(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138106
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】テトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/16 20060101AFI20230922BHJP
C07C 25/13 20060101ALI20230922BHJP
C07C 229/36 20060101ALI20230922BHJP
C07C 227/04 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C07C17/16
C07C25/13
C07C229/36
C07C227/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044612
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】392000888
【氏名又は名称】株式会社合同資源
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(72)【発明者】
【氏名】森山 克彦
(72)【発明者】
【氏名】西口 由菜
(72)【発明者】
【氏名】海宝 龍夫
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC30
4H006AC52
4H006BB25
4H006BC10
4H006BE50
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM30
4H006BM71
4H006BM73
4H006BM74
4H006BS10
4H006BU32
(57)【要約】
【課題】汎用性が高く、簡便なプロセスで光学活性なテトラフルオロヨオードフェニルアラニンを製造する。
【解決手段】テトラフルオロ安息香酸に対してヨウ素溶液と、n-BuLiを混合することでテトラフルオロヨード安息香酸を生成し、生成したテトラフルオロヨード安息香酸に対してホウ素試薬を混合することでテトラフルオロヨードベンジルアルコールを生成し、生成したテトラフルオロヨードベンジルアルコールに対して、CBr4及びPPh3、又はPBr3を混合することでテトラフルオロヨオードフェニルアラニンを生成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式(1)に基づき、テトラフルオロ安息香酸に対してヨウ素溶液と、n-BuLiを混合することでテトラフルオロヨード安息香酸を生成する第1工程と、
上記第1工程を経て生成されるテトラフルオロヨード安息香酸に対してホウ素試薬を混合することでテトラフルオロヨードベンジルアルコールを生成する第2工程と、
上記第2工程を経て生成されるテトラフルオロヨードベンジルアルコールに対して、CBr
4及びPPh
3、又はPBr
3を混合することでテトラフルオロヨードベンジルブロミドを生成する第3工程とを有すること
を特徴とするテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法。
【化1】
・・・・・・・・(1)
【請求項2】
上記第1工程は、テトラフルオロ安息香酸に対して1.2~2.0当量のヨウ素溶液と、2.0~2.5当量のn-BuLiを混合し、
上記第2工程は、上記テトラフルオロヨード安息香酸に対して1.2~5.0当量のホウ素試薬を混合し、
上記第3工程は、上記テトラフルオロヨードベンジルアルコールに対して、1.2~5.0当量のCBr4及びPPh3と、0.6~5.0当量のPBr3を混合すること
を特徴とする請求項1記載のテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法。
【請求項3】
上記第1工程は、-60~-78℃で反応させ、
上記第2工程は、0~70℃で反応させ、
上記第3工程は、室温で反応させること
を特徴とする請求項1記載のテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法。
【請求項4】
以下の化学式(1)に基づき、テトラフルオロ安息香酸に対してヨウ素溶液と、n-BuLiを混合することでテトラフルオロヨード安息香酸を生成する第1工程と、
上記第1工程を経て生成されるテトラフルオロヨード安息香酸に対してホウ素試薬を混合することでテトラフルオロヨードベンジルアルコールを生成する第2工程と、
上記第2工程を経て生成されるテトラフルオロヨードベンジルアルコールに対して、CBr
4及びPPh
3、又はPBr
3を混合することでテトラフルオロヨードベンジルブロミドを生成する第3工程と、
以下の化学式(2)に基づき、上記第3工程を経て生成されるテトラフルオロヨードベンジルブロミドに対してN-(ジフェニルメチレン)グリシンtert-ブチルエステルと、50%KOH水溶液を混合することで、N-(ジフェニルメチレン)-L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルを生成する第4工程と、
以下の化学式(3)に基づき、上記第4工程を経て生成されるN-(ジフェニルメチレン)-L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルに対して、クエン酸を混合することでL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルを生成する第5工程と、
以下の化学式(4)に基づき、上記第5工程を経て生成されるL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルに対して、塩酸を混合することでL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩を生成する第6工程とを有すること
を特徴とするL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩の製造方法。
【化1】
・・・・・・・・(1)
【化2】
・・・・・・・・(2)
【化3】
・・・・・・・・(3)
【化4】
・・・・・・・・(4)
【請求項5】
上記第1工程は、テトラフルオロ安息香酸に対して1.2~2.0当量のヨウ素溶液と、2.0~2.5当量のn-BuLiを混合し、
上記第2工程は、上記テトラフルオロヨード安息香酸に対して1.2~5.0当量のホウ素試薬を混合し、
上記第3工程は、上記テトラフルオロヨードベンジルアルコールに対して、1.2~5.0当量のCBr4及びPPh3と、0.6~5.0当量のPBr3を混合することを特徴とする請求項4記載のL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩の製造方法。
【請求項6】
上記第1工程は、-60~-78℃で反応させ、
上記第2工程は、0~70℃で反応させ、
上記第3工程は、室温で反応させること
を特徴とする請求項5記載のL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン結合能の優れたテトラフルオロヨードフェニル基を有する光学活性アミノ酸としてのテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の有機合成化学において、新たな機能性を示す有機化合物の創製研究は、重要な課題の一つである。その中で、ハロゲン結合は、水素結合やπ-πスタッキングと同様な非共有結合性相互作用の一つであり、ハロゲン原子のσ*軌道とルイス塩基間から形成される相互作用である。このハロゲン結合を利用することにより、有機分子の触媒活性や精密な高次空間の形成に導くことができる。
【0003】
しかしながら、ハロゲン結合に立脚した研究は、未だ発展途上の分野であり、斬新なハロゲン結合ドナー型有機化合物の創製研究は、次世代の機能性有機材料の開発を担う有用な課題である。
【0004】
一方、アミノ酸はペプチドを形成する構成要素であり、ペプチドは、アミノ酸間の非共有結合性相互作用により、高次構造を形成することができる。この高次構造の構築により、ペプチド特有の働きを持つことが知られている。
【0005】
従来のペプチド構造は、一般的な非共有結合性相互作用から形成されるものに限られている。現代の創薬化学において、ペプチド創薬が注目を集めているが、その一環として、新しい非共有結合であるハロゲン結合を有するペプチド創製を目指す方向性がある。例えば、特許文献1の開示技術に示すような光学活性なアミノ酸の製造方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2008/038578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光学活性なアミノ酸について具体的な創製方法がいまだ案出されていないのが現状であった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ハロゲン結合能の優れたテトラフルオロヨードフェニル基を有する光学活性アミノ酸としてのテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した課題を解決するために、テトラフルオロ安息香酸に対してヨウ素溶液と、n-BuLiを混合することでテトラフルオロヨード安息香酸を生成し、この生成したテトラフルオロヨード安息香酸を中間生成物として、テトラフルオロヨードベンジルブロミドを生成するテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法を発明した。
【0010】
第1発明に係るテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法は、以下の化学式(1)に基づき、テトラフルオロ安息香酸に対してヨウ素溶液と、n-BuLiを混合することでテトラフルオロヨード安息香酸を生成する第1工程と、上記第1工程を経て生成されるテトラフルオロヨード安息香酸に対してホウ素試薬を混合することでテトラフルオロヨードベンジルアルコールを生成する第2工程と、上記第2工程を経て生成されるテトラフルオロヨードベンジルアルコールに対して、CBr
4及びPPh
3、又はPBr
3を混合することでテトラフルオロヨードベンジルブロミドを生成する第3工程とを有することを特徴とする。
【化1】
・・・・・・・・(1)
【0011】
第2発明に係るテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法は、第1発明において、上記第1工程は、テトラフルオロ安息香酸に対して1.2~2.0当量のヨウ素溶液と、2.0~2.5当量のn-BuLiを混合し、上記第2工程は、上記テトラフルオロヨード安息香酸に対して1.2~5.0当量のホウ素試薬を混合し、上記第3工程は、上記テトラフルオロヨードベンジルアルコールに対して、1.2~5.0当量のCBr4及びPPh3と、0.6~5.0当量のPBr3を混合することを特徴とする。
【0012】
第3発明に係るテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法は、第1発明において、上記第1工程は、-60~-78℃で反応させ、上記第2工程は、0~70℃で反応させ、上記第3工程は、室温で反応させることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係るL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩の製造方法は、以下の化学式(1)に基づき、テトラフルオロ安息香酸に対してヨウ素溶液と、n-BuLiを混合することでテトラフルオロヨード安息香酸を生成する第1工程と、上記第1工程を経て生成されるテトラフルオロヨード安息香酸に対してホウ素試薬を混合することでテトラフルオロヨードベンジルアルコールを生成する第2工程と、上記第2工程を経て生成されるテトラフルオロヨードベンジルアルコールに対して、CBr
4及びPPh
3、又はPBr
3を混合することでテトラフルオロヨードベンジルブロミドを生成する第3工程と、以下の化学式(2)に基づき、上記第3工程を経て生成されるテトラフルオロヨードベンジルブロミドに対してN-(ジフェニルメチレン)グリシンtert-ブチルエステルと、50%KOH水溶液を混合することで、N-(ジフェニルメチレン)-L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルを生成する第4工程と、以下の化学式(3)に基づき、上記第4工程を経て生成されるN-(ジフェニルメチレン)-L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルに対して、クエン酸を混合することでL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルを生成する第5工程と、以下の化学式(4)に基づき、上記第5工程を経て生成されるL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルに対して、塩酸を混合することでL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩を生成する第6工程とを有することを特徴とする。
【化1】
・・・・・・・・(1)
【化2】
・・・・・・・・(2)
【化3】
・・・・・・・・(3)
【化4】
・・・・・・・・(4)
【0014】
第5発明に係るL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩の製造方法は、第4発明において、上記第1工程は、テトラフルオロ安息香酸に対して1.2~2.0当量のヨウ素溶液と、2.0~2.5当量のn-BuLiを混合し、上記第2工程は、上記テトラフルオロヨード安息香酸に対して1.2~5.0当量のホウ素試薬を混合し、上記第3工程は、上記テトラフルオロヨードベンジルアルコールに対して、1.2~5.0当量のCBr4及びPPh3と、0.6~5.0当量のPBr3を混合することを特徴とする。
【0015】
第6発明に係るL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩の製造方法は、第5発明において、上記第1工程は、-60~-78℃で反応させ、上記第2工程は、0~70℃で反応させ、上記第3工程は、室温で反応させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明に係るテトラフルオロヨオードフェニルアラニンの製造方法によれば、汎用性が高く、簡便なプロセスで光学活性なアミノ酸を製造することができる。特にヨウ素溶液を利用することで高価な原料が必要とすることなく光学活性なアミノ酸を製造することができ、製造コストをより安価に抑えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法について詳細に説明する。
【0018】
本発明を適用した光学活性なテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法は、以下の化学式(1)に示すような第1工程~第3工程を経るものである。
【0019】
【0020】
第1工程では、出発物質としてのテトラフルオロ安息香酸に対してヨウ素溶液と、n-BuLiを混合することで中間生成物としてのテトラフルオロヨード安息香酸を生成する(ここでnは、normalを意味する。)。第1工程では、反応溶媒としては、例えばTHF等を用いるようにしてもよい。この第1工程では、テトラフルオロ安息香酸に対して1.2~2.0当量のヨウ素溶液と、2.0~2.5当量のn-BuLiを混合する。この第1工程では、反応温度としては、-60~-78℃で反応させることが望ましい。
【0021】
第2工程では、第1工程を経て生成される中間生成物としてのテトラフルオロヨード安息香酸に対してホウ素試薬を混合することでテトラフルオロヨードベンジルアルコールを生成する。第2工程では、反応溶媒としては、例えばTHF等を用いるようにしてもよい。この第2工程では、テトラフルオロヨード安息香酸に対して1.2~5.0当量のホウ素試薬を混合する。ホウ素試薬としては、例えばBH3・THF等や、BH3・Me2S、NaBH4/I2等を利用するようにしてもよい。この第2工程では、反応温度としては、0~70℃で反応させることが望ましい。
【0022】
第3工程では、第2工程を経て生成される中間生成物としてのテトラフルオロヨードベンジルアルコールに対して、CBr4及びPPh3(トリフェニルホスフィン)、又はPBr3を混合することでテトラフルオロヨードベンジルブロミドを生成する。第3工程では、反応溶媒としては、例えばTHFやCH2Cl2等を用いるようにしてもよい。この第3工程では、テトラフルオロヨードベンジルアルコールに対して、1.2~5.0当量のCBr4及びPPh3と、0.6~5.0当量のPBr3を混合する。なお、CBr4又はPBr3以外に、HBrを用いるようにしてもよい。第3工程では反応温度としては0℃~室温で反応させることが望ましい。
【0023】
[ヨウ素溶液]
第1工程において混合するヨウ素溶液は、ヨウ素、一塩化ヨウ素、N-ヨードコハク酸イミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン等であるがこれらに限定されるものでは無く、ヨウ素化を促進可能な、ヨウ素原子を含む化合物であればいかなるもので構成されていてもよい。
【0024】
[溶媒]
反応溶媒は、ヨウ素化剤によるヨウ素化反応を阻害しない溶媒であれば何でもよいが、好ましくは、一般的なヨウ素化反応で用いられ、ラジカル反応条件下においても安定に存在する溶媒がよい。この反応溶媒の具体例としては、THF以外に、例えばジクロロエタンやクロロホルムなどのハロゲン系溶媒や、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒等があげられる。
【0025】
上述した本発明に係るテトラフルオロヨードベンジルブロミドの製造方法によれば、汎用性が高く、簡便なプロセスで光学活性なアミノ酸を製造することができる。特にヨウ素溶液を利用することで高価な原料が必要とすることなく光学活性なアミノ酸を製造することができ、製造コストをより安価に抑えることが可能となる。
【0026】
なお、本発明は、得られたテトラフルオロヨードベンジルブロミドを出発物質として、L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩を生成することもできる。
【0027】
かかる場合には、以下の化学式(2)に基づいて、第3工程を経て生成されるテトラフルオロヨードベンジルブロミドに対してN-(ジフェニルメチレン)グリシンtert-ブチルエステルと、50%KOH水溶液を混合することで、N-(ジフェニルメチレン)-L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルを生成する(第4工程)。
【0028】
【0029】
次に化学式(3)に基づいて、第4工程を経て生成されるN-(ジフェニルメチレン)-L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルに対して、クエン酸を混合することでL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルを生成する(第5工程)。
【0030】
【0031】
以下の化学式(4)に基づき、第5工程を経て生成されるL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルに対して、塩酸を混合することでL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩を生成する(第6工程)。
【0032】
【実施例0033】
以下、本発明の実施例について説明をする。
【0034】
以下の例では、出発物質としてオルト(o)のテトラフルオロ安息香酸(2、3、4、5-テトラフルオロ安息香酸)を利用している。
【0035】
【0036】
第1工程では、出発物質としてのo-テトラフルオロ安息香酸(2、3、4、5-テトラフルオロ安息香酸)に対して1.7当量のヨウ素を含むヨウ素溶液と、2.2当量のn-BuLiを混合し、溶媒はTHFとし、-78℃で15時間反応させた。その結果、90%の収率でo-テトラフルオロヨード安息香酸(2、3、4、5-テトラフルオロ-6-ヨード安息香酸)を生成することができた。
【0037】
第1工程では、出発物質としてのo-テトラフルオロ安息香酸(2、3、4、5-テトラフルオロ安息香酸)をTHFに溶かし、-78℃で攪拌した。この溶液に、2.2当量のn-BuLiのヘキサン溶液を加えて、-78℃で3時間攪拌した。その後、1.7当量のヨウ素のTHF溶液を加えて反応させた。15時間後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて、溶媒を除去した。この残渣に1N塩酸を加えて、溶液をpH=1にした後に、酢酸エチルで分液抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣をヘキサンで再結晶させ、90%の収率でo-テトラフルオロヨード安息香酸(2、3、4、5-テトラフルオロ-6-ヨード安息香酸)を得た。
【0038】
第2工程では、o-テトラフルオロヨード安息香酸(2、3、4、5-テトラフルオロ-6-ヨード安息香酸)に対して1.4当量のBH3・THFを混合し、溶媒はTHFとし、70℃で18時間反応させた。その結果、89%の収率でo-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、4、5-テトラフルオロ-6-ヨードベンジルアルコール)を生成することができた。
【0039】
第2工程では、o-テトラフルオロヨード安息香酸(2、3、4、5-テトラフルオロ-6-ヨード安息香酸)をTHFに溶かし、0℃で攪拌した。この溶液に、1.4当量のBH3・THFを加えた。その反応溶液を70℃で反応させた。18時間後、水とTHFの混合溶液を加えて、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製して、89%の収率でo-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、4、5-テトラフルオロ-6-ヨードベンジルアルコール)を得た。
【0040】
第3工程では、o-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、4、5-テトラフルオロ-6-ヨードベンジルアルコール)に対して、1.2当量のCBr4と、1.2当量のPPh3を混合し、溶媒はCH2Cl2とし、室温で17時間反応させた。その結果、71%の収率でo-テトラフルオロヨードベンジルブロミド(2、3、4、5-テトラフルオロ-6-ヨードベンジルブロミド)を生成することができた。
【0041】
第3工程では、o-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、4、5-テトラフルオロ-6-ヨードベンジルアルコール)をジクロロメタンに溶かし、0℃で攪拌した。この溶液に、1.2当量のCBr4と、1.2当量のPPh3を加え、室温で反応させた。17時間後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてクロロホルムで分液抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製して、71%の収率でo-テトラフルオロヨードベンジルブロミド(2、3、4、5-テトラフルオロ-6-ヨードベンジルブロミド)を得た。
【0042】
以下の例では、出発物質としてメタ(m)のテトラフルオロ安息香酸(2、3、4、6-テトラフルオロ安息香酸)を利用している。
【0043】
【0044】
第1工程では、出発物質としてのm-テトラフルオロ安息香酸(2、3、4、6-テトラフルオロ安息香酸)に対して1.7当量のヨウ素を含むヨウ素溶液と、2.2当量のn-BuLiを混合し、溶媒はTHFとし、-78℃で15時間反応させた。その結果、49%の収率でm-テトラフルオロヨード安息香酸(2、3、4、6-テトラフルオロ-5-ヨード安息香酸)を生成することができた。
【0045】
第1工程では、出発物質としてのm-テトラフルオロ安息香酸(2、3、4、6-テトラフルオロ安息香酸)をTHFに溶かし、-78℃で攪拌した。この溶液に、2.2当量のn-BuLiのヘキサン溶液を加えて、-78℃で3時間攪拌した。その後、1.7当量のヨウ素のTHF溶液を加えて反応させた。15時間後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて、溶媒を除去した。この残渣に1N塩酸を加えて、溶液をpH=1にした後に、酢酸エチルで分液抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣をヘキサンで再結晶させ、49%の収率でm-テトラフルオロヨード安息香酸(2、3、4、6-テトラフルオロ-5-ヨード安息香酸)を得た。
【0046】
第2工程では、m-テトラフルオロヨード安息香酸に対して1.4当量のBH3・THFを混合し、溶媒はTHFとし、70℃で18時間反応させた。その結果、97%の収率でm-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、4、6-テトラフルオロ-5-ヨードベンジルアルコール)を生成することができた。
【0047】
第2工程では、m-テトラフルオロヨード安息香酸(2、3、4、6-テトラフルオロ-5-ヨード安息香酸)をTHFに溶かし、0℃で攪拌した。この溶液に、1.4当量のBH3・THFを加えた。その反応溶液を70℃で反応させた。18時間後、水とTHFの混合溶液を加えて、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製して、97%の収率でm-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、4、6-テトラフルオロ-5-ヨードベンジルアルコール)を得た。
【0048】
第3工程では、m-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、4、6-テトラフルオロ-5-ヨードベンジルアルコール)に対して、0.6当量のPBr3を混合し、溶媒はTHFとし、0℃で3時間反応させた。その結果、93%の収率でm-テトラフルオロヨードベンジルブロミド(2、3、4、6-テトラフルオロ-5-ヨードベンジルブロミド)を生成することができた。
【0049】
第3工程では、m-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、4、6-テトラフルオロ-5-ヨードベンジルアルコール)をTHFに溶かし、0℃で攪拌した。この溶液に、0.6当量のPBr3を加え、0℃で反応させた。3時間後、反応溶液を除去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製して、93%の収率でm-テトラフルオロヨードベンジルブロミド(2、3、4、6-テトラフルオロ-5-ヨードベンジルブロミド)を得た。
【0050】
以下の例では、出発物質としてパラ(p)のテトラフルオロ安息香酸(2、3、5、6-テトラフルオロ安息香酸)を利用している。
【0051】
【0052】
第1工程では、出発物質としてのp-テトラフルオロ安息香酸(2、3、5、6-テトラフルオロ安息香酸)に対して1.7当量のヨウ素を含むヨウ素溶液と、2.2当量のn-BuLiを混合し、溶媒はTHFとし、-78℃で15時間反応させた。その結果、59%の収率でp-テトラフルオロヨード安息香酸(2、3、5、6-テトラフルオロ-4-ヨード安息香酸)を生成することができた。
【0053】
第1工程では、出発物質としてのp-テトラフルオロ安息香酸(2、3、5、6-テトラフルオロ安息香酸)をTHFに溶かし、-78℃で攪拌した。この溶液に、2.2当量のn-BuLiのヘキサン溶液を加えて、-78℃で3時間攪拌した。その後、1.7当量のヨウ素のTHF溶液を加えて反応させた。15時間後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて、溶媒を除去した。この残渣に1N塩酸を加えて、溶液をpH=1にした後に、酢酸エチルで分液抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣をヘキサンで再結晶させ、59%の収率でp-テトラフルオロヨード安息香酸(2、3、5、6-テトラフルオロ-4-ヨード安息香酸)を得た。
【0054】
第2工程では、p-テトラフルオロヨード安息香酸(2、3、5、6-テトラフルオロ-4-ヨード安息香酸)に対して1.4当量のBH3・THFを混合し、溶媒はTHFとし、70℃で18時間反応させた。その結果、71%の収率でp-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、5、6-テトラフルオロ-4-ヨードベンジルアルコール)を生成することができた。
【0055】
第2工程では、p-テトラフルオロヨード安息香酸(2、3、5、6-テトラフルオロ-4-ヨード安息香酸)をTHFに溶かし、0℃で攪拌した。この溶液に、1.4当量のBH3・THFを加えた。その反応溶液を70℃で反応させた。18時間後、水とTHFの混合溶液を加えて、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製して、71%の収率でp-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、5、6-テトラフルオロ-4-ヨードベンジルアルコール)を得た。
【0056】
第3工程では、p-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、5、6-テトラフルオロ-4-ヨードベンジルアルコール)に対して、1.2当量のCBr4と、1.2当量のPPh3を混合し、溶媒はCH2Cl2とし、室温で17時間反応させた。その結果、51%の収率でp-テトラフルオロヨードベンジルブロミド(2、3、5、6-テトラフルオロ-4-ヨードベンジルブロミド)を生成することができた。
【0057】
第3工程では、p-テトラフルオロヨードベンジルアルコール(2、3、5、6-テトラフルオロ-4-ヨードベンジルアルコール)をジクロロメタンに溶かし、0℃で攪拌した。この溶液に、1.2当量のCBr4と、1.2当量のPPh3を加え、室温で反応させた。17時間後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてクロロホルムで分液抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製して、51%の収率でp-テトラフルオロヨードベンジルブロミド(2、3、5、6-テトラフルオロ-4-ヨードベンジルブロミド)を得た。
以下、得られたテトラフルオロヨードベンジルブロミドを出発物質として、L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩を製造する実施例について説明をする。
先ず、N-(ジフェニルメチレン)グリシンtert-ブチルエステルに対して1当量のテトラフルオロヨードベンジルブロミドを混合し、4、5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2、1-c:1´、2´e]アゼピン骨格からなる光学活性アンモニウム塩触媒を添加し、更に1.2当量の50%KOH水溶液を混合する。溶媒はトルエンとし、0℃で24時間反応させたところ、N-(ジフェニルメチレン)-L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルを得ることができた。
先ず、N-(ジフェニルメチレン)グリシンtert-ブチルエステルに対して1当量のテトラフルオロヨードベンジルブロミドを混合した後、トルエンに溶かし、0℃で攪拌した。この溶液に、1.2当量の50%KOH水溶液と4、5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2、1-c:1´、2´e]アゼピン骨格からなる光学活性アンモニウム塩触媒を加え、0℃で反応させた。24時間後、水を加えて、エーテルで分液抽出し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:エーテル=10:1)で精製して、N-(ジフェニルメチレン)-L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルを得た。
o-、m-、p-の各テトラフルオロヨードベンジルブロミドに対して、得られたo-、m-、p-のN-(ジフェニルメチレン)-L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルの各収率も示す。
第4工程を経て生成されるN-(ジフェニルメチレン)-L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルに対して、1Mのクエン酸を混合し、溶媒をTHFとし、室温で16時間反応させたところ、L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルを得ることができた。得られたo-、m-、p-のL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルの各収率も示す。
第4工程を経て生成されるN-(ジフェニルメチレン)-L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルをTHFに溶かし、室温で攪拌した。この溶液に1Mのクエン酸を加え、室温で反応させた。16時間後、固体の炭酸水素ナトリウムを加えて、ジクロロメタンで分液抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2)で精製して、L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルを得ることができた。得られたo-、m-、p-のL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルの各収率も示す。
第5工程を経て生成されるL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルに対して6Nの塩酸を混合し、2時間還流を行った。その結果、L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩を得ることができた。得られたo-、m-、p-のL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩の各収率も示す。
第5工程を経て生成されるL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンtert-ブチルエステルを6Nの塩酸で溶かし、加熱還流した。2時間後、反応溶媒を除去して、L-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩を得ることができた。得られたo-、m-、p-のL-テトラフルオロヨード-フェニルアラニンの塩酸塩の各収率も示す。