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  • 特開-車両用制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138102
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20230922BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20230922BHJP
   B60T 13/74 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
G01M7/02 B
G01M17/007 Z
B60T13/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044607
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】池松 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
【テーマコード(参考)】
3D048
【Fターム(参考)】
3D048BB51
3D048HH18
3D048HH66
3D048HH68
3D048RR02
(57)【要約】
【課題】エンジンが搭載されていない車両であっても、車両に振動を与える。
【解決手段】車両用制御装置(1)は、車両(100)に振動を与えるべく、車両に搭載されている電気モータ(15)のロータを、第1回転方向と第1回転方向とは逆方向の第2回転方向とに交互に、振動的に駆動する加振制御を実行する駆動制御部(41)を備え、加振制御におけるロータの回転方向を第1回転方向と第2回転方向とに切り替える切替周期は、車両に与える振動の周波数に基づいて設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に振動を与えるべく、前記車両に搭載されている電気モータのロータを、第1回転方向と前記第1回転方向とは逆方向の第2回転方向とに交互に、振動的に駆動する加振制御を実行する駆動制御部を備え、
前記加振制御における前記ロータの回転方向を前記第1回転方向と前記第2回転方向とに切り替える切替周期は、前記車両に与える振動の周波数に基づいて設定されている
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記車両に与える振動の周波数を取得する第1取得部を備え、
前記駆動制御部は、前記第1取得部により取得された前記周波数に基づいて、前記加振制御における前記切替周期を設定する、請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記車両に与える振動の振動方向を取得する第2取得部を備え、
前記駆動制御部は、前記第2取得部により取得された前記振動方向に基づいて、前記加振制御における前記ロータの回転角度範囲を設定する、請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記車両の振動を与える加振箇所を取得する第3取得部を備え、
前記駆動制御部は、前記第3取得部により取得された前記加振箇所に基づいて、前記車両に搭載されている複数の前記電気モータから前記加振制御の実行対象とする前記電気モータを選択する、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
複数の前記電気モータが搭載された前記車両に適用され、
前記駆動制御部は、前記加振制御において、複数の前記電気モータの前記ロータを駆動させる、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンマウントにその緩衝機能を抑制する治具を装着し、シフトレバーが中立位置に維持された状態でエンジンを始動させることにより、エンジンの振動を緩衝させることなく車体に伝達する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-209149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された従来技術は、エンジンが搭載されていない車両には適用することができない。
【0005】
本開示の一態様は、エンジンが搭載されていない車両であっても、車両に振動を与えることができる車両用制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る車両用制御装置は、車両に振動を与えるべく、前記車両に搭載されている電気モータのロータを、第1回転方向と前記第1回転方向とは逆方向の第2回転方向とに交互に、振動的に駆動する加振制御を実行する駆動制御部を備え、前記加振制御における前記ロータの回転方向を前記第1回転方向と前記第2回転方向とに切り替える切替周期は、前記車両に与える振動の周波数に基づいて設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、エンジンが搭載されていない車両であっても、車両に振動を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る車両用制御装置の機能構成の説明に用いるブロック図である。
図2】本開示の実施形態に係る車両用制御装置により制御される液圧制動装置の概略断面図である。
図3】本開示の実施形態に係る車両用制御装置による処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本開示の実施形態に係る車両用制御装置の機能構成の説明に用いるブロック図である。図1に示す制動制御装置1は、本開示の実施形態に係る車両用制御装置の一例である。制動制御装置1は、例えば、ブレーキECUであり、車両100に搭載され、車両100の液圧制動装置10を制御する。液圧制動装置10は、電気モータ15を有し、車両100の制動力制御に用いられる。液圧制動装置10については、後に詳述する。
【0010】
制動制御装置1は、車両100の車両通信ネットワーク3に接続されている。制動制御装置1は、車両通信ネットワーク3を介して、車両制御装置2、加速度センサ5および集音部6に接続されている。
【0011】
車両制御装置2は、ブレーキECU以外の車両100に搭載されるECUであって、液圧制動装置10以外の車載装置に備わる電気モータ51を制御する。例えば、車両制御装置2は、車両100のパワーウィンドウを制御するECUであって、電気モータ51を駆動制御することで車両100のドアに備わる窓の開閉を行う。
【0012】
なお、図1では、車両制御装置2と電気モータ51とは1個ずつ記載されているが、本開示の実施形態はそれらの数に限られるものではない。車両制御装置2と電気モータ51とは2個以上であっても良い。また、電気モータ51は、車両100の駆動輪に駆動力を伝達する電気モータであっても良い。
【0013】
制動制御装置1は、車両通信ネットワーク3を介して、加速度センサ5の検出信号を読み取り、車両100の加速度を算出する。
【0014】
車両100には、集音部6が搭載されている。集音部6は、マイクを有して構成され、車両100から生じる音を検出する。集音部6は、車両100に1つ搭載されてもよいし、複数搭載されてもよい。集音部6が車両100に複数搭載されている場合、それらの集音部6は様々な位置に配置されることが好ましい。制動制御装置1は、車両通信ネットワーク3を介して集音部6の検出信号を読み取り、車両100から生じる音を検出する。
【0015】
〔液圧制動装置〕
図2は、液圧制動装置10の概略断面図である。本実施形態では、液圧制動装置10は、車両100の複数の車輪13に対してそれぞれ設けられているものとする。本実施形態の液圧制動装置10は、シリンダ機構14と、電気モータ15と、直動変換機構16と、回転伝達機構17とを備えている。電気モータ15は、ロータ23と、ステータ24と、モータ軸25とを有している。車両100のブレーキペダル32Aが踏み込まれると、その踏み込み量がストロークセンサ32により検出され、制動制御装置1に入力される。すると、制動制御装置1により電気モータ15のロータ23が回転され、ロータ23と共にモータ軸25が回転される。
【0016】
モータ軸25には、回転伝達機構17の第1歯車26が固定されている。回転伝達機構17は、第1歯車26と、第1歯車26に噛み合わされた第2歯車27と、第2歯車27に噛み合わされた第3歯車28とを有する。第3歯車28は、直動変換機構16のねじ軸29に接続されている。これにより、電気モータ15の回転は、回転伝達機構17により、直動変換機構16のねじ軸29に伝達される。直動変換機構16は、ねじ軸29とナット30とを有するボールねじ機構である。ナット30は、ねじ軸29の回転に応じて直動する。直動変換機構16のナット30は、電気モータ15の回転に応じて直動する。
【0017】
シリンダ機構14は、ナット30に連結されたピストン19と、シリンダ18とを有している。シリンダ18の内側には、ブレーキ液が導入される液室20がピストン19により区画形成されている。液室20は、ピストン19の初期位置において、入力ポート21を通じてリザーバタンク11に接続される。リザーバタンク11は、ブレーキ液を貯留するタンクである。また、液室20は、出力ポート22A及びブレーキ配管22Bを通じてホイールシリンダ12に接続されている。
【0018】
ピストン19は、ナット30の直動により、シリンダ18の内側を直動する。電気モータ15のロータ23が第1回転方向R1に回転した場合、ピストン19が液室20を狭める方向R3に直動する。その結果、ホイールシリンダ12の液圧が増加し、摩擦材12Aが車輪13と共に回転する被摩擦部12Bに押し付けられ、車輪13に制動力が付与される。電気モータ15のロータ23が第1回転方向R1とは逆方向の第2回転方向R2に回転した場合、ピストン19が液室20を広げる方向R4に直動する。その結果、ホイールシリンダ12の液圧が低下し、摩擦材12Aが被摩擦部12Bから離れる。ホイールシリンダ12の液圧は、液圧センサ33により検出され、その検出信号が制動制御装置1に入力される。
【0019】
制動制御装置1は、図1に示すように不揮発性の記憶媒体である記憶部40を備える。制動制御装置1は、記憶部40に記憶されたプログラムを図示しないCPUが実行することにより、駆動制御部41と、第1取得部42と、第2取得部43と、第3取得部44と、判定部45として機能する。
【0020】
駆動制御部41は、車両100に振動を与える加振制御を実行するために、液圧制動装置10の電気モータ15及び電気モータ15以外の電気モータ(例えば電気モータ51)の駆動を制御する。加振制御については後述するが、加振制御により車両100に生じた振動は、車両100の検査などに利用し得る。
【0021】
第1取得部42は、加振制御により車両100に与える振動の周波数を取得する。第2取得部43は、加振制御により車両100に与える振動の振動方向を取得する。第3取得部44は、加振制御により振動を与える車両100の箇所(以下「加振箇所」という)を取得する。
【0022】
判定部45は、加振制御により加振箇所に与えた振動に対する車両100の反応に基づいて、車両100における異常の有無を判定する。車両100の反応としては、車両100に実際に生じた振動や、車両100から生じた音などが考えられる。車両100における異常としては、車両100を構成する部品のがたつきや変形や劣化や、車両100への異物の侵入などが考えられる。本実施形態では、判定部45は、集音部6により集音された音と、加速度センサ5により検出された加速度とに基づいて、車両100における異常の有無を判定する。
【0023】
〔加振制御〕
以下、上述した加振制御について説明する。制動制御装置1は、加振制御において駆動制御部41として機能して、電気モータ15のロータ23を、図2に示す第1回転方向R1と第2回転方向R2とに交互に、振動的に駆動する。これにより、電気モータ15を振動源として、車両100に振動を与えることができる。
【0024】
更に、ロータ23が振動的に駆動されることにより、ナット30およびピストン19が方向R3と方向R4とに振動的に直動する。その結果、液室20の容積が振動的に変化し、ブレーキ配管22B内の液圧が振動的に変化する。これにより、シリンダ18からホイールシリンダ12まで延びているブレーキ配管22Bを振動源として、車両100に振動を与えることができる。ブレーキ配管22Bの少なくとも一部は車両100のばね下に位置するため、車両100のばね下に効率的に振動を与えることができる。ここで、効率的とは、加振箇所に与える振動の強度に対する消費エネルギーが小さいことを意味する。
【0025】
また、駆動制御部41は、加振制御において、液圧制動装置10の電気モータ15以外の電気モータを、電気モータ15と同様に振動的に駆動する。例えば、制動制御装置1は、車両制御装置2が制御する電気モータ51を振動的に駆動する。この場合、駆動制御部41は、車両通信ネットワーク3を介して、車両制御装置2に電気モータ51を駆動させる。駆動制御部41は、電気モータ15以外の電気モータを直接駆動してもよい。
【0026】
駆動制御部41は、加振制御において、加振箇所に応じた電気モータのロータを振動的に駆動する。駆動制御部41は、例えば車両100のばね下が加振箇所である場合、電気モータ15を加振制御の実行対象に設定する。また駆動制御部41は、例えばパワーウィンドウとその周辺が加振箇所である場合、電気モータ51を加振制御の実行対象に設定する。このように加振箇所に近い電気モータを加振制御の実行対象に設定することにより、加振箇所に効率的に振動を与えることができる。また、加振箇所に精度よく所望の波形の振動を与えることができる。
【0027】
駆動制御部41は、加振制御において、加振箇所に与える振動の周波数及び波形に応じた切替周期で、電気モータのロータを振動的に駆動する。ここで、切替周期とは、電気モータのロータの回転方向を第1回転方向R1と第2回転方向R2とに切り替える周期である。また、切替周期は、電気モータのロータの回転角度幅を回転速度で除したものである。駆動制御部41は、切替周期に基づいて、ロータの回転速度および回転角度幅を設定する。これにより、加振箇所に様々な周波数の振動を与えることができる。
【0028】
駆動制御部41は、加振制御において、加振箇所に与える振動の方向及び波形に応じた回転角度範囲で、電気モータのロータを振動的に駆動する。ここで、回転角度範囲とは、ロータ23の回転角度幅の両端の回転角度によって規定される角度範囲である。駆動制御部41は、ロータ23の回転角度範囲を変えることにより、加振箇所に様々な方向の振動を与えることができる。振動の方向としては、例えば、鉛直方向、車両100の前後方向、車両100の車幅方向等が考えられる。
【0029】
駆動制御部41は、加振制御において、加振箇所に与える振動の強度や波形に応じて、複数の電気モータのロータを振動的に駆動する。駆動制御部41は、例えば車両100のばね下に比較的強い振動を与える場合、複数の液圧制動装置10の電気モータ15を加振制御の実行対象に設定する。また駆動制御部41は、例えば車両100の全体に比較的強い振動を与える場合、電気モータ15及び電気モータ51を含む多数の電気モータを加振制御の実行対象に設定する。また駆動制御部41は、例えば複雑な波形の振動を加振箇所に与える場合、複数の電気モータのロータを、位相差をつけて振動的に駆動したり、異なる切替周期で振動的に駆動したり、異なる回転角度範囲で振動的に駆動したりする。このように、複数の電気モータの駆動を協調させることにより、加振箇所に様々な強さ及び波形の振動を与えることができる。
【0030】
以降、振動の周波数、方向、強度及び波形を「振動要求」といい、電気モータの回転速度、回転角度幅及び回転角度範囲、並びに加振制御の実行対象を「制御要求」という。
【0031】
本実施形態では、振動要求に対応する制御要求に関する情報が記憶部40に記憶されているものとする。当該情報は、記憶部40に予め記憶されたものでもよいし、車両100において生成又は更新されたものでもよい。例えば、制動制御装置1は、車両100に搭載されている電気モータ15等の位置および性能に関する情報を、車両通信ネットワーク3を介して車両制御装置2等から収集してもよい。
【0032】
〔車両の加振検査〕
以下、加振制御を活用した車両100の加振検査について説明する。ここで、車両100の加振検査とは、加振制御により車両100に与えた振動に対する車両100の反応に基づく車両100の検査である。制動制御装置1は、加振制御において判定部45として機能して、車両100における異常の有無を判定する。
【0033】
本実施形態では、車両100の加振検査は、制動制御装置1が検査モードにあるときに実行されるものとする。また、制動制御装置1が検査モードであるか否かは、検査モードを示すフラグで管理されるものとする。
【0034】
フラグは、車両100の製造工場やディーラや整備工場の点検者によって所定の操作が行われるとオン状態になる。所定操作は、車両100の運転中に実行不可能な操作であることが好ましい。これにより、車両100の運転者による誤操作で、車両100の運転中に加振制御によって車両100が振動することを抑制することができる。
【0035】
制動制御装置1は、加振検査において判定部45として機能して、車両100における異常の有無を判定する。
【0036】
検査モードには複数種類のモードが存在する。複数のモードは、加振検査の対象及び内容に基づいて設けられている。検査対象としては、例えば、車両100のばね下、パワーウィンドウ周辺、インスツルメントパネル周辺等が考えられる。各モードには、加振箇所に与える振動の周波数、強度、波形および方向が設定されている。
【0037】
以下、図3を参照して、車両検査モードにおける制動制御装置1の作動を説明する。図3は、検査モードにおいて制動制御装置1により実行される処理の流れを示すフローチャートである。制動制御装置1は、図3の一連の処理を所定の実行周期で繰り返し実行する。
【0038】
本実施形態では、加振検査の検査モードを入力する入力装置52が車両通信ネットワーク3を介して制動制御装置1に接続されるものとする。入力装置52は、専用装置であってもよいし、汎用装置であってもよい。専用装置としては、加振検査専用の入力装置や、加振検査の検査モードを含む複数の点検モードを入力する点検用の入力装置が考えられる。汎用装置としては、パソコンやタブレット等の情報処理装置が考えられる。入力装置52により入力された検査モードは、フラグとして記憶部40の所定の記憶領域に記憶される。
【0039】
また本実施形態では、記憶部40には、加振検査の検査モードに対応する振動要求が記憶されているものとする。
【0040】
ステップS100において、制動制御装置1は、車両100の加振検査が開始されたか否かを判定する。車両100の点検者により入力装置52が操作されて、検査モードが設定され、加振検査を開始されると、記憶部40の所定の記憶領域に検査モードを示すフラグがオフ状態からオン状態に変化する。制動制御装置1は、このフラグの変化を車両100の加振検査が開始されたと判断し(S100:YES)、ステップS101の処理に進む。一方、制動制御装置1は、点検者が未だ加振検査を開始させていない場合や点検者が加振検査を既に開始させて加振検査が実行中である場合は、具体的にはフラグがオフ状態やオン状態に維持されている場合は、ステップS104の処理に進む。
【0041】
ステップS101において、制動制御装置1は、車両100に与える振動の周波数及び波形に対応する電気モータ15の回転速度及び回転角度幅を設定する。具体的には、制動制御装置1は、第1取得部42として機能し、フラグが示す検査モードに対応する振動の周波数に関する情報を記憶部40から取得する。また、制動制御装置1は、検査モードに対応する振動の波形に関する情報を記憶部40から取得する。そして、制動制御装置1は、記憶部40から取得した振動の周波数および波形に関する情報に基づいて、電気モータ15のロータ23の回転方向を切り替える切替周期を設定する。すなわち、制動制御装置1は、電気モータ15のロータ23の回転速度および回転角度幅を設定する。
【0042】
続くステップS102において、制動制御装置1は、車両100に与える振動の方向及び波形に対応する電気モータ15の回転角度範囲を設定する。具体的には、制動制御装置1は、第2取得部43として機能し、フラグが示す検査モードに対応する振動の方向に関する情報を記憶部40から取得する。また、制動制御装置1は、検査モードに対応する振動の波形に関する情報を記憶部40から取得する。そして、制動制御装置1は、記憶部40から取得した振動の方向及び波形に関する情報に基づいて、電気モータ15のロータ23の回転角度範囲を設定する。
【0043】
続くステップS103において、制動制御装置1は、車両100に与える振動の強度及び波形並びに検査対象に対応する加振制御の実行対象を設定する。具体的には、制動制御装置1は、第3取得部44として機能し、フラグが示す検査モードに対応する検査対象である加振箇所に関する情報を記憶部40から取得する。また、制動制御装置1は、検査モードに対応する振動の強度及び波形に関する情報を記憶部40から取得する。そして、制動制御装置1は、記憶部40から取得した振動の強度及び波形並びに加振箇所に基づいて、加振制御の実行対象を設定する。
【0044】
続くステップS105では、制動制御装置1は、駆動制御部41として機能し、ステップS103で設定された加振制御の実行対象である電気モータのロータを、ステップS101からS102で設定された回転速度、回転角度幅及び回転角度範囲で、振動的に駆動する。
【0045】
ところで制動制御装置1は、ステップS104において、車両100の加振検査が実行中であるか否かを判定する。
【0046】
制動制御装置1は、車両100の加振検査が実行中であると判定した場合(ステップS104:YES)、具体的にはフラグがオン状態に維持されていると判定した場合は、ステップS105の処理に進む。これにより、車両100の加振検査が実行中である場合は、以前の実行周期においてステップS103で設定された加振制御の実行対象である電気モータのロータが、以前の実行周期においてステップS101からS102で設定された回転速度、回転角度幅及び回転角度範囲で、振動的に駆動される。
【0047】
一方、制動制御装置1は、車両100の加振検査が実行中ではないと判定した場合(ステップS104:NO)、具体的にはフラグがオフ状態に維持されていると判定した場合は、今回の実行周期の処理を終了する。
【0048】
ステップS106において、制動制御装置1は、集音部6により、車両100から発生している音を測定する。続くステップS107において、制動制御装置1は、加速度センサ5により、車両100の振動を測定する。続くステップS108において、制動制御装置1は、判定部45として機能し、ステップS106で測定した音とステップS107で測定した振動とに基づいて、車両100の異常の有無を判定する。
【0049】
(変形例)
上記実施形態に係る車両用制御装置は、液圧制動装置10の制御を行う制動制御装置1とした。しかし、本開示に係る車両用制御装置は、制動制御装置1だけに限られず、電気モータを制御可能な制御装置であればよい。例えば、本開示に係る車両用制御装置は、パワーウィンドウ用の電気モータ51の駆動制御を行う車両制御装置2であってもよいし、パワーステアリングやインホイールモータの駆動制御を行う制御装置であってもよい。また、加振制御に用いる電気モータは、液圧制動装置10の電気モータ15およびパワーウィンドウ用の電気モータ51に限られない。例えば、加振制御に用いる電気モータは、パワーステアリング用の電気モータやインホイールモータであってもよい。
【0050】
上記実施形態では、車両100に接続された入力装置52から加振検査の検査モードを取得するようにとした。しかしながら、入力装置52は、車両100に搭載されている装置であってもよい。車両100に搭載されている装置としては、例えば、車両100のインスツルメントパネルに設けられた入力装置が考えられる。また、入力装置52から取得する情報は、車両100に与える振動の振動要求であってもよいし、電気モータの制御要求であってもよい。
【0051】
上記実施形態では、車両100に与える振動の振動要求として、振動の周波数、方向、強度及び波形、並びに加振箇所を取得するようにした。しかしながら、車両100に与える振動の振動要求として、振動の周波数、方向、強度及び波形、並びに加振箇所の少なくとも1つに関連する情報を取得し、取得した情報に基づいて加振制御を実行するようにしてもよい。
【0052】
〔まとめ〕
本開示の一態様に係る車両用制御装置は、車両に振動を与えるべく、前記車両に搭載されている電気モータのロータを、第1回転方向と前記第1回転方向とは逆方向の第2回転方向とに交互に、振動的に駆動する加振制御を実行する駆動制御部を備え、前記加振制御における前記ロータの回転方向を前記第1回転方向と前記第2回転方向とに切り替える切替周期は、前記車両に与える振動の周波数に基づいて設定されている。
【0053】
上記構成によれば、車両に装着されている電気モータの加振制御により車両へ振動を与えるため、エンジンが搭載されていない車両であっても車両に振動を与えることができる。
【0054】
また、本開示の一態様に係る車両用制御装置は、前記車両に与える振動の周波数を取得する第1取得部を備え、前記駆動制御部は、前記振動周波数取得部により取得された前記周波数に基づいて、前記加振制御における前記切替周期を設定する。
【0055】
車両に振動を与える目的によっては、好適な周波数が異なることが考えられる。上記構成によれば、制御部は車両に様々な周波数の振動を与えることができる。
【0056】
また、本開示の一態様に係る車両用制御装置は、前記車両に与える振動の振動方向を取得する第2取得部を備え、前記駆動制御部は、前記第2取得部により取得された前記振動方向に基づいて、前記加振制御における前記ロータの回転角度範囲を設定する。
【0057】
車両に振動を与える目的によっては、好適な振動方向が異なることが考えられる。上記構成によれば、制御部は車両に様々な方向の振動を与えることができる。
【0058】
また、本開示の一態様に係る車両用制御装置は、前記車両の振動を与える加振箇所を取得する第3取得部を備え、前記駆動制御部は、前記第3取得部により取得された前記加振箇所に基づいて、前記車両に搭載されている複数の前記電気モータから前記加振制御の実行対象とする前記電気モータを選択する。
【0059】
車両に振動を与える目的によっては、車両の特定の加振箇所に振動を発生させることが考えられる。加振箇所に応じたモータを加振制御の実行対象とすることにより、加振箇所に効果的に振動を発生させることができる。
【0060】
また、本開示の一態様に係る車両用制御装置では、複数の前記電気モータが搭載された前記車両に適用され、前記駆動制御部は、前記加振制御において、前記車両に搭載されている複数の前記電気モータの前記ロータを作動させる。
【0061】
上記構成によれば、車両に搭載されている複数の電気モータを協調させることにより、1つの電気モータの加振制御では車両に与えることができない強度又は複雑さの振動を、複数の電気モータの加振制御で車両に与えることができる。
【0062】
また、本開示の一態様に係る車両用制御装置では、前記電気モータは、液圧制動装置の液圧を変化させるアクチュエータを駆動するものである。
【0063】
上記構成によれば、車両100に新たに電気モータを追加することなく、加振制御を行うことができる。また、液圧制動装置の液圧を変化させるアクチュエータは、ばね下に配置されることが多い。当該アクチュエータがばね下に配置される場合は、車両100のばね下に効率的に振動を与えることができる。
【0064】
また、本開示の一態様に係る車両用制御装置では、前記駆動制御部は、前記液圧制動装置の前記電気モータを駆動して前記車両を制動する第1モードと、前記車両の検査のために前記液圧制動装置の前記電気モータを用いて前記加振制御を実行する第2モードとを有し、前記車両の走行中は前記第2モードに遷移しない。
【0065】
上記構成によれば、車両の運転中に車両の検査が開始されることを抑制することができる。
【0066】
また、本開示の一態様に係る車両用制御装置では、前記車両の音、又は、前記車両の振動を検知する検知部と、前記加振制御の実行中における前記検知部による検知結果に基づいて、前記車両に関する異常の有無を判定する判定部を備えている。
【0067】
上記構成によれば、エンジンが搭載されていない車両の異常の有無を判定することができる。
【0068】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 制動制御装置
2 車両制御装置
5 加速度センサ
6 集音部
10 液圧制動装置
23 ロータ
40 記憶部
41 駆動制御部
42 第1取得部
43 第2取得部
44 第3取得部
45 判定部
52 入力装置
100 車両
R1 第1回転方向
R2 第2回転方向
図1
図2
図3