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特開2023-138157艦船用電波反射板、これを備えている艦船、及び艦船用電波反射板の製造方法
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  • 特開-艦船用電波反射板、これを備えている艦船、及び艦船用電波反射板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138157
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】艦船用電波反射板、これを備えている艦船、及び艦船用電波反射板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20230922BHJP
   B63G 13/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
B63G13/00
H01Q15/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044706
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521511542
【氏名又は名称】三菱重工マリタイムシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】丸田 浩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA06
5J020CA01
5J020CA04
5J020CA05
5J020CA06
(57)【要約】
【課題】船体の外部から到来する電波を反射しつつ、軽量化を図りながら耐久性を確保することができる艦船用電波反射板、これを備えている艦船、及び艦船用電波反射板の製造方法を提供する。
【解決手段】船体に配置され、船体の外部から到来する電波を反射させる艦船用電波反射板であって、ポリ塩化ビニル系の発泡体によって形成され、平板状を成すコア材と、コア材を板厚方向から挟むようにコア材と一体に形成された一対の電波反射部と、を備え、電波反射部は、金属によって形成された金属メッシュ層と、ガラス繊維強化プラスチックによって形成され、金属メッシュ層に対してコア材とは反対側で金属メッシュ層と一体に形成された第一補強層と、を有する艦船用電波反射板。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に配置され、前記船体の外部から到来する電波を反射させる艦船用電波反射板であって、
ポリ塩化ビニル系の発泡体によって形成され、平板状を成すコア材と、
前記コア材を板厚方向から挟むように前記コア材と一体に形成された一対の電波反射部と、
を備え、
前記電波反射部は、
金属によって形成された金属メッシュ層と、
ガラス繊維強化プラスチックによって形成され、前記金属メッシュ層に対して前記コア材とは反対側で前記金属メッシュ層と一体に形成された第一補強層と、
を有する艦船用電波反射板。
【請求項2】
前記電波反射部は、
ガラス繊維強化プラスチックによって形成され、前記コア材と前記金属メッシュ層との間で前記コア材及び前記金属メッシュ層と一体に形成された第二補強層をさらに有する請求項1に記載の艦船用電波反射板。
【請求項3】
前記船体と、
請求項1又は2に記載の艦船用電波反射板と、
を備える艦船。
【請求項4】
前記艦船用電波反射板を前記船体に対して回動可能に支持するヒンジ部をさらに備える請求項3に記載の艦船。
【請求項5】
ポリ塩化ビニル系の発泡体によって形成された平板状を成すコア材と、
前記コア材を板厚方向から挟むように前記コア材と一体に形成された一対の電波反射部と、
を備える艦船用電波反射板の製造方法であって、
金属によって形成された金属メッシュ層と、ガラス繊維強化プラスチックによって形成された第一補強層と、ガラス繊維強化プラスチックによって形成された第二補強層とを、前記コア材から離間する方向で前記第二補強層、前記金属メッシュ層、前記第一補強層の順に前記コア材に積層することで前記電波反射部を形成する積層工程と、
前記電波反射部における各層の間、及び前記電波反射部と前記コア材との間に液状の合成樹脂を供給することで、前記コア材及び前記電波反射部に前記合成樹脂を含浸させる含浸工程と、
前記合成樹脂を硬化させることで、前記コア材及び前記電波反射部を一体化する硬化工程と、
を有する艦船用電波反射板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、艦船用電波反射板、これを備えている艦船、及び艦船用電波反射板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商船や小型船舶等は、他の船舶や陸上の施設等に設けられたレーダーから照射された電波が反射してレーダーへ戻ることで、自船の位置を知らせることが可能である。これにより、航路上の安全性が保たれている。一方で、軍事や防衛等を任務とする艦船には、ステルス性が要求される場合がある。即ち、外部から到来した電波が船体や船体上の機器等に当たることによって乱反射した結果、自船の位置が外部に感知されることを防止する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、到来した識別用電波が反到来側に通過することを防止する電波遮蔽機能材を、合成樹脂にカーボンを含有させて、型成形によりグレーチング状に加工して形成した吸収体主体で挟持した電波吸収体が開示されている。これにより、吸収体主体に入射した電波は、該吸収体主体に挟持された電波遮蔽機能材によって遮蔽され、該電波遮蔽機能材の反対側へ抜け出ることがないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-67766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステルス性が要求される海域を艦船が航行する際、外部から到来する電波が船体上の機器に当たることを極力防止するために、電波を到来方向とは異なる方向へ反射可能な電波反射板を船体上に設置する場合がある。この場合、重量増による艦船の推進性能低下を防ぐために、電波反射板が軽量であることが要求される。一方で、船体上に設置された電波反射板は、艦船の航行中に暴風雨等に曝されることがあるため、軽量であると同時に耐久性も要求される。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、船体の外部から到来する電波を反射しつつ、軽量化を図りながら耐久性を確保することができる艦船用電波反射板、これを備えている艦船、及び艦船用電波反射板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る艦船用電波反射板は、船体に配置され、前記船体の外部から到来する電波を反射させる艦船用電波反射板であって、ポリ塩化ビニル系の発泡体によって形成され、平板状を成すコア材と、前記コア材を板厚方向から挟むように前記コア材と一体に形成された一対の電波反射部と、を備え、前記電波反射部は、金属によって形成された金属メッシュ層と、ガラス繊維強化プラスチックによって形成され、前記金属メッシュ層に対して前記コア材とは反対側で前記金属メッシュ層と一体に形成された第一補強層と、を有する。
【0008】
本開示に係る艦船は、前記船体と、上記の艦船用電波反射板と、を備える。
【0009】
本開示に係る艦船用電波反射板の製造方法は、ポリ塩化ビニル系の発泡体によって形成された平板状を成すコア材と、前記コア材を板厚方向から挟むように前記コア材と一体に形成された一対の電波反射部と、を備える艦船用電波反射板の製造方法であって、金属によって形成された金属メッシュ層と、ガラス繊維強化プラスチックによって形成された第一補強層と、ガラス繊維強化プラスチックによって形成された第二補強層とを、前記コア材から離間する方向で前記第二補強層、前記金属メッシュ層、前記第一補強層の順に前記コア材に積層することで前記電波反射部を形成する積層工程と、前記電波反射部における各層の間、及び前記電波反射部と前記コア材との間に液状の合成樹脂を供給することで、前記コア材及び前記電波反射部に前記合成樹脂を含浸させる含浸工程と、前記合成樹脂を硬化させることで、前記コア材及び前記電波反射部を一体化する硬化工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、船体の外部から到来する電波を反射しつつ、軽量化を図りながら耐久性を確保することができる艦船用電波反射板、これを備えている艦船、及び艦船用電波反射板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態に係る艦船の概略構成を示す斜視図である。
図2図1におけるII-II線方向から見た際の、船体の甲板上における艦船用機器及び艦船用電波反射板の位置関係を示す図である。
図3】本開示の実施形態に係る艦船用電波反射板の層構成を示す図である。
図4】本開示の実施形態に係る艦船用電波反射板の製造方法を示すフローチャートである。
図5】本開示のその他の実施形態に係る艦船の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本開示による艦船用電波反射板、これを備えている艦船、及び艦船用電波反射板の製造方法を実施するための形態を説明する。
【0013】
(艦船)
艦船は、軍事や防衛等を任務とする船舶である。本実施形態における艦船は、領海や沿岸、内海、内水、港湾等での警備、救難活動を行う哨戒艦艇である。図1に示すように、艦船100は、船体1と、上部構造2と、艦船用機器3と、艦船用電波反射板4とを備えている。
【0014】
(船体)
船体1は、各種の物資や兵器、人員を搭載可能な容器状をなしており、海面上での航行に適した形状を成している。より具体的には、船体1は、船首部11と、船体中央部12と、船尾部13と、を有している。以下、船尾部13から船首部11に向かう方向を艦船100の「進行方向D」と称することがある。
【0015】
船首部11の先端には、航行時に受ける海水からの抵抗を抑制するためにバルブ状に突出したバルバスバウ11aが設けられている。船尾部13には、スクリュー13a、舵13bが設けられている。スクリュー13aは、船体1の内部に設けられた発動機等によって回転駆動されることで、進行方向Dの後方側に向かって推進力を発生させる。舵13bは、舵面を有する板状の部材であり、姿勢(角度)を変化させることで艦船100の進行方向Dを変えることができる。船体中央部12は、船首部11と船尾部13とを進行方向Dに接続している。
【0016】
船首部11、船体中央部12、船尾部13のそれぞれにおける上方を向く面は、甲板1aとされている。本実施形態における甲板1aは、曝露甲板である。甲板1a上には、艦艇用機器や甲板機械(図示省略)等が配置されている。
【0017】
(上部構造)
上部構造2は、船体中央部12における甲板1a上に設けられている。上部構造2は、例えば、艦橋や各種の格納庫等を含んでいる。艦橋内部には、操舵室が設けられている。格納庫には、種々の機材や設備が格納される。
【0018】
なお、艦船100は、上述のように洋上での防衛を主任務としていることから、ステルス性を有している。具体的には、レーダーやソナーを含む策敵手段に対して、当該艦船100の航行位置や進行方向を可能な限り隠匿することを目指して設計されている。船体1及び上部構造2は、レーダーから照射された電波Rwを照射された方向へ反射させず、これを吸収したり、他の方向に散乱させたりする。
【0019】
これによって、上記策敵手段によって自船位置が把握されることを回避している。なお、レーダー上に投影される艦船100の大きさは、反射断面積(RCS:Radar Cross Section)と呼ばれる指標で評価されることがある。艦船100は、RCSを極力小さく抑えることを目指して設計されている。
【0020】
(艦船用機器)
艦船用機器3は、船体1における甲板1a上に配置されている。艦船用機器3には、レーダーやソナー、衛星通信用の送受信装置等を例示することができる。艦船用機器3は、甲板1a上に複数配置されている。本実施形態における艦船用機器3は、船体中央部12の甲板1a上、及び船尾部13の甲板1a上に配置されている。
【0021】
(艦船用電波反射板)
艦船用電波反射板4は、船体1の外部から到来する電波Rwを反射させる板である。以下、船体1の外部から到来する電波Rwを「到来電波Rw」と称する。図1及び図2に示すように、艦船用電波反射板4は、船体1における甲板1a上に複数配置されている。
【0022】
艦船用電波反射板4は、艦船用機器3を甲板1aが広がる方向で囲っている。本実施形態における艦船用電波反射板4は、船体中央部12の甲板1a上、及び船尾部13の甲板1a上のそれぞれに複数配置されている。
【0023】
図2に示すように、艦船用電波反射板4は、平板状を成している。艦船用電波反射板4は、甲板1aに対して傾斜した状態で甲板1aに配置されている。具体的には、艦船用電波反射板4は、艦船用機器3に近づくように傾斜した状態で甲板1a上に起立している。
【0024】
これによって、到来電波Rwをこの到来電波Rwの到来方向とは異なる方向へ反射させることができる。また、船体1が、例えば、ローリング(横揺れ)やピッチング(縦揺れ)を起こした場合であっても、艦船用機器3に到来電波Rwが当たることを抑制することができる。
【0025】
以下、説明の便宜上、艦船用電波反射板4が船体1上に配置された状態であって、かつ、艦船用電波反射板4が艦船用機器3を甲板1aが広がる方向で囲った状態を「ステルス状態」と称し、艦船用電波反射板4が艦船用機器3を甲板1aが広がる方向で囲っていない状態を「非ステルス状態」と称する場合がある。艦船用電波反射板4は、コア材41と、電波反射部42とを備えている。
【0026】
(コア材)
コア材41は、平板状を成している。コア材41は、一対の主面41aを有している。コア材41は、プラスチック等によって形成された発泡体や多孔質体である。本実施形態におけるコア材41は、ポリ塩化ビニル系の発泡体によって形成されている。本実施形態では、例えば、Diab社製の「Divinycell H」がコア材41に採用される。
【0027】
(電波反射部)
電波反射部42は、到来電波Rwを反射する。電波反射部42は、コア材41を該コア材41の板厚方向から挟むように、コア材41と一体に一対形成されている。図3に示すように、電波反射部42は、金属メッシュ層423と、補強層420(第一補強層421、第二補強層422)とを有している。
【0028】
金属メッシュ層423は、金属によって形成されている層である。金属メッシュ層423は、複数の金属線が互いに編み込まれることによって形成されている。金属メッシュ層423は、板厚方向から見た際に、メッシュ状を成している。本実施形態における金属メッシュ層423は、例えば、鉄やアルミニウム等の金属によって形成されている。この金属メッシュ層423によって、到来電波Rwが反射される。
【0029】
補強層420は、金属メッシュ層423と一体に形成されることで、金属メッシュ層423を強度的に補強する層である。本実施形態における補強層420は、ガラス繊維強化プラスチックによって形成されている。補強層420は、剛性が金属メッシュ層423よりも高い。また、補強層420は、剛性及び硬度がコア材41よりも高い。補強層420は、金属メッシュ層423を板厚方向から挟むように、金属メッシュ層423と一体に一対形成されている。
【0030】
以下、説明の便宜上、板厚方向で金属メッシュ層423よりもコア材41から離間する側に配置されている補強層420を「第一補強層421」と称し、板厚方向で金属メッシュ層423よりもコア材41へ近づく側に配置されている補強層420を「第二補強層422」と称する。即ち、補強層420は、第一補強層421と第二補強層422とによって構成されている。
【0031】
第一補強層421は、金属メッシュ層423に対してコア材41とは反対側で金属メッシュ層423と一体に形成されている。第二補強層422は、コア材41と金属メッシュ層423との間でコア材41及び金属メッシュ層423と一体に形成されている。第二補強層422は、コア材41の主面41aに接合されている。
【0032】
したがって、コア材41を板厚方向で間に挟む一対の電波反射部42における金属メッシュ層423と、第一補強層421と、第二補強層422とは、コア材41に対して板厚方向に積層されている。本実施形態における第一補強層421及び第二補強層422は、同一の厚さに形成されている。なお、ここでいう「同一の厚さ」とは、実質的に同じ厚さを指すものであって、製造上のわずかな誤差や設計上の公差は許容される。
【0033】
ここで、電波反射部42は、板厚がコア材41よりも薄い。本実施形態におけるコア材41は、例えば、40~60mmの厚さで形成されている。本実施形態における一対の電波反射部42は、例えば、3~5mmの厚さで形成されている。したがって、艦船用電波反射板4は、46~70mmの厚さで形成されている。
【0034】
(艦船用電波反射板の製造方法)
続いて、本実施形態における艦船用電波反射板4の製造方法について図4を参照して説明する。当該製造方法は、積層工程S1と、含浸工程S2と、硬化工程S3とを有している。
【0035】
(積層工程)
積層工程S1は、金属メッシュ層423と、第一補強層421と、第二補強層422とを、コア材41から離間する方向で第二補強層422、金属メッシュ層423、第一補強層421の順にコア材41に積層する工程である。積層工程S1は、これら金属メッシュ層423、第一補強層421、及び第二補強層422を板厚方向に積層することで、電波反射部42を形成する。
【0036】
(含浸工程)
含浸工程S2は、積層工程S1の後になされる工程である。含浸工程S2は、電波反射部42における各層の間、及び電波反射部42とコア材41との間に液状の合成樹脂を供給することで、コア材41及び電波反射部42に合成樹脂を含浸させる。ここでいう電波反射部42における各層の間とは、補強部における第一補強層421と金属メッシュ層423との間、及び金属メッシュ層423と第二補強層422との間を意味する。
【0037】
(硬化工程)
硬化工程S3は、含浸工程S2の後になされる工程である。硬化工程S3は、電波反射部42における各層の間、及び電波反射部42とコア材41との間に供給された合成樹脂を硬化させることで、コア材41及び電波反射部42を一体化する。硬化工程S3は、含浸工程S2を経たコア材41及びこのコア材41に積層された電波反射部42に所定の熱量を加えた状態で所定の時間放置する。これによって、電波反射部42における各層の間、及び電波反射部42とコア材41との間に供給された合成樹脂が硬化する。
【0038】
上記一連の工程を経ることで、艦船用電波反射板4が製造される。
【0039】
なお、本実施形態における含侵工程及び硬化工程S3には、例えば、脱オートクレーブ成形法の一つであるVaRTM法(真空含浸工法)が採用される。含侵工程で採用される合成樹脂には、例えば、熱硬化性樹脂が採用される。
【0040】
(作用効果)
上記実施形態によれば、電波反射部42における金属メッシュ層423がメッシュ状を成しているため、船体1の外部から到来した電波Rwを反射する。これにより、船体1の外部から到来した電波Rwが艦船用電波反射板4を通り抜けることを防止することができる。さらに、一対の電波反射部42がコア材41を板厚方向から挟むようにコア材41と一体に形成されているため、例えば、一つの電波反射部42がコア材41に一体に形成されている場合と比較して、外部から到来する電波Rwをより反射させることができる。
【0041】
ここで、コア材41は、ポリ塩化ビニル系の発泡体によって形成されているため、金属によって形成された金属メッシュ層423、及びガラス繊維強化プラスチックによって形成された第一補強層421それぞれの単位体積当たりの重量よりも軽い。上記艦船用電波反射板4では、一対の電波反射部42の間にコア材41が配置されているため、例えば、コア材41が金属やガラス繊維強化プラスチックによって形成される構成と比較して、艦船用電波反射板4全体の重量を低減することができる。
【0042】
さらに、一対の電波反射部42の第一補強層421が、コア材41とともに金属メッシュ層423を間に挟むようにして金属メッシュ層423に一体に形成されている。これにより、風圧等により艦船用電波反射板4に対して面外方向に変形する力が加わった際に、応力が最も高くなる艦船用電波反射板4における表層部を、剛性の高い第一補強層421によって効率的に補強することができる。つまり、第一補強層421は、金属メッシュ層423を保護しつつ、艦船用電波反射板4全体の耐久性を高めることができる。
【0043】
以上により、上記艦船用電波反射板4は、船体1の外部から到来する電波Rwを反射しつつ、軽量化を図りながら耐久性を確保することができる。
【0044】
また、上記実施形態によれば、第二補強層422がコア材41と金属メッシュ層423との間でコア材41及び金属メッシュ層423と一体に形成されているため、金属メッシュ層423に生じる応力の分布を均一化することができる。その結果、艦船用電波反射板4全体の耐久性をより高めることができる。
【0045】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0046】
なお、図5に示すように、艦船100は、ヒンジ部5をさらに備えてもよい。ヒンジ部5は、艦船用電波反射板4を船体1に対して回動可能に支持する。ヒンジ部5は、甲板1a上に固定されている。ヒンジ部5は、艦船用電波反射板4が艦船用機器3に近づくように傾斜した状態で艦船用電波反射板4を保持可能である。また、艦船用電波反射板4は、ヒンジ部5に対して着脱可能である。これにより、艦船用電波反射板4を船体1に対して回動することによってのみ、上記のステルス状態と非ステルス状態とに遷移可能である。即ち、艦船用電波反射板4を船体1に対して回動することによってのみ、艦船用電波反射板4が到来電波Rwを反射可能な状態と反射不可能な状態とに遷移可能である。したがって、艦船100内の作業員等が、艦船用電波反射板4を船体1から着脱する必要がない。
【0047】
また、実施形態では、電波反射部42の補強層420が、第一補強層421と第二補強層422とによって構成されているが、これに限定されることはない。補強層420は、第一補強層421によってのみ構成されていてもよい。この場合、電波反射部42の電波Rw反射層は、コア材41の主面41aに接合されていればよい。
【0048】
また、実施形態では、艦船100が哨戒艦艇であると説明したが、これに限定されることはない。艦船100は、軍事や防衛等を任務とする船舶に替えて、商船や小型船舶等の船舶であってもよい。この場合、船舶の種類(船種)としては、例えば、液化ガス運搬船、コンテナ船、タンカー、ばら積み船、自動車運搬船、RO-RO貨物船、貨客船(フェリー)、旅客船、漁船、特殊船等が挙げられる。
【0049】
<付記>
実施形態に記載の艦船用電波反射板、これを備えている艦船、及び艦船用電波反射板の製造方法は、例えば以下のように把握される。
【0050】
(1)第1の態様に係る艦船用電波反射板4は、船体1に配置され、前記船体1の外部から到来する電波Rwを反射させる艦船用電波反射板4であって、ポリ塩化ビニル系の発泡体によって形成され、平板状を成すコア材41と、前記コア材41を板厚方向から挟むように前記コア材41と一体に形成された一対の電波反射部42と、を備え、前記電波反射部42は、金属によって形成された金属メッシュ層423と、ガラス繊維強化プラスチックによって形成され、前記金属メッシュ層423に対して前記コア材41とは反対側で前記金属メッシュ層423と一体に形成された第一補強層421と、を有する。
【0051】
これにより、船体1の外部から到来した電波Rwが艦船用電波反射板4を通り抜けることを金属メッシュ層423が防止する。また、一対の電波反射部42の間にコア材41が配置されるため、コア材41が金属やガラス繊維強化プラスチックによって形成される場合と比較して、艦船用電波反射板4を軽量化することができる。
【0052】
(2)第2の態様に係る艦船用電波反射板4は、(1)の艦船用電波反射板4であって、前記電波反射部42は、ガラス繊維強化プラスチックによって形成され、前記コア材41と前記金属メッシュ層423との間で前記コア材41及び前記金属メッシュ層423と一体に形成された第二補強層422をさらに有してもよい。
【0053】
これにより、金属メッシュ層423に生じる応力の分布を均一化することができる。
【0054】
(3)第3の態様に係る艦船100は、前記船体1と、(1)又は(2)の艦船用電波反射板4と、を備える。
【0055】
(4)第4の態様に係る艦船100は、(3)の艦船100であって、前記艦船用電波反射板4を前記船体1に対して回動可能に支持するヒンジ部5をさらに備えてもよい。
【0056】
これにより、艦船用電波反射板4を船体1から着脱させることなく、艦船用電波反射板4が到来電波Rwを反射可能な状態と反射不可能な状態とに遷移させることができる。
【0057】
(5)第5の態様に係る艦船用電波反射板4の製造方法は、ポリ塩化ビニル系の発泡体によって形成された平板状を成すコア材41と、前記コア材41を板厚方向から挟むように前記コア材41と一体に形成された一対の電波反射部42と、を備える艦船用電波反射板4の製造方法であって、金属によって形成された金属メッシュ層423と、ガラス繊維強化プラスチックによって形成された第一補強層421と、ガラス繊維強化プラスチックによって形成された第二補強層422とを、前記コア材41から離間する方向で前記第二補強層422、前記金属メッシュ層423、前記第一補強層421の順に前記コア材41に積層することで前記電波反射部42を形成する積層工程S1と、前記電波反射部42における各層の間、及び前記電波反射部42と前記コア材41との間に液状の合成樹脂を供給することで、前記コア材41及び前記電波反射部42に前記合成樹脂を含浸させる含浸工程S2と、前記合成樹脂を硬化させることで、前記コア材41及び前記電波反射部42を一体化する硬化工程S3と、を有する。
【符号の説明】
【0058】
1…船体 1a…甲板 2…上部構造 3…艦船用機器 4…艦船用電波反射板 5…ヒンジ部 11…船首部 11a…バルバスバウ 12…船体中央部 13…船尾部 13a…スクリュー 13b…舵 41…コア材 41a…主面 42…電波反射部 100…艦船 420…補強層 421…第一補強層 422…第二補強層 423…金属メッシュ層 D…進行方向 Rw…電波 S1…積層工程 S2…含浸工程 S3…硬化工程
図1
図2
図3
図4
図5