(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138133
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】揚げ物用まぶし粉
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20230922BHJP
A23L 13/00 20160101ALN20230922BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044667
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000227489
【氏名又は名称】日東富士製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸音
(72)【発明者】
【氏名】井之上 明弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 宣裕
【テーマコード(参考)】
4B025
4B042
【Fターム(参考)】
4B025LB06
4B025LD02
4B025LG04
4B025LG12
4B025LK07
4B025LP01
4B042AD18
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK06
4B042AK12
4B042AK20
4B042AP05
(57)【要約】
【課題】揚げ物用まぶし粉が加熱調理の際にダマ状になりにくく、かつ衣が歯切れの良い食感を有する揚げ物を作製可能な揚げ物用まぶし粉を提供する。
【解決手段】加熱処理小麦粉と、粉末状植物油脂及び膨張剤の少なくとも1種とを含有し、前記加熱処理小麦粉の含有量は10~99質量%、前記粉末状植物油脂を含有する場合の前記粉末状植物油脂の含有量は3~10質量%、前記膨張剤を含有する場合の前記膨張剤の含有量は0.3~4.0質量%を提供するものである。本発明の揚げ物用まぶし粉は、加熱処理小麦粉が含まれているので、加熱調理の際にダマになりにくい。加熱処理小麦粉を含む揚げ物用まぶし粉を使用した揚げ物は衣の歯切れが悪くなる傾向にある。本発明の揚げ物用まぶし粉には粉末状植物油脂及び/又は膨張剤が上記の割合で含まれているので、本発明の揚げ物用まぶし粉を使用した揚げ物は衣の歯切れが良い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理小麦粉と、粉末状植物油脂及び膨張剤の少なくとも1種とを含有し、前記加熱処理小麦粉の含有量は10~99質量%、前記粉末状植物油脂を含有する場合の前記粉末状植物油脂の含有量は3~10質量%、前記膨張剤を含有する場合の前記膨張剤の含有量は0.3~4.0質量%であることを特徴とする揚げ物用まぶし粉。
【請求項2】
前記加熱処理小麦粉を10~60質量%、前記粉末状植物油脂を3~10質量%、及び前記膨張剤を0.3~4.0質量%含有する、請求項1に記載の揚げ物用まぶし粉。
【請求項3】
前記加熱処理小麦粉は、グルテンバイタリティーが55%以下である、請求項1又は2に記載の揚げ物用まぶし粉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物を加熱調理する際に用いられる揚げ物用まぶし粉に関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物用まぶし粉として、例えば下記特許文献1には、から揚げを製造するために、具材の表面に付着させるから揚げ用ブレッダーであって、酸化澱粉を3.0質量%以下で含有することを特徴とするから揚げ用ブレッダーが記載されている。また、酸化澱粉以外の材料として、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉等の小麦粉、米粉、大麦粉、大豆粉、そば粉、ライ麦粉、ホワイトソルガム粉、トウモロコシ粉、これらの穀粉を加熱処理した加熱処理穀粉等の穀粉類や、植物性油脂、動物性油脂、加工油脂、粉末油脂等の油脂類や、各種の膨張剤が例示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、穀物加熱処理物又はその粉砕物と、融点が55~65℃の粉末油脂とを含有し、該穀物加熱処理物又はその粉砕物が0.3~3mmの平均粒子径を有し、且つ該粉末油脂が0.3~2mmの平均粒子径を有する、具材に直接付着させるためのノンフライから揚げ用ミックスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-054311号公報
【特許文献2】特許第5851749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1には、配合可能な数多くの材料の列記の中に、加熱処理小麦粉や、粉末油脂や、膨張剤等が挙げられているが、加熱処理小麦粉と、粉末油脂や膨張剤とを組合せた特定の配合については記載されていない。
【0006】
前記特許文献2には、穀物加熱処理物又はその粉砕物と、融点が55~65℃の粉末油脂とを含有するノンフライから揚げ用ミックスが記載されているが、ノンフライ用という特殊な用途に向けたから揚げ用ミックスである。
【0007】
ところで、揚げ物を生産する際、例えば、具材からの水分がまぶし粉に移行する、バッター液がまぶし粉に混ざる等により、まぶし粉の含有水分量が多くなり、まぶし粉の具材への付着割合が不安定になり、外観、味の不均一な商品になってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、まぶし粉の具材への付着割合を安定化させ、かつ食感が良好な揚げ物を作製することが可能な揚げ物用まぶし粉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の揚げ物用まぶし粉は、加熱処理小麦粉と、粉末状植物油脂及び膨張剤の少なくとも1種とを含有し、前記加熱処理小麦粉の含有量は10~99質量%、前記粉末状植物油脂を含有する場合の前記粉末状植物油脂の含有量は3~10質量%、前記膨張剤を含有する場合の前記膨張剤の含有量は0.3~4.0質量%であることを特徴とする。
【0010】
本発明の揚げ物用まぶし粉は、加熱処理小麦粉を10~99質量%含有することにより、具材にまぶし粉をまぶして油ちょうする際、加熱処理小麦粉が水分を吸着し、まぶし粉全体の水分値が上がることを抑制するので、まぶし粉の付着割合が安定化し、衣の外観や、食味が不均一になることを抑制できる。
【0011】
一方、加熱処理小麦粉は、揚げ物の衣の食感を硬くしてしまう効果があるが、粉末状植物油脂及び膨張剤から選ばれた少なくとも1種を前述した配合比で加えることにより、歯切れの良い崩壊感ある食感の衣にすることができる。
【0012】
本発明の揚げ物用まぶし粉において、加熱処理小麦粉10~60質量%、粉末状植物油脂3~10質量%、及び膨張剤0.3~4.0質量%含有することが好ましい。
【0013】
本発明の加熱処理小麦粉は、グルテンバイタリティーが55%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の揚げ物用まぶし粉によれば、まぶし粉の付着割合が安定化し、衣の外観や、食味を均一にできると共に、歯切れの良い崩壊感ある食感の衣にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、好ましい態様を挙げて、更に詳しく説明する。
【0016】
本発明の揚げ物用まぶし粉が用いられる揚げ物としては、まぶし粉を付着させて油ちょうして製造される揚げ物であればよく、例えば、唐揚げ、フライドチキン、竜田揚げ、などが挙げられる。
【0017】
本発明の揚げ物用まぶし粉は、加熱処理小麦粉と、粉末状植物油脂及び膨張剤から選ばれた少なくとも1種とを含有する。
【0018】
加熱処理小麦粉は、小麦粉を熱処理して調製されたものを用いてもよく、又は小麦粒を熱処理し、その後挽砕されることにより調製されたものを用いてもよい。熱処理は、小麦粉中の蛋白質が変性する温度、時間等の条件で行えばよく、湿熱、乾熱のいずれの条件で行ってもよい。熱処理は、熱風乾燥によることもできる。
【0019】
小麦粉又は小麦粒の熱処理条件は、特に限定されないが、例えば、50~150℃、好ましくは70~120℃の温度下で、1~120分間、好ましくは10~90分間、熱処理する方法が挙げられる。また、例えば、挽砕後の小麦粉に加水をしてから上記のように熱処理する湿熱処理方法を用いてもよいし、挽砕後の小麦粉を乾熱乾燥させてもよい。
【0020】
小麦粉又は小麦粒の熱処理条件は、得られる加熱処理小麦粉のグルテンバイタリティーが、好ましくは55%以下、より好ましくは5~55%、更に好ましくは5~40%、最も好ましくは5~30%となるように設定することが好ましい。
【0021】
グルテンバイタリティーが55%よりも高いと、グルテンが生成されダマができやすくなり、食感に引きが出やすい傾向がある。
【0022】
なお、小麦粉のグルテンバイタリティーは、例えば、特開2002-291448号公報に記載(段落番号[0008]~[0013]参照)の方法に準じて求めることができる。具体的な算出方法については、下記に示す通りである。
【0023】
(1)小麦粉の可溶性粗蛋白質含量の測定
(a)100mL容のビーカーに試料(小麦粉)を2g精秤して入れる。
(b)上記のビーカーに0.05規定酢酸40mLを加えて、室温で60分間撹拌して懸濁液を調製する。
(c)上記(b)で得た懸濁液を遠沈管に移して、5000rpmで5分間遠心分離を行った後、濾紙を用いて濾過し、濾液を回収する。
(d)上記で用いたビーカーを0.05規定酢酸40mLで洗って洗液を遠沈管に移して、5000rpmで5分間遠心分離を行った後、濾紙を用いて濾過し、濾液を回収する。
(e)上記(c)および(d)で回収した濾液を一緒にして100mLにメスアップする。
(f)FOSS・ジャパン社の「ケルテック8400」(商品名)のケルダールチューブに上記(e)で得られた液体の25mLをホールピペットで入れて、分解促進剤(日本ゼネラル株式会社製「ケルタブC」;硫酸カリウム:硫酸銅=9:1(重量比))1錠および濃硫酸15mLを加える。
(g)FOSS・ジャパン社の分解炉(型番:DT220)を用いて、200℃で1時間分解処理を行い、さらに420℃で1時間分解処理を行った後、この分解処理に続いて、同じケルテックスオートシステムに組み込まれているケルテック蒸留滴定システム(型番:ケルテック8400)を用いて、その分解処理を行った液体を蒸留および滴定して(滴定には0.05M硫酸を使用)、下記の数式により、試料(小麦粉)の可溶性粗蛋白質含量を求める。
(式)可溶性粗蛋白質含量(%)=0.14×(T-Bs)×F×N×(100/S)×(1/25)
式中、T=滴定に要した0.05M硫酸の量(mL)
Bs=ブランクの滴定に要した0.05M硫酸の量(mL)
F=滴定に用いた0.05M硫酸の力価(用時に測定するかまたは力価の表示のある市販品を用いる)
N=窒素蛋白質換算係数(5.70)
S=試料の秤取量(g)
【0024】
(2)小麦粉の全粗蛋白質含量の測定
(a)上記(1)で用いたのと同じFOSS・ジャパン社の「ケルテックオートシステム」のケルダールチューブに、試料(小麦粉)を0.3g精秤して入れ、これに上記(1)の(f)で用いたのと同じ分解促進剤1錠および濃硫酸10mLを加える。
(b)上記(1)で用いたのと同じFOSS・ジャパン社の分解炉を用いて、420℃で1時間30分分解処理を行った後、この分解処理に続いて、同じケルテックオートシステムに組み込まれている上記(1)で用いたのと同じケルテック蒸留滴定システムを用いて、前記で分解処理を行った液体を蒸留および滴定して(滴定には0.05M硫酸を使用)、下記の数式により、試料(小麦粉)の全粗蛋白質含量を求める。
(式)全粗蛋白質含量(%)=0.14×(T-Ba)×F×N/S
式中、T=滴定に要した0.05M硫酸の量(mL)
Ba=薬包紙の滴定に要した0.05M硫酸の量(mL)
F=滴定に用いた0.05M硫酸の力価(用時に測定)
N=窒素蛋白質換算係数(5.70)
S=試料の秤取量(g)
【0025】
(3)グルテンバイタリティーの算出
上記(1)で求めた試料(小麦粉)の可溶性粗蛋白質含量および上記(2)で求めた試料(小麦粉)の全粗蛋白質含量から、下記の数式により試料(小麦粉)のグルテンバイタリティーを求める。
(式)グルテンバイタリティー(%)=(可溶性粗蛋白質含量/全粗蛋白質含量)×100
【0026】
本発明の揚げ物用まぶし粉は、加熱処理小麦粉を10~99質量%を含む。加熱処理小麦粉の含有量は、10~60質量%が好ましく、30~55質量%がより好ましい。揚げ物用まぶし粉における加熱処理小麦粉の含有量が10質量%未満である場合、具材にまぶし粉をまぶして油ちょうする際、まぶし粉がダマ状になりやすい傾向がある。また、揚げ物用まぶし粉における加熱処理小麦粉の含有割合が99質量%を超える場合、粉末状植物油脂及び膨張剤から選ばれた少なくとも1種の含有量が減って、当該揚げ物用まぶし粉を使用した揚げ物の食感が硬くなる傾向がある。
【0027】
本発明の揚げ物用まぶし粉は、加熱処理小麦粉の他に、粉末状植物油脂及び膨張剤の少なくとも1種を含有する。粉末状植物油脂を含有する場合、粉末状植物油脂の含有量は3~10質量%が好ましく、4~8質量%が更に好ましい。膨張剤を含有する場合、膨張剤の含有量は0.3~4.0質量%が好ましく、0.3~1.5質量%が更に好ましい。
【0028】
揚げ物用まぶし粉中の粉末状植物油脂の含有量が3質量%未満である場合、衣の歯切れが悪くなり、食感が十分に改善されなくなる傾向がある。また、揚げ物用まぶし粉の粉末状植物油脂の含有量が10質量%を超える場合、衣が軟らかくなりすぎて、良好な食感が得られない。
【0029】
揚げ物用まぶし粉の膨張剤の含有割合が0.3質量%未満である場合、衣の歯切れが悪くなり、食感が十分に改善されなくなる傾向がある。また、揚げ物用まぶし粉の膨張剤の含有割合が4.0質量%を超える場合、吸油が増えることにより衣がべちゃつき食感改善効果が低下する傾向がある。
【0030】
本発明の粉末状植物油脂としては、植物油脂を原料として製造された粉末状油脂であれば特に限定されない。一般に、粉末状油脂は、油脂に乳化剤、乳タンパク質や糖質などの賦形剤が被覆されたもので、乳タンパク質や賦形剤を含む水相と油相とを攪拌、均質化することにより水中油型乳化物とし、その後、乾燥粉末化して得ることができる。
【0031】
粉末状植物油脂の原料となる油脂としては、液体、固体の植物油脂、硬化した植物油脂、植物油脂のエステル交換油、分別した液体油又は固体脂等、食用に適するものであれば特に限定されない。具体的には、ナタネ油、コーン油、大豆油、綿実油、サフラワー油、パーム油、ヤシ油、米糠油、ゴマ油、カカオ脂、オリーブ油、パーム核油等の植物性油脂およびこれらの油脂の水素添加油またはエステル交換油、あるいはこれらの油脂を分別して得られる液体油、固体脂等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0032】
賦形剤としては、油脂を粉末状の形態とする際に用いられるものであればよく、例えば、乳タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、コラーゲン、ゼラチン等のタンパク質及びこれらタンパク質の分解物、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等の二糖類、コーンシロップ、デキストリン、オリゴ糖等の澱粉分解物、デンプン、増粘多糖類、糖アルコール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
また、粉末状油脂のその他の原料として乳化剤を用いることができる。乳化剤は、食品用であれば特に限定されるものではなく、例えば、レシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム等が挙げられる。
【0034】
膨張剤としては、揚げ物を加熱調理する際にガスが発生するものであればよく、特に制限はない。
【0035】
膨張剤によるガスの発生量は、膨張剤に含まれるアルカリ剤と酸性剤の種類の組み合わせや配合比率によって調整することができる。より詳細には、ガスの発生量は、膨張剤に含まれるアルカリ剤と速効性酸性剤と遅効性酸性剤の種類の組み合わせや配合比率によって調整することができる。具体的には、累積ガス量を高めたい場合には、速効性酸性剤の配合量を増やし、遅効性酸性剤の配合量を少なくし、累積ガス量を低くしたい場合には、遅効性酸性剤の配合量を増やし、速効性酸性剤の配合量を少なくすればよい。
【0036】
膨張剤に用いるアルカリ剤や酸性剤としては、食品として使用可能なものであればよく、特に制限はない。アルカリ剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。速効性酸性剤としては、例えば、酒石酸、フマル酸、及びそれらの塩などが挙げられ、より好ましくは、酒石酸水素カリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウムなどが挙げられる。遅効性酸性剤としては、例えば、リン酸塩、ピロリン酸塩、及びグルコノデルタラクトンなどが挙げられ、より好ましくは、第一リン酸カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、グルコノデルタラクトンなどが挙げられる。
【0037】
本発明の揚げ物用まぶし粉は、加熱処理小麦粉、粉末状植物油脂、膨張剤以外の原料として、例えば、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉等の加熱処理されていない小麦粉や、米粉、大麦粉、大豆粉、そば粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉などの他の殻粉や、でん粉、加工でん粉、香辛料、食塩などを含有していてもよい。
【0038】
本発明の揚げ物用まぶし粉は、具材に直接まぶしてもよく、具材にバッター液を付着させて、その上からまぶしてもよい。本発明の揚げ物用まぶし粉の具材への付着量は、特に限定されないが、具材又はバッター液に付着させた具材65gに対して、5~30gが好ましく、5~20gがより好ましく、5~10gが最も好ましい。具材又はバッター液に付着させた具材65gに対する揚げ物用まぶし粉の付着量が5g未満では、揚げ物の衣が薄くなり、衣の食感が崩壊感を感じられにくくなる傾向があり、30gを超えると、揚げ物の衣が厚くなり、当該衣の食感が硬くなる傾向がある。
【0039】
具材にバッター液を付着させた後に、本発明の揚げ物用まぶし粉をまぶす場合、上記バッター液としては、揚げ物に用いられる通常のバッター液を用いることができる。バッター液としては、例えば、小麦粉、粉末油脂等を含有するバッター用ミックス粉に水を加えて調製したものを用いることができる。
【実施例0040】
以下に、本発明を更に具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明はかかる実施例によって制限されるものではない。
【0041】
[試験例1](加熱処理小麦粉比較試験)
以下の表1に記載された配合で実施例1~3及び、比較例1~2のフライドチキンの揚げ物用まぶし粉を作製した。なお、表1に記載されている加熱処理小麦粉のグルテンバイタリティーは13.7%であった。
【表1】
【0042】
尚、表1において、薄力小麦粉として「ホワイトフェザー」(商品名、日東富士製粉株式会社製)、加熱処理小麦粉として「ルウベースフラワー100」(商品名、日東富士製粉株式会社製)、粉末状植物油脂として「ユニショートK」(商品名、不二製油株式会社製)、膨張剤として「BP(Fアップ)」(商品名、株式会社アイコク製)を用いた。
【0043】
鶏肉に対して小麦粉、粉末油脂等からなるバッター液を付けた後、実施例1~3及び比較例1~2の揚げ物用まぶし粉を、鶏肉1個(平均重量65g)当たり5gまぶした。こうして揚げ物用まぶし粉をまぶした具材を、175℃で6分油ちょうしてフライドチキンを作製した。
【0044】
十分訓練された5名のパネラーにより、表2に示した評価基準に基づいて、実施例1~3及び比較例1~2の揚げ物用まぶし粉を使用したフライドチキンの製造時の作業性について評価した。評価にあたっては、各実施例及び比較例においてフライドチキンを調理し、評価値の合計値を算出した。その結果を表4に示す。
【0045】
【0046】
同じく十分訓練された5名のパネラーにより、得られたフライドチキンの衣材の食感について評価した。各々のパネラーは、表3に示した評価基準に基づいて、実施例1~3及び比較例1~2を使用したフライドチキンの食感について評価した。評価にあたっては、各実施例及び比較例においてフライドチキンを調理し、評価値の合計値を算出した。その結果を表4に示す。
【0047】
【0048】
【0049】
表4の作業性評価に示されるように、加熱処理小麦粉を配合した実施例1~3と比較すると加熱処理小麦粉を含有しない比較例1の揚げ物用まぶし粉は、揚げ物用まぶし粉中のダマが多かった。比較例2はダマは少なかったが、引きのある食感で崩壊感のない衣であった。
【0050】
[試験例2](粉末状植物油脂比較試験)
表5に示されるように、実施例4~7及び比較例3の配合で揚げ物用まぶし粉を生成し、試験例1と同様の工程でフライドチキンを作製した。なお、表5に記載されている加熱処理小麦粉のグルテンバイタリティーは13.7%であった。試験例1と同様の方法で食感の評価を行った。その評価を表6に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
表6に示されるように、揚げ物用まぶし粉に粉末状植物油脂の含有量が0~10質量%の範囲内で含有されている実施例4~7は、比較例3と比較すると、衣の食感に崩壊感があり、油っぽさなく歯切れが良い結果が得られた。また、粉末状植物油脂と膨張剤の両方を含有する実施例4~6は、膨張剤のみを含有する実施例7より、食感がより良好であった。
【0054】
[試験例3](膨張剤比較試験)
表7に示されるように、実施例8~11及び比較例4の配合で揚げ物用まぶし粉を生成し、試験例1と同様の工程でフライドチキンを作製した。なお、加熱処理小麦粉のグルテンバイタリティーは13.7%であった。試験例1,2と同様の方法で食感の評価を行った。その評価を表8に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
表8に示されるように、揚げ物用まぶし粉に膨張剤の含有量が0~4.0質量%の範囲内で含有されている実施例8~11は、膨張剤を多く含有する比較例4と比較すると、油っぽさなく歯切れが良いという結果が得られた。また、粉末状植物油脂と膨張剤の両方を含有する実施例8~10は、粉末状植物油脂のみを含有する実施例11より、食感がより良好であった。