(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138136
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/06 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
D06F39/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044674
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】額賀 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 真司
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA01
3B166AA02
3B166AA04
3B166AB02
3B166AB29
3B166AB30
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3B166FB01
3B166FB09
3B166GA07
3B166GA12
3B166GA22
3B166HA12
3B166HA31
(57)【要約】
【課題】洗浄作用が十分に発揮される状態で泡を洗濯に利用可能とし、正常な運転を行うことができる洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機100は、外郭を形成する箱体1と、箱体1内に設けられた外槽2と、外槽2内に回転自在に支持された内槽3と、内槽3の回転を駆動するモータ4と、洗剤水から泡を生成する泡生成手段54と、外槽2内に配置されており、泡を消泡するための加熱手段50とを備えた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を形成する箱体と、
前記箱体内に設けられた外槽と、
前記外槽内に回転自在に支持された内槽と、
前記内槽の回転を駆動するモータと、
洗剤水から泡を生成する泡生成手段と、
前記外槽内に配置されており、泡を消泡するための加熱手段と、を備えた洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機であって、
前記加熱手段は、前記外槽の洗濯工程時に到達する予め設定された規定水位近傍よりも上方に配置されている洗濯機。
【請求項3】
請求項1に記載の洗濯機であって、
前記加熱手段は、前記外槽の溢水時に最高水位として到達するオーバーフロー水位よりも上方に配置されている洗濯機。
【請求項4】
請求項1に記載の洗濯機であって、
前記加熱手段は、前記外槽の洗濯工程時に到達する予め設定された規定水位近傍よりも下方に配置されており、
前記外槽の水位が前記加熱手段よりも下がったことが検知された後に、前記加熱手段を作動させる洗濯機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の洗濯機であって、
前記外槽に対して洗剤水または水を循環させる循環ポンプを備えた洗濯機。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の洗濯機であって、
前記外槽内に生じた泡を検知する泡検知手段と、
前記泡検知手段による検知結果に応じて前記加熱手段の作動および停止を制御する制御手段と、を備えた洗濯機。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の洗濯機であって、
前記加熱手段が、PTCヒータである洗濯機。
【請求項8】
請求項7に記載の洗濯機であって、
前記加熱手段が、水没可能な防水仕様である洗濯機。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の洗濯機であって、
前記加熱手段が、前記外槽内に複数配置されている洗濯機。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の洗濯機であって、
前記加熱手段が、泡を加熱するための伝熱板を備え、
前記伝熱板は、前記加熱手段よりも大きい伝熱面積に設けられている洗濯機。
【請求項11】
請求項6に記載の洗濯機であって、
前記加熱手段による消泡工程中に前記内槽を回転させる洗濯機。
【請求項12】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の洗濯機であって、
前記加熱手段の消費電力に応じて前記加熱手段の作動および停止を制御する制御手段を備えた洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外槽内の泡を消泡する機能を備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機のドラムは、洗濯水を貯水可能な外槽に内包されている。洗浄工程中には、洗剤を溶解した洗濯水がドラムによって攪拌されるため、洗濯水の発泡によって外槽内に泡が生じる。一般に、洗濯中に生じる過剰な泡は、洗濯機の正常な運転を妨げるものとして知られている。外槽内に多量の泡が生じると、外槽から溢れ出たり、電気部品に接触して故障の原因となったりすることが知られている。
【0003】
一方、近年では、泡を発生させる手段を備えた洗濯機も開発されている。泡を能動的に発生させることによって、泡による洗浄作用を積極的に利用する機能が付加されている。
【0004】
特許文献1には、衣類が収容される収容槽に取り付けられ、泡が生成される生成空間を規定する泡生成部と、泡生成部に洗剤を含有する液体を供給し、泡生成部内において液層と空気層とを作り出す供給部と、空気層を通じて、液層に向けて空気を送り出すことにより、泡を生成し、収容槽へ供給する送風部と、を備える洗濯機が記載されている。
【0005】
特許文献2には、洗濯水の加熱を伴う洗濯コースを実行する場合であって、洗い行程中に泡の発生を検知した場合は、泡抑制制御を実行するドラム式洗濯機が記載されている。洗い行程中に泡の発生を検知した場合であって、泡の発生を検知するまでの洗い行程時間が所定の時間を超過していた場合や、洗濯水の温度が所定の温度を超えていた場合は、泡消しモードに移行して洗い行程を継続する制御を実行するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6135977号公報
【特許文献2】特許第6636757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
洗濯機の外槽内に、意図しない過剰な泡が発生した場合や、泡による洗浄作用を積極的に利用するために意図的に泡を発生させた場合、泡が外槽から溢れ出たり、泡が故障の原因となったりする問題がある。外槽内に多量の泡が生じると、機外に漏洩したり、機内の通風路等に侵入して電気部品を故障させたりする。また、洗浄工程後に脱水工程に移行したときに、外槽内に多量の泡が残留して、ドラムを回転させるモータに負荷がかかる。
【0008】
洗浄工程中に生じた外槽内の泡は、時間の経過によって自然に消泡し得る。また、洗剤を溶解した洗濯水を追加の給水で希釈することによって消泡を促進させることができる。しかし、時間の経過による自然消泡では、泡が消えるまで動作を停止する必要があり、排水時間が長くなるという問題を生じる。また、洗濯水の希釈による消泡では、排水時間の延長に加え、追加給水による使用水量の増加に繋がるため使用者にとって好ましくはない。
【0009】
特許文献1では、空気層を通じて液層と空気層との境界に空気を送り出して、大きな泡を発生させている。しかし、大きな泡では、きめ細やかな泡と比較して、泡による摩擦低減作用や油分吸着作用が十分に得られない可能性がある。また、特許文献1には、泡を強制的に消泡する手段について、何ら開示されていない。強制的な消泡が不能である場合、脱水工程に影響を生じない程度でしか泡による洗浄作用を利用できない可能性がある。
【0010】
特許文献2では、エアトラップを介して泡の発生を検知した場合に、泡消しモードに移行している。泡消しモードは、水槽内の洗濯水を一部排水して洗い行程を継続する泡消し制御を行うものとされている。このような制御を行う場合、洗濯水の無駄な排水は防止されるが、排水を含めた運転時間が根本的に短縮される訳ではない。
【0011】
このような状況下、外槽内に意図しない多量の泡が発生した場合、および、泡による洗浄作用を積極的に利用するために意図的に泡を発生させた場合のいずれにおいても、運転時間の延長や給水の追加を伴うことなく、外槽内の泡を迅速に消泡可能な手段が求められている。泡を強制的に消泡する機能を備えており、泡で運転が妨げられない洗濯機が望まれている。
【0012】
そこで、本発明は、洗浄作用が十分に発揮される状態で泡を洗濯に利用可能とし、正常な運転を行うことができる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明に係る洗濯機は、外郭を形成する箱体と、前記箱体内に設けられた外槽と、前記外槽内に回転自在に支持された内槽と、前記内槽の回転を駆動するモータと、洗剤水から泡を生成する泡生成手段と、前記外槽内に配置されており、泡を消泡するための加熱手段と、を備えた。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、洗浄作用が十分に発揮される状態で泡を洗濯に利用可能とし、正常な運転を行うことができる洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る洗濯機の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る洗濯機の内部を示す側面視による断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る洗濯機の内部を示す正面視による断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る洗濯機の内部を示す正面視による断面図である。
【
図5】従来の洗濯機の内部を示す正面視による断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る洗濯機の運転例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に係る洗濯機の運転例を示すフローチャートである。
【
図9A】消泡用ヒータの消費電力-温度特性を示す図である。
【
図9B】作動時の消泡用ヒータの消費電力と温度との関係を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る洗濯機の運転例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る洗濯機について、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において、共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る洗濯機の外観を示す斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係る洗濯機の内部を示す側面視による断面図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る洗濯機100は、箱体1、外槽2、ドラム(内槽)3、モータ4等を備えている。箱体1、外槽2、ドラム3、モータ4等は、箱体1の内部に収容されている。
【0018】
箱体1は、洗濯機の外郭を形成している。箱体1は、洗濯機の底部を構成するベース1h上に、補強材によって結合された鋼板や、樹脂成形品であるカバー等によって形成されている。箱体1の左右の側面には、補強材で結合された側板1aが備えられている。箱体1の後面には、背板1dが備えられている。箱体1の前面から上面にかけては、前面カバー1c、下部前面カバー1f、上面カバー1eが備えられている。
【0019】
前面カバー1cには、円形状の開口が設けられている。前面カバー1cを支持する補強材には、ドア9がヒンジ9aを介して取り付けられている。ドア9は、円環形状に設けられたドア枠9bと、ドア枠9bの中央に固定されたドアガラス9cと、ドア枠9bに設けられたドア開放レバー9dを備えている。ドア9は、前面カバー1cに設けられた箱体1の前面の開口を開閉自在に設けられている。
【0020】
ドア9は、前面カバー1cの側に押し付けられると、前面カバー1cに設けられた箱体1の前面の開口を閉じた状態になり、ロック機構でロックされる。ドア9は、ドア開放レバー9dを引くとロック機構が外れて、箱体1の前面の開口を開放可能になる。ドア9が開いた状態では、箱体1の内部に収容されたドラム3に対して、衣類等の洗濯物の出し入れが可能になる。
【0021】
箱体1の上面の前側には、操作パネル6が設けられている。操作パネル6には、操作スイッチ12,13や表示器14が設けられている。操作スイッチ12,13や表示器14は、箱体1の上部に内蔵された制御基板61と電気的に接続されている。
【0022】
箱体1の上面には、洗剤投入部7が設けられている。洗剤投入部7には、洗剤容器が内蔵されている。洗剤容器は、複数の部屋に区切られている。洗剤容器の各部屋には、粉末洗剤、液体洗剤、柔軟仕上剤等の洗剤類を個別に投入することができる。箱体1の内部において、洗剤容器には、給水配管7cが接続されている。給水配管7cの他端は、外槽2に接続している。
【0023】
箱体1の上面の後側には、給水ホース接続口7a,7bが設けられている。一方の給水ホース接続口7aには、水道栓からの給水を行う給水ホースが接続される。他方の給水ホース接続口7bには、風呂の残り湯等の給水を行う給水ホースが接続される。給水ホース接続口7a,7bは、洗剤投入部7の洗剤容器に接続している。給水された水は、洗剤容器を経由して洗剤類を溶解し、洗剤水として外槽2に供給される。
【0024】
箱体1の上面には、乾燥フィルタ8が取り付けられている。乾燥フィルタ8は、箱体1の上面に開口した吸気口を覆っている。吸気口は、箱体1の内部に設けられた送風経路と連通している。送風経路には、洗濯物の脱水や乾燥に利用される空気が流される。乾燥フィルタ8は、機外から通気経路に吸気される空気に含まれる塵埃等を捕集する。
【0025】
外槽2は、
図2に示すように、有底の円筒状に設けられている。外槽2は、複数のサスペンション5によって弾性的に支持されている。サスペンション5は、ベース1h上に固定されている。サスペンション5は、弾性を示すコイルばねや、振動を減衰させるダンパ等で形成されている。外槽2の上部は、箱体1の天井面に対して補助ばねで支持される。外槽2は、箱体1の内部において、中心軸が前側のやや上方を向き、前側が高くなるように、傾斜して配置されている。
【0026】
外槽2の前側には、外槽カバー2aが設けられている。外槽カバー2aは、外槽2の前側のうち、外槽2の周壁の近傍のみを覆っている。外槽2の前側のうち、外槽2の中心軸側には、開口が形成されている。外槽2は、前側の開口が外槽カバー2aで部分的に覆われることによって貯水可能とされている。外槽2には、運転工程に応じて、給水された水や、洗剤が溶解した洗剤水等の洗濯水が溜められる。
【0027】
外槽2の前側の開口は、前面カバー1cに設けられた箱体1の前面の開口と略同心に位置し、ドア9が閉じた状態では機外に対して閉塞される。外槽2の前側の開口には、ゴム等の弾性体で形成された不図示のベローズが取り付けられる。ベローズは、外槽2の前側の開口と前面カバー1cの開口との間に形成される隙間を水密に閉塞させる。また、閉じられたドア9と接触し、ドア9との隙間を水密に閉塞させる。ドア9が開いた状態では、外槽2の前側の開口を通じて、洗濯物の出し入れが可能になる。
【0028】
ドラム3は、外槽2の内側に配置されている。ドラム3は、外槽2よりも小さい有底の円筒状に設けられている。ドラム3の前側には、開口が形成されている。ドラム3の底壁の中央には、モータ4の回転軸が結合している。ドラム3は、モータ4によって回転自在に支持されている。ドラム3は、外槽2と同様に、中心軸が前側のやや上方を向き、前側が高くなるように、傾斜して配置されている。ドラム3は、衣類等の洗濯物を洗濯する洗濯槽を形成している。
【0029】
ドラム3の周壁には、周壁を貫通するように、多数の小孔が設けられる。小孔は、ドラム3の内外への洗濯水や乾燥風等の出入りを可能にする通水路や通風路として機能する。ドラム3に投入された洗濯物は、小孔を通じて流入した洗濯水中で洗濯される。また、小孔を通じた洗濯水の排出とドラム3の回転による遠心作用で脱水される。また、小孔を通じた乾燥風の流入出とドラム3の回転による遠心作用で乾燥される。
【0030】
ドラム3の周壁には、複数のリフタが設けられる。リフタは、ドラム3の中心軸と略平行な突条として設けられる。リフタは、ドラム3の周壁からドラム3の内側に向けて突出するように設けられる。リフタによると、ドラム3が回転したときに、ドラム3に投入された洗濯物が持ち上げられる。持ち上げられた洗濯物は重力で落下する。このような動作の繰り返しによって、効果的な洗浄作用や脱水作用が得られる。
【0031】
ドラム3の開口の周囲には、流体バランサが設けられる。流体バランサは、ドラム3の周方向に延びた中空構造に設けられ、液体が封入される。流体バランサに封入された液体は、ドラム3が回転したときに、流体バランサの内部を重力にしたがって周方向に移動する。流体バランサによると、液体の移動によって洗濯物の偏りによる振動が低減される。
【0032】
モータ4は、運転工程に応じた制御によって、ドラム3の回転を駆動する。モータ4は、外槽2の後方に配置されている。モータ4の回転軸は、外槽2の後部を貫通して、ドラム3の底壁に結合している。モータ4は、不図示の制御基板と電気的に接続されている。モータ4は、正転動作、逆転動作、起動および停止が、制御基板によって制御される。
【0033】
外槽2の下部には、水受部2bが設けられている。水受部2bは、外槽2の下部の周壁が下方に膨出することによって受皿状に設けられている。水受部2bの底部の後側には、排水口2cが形成されている。排水口2cには、内部排水配管20が接続されている。内部排水配管20の他端には、フィルタケース32が接続されている。
【0034】
フィルタケース32は、箱体1の下部の前側に固定されている。フィルタケース32には、リントフィルタ31が収容されている。フィルタケース32は、中空構造に設けられており、洗濯水が流入する入口、洗濯水が排水される出口、洗濯水が返送される循環口、リントフィルタ31を抜き差しする開口部を有している。
【0035】
リントフィルタ31は、外槽2から排水された洗濯水からリント等の異物を捕集する。リントフィルタ31は、フィルタケース32に対して着脱自在に設けられる。例えば、フィルタケース32内でリントフィルタ31を回転させてロックを外し、下部前面カバー1fに設けられた扉を開いて、フィルタケース32の開口部から機外に取り出すことができる。
【0036】
フィルタケース32の循環口には、循環ポンプ21が接続されている。循環ポンプ21は、外槽2の下方に配置されている。循環ポンプ21の吸引側は、リントフィルタ31を挟んで、内部排水配管20と接続されている。循環ポンプ21の吐出側は、循環配管22と接続されている。循環配管22の他端は、外槽カバー2aの上部に設けられた散水ノズルと接続されている。
【0037】
フィルタケース32の出口には、連結継手33が接続されている。内部排水配管20と連結継手33とは、フィルタケース32に収容されたリントフィルタ31を挟んで、互いに連通している。連結継手33の他端には、排水弁23が接続されている。連結継手33は、フィルタケース32と一体的に設けることができる。
【0038】
排水弁23は、運転工程に応じた制御によって開閉自在に設けられている。排水弁23には、外部排水配管24が接続されている。外部排水配管24は、機外の排水栓等に接続される。排水弁23が閉じた状態では、洗濯水を外槽2の内部に貯水できる。排水弁23が開いた状態では、洗濯水を外槽2から機外に排水できる。
【0039】
内部排水配管20、フィルタケース32、連結継手33、および、外部排水配管24は、外槽2の洗濯水を機外に排水する排水経路を形成している。内部排水配管20、フィルタケース32、および、循環配管22は、外槽2から排出された洗濯水を外槽2に循環させる循環経路を形成している。循環ポンプ21は、外槽2に対して洗剤水または水を循環させる。
【0040】
排水弁23が閉じた状態で循環ポンプ21が作動すると、外槽2の洗濯水が、内部排水配管20と循環配管22を通じて、外槽2の上部に吸い上げられる。吸い上げられた洗濯水は、不図示の散水ノズルによってドラム3の内側にシャワー状に散布される。ドラム3に投入された洗濯物に洗濯水を散布すると、高い洗浄力や濯ぎ力が得られる。洗濯水を循環させて散布すると、洗浄工程や濯ぎ工程の節水に繋がる。
【0041】
外槽2の後部には、排気口2dが形成されている。排気口2dには、送風ダクト27が接続されている。送風ダクト27は、箱体1の上下に延びるように設けられている。送風ダクト27の他端は、吸気ダクト28と接続されている。吸気ダクト28は、箱体1の上面に開口した吸気口を有している。吸気ダクト28には、送風ユニット40が接続されている。
【0042】
送風ユニット40は、箱体1の上部に固定されている。送風ユニット40は、外槽2よりも上方に、外槽2から離隔して配置されている。送風ユニット40には、送風機41と乾燥風用ヒータ42が収容されている。送風ユニット40は、中空構造のケーシングを備えており、空気が流入する入口、空気が排出される出口を有している。
【0043】
送風ユニット40の入口側には、吸気ダクト28が接続されている。送風機41は、送風ユニット40の入口側に配置されている。送風機41の吐出側には、乾燥風用ヒータ42が配置されている。送風ユニット40の出口側には、吹出配管29が接続されている。吹出配管29の他端は、外槽カバー2aの上部に備えられた吹出ノズル30と接続されている。
【0044】
送風ダクト27、吸気ダクト28、送風ユニット40、吹出配管29、および、吹出ノズル30は、洗濯物の脱水や乾燥に利用される空気を外槽2に循環させる送風経路を形成している。送風機41は、外槽2に対して空気を循環させて、ドラム3に投入された洗濯物に乾燥風を送る。乾燥風用ヒータ42は、洗濯物に向けて送られる空気を加熱して、洗濯物を乾燥させるための乾燥風を生成する。
【0045】
送風機41が作動すると、機外の空気が、吸気ダクト28、送風ユニット40および吹出配管29を通じて、外槽2の上部に送られる。機外から吸い込まれた空気は、乾燥風用ヒータ42によって乾燥された後に、吹出ノズル30によって外槽2の内側に吹き出される。吹き出された空気は、洗濯物に送風された後に、送風ダクト27を通じて排気される。ドラム3に投入された洗濯物に乾燥風を送ると、洗濯物の脱水や乾燥が促進される。
【0046】
外槽2の周壁には、
図3に示すように、既定の高さに、溢水口2eが形成されている。溢水口2eには、溢水配管25が接続されている。溢水配管25の他端は、排水弁23よりも下流で、外部排水配管24に接続している。溢水配管25と外部排水配管24は、既定の水位を超えた外槽2の洗濯水等を機外に排水する溢水経路を形成している。
【0047】
外槽2の洗濯水は、過剰な給水や洗濯物によって規定のオーバーフロー水位に達すると、溢水口2eや溢水配管25を通じて強制的に機外に排水される。このような溢水経路を通じた排水は、排水弁23の開閉状態にかかわらず行われる。
【0048】
図3および
図4は、本発明の実施形態に係る洗濯機の内部を示す正面視による断面図である。
図3および
図4には、それぞれ、本実施形態に係る洗濯機の内部構造の一例を、洗濯水が発泡した状態として示す。
図3および
図4において、一点鎖線L1は、規定水位、二点鎖線L2は、オーバーフロー水位を示す。
図3および
図4に示すように、本実施形態に係る洗濯機100は、泡を消泡するための消泡用ヒータ(加熱手段)50を備えている。
【0049】
消泡用ヒータ50は、外槽2の内側に配置されている。消泡用ヒータ50は、外槽2の内側の泡を強制的に消泡する機能を有している。消泡用ヒータ50は、泡が接触可能な加熱部を有している。消泡用ヒータ50によると、加熱部に接触した泡が直接的に加熱される。泡の界面に存在する水分が加熱されることで蒸発が促進し、外槽2の内側の泡を迅速に破泡させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る洗濯機100は、洗剤水から泡を生成する泡生成手段を備えている。
図3および
図4において、泡生成手段としては、循環経路上に泡生成ユニット54が備えられている。泡生成ユニット54は、洗剤水を発泡させる機能を有している。泡生成ユニット54によると、外槽2から排出されて外槽2に返送される洗剤水から、きめ細やかな泡が生成される。生成された泡は、洗濯物の洗濯に利用される。このような泡生成ユニット54は、循環経路上に代えて、外槽2の内側、且つ、ドラム3の外側である外槽2の水受部2bに備えることもできる。
【0051】
但し、消泡用ヒータ50を備える洗濯機100において、泡生成ユニット54は、必ずしも備えられなくてもよい。泡生成手段としては、泡生成ユニット54に代えて、洗剤水を発泡させる運転制御を利用してもよい。例えば、ドラム3による攪拌や、散水ノズルによる散布等を利用して、洗剤水を発泡させることができる。適切な運転制御を行うと、きめ細やかな泡を生成することができる。
【0052】
ここで、洗濯機の分野における、泡による問題について、図を参照しながら説明する。
【0053】
図5は、従来の洗濯機の内部を示す正面視による断面図である。
図5に示すように、従来の洗濯機500は、本実施形態に係る洗濯機100と同様に、箱体1、外槽2、ドラム3、モータ4等を備えている。また、泡生成ユニット54のような泡生成手段を備えている場合がある。しかし、従来の洗濯機500は、消泡用ヒータ50を備えていない。
【0054】
従来の洗濯機500では、外槽2に過剰な泡が発生した場合、泡が機外に溢れ出たり、泡が電気部品に接触して故障の原因となったりする問題がある。従来の洗濯機500は、泡生成手段を備えている場合もあるし、泡生成手段を備えていない場合もある。泡による問題は、意図的に泡を発生させた場合、および、ドラム3による攪拌等によって意図せず泡が発生した場合のいずれでも起こり得る。
【0055】
従来、各種の分野において、泡の作用が知られている。食器用洗剤、洗顔料、洗濯用洗剤等には、界面活性剤が含まれている。界面活性剤を含む洗剤液は、気相中で機械力を伴って攪拌されると発泡する。気相中に生じた泡は、肌や衣類に対する摩擦力を低減する作用を示すことが確認されている。また、きめ細やかな泡は、水相中において油分となじみ易く、油分を吸着する作用が高いことが確認されている。
【0056】
その一方で、従来の洗濯機の分野では、過剰な泡は、洗濯機の運転を妨げるものとして知られてきた。従来の洗濯機は、泡の発生を抑制する方向で開発されたものが主流である。特許文献1のように、一部の洗濯機では、泡による洗浄作用を積極的に利用するために、意図的に泡を発生させている。しかし、泡による問題があるため、洗濯機の運転に支障をきたさない程度に、泡量・泡密度が制限されている。
【0057】
図5に示すように、従来の洗濯機500は、既定の水位を超えた外槽2の洗濯水を機外に排水する溢水経路を備えている場合がある。溢水経路は、溢水配管25や外部排水配管24によって形成されている。溢水経路を備えている場合、外槽2の洗濯水がオーバーフロー水位に達すると、溢水経路を通じて強制的に機外に排水される。
【0058】
溢水経路を備えている場合、外槽2の洗濯水がオーバーフロー水位を超えないため、洗濯水が機外に溢れ出たり、洗濯水が電気部品に接触して故障の原因となったりするのが防止される。送風機41、乾燥風用ヒータ42、制御基板61等の電気部品が外槽2よりも上方に離隔して配置されている場合であれば、溢れた洗濯水に電気部品が接触する危険性が低減される。
【0059】
しかし、洗剤の入れ過ぎや、ドラム3による攪拌等によって、外槽2の内側に過剰な泡が発生することがある。過剰な泡が発生した場合、泡の見かけ体積が大きくなる。また、過剰な泡が発生した場合や、泡の粘度が高い場合には、水頭圧による外槽2からの排出自体が困難になる。洗濯水については、洗浄工程後に水頭圧で機外に排水できる。しかし、泡については、排水される洗濯水に同伴せず、外槽2に残留し易いという問題がある。
【0060】
外槽2に過剰な泡が発生した場合、
図5に示すように、オーバーフロー水位を超える高さまで、泡の高さがせり上がる可能性が高くなる。溢水経路を備えている場合であっても、泡が機外に溢れ出たり、泡が電気部品に接触して故障の原因となったりする問題が残る。
図5に示すように、送風機41、乾燥風用ヒータ42、制御基板61等の電気部品が外槽2よりも上方に配置されていても、送風ダクト27の内部に泡が侵入し、内部をせり上がって電気部品に接触してしまう。
【0061】
また、外槽2に過剰な泡が発生した場合、外槽2に泡が残留した状態で脱水工程に移行すると、モータ4に対する負荷が増大するという問題がある。外槽2に残留した泡によって、ドラム3の回転に対する抵抗が上昇し、モータ4に対する負荷が高くなる場合がある。モータ4に対する負荷が高くなると、過電流によって異常発熱を生じたり、モータ4が規定の回転速度に達しなくなったりする。
【0062】
泡による問題を回避するためには、洗濯水を過剰に発泡させない対策や、泡を消泡させる対策が必要になる。洗濯水を過剰に発泡させないためには、ドラム3による攪拌を抑制する制御や、循環ポンプ21による外槽2への返送を抑制する制御等が必要になる。既存の手段で泡を消泡させるためには、泡が自然に消泡するのを待つ制御や、追加的な給水を行って洗剤を希釈する制御や、追加的な給水を行って泡を流す制御等が必要になる。
【0063】
しかし、洗濯水を過剰に発泡させない制御を行うと、泡による洗浄作用を十分に発揮させることができないという問題を生じる。また、既存の手段で泡を消泡させる制御を行うと、外槽2の洗濯水を排水する排水動作の所要時間が長くなるという問題を生じる。溢水経路を備えていない場合には、洗濯水のオーバーフローだけでなく、泡の溢れについても防止する必要がある。
【0064】
このような問題に対し、本実施形態に係る洗濯機100では、
図3および
図4に示すように、泡を消泡するための消泡用ヒータ(加熱手段)50を、泡が集積し易い外槽2の内側に設けるものとする。消泡用ヒータ50は、意図しない過剰な泡が発生した場合や、泡による洗浄作用を積極的に利用するために意図的に泡を発生させた場合のうち、いずれに用いられてもよい。洗浄工程時に泡生成手段を用いて意図的に泡を発生させた場合、消泡用ヒータ50を作動させると、泡量を適切に調整することができる。
【0065】
洗剤が溶解した洗剤液が生じる泡は、水や界面活性剤を含有している。泡の内外は、水を主成分とする泡膜によって隔てられている。界面活性剤は、親水基を水相側、疎水基を気相側に向けて、泡膜の界面に配向した状態で存在する。このような構造の泡を加熱すると、水分が蒸発して泡膜が薄くなる。そのため、消泡用ヒータ50による加熱によって、泡を強制的に破泡させることができる。
【0066】
消泡用ヒータ50を備えると、外槽2の内側の泡を直接的に加熱することが可能である。そのため、意図しない多量の泡が発生した場合、および、意図的に泡を発生させた場合のいずれにおいても、運転時間の延長や給水の追加を伴うことなく、外槽2の内側の泡を迅速に消泡させることができる。また、洗浄工程後の脱水工程等において、泡によるモータ4に対する負荷を低減できる。よって、洗浄作用が十分に発揮される状態で泡を洗濯に利用可能としながらも、運転時間の延長や給水の追加を伴うことなく正常な運転を行うことができる。
【0067】
一般に、泡を破泡させる方法としては、外槽2に溜められた洗濯水を加熱する方法も考えられる。しかし、洗濯水全体を加熱する方法では、過剰な泡を消泡させるまでに多大な時間やエネルギがかかる。消泡用ヒータ50で泡を直接的に加熱する方法であれば、温水用ヒータ等で洗濯水を加熱する方法と比較して、消泡工程にかかる時間やエネルギを削減できる。
【0068】
消泡用ヒータ50は、外槽2の内側において、
図3に示すように、規定水位(L1)近傍よりも上方に配置してもよいし、
図4に示すように、規定水位(L1)近傍よりも下方に配置してもよい。また、規定水位(L1)近傍よりも上方および下方の両方に配置してもよい。消泡用ヒータ50は、ドラム3と干渉しないように、外槽2の内側、且つ、ドラム3の外側に配置することが好ましい。
【0069】
規定水位とは、外槽2の洗濯工程時に到達する標準的な水位を意味する。外槽2は、洗浄工程時に、規定水位を目標値として洗濯水の水位を調整される。規定水位は、ドラム3に投入された洗濯物が洗濯水に浸漬されるように、洗濯機の機種や、外槽2の形状、外槽2の容量等に応じて、予め設定される。規定水位近傍とは、規定水位に対して±5cm以内の高さの範囲を意味する。
【0070】
図3に示すように、消泡用ヒータ50を規定水位(L1)近傍よりも上方に配置する場合、外槽2を径方向の外側に拡張して、消泡用ヒータ50の配置場所を設けることができる。
図3において、消泡用ヒータ50の配置場所は、外槽2の中心軸に対して左右の一方側のみに設けられているが、左右の他方側に設けられてもよいし、左右の両側に設けられてもよい。
【0071】
消泡用ヒータ50の配置場所は、外槽2の前側の内面や、外槽2の後側の内面や、これらの両方に設けられてもよい。消泡用ヒータ50がドラム3と干渉しない場合には、既存の外槽2を拡張することなく、規定水位(L1)近傍よりも上方に配設してもよい。但し、消泡工程を効率的に行う観点からは、消泡用ヒータ50は、少なくともドラム3の径方向の外側に配置されることが好ましい。
【0072】
消泡用ヒータ50を規定水位(L1)近傍よりも上方に配置すると、外槽2に溜められた洗濯水の水面よりも上方の泡を直接的に加熱することができる。洗濯水を加熱することなく、泡のみを加熱できるため、必要最低限のエネルギで消泡工程を行うことができる。洗濯水が不必要に加熱されないため、洗浄工程中に消泡用ヒータ50を作動させることも可能である。洗浄工程中に作動させると、発泡と消泡との平衡によって泡量を一定に制御できるため、泡による問題を回避しつつ、泡による洗浄作用を積極的に利用できる。
【0073】
図4に示すように、消泡用ヒータ50を規定水位(L1)近傍よりも下方に配置する場合、外槽2の水位が消泡用ヒータ50よりも下がったことが検知された後に、消泡用ヒータ50を作動させることが好ましい。消泡用ヒータ50を規定水位(L1)近傍よりも下方に配置する場合、消泡用ヒータ50の配置場所として、外槽2の下部の水受部2bを用いることができる。或いは、規定水位(L1)近傍よりも下方において、外槽2を径方向の外側に拡張して、消泡用ヒータ50の配置場所を設けることができる。
【0074】
消泡用ヒータ50を規定水位(L1)近傍よりも下方に配置すると、外槽2に洗濯水が溜められている場合には、泡と共に洗濯水を直接的に加熱できる。一方、外槽2に洗濯水が溜められていない場合には、外槽2の下部に溜まった泡を直接的に加熱できる。そのため、運転工程に応じて、必要最低限のエネルギで消泡工程や温水洗濯を行うことができる。規定水位(L1)近傍よりも下方に配置された消泡用ヒータ50は、外槽2に溜められた洗濯水を加熱する温水用ヒータと兼用することもできる。
【0075】
消泡用ヒータ50は、洗濯機が溢水経路(溢水配管25,外部排水配管24)を備えている場合、オーバーフロー水位(L2)よりも上方に配置してもよいし、オーバーフロー水位(L2)よりも下方に配置してもよい。また、オーバーフロー水位(L2)よりも上方および下方の両方に配置してもよい。規定水位(L1)近傍よりも上方であって、オーバーフロー水位(L2)よりも上方や下方に配置する場合、規定水位(L1)近傍よりも上方に配置する場合と同様に、消泡用ヒータ50の配置場所を設けることができる。
【0076】
オーバーフロー水位とは、外槽2の溢水時に最高水位として到達する水位を意味する。オーバーフロー水位は、溢水経路(溢水配管25,外部排水配管24)に繋がる外槽2の溢水口2eの高さによって定まる。外槽2の洗濯水は、オーバーフロー水位に到達すると、溢水口2eから強制的に排出されるため、オーバーフロー水位を超える水位になることが防止される。
【0077】
消泡用ヒータ50をオーバーフロー水位(L2)よりも上方に配置すると、外槽2に溜められた洗濯水が到達しない高さの泡を直接的に加熱することができる。洗濯水を加熱することなく、外槽2から溢れる可能性が高い泡のみを加熱できる。そのため、必要最低限のエネルギで泡漏洩防止に特化した消泡工程を行うことができる。
【0078】
また、本実施形態に係る洗濯機100は、外槽2に生じた泡を検知する泡センサ(泡検知手段)55を備えている。泡センサ55は、送風ダクト27の内面に設けられている。泡センサ55は、一対の第1電極55aと第2電極55bとによって構成されている。第1電極55aと第2電極55bとは、送風ダクト27において、互いに異なる高さに配置されている。
【0079】
泡センサ55は、第1電極55aと第2電極55bとの間における電気的な導通を検知して泡を検知する。外槽2に生じた泡が、第1電極55aおよび第2電極55bを超える高さまでせり上がると、第1電極55aと第2電極55bとの間が導通するため、過剰な泡の発生が検知される。なお、
図3および
図4において、泡センサ55は、2個の電極で構成されているが、3個以上の電極で構成されてもよい。
【0080】
第1電極55aおよび第2電極55bは、送風ダクト27において、オーバーフロー水位(L2)よりも上方、且つ、送風機41および乾燥風用ヒータ42よりも下方に設けられることが好ましい。このような配置であると、送風ダクト27を通じてせり上がった泡が送風機41、乾燥風用ヒータ42等の電気部品に接触する危険性を事前に検知できる。
【0081】
また、本実施形態に係る洗濯機100は、不図示の消泡用ヒータ制御装置(制御手段)を備えている。消泡用ヒータ制御装置は、泡センサ55による検知結果に応じて消泡用ヒータ50の作動および停止を制御する。消泡用ヒータ制御装置は、泡センサ55によって泡が検知されたとき、消泡用ヒータ50を停止する。一方、泡センサ55によって泡が検知されないとき、運転工程に応じて、消泡用ヒータ50を作動または停止させる。
【0082】
消泡用ヒータ制御装置によると、外槽2における泡の発生状況に応じて、消泡用ヒータ50の作動および停止を制御することができる。そのため、消泡用ヒータ50による消泡工程を無駄なエネルギを抑制して効率的に行うことができる。また、泡センサ55による検知結果に基づくため、外槽2に生じた過剰な泡が原因で電気部品が故障するのを確実に防止することができる。
【0083】
消泡用ヒータ50としては、PTC(Positive Temperature Coefficient:正温度係数)ヒータを用いることが好ましい。PTCヒータは、通電によって発熱する発熱部を有している。発熱部は、例えば、チタン酸バリウム等の半導体と、粒子状の導電材が混合されて形成される。発熱部は、所定のキュリー温度に達したとき、電気抵抗が急激に増大する特性を示す。
【0084】
温水用ヒータとしては、一般的にシーズヒータが用いられている。しかし、シーズヒータは、仕様にもよるが、500℃を超える程度の高温になる。シーズヒータは、通常、外槽2の下部であって、洗濯水に浸漬される箇所に設けられる。このようなシーズヒータを気相中で作動させると、過度の発熱を生じる。そのため、シーズヒータを消泡用ヒータとして用いると、加熱時の安全性が懸念される。
【0085】
これに対し、PTCヒータによると、キュリー温度の調整によって、発熱部が所定の温度に達したときに発熱が停止するように自己制御させることができる。PTCヒータであれば、気相中で作動させる場合であっても、過度な発熱を自己制御によって抑制できる。そのため、消泡用ヒータ50や周囲の部品の熱変形や焼損を回避して、加熱時の安全性を確保できる。
【0086】
消泡用ヒータ50は、水没可能な防水仕様であることが好ましい。防水仕様としては、例えば、発熱部を筐体内に収容してシーリング等で密封した構造や、発熱部をラミネートフィルム等のフィルム材で密封した構造が挙げられる。防水仕様であると、外槽2に溜められた洗濯水の水面よりも上方および下方のいずれで用いる場合であっても、洗濯水との接触による消泡用ヒータ50の故障を回避できる。
【0087】
消泡用ヒータ50は、外槽2の内側に複数配置されることが好ましい。複数の消泡用ヒータ50は、外槽2の内側において、互いに異なる高さに配置されてもよいし、互いに同等の高さに配置されてもよい。また、複数の消泡用ヒータ50は、互いに異なる温度に制御されてもよいし、互いに同等の温度に制御されてもよい。
【0088】
複数の消泡用ヒータ50を設けると、外槽2に生じた過剰な泡を広範囲にわたって加熱することができる。そのため、消泡工程を迅速且つ確実に行うことができる。複数の消泡用ヒータ50は、より広範囲に泡を加熱する観点からは、洗濯機100の平面視における外槽2の中心を挟んで、対向した位置に分散的に配置されることが好ましい。
【0089】
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、消泡用ヒータの形態例を示す図である。
図6A、
図6Bおよび
図6Cには、伝熱板52を備えた消泡用ヒータ50を示す。
図6A、
図6Bおよび
図6Cに示すように、外槽2の内側の泡を消泡するための消泡用ヒータ(加熱手段)50としては、発熱部51と伝熱板52を備えた形態を用いることもできる。
【0090】
伝熱板52は、発熱する部位である発熱部51と熱的に接続されている。伝熱板52は、泡を直接的に加熱するために用いられる。伝熱板52は、発熱部51に対して、機械的接合、溶接、ろう付け等の適宜の方法で接合できる。伝熱板52は、矩形平板状、多角形平板状、円形平板状、楕円形平板状等の適宜の形状、面積、厚さに設けることができる。
【0091】
伝熱板52には、フィン53が形成されてもよい。フィン53は、伝熱板52に対して、溶接、ろう付け等の適宜の方法で接合されてもよいし、伝熱板52と一体的に形成されてもよい。フィン53は、適宜の形状、幅、高さ、ピッチに設けることができる。
【0092】
伝熱板52やフィン53の材料としては、洗濯水によって腐食し難く、熱伝導率が高い材料が好ましい。伝熱板52やフィン53の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。
【0093】
伝熱板52は、泡に対して直接的に接触する伝熱面の伝熱面積が、消泡用ヒータ50よりも大きく設けられることが好ましい。伝熱板52の最大の投影面積は、消泡用ヒータ50の最大の投影面積よりも大きく設けられることが好ましい。
図6A、
図6Bおよび
図6Cにおいては、伝熱板52の投影面積は、上下方向を投影方向としたとき最大である。
【0094】
消泡用ヒータ50に伝熱板52やフィン53を設けると、より広範囲の泡を直接的に加熱することができる。特に、伝熱板52の最大の投影面積が、消泡用ヒータ50の最大の投影面積よりも大きいと、消泡用ヒータ50の設置数やコストを抑制しつつ、効率的な消泡工程を行うことができる。
【0095】
図6Aに示す消泡用ヒータ50Aは、発熱部51と、発熱部51の一面に対して熱的に接続された伝熱板52と、を備えている。
図6Aに示す形態によると、簡易な構造で泡を直接的に加熱することができる。
【0096】
図6Bに示す消泡用ヒータ50Bは、発熱部51と、発熱部51の一面に対して熱的に接続された伝熱板52と、伝熱板52に設けられたフィン53と、を備えている。
図6Bに示す形態によると、フィン53によって伝熱面積が拡大されるため、泡を迅速に加熱することができる。また、フィン53同士の間に、洗濯水や泡が捕捉され易いため、洗濯水の対流や泡の移動を抑制して効率的な消泡工程を行うことができる。
【0097】
図6Cに示す消泡用ヒータ50Cは、発熱部51と、発熱部51の両面に対して熱的に接続された伝熱板52と、伝熱板52に設けられたフィン53と、を備えている。
図6Cに示す形態によると、発熱部51の両面において伝熱面積が拡大されるため、泡を迅速に加熱することができる。特に、消泡用ヒータと温水用ヒータとの兼用とする場合に、外槽2に溜められた洗濯水と水面付近の泡とを効率的に加熱できる。
【0098】
図7は、本発明の実施形態に係る洗濯機の運転例を示すフローチャートである。
図7に示すように、消泡用ヒータ50は、ドラム3内で洗濯物を洗浄する洗浄工程において、排水工程前に作動させることができる。この運転例において、消泡用ヒータ50は、外槽2の内側のいずれの高さに配置されていてもよい。
【0099】
はじめに、洗濯機100に対して給水を行い、洗剤容器を経由した水を外槽2に導入し、ドラム3で攪拌する(ステップS10)。洗剤容器に投入された洗剤類は、給水された水に同伴し、ドラム3や循環ポンプ21による攪拌によって溶解される。洗剤類が溶解した水は、規定水位(L1)まで溜められて、洗濯物に浸透させられる。
【0100】
続いて、洗浄工程を開始し、ドラム3の回転によって洗濯物を洗浄する(ステップS11)。洗濯物の洗浄中には、ドラム3による攪拌によって、外槽2の内側に泡が生成する。また、泡による洗浄作用を積極的に利用する場合、泡生成手段によって、外槽2の内側に泡が生成する。外槽2の内側に過剰な泡が生じると、規定水位(L1)よりも上方にせり上がる。
【0101】
続いて、洗浄工程中に、外槽2の内側に生じた泡の量が既定の第1閾値を超えているか否かを検知する(ステップS12)。外槽2の内側に生じた泡の量は、既定の高さへの泡の到達として、泡センサ55によって間接的に検知できる。
【0102】
検知の結果、外槽2の内側に生じた泡の量が第1閾値以下であるとき(ステップS12;No)、ステップS11に戻る。外槽2の内側の泡が過剰ではないため、ドラム3の回転を伴う洗浄や、泡生成手段による泡の生成を継続できる。
【0103】
一方、検知の結果、外槽2の内側に生じた泡の量が第1閾値を超えているとき(ステップS12;YES)、消泡用ヒータ50を作動させる(ステップS13)。外槽2の内側の泡が過剰であるため、消泡用ヒータ50による加熱で泡を破泡させる消泡工程を開始する。消泡用ヒータ50による泡の加熱は、消泡工程中に、連続的に行われてもよいし、間欠的に行われてもよい。
【0104】
続いて、消泡工程中に、ドラム3を回転させる制御を実行する(ステップS14)。ステップS14において、ドラム3の回転速度は、洗濯物の洗浄時や脱水時と比較して、低速とすることが好ましい。ドラム3の回転が低速であると、ドラム3による攪拌に起因する洗濯水の発泡が抑制される。
【0105】
消泡工程中にドラム3を回転させると、ドラム3の周壁付近の泡を、ドラム3の回転に同伴させて移動させることができる。ドラム3の周壁付近の泡は、ドラム3の回転によって、消泡用ヒータ50に近い洗濯水の水面付近に集められる。或いは、消泡用ヒータ50の近くに移送される。外槽2の内側において、泡の偏りが低減し、消泡用ヒータ50に対して泡が直接的に接触し易くなるため、効率的な消泡工程が可能になる。
【0106】
続いて、消泡工程中に、消泡用ヒータ50の停止条件に達したか否かを判定する(ステップS15)。停止条件としては、外槽2の内側に生じた泡の量が既定の第2閾値未満であるか否かや、消泡工程の実施時間が既定の時間に達したか否かを判定できる。第1閾値と第2閾値とは、互いに異なっていてもよいし、互いに同一であってもよい。
【0107】
判定の結果、消泡用ヒータ50の停止条件に達していないとき(ステップS15;No)、ステップS14に戻る。外槽2の内側に生じた泡の量が第2閾値を超えているときや、消泡工程の実施時間が既定の時間に達していないとき、外槽2の内側に過剰な泡が残存しているため、消泡用ヒータ50による泡の加熱を継続する。
【0108】
一方、判定の結果、消泡用ヒータ50の停止条件に達しているとき(ステップS15;YES)、消泡用ヒータ50を停止させる(ステップS16)。外槽2の内側に生じた泡の量が第2閾値未満であるときや、消泡工程の実施時間が既定の時間に達しているとき、消泡用ヒータ50による泡の加熱を終了する。
【0109】
続いて、外槽2に溜められた洗濯水の排水を行う(ステップS17)。次いで、ドラム3を回転させて洗濯物を中間的に脱水する(ステップS18)。次いで、給水された水を外槽2に導入して洗濯物の濯ぎを行い、ドラム3を回転させて洗濯物を最終的に脱水する(ステップS19)。その後、洗濯工程の運転を終了する。
【0110】
このような洗濯工程を行うと、洗濯物の洗浄中に外槽2に生じた過剰な泡を、消泡用ヒータ50によって強制的に消泡させることができる。消泡用ヒータ50による加熱によって、泡に含まれる水分が蒸発し、泡の見かけ体積が急速に減少していく。消泡工程を排水工程前に行うため、洗濯水の水面上等に蓄積した泡を迅速に消泡させることができる。消泡用ヒータ50と泡生成手段を制御することによって、適切な泡量を保ちつつ、泡による摩擦低減作用や油分吸着作用を積極的に利用しながら洗浄工程を行うことができる。
【0111】
なお、
図7では、ステップS14において、消泡工程中にドラム3を回転させる制御を実行しているが、ステップS14は、消泡用ヒータ50の配置等に応じて、実行を省略することもできる。第1閾値や第2閾値としては、泡の量、泡の高さ、泡の抵抗率等に相当する適宜の指標を用いることができる。また、
図7に示す洗濯工程において、泡生成手段による泡の生成は、必ずしも行われなくてもよい。
【0112】
図8は、本発明の実施形態に係る洗濯機の運転例を示すフローチャートである。
図8に示すように、消泡用ヒータ50は、ドラム3内で洗濯物を洗浄する洗浄工程において、排水工程後に作動させることもできる。この運転例において、消泡用ヒータ50は、外槽2の内側のいずれの高さに配置されていてもよい。
【0113】
はじめに、洗濯機100に対して給水を行い、洗剤容器を経由した水を外槽2に導入し、ドラム3で攪拌する(ステップS20)。洗剤容器に投入された洗剤類は、給水された水に同伴し、ドラム3や循環ポンプ21による攪拌によって溶解される。洗剤類が溶解した水は、規定水位(L1)まで溜められて、洗濯物に浸透させられる。
【0114】
続いて、洗浄工程を開始し、ドラム3の回転によって洗濯物を洗浄する(ステップS21)。洗濯物の洗浄中には、ドラム3による攪拌によって、外槽2の内側に泡が生成する。また、泡による洗浄作用を積極的に利用する場合、泡生成手段によって、外槽2の内側に泡が生成する。外槽2の内側に過剰な泡が生じると、規定水位(L1)よりも上方にせり上がる。
【0115】
続いて、外槽2に溜められた洗濯水の排水を行う(ステップS22)。外槽2の内側に生じた泡の一部は、洗濯水に同伴して外槽2から排出される。しかし、過剰な泡が生じていると、外槽2の内側に多量の泡が残存した状態になる。
【0116】
続いて、排水工程後に、外槽2の水位が既定の第3閾値以下であるか否かを検知する(ステップS23)。外槽2の内側に生じた泡の量は、排水工程後であれば、水位の変化として、一般的な水位センサによって間接的に検知できる。
【0117】
水位センサとしては、チューブ内の空気の圧力を検知する既存のセンサを用いることができる。外槽2の内部の圧力によってチューブ内の空気が押し退けられると、空気の圧力の変化が検知される。そのため、洗濯水の水位だけでなく、圧力変動を生じる泡の量を知ることができる。排水工程後であれば、外槽2の下部に溜まっている泡の量が、水位として検知される。
【0118】
検知の結果、外槽2の水位が既定の第3閾値以下であるとき(ステップS23;No)、ステップS22に戻る。外槽2の内側の泡が過剰ではないため、ドラム3の回転を伴う洗浄や、泡生成手段による泡の生成を継続できる。
【0119】
一方、検知の結果、外槽2の水位が第3閾値を超えているとき(ステップS23;YES)、消泡用ヒータ50を作動させる(ステップS24)。外槽2の内側の泡が過剰であるため、消泡用ヒータ50による消泡工程を開始する。消泡用ヒータ50による泡の加熱は、消泡工程中に、連続的に行われてもよいし、間欠的に行われてもよい。
【0120】
続いて、消泡工程中に、消泡用ヒータ50の停止条件に達したか否かを判定する(ステップS25)。停止条件としては、外槽2の内側に生じた泡の量が既定の第4閾値未満であるか否かや、消泡工程の実施時間が既定の時間に達したか否かを判定できる。第3閾値と第4閾値とは、互いに異なっていてもよいし、互いに同一であってもよい。
【0121】
判定の結果、消泡用ヒータ50の停止条件に達していないとき(ステップS25;No)、ステップS24に戻る。外槽2の内側に生じた泡の量が第4閾値を超えているときや、消泡工程の実施時間が既定の時間に達していないとき、外槽2の内側に過剰な泡が残存しているため、消泡用ヒータ50による泡の加熱を継続する。
【0122】
一方、判定の結果、消泡用ヒータ50の停止条件に達しているとき(ステップS25;YES)、消泡用ヒータ50を停止させる(ステップS26)。外槽2の内側に生じた泡の量が第4閾値未満であるときや、消泡工程の実施時間が既定の時間に達しているとき、消泡用ヒータ50による泡の加熱を終了する。
【0123】
続いて、ドラム3を回転させて洗濯物を中間的に脱水する(ステップS27)。次いで、給水された水を外槽2に導入して洗濯物の濯ぎを行い、ドラム3を回転させて洗濯物を最終的に脱水する(ステップS28)。その後、洗濯工程の運転を終了する。
【0124】
このような洗濯工程を行うと、洗濯物の洗浄中に外槽2に生じた過剰な泡を、消泡用ヒータ50によって強制的に消泡させることができる。消泡用ヒータ50による加熱によって、泡に含まれる水分が蒸発し、泡の見かけ体積が急速に減少していく。消泡工程を排水工程後に行うため、洗濯水が排水された後に外槽2に残存している泡を迅速に消泡させることができる。洗浄工程後の濯ぎ工程や脱水工程を、排水工程の延長や追加的な給水を伴うことなく、速やかに開始できる。
【0125】
なお、
図8では、排水工程後に消泡用ヒータ50を作動させているが、
図7に示すような排水工程前の消泡工程と、
図8に示すような排水工程後の消泡工程とを、組み合わせて実行してもよい。また、
図8に示す洗濯工程において、泡生成手段による泡の生成は行われなくてもよい。
【0126】
図9Aは、消泡用ヒータの消費電力-温度特性を示す図である。
図9Bは、作動時の消泡用ヒータの消費電力と温度との関係を示す図である。
図9Aおよび
図9Bには、消泡用ヒータ50として用いられるPTCヒータの挙動を示している。
図9Aおよび
図9Bに示すように、PTCヒータは、作動時の発熱部の状態に応じて、消費電力-温度特性が変動する性質を有している。所定の温度に達したときに発熱が停止するように自己制御されるため、発熱部に接触した被加熱物の温度や熱容量等の影響を受ける。
【0127】
図9Aに示すように、PTCヒータの温度は、通電時間が経過すると、所定のキュリー温度に向けて上昇していく。一方、PTCヒータの消費電力は、通電時間が経過すると、減少していく。PTCヒータの温度および消費電力は、キュリー温度に近づくほど、変化し難くなり定常状態になる。
【0128】
一方、
図9Bに示すように、PTCヒータの作動時には、PTCヒータの温度が、本来の特性と比較して、通電時間の経過に対して上昇し難くなる。また、PTCヒータの消費電力が、本来の特性と比較して、通電時間の経過に対して下降し難くなる。PTCヒータの作動時には、被加熱物が加熱されているため、本来の消費電力-温度特性に対して変化を生じる。
【0129】
よって、消泡用ヒータ50としてPTCヒータを用いる場合、PTCヒータの消費電力や、電流および電圧に基づいて、被加熱物である泡の存在や泡の量を、間接的に検知することができる。このようなPTCヒータを用いると、消泡工程時の泡の状態に応じた適切な制御を行うことができる。
【0130】
本実施形態に係る洗濯機100は、消泡用ヒータ50としてPTCヒータを用いる場合、消泡用ヒータ50の消費電力に応じて消泡用ヒータ50の作動および停止を制御する消泡用ヒータ制御装置(制御手段)と、消泡用ヒータ50に通電される電流を検知する電流計と、消泡用ヒータ50に印加される電圧を検知する電圧計と、を備えることができる。
【0131】
消泡用ヒータ制御装置(制御手段)は、消泡用ヒータ50の消費電力が、所定の閾値(Wt)を超えている場合、消泡用ヒータ50への通電を継続する制御を行う。一方、所定の閾値(Wt)以下である場合、消泡用ヒータ50への通電を停止する制御を行う。このようなPTCヒータを用いる場合、泡センサ55を利用しなくてもよいし、泡センサ55を併用してもよい。
【0132】
図10は、本発明の実施形態に係る洗濯機の運転例を示すフローチャートである。
図10に示すように、消泡用ヒータ50は、PTCヒータを用いる場合、消費電力に応じて停止時期を制御することもできる。この運転例において、消泡用ヒータ50は、外槽2の内側のいずれの高さに配置されていてもよい。
【0133】
はじめに、洗濯機100に対して給水を行い、洗剤容器を経由した水を外槽2に導入し、ドラム3で攪拌する(ステップS30)。洗剤容器に投入された洗剤類は、給水された水に同伴し、ドラム3や循環ポンプ21による攪拌によって溶解される。洗剤類が溶解した水は、規定水位(L1)まで溜められて、洗濯物に浸透させられる。
【0134】
続いて、洗浄工程を開始し、ドラム3の回転によって洗濯物を洗浄する(ステップS31)。洗濯物の洗浄中には、ドラム3による攪拌によって、外槽2の内側に泡が生成する。また、泡による洗浄作用を積極的に利用する場合、泡生成手段によって、外槽2の内側に泡が生成する。外槽2の内側に過剰な泡が生じると、規定水位(L1)よりも上方にせり上がる。
【0135】
続いて、外槽2に溜められた洗濯水の排水を行う(ステップS32)。外槽2の内側に生じた泡の一部は、洗濯水に同伴して外槽2から排出される。しかし、過剰な泡が生じていると、外槽2の内側に多量の泡が残存した状態になる。
【0136】
続いて、排水工程後に、外槽2の水位が既定の第5閾値以下であるか否かを検知する(ステップS33)。外槽2の内側に生じた泡の量は、排水工程後であれば、水位の変化として、一般的な水位センサによって間接的に検知できる。
【0137】
検知の結果、外槽2の水位が既定の第5閾値を超えていないとき(ステップS33;No)、ステップS32に戻る。外槽2の内側の泡が過剰ではないため、ドラム3の回転を伴う洗浄や、泡生成手段による泡の生成を継続できる。
【0138】
一方、検知の結果、外槽2の水位が第5閾値以下であるとき(ステップS33;YES)、消泡用ヒータ50を作動させる(ステップS34)。外槽2の内側の泡が過剰であるため、消泡用ヒータ50による消泡工程を開始する。消泡用ヒータ50による泡の加熱は、消泡工程中に、連続的に行われてもよいし、間欠的に行われてもよい。
【0139】
続いて、消泡工程中に、消泡用ヒータ50の消費電力が既定の第6閾値未満であるか否かを判定する(ステップS35)。消泡用ヒータ50の消費電力は、電流値や電圧値が既知である場合、電圧や電流の測定に基づいて、間接的に求めることができる。
【0140】
判定の結果、消泡用ヒータ50の消費電力が第6閾値以上であるとき(ステップS35;No)、ステップS34に戻る。外槽2の内側に消泡用ヒータ50の被加熱物である過剰な泡が残存しているため、消泡用ヒータ50による泡の加熱を継続する。
【0141】
一方、判定の結果、消泡用ヒータ50の消費電力が第6閾値未満であるとき(ステップS35;YES)、消泡用ヒータ50を停止させる(ステップS36)。外槽2の内側に消泡用ヒータ50の被加熱物である過剰な泡が残存していないため、消泡用ヒータ50による泡の加熱を終了する。
【0142】
続いて、ドラム3を回転させて洗濯物を中間的に脱水する(ステップS37)。次いで、給水された水を外槽2に導入して洗濯物の濯ぎを行い、ドラム3を回転させて洗濯物を最終的に脱水する(ステップS38)。その後、洗濯工程の運転を終了する。
【0143】
このような洗濯工程を行うと、洗濯物の洗浄中に外槽2に生じた過剰な泡を、消泡用ヒータ50によって強制的に消泡させることができる。消泡用ヒータ50による加熱によって、泡に含まれる水分が蒸発し、泡の見かけ体積が急速に減少していく。消泡工程を消泡用ヒータ50の消費電力に基づいて制御するため、消泡工程時の泡の状態に即した適切な制御を行うことができる。
【0144】
なお、
図10では、外槽2の水位に基づいて消泡用ヒータ50を作動させているが、外槽2の内側に生じた泡の量に基づいて消泡用ヒータ50を作動させてもよい。消泡用ヒータ50の消費電力に基づいて制御する場合、消泡用ヒータ50は、洗濯水と接触しない状態であることが好ましい。
【0145】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、技術的範囲を逸脱しない限り、様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成に他の構成を加えたりすることが可能である。また、或る実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、構成の削除、構成の置換をすることも可能である。
【0146】
例えば、前記の洗濯機100は、ドラム式洗濯乾燥機とされているが、泡を消泡するための加熱手段を備えた洗濯機は、縦型洗濯機、縦型洗濯乾燥機等に適用することもできる。ドラム式洗濯乾燥機において、ドラムが傾斜していない横向きとされてもよい。泡を消泡するための加熱手段を備えた洗濯機は、溢水経路を備えていてもよいし、溢水経路を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0147】
100 洗濯機
1 箱体
2 外槽
3 ドラム(内槽)
4 モータ
5 サスペンション
6 操作パネル
7 洗剤投入部
8 乾燥フィルタ
9 ドア
20 内部排水配管
21 循環ポンプ
22 循環配管
23 排水弁
24 外部排水配管
25 溢水配管
27 送風ダクト
28 吸気ダクト
29 吹出配管
30 吹出ノズル
31 リントフィルタ
32 フィルタケース
33 連結継手
40 送風ユニット
41 送風機
42 乾燥風用ヒータ
50 消泡用ヒータ(加熱手段)
51 発熱部
52 伝熱板
53 フィン
54 泡生成ユニット(泡生成手段)
55 泡センサ(泡検知手段)
61 制御基板