(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138159
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】操船装置、及び船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 25/08 20060101AFI20230922BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B63H25/08
B63H21/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044708
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521511542
【氏名又は名称】三菱重工マリタイムシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】長尾 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】久内 昇司
(72)【発明者】
【氏名】丸田 浩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
(57)【要約】
【課題】人員に応じて円滑に操船することができる操船装置、及び船舶を提供する。
【解決手段】船体の進行方向を変更可能な操舵用コンソールと、船体を推進させる主機の回転数を調整可能な主機操縦用コンソールと、船体の外部と通信可能な通信用コンソールと、を備え、操舵用コンソールの操作面は、船体の船尾側を向き、主機操縦用コンソールは、操舵用コンソールの操作面を船尾側から見た際の操舵用コンソールよりも右方側又は左方側に配置され、上下方向に延びる第一軸線を中心とした第一回動機構によって、船体に対して回動可能に配置され、通信用コンソールは、右方側及び左方側のうち、第一回動機構が配置されていない側に配置され、上下方向に延びる第二軸線を中心とした第二回動機構によって、船体に対して回動可能に配置されている操船装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の進行方向を変更可能な操舵用コンソールと、
前記船体を推進させる主機の回転数を調整可能な主機操縦用コンソールと、
前記船体の外部と通信可能な通信用コンソールと、
を備え、
前記操舵用コンソールの操作面は、前記船体の船尾側を向き、
前記主機操縦用コンソールは、
前記操舵用コンソールの操作面を前記船尾側から見た際の前記操舵用コンソールよりも右方側又は左方側に配置され、上下方向に延びる第一軸線を中心とした第一回動機構によって、前記船体に対して回動可能に配置され、
前記通信用コンソールは、
前記右方側及び前記左方側のうち、前記第一回動機構が配置されていない側に配置され、前記上下方向に延びる第二軸線を中心とした第二回動機構によって、前記船体に対して回動可能に配置されている操船装置。
【請求項2】
船体の進行方向を変更可能な操舵用コンソールと、
前記船体を推進させる主機の回転数を調整可能な主機操縦用コンソールと、
前記船体の外部と通信可能な通信用コンソールと、
を備え、
前記操舵用コンソールの操作面は、前記船体の船尾側を向き、
前記主機操縦用コンソールは、
前記操舵用コンソールの操作面を前記船尾側から見た際の前記操舵用コンソールの右方部又は左方部に配置され、上下方向に延びる第一軸線を中心とした第一回動機構によって、前記操舵用コンソールに対して回動可能に配置され、
前記通信用コンソールは、
前記右方部及び前記左方部のうち、前記第一回動機構が配置されていない方に配置され、前記上下方向に延びる第二軸線を中心とした第二回動機構によって、前記操舵用コンソールに対して回動可能に配置されている操船装置。
【請求項3】
前記主機操縦用コンソールの操作面及び前記通信用コンソールの操作面は、これら操作面の向きと前記操舵用コンソールの操作面の向きとが揃った際に、前記操舵用コンソールの操作面よりも前記船尾側に配置されている請求項1又は2に記載の操船装置。
【請求項4】
前記船体と、
請求項1から3の何れか一項に記載の操船装置と、
前記操舵用コンソールよりも前記船尾側で、前記進行方向にスライド可能に前記船体に配置された操舵用椅子と、
前記主機操縦用コンソールよりも前記船尾側で、前記進行方向にスライド可能に前記船体に配置された主機操縦用椅子と、
前記通信用コンソールよりも前記船尾側で、前記進行方向にスライド可能に前記船体に配置された通信用椅子と、
を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、操船装置、及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
商船や艦船、小型船舶等では、操舵機能や主機操縦機能、通信機能等を有するコンソールが船橋内(艦橋内)で分散して配置される場合がある。安全に操船するためには、上記の各機能を有するコンソール毎に乗員を配置する必要がある。このため、例えば、コンソールの数よりも少人数で船舶を運航する際、乗員がコンソール間を移動する必要が生じる結果、船橋内における安全性の低下や円滑な操船の障害となる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、自動車の車両内における運転手の安全性を向上させる技術の一つとして、インストルメントパネル、シート及びステアリングハンドルの位置を移動、調整可能な車両(自動車)のインストルメントパネル構造が開示されている。これにより、運転席の居住空間及び移動調整可能な範囲を広げることができ、車幅方向に移動する際の乗員の四肢等の挟み込み防止が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
船舶の分野では、人員に応じて円滑に操船することができる操船装置が要求される。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、人員に応じて円滑に操船することができる操船装置、及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る操船装置は、船体の進行方向を変更可能な操舵用コンソールと、前記船体を推進させる主機の回転数を調整可能な主機操縦用コンソールと、前記船体の外部と通信可能な通信用コンソールと、を備え、前記操舵用コンソールの操作面は、前記船体の船尾側を向き、前記主機操縦用コンソールは、前記操舵用コンソールの操作面を前記船尾側から見た際の前記操舵用コンソールよりも右方側又は左方側に配置され、上下方向に延びる第一軸線を中心とした第一回動機構によって、前記船体に対して回動可能に配置され、前記通信用コンソールは、前記右方側及び前記左方側のうち、前記第一回動機構が配置されていない側に配置され、前記上下方向に延びる第二軸線を中心とした第二回動機構によって、前記船体に対して回動可能に配置されている。
【0008】
本開示に係る操船装置は、船体の進行方向を変更可能な操舵用コンソールと、前記船体を推進させる主機の回転数を調整可能な主機操縦用コンソールと、前記船体の外部と通信可能な通信用コンソールと、を備え、前記操舵用コンソールの操作面は、前記船体の船尾側を向き、前記主機操縦用コンソールは、前記操舵用コンソールの操作面を前記船尾側から見た際の前記操舵用コンソールの右方部又は左方部に配置され、上下方向に延びる第一軸線を中心とした第一回動機構によって、前記操舵用コンソールに対して回動可能に配置され、前記通信用コンソールは、前記右方部及び前記左方部のうち、前記第一回動機構が配置されていない方に配置され、前記上下方向に延びる第二軸線を中心とした第二回動機構によって、前記操舵用コンソールに対して回動可能に配置されている。
【0009】
本開示に係る船舶は、前記船体と、上記の操船装置と、前記操舵用コンソールよりも前記船尾側で、前記進行方向にスライド可能に前記船体に配置された操舵用椅子と、前記主機操縦用コンソールよりも前記船尾側で、前記進行方向にスライド可能に前記船体に配置された主機操縦用椅子と、前記通信用コンソールよりも前記船尾側で、前記進行方向にスライド可能に前記船体に配置された通信用椅子と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、人員に応じて円滑に操船することができる操船装置、及び船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る船舶の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る船体の上部構造における船橋内を上方側から見たときの操船装置、並びに操舵用椅子、主機操縦用椅子、及び通信用椅子の位置関係を示す図である。
【
図3】
図2で示す状態から、主機操縦用コンソール及び通信用コンソールが操舵用コンソールに対して回動した際の操船装置、並びに操舵用椅子、主機操縦用椅子、及び通信用椅子の位置関係を示す図である。
【
図4】本開示のその他の実施形態に係る船体の上部構造における船橋内を上方側から見たときの操船装置、並びに操舵用椅子、主機操縦用椅子、及び通信用椅子の位置関係を示す図である。
【
図5】
図4で示す状態から、主機操縦用コンソール及び通信用コンソールが回動した際の操船装置、並びに操舵用椅子、主機操縦用椅子、及び通信用椅子の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本開示による操船装置、及び船舶を実施するための形態を説明する。
【0013】
(船舶)
本実施形態における船舶は、軍事や防衛等を任務とする艦船である。船舶は、領海や沿岸、内海、内水、港湾等での防衛や警備、救難活動を行う哨戒艦艇である。
図1及び
図2に示すように、船舶100は、船体1と、船舶用機器2と、操船装置3と、操舵用椅子3aと、主機操縦用椅子4aと、通信用椅子5aとを備えている。
【0014】
(船体)
船体1は、各種の物資や兵器、人員を搭載可能な容器状をなしており、海面上での航行に適した形状を成している。より具体的には、船体1は、船首部11と、船体中央部12と、船尾部13と、を有している。船首部11は、船体1中で最も前方側に位置する船首100aを有している。船尾部13は、船体1中で最も後方側に位置する船尾100bを有している。以下、船尾部13の船尾100bから船首部11の船首100aに向かう方向を船舶100の「進行方向D」と称する。
【0015】
船首部11の先端には、航行時に受ける海水からの抵抗を抑制するためにバルブ状に突出したバルバスバウ11aが設けられている。船尾部13には、スクリュー13a、舵13bが設けられている。スクリュー13aは、船体1の内部に設けられた主機(図示省略)によって回転駆動されることで、進行方向Dの後方側に向かって推進力を発生させる。舵13bは、舵面を有する板状の部材であり、姿勢(角度)を変化させることで船舶100の進行方向Dを変更することができる。
【0016】
船体中央部12は、本体部120と、上部構造121とを有している。本体部120は、船首部11と船尾部13とを進行方向Dに接続している。上部構造121は、本体部120から上方に延びている。上部構造121は、例えば、船橋121a(艦橋)や各種の格納庫等を含んでいる。船橋121a内部には、操舵室が設けられている。格納庫には、種々の機材や設備が格納される。
【0017】
船首部11、船体中央部12の本体部120、及び船尾部13のそれぞれにおける上方を向く面は、甲板1aとされている。本実施形態における甲板1aは、曝露甲板である。甲板1a上には、船舶用機器2や甲板機械(図示省略)等が配置されている。
【0018】
(船舶用機器)
船舶用機器2は、船体1における甲板1a上に配置されている。船舶用機器2には、レーダーやソナー、衛星通信用の送受信装置等を例示することができる。船舶用機器2は、甲板1a上に複数配置されている。本実施形態における船舶用機器2は、船体中央部12の甲板1a上、及び船尾部13の甲板1a上に配置されている。
【0019】
(操船装置)
操船装置3は、船舶100の運航を制御する装置である。操船装置3は、上部構造121の船橋121a内における操舵室内に配置されている。
図2に示すように、操船装置3は、操舵用コンソール30と、主機操縦用コンソール40と、通信用コンソール50と、第一回動機構60と、第二回動機構70と、ケーブル(図示省略)とを備えている。
【0020】
(操舵用コンソール)
操舵用コンソール30は、船体1の進行方向Dを変更可能な制御盤である。本実施形態における操舵用コンソール30は、船橋121a内における船幅方向で中央に配置されている。ここでいう船幅方向とは、甲板1aが広がる方向のうち、進行方向Dに対して垂直な方向を意味する。操舵用コンソール30は、操舵用コンソール本体31と、操舵輪32と、操作面33とを有している。
【0021】
操舵用コンソール本体31は、操舵用コンソール30における筐体部分である。操舵用コンソール本体31は、船体1の内部に配置された舵13bの姿勢を変化させるための操舵装置等(図示省略)とケーブルを通じて電気的に接続されている。これによって、操舵用コンソール本体31は、船尾部13に設けられている舵13bの舵角を制御する。
【0022】
操舵輪32は、操舵用コンソール本体31に接続されている。操舵輪32は、回転されることで、この回転量を示す電気信号を操舵用コンソール本体31に送信する。操舵用コンソール本体31は、この操舵輪32から受け付けた回転量を示す電気信号を舵角として上記操舵装置へ送信する。操舵装置は、操舵用コンソール本体31から受け付けた舵角に応じて舵13bの姿勢を変化させる。
【0023】
操作面33は、操舵用コンソール本体31に配置されているディスプレイである。本実施形態における操作面33は、例えば、船舶100の操舵に係る種々のデータを表示するタッチパネルである。操作面33は、例えば、船体1の進行方向Dが示す方位や舵13bの舵角等を表示する。操作面33は、船体1における船首100a側と船尾100b側とのうち、船尾100b側を向いている。以下、説明の便宜上、操舵用コンソール本体31に配置されている操作面33を「第一操作面33」と称する。
【0024】
(主機操縦用コンソール)
主機操縦用コンソール40は、船体1を推進させる主機の回転数を調整可能な制御盤である。本実施形態における主機操縦用コンソール40は、操舵用コンソール30と船幅方向に並んで配置されている。主機操縦用コンソール40は、主機操縦用コンソール本体41と、操作面42とを有している。
【0025】
主機操縦用コンソール本体41は、主機操縦用コンソール40における筐体部分である。主機操縦用コンソール本体41は、船体1の内部に配置された主機制御装置等(図示省略)とケーブルを通じて電気的に接続されている。これによって、主機操縦用コンソール本体41は、主機の出力回転数を制御する。
【0026】
本実施形態における主機操縦用コンソール本体41は、操舵用コンソール30における第一操作面33を船尾100b側から見た際の操舵用コンソール本体31の左方部31bに、第一回動機構60を介して左方から接続されている。ここでいう左方部31bとは、第一操作面33を船尾100b側から見て、操舵用コンソール本体31を船幅方向で二等分した際の左方に配置されている部分を意味する。
【0027】
ここで、第一回動機構60は、上下方向に延びる第一軸線O1を中心とした円柱状を成す部材である。本実施形態における上下方向とは、甲板1aが広がる方向に対して垂直な方向を意味する。第一回動機構60は、操舵用コンソール本体31に対して回動可能に操舵用コンソール本体31の左方部31bに配置されている。主機操縦用コンソール本体41は、第一回動機構60に接続されている。したがって、主機操縦用コンソール本体41は、操舵用コンソール本体31に対して第一回動機構60回りに回動可能に配置されている。
【0028】
操作面42は、主機操縦用コンソール本体41に配置されているディスプレイである。本実施形態における操作面42は、例えば、主機の運転状態に係る種々のデータを表示するタッチパネルである。操作面42は、例えば、主機の出力回転数を表示する。操作面42は、船体1における船首100a側と船尾100b側とのうち、船尾100b側を向いている。以下、説明の便宜上、主機操縦用コンソール本体41に配置されている操作面42を「第二操作面42」と称する。
【0029】
(通信用コンソール)
通信用コンソール50は、船体1の外部と通信可能な制御盤である。本実施形態における通信用コンソール50は、操舵用コンソール30と船幅方向に並んで配置されている。通信用コンソール50は、通信用コンソール本体51と、操作面52とを有している。
【0030】
通信用コンソール本体51は、通信用コンソール本体51における筐体部分である。通信用コンソール本体51は、甲板1a上に配置された船舶用機器2とケーブルを通じて電気的に接続されている。これによって、通信用コンソール本体51は、船舶用機器2を通じて、船体1の外部と通信を行う。
【0031】
本実施形態における通信用コンソール本体51は、操舵用コンソール30における第一操作面33を船尾100b側から見た際の操舵用コンソール本体31の右方部31aに、第二回動機構70を介して右方から接続されている。ここでいう右方部31aとは、第一操作面33を船尾100b側から見て、操舵用コンソール本体31を船幅方向で二等分した際の右方に配置されている部分を意味する。
【0032】
ここで、第二回動機構70は、上下方向に延びる第二軸線O2を中心とした円柱状を成す部材である。第二回動機構70は、操舵用コンソール本体31に対して回動可能に操舵用コンソール本体31の右方部31aに配置されている。通信用コンソール本体51は、第二回動機構70に接続されている。したがって、通信用コンソール本体51は、操舵用コンソール本体31に対して第二回動機構70回りに回動可能に配置されている。
【0033】
操作面52は、通信用コンソール本体51に配置されているディスプレイである。本実施形態における操作面52は、例えば、船体1の外部との通信状態を表示するタッチパネルである。操作面52は、船体1における船首100a側と船尾100b側とのうち、船尾100b側を向いている。以下、説明の便宜上、通信用コンソール本体51に配置されている操作面52を「第三操作面52」と称する。
【0034】
本実施形態では、主機操縦用コンソール40の第二操作面42及び通信用コンソール50の第三操作面52は、これらの向きと操舵用コンソール30の第一操作面33の向きとが揃った際に、操舵用コンソール30の第一操作面33よりも船尾100b側に配置されている。
【0035】
(操舵用椅子)
操舵用椅子3aは、操舵用コンソール30を操作する乗員が着座した状態で、操舵用コンソール30を操作するための椅子である。操舵用椅子3aは、操舵用コンソール30よりも船尾100b側で、進行方向Dにスライド可能に船体1に配置されている。具体的には、操舵用椅子3aは、船橋121a内における床面121b上で操舵用コンソール30に対して進行方向Dにスライド可能に床面121bに配置されている。船橋121a内における床面121bは、甲板1aが広がる方向と平行に広がっている。
【0036】
(主機操縦用椅子)
主機操縦用椅子4aは、主機操縦用コンソール40を操作する乗員が着座した状態で、主機操縦用コンソール40を操作するための椅子である。主機操縦用椅子4aは、主機操縦用コンソール40よりも船尾100b側で、進行方向Dにスライド可能に船体1に配置されている。具体的には、主機操縦用椅子4aは、船橋121a内における床面121b上で主機操縦用コンソール40に対して進行方向Dにスライド可能に床面121bに配置されている。
【0037】
(通信用椅子)
通信用椅子5aは、通信用コンソール50を操作する乗員が着座した状態で、通信用コンソール50を操作するための椅子である。通信用椅子5aは、通信用コンソール50よりも船尾100b側で、進行方向Dにスライド可能に船体1に配置されている。具体的には、通信用椅子5aは、船橋121a内における床面121b上で通信用コンソール50に対して進行方向Dにスライド可能に床面121bに配置されている。
【0038】
本実施形態では、主機操縦用椅子4a及び通信用椅子5aは、操舵用椅子3aよりも船尾100b側に配置されている。
【0039】
ここで、
図3を参照して、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50が操舵用コンソール30に対して回動した場合について説明する。
図3に示すように、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50が、互いに近づくように操舵用コンソール30に対して回動することで、操舵用椅子3aに着座する乗員は、操舵用コンソール30に加えてこれら主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50を操舵用椅子3aに着座した状態で操作しやすくなる。この際、主機操縦用椅子4a及び通信用椅子5aは、船尾100b側にスライドした状態で固定される。
【0040】
(作用効果)
上記実施形態によれば、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50の両方を、互いが近づくように操舵用コンソール30に対して回動させることができる。つまり、乗員が操舵用コンソール30の第一操作面33で操舵用コンソール30を操作する際、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50の操作性が向上する。即ち、例えば、乗員の数が操船装置3におけるコンソールの数よりも少ない場合であっても、操舵用コンソール30を操作する乗員が、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50を円滑に操作することができる。したがって、人員に応じて円滑に操船することができる。
【0041】
また、第二操作面42及び第三操作面52が、これらの向きと第一操作面33の向きとが揃った際に、第一操作面33よりも船尾100b側に配置されているため、これら第一操作面33、第二操作面42、及び第三操作面52の向きが揃った状態で、乗員が操舵用コンソール30を操作した際に、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50へ目移りすることを抑制することができる。したがって、乗員が操舵用コンソール30の操作に集中することができ、操船装置3をより円滑に操作することができる。
【0042】
また、操舵用椅子3a、主機操縦用椅子4a、及び通信用椅子5aによって、乗員が着座した状態で操舵用コンソール30、主機操縦用コンソール40、及び通信用コンソール50を操作することができる。したがって、操船装置3を操作する乗員の負担を軽減することができる。また、主機操縦用椅子4a及び通信用椅子5aを船尾100b側にスライドさせることによって、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50が操舵用コンソール30に対して回動した際に、主機操縦用椅子4a及び通信用椅子5aが主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50に干渉することを回避することができる。また、この際、操舵用コンソール30を操作する乗員は、操舵用椅子3aを進行方向Dにスライドすることで、好適な位置で複数のコンソールを操作することができる。
【0043】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0044】
なお、実施形態では、操船装置3が、操舵用コンソール30に対して第一回動機構60回りに回動可能に配置されている主機操縦用コンソール40と、操舵用コンソール30に対して第二回動機構70回りに回動可能に配置されている通信用コンソール50とを備えている構成を説明したが、この構成に限定されることはない。操船装置3は、上記第一回動機構60及び第二回動機構70に替えて、第一回動機構61及び第二回動機構71を備えていてもよい。以下、
図4及び
図5を参照して、主機操縦用コンソール40、通信用コンソール50、第一回動機構61、及び第二回動機構71の構成について説明する。
【0045】
図4に示すように、主機操縦用コンソール40は、操舵用コンソール30に隣接して配置されている。具体的には、主機操縦用コンソール40は、操舵用コンソール30の操作面33を船尾100b側から見た際の、操舵用コンソール30の左方側に配置されている。通信用コンソール50は、操舵用コンソール30に隣接して配置されている。具体的には、通信用コンソール50は、操舵用コンソール30の操作面33を船尾100b側から見た際の、操舵用コンソール30の右方側に配置されている。即ち、通信用コンソール50は、上記右方側及び左方側のうち、主機操縦用コンソール40が配置されていない側に配置されている。
【0046】
また、主機操縦用コンソール40の第二操作面42及び通信用コンソール50の第三操作面52は、これらの向きと操舵用コンソール30の第一操作面33の向きとが揃った際に、操舵用コンソール30の第一操作面33よりも船尾100b側に配置されている。
【0047】
第一回動機構61は、上下方向に延びる第一軸線O1を中心とした円柱状を成す部材である。第一回動機構61は、主機操縦用コンソール本体41よりも上下方向における下方で、船体1に対して回動可能に配置されている。図面では、第一回動機構61を点線で示している。第一回動機構61は、主機操縦用コンソール本体41に下方から接続した状態で、主機操縦用コンソール本体41を回動可能に下方から支持している。つまり、仮想軸線としての第一軸線O1は、操舵用コンソール30よりも左方側に配置されている。
図5に示すように、主機操縦用コンソール40は、船体1に対して回動可能に配置されている。ここで、この構成における主機操縦用コンソール本体41と、船体1の内部に配置された主機制御装置とを接続するケーブルは、例えば、第一回動機構61の内部に挿通されている。
【0048】
第二回動機構71は、上下方向に延びる第二軸線O2を中心とした円柱状を成す部材である。第二回動機構71は、通信用コンソール本体51よりも上下方向における下方で、船体1に対して回動可能に配置されている。したがって、第二回動機構71は、上記右方側及び左方側のうち、第一回動機構61が配置されていない側に配置されている。図面では、第二回動機構71を点線で示している。第二回動機構71は、通信用コンソール本体51に下方から接続した状態で、通信用コンソール本体51を回動可能に下方から支持している。つまり、仮想軸線としての第二軸線O2は、操舵用コンソール30よりも右方側に配置されている。
図5に示すように、通信用コンソール50は、船体1に対して回動可能に配置されている。ここで、この構成における通信用コンソール本体51と、甲板1a上に配置された船舶用機器2とを接続するケーブルは、例えば、第二回動機構71の内部に挿通されている。
【0049】
この構成によれば、第一回動機構61及び第二回動機構71が回動可能であるため、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50の両方を、互いが向き合うように回動させることができる。つまり、乗員が操舵用コンソール30の第一操作面33で操舵用コンソール30を操作する際、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50の操作性が向上する。
【0050】
また、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50が操舵用コンソール30に対して回動する構成と比較して、第一回動機構61及び第二回動機構71が回動した際に、主機操縦用コンソール本体41及び通信用コンソール本体51に接続されたケーブルが回動に伴って伸びることを抑制することができる。つまり、これら第一回動機構61及び第二回動機構71が回動した際のケーブルの変位に伴って、ケーブルが擦過し、損傷してしまうことを回避することができる。したがって、操船装置3の信頼性を高めることができる。
なお、主機操縦用コンソール40は、操舵用コンソール30よりも右方側に配置され、通信用コンソール50は、操舵用コンソール30の左方側に配置されてもよい。
【0051】
また、主機操縦用コンソール本体41は、操舵用コンソール本体31の右方部31aに、第二回動機構70を介して右方から接続され、通信用コンソール本体51は、操舵用コンソール本体31の左方部31bに、第一回動機構60を介して左方から接続されてもよい。即ち、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50の操舵用コンソール30に対する配置は、上述した配置と反対であってもよい。
【0052】
また、実施形態では、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50の両方が互いに近づくように操舵用コンソール30に対して回動する構成を説明したが、この構成に限定されることはない。主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50のうち、いずれか一方のみが操舵用コンソール30に対して回動する構成であってもよい。これによっても、少人数で船舶100を円滑に操船することができる。
【0053】
また、実施形態では、第一操作面33、第二操作面42、及び第三操作面52がディスプレイである構成を説明したが、この構成に限定されることはない。これら第一操作面33、第二操作面42、及び第三操作面52は、計器等の計測結果が表示される表示器(メーターやインジケーター)や、機器操作用の機械式のボタン(スイッチ)等が配置される面であってもよい。
【0054】
また、操舵用椅子3a、主機操縦用椅子4a、及び通信用椅子5aは、例えば、これら操舵用椅子3a、主機操縦用椅子4a、及び通信用椅子5aのそれぞれを上下方向に貫くように上下方向に延びる回動軸線(図示省略)回りに回動可能であってもよい。これにより、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50が回動した場合に、操舵用椅子3aが上記回動軸線回りに回動することで、乗員が主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50と正対することができる。したがって、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50の操作性をより向上させることができる。
【0055】
また、上述した第一回動機構60,61及び第二回動機構70,71は、上下方向に延びる円柱状を成す部材に限定されることはない。第一回動機構60,61は、例えば、第一軸線O1を中心に回動可能な球状を成し、第二回動機構70,71は、例えば、第二軸線O2を中心に回動可能な球状を成していてもよい。
したがって、これら第一回動機構60,61及び第二回動機構70,71の形状が限定されることはなく、第一回動機構60,61が第一軸線O1回りに回動可能であり、第二回動機構70,71が第二軸線O2回りに回動可能な構成であればよい。
【0056】
また、操舵用椅子3a、主機操縦用椅子4a、及び通信用椅子5aは、上下方向に折り畳むことが可能な構成であってもよい。これによっても、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50が操舵用コンソール30に対して回動した際に、主機操縦用椅子4a及び通信用椅子5aが主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50に干渉することを回避することができる。
【0057】
また、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50は、主機操縦用椅子4a及び通信用椅子5aが船尾側にスライドした場合にのみ、操舵用コンソール30に対して回動可能となる構成であってもよい。
【0058】
また、操船装置3は、船橋121a内の床面121bに固定され、操舵用コンソール30を中心とした円弧状に延びるレールをさらに備え、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50は、当該レールに沿って、船尾100b側へスライド可能かつ操舵用椅子3aに近接することが可能な構成であってもよい。これによっても、上述の効果を奏することができる。
【0059】
また、実施形態では、船舶100が艦船であると説明したが、これに限定されることはない。船舶100は、上述の艦船に替えて、商船や小型船舶等であってもよい。この場合、船舶100の種類(船種)としては、例えば、液化ガス運搬船、コンテナ船、タンカー、ばら積み船、自動車運搬船、RO-RO貨物船、貨客船(フェリー)、旅客船、漁船、特殊船等が挙げられる。
【0060】
<付記>
実施形態に記載の操船装置、及び船舶は、例えば以下のように把握される。
【0061】
(1)第1の態様に係る操船装置3は、船体1の進行方向Dを変更可能な操舵用コンソール30と、前記船体1を推進させる主機の回転数を調整可能な主機操縦用コンソール40と、前記船体1の外部と通信可能な通信用コンソール50と、を備え、前記操舵用コンソール30の操作面33は、前記船体1の船尾100b側を向き、前記主機操縦用コンソール40は、前記操舵用コンソール30の操作面33を前記船尾100b側から見た際の前記操舵用コンソール30よりも右方側又は左方側に配置され、上下方向に延びる第一軸線O1を中心とした第一回動機構61によって、前記船体1に対して回動可能に配置され、前記通信用コンソール50は、前記右方側及び前記左方側のうち、前記第一回動機構61が配置されていない側に配置され、前記上下方向に延びる第二軸線O2を中心とした第二回動機構71によって、前記船体1に対して回動可能に配置されている。
【0062】
これにより、第一回動機構61及び第二回動機構71が回動可能であるため、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50の両方を、互いが向き合うように回動させることができる。つまり、乗員が操舵用コンソール30の第一操作面33で操舵用コンソール30を操作する際、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50の操作性が向上する。
【0063】
(2)第2の態様に係る操船装置3は、船体1の進行方向Dを変更可能な操舵用コンソール30と、前記船体1を推進させる主機の回転数を調整可能な主機操縦用コンソール40と、前記船体1の外部と通信可能な通信用コンソール50と、を備え、前記操舵用コンソール30の操作面33は、前記船体1の船尾100b側を向き、前記主機操縦用コンソール40は、前記操舵用コンソール30の操作面33を前記船尾100b側から見た際の前記操舵用コンソール30の右方部31a又は左方部31bに配置され、上下方向に延びる第一軸線O1を中心とした第一回動機構60によって、前記操舵用コンソール30に対して回動可能に配置され、前記通信用コンソール50は、前記右方部31a及び前記左方部31bのうち、前記第一回動機構60が配置されていない方に配置され、前記上下方向に延びる第二軸線O2を中心とした第二回動機構70によって、前記操舵用コンソール30に対して回動可能に配置されている。
【0064】
これにより、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50のうち少なくとも一方を、互いが近づくように操舵用コンソール30に対して回動させることができる。つまり、操舵用コンソール30の操作面33で操舵用コンソール30を操作する際、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50のうち少なくとも一方の操作性が向上する。
【0065】
(3)第3の態様に係る操船装置3は、(1)又は(2)の操船装置3であって、前記主機操縦用コンソール40の操作面42及び前記通信用コンソール50の操作面52は、これら操作面42,52の向きと前記操舵用コンソール30の操作面33の向きとが揃った際に、前記操舵用コンソール30の操作面33よりも前記船尾100b側に配置されてもよい。
【0066】
これにより、操舵用コンソール30、主機操縦用コンソール40、及び通信用コンソール50それぞれの操作面33,42,52の向きが揃った状態で操舵用コンソール30を操作した際に、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50へ目移りすることを抑制することができる。
【0067】
(4)第4の態様に係る船舶100は、前記船体1と、(1)から(3)の何れかの操船装置3と、前記操舵用コンソール30よりも前記船尾100b側で、前記進行方向Dにスライド可能に前記船体1に配置された操舵用椅子3aと、前記主機操縦用コンソール40よりも前記船尾100b側で、前記進行方向Dにスライド可能に前記船体1に配置された主機操縦用椅子4aと、前記通信用コンソール50よりも前記船尾100b側で、前記進行方向Dにスライド可能に前記船体1に配置された通信用椅子5aと、を備える。
【0068】
これにより、船舶100の乗員が着座した状態で操舵用コンソール30、主機操縦用コンソール40、及び通信用コンソール50を操作することができる。また、主機操縦用椅子4a及び通信用椅子5aを船尾100b側にスライドさせることによって、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50が操舵用コンソール30に対して回動した際に、主機操縦用椅子4a及び通信用椅子5aが、主機操縦用コンソール40及び通信用コンソール50に干渉することを回避することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…船体 1a…甲板 2…船舶用機器 3…操船装置 3a…操舵用椅子 4a…主機操縦用椅子 5a…通信用椅子 11…船首部 11a…バルバスバウ 12…船体中央部 13…船尾部 13a…スクリュー 13b…舵 30…操舵用コンソール 31…操舵用コンソール本体 31a…右方部 31b…左方部 32…操舵輪 33,42,52…操作面 40…主機操縦用コンソール 41…主機操縦用コンソール本体 50…通信用コンソール 51…通信用コンソール本体 60,61…第一回動機構 70,71…第二回動機構 100…船舶 100a…船首 100b…船尾 120…本体部 121…上部構造 121a…船橋 121b…床面121b D…進行方向 O1…第一軸線 O2…第二軸線