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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138141
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】増幅回路及びフィールド機器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20230922BHJP
   H03G 3/20 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H03F3/45 109
H03F3/45 210
H03G3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044680
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】森山 徹也
【テーマコード(参考)】
5J100
5J500
【Fターム(参考)】
5J100JA01
5J100QA01
5J500AA01
5J500AA12
5J500AC26
5J500AF10
5J500AF12
5J500AF19
5J500AH10
5J500AH25
5J500AH26
5J500AK07
5J500AK08
5J500AK09
5J500AT01
5J500AT03
5J500DN01
5J500DP01
(57)【要約】
【課題】入力信号と出力信号との間の位相差を簡便に低減できる増幅回路及びフィールド機器を提供する。
【解決手段】増幅回路1は、信号Vin+及びVin-の入力端子と、入力端子に入力された信号を増幅する増幅部と、増幅部で増幅された信号を出力する出力端子と、制御信号CNTRLが入力される制御端子とを備える。増幅部は、制御信号に基づいて抵抗値が可変に構成される抵抗回路と、制御信号に基づいて流す電流の大きさが可変に構成される電流回路とを有し、抵抗回路の抵抗値と電流回路が流す電流の大きさとに基づいて定まる利得で入力端子に入力された信号を増幅する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号の入力端子と、
前記入力端子に入力された信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部で増幅された信号を出力する出力端子と、
制御信号が入力される制御端子と
を備え、
前記増幅部は、
前記制御信号に基づいて抵抗値が可変に構成される抵抗回路と、前記制御信号に基づいて流す電流の大きさが可変に構成される電流回路とを有し、
前記抵抗回路の抵抗値と前記電流回路が流す電流の大きさとに基づいて定まる利得で前記入力端子に入力された信号を増幅する、増幅回路。
【請求項2】
前記制御信号の電圧が変化した場合に、前記抵抗回路の抵抗値が小さくなり、かつ、前記電流回路が流す電流が大きくなるように構成される、請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記抵抗回路又は前記電流回路の少なくとも一方は、ゲートに入力される前記制御信号によってソース-ドレイン間の抵抗値が可変であるMOSFETを含んで構成される、請求項1又は2に記載の増幅回路。
【請求項4】
測定結果に基づく信号を出力するセンサと、前記センサの測定結果に基づく信号を励振信号として出力する励振回路とを備え、
前記励振回路は、請求項1から3までのいずれか一項に記載の増幅回路を有する、フィールド機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、増幅回路及びフィールド機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、OTA(Operational Transconductance Amplifier)のような増幅回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7990218号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
OTAのような増幅回路において、入力信号と出力信号との間の位相差の低減が求められる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、入力信号と出力信号との間の位相差が簡便に低減される増幅回路及びフィールド機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る増幅回路は、信号の入力端子と、前記入力端子に入力された信号を増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅された信号を出力する出力端子と、制御信号が入力される制御端子とを備える。前記増幅部は、前記制御信号に基づいて抵抗値が可変に構成される抵抗回路と、前記制御信号に基づいて流す電流の大きさが可変に構成される電流回路とを有する。前記増幅部は、前記抵抗回路の抵抗値と前記電流回路が流す電流の大きさとに基づいて定まる利得で前記入力端子に入力された信号を増幅する。このようにすることで、利得の調整範囲が広くなる。その結果、入力信号と出力信号との間の位相差が簡便に低減される。
【0007】
一実施形態に係る増幅回路は、前記制御信号の電圧が変化した場合に、前記抵抗回路の抵抗値が小さくなり、かつ、前記電流回路が流す電流が大きくなるように構成されてよい。このようにすることで、利得の調整範囲が広くなる。その結果、入力信号と出力信号との間の位相差が簡便に低減される。
【0008】
一実施形態に係る増幅回路において、前記抵抗回路又は前記電流回路の少なくとも一方は、ゲートに入力される前記制御信号によってソース-ドレイン間の抵抗値が可変に構成させるMOSFETを含んで構成されてよい。このようにすることで、利得の調整範囲が広くなる。その結果、入力信号と出力信号との間の位相差が簡便に低減される。
【0009】
幾つかの実施形態に係るフィールド機器は、測定結果に基づく信号を出力するセンサと、前記センサの測定結果に基づく信号を励振信号として出力する励振回路とを備える。前記励振回路は、前記増幅回路を有する。このようにすることで、利得の調整範囲が広くなる。その結果、入力信号と出力信号との間の位相差が簡便に低減される。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る増幅回路及びフィールド機器によれば、入力信号と出力信号との間の位相差が簡便に低減され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】比較例に係る増幅回路の回路図である。
図2】一実施形態に係る増幅回路の構成例を示す回路図である。
図3】増幅回路のゲインの周波数特性の一例を示すグラフである。
図4】増幅回路の位相ずれの周波数特性の一例を示すグラフである。
図5】電源電圧と接地点とが入れ替わった増幅回路の構成例を示す回路図である。
図6】電流源がMOSFETによって実現される増幅回路の構成例を示す回路図である。
図7】増幅回路を含む励振回路を備えるフィールド機器の構成例を示すブロック図である。
図8】2つの励振回路を備えるフィールド機器の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に係る実施形態が、比較例と対比しながら説明される。
【0013】
(比較例)
図1に示されるように、比較例1に係る増幅回路9は、N型のMOSFET(M91、M92及びM95)と、P型のMOSFET(M93及びM94)と、抵抗R91と、電流源I91及びI92とを備える。
【0014】
MOSFETは、ゲートとソースとドレインとを有する。MOSFETを表す記号において、二重線の部分がゲートを表す。矢印がついている端子がソースを表す。ゲートを挟んでソースの反対側に位置する矢印がついていない端子がドレインを表す。ソースを表す矢印がゲートからソースに向いている場合、そのMOSFETの記号は、N型のMOSFETを表す。2つのN型のMOSFET(M91及びM92)は、同一の特性を有する。ソースを表す矢印がソースからゲートに向いている場合、そのMOSFETの記号は、P型のMOSFETを表す。2つのP型のMOSFET(M93及びM94)は、同一の特性を有する。2つの電流源I91及びI92は、それぞれIbで表される定電流を流す。
【0015】
N型のMOSFET(M91)のゲートは、Vin+で表される電圧信号が入力される端子に接続される。N型のMOSFET(M92)のゲートは、Vin-で表される電圧信号が入力される端子に接続される。N型のMOSFET(M91及びM92)のドレインは、P型のMOSFET(M93及びM94)のドレインにそれぞれ接続される。N型のMOSFET(M91及びM92)のソースは、電流源I91及びI92に接続される。N型のMOSFET(M91)のソースは、抵抗R91の一端、及び、N型のMOSFET(M95)のドレインに接続される。N型のMOSFET(M92)のソースは、抵抗R91の他端、及び、N型のMOSFET(M95)のソースに接続される。つまり、N型のMOSFET(M91)のソースとN型のMOSFET(M92)のソースとは、抵抗R91及びN型のMOSFET(M95)を介して接続される。N型のMOSFETのMOSFET(M95)のゲートは、CNTRLで表される電圧信号が入力される端子に接続される。
【0016】
P型のMOSFET(M93及びM94)のソースは、vddで表される電源電圧が印加されている配線に接続される。つまり、P型のMOSFET(M93及びM94)のソースに、vddで表される電源電圧が印加される。P型のMOSFET(M93及びM94)のドレインは、2つのN型のMOSFET(M91及びM92)のドレインにそれぞれ接続される。2つのP型のMOSFET(M93及びM94)は、カレントミラー回路を構成している。
【0017】
N型のMOSFET(M92)のドレインとP型のMOSFET(M94)のドレインとの間に、OUTと表される端子が接続される。
【0018】
増幅回路9は、MOSFET(M91)のゲートに入力される電圧信号(Vin+)と、MOSFET(M92)のゲートに入力される電圧信号(Vin-)とに基づく電流信号(Iout)をOUTと表される端子から出力する。以下、増幅回路9の動作が定性的に説明される。
【0019】
N型のMOSFET(M91及びM92)のドレイン電流の大きさは、ゲート-ソース間の電圧によって定まる。また、N型のMOSFET(M91及びM92)のドレイン電流の大きさは、電流源I91及びI92を通って接地点GNDに流れる定電流Ibと、R91及びN型のMOSFET(M95)を通って流れる電流との和になる。N型のMOSFET(M91)のソースの電位と、N型のMOSFET(M92)のソースの電位とが同じである場合、R91及びN型のMOSFET(M95)を流れる電流の大きさがゼロである。したがって、N型のMOSFET(M91及びM92)のドレイン電流の大きさは、電流源I91及びI92が流す定電流Ibになる。
【0020】
ここで、Vin+で表される正の電圧がゲートに入力されることによって、N型のMOSFET(M91)のドレイン電流が定電流Ibよりも増加すると仮定する。ドレイン電流の増加分は、R91及びN型のMOSFET(M95)を通って、N型のMOSFET(M92)のソースの方に流れる。そうすると、N型のMOSFET(M92)のソースの方に流れてきた電流の増加分だけ、N型のMOSFET(M92)のドレイン電流が減少する。N型のMOSFET(M92)のドレイン電流の減少分は、OUTと表される端子に流れる。
【0021】
また、P型のMOSFET(M93)のドレイン電流、及び、P型のMOSFET(M93)とともにカレントミラー回路を構成するP型のMOSFET(M94)のドレイン電流は、N型のMOSFET(M91)のドレイン電流の増加分だけ増加する。P型のMOSFET(M94)のドレイン電流の増加分は、OUTと表される端子に流れる。
【0022】
以上のことから、OUTと表される端子に、N型のMOSFET(M91)のドレイン電流の増加分としてR91及びN型のMOSFET(M95)を通って流れてきた電流と、N型のMOSFET(M91)のドレイン電流の増加分に等しい電流としてP型のMOSFET(M94)のドレインから流れてきた電流とが流れ込む。つまり、OUTと表される端子への出力電流Ioutの大きさは、N型のMOSFET(M91)のドレイン電流の増加分の2倍になる。出力電流Ioutの大きさは、Vin+の大きさによって変化する。また、N型のMOSFET(M92)のゲートに印加されるVin-の大きさが変化した場合も、N型のMOSFET(M92)のドレイン電流の変化分が出力電流Ioutに反映される。したがって、増幅回路9は、Vin+及びVin-として印加される電圧に応じた出力電流Ioutを出力する。
【0023】
ここで、N型のMOSFET(M91)のソースとN型のMOSFET(M92)のソースとの間に流れる電流の大きさは、Vin+及びVin-の大きさとR91の抵抗値とN型のMOSFET(M95)のソース-ドレイン間の抵抗値(オン抵抗値)との並列抵抗値とによって定まる。R91の抵抗値とN型のMOSFET(M95)のソース-ドレイン間の抵抗値(オン抵抗値)との並列抵抗値が小さいほど、Vin+及びVin-の変化に対する出力電流Ioutの変化率が大きくなる。つまり、並列抵抗値が小さいほど、入力される電圧信号に対する出力電流信号の増幅率が大きくなる。
【0024】
N型のMOSFET(M95)のソース-ドレイン間の抵抗値(オン抵抗値)は、ゲートに接続されるCNTRLと表される端子に印加される電圧に応じて定まる。したがって、増幅回路9において、制御信号CNTRLとして印加する電圧を調整することによって、入力される電圧信号に対する出力電流信号の増幅率が調整される。
【0025】
以上述べてきた比較例に係る増幅回路9において、配線、又は、MOSFET(M91、M92、M93若しくはM94)の寄生容量に由来して、入力電圧信号(Vin+及びVin-)と出力電流信号Ioutとの間に意図しない位相差が生じることがある。増幅回路9を2線式フィールド機器又はIoT(Internet of Things)センサ等の極端な低消費電力を要求される機器に適用した場合、入力信号と出力信号との間の意図しない位相差が製品性能に許容しがたい影響を及ぼすことがある。
【0026】
入力信号と出力信号との間の位相差は、並列抵抗値を大きくすることによって小さくされ得る。しかし、並列抵抗値を大きくするために抵抗R91が大型化する。抵抗素子の大型化は、コストの増大、又は、増幅回路9の集積化の妨げになり得る。
【0027】
増幅回路9を集積化する場合、集積回路上で使用可能なMOSFET素子の特性が設計され得る。しかし、実装面積、又は、各種特性の許容公差若しくは素子の歩留まり等を考慮すると、設計自由度が小さくなり得る。設計自由度が小さいことによって増幅回路9の集積化が難しくなり得る。
【0028】
近年のマイコン等のデジタル回路は低消費電力化要求から低電圧で動作する傾向が強まっている。そのため、組み合わせるアナログ回路もデジタル回路と同一の低電圧電源で動作することが望ましい。しかし、低電源電圧かつ低消費電流で動作する回路で、複雑な回路補償を施すことは難しい。
【0029】
以上述べてきたように、比較例に係る構成において、入力信号と出力信号との間に意図しない位相差が生じることがあるという課題がある。
【0030】
そこで、本開示は、位相差が簡便に低減される増幅回路及びフィールド機器を説明する。
【0031】
(本開示の一実施形態)
図2に示されるように、一実施形態に係る増幅回路1は、N型のMOSFET(M1、M2及びM5)と、P型のMOSFET(M3及びM4)と、抵抗R1と、電流源I1及びI2とを備える。
【0032】
MOSFETは、ゲートとソースとドレインとを有する。MOSFETを表す記号において、二重線の部分がゲートを表す。矢印がついている端子がソースを表す。ゲートを挟んでソースの反対側に位置する矢印がついていない端子がドレインを表す。ソースを表す矢印がゲートからソースに向いている場合、そのMOSFETの記号は、N型のMOSFETを表す。2つのN型のMOSFET(M1及びM2)は、同一の特性を有する。ソースを表す矢印がソースからゲートに向いている場合、そのMOSFETの記号は、P型のMOSFETを表す。2つのP型のMOSFET(M3及びM4)は、同一の特性を有する。2つの電流源I1及びI2は、それぞれIb’で表される定電流を流す。VIbは、制御信号CNTRLによって制御される可変電流源を抽象化した回路ブロックを表す。
【0033】
N型のMOSFET(M1)のゲートは、Vin+で表される電圧信号が入力される端子に接続される。N型のMOSFET(M2)のゲートは、Vin-で表される電圧信号が入力される端子に接続される。Vin+で表される電圧信号が入力される端子、及び、Vin-で表される電圧信号が入力される端子は、それぞれ入力端子とも称される。N型のMOSFET(M1及びM2)のドレインは、P型のMOSFET(M3及びM4)のドレインにそれぞれ接続される。N型のMOSFET(M1及びM2)のソースは、電流源I1及びI2に接続される。N型のMOSFET(M1)のソースは、抵抗R1の一端、及び、N型のMOSFET(M5)のドレインに接続される。N型のMOSFET(M2)のソースは、抵抗R1の他端、及び、N型のMOSFET(M5)のソースに接続される。つまり、N型のMOSFET(M1)のソースとN型のMOSFET(M2)のソースとは、抵抗R1及びN型のMOSFET(M5)を介して接続される。N型のMOSFET(M1)のソースとN型のMOSFET(M2)のソースとを接続する抵抗R1及びN型のMOSFET(M5)のソース-ドレイン間の抵抗値(オン抵抗値)とを並列で合成した抵抗値は、Rvと表されるとする。抵抗R1とN型のMOSFET(M5)とが並列に接続されている回路は、抵抗回路とも称される。Rvは、抵抗回路の抵抗値を表す。N型のMOSFETのMOSFET(M5)のゲートは、CNTRLで表される電圧信号が入力される端子に接続される。CNTRLで表される電圧信号が入力される端子は、制御端子とも称される。本実施形態に係る増幅回路1において、制御信号CNTRLの電圧が高くなるほど、N型のMOSFET(M5)のソース-ドレイン間の抵抗値(オン抵抗値)が低くなるように構成されるとする。逆に、制御信号CNTRLの電圧が低くなるほど、N型のMOSFET(M5)のソース-ドレイン間の抵抗値(オン抵抗値)が低くなるように構成されてもよい。
【0034】
CNTRLで表される電圧信号が入力される端子は、電流源I1及びI2にも接続される。電流源I1及びI2は、電流回路とも総称される。電流源I1及びI2は、制御信号CNTRLに応じて定電流Ib’の値を変化させる。本実施形態に係る増幅回路1において、制御信号CNTRLの電圧が高くなるほど、電流源I1及びI2が定電流Ib’大きくするように構成されるとする。逆に、制御信号CNTRLの電圧が低くなるほど、電流源I1及びI2が定電流Ib’大きくするように構成されてもよい。
【0035】
P型のMOSFET(M3及びM4)のソースは、vddで表される電源電圧が印加されている配線に接続される。つまり、P型のMOSFET(M3及びM4)のソースに、vddで表される電源電圧が印加される。P型のMOSFET(M3及びM4)のドレインは、2つのN型のMOSFET(M1及びM2)のドレインにそれぞれ接続される。2つのP型のMOSFET(M3及びM4)は、カレントミラー回路を構成している。
【0036】
N型のMOSFET(M2)のドレインとP型のMOSFET(M4)のドレインとの間に、OUTと表される端子が接続される。
【0037】
増幅回路1は、MOSFET(M1)のゲートに入力される電圧信号(Vin+)と、MOSFET(M2)のゲートに入力される電圧信号(Vin-)とに基づく電流信号(Iout)をOUTと表される端子(OUT端子)から出力する。電流信号を出力する端子は、出力端子とも称される。増幅回路1は、入力端子に入力された信号を増幅部で増幅して出力端子から出力する。増幅部は、MOSFET(M1~M5)と、抵抗R1と、電流源I1及びI2とを含む。以下、増幅回路1の動作が説明される。
【0038】
図2に例示した増幅回路1は、OTA(Operational Transconductance Amplifier)の一種である。増幅回路1は、入力電圧Vin+とVin-の差の電圧に利得係数Gmを乗じて算出される電流IoutをOUT端子から出力するように構成される。入力電圧Vin+及びVin-と出力電圧Ioutとの関係は、以下の式(1)で表される。
【数1】
利得係数Gmは、以下の式(2)で表される。
【数2】
【0039】
<利得係数Gmの式(2)の導出過程>
利得係数Gmを表す式(2)は、図2の増幅回路1のパラメータを用いて、以下のように導出される。飽和領域におけるMOSFETのゲート-ソース間電圧Vgsとドレイン電流Idとの関係は、以下の式(3)で表される。式(3)において、WはMOSFETのゲート幅を表す。LはMOSFETのゲート長を表す。μはキャリア移動度を表す。Coxは単位面積当たりのゲート容量を表す。
【数3】
MOSFETのゲート-ソース間電圧Vgsが変化した時のドレイン電流Idの変化係数をGvgsと表す場合、ドレイン電流の変化量∂Idは、以下の式(4)で表される。
【数4】
【0040】
変化係数Gvgsは、以下の式(5)のように表される。
【数5】
式(5)に式(3)を変形して代入して整理すると式(6)のようになる。
【数6】
式(6)によれば、変化係数Gvgsは、MOSFETの素子特性を表す、ゲート幅W、ゲート長L、キャリア移動度μ、及びゲート容量Coxと、ドレイン電流Idとの積の平方根として表される。
【0041】
図2に例示される増幅回路1において、Vin+及びVin-が両方ともゼロである場合に、N型のMOSFET(M1及びM2)のドレイン電流は、電流源I1及びI2が流す定電流Ib’である。また、N型のMOSFET(M1及びM2)の特性は互いに同一であるとする。この場合、N型のMOSFET(M1)の変化係数GvgsM1及びN型のMOSFET(M2)の変化係数GvgsM2は、式(7)のように表される。
【数7】
M1M2は、N型のMOSFET(M1及びM2)それぞれで同一のゲート幅を表す。LM1M2は、N型のMOSFET(M1及びM2)それぞれで同一のゲート長を表す。μM1M2は、N型のMOSFET(M1及びM2)のそれぞれで同一のキャリア移動度を表す。CoxM1M2は、N型のMOSFET(M1及びM2)のそれぞれで同一の単位面積当たりのゲート容量を表す。
【0042】
ここで、図2に例示される増幅回路1において、Vin+とVin-との差分である差動信号∂Vsigを与えると仮定して増幅回路1の応答が計算される。増幅回路1に差動信号∂Vsigを与えるとき、Vin+及びVin-は式(8)のように表されるとする。
【数8】
【0043】
増幅回路1に与えた差動信号∂Vsigと、N型のMOSFET(M1)のソースとN型のMOSFET(M2)のソースとを接続する抵抗R1及びN型のMOSFET(M5)の並列合成抵抗Rvを流れる電流の変化量∂IRとの関係は、式(9)のように表される。
【数9】
∂VgsM1は、N型のMOSFET(M1)のゲート-ソース間電圧Vgsの変化量を表す。∂VgsM2は、N型のMOSFET(M2)のゲート-ソース間電圧Vgsの変化量を表す。
【0044】
ここで、説明を容易にするために、N型のMOSFET(M1及びM2)の特性が同一であることと、Vin+とVin-とが対称性を有することとを前提として、以下の式(10)に示される近似式が成立する。
【数10】
式(9)は、式(10)の近似式を適用することで式(11)のように変形される。
【数11】
そして、式(4)の関係を式(11)に適用すると、∂VgsM1が式(12)のように表される。
【数12】
【0045】
N型のMOSFET(M1及びM2)のゲートに入力信号Vin+及びVin-が入力されることによるGvgsの変化を無視すれば、式(12)から、式(13)のように∂IdM1及び∂IdM2が算出される。
【数13】
【0046】
N型のMOSFET(M1)のドレイン電流の変化分である∂IdM1は、P型のMOSFET(M3)のドレイン電流としても流れる。ここで、P型のMOSFET(M3及びM4)は、上述したように、互いに同一の特性を有し、カレントミラー回路を構成している。したがって、P型のMOSFET(M3)に∂IdM1が流れたときに、∂IdM1は、P型のMOSFET(M4)のドレインにも流れる。P型のMOSFET(M4)のドレインに流れる∂IdM1は、OUT端子に出力される。また、N型のMOSFET(M2)のドレイン電流の変化分である∂IdM2は、OUT端子に出力される電流の一部である。したがって、OUT端子に出力される出力電流Ioutは、∂IdM1と∂IdM2との差として以下の式(14)のように表される。
【数14】
そして、式(2)と式(14)との関係から、利得係数Gmは、上述した式(2)のように表される。
【0047】
<利得係数Gmの調整>
利得係数Gmは、N型のMOSFET(M5)のゲートに印加する制御信号CNTRLを変化させて式(2)に含まれるRvを変化させることによって調整され得る。具体的には、制御信号CNTRLの電圧を変化させることによってN型のMOSFET(M5)のソース-ドレイン間の抵抗値(オン抵抗値)が低くなれば、利得係数Gmが大きくなる。
【0048】
本実施形態に係る増幅回路1において、制御信号CNTRLは、電流源I1及びI2にも入力される。電流源I1及びI2は、制御信号CNTRLの電圧を変化させてN型のMOSFET(M5)のソース-ドレイン間の抵抗値(オン抵抗値)が低くなるほど定電流Ib’を大きくするように動作する。制御信号CNTRLの電圧の変化と、Rv及びIb’の変化との関係が表1のように表される。A及びBは、制御信号CNTRLの電圧がそれぞれ異なる状態を表す。制御信号CNTRLのAの状態における電圧の大きさは、Bの状態における電圧の大きさとよりも低いこともあれば高いこともある。制御信号CNTRLの電圧が大きくなったときにN型のMOSFET(M5)のソース-ドレイン間の抵抗値(オン抵抗値)が高くなるか低くなるかは、MOSFETの特性によって異なる。増幅回路1は、制御信号CNTRLの電圧が変化した場合に、抵抗回路の抵抗値が小さくなり、かつ、電流回路が流す電流が大きくなるように構成される。つまり、増幅回路1は、抵抗回路の抵抗値の大きさの変化の方向と、電流回路が流す電流の大きさの変化の方向とが逆になるように構成される。
【表1】
【0049】
抵抗回路又は電流回路の少なくとも一方は、MOSFETを含んで構成されてよい。MOSFETは、そのゲートに入力される制御信号CNTRLによってソース-ドレイン間の抵抗値が可変であってよい。
【0050】
N型のMOSFET(M1及びM2)のゲート-ソース間電圧GvgsM1及びGvgsM2は、上述した式(7)のように表される。式(7)によれば、電流源I1及びI2が流す定電流Ib’の変化に応じてGvgsM1及びGvgsM2が変化する。式(2)のように表される利得係数Gmは、Rvの変化に応じて変化するだけでなく、GvgsM1及びGvgsM2の変化にも応じて変化する。したがって、本実施形態に係る増幅回路1は、GvgsM1及びGvgsM2が変化するように構成されることによって、Rvしか変化しない場合と比べて、利得係数Gmを広い範囲で調整できる。言い換えれば、本実施形態に係る増幅回路1の増幅部は、制御信号CNTRLに基づいて抵抗値が可変に構成される抵抗回路と、制御信号CNTRLに基づいて流す電流の大きさが可変に構成される電流回路とを有する。増幅部は、抵抗回路の抵抗値と電流回路が流す電流の大きさとに基づいて定まる利得で入力端子に入力された信号を増幅する。
【0051】
具体例として、利得係数Gmの値の可変範囲の下限値を拡張する場合の動作が説明される。図3に増幅回路1のゲイン(利得係数Gm)の周波数特性の一例が示される。また、図4に増幅回路1の入力信号(電圧)と出力信号(電流)との位相ずれの周波数特性の一例が示される。図3及び図4の横軸は周波数を表す。図3の縦軸はゲインを表す。図4の縦軸は位相のずれ量を表す。
【0052】
図3及び図4において、T_ULとして表されるグラフは、増幅回路1におけるゲインを制御信号CNTRLによる調整で最大にしたときの、ゲイン及び位相ずれの周波数特性を表す。T_LLとして表されるグラフは、増幅回路1におけるゲインを制御信号CNTRLによる調整で最小にしたときの、ゲイン及び位相ずれの周波数特性を表す。増幅回路1に入力する信号の周波数範囲の下限及び上限は、図3及び図4の横軸において、F_LL及びF_ULとして表されている。増幅回路1は、F_LLからF_ULまでの周波数範囲の入力信号に対してゲイン及び位相ずれの仕様を満たすように構成される。
【0053】
図3において、ゲインの周波数特性のグラフは、周波数の変化によってゲインがほとんど変動しない周波数範囲と、周波数が高くなるほどゲインが低下する周波数範囲とを有する。増幅回路1は、仕様として、F_LLからF_ULまでの周波数範囲でゲインがほとんど変動しないことが求められる。図3のグラフにおいて、T_UL及びT_LLとして表されるゲインの周波数特性は、増幅回路1のゲイン変動の仕様を満たしている。
【0054】
増幅回路1は、仕様として、図3でG_RSとして示される範囲より広い範囲でゲインを調整できることが求められる。図3のグラフにおいて、増幅回路1は、T_LLのゲインからT_ULのゲインまでの、G_Rとして示される範囲でゲインを調整可能である。G_Rとして示される範囲は、G_RSとして示される範囲を含む。したがって、増幅回路1は、G_RSとして示される範囲より広い範囲でゲインを調整できるように構成されており、増幅回路1のゲイン調整範囲の仕様を満たしている。
【0055】
図4において、位相ずれの周波数特性のグラフは、周波数の変化によって位相ずれがほとんど生じない周波数範囲と、周波数が高くなるほど位相ずれ(位相の遅れ)が拡大する周波数範囲とを有する。図4のグラフにおいて、グラフ上の点が縦軸に沿って下方に位置するほど、その点が示す位相の遅れが拡大していることを表す。
【0056】
増幅回路1は、仕様として、F_LLからF_ULまでの周波数範囲で位相ずれ(位相の遅れ)がP_RSで表される範囲内に収まることが求められる。T_ULとして表される位相ずれの周波数特性において、周波数がF_ULであるときの位相ずれ(位相の遅れ)は、周波数がF_LLであるときの位相ずれ(位相の遅れ)からほとんど変化していない。つまり、T_ULとして表される位相ずれの周波数特性は、F_LLからF_ULまでの周波数範囲で位相ずれ(位相の遅れ)がP_RSで表される範囲内に収まる。一方で、T_LLとして表される位相ずれの周波数特性において、周波数がF_ULであるときの位相ずれ(位相の遅れ)がP_LLで表されている。また、周波数がF_LLであるときの位相ずれ(位相の遅れ)に対するP_LLにおける位相ずれ(位相の遅れ)は、PFで表されている。PFは、P_RSの範囲内に収まっている。つまり、T_LLとして表される位相ずれの周波数特性は、F_LLからF_ULまでの周波数範囲で位相ずれ(位相の遅れ)がP_RSで表される範囲内に収まる。以上のことから、増幅回路1は、位相ずれ(位相の遅れ)がP_RSで表される範囲内に収まるように構成されており、増幅回路1の位相ずれに関する仕様を満たしている。
【0057】
図3においてT_LLとして表されるゲインの周波数特性は、制御信号CNTRLを調整したときに調整可能な範囲の下限を表す。制御信号CNTRLによるゲインの調整可能な範囲の下限は、コストの増大又は寄生容量による影響が許容できる範囲内で抵抗R1の抵抗値を大きくすることによって、更に小さい値に下げられ得る。
【0058】
図3及び図4のグラフにおいて、本実施形態に係る増幅回路1のゲイン及び位相ずれの周波数特性に対する比較として、比較例に係る増幅回路9のゲイン及び位相ずれの周波数特性が示される。比較例に係る増幅回路9においてゲインを最大にしたときのゲイン及び位相ずれの周波数特性は、本実施形態に係る増幅回路1においてゲインを最大にしたときのゲイン及び位相ずれの周波数特性と同じくT_ULとして表される。一方で、比較例に係る増幅回路9においてゲインを最小にしたときのゲイン及び位相ずれの周波数特性は、T_LL_Cとして表される。
【0059】
図3のグラフにおいて、T_LL_Cで表される増幅回路9のゲインは、F_LLからF_ULまでの周波数範囲の一部で既に低下している。また、増幅回路9は、T_LL_CのゲインからT_ULのゲインまでの、GC_Rとして示される範囲でゲインを調整可能である。GC_Rとして示される範囲は、G_RSとして示される範囲の全体を含まない。したがって、比較例に係る増幅回路9のゲインの周波数特性は、ゲイン変動の仕様もゲイン調整範囲の仕様も満たしていない。
【0060】
図4のグラフにおいて、T_LL_Cで表される増幅回路9の位相ずれ(位相の遅れ)は、周波数がF_ULのときにP_LL_Cで表される点まで拡大している。また、周波数がF_LLであるときの位相ずれ(位相の遅れ)に対するP_LL_Cにおける位相ずれ(位相の遅れ)は、PF_Cで表されている。PF_Cは、P_RSの範囲内に収まっていない。したがって、比較例に係る増幅回路9の位相ずれ(位相の遅れ)の周波数特性は、位相ずれに関する仕様を満たしていない。
【0061】
以上述べてきたように、本実施形態に係る増幅回路1は、制御信号CNTRLを電流源I1及びI2にも入力するように構成されることによって、比較例に係る増幅回路9よりもゲインの調整範囲を広げることができる。その結果、ゲイン及び位相ずれの周波数特性が仕様を満たしやすくなる。また、増幅回路1を構成するMOSFET又は抵抗等の各素子の特性のばらつきがあったとしても、制御信号CNTRLによる調整によって、増幅回路1の特性に対してばらつきが及ぼす影響が低減され得る。つまり、素子の特性のばらつきが吸収され得る。
【0062】
(増幅回路1の他の実施形態)
増幅回路1は、図5に示されるように構成されてもよい。図5の増幅回路1は、図2の増幅回路1と比べて、電源電圧vddが印加される配線に電流源I1及びI2が接続されている点と、カレントミラー回路を構成するP型のMOSFET(M3及びM4)のソースが接地点GNDに接続されている点とで異なる。言い換えれば、図5の増幅回路1は、図2の増幅回路1において、電源電圧vddと接地点GNDとが入れ替えられている。
【0063】
増幅回路1は、図6に示されるように構成されてもよい。図6の増幅回路1は、図2の増幅回路1と比べて、以下の点で異なる。電流源I1及びI2は、N型のMOSFET(M6、M7、M8及びM9)と電流源Ibiasとに置き換えられている。VIbは、制御信号CNTRLによって制御される可変電流源を抽象化した回路ブロックを表す。電流源Ibiasは、一端で電源電圧vddが印加される配線に接続され、他端でN型のMOSFET(M8)のドレインに接続される。電流源Ibiasは、N型のMOSFET(M8)のドレイン-ソース間に流れる電流Ib’’を供給する。N型のMOSFET(M8)のソースは、接地点GNDに接続される。N型のMOSFET(M8)のゲートは、N型のMOSFET(M6及びM7)のゲートとともにN型のMOSFET(M8)のドレインに接続される。N型のMOSFET(M6及びM7)とN型のMOSFET(M8)とは、カレントミラー回路を構成する。したがって、N型のMOSFET(M6及びM7)それぞれのドレイン-ソース間に流れる電流Ib’とN型のMOSFET(M8)のドレイン-ソース間に流れる電流Ib’’とが同じになる。N型のMOSFET(M6及びM7)のドレインは、N型のMOSFET(M1及びM2)のソースにそれぞれ接続される。N型のMOSFET(M6及びM7)のソースは、N型のMOSFET(M9)のドレインに接続される。N型のMOSFET(M9)のソースは、接地点GNDに接続される。N型のMOSFET(M9)のゲートは、N型のMOSFET(M5)のゲートとともに制御信号CNTRLが入力される端子に接続される。
【0064】
図6に示される増幅回路1において、制御信号CNTRLとして入力される電圧が低い場合、N型のMOSFET(M9)のドレイン-ソース間がオフになる。つまり、N型のMOSFET(M9)のドレイン-ソース間の抵抗値が無限大とみなされる。この場合、N型のMOSFET(M6及びM7)のドレイン-ソース間に流れる電流Ib’によってN型のMOSFET(M9)のドレインの電圧が高くなり、N型のMOSFET(M6及びM7)のゲート-ソース間の電圧がほとんどゼロになる。そうすると、N型のMOSFET(M6及びM7)のドレイン-ソース間に流れる電流Ib’はゼロになる。その結果、図6の増幅回路1は、制御信号CNTRLの電圧の変化によって、N型のMOSFET(M5)のソース-ドレイン間の抵抗値(オン抵抗値)を変化させて並列抵抗値Rvを変化させるとともに、電流Ib’の大きさも変化させることができる。つまり、図6の増幅回路1は、図2の増幅回路1と同様に、制御信号CNTRLの電圧を変化させることによってRvとIb’とを変化させることができる。
【0065】
(フィールド機器100への適用例)
本実施形態に係る増幅回路1は、図7及び図8に示されるように、フィールド機器100に適用されてもよい。
【0066】
図7に示されるように、フィールド機器100は、センサ励振回路10と、センサ20と、周波数カウンタ30とを備えてよい。センサ励振回路10は、単に励振回路とも称される。センサ励振回路10は、増幅回路1と、アンプ2及び3と、コンパレータ4と、AGC(Auto Gain Controller)5と、トランス6とを備える。センサ20は、測定結果に基づく信号をセンサ励振回路10のトランス6に出力する。センサ20の測定結果に基づく信号は、トランス6を介して初段のアンプ2に入力される。アンプ2は、信号を増幅し、増幅した信号を増幅回路1とアンプ3とに出力する。アンプ3は、信号を増幅し、増幅した信号をコンパレータ4とAGC5とに出力する。コンパレータ4は、アンプ3から入力された信号と基準電圧源REFの電圧とを比較した結果に対応するパルス信号化したセンサ20の励振信号として周波数カウンタ30に出力する。AGC5は、入力された信号に基づいて制御信号CNTRLを生成して増幅回路1に出力する。増幅回路1は、アンプ2から入力された信号を、AGC5から入力された制御信号CNTRLに基づいて定まる利得係数Gmで増幅してセンサ20に出力する。センサ20の出力が増幅回路1を介してフィードバックされることによって、センサ20の出力振幅が安定化される。本実施形態に係る増幅回路1の利得係数が広い範囲で設定されることによって、センサ20の励振信号の出力が安定する。周波数カウンタ30は、コンパレータ4から入力されるセンサ20の励振信号の周波数をカウントする。
【0067】
図8に示されるように、フィールド機器100は、2つのセンサ励振回路10A及び10Bと、2つのセンサ20A及び20Bとを備えてもよい。フィールド機器100は、周波数カウンタ30と、プロセッサ40と、D/Aコンバータ50と、信号解析部60と、電源70とを更に備えてよい。プロセッサ40は、例えばMPU(Micro Processor Unit)等であってよい。信号解析部60は、例えばHHT(HandHeld Terminal)として構成されてよい。HHTは、ユーザが現場に携帯してフィールド機器100と接続し、フィールド機器100のメンテナンス情報取得又はフィールド機器100の調整を行うために用いられる通信機器である。信号解析部60は、中央制御室からデータを取得するための据え置き型の機器として構成されてもよい。
【0068】
周波数カウンタ30は、センサ20Aの測定結果に基づいてセンサ励振回路10Aで生成されたセンサ励振信号と、センサ20Bの測定結果に基づいてセンサ励振回路10Bで生成されたセンサ励振信号とのそれぞれの周波数をカウントする。プロセッサ40は、カウントされた周波数を処理してデジタル信号を生成してD/Aコンバータ50に出力する。D/Aコンバータ50は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、電源70の電源線に重畳する。信号解析部60は、電源70の電源線に重畳されているアナログ信号を読み取る。
【0069】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1、1A、1B 増幅回路(M1~M9:MOSFET、R1:抵抗、I1、I2、Ibias:電流源)
100 フィールド機器(10、10A、10B:センサ励振回路(2~4:アンプ、5:AGC、6:トランス)、20、20A、20B:センサ、30:A/Dコンバータ、40:プロセッサ、50:D/Aコンバータ、60:信号解析部、70:電源)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8