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2023-138117画像読み取りシステム、画像読み取り装置、及び画像形成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138117
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】画像読み取りシステム、画像読み取り装置、及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/387 20060101AFI20230922BHJP
   G03B 37/00 20210101ALI20230922BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20230922BHJP
【FI】
H04N1/387 110
G03B37/00 A
G03B17/56 A
G03B17/56 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044636
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】宮川 拓己
(72)【発明者】
【氏名】上田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】川越 克哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 和音
(72)【発明者】
【氏名】浅野 啓介
(72)【発明者】
【氏名】吉沼 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】大野 覚
(72)【発明者】
【氏名】宮川 崇拓
(72)【発明者】
【氏名】林 雄太
(72)【発明者】
【氏名】岩田 芳政
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慶
【テーマコード(参考)】
2H059
2H105
5C076
【Fターム(参考)】
2H059BA11
2H105AA02
2H105AA03
2H105AA30
2H105CC23
5C076AA12
5C076AA19
5C076BA01
5C076BA06
5C076CA06
(57)【要約】
【課題】高精度の合成画像データを生成することができる。
【解決手段】原稿を載せる原稿台と、原稿台に載せられた原稿に対向する位置に配置され、原稿を複数の異なる範囲で撮影して原稿の複数の画像データを生成する撮影部と、撮影部で撮影した原稿における複数の異なる範囲の重複範囲を検出する検出部と、重複範囲のうち、撮影部と前記原稿とが最短の撮影距離で撮影された方の重複範囲を選択する選択部と、選択部で選択された最短の撮影距離で撮影された方の重複範囲に基づいて撮影した異なる範囲から合成画像データを生成する生成部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を載せる原稿台と、
前記原稿台に載せられた前記原稿に対向する位置に配置され、前記原稿を複数の異なる範囲で撮影して前記原稿の複数の画像データを生成する撮影部と、
前記撮影部で撮影した前記原稿における前記複数の異なる範囲の重複範囲を検出する検出部と、
前記重複範囲のうち、前記撮影部と前記原稿とが最短の撮影距離で撮影された方の重複範囲を選択する選択部と、
前記選択部で選択された前記最短の撮影距離で撮影された方の重複範囲に基づいて前記撮影した異なる範囲から合成画像データを生成する生成部と、を備える、
画像読み取りシステム。
【請求項2】
前記複数の画像データのそれぞれは、
他の画像データとの境界部分に前記他の画像データに重複して含まれる前記重複範囲を有する、
請求項1に記載の画像読み取りシステム。
【請求項3】
前記撮影部は、
前記原稿台に対する角度および距離が一定の状態で前記原稿台上を移動可能に構成されている、
請求項1または請求項2に記載の画像読み取りシステム。
【請求項4】
前記原稿台の上方に前記原稿台と平行に設けられたレールと、
前記レール上を移動するよう前記撮影部を駆動させる駆動部と、を更に備える、
請求項3に記載の画像読み取りシステム。
【請求項5】
前記撮影部は、
前記原稿台に対する角度および距離が一定で、前記原稿台上の異なる位置に配置された複数の撮影部を含む、
請求項1または請求項2に記載の画像読み取りシステム。
【請求項6】
前記複数の撮影部は、
隣接する撮影部の撮影範囲の境界線部分が互いに重なり合うよう配置されている、
請求項5に記載の画像読み取りシステム。
【請求項7】
前記原稿台は、
前記複数の画像データのうち、幾つかの画像データに重複して含まれることなる前記原稿の範囲を示すマーカを有しており、
前記検出部は、
前記マーカを検出することにより前記重複範囲を検出する、
請求項5または請求項6に記載の画像読み取りシステム。
【請求項8】
前記マーカに関する情報を保持する記憶部と、
前記合成画像データに基づいて前記原稿のサイズを算出する算出部と、を更に備え、
前記マーカは、
前記原稿台に載せられた前記原稿の第1の方向に沿って配置される1対の第1のマーカと、
前記原稿台に載せられた前記原稿の前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って配置される1対の第2のマーカと、を含み、
前記記憶部は、
前記マーカに関する情報として、
前記1対の第1のマーカ間の距離および画素数と、
前記1対の第2のマーカ間の距離および画素数と、を保持し、
前記検出部は、
前記原稿の輪郭を検出して、前記原稿の前記第1の方向の端部位置および前記第2の方向の端部位置を特定し、
前記算出部は、
前記原稿の前記第1の方向の両端部間の画素数を算出し、前記第1の方向の前記両端部間の前記画素数と、前記1対の第1のマーカ間の前記画素数および前記距離とに基づいて、前記原稿の前記第1の方向の実際の長さを算出し、
前記原稿の前記第2の方向の両端部間の画素数を算出し、前記第2の方向の前記両端部間の前記画素数と、前記1対の第2のマーカ間の前記画素数および前記距離とに基づいて、前記原稿の前記第2の方向の実際の長さを算出する、
請求項7に記載の画像読み取りシステム。
【請求項9】
原稿に対向する位置から前記原稿を一部分ずつ複数回撮影して得られた画像データであって、前記原稿の異なる範囲を含む複数の画像データから、前記原稿における複数の異なる範囲の重複範囲を検出する検出部と、
前記重複範囲のうち、前記原稿が最短の撮影距離で撮影された方の重複範囲を選択する選択部と、
前記選択部で選択された前記最短の撮影距離で撮影された方の重複範囲に基づいて前記撮影した異なる範囲から合成画像データを生成する生成部と、を備える、
画像読み取り装置。
【請求項10】
原稿を撮影した画像データを読み取る読み取り部と、
前記画像データを印刷媒体に印刷する印刷部と、を備え、
前記読み取り部は、
原稿を載せる原稿台と、
前記原稿台に載せられた前記原稿に対向する位置に配置され、前記原稿を複数の異なる範囲で撮影して前記原稿の複数の画像データを生成する撮影部と、
前記撮影部で撮影した前記原稿における前記複数の異なる範囲の重複範囲を検出する検出部と、
前記重複範囲のうち、前記撮影部と前記原稿とが最短の撮影距離で撮影された方の重複範囲を選択する選択部と、
前記選択部で選択された前記最短の撮影距離で撮影された方の重複範囲に基づいて前記撮影した異なる範囲から合成画像データを生成する生成部と、を有する、
画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読み取りシステム、画像読み取り装置、及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築図面のような大判の原稿を読み取る画像読み取りシステムでは、大掛かりな装置構成と、原稿の読み取りに用いる高解像度の撮影装置とが必要となる。そこで、低解像度の撮影装置を用いて、原稿の一部領域を、撮影範囲をずらして複数回、高精度に撮影し、これらの画像データを合成することで、比較的コンパクトな構成で、かつ、安価に大判原稿の読み取りを行う技術がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、大判原稿を読み取るために、カメラ等の撮影装置を用いて原稿の部分画像を複数撮影し、これらの部分画像データを合成することで高精度の全体画像データを生成する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、撮影装置による撮影では、通常、中心部分では高精度の撮影が可能であるものの、周縁部分では低い精度で撮影されてしまう。このため、特許文献1の技術では、合成された全体画像データに解像度の低い部分が含まれてしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高精度の合成画像データを生成することができる画像読み取りシステム、画像読み取り装置、及び画像形成システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、原稿を載せる原稿台と、前記原稿台に載せられた前記原稿に対向する位置に配置され、前記原稿を複数の異なる範囲で撮影して前記原稿の複数の画像データを生成する撮影部と、前記撮影部で撮影した前記原稿における前記複数の異なる範囲の重複範囲を検出する検出部と、前記重複範囲のうち、前記撮影部と前記原稿とが最短の撮影距離で撮影された方の重複範囲を選択する選択部と、前記選択部で選択された前記最短の撮影距離で撮影された方の重複範囲に基づいて前記撮影した異なる範囲から合成画像データを生成する生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高精度の合成画像データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1にかかる画像読み取りシステムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態1にかかる画像読み取りシステムが備える撮影部の撮影距離と解像度との関係を説明する図である。
図3図3は、実施形態1にかかる画像読み取りシステムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態1にかかるコントローラの機能構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、実施形態1にかかる画像読み取りシステムによって複数の画像データが生成される様子を示す図である。
図6図6は、実施形態1にかかる画像読み取りシステムによって複数の画像データから合成画像データが生成される様子を示す図である。
図7図7は、実施形態1にかかる画像読み取りシステムにおける画像読み取り処理の手順の一例を示すフロー図である。
図8図8は、実施形態1及び比較例にかかる画像読み取りシステムによる画像読み取りの概要を示す図である。
図9図9は、実施形態1の変形例にかかる画像読み取りシステムの構成の一例を示す図である。
図10図10は、実施形態2にかかる画像読み取りシステムの構成の一例を示す図である。
図11図11は、実施形態2の変形例1にかかる画像読み取りシステムの構成の一例を示す図である。
図12図12は、実施形態2の変形例1にかかる画像読み取りシステムにおける画像読み取り処理の手順の一例を示すフロー図である。
図13図13は、実施形態2の変形例2にかかる画像読み取りシステムが備えるコントローラの機能構成の一例を示すブロック図である。
図14図14は、実施形態2の変形例2にかかるコントローラによる原稿サイズの算出手法について説明する図である。
図15図15は、実施形態3にかかる画像読み取りシステムの構成の一例を示す図である。
図16図16は、実施形態3にかかる画像読み取りシステムにおける画像読み取り処理の手順の一例を示すフロー図である。
図17図17は、実施形態4にかかる画像形成システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態1]
以下、図面を用いて、実施形態1について説明する。
【0010】
(画像読み取りシステムの構成例)
図1は、実施形態1にかかる画像読み取りシステム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、画像読み取りシステム1は、コントローラ10、原稿台20、操作部21、撮影部22、及び腕部23を備える。
【0011】
画像読み取り装置としてのコントローラ10は、画像読み取りシステム1の全体を制御するコンピュータ等として構成されている。コントローラ10は、また、撮影部22が撮影して生成された複数の画像データを組み合わせて合成画像データを生成する処理を行う。コントローラ10は、例えば原稿台20の端部に設けられている。
【0012】
原稿台20は、例えば読み取り対象の原稿を載せる台である。画像読み取りシステム1の読み取り対象となる原稿は、例えば建築図面等の大判サイズの原稿である。
【0013】
操作部21は、ユーザとのインターフェースである。つまり、操作部21は、画像読み取りシステム1からユーザへと各種情報を出力するよう構成されている。また、操作部21は、画像読み取りシステム1へのユーザからの各種操作を受け付け可能なように構成されている。
【0014】
具体的には、操作部21は、例えばモニタ、ボタン、タッチ式パネル、ブザー、スピーカ、及びその他の物理的構成を有していてもよい。
【0015】
撮影部22は、原稿台20に載せられた原稿を撮影可能なカメラ等である。撮影部222として用いるカメラは比較的解像度の低いカメラであってもよい。解像度の低いカメラであっても、原稿台20の周縁部を除く領域内に撮影範囲PAを絞り、大判原稿を部分的に撮影することで、高解像度の画像データを生成することが可能である。
【0016】
撮影部22は、原稿台20に載せられた原稿の異なる範囲を複数回に亘って撮影することで、原稿の全体を複数の画像に分割して収める。
【0017】
撮影部22は、原稿台20に固定された腕部23の先端部分に取り付けられている。これにより、撮影部22は、原稿台20に対して位置および姿勢が固定された状態で、原稿台20から所定距離離れた上方位置に、原稿台20と対向するように配置されている。また、撮影部22が有するレンズは、原稿台20の上面に対して平行となっている。
【0018】
腕部23は、例えばコントローラ10を介して原稿台20に固定された基部と、原稿台20の上方へと延び、上述のように、撮影部22が取り付けられた先端部とを有する。
【0019】
ここで、撮影部22によって原稿台20上方の所定位置から原稿を撮影した場合、原稿台20に載せられた原稿の位置によって撮影部22からの距離が異なる。このため、画像データの中心部分と周縁部分とでは解像度が異なることとなる。図2を用いてこの点について説明する。
【0020】
図2は、実施形態1にかかる画像読み取りシステム1が備える撮影部22の撮影距離SDc,SDeと解像度との関係を説明する図である。
【0021】
図2に示すように、撮影部22の撮影範囲PAのうち、周縁部分PAeにおける撮影部22までの距離、つまり、撮影距離SDeは、中心部分PAcにおける撮影距離SDcよりも長い。
【0022】
このため、原稿台20に原稿を載せて撮影する場合、周縁部分PAeに配置された原稿部分の画像データは、中心部分PAcに配置された原稿部分の画像データよりも解像度が低くなる。撮影距離SDが長くなるほど、1画素内に収まる原稿部分のサイズが大きくなるためである。よって、1回の撮影において、中心部分の解像度が高く、周縁部分の解像度が低い画像データが得られることとなる。
【0023】
(画像読み取りシステムのハードウェア構成例)
次に、図3を用いて、画像読み取りシステム1のハードウェア構成例について説明する。図3は、実施形態1にかかる画像読み取りシステム1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図3に示すように、画像読み取り装置としてのコントローラ10は、演算装置11、記憶装置12、及び補助記憶装置13を備える。これらの構成は内部バスにより互いに接続されている。
【0025】
演算装置11は、例えばCPU(Ceentral Processing Unit)等であり、画像読み取りシステム1の全体を制御する。また、演算装置11は、撮影部22が生成した画像データに対し、特徴量の抽出、画像マッチング、合成等の画像処理を行う。
【0026】
記憶装置12は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等であり、演算装置11で実行されるプログラム等が格納され、また、演算装置11がプログラムを実行する際の一次記憶領域となる。
【0027】
補助記憶装置13は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等であり、演算装置11で用いるパラメータ、及び撮影部22が生成した画像データ等が格納されている。
【0028】
なお、演算装置11で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0029】
また、演算装置11で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、演算装置11で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、演算装置11で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0030】
コントローラ10には、バスを介して操作部21及び撮影部22が接続されている。これにより、操作部21は、ユーザから受け付けた各種操作の内容をコントローラ10へと送信する。また、撮影部22はコントローラ10からの指令を受けて撮影を行い、生成した画像データをコントローラ10へと送信する。
【0031】
(コントローラの機能構成例)
次に、図4を用いて、コントローラ10の機能構成例について説明する。図4は、実施形態1にかかるコントローラ10の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0032】
図4に示すように、コントローラ10は、機能部として、検出部101、選択部102、生成部103、及び記憶部104を備える。
【0033】
検出部101は、複数の画像データのうち幾つかの画像データに重複して含まれる原稿の重複範囲を検出する。撮影部22が、原稿の全体を複数の画像に分割して撮影する際、幾つかの画像データには、原稿の重複範囲が重複して含まれることとなる。検出部101は、これらの重複した部分を検出する。検出部101は、上述の演算装置11がプログラムを実行することにより実現される。
【0034】
選択部102は、幾つかの画像データに重複して含まれる原稿の重複範囲のうち、最短の撮影距離で撮影された重複範囲を選択する。選択部102は、上述の演算装置11がプログラムを実行することにより実現される。
【0035】
生成部103は、原稿の全体が分割されて含まれる複数の画像データを合成し、原稿の全範囲を含む1つの合成画像データを生成する。この合成画像データにおいては、幾つかの画像データに重複して含まれる原稿の重複範囲が、異なる画像データ同士の連結部分となる。生成部103は、選択部102が選択した原稿の重複範囲を連結部分として複数の画像データを連結し、合成画像データを生成する。生成部103は、上述の演算装置11がプログラムを実行することにより実現される。
【0036】
記憶部104には、検出部101、選択部102、お及び生成部103で用いられる制御パラメータ、撮影部22が撮影した複数の画像データ、選択部102が選択した重複範囲、及び生成部103が生成した合成画像データ等が格納される。記憶部104は、プログラムを実行する演算装置11の制御下で動作する補助記憶装置13等によって実現される。
【0037】
(合成画像データの生成例)
次に、図5及び図6を用いて、画像読み取りシステム1によって合成画像データが生成されるまでの動作について説明する。
【0038】
図5は、実施形態1にかかる画像読み取りシステム1によって複数の画像データが生成される様子を示す図である。図5に示すように、画像読み取りシステム1の撮影部22は、1つの原稿MSを一部分ずつ複数回に亘って撮影する。
【0039】
図5の側面図に示すように、図5の例では、原稿MSの縦幅は、撮影部22の撮影範囲PAの幅と略等しく、撮影部22の撮影範囲PA内に収まるものとする。また、図5の正面図に示すように、原稿MSの横幅は、撮影部22の撮影範囲PAの幅よりも広いものとする。この場合、ユーザは、原稿MSを横方向にずらしていきながら、撮影部22によって、原稿MSの異なる範囲を順次撮影していく。
【0040】
図5の例では、原稿MSを原稿台20上に載せ、原稿MSの横方向の一端部を撮影部22の撮影範囲PAの一端部と一致させて1枚目の画像を撮影する。次に、原稿MSを原稿台20上で横方向にずらし、原稿MSの中央部分を撮影部22の撮影範囲PA内に配置して2枚目の画像を撮影する。次に、原稿MSを原稿台20上で更に横方向にずらし、原稿MSの他端部を撮影部22の撮影範囲PAの他端部と一致させて3枚目の画像データを生成する。
【0041】
これにより、原稿MSの全体が3つに分割されて撮影された3枚の部分画像データが生成される。これら3枚の部分画像データ内の、互いに対応するポイントにおける撮影距離は、全て一定である。
【0042】
つまり、例えば3枚の部分画像データ内の中心部は、全て同じ撮影距離で撮影されており、その撮影距離は部分画像データ内の全てのポイント中で最も短い。また例えば、3枚の部分画像データ内の4隅は、全て同じ撮影距離で撮影されており、その撮影距離は部分画像データ内の全てのポイント中で最も長い。
【0043】
図6は、実施形態1にかかる画像読み取りシステム1によって複数の画像データIMa,IMbから合成画像データCMabが生成される様子を示す図である。図6の例では、上述の3枚の画像データのうち、2枚の画像データIMa,IMbを連結する場合について説明する。
【0044】
図6(a)に示すように、コントローラ10の検出部101は、原稿MCの近接する部分同士を撮影した画像データIMa,IMb内に重複して含まれる重複範囲ORa,ORbを検出する。重複範囲ORaは画像データIMa内に含まれ、重複範囲ORbは画像データIMb内に含まれている。これらの重複範囲ORa,ORbは、原稿MSにおける同一範囲が2枚の画像データIMa,IMbに重複して含まれることとなった範囲である。
【0045】
重複範囲ORa,ORbを検出する際、検出部101は、例えば画像データIMa,IMbに対して画像処理を行って、それぞれの画像データIMa,IMbから特徴点を抽出し、更に画像データIMa,IMb間で画像マッチングを行って対応点を抽出する手法等を用いることができる。
【0046】
このように、特徴点と対応点とを用いた画像の検出手法としては、例えばスケール不変特徴量変換(SIFT:Scale-Invariant Feature Transform)等が知られている。ただし、特定画像の検出には、このほかにも様々な手法が知られており、これらの中から適宜、所望の結果がえられやすい手法を選んで用いることができる。
【0047】
なお、原稿が無地の部分を有することにより、画像データに無地の部分が含まれていてもよい。この場合、検出部101は、画像データにおける無地も部分も含めて、上記画像処理を行ってもよい。
【0048】
図6(b)に示すように、コントローラ10の選択部102は、画像データIMa内に含まれる重複範囲ORaの複数のポイントにおいて、画像データIMaの中心部分CTaからの距離を計測する。また、選択部102は、画像データIMb内に含まれる重複範囲ORbの複数のポイントにおいて、画像データIMbの中心部分CTbからの距離を計測する。
【0049】
選択部102は、重複範囲ORa,ORbにおける計測結果から、重複範囲ORa内の複数の計測ポイントのうち、重複範囲ORbの対応する計測ポイントから画像データIMbの中心部分CTbまでの距離より、画像データIMaの中心部分CTaまでの距離が短かったポイントを選択する。
【0050】
また、選択部102は、重複範囲ORa,ORbにおける計測結果から、重複範囲ORb内の複数の計測ポイントのうち、重複範囲ORaの対応する計測ポイントから画像データIMaの中心部分CTaまでの距離より、画像データIMbの中心部分CTbまでの距離が短かったポイントを選択する。
【0051】
図6(b)の例では、重複範囲ORa内の複数の計測ポイントのうち、画像データIMaの中心部分CTaまでの距離が3のポイントに対応する重複範囲ORbの計測ポイントは、画像データIMbの中心部分CTbまでの距離が11のポイントである。
【0052】
つまり、重複範囲ORa,ORbのこれらの計測ポイントのうち、重複範囲ORaの計測ポイントは、重複範囲ORbの対応する計測ポイントよりも、撮影時の撮影距離が短かったポイントである。選択部102は、重複範囲ORa,ORbのこれらの計測ポイントのうち、重複範囲ORaの計測ポイントを選択する。
【0053】
また、重複範囲ORa内の複数の計測ポイントのうち、画像データIMbの中心部分CTbまでの距離が5のポイントに対応する重複範囲ORaの計測ポイントは、画像データIMaの中心部分CTaまでの距離が9のポイントである。
【0054】
つまり、重複範囲ORa,ORbのこれらの計測ポイントのうち、重複範囲ORbの計測ポイントは、重複範囲ORaの対応する計測ポイントよりも、撮影時の撮影距離が短かったポイントである。選択部102は、重複範囲ORa,ORbのこれらの計測ポイントのうち、重複範囲ORbの計測ポイントを選択する。
【0055】
このように、重複範囲ORa内の複数の計測ポイントのうち、画像データIMaの中心部分CTaまでの距離が7以内のポイントでは、対応する重複範囲ORbの計測ポイントから画像データIMbの中心部分CTbまでの距離よりも、画像データIMaの中心部分CTaまでの距離が短くなる。つまり、画像データIMaのこれらの計測ポイントは、重複範囲ORbの対応する計測ポイントよりも、撮影時の撮影距離が短かったポイントである。
【0056】
同様に、重複範囲ORb内の複数の計測ポイントのうち、画像データIMbの中心部分CTbまでの距離が7以内のポイントでは、対応する重複範囲ORaの計測ポイントから画像データIMaの中心部分CTaまでの距離よりも、画像データIMbの中心部分CTbまでの距離が短くなる。つまり、画像データIMbのこれらの計測ポイントは、重複範囲ORaの対応する計測ポイントよりも、撮影時の撮影距離が短かったポイントである。
【0057】
選択部102は、重複範囲ORaの複数の計測ポイントのうち、画像データIMaの中心部分CTaまでの距離が7以内の計測ポイントを選択する。同様に、選択部102は、重複範囲ORbの複数の計測ポイントのうち、画像データIMbの中心部分CTbまでの距離が7以内の計測ポイントを選択する。
【0058】
なお、重複範囲ORa,ORbにおいて、それぞれの画像データIMa,IMbの中心部分CTa,CTbまでの距離が7となる計測ポイントは、それぞれ重複範囲ORa,ORbの横幅の中心位置にあたる。
【0059】
また、図6の例では、重複範囲ORa,ORb内の横幅方向の複数ポイントについて、選択部102がいずれの画像データIMa,IMbのポイントを選択するかを決定することとした。しかし、実際には、選択部102は、重複範囲ORa,ORb内に含まれる全ての画素ごとに、それぞれの中心部分CTa,CTbまでの距離を計測し、「画像データIMaの中心部分CTaまでの距離<画像データIMbの中心部分CTbまでの距離」となるポイントでは重複範囲ORaの画素情報を選択し、「画像データIMaの中心部分CTaまでの距離>画像データIMbの中心部分CTbまでの距離」となるポイントでは重複範囲ORbの画素情報を選択する。
【0060】
図6(c)に示すように、選択部102は、画像データIMaにおける重複範囲ORaのうち、画像データIMaの中心部分CTaまでの距離が7以内となる領域を、画像データIMa,IMb同士を連結する際の連結部分CNaとして選択する。
【0061】
コントローラ10の生成部103は、画像データIMaにおける重複範囲ORaのうち、画像データIMaの中心部分CTaまでの距離が7を超え、選択部102が選択しなかった領域を非選択部分ORanとして切り捨てる。
【0062】
また、選択部102は、画像データIMbにおける重複範囲ORbのうち、画像データIMbの中心部分CTbまでの距離が7以内となる領域を、画像データIMa,IMb同士を連結する際の連結部分CNbとして選択する。
【0063】
コントローラ10の生成部103は、画像データIMbにおける重複範囲ORbのうち、画像データIMbの中心部分CTbまでの距離が7を超え、選択部102が選択しなかった領域を非選択部分ORbnとして切り捨てる。
【0064】
図6(d)に示すように、生成部103は、画像データIMaの連結部分CNaと、画像データIMbの連結部分CNbとを連結して、画像データIMa,IMbが合成された合成画像データCMabを生成する。
【0065】
コントローラ10の各部は、上述の図6(a)~(d)と同様の手順により、3枚の画像データのうち残り1枚の画像データと、合成画像データCMabとを連結して、原稿MSの全範囲を含む合成画像データを生成する。
【0066】
なお、画像データに無地の部分が含まれている場合、生成部103は、画像データにおける無地部分を除く有色部分の画像情報を用いて画像データの合成を行ってもよい。
【0067】
また、上述の図5及び図6の例では、原稿MSを3枚の画像に分割して撮影し、これらを合成することとした。しかし、原稿MRの横幅の長さによっては、3枚未満または4枚以上の画像に分割して原稿MSを撮影してもよい。また、原稿MRの縦幅が、撮影部22の撮影範囲PAの縦幅より長かった場合には、原稿MSを縦幅方向にも複数の画像に分割して撮影してもよい。
【0068】
ただし、原稿MCを撮影する回数を減らして効率を高めるためには、1枚あたりの画像データ内に占める原稿MCの面積が極力大きくなるよう、原稿MCの撮影を行うことが好ましい。
【0069】
また、原稿MCにおける撮影開始位置、撮影終了位置、及び撮影順は特に問わない。したがって、例えば撮影開始位置および撮影終了位置の少なくともいずれかが原稿MCの中央部分または周縁部分であってもよい。撮影順も、進行方向が直線状、渦巻状、またはジグザグになるよう、適宜選択可能である。ただし、いずれの場合であっても、隣接する領域順に撮影を進めていくことが効率的である。
【0070】
また、原稿台20上で原稿MSをずらすときは、ずらす方向および角度は縦横に限られず、例えば斜め方向等にずらすなど特に制約はない。ただし、その際、各画像データが、他の画像データとの境界部分に、他の画像データにも重複して含まれる重複範囲を有することとなるよう原稿MSをずらす。このとき、各画像データにおける重複範囲が、例えば1/4以上、好ましくは1/2以上とすることで、高精度の合成画像データを生成することができる。
【0071】
また、各画像データに含まれる重複範囲は、2枚の画像データのみならず、3枚以上の画像データに重複して含まれていてもよい。この場合にも、3枚以上の画像データに重複して含まれる重複範囲のうち、最短の撮影距離で撮影された重複範囲を合成画像データの連結部分として用いる。
【0072】
(画像読み取りシステムによる処理例)
次に、図7を用いて、画像読み取りシステム1における処理の例について説明する。図7は、実施形態1にかかる画像読み取りシステム1における画像読み取り処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0073】
図7に示すように、まず、ユーザが原稿台20に原稿を載せる(ステップS101)。次に、ユーザが操作部21を介して原稿の撮影をコントローラ10に指示する。
【0074】
操作部21は、ユーザからの撮影指示を受け付けてコントローラ10へと送信し、ユーザからの撮影指示を受信したコントローラ10は、その指示にしたがって撮影部22によって原稿を撮影させる(ステップS102)。
【0075】
ユーザは、原稿内の全ての範囲の撮影が終了するまでは(ステップS103:No)、適宜原稿をずらして(ステップS104)撮影部22による原稿の撮影を継続する(ステップS102)。原稿をずらすときには、上述のように、各画像データが、他の画像データとの境界部分に、他の画像データにも重複して含まれる重複範囲を有することとなるようにする。
【0076】
原稿内の全ての範囲の撮影が終了すると(ステップS103:Yes)、ユーザが操作部21を介して撮影済みの画像データの合成をコントローラ10に指示する。
【0077】
操作部21は、ユーザからの画像合成指示を受け付けてコントローラ10へと送信し、コントローラ10の検出部101は、幾つかの画像データに重複して含まれる重複範囲を抽出する(ステップS105)。
【0078】
選択部102は、幾つかの重複範囲に含まれる画素のうち合成画像データの連結部分として使用する画素情報を、画素ごとの撮影距離に基づいて選択する(ステップS106)。
【0079】
生成部103は、選択部102が選択した各図の重複範囲を連結部分として複数の画像データを連結し、原稿の全範囲を含む合成画像データを生成して記憶部104に保存する(ステップS107)。
【0080】
なお、合成画像データを記憶部104に保存したことを操作部21に表示させ、ユーザに画像読み取り処理が終了したことを知らせてもよい。
【0081】
また、その知らせを受けたユーザ自身が画像読み取り処理の終了の可否を判断し、画像読み取り処理の終了を指示入力するようにしてもよい。この場合、解像度が低い等、所望する合成画像データが得られていないときには、ユーザが画像読み取り処理を繰り返す指示を入力可能であってもよい。
【0082】
合成画像データが所望の解像度に達していなかった場合等には、ユーザは、繰り返し処理の際に、各画像データ内の重複範囲がより大きくなるよう、原稿MCのずらし方を調整する等の対応をすることができる。
【0083】
以上により、実施形態1の画像読み取りシステム1における画像読み取り処理が終了する。
【0084】
(比較例)
建築図面等の大判の原稿を読み取る画像読み取りシステムでは、装置構成が大掛かりとなってしまいやすく、また、高解像度のカメラ等を使用する必要がある。そこで、低解像度のカメラ等を用い、大判の原稿を一部分ずつ複数回撮影し、これらの部分画像データを合成することで、大判サイズの原稿全体の読み取り画像データを生成する技術がある。このような技術はスティッチングと呼ばれ、パノラマ画像を作成する際などに使用されることがある。
【0085】
比較例としての特許文献1の技術では、上述のように、大判の原稿を高精度に読み取るため、カメラ等により原稿の部分画像を複数撮影し、これらを合成して原稿全体の画像データを生成することで、ユーザの作業を簡素化することができる。その様子を図8の比較例に示す。
【0086】
図8は、実施形態1及び比較例にかかる画像読み取りシステムによる画像読み取りの概要を示す図である。比較例の画像読み取りシステムでは、複数回に亘って原稿を撮影し(図8(a))、重複範囲を含まない複数の画像データを得て(図8(b))、これら複数の画像データの端部同士を連結することで合成画像データを生成する(図8(c))。
【0087】
しかしながら、比較例の技術では、合成画像データ内の各ポイントにおいて、撮影距離の長短に応じた解像度の差異が生じてしまう。このため、合成画像データの一部分において解像度が低下してしまうという課題がある。
【0088】
実施形態1の画像読み取りシステム1によれば、複数の異なる範囲の重複範囲のうち、撮影部22と原稿とが最短の撮影距離で撮影された方の重複範囲に基づいて、撮影した異なる範囲から合成画像データを生成する。
【0089】
すなわち、図8の実施形態に示すように、複数回に亘って一部が重複するよう原稿を撮影し(図8(a))、重複範囲を含む複数の画像データを得て(図8(b))、これら複数の画像データの重複範囲を連結部分として連結することで合成画像データを生成する(図8(c))。
【0090】
これにより、解像度のばらつきを低減し、全体に亘って高精度の合成画像データを生成することができる。
【0091】
(変形例)
次に、図9を用いて、実施形態1の変形例の画像読み取りシステム1aについて説明する。変形例の画像読み取りシステム1aは、原稿台20に対して傾斜した状態で対向する撮影部22aを備える点が上述の実施形態1とは異なる。
【0092】
図9は、実施形態1の変形例にかかる画像読み取りシステム1aの構成の一例を示す図である。図9においては、上述の実施形態1と同様の構成に同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
図9に示すように、画像読み取りシステム1aは、上述の実施形態1の撮影部22、及びコントローラ10に替えて、撮影部22a、及びコントローラ10aを備えている。
【0094】
撮影部22aは、原稿台20に固定された腕部23の先端部分に取り付けられている。これにより、撮影部22aは、原稿台20に対して位置および姿勢が固定された状態で、原稿台20から所定距離離れた上方位置に、原稿台20と対向するように配置されている。撮影部22aが有するレンズは、原稿台20の上面に対して一定の角度で傾斜している。
【0095】
変形例の撮影部22aにおいては、レンズが傾斜した姿勢となっているために、撮影部22aの原稿台20上の撮影範囲PAaは、撮影部22aの手前側の点Cから奥側の点Aへと広がる台形状となる。
【0096】
また、変形例の撮影部22aによって原稿台20上方の所定位置から画像を撮影した場合にも、原稿台20に載せられた原稿の位置によって撮影部22aからの距離が異なる。このため、画像データの中心部分と周縁部分とでは解像度が異なることとなる。
【0097】
上記のように、レンズが傾斜した姿勢となっているために、撮影部22aによって原稿を撮影した場合、原稿台20上の撮影部22aの直下位置である点Bにおいて撮影距離SDbが最短となる。点Bは、撮影部22aから原稿台20に向かって垂直に下した線が、原稿台20の上面と接する点である。
【0098】
また、撮影部22aの手前側の点Cでの撮影距離SDcは、点Bでの撮影距離SDbよりも長くなる。また、撮影部22aの奥側の点Aでの撮影距離SDaは、点Cでの撮影距離SDcよりも更に長くなる。なお、点A側の大径底辺の2遇が、撮影距離が最長となるポイントである。
【0099】
撮影された画像データIM上にこれらの点A~Cを示すと、画像データIMの中心部分から横方向にずれた点Bにおいて、画像データIMの解像度が最大となることが判る。また、画像データIMの横方向両端部のうち点C側の端部では、画像データIMの解像度が点Bよりも若干低下することが判る。また、画像データIMの横方向両端部のうち点A側の端部では、画像データIMの解像度が点Cよりも更に低下することが判る。また、点A側の2遇では、画像データIMの解像度が最低となる。
【0100】
コントローラ10aは、上述の実施形態1のコントローラ10と同様、例えば演算装置、記憶装置、及び補助記憶装置等を備えるコンピュータとして構成される。ただし、コントローラ10aの演算装置は、レンズが傾斜した姿勢で撮影された画像データIMに合わせたアルゴリズムにしたがって、画像データIMに対する上述の各種処理を行う。
【0101】
すなわち、コントローラ10aの演算装置は、幾つかの画像データに重複して含まれる重複範囲の中から合成画像データに使用する画素情報を選択するにあたり、最短の撮影距離SDbで撮影され、最も解像度の高い点Bからの距離が最短となる画素情報を選択する。
【0102】
変形例の画像読み取りシステム1aによれば、上述の実施形態1の画像読み取りシステム1と同様の効果を奏する。
【0103】
[実施形態2]
以下、図面を用いて、実施形態2について説明する。実施形態2の画像読み取りシステムは、複数の撮影部を備える点が上述の実施形態1とは異なる。
【0104】
(画像読み取りシステムの構成例)
図10は、実施形態2にかかる画像読み取りシステム2の構成の一例を示す図である。図10においては、上述の実施形態1と同様の構成に同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0105】
図10に示すように、画像読み取りシステム2は、上述の実施形態1の撮影部22、腕部23、操作部21、及びコントローラ10に替えて、撮影部122a~122c、腕部123、操作部121、及びコントローラ110を備える。
【0106】
撮影部122aは、原稿台20に固定された腕部123の1つの先端部分に取り付けられている。これにより、撮影部122aは、原稿台20に対して位置および姿勢が固定された状態で、原稿台20から所定距離離れた上方位置に、原稿台20と対向するように配置されている。
【0107】
撮影部122bは、原稿台20に固定された腕部123の他の先端部分に取り付けられている。これにより、撮影部122bは、原稿台20に対して位置および姿勢が固定された状態で、原稿台20から所定距離離れた上方位置に、原稿台20と対向するように配置されている。
【0108】
撮影部122cは、原稿台20に固定された腕部123の更に他の先端部分に取り付けられている。これにより、撮影部122cは、原稿台20に対して位置および姿勢が固定された状態で、原稿台20から所定距離離れた上方位置に、原稿台20と対向するように配置されている。
【0109】
ここで、撮影部122a~122cは、いずれも原稿台に対する角度および距離が一定で、原稿20台上の横方向の一端部から他端部に亘って、撮影部122a,122b,122cの順にそれぞれ配置されている。
【0110】
図10の例では、撮影部122a~122cが有するレンズは、いずれも原稿台20の上面に対して平行となっている。ただし、撮影部122a~122cが、これらのレンズが原稿台20の上面に対して互いに等しい角度で傾斜した姿勢で腕部123に取り付けられていてもよい。
【0111】
これにより、撮影部122a~122cは、原稿20台上の横方向の一端部から他端部に亘って、撮影部122a,122b,122c下方位置に並ぶ撮影範囲PA2a,PA2b,PA2cをそれぞれ有する。これらの撮影範囲PA2a,PA2b,PA2cの境界部分は互いに重なり合っている。
【0112】
コントローラ110は、上述の実施形態1のコントローラ10と同様、例えば演算装置、記憶装置、及び補助記憶装置等を備えるコンピュータとして構成される。また、コントローラ110は、ユーザからの1回の撮影指示にしたがって、複数の撮影部122a~122cによる撮影を一括して行わせるよう構成されている。
【0113】
操作部121は、上述の実施形態1の操作部21と同様、ユーザとのインターフェースとして機能する。操作部121は、ユーザからの1回の撮影指示をコントローラ110へと送信するよう構成されている。
【0114】
上記のように構成されることで、画像読み取りシステム2は、原稿のより広い範囲を1回で撮影することができる。また、複数の撮影部122a~122cが、互いの撮影範囲PA2a~PA2cの境界部分が重なり合うように配置されているので、少なくとも1回の撮影で得られた複数の画像データが、ユーザが重複範囲を調整しつつ原稿をずらすことなく、互いの境界部分に重複範囲を有することとなる。
【0115】
なお、画像読み取りシステム2が備える撮影部122a~122cの個数は図10の例に限られず、3つ未満、または4つ以上であってもよい。
【0116】
実施形態2において、画像読み取りシステム2での画像読み取り処理は、上述の実施形態1の図7と同様に実施される。ただし、画像読み取りシステム2では、上述のステップS102の処理において、ユーザからの1回の撮影指示により、撮影部122a~122cによる撮影を一括して行う。また、ステップS102~S104の処理の繰り返し回数が実施形態1よりも削減される見込みである。
【0117】
実施形態2の画像読み取りシステム2によれば、原稿台20に対する角度および距離が一定で、原稿台20上の異なる位置に配置された複数の撮影部122a~122cを含む。これにより、各ポイントにおける解像度が等しい複数の画像データを一括して生成することができ、ユーザの作業負担を軽減して作業の効率化を図ることができる。
【0118】
実施形態2の画像読み取りシステム2によれば、複数の撮影部122a~122cは、隣接する撮影部122a~122cの撮影範囲PA2a~PA2cの境界線部分が互いに重なり合うよう配置されている。
【0119】
これにより、少なくとも1回の撮影で生成される複数の画像データについては、ユーザが重複範囲を調整しつつ原稿をずらす作業をしなくとも、各画像データの境界部分に重複範囲を含めることができる。1回の撮影で、原稿の全範囲をこれらの画像データに収めることができる場合には、ユーザによる原稿のずらし作業を省略することも可能である。よって、ユーザの作業負担を軽減して作業の効率化を図ることができる。
【0120】
実施形態2の画像読み取りシステム2によれば、その他、上述の実施形態1の画像読み取りシステム1と同様の効果を奏する。
【0121】
(変形例1)
次に、図11及び図12を用いて、実施形態2の変形例1の画像読み取りシステム2aについて説明する。変形例1の画像読み取りシステム2aは、原稿台120がマーカ111a~114a,111b~114bを有する点が上述の実施形態2とは異なる。
【0122】
図11は、実施形態2の変形例1にかかる画像読み取りシステム2aの構成の一例を示す図である。図11においては、上述の実施形態2と同様の構成に同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0123】
図11に示すように、画像読み取りシステム2aは、上述の実施形態2の原稿台20、及びコントローラ10に替えて、原稿台120、及びコントローラ110aを備えている。
【0124】
原稿台120は、上面に複数のマーカ111a~114a,111b~114bを備える。複数のマーカ111a~114aは、原稿台120の縦方向の一方側に設けられ、原稿台120の横方向の一端側から他端側に向けて、この順に並んで配置されている。複数のマーカ111b~114bは、原稿台120の縦方向のもう一方側に設けられ、原稿台120の横方向の一端側から他端側に向けて、この順に並んで配置されている。
【0125】
つまり、マーカ111a,111bは、原稿台120の縦方向の両側で対をなしている。マーカ112a,112bもまた、原稿台120の縦方向の両側で対をなしている。マーカ113a,113bもまた、原稿台120の縦方向の両側で対をなしている。マーカ114a,114bもまた、原稿台120の縦方向の両側で対をなしている。
【0126】
また、マーカ111a,114aは、原稿台120の横方向の両側で対をなしている。マーカ111b,114bもまた、原稿台120の横方向の両側で対をなしている。
【0127】
原稿台120の縦方向の両側で対をなすマーカ111a,111bは、撮影部122aの撮影範囲PA2a内であって、撮影部122bの撮影範囲PA2bと重なり合っていない側の端部付近に配置されている。
【0128】
原稿台120の縦方向の両側で対をなすマーカ112a,112bは、撮影部122bの撮影範囲PA2b内であって、撮影部122aの撮影範囲PA2aと重なり合う側の端部付近に配置されている。原稿台120の縦方向の両側で対をなすマーカ113a,113bは、撮影部122bの撮影範囲PA2b内であって、撮影範囲PA2cと重なり合う側の端部付近に配置されている。
【0129】
原稿台120の縦方向の両側で対をなすマーカ114a,114bは、撮影部122cの撮影範囲PA2c内であって、撮影部122cの撮影範囲PA2cと重なり合う側の端部付近に配置されている。
【0130】
これらのマーカ111a~114a,111b~114bは、後述するコントローラ110aの検出部が、これらの特徴量を抽出しやすい大きさ及び形状であれば、どのような大きさ及び形状を有していてもよい。
【0131】
変形例1の画像読み取りシステム2aの読み取り対象となるのは、複数の撮影部122a~122cの撮影範囲PA2a~PA2c内に収まるサイズの原稿である。これに加え、読み取り対象となる原稿は、原稿台120の縦方向の両側で対をなす上記マーカ間の距離より縦幅が短く、これらのマーカ111a~114a,111b~114bを隠すことなく原稿台120に載せることが可能なサイズを有している。
【0132】
上記条件を満たす原稿を原稿台120に載せ、撮影部122a~122cにより1回だけ撮影をし、複数の画像データを生成すると、これらの画像データには原稿の全範囲とともに、原稿の縦方向外側の複数のマーカ111a~114a,111b~114bが含まれることとなる。
【0133】
コントローラ110aは、上述の実施形態2のコントローラ110と同様、例えば演算装置、記憶装置、及び補助記憶装置等を備えるコンピュータとして構成される。また、上述の実施形態1の検出部101が複数画像データの原稿部分から直接的に重複範囲を検出するのに対し、コントローラ110aの検出部は、複数の画像データに含まれるマーカ111a~114a,111b~114bを用いて、これらの画像データにおける重複範囲を検出する。
【0134】
より具体的には、コントローラ110aの検出部は、例えば複数の画像データに対して画像処理を行って、それぞれの画像データに含まれるマーカ111a~114a,111b~114bから特徴点を抽出し、更にこれらの画像データのマーカ111a~114a,111b~114b間で画像データマッチングを行って対応点を抽出する。これにより、コントローラ110aの検出部は、画像データ中からマーカ111a~114a,111b~114bを検出する。
【0135】
ただし、上述のように、マーカ111a~114a,111b~114bの検出手法は上記に限られない。
【0136】
コントローラ110aの検出部は、検出したマーカ111a~114a,111b~114bに基づいて、複数の画像データに重複して含まれる重複範囲を抽出する。
【0137】
つまり、マーカ112a,112bが検出された画像データであって、その画像データのマーカ112a,112bが付された領域は、撮影部122aの撮影範囲PA2aと撮影部122bの撮影範囲PA2bとが重なり合う位置にあった原稿部分であり、他の画像データにも重複して含まれる重複範囲である。
【0138】
同様に、マーカ113a,113bが検出された画像データであって、その画像データのマーカ113a,113bが付された領域は、撮影部122bの撮影範囲PA2bと撮影部122cの撮影範囲PA2cとが重なり合う位置にあった原稿部分であり、他の画像データにも重複して含まれる重複範囲である。
【0139】
上述のように、複数画像データの原稿部分から直接的に重複範囲を検出する場合、その検出精度は、画像データに含まれる原稿の表記内容、使用されている色、色の濃淡等の原稿の状態に依存する。画像データに含まれるマーカ111a~114a,111b~114bを用いることで、画像データに含まれる原稿の状態に依存することなく画像データに含まれる重複範囲を検出することができる。
【0140】
ただし、画像データに含まれるマーカ111a~114a,111b~114bを用いて画像データ内の重複範囲を検出する手法は、より大判の上記条件を満たさない原稿には適さない。1回の撮影で、撮影部122a~122cが生成した複数の画像データ内に全体が収まりきらないサイズの原稿の場合、上述のように、原稿台120における原稿の位置をずらして複数回の撮影を行ってしまうと、複数の画像データにおいて、それぞれのマーカ111a~114a,111b~114bと原稿との位置関係が変化してしまい、複数の画像データ内の重複範囲を正しく検出することができない。
【0141】
また、画像データに含まれるマーカ111a~114a,111b~114bを用いて画像データ内の重複範囲を検出する手法では、複数の画像データに含まれる原稿以外の部分、つまり、マーカ111a~114a,111b~114bが映り込んだ部分を削除する処理が行われる。
【0142】
コントローラ110aの検出部は、例えば複数の画像データに対して画像処理を行って、これらの画像データを2値化するなどして、画像データ内に含まれる原稿の輪郭抽出を行う。2値化による輪郭抽出の手法としては、例えばCannyエッジ検出法等が知られている。ただし、画像データ中の輪郭検出には、このほかにも様々な手法が知られており、これらの中から適宜、所望の結果がえられやすい手法を選んで用いることができる。
【0143】
コントローラ110aの生成部は、複数の画像データを連結して合成画像データを生成する際、コントローラ110aの検出部による輪郭検出結果に基づいて、原稿以外の部分が削除された合成画像データを生成する。
【0144】
図12は、実施形態2の変形例1にかかる画像読み取りシステム2aにおける画像読み取り処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0145】
図12に示すステップS201,S202は、上述の実施形態1の図7におけるステップS101,S102の処理と同様である。ただし、画像読み取りシステム2aでは、ユーザからの1回の撮影指示に基づいて複数の撮影部122a~122cを用いて複数枚の画像の撮影を一括して行う。
【0146】
図12に示すように、コントローラ110aの検出部は、複数の画像データに含まれるマーカ111a~114a,111b~114bを用いて、これらの画像データ内の重複範囲を検出する(ステップS203)。
【0147】
コントローラ110aの選択部は、上述の実施形態1の選択部102と同様、幾つかの重複範囲に含まれる画素のうち合成画像データの連結部分として使用する画素情報を、画素ごとの撮影距離に基づいて選択する(ステップS204)。
【0148】
コントローラ110aの生成部は、選択された各図の重複範囲を連結部分として、複数の画像データを連結して合成する(ステップS205)。
【0149】
また、コントローラ110aの生成部は、抽出された原稿の輪郭に基づいて、合成した画像データから原稿部分を抽出し、原稿の全範囲を含む合成画像データを生成して、コントローラ110aの記憶部に保存する(ステップS206)。
【0150】
以上により、変形例1の画像読み取りシステム2aにおける画像読み取り処理が終了する。
【0151】
変形例1の画像読み取りシステム2aによれば、原稿台120は、幾つかの画像データに重複して含まれることなる原稿の範囲を示すマーカ111a~114a,111b~114bを有しており、コントローラ110aの検出部は、マーカ111a~114a,111b~114bを検出することにより、幾つかの画像データに重複して含まれる重複範囲を検出する。
【0152】
これにより、複数の画像データから直接的に特徴点が検出し難い原稿についても、高い精度で重複範囲を抽出することができる。
【0153】
変形例1の画像読み取りシステム2aによれば、その他、上述の実施形態1,2の画像読み取りシステム1,2と同様の効果を奏する。
【0154】
(変形例2)
次に、図13及び図14を用いて、実施形態2の変形例2の画像読み取りシステムについて説明する。変形例2の画像読み取りシステムは、原稿のサイズを特定可能な点が上述の実施形態2とは異なる。
【0155】
図13は、実施形態2の変形例2にかかる画像読み取りシステムが備えるコントローラ110bの機能構成の一例を示すブロック図である。
【0156】
図13に示すように、変形例2のコントローラ110bは、機能部として、検出部201、選択部202、生成部203、記憶部204、及び算出部205を備える。
【0157】
検出部201、選択部202、及び生成部203は、上述の変形例1のコントローラ110aの検出部、選択部、及び生成部と同様の機能を有する。
【0158】
記憶部204には、上述の実施形態1の記憶部104と同様、各種の制御パラメータ、撮影部122a~122cが撮影した複数の画像データ、選択部202が選択した重複範囲、及び生成部203が生成した合成画像データ等が格納される。
【0159】
また、記憶部204には、マーカ111a~114a,111b~114bの原稿台120における配置、各々のマーカ111a~114a,111b~114bと他のマーカとの間の原稿台120における距離、画像データ内に映り込んだ場合に各々のマーカ111a~114a,111b~114bと他のマーカとの間に含まれる画素数等の情報が格納されている。
【0160】
算出部205は、記憶部204に格納されたマーカ111a~114a,111b~114bに関する上記情報を用いて、合成画像データ内に含まれる原稿に関する情報等から、原稿の実際のサイズを算出する。以下、図14を用いて、算出部205により原稿サイズの算出手法について詳細に説明する。
【0161】
図14は、実施形態2の変形例2にかかるコントローラ110bによる原稿サイズの算出手法について説明する図である。
【0162】
図14に示すように、コントローラ110bの算出部205は、原稿台120におけるマーカ112a,113a間の実際の距離RKx、及びマーカ111a,111b間の実際の距離RKy、画像データ内に映り込んだ場合にマーカ112a,113a間に含まれる画素数Kx、及びマーカ111a,111b間に含まれる画素数Ky、並びに合成画像データ内の原稿の横方向に含まれる画素数Mx、及び原稿の縦方向に含まれる画素数Myを用いて、原稿サイズを算出する。
【0163】
算出部205は、合成画像データ内の原稿の横方向に含まれる画素数Mx、及び原稿の縦方向に含まれる画素数Myをカウントする。
【0164】
また、上述のように、記憶部204には、原稿台120におけるマーカ112a,113a間の実際の距離RKx、及びマーカ111a,111b間の実際の距離RKy、並びに画像データ内に映り込んだ場合にマーカ112a,113a間に含まれる画素数Kx、及びマーカ111a,111b間に含まれる画素数Kyが予め格納されている。
【0165】
算出部205は、記憶部204に格納されたこれらの距離RKx,RKy、及び画素数Kx,Kyを参照し、合成画像データから求めた画素数Mx,Myから、以下の式(1),(2)を用いて原稿の実際の横幅RMx及び縦幅RMyを算出する。
【0166】
Kx:Mx=RKx:RMx
RMx=Mx×RKx/Kx・・・(1)
【0167】
Ky:My=RKy:RMy
RMy=My×RKy/Ky・・・(2)
【0168】
変形例2の画像読み取りシステムによれば、算出部205は、原稿の横方向の両端部間の画素数Mxを算出し、算出した画素数Mxと、1対のマーカ112a,113a間の画素数Kx及び距離RKxとに基づいて、原稿の実際の横幅RMxを算出し、原稿の縦方向の両端部間の画素数Myを算出し、算出した画素数Myと、1対のマーカ111a,111b間の画素数Ky及び距離RKyとに基づいて、原稿の実際の縦幅RMyを算出する。
【0169】
このように、記憶部204に格納された距離RKx,RKy、及び画素数Kx,Ky、並びに合成画像データから求めた画素数Mx,Myから、自動的に原稿サイズを検出することができる。これにより、例えばユーザからのサイズ指定なしに原稿の読み取りを自動で行うことが可能となる。
【0170】
変形例2の画像読み取りシステムによれば、その他、上述の実施形態1,2の画像読み取りシステム1,2と同様の効果を奏する。
【0171】
[実施形態3]
以下、図面を用いて、実施形態3について説明する。実施形態3の画像読み取りシステムは、可動式の撮影部を備える点が上述の実施形態1とは異なる。
【0172】
(読み取りシステムの構成例)
図15は、実施形態3にかかる画像読み取りシステム3の構成の一例を示す図である。図15においては、上述の実施形態1と同様の構成に同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0173】
図15に示すように、画像読み取りシステム2は、上述の実施形態1の腕部23、操作部21、及びコントローラ10に替えて、腕部223、レール224、駆動部225、操作部221、及びコントローラ210を備える。
【0174】
腕部223は、例えばコントローラ210を介して原稿台20に固定された基部と、原稿台20の上方へと延び、レール224が取り付けられた先端部とを有する。
【0175】
レール224は、原稿台20上方の所定高さに、原稿台20の上面と平行になるよう腕部223の先端部に取り付けられている。
【0176】
撮影部22は、レール224上を移動可能なように、駆動部225を介してレール224に取り付けられている。駆動部225は、例えば図示しないモータ等を備え、レール224上を移動するよう撮影部22を駆動させる。
【0177】
これにより、撮影部22は、原稿台20に対する角度および距離が一定の状態で原稿台20上を移動可能である。
【0178】
コントローラ210は、上述の実施形態1のコントローラ10と同様、例えば演算装置、記憶装置、及び補助記憶装置等を備えるコンピュータとして構成される。また、コントローラ210は、ユーザからの1回の撮影指示にしたがって、撮影部22を移動させつつ複数回の撮影を行わせるよう構成されている。操作部221は、ユーザからの1回の撮影指示をコントローラ210へと送信するよう構成されている。
【0179】
原稿の撮影を行う際、コントローラ210は、レール224上を移動する撮影部22が、原稿台20の複数の所定位置において撮影を行うよう制御する。このとき、コントローラ210は、複数の撮影位置において、撮影部22の撮影範囲PA3が、互いの境界部分で重なり合うように撮影部22による撮影タイミングを制御する。これにより、撮影される複数の画像データがそれぞれ、他の画像データとの境界部分に重複範囲を含むこととなる。
【0180】
なお、コントローラ210は、原稿のサイズ等に応じて、撮影部22がレール224上を移動する範囲、並びに撮影部22にて撮影を行う位置および回数等を調整してもよい。
【0181】
(読み取り装置による処理例)
次に、図16を用いて、画像読み取りシステム3における処理の例について説明する。図16は、実施形態3にかかる画像読み取りシステム3における画像読み取り処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0182】
図16に示すステップS301は、上述の実施形態1の図7におけるステップS101の処理と同様である。
【0183】
図16に示すように、コントローラ210は、ユーザからの1回の撮影指示に基づいて動作を開始する(ステップS302)。すなわち、コントローラ210は、駆動部225によって、レール224上を移動させつつ撮影部22による撮影を所定位置で行わせる(ステップS303)。
【0184】
コントローラ210は、撮影部22が、レール224上の移動可能な範囲の移動を終えるまでは(ステップS304:No)、駆動部225による撮影部22の移動を継続させつつ(ステップS305)、原稿の撮影を繰り返させる(ステップS303)。
【0185】
撮影部22が、レール224上の移動可能な範囲の移動を終えた後に(ステップS304:Yes)、原稿に未撮影の部分が残っているときは(ステップS306:No)、ユーザは適宜原稿をずらして(ステップS307)再度の撮影指示を行って(ステップS302)、撮影部22による原稿の撮影を継続する(ステップS303)。
【0186】
原稿内の全ての範囲の撮影が終了すると(ステップS306:Yes)、ユーザが操作部221を介して撮影済みの画像データの合成をコントローラ210に指示する。
【0187】
以降のステップS308~S310の処理は、上述の実施形態1の図7におけるステップS105~S107の処理と同様である。
【0188】
以上により、実施形態3の画像読み取りシステム3における画像読み取り処理が終了する。
【0189】
なお、ステップS304の処理において、撮影部22の移動が終了したことをユーザに知らせるため、操作部221にその旨を表示したり、音を発したりしてもよい。
【0190】
(概括)
実施形態3の画像読み取りシステム3によれば、原稿台20の上方に原稿台20と平行に設けられたレール224と、レール224上を移動するよう撮影部22を駆動させる駆動部225と、を備える。
【0191】
これにより、少なくとも1回の撮影で生成される複数の画像データについては、ユーザが重複範囲を調整しつつ原稿をずらす作業をしなくとも、各画像データの境界部分に重複範囲を含めることができる。1回の撮影で、原稿の全範囲をこれらの画像データに収めることができる場合には、ユーザによる原稿のずらし作業を省略することも可能である。よって、ユーザの作業負担を軽減して作業の効率化を図ることができる。
【0192】
実施形態3の画像読み取りシステム3によれば、その他、上述の実施形態1,2の画像読み取りシステムと同様の効果を奏する。
【0193】
なお、上述の実施形態3では、撮影部22を横方向に移動させることとした。しかし、撮影部22を横方向だけでなく縦方向にも移動することができるようレールが組まれていてもよい。あるいは、変形例2の画像読み取りシステムが、上記構成に加えて、縦方向に延びるレールと、そのレールに取り付けられた他の撮影部と、他の撮影部を駆動させる駆動部とを更に備えていてもよい。
【0194】
[実施形態4]
上述の実施形態1~3及びそれらの変形例の画像読み取りシステムは、例えばスキャナ等を備える画像形成装置に適用可能である。以下に、図17を用いて、実施形態1の画像読み取りシステム1が適用された画像形成システム100の例について説明する。
【0195】
図17は、実施形態4にかかる画像形成システム100の構成の一例を示す図である。図17(a)は実施形態4の画像形成システム100の図であり、図17(b)はスキャナ機能を備える画像形成装置90aの図である。
【0196】
図17(a)に示すように、画像形成システム100は、画像読み取りシステム1c及び画像形成装置90cを備える。
【0197】
画像読み取りシステム1cは、画像形成装置90cの上端部に搭載されている。画像読み取りシステム1cの構成は、概ね上述の通りである。
【0198】
ただし、画像読み取りシステム1cのコントローラ10cは、例えば画像形成装置90cの筐体内に格納され、画像形成装置90cを制御するコントローラと兼用されている。また、画像読み取りシステム1cの操作部21cは、例えば画像形成システム100の全面に設けられており、画像形成装置90cの操作部と兼用されている。
【0199】
画像形成装置90cは、排紙部92、画像形成部93、及び給紙部95を備える。
【0200】
給紙部95は、画像形成対象の用紙をストック可能に構成され、画像形成部93に用紙を供給する。給紙部95は、画像形成装置90cの各構成の中で、例えば最下部に設けられている。
【0201】
画像形成部93は、給紙部95から供給された用紙にインク等を吹き付けて印刷し、画像データを形成する。画像形成部93は、画像形成装置90cの中央部分であって、例えば給紙部95上に設けられている。
【0202】
排紙部92は、画像データが形成された用紙を排出する。排紙部92は、画像形成装置90cの最上部であって、例えば画像形成部93上に設けられている。
【0203】
コントローラ10cは、上述の実施形態1のコントローラ10と同様、例えば演算装置、記憶装置、及び補助記憶装置等を備えるコンピュータとして構成され、画像読み取りシステム1cと画像形成装置90cとを含む画像形成システム100の全体を制御する。
【0204】
コントローラ10cは、画像読み取りシステム1cに対し、上述の実施形態1のコントローラ10と同様の制御を行って大判サイズの原稿の合成画像データを生成する。
【0205】
また、コントローラ10cは、画像形成装置90cの給紙部95により画像形成部93に用紙を供給させ、画像形成部93に生成した合成画像を用紙に印刷する画像形成処理を行わせ、排紙部92により合成画像データが形成された用紙を排出させる。
【0206】
操作部21cは、上述の実施形態1の操作部21と同様、ユーザとのインターフェースとして機能し、ユーザから画像読み取りシステム1c及び画像形成装置90cへの各種指示を受け付ける。また、操作部21cは、画像読み取りシステム1c及び画像形成装置90cからの各種情報をユーザに出力する。
【0207】
以上のような画像形成システム100は、例えば図17(b)に示す画像形成装置90をベースに構成することができる。
【0208】
図17(b)に示すように、画像形成システム100のベースとなる画像形成装置90は、操作部91、排紙部92、画像形成部93、コントローラ94、給紙部95、及び読み取り部96を備える。
【0209】
画像形成装置90の排紙部92、画像形成部93、及び給紙部95は、上述の画像形成装置90cが備える排紙部92、画像形成部93、及び給紙部95と同様に構成される。コントローラ94は、画像形成装置90固有のコントローラであり、画像形成装置90の全体を制御する。操作部91は、画像形成装置90固有の操作部91であり、ユーザと画像形成装置90とのインターフェースとして機能する。
【0210】
画像形成装置90の読み取り部96は、例えば読み取り部96にセットされた原稿をスキャンして、画像データとして画像形成装置90に取り込むことが可能なスキャナ等である。読み取り部96で読み取った画像データは、例えばコントローラ94の制御下で、画像形成部93によって用紙に印刷される等の画像形成処理を受ける。
【0211】
このように構成された画像形成装置90をベースに、読み取り部96に替えて、画像読み取りシステム1の原稿台20、撮影部22、及び腕部23等を画像形成装置90に搭載し、画像形成装置90の操作部91及びコントローラ94と操作部21c及びコントローラ10cとを統合することで、上述の画像形成システム100が得られる。
【0212】
なお、図17の例では、実施形態1の画像読み取りシステム1を画像形成装置90に搭載することとしたが、画像形成装置90への搭載は、実施形態1~3及びそれらの変形例の画像読み取りシステムのいずれであっても可能である。
【0213】
以上、実施形態について説明したが、その各部の具体的な構成、処理の内容等は、実施形態で説明したものに限るものではない。
【符号の説明】
【0214】
1,2,2a,3 画像読み取りシステム
10,10a,110,110a,110b,210 コントローラ
20,120 原稿台
22,22a,122a,122b,122c 撮影部
23,123 腕部
101,201 検出部
102,202 選択部
103,203 生成部
104,204 記憶部
111a~114a,111b~114b マーカ
205 算出部
224 レール
225 駆動部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0215】
【特許文献1】特開2019-146126号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図12
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図15
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図17