K6911に準拠して測定した表面抵抗Ω/□が10
12以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、
前記基材の第一面に形成され、下引き層と、前記下引き層上に設けられた色層とを有する着色層と、
前記第一面上において、前記着色層のない部位に設けられた保護層と、
前記基材において、前記第一面と反対側の第二面に形成された帯電防止層と、
前記帯電防止層上に設けられたバックコート層と、
を備え、
前記帯電防止層は、帯電防止剤としてイオン性物質を含まない帯電防止剤のみを含有し、
前記バックコート層側からJIS K6911に準拠して測定した表面抵抗Ω/□が1012以下である、
熱転写シート。
【請求項2】
前記帯電防止剤がポリチオフェン系の導電性ポリマーである、
請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記帯電防止剤の厚さが、3nm~100nmである、
請求項1に記載の熱転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シート、より詳しくは、熱転写方式のプリンタに使用される熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
文字又は画像等を被転写体に形成する印刷方式として、昇華型熱転写方式、溶融型熱転写方式等が知られている。昇華型熱転写方式は、熱転写リボンの染料層と、熱転写シートの受像層とを互いに重ね合わせ、次いで、電気信号により発熱が制御されるサーマルヘッドによって熱転写リボンを加熱することで、染料層中の染料を昇華させて受像層へ移行させ、受像層上に所望の文字、画像等を形成させる方式である。
昇華型熱転写方式は、昇華型の染料を用いて濃度階調を自由に調節できることから、自然画を比較的忠実に再現することができる。このため、昇華型熱転写用の熱転写シートも、一般プリンタ用、アミューズメント用、証明写真の自動販売機用などの様々な用途で写真印画用紙として使用されている。
【0003】
熱転写シートは、多くの場合、使用単位に切り出された枚葉タイプで流通している。
熱転写シートには、さまざまな要求特性がある。重要な特性として、熱転写プリンタの長期使用時におけるサーマルヘッドの腐食抑制、印画時のジャム回避、剥離帯電によるシャットダウン抑制等がある。
【0004】
熱転写シートは、一般に、基材シートの一方の面に、熱転写性インク層が形成され、もう一方の面に耐熱滑性層が形成された構成を有する。帯電を防止するために、基材と耐熱滑性層との間に帯電防止層を設けた構成も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
印画時のジャム回避,剥離帯電によるシャットダウンは、熱転写印画実行時に発生する不良モードであり、これらの原因の主要因は熱転写リボンと紙、およびサーマルヘッドとリボンとの摩擦によって発生する剥離帯電現象により発生していると推定する。これらの不具合は、市場で使用される場面において回避されなければならない現象である。
また近年、熱転写プリンタの長期使用時におけるサーマルヘッドの不具合として、電極腐食故障が注目されている。熱転写シートにおいては、このような故障を抑制することも求められる。
【0007】
上記を踏まえ、本発明は、帯電を抑制でき、電極腐食故障も生じにくい熱転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シート状の基材と、基材の第一面に形成され、下引き層と、下引き層上に設けられた色層とを有する着色層と、第一面上において、着色層のない部位に設けられた保護層と、基材において、第一面と反対側の第二面に形成された帯電防止層と、帯電防止層上に設けられたバックコート層とを備える熱転写シートである。
帯電防止層は、帯電防止剤としてイオン性物質を含まない帯電防止剤のみを含有し、バックコート層側からJIS K6911に準拠して測定した表面抵抗Ω/□は1012以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱転写シートは、帯電を抑制でき、電極腐食故障も生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る熱転写シートの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の熱転写シート1を示す模式断面図である。熱転写シート1は昇華型熱転写方式のシートであり、
図1に示すように、シート状の基材10と、着色層20と、保護層40と、帯電防止層50と、バックコート層60とを備えている。
着色層20、および保護層40は、基材10の第一面10a側に設けられている。帯電防止層50およびバックコート層60は、第一面10aと反対側の第二面10b上にこの順で設けられている。
熱転写シート1は、着色層および保護層40を含む範囲を一単位としてこれを長手方向に繰り返し有しており、例えばロール状等に形成されている。
【0012】
基材10としては、公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレ-ト(PEN)等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムである。特に二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートは好適である。また、本フィルムには、易接着処理が施されていてもよい。易接着処理の代表例としてコロナ処理、アクリル系塗料、ポリエステル系塗料などが挙げられる。易接着処理後の基材10の表面には、ナノオーダー微小な表面凹凸が形成される。
【0013】
基材10の厚さについては、強度や耐熱性等を考慮すると、4.5マイクロメートル(μm)以上25μm以下の範囲のものが使用可能である。より好ましくは、4.5μm以上6.0μm以下程度の厚さが好ましい。
【0014】
本実施形態における着色層20は、イエロー層21、マゼンタ層22、シアン層23の3つの色層を有する。着色層20における色層の数や組み合わせは適宜設定できる。例えば、上記3つの色層にブラック層を加えた4つとしたり、ブラック層のみ有してモノクロ印刷専用としたりできる。
【0015】
着色層20の各色層は、対応する色彩の昇華型染料を含む。
イエロー成分としては、例えば、ソルベントイエロー56、16、30、93、33、ディスパースイエロー201、231、33等を例示できる。マゼンタ成分としては、例えば、C.I.ディスパースバイオレット31、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等を例示できる。シアン成分としては、例えば、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、C.I.ソルベントブルー266、C.I.ディスパースブルー257、または、C.I.ディスパースブルー24等を例示できる。ブラックは、上記成分を組み合わせて得ることができる。
【0016】
各色層21、22、23と基材10との間には、下引き層24が設けられている。下引き層24は、染料バリア性を有し、印画物の色濃度を向上させるため、着色層20の染料の量を低減することにも寄与する。
「染料バリア性」とは、着色層20に含まれる染料が基材10側に拡散するのをブロック(防止)する性質を意味する。
【0017】
下引き層24の材料としては、変性ポリエステル樹脂を例示でき、主成分としてポリエステルとアクリルとの共重合体(ポリエステル-アクリル共重合体)と、ポリビニルピロリドンとを含有する。このポリエステル-アクリル共重合体は、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルと、グリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体である。
染料バリア性を大きく損なわない限り、下引き層24は主成分以外に更に他の成分を含有してもよい。具体的には、ポリエステル-アクリル共重合体およびポリビニルピロリドンが、下引き層24の形成時の全体からみて50質量%超含まれていればよい。
下引き層24に占める主成分の割合は、好ましくは90質量%以上である。
【0018】
保護層40は、印画物の表面を覆うことにより、印画された文字や図柄等を保護する。保護層40の材料としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂などを例示でき、印画物保護の観点から紫外線吸収材、酸化防止材、光安定剤などが添加されてもよい。
【0019】
保護層40と基材10との間には、剥離層41が形成されており、転写時に基材から円滑に剥離されるように構成されている。
剥離層41の材料としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂等を例示でき、耐可塑剤性に優れるメタクリル酸メチル樹脂を第二成分として含有してもよい。
【0020】
バックコート層60は、サーマルヘッドと熱転写シート1との間の熱による固着を防いで耐熱性やすべり性を発揮し、プリンタ内における熱転写シートの円滑な挙動に寄与する。一般に、バックコート層60は、主剤、硬化剤、滑剤等を含む。
【0021】
主剤としては、例えば水酸基を含む熱可塑性樹脂とイソシアネート類とを用いてなる反応生成物が用いられ得る。なお、前記水酸基を含む熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオールなどが挙げられ、アクリルポリオールが好ましい。アクリルポリオールは、できるだけ高分子量であることが好ましい。
硬化剤としては、XDIイソシアネート、H-6XDIイソシアネート、TDIイソシアネート、HDIイソシアネート、IPDIイソシアネート、ヌレート環を含むイソシアネート等の多価イソシアネートを使用できる。
【0022】
滑剤としては、主にリン酸エステルが用いられる。リン酸エステルは、リン酸一分子当たり3箇所のリン酸基に対して、エステル化が1箇所又は2箇所なされている構造を有する。
なお、上記の化合物においては、飽和アルコール(ステアリルアルコール、ラウリルアルコール等)または不飽和アルコール(オレイルアルコール等)のアルキレンオキサイド付加物とリン酸とのモノエステルまたはジエステルがより好ましく、該アルキレンオキサイドとしてはエチレンオキサイドが好ましく、付加数は1から20が好ましく、1から8がより好適である。
また、液体であるリン酸エステルと固体であるリン酸エステルを混合して複数種用いることにより、リン酸エステルをバックコート層全体に含ませることと、バックコート層に含ませる粒子に析出させることが可能となる。
滑剤としては、他にエルカ酸アミド、シリコーンオイル等を例示できる。
【0023】
さらにバックコート層に含ませる粒子としては、酸化マグネシウム、シリカなどの酸化物、タルク、カオリン等の粘土鉱物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、硫酸カルシウム等の硫酸塩、グラファイト、硝石、窒化ホウ素等の無機微粒子が挙げられる。また、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、アセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂等からなる有機樹脂微粒子、またはこれらを架橋剤と反応させた架橋樹脂微粒子等が挙げられる。
これらを適宜混合した塗液の塗工及び乾燥により、バックコート層60を形成できる。
【0024】
発明者は、上述した電極腐食を好適に抑制できる帯電防止層の構成について種々検討した。
電極腐食の原因の一つとして、長期にわたりサーマルヘッドが使用されると、空気中またはプリント内部で接触するシート表面から付着するナトリウムイオンによる反応が考えられている。すなわち、Na+H2O→Na++OH-+1/2H2を経て、電極材料+3OH-→電極材料水酸化物+3e-という反応により電極の金属材料が腐食する。
【0025】
また、塩化物イオンについても同様の反応が予測され、やはり腐食に至る。具体的には、反応電極材料+3Cl-→電極材料の塩化物+3e-の反応や、電極材料塩化物+3H2O→電極材料水酸化物+3H++3Cl-という反応により電極の金属材料が腐食する。
【0026】
上記腐食反応においては、電極材料が化学反応によって電気を通さない水酸化物や酸化物に変化する。言い換えると、水分および腐食性イオンが電極を形成する金属材料と接触すると電極材料を腐食させる化学反応に基づいている。
【0027】
発明者はこの点に着目し、電極と接触する熱転写シートの面にナトリウムイオンや塩化物イオンを存在させないことにより電極腐食を抑制できるのではないかとの仮説を立てた。そして、イオン性物質を含まない帯電防止剤を用いて帯電防止層を形成することにより、帯電抑制と、電極腐食故障の抑制とを両立することに成功した。
本実施形態に係る帯電防止層50は上記知見に基づくものであり、帯電防止剤として、イオン性物質を含まない物のみを用いている。このような帯電防止剤としては、ポリチオフェン系、PEDOT/PSS系等の有機透明導電性ポリマーを例示できる。
帯電防止層を有する熱転写シートの表面抵抗(Ω/□)が1012以下になることで、帯電抑制および電極腐食故障の抑制が好適に両立できる。
【0028】
本発明の熱転写シートによる熱転写は、加熱手段として複数の発熱部を略平行に延在して配列したサーマルヘッドと、搬送手段としてサーマルヘッドと対向して設けられたプラテンローラーとを備えたサーマルプリンタを用いて実行できる。
複数の着色層と保護層とを面順次に備える熱転写シートと、受像層を有する被転写体を、サーマルヘッドとプラテンローラーの間に供給し、熱転写シートの着色層と被転写体の受像層とを対向させて圧接可能に挟持する。
サーマルプリンタは、サーマルヘッドと被転写体との位置関係を、主走査方向と略平行方向にずらす手段を備えており、熱転写シートと被転写体は、プラテンローラーの回転に応じて搬送されるとともに、回転するプラテンローラーによりサーマルヘッドに押し付けられ、サーマルヘッドの熱により被転写体の受像層に画像が転写形成され、さらに、被転写体の画像を含む受像層に保護層の転写形成が行われる。その後、サーマルヘッドと被転写体との位置関係を主走査方向と略平行方向にずらし、熱転写が完了する。
【0029】
本発明の熱転写シートについて実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明は、実施例および比較例の具体的内容のみによって何ら制限されない。
文中における「部」は、とくにことわらない限り質量部を意味する。
【0030】
(実施例1)
基材10として、厚み4.5μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
基材10の一方の面に、下記インキAを乾燥後膜厚が60nmとなるように塗工し、帯電防止層50を形成した。帯電防止層50上に、下記インキ1を乾燥後膜厚が0.55μmとなるようにグラビア印刷にて塗工し、バックコート層60を形成した。
<インキA>
ポリチオフェン系ポリマー:
信越ポリマー社製 セプルジータAS-D-06(固形分13.5%) 1部
メタノール 4.5部
水 4.5部
<インキ1>
アクリルポリオール樹脂 12.5部
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステル 2.5部
タルク 6部
2,6-トリレンジイソシアネートプレポリマー 4部
トルエン 50部
メチルエチルケトン 20部
酢酸エチル 5部
【0031】
次に、基材10の反対側の面に、下記インキ2を乾燥後膜厚が0.2μmとなるように所定のパターンに印刷して下引き層24を形成した。下引き層24の上に、カラーインキを用いてイエロー層21(厚さ0.3μm)、マゼンタ層22(厚さ0.4μm)、シアン層23(厚さ0.5μm)を形成した。
<インキ2>
スルホン酸基含有ポリエステル/グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70)
2.5部
ポリビニルピロリドン(K値60) 2.5部
純水 57部
イソプロピルアルコール 38部
さらに、シアン層23の隣に下記インキ3を0.2μmとなるように印刷し、剥離層41を形成した。剥離層41の上に下記インキ4を0.5μmとなるように印刷し、保護層40を形成した。以上により、実施例1に係る熱転写シートを作製した。
<インキ3>
アクリルスチレン樹脂 18部
メタクリル酸メチル樹脂(重量平均分子量280000) 2部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 40部
<インキ4>
メタクリル酸メチル樹脂 30部
メチルエチルケトン 35部
トルエン 35部
【0032】
(実施例2)
下記インキBを用いて厚さ30nmの帯電防止層を形成した点を除き、実施例1と同様の手順で実施例2に係る熱転写シートを作製した。
<インキB>
ポリチオフェン系導電性ポリマー:
信越ポリマー社製 セプルジータAS-Q01(固形分 6.0%) 1部
メタノール 4.5部
水 4.5部
【0033】
(実施例3)
上記インキCを用いて帯電防止層を形成した点を除き、実施例1と同様の手順で実施例3に係る熱転写シートを作製した。
<インキC>
ポリチオフェン系導電性ポリマー:
ナガセケムテックス社製 デナトロンL-53-21(固形分 7.0%) 1部
メタノール 4.5部
水 4.5部
【0034】
(実施例4)
帯電防止層の厚さを90nmとした点を除き、実施例1と同様の手順で実施例4に係る熱転写シートを作製した。
【0035】
(実施例5)
帯電防止層の厚さを90nmとした点を除き、実施例3と同様の手順で実施例5に係る熱転写シートを作製した。
【0036】
(実施例6)
帯電防止層の厚さを30nmとした点を除き、実施例3と同様の手順で実施例6に係る熱転写シートを作製した。
【0037】
(実施例7)
下記インキDを用いて帯電防止層を形成した点を除き、実施例1と同様の手順で実施例7に係る熱転写シートを作製した。
<インキD>
ポリチオフェン系導電性ポリマー:
総研化学社製 VERAZOL IW-3035(固形分 5.0%) 1部
メタノール 4.5部
水 4.5部
【0038】
(比較例1)
下記インキEを用いて厚さ300nmの帯電防止層を形成した点を除き、実施例1と同様の手順で比較例1に係る熱転写シートを作製した。
<インキE>
四級アンモニウム塩:
第一工業製薬社製 カチオーゲンES-L9(固形分100%) 0.15部
東洋紡社製 バイロナールMD1500(固形分30%) 10部
水 45部
メタノール 45部
【0039】
(比較例2)
帯電防止層の厚さを1nmとした点を除き、実施例1と同様の手順で比較例2に係る熱転写シートを作製した。
【0040】
各例の熱転写シートに対し、以下の評価を行った。
<表面抵抗値の測定>
JIS K6911準拠の抵抗計として、三菱化学アナリティクス社製の抵抗計ハイレスタUPを使用した。この抵抗計の電極はURS電極であり、円形表面電位から表面抵抗を測定する。測定時の印画電圧は10Vとして測定をした。
各例の熱転写シートのバックコート層側から表面抵抗値(Ω/□)を測定し、桁数のみを記録した。なお、この抵抗計は、抵抗値が10の13乗以上となるとOVER表記となる。
【0041】
<サーマルヘッドの腐食>
各例の熱転写シートを三菱プリンタDS-40にセットして100000回印画を実行した。印画後にサーマルヘッドの表面を目視にて観察し、腐食が見られた場合をNG、腐食を認めない場合はOKとした。
【0042】
<ジャムの評価>
各例の熱転写シートを枚葉プリンタであるKODAKドックプリンタにセットして、黒全面印刷を10枚印画した。熱転写シートの滞留および紙詰まりのいずれかが発生した場合をNGとし、いずれも発生しなかった場合をOKとした。
【0043】
<剥離帯電の評価>
各例の熱転写シートを枚葉プリンタであるKODAKドックプリンタPD460にセットして、黄色全面印刷を印画した。印画物の表面電位をデジタル静電電位測定器KSD-1000にて測定した。表面電位が10KV以上の場合を帯電あり(NG)とし、10KV未満の場合を帯電なし(OK)とした。
実施例の結果を表1に、比較例の結果を表2に、それぞれ示す。
【0044】
【0045】
【0046】
各実施例の結果より、イオン性物質を含まない帯電防止層を形成してバックコート層側から測定した表面抵抗値を1012以下とすることにより、帯電抑制によるジャム防止とサーマルヘッドの電極腐食抑制とを両立できることが示された。
一方、イオン性物質を含む帯電防止層を形成した比較例1では、帯電防止効果を示したものの、サーマルヘッドの腐食を抑制できなかった。また、イオン性物質を含まない帯電防止層を形成したものの表面抵抗値が1013以上であった比較例2では、サーマルヘッドの腐食が抑制されたものの、帯電防止効果が十分でなかった。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
例えば、本発明に係る熱転写シートにおいて、保護層を備えることは必須でなく、省略されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 熱転写シート
10 基材
10a 第一面
10b 第二面
20 着色層
21 イエロー層(色層)
22 マゼンタ層(色層)
23 シアン層(色層)
24 下引き層
40 保護層
41 剥離層
50 帯電防止層
60 バックコート層