(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013818
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】光波距離計
(51)【国際特許分類】
G01S 17/10 20200101AFI20230119BHJP
G01S 7/483 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G01S17/10
G01S7/483
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118252
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌絵
(72)【発明者】
【氏名】東海林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 淳
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AD02
5J084BA04
5J084BA36
5J084CA03
5J084CA10
5J084CA24
5J084CA33
5J084CA48
5J084CA49
5J084DA01
5J084DA08
5J084EA01
(57)【要約】
【課題】測定距離値の誤差の除去率を向上させることができる光波距離計を提供すること。
【解決手段】光波距離計は、測距光射出部と、受光信号を発する受光信号発生部と、測定対象物までの距離を演算する制御演算部と、を備える。受光信号は、第1測距光に対応する第1断続受光信号411と、第2測距光に対応する第2断続受光信号412と、第3測距光に対応する第3断続受光信号413と、第4測距光に対応する第4断続受光信号414と、を含む。制御演算部は、第1~4断続受光信号の少なくともいずれかの位相を2π・n-π/2または2π・n+π/2だけシフトさせたシフト信号413b、414bを取得し、第1周波数同士および第2周波数同士の少なくともいずれかにおいて、シフト信号413b、414bの位相と、断続受光信号411a、412aの位相と、を比較するエラー判定制御を実行する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を有し、前記発光素子を駆動して測距光を射出する測距光射出部と、
測定対象物からの反射光を受光し、受光信号を発する受光素子を有する受光信号発生部と、
前記受光信号に基づき前記測定対象物までの距離を演算する制御演算部と、
を備え、
前記測距光射出部は、
所定の基準周波数の連続信号である基準周波数信号を発する基準信号発生器と、
前記基準周波数信号により第1周波数で変調された第1変調信号と前記第1周波数に近接する第2周波数で変調された第2変調信号とを生成するとともに前記第1変調信号をパルス化した第1パルス変調信号と前記第2変調信号をパルス化した第2パルス変調信号とを生成する分周器と、
前記第1パルス変調信号を2π・n-π/2または2π・n+π/2に相当する時間だけシフトさせた第3パルス変調信号と前記第2パルス変調信号を2π・n-π/2または2π・n+π/2に相当する時間だけシフトさせた第4パルス変調信号とを発生する位相シフト器と、
前記第1パルス変調信号、前記第2パルス変調信号、前記第3パルス変調信号、および前記第4パルス変調信号に基づいて前記発光素子を駆動し、前記第1パルス変調信号に基づいた第1測距光、前記第2パルス変調信号に基づいた第2測距光、前記第3パルス変調信号に基づいた第3測距光、および前記第4パルス変調信号に基づいた第4測距光を時分割により交互に発光させる発光駆動部と、
を有し、
前記受光信号は、
前記第1測距光に対応する第1断続受光信号と、
前記第2測距光に対応する第2断続受光信号と、
前記第3測距光に対応する第3断続受光信号と、
前記第4測距光に対応する第4断続受光信号と、
を含み、
前記制御演算部は、前記第1~4断続受光信号の少なくともいずれかの位相を前記2π・n-π/2または前記2π・n+π/2だけシフトさせたシフト信号を取得し、前記第1周波数同士および前記第2周波数同士の少なくともいずれかにおいて、前記シフト信号の位相と、前記断続受光信号の位相と、を比較するエラー判定制御を実行することを特徴とする光波距離計。
【請求項2】
前記制御演算部は、前記シフト信号を取得する前記断続受光信号のうち信号幅の中央部分を周波数解析して求めた前記シフト信号の位相と、前記断続受光信号のうち前記信号幅の前記中央部分を周波数解析して求めた前記断続受光信号の位相と、を比較することを特徴とする請求項1に記載の光波距離計。
【請求項3】
前記制御演算部は、前記シフト信号の位相と、前記断続受光信号の位相と、の間の位相差が所定閾値以上である場合に、前記断続受光信号を除去する制御を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の光波距離計。
【請求項4】
前記制御演算部は、前記測定対象物までの距離に応じて前記所定閾値を設定することを特徴する請求項3に記載の光波距離計。
【請求項5】
前記制御演算部は、前記第1断続受光信号と前記第3断続受光信号との中心位置と、前記第2断続受光信号と前記第4断続受光信号との中心位置と、を合致させる制御を実行することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の光波距離計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準信号に対して所望の位相差を有する信号を作成する光波距離計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の近接周波数をパルス化した断続変調信号を近接周波数毎に切り替えて発光素子を発光させ、測定対象物からの反射測距光を受光素子で受光する光波距離計が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
【0003】
例えば特許文献1に開示された光波距離計は、複数の近接周波数に対応する断続受光信号の位相を求めて精密測定距離値を演算し、各断続受光信号の位相差から粗測定距離値を演算し、粗測定距離値と精密測定距離値とを合わせることにより距離を測定する。
【0004】
しかし、測定対象物が段差を有していたり傾斜を有していたりする場合には、特許文献1~3に記載された光波距離計は、測定距離値に誤差を生ずることがあり、測定距離値の誤差を完全には除去できないことがある。この点において、特許文献1~3に記載された光波距離計には、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6410258号公報
【特許文献2】特許第6841726号公報
【特許文献3】特開2018-169371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、測定距離値の誤差の除去率を向上させることができる光波距離計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、発光素子を有し、前記発光素子を駆動して測距光を射出する測距光射出部と、測定対象物からの反射光を受光し、受光信号を発する受光素子を有する受光信号発生部と、前記受光信号に基づき前記測定対象物までの距離を演算する制御演算部と、を備え、前記測距光射出部は、所定の基準周波数の連続信号である基準周波数信号を発する基準信号発生器と、前記基準周波数信号により第1周波数で変調された第1変調信号と前記第1周波数に近接する第2周波数で変調された第2変調信号とを生成するとともに前記第1変調信号をパルス化した第1パルス変調信号と前記第2変調信号をパルス化した第2パルス変調信号とを生成する分周器と、前記第1パルス変調信号を2π・n-π/2または2π・n+π/2に相当する時間だけシフトさせた第3パルス変調信号と前記第2パルス変調信号を2π・n-π/2または2π・n+π/2に相当する時間だけシフトさせた第4パルス変調信号とを発生する位相シフト器と、前記第1パルス変調信号、前記第2パルス変調信号、前記第3パルス変調信号、および前記第4パルス変調信号に基づいて前記発光素子を駆動し、前記第1パルス変調信号に基づいた第1測距光、前記第2パルス変調信号に基づいた第2測距光、前記第3パルス変調信号に基づいた第3測距光、および前記第4パルス変調信号に基づいた第4測距光を時分割により交互に発光させる発光駆動部と、を有し、前記受光信号は、前記第1測距光に対応する第1断続受光信号と、前記第2測距光に対応する第2断続受光信号と、前記第3測距光に対応する第3断続受光信号と、前記第4測距光に対応する第4断続受光信号と、を含み、前記制御演算部は、前記第1~4断続受光信号の少なくともいずれかの位相を前記2π・n-π/2または前記2π・n+π/2だけシフトさせたシフト信号を取得し、前記第1周波数同士および前記第2周波数同士の少なくともいずれかにおいて、前記シフト信号の位相と、前記断続受光信号の位相と、を比較するエラー判定制御を実行することを特徴とする本発明に係る光波距離計により解決される。
【0008】
本発明に係る光波距離計によれば、制御演算部は、第1パルス変調信号により発光された第1測距光に対応する第1断続受光信号と、第2パルス変調信号により発光された第2測距光に対応する第2断続受光信号と、2π・n-π/2または2π・n+π/2に相当する時間だけシフトさせた第3パルス変調信号により発光された第3測距光に対応する第3断続受光信号と、2π・n-π/2または2π・n+π/2に相当する時間だけシフトさせた第4パルス変調信号により発光された第4測距光に対応する第4断続受光信号と、の少なくともいずれかの位相を2π・n-π/2または2π・n+π/2だけシフトさせたシフト信号を取得する。これにより、測定対象物が段差を有していない場合には、取得データの位相に時系列的な変化が生じないため、シフト信号の位相は、互いに同じ周波数で変調された断続受光信号の位相に合致する。そこで、制御演算部は、シフト信号の位相と、互いに同じ周波数で変調された断続受光信号の位相と、を比較するエラー判定制御を実行する。このように、本発明に係る光波距離計は、時系列的に離れた位相のデータをエラー判定に利用することで、エラー判定の精度を向上させ、測定距離値の誤差の除去率を向上させることができる。
【0009】
本発明に係る光波距離計において、好ましくは、前記制御演算部は、前記シフト信号を取得する前記断続受光信号のうち信号幅の中央部分を周波数解析して求めた前記シフト信号の位相と、前記断続受光信号のうち前記信号幅の前記中央部分を周波数解析して求めた前記断続受光信号の位相と、を比較することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る光波距離計によれば、制御演算部は、比較的な綺麗な安定領域のシフトの位相と、比較的な綺麗な安定領域の断続受光信号の位相と、を比較することができる。これにより、本発明に係る光波距離計は、エラー判定の精度をより一層向上させ、測定距離値の誤差の除去率をより一層向上させることができる。
【0011】
本発明に係る光波距離計において、好ましくは、前記制御演算部は、前記シフト信号の位相と、前記断続受光信号の位相と、の間の位相差が所定閾値以上である場合に、前記断続受光信号を除去する制御を実行することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る光波距離計によれば、制御演算部は、シフト信号の位相と、断続受光信号の位相と、の間の位相差が所定閾値以上である場合に、断続受光信号を除去する。そのため、本発明に係る光波距離計は、シフト信号の位相と、断続受光信号の位相と、の間の位相差が所定閾値未満の有効な受光信号を利用しつつ、シフト信号の位相と、断続受光信号の位相と、の間の位相差が所定閾値以上の受光信号を除去して、測定距離値の誤差の除去をより適格に実行することができる。
【0013】
本発明に係る制御演算部において、好ましくは、前記制御演算部は、前記測定対象物までの距離に応じて前記所定閾値を設定することを特徴する。
【0014】
本発明に係る光波距離計によれば、制御演算部は、測定対象物までの距離に応じて設定した所定閾値を用いて、シフト信号の位相と、断続受光信号の位相と、の間の位相差が所定閾値未満の有効な受光信号を利用しつつ、シフト信号の位相と、断続受光信号の位相と、の間の位相差が所定閾値以上の受光信号を除去する。これにより、本発明に係る光波距離計は、測定距離値の誤差の除去をより適格に実行することができる。
【0015】
本発明に係る制御演算部において、好ましくは、前記制御演算部は、前記第1断続受光信号と前記第3断続受光信号との中心位置と、前記第2断続受光信号と前記第4断続受光信号との中心位置と、を合致させる制御を実行することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る制御演算部によれば、第1断続受光信号と第3断続受光信号との中心位置が、第2断続受光信号と第4断続受光信号との中心位置に合致するため、本発明に係る光波距離計は、取得データに誤差が生ずることを抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定距離値の誤差の除去率を向上させることができる光波距離計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る光波距離計の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態のパルス変調信号および断続受光信号を示す説明図である。
【
図3】測定対象物が段差を有する場合を例示する模式図である。
【
図4】本実施形態の受光信号の一例を示す模式図である。
【
図5】本実施形態の制御演算部が実行するエラー判定制御を説明する模式図である。
【
図6】測定対象物が傾斜を有する場合を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る光波距離計の概略構成を示すブロック図である。
図2は、本実施形態のパルス変調信号および断続受光信号を示す説明図である。
【0021】
近年、光波距離計において、受光光量を確保する為、光強度を増大させ、また発光負荷率が所定値以下となる様に、断続的に発光(バースト発光)させるバースト発光方式が採用されている。以下に説明するように、本実施形態に係る光波距離計20は、バースト発光方式を採用した光波距離計である。
【0022】
本実施形態に係る光波距離計20において、基準信号発生器40は、所定の基準周波数fcの基準周波数信号s1を発する。尚、以下に示される数値は、測定距離、測定精度に応じて適宜変更が可能である。例えば、以下の説明では120MHzを基準周波数fcとしている。
【0023】
基準信号発生器40から発せられた基準周波数信号s1は、第1分周器42aおよび第2分周器42bのそれぞれによって基準周波数fcが1/nに分周され、周波数fの分周波信号が生成される。周波数fはfc/nであり、第1分周器42aおよび第2分周器42bのそれぞれが120MHzの基準周波数fcを1/16に分周する分周器である場合、周波数fは7.5MHzとなる。
【0024】
第1分周器42aは、分周波信号と基準周波数信号s1とによりfc-f[Hz](本実施形態では、120-7.5MHz)で変調された第1変調信号を生成する。また、第1分周器42aは、連続信号である第1変調信号をパルス化し、所定時間間隔毎に発せられる断続信号である第1パルス変調信号s2に変換する。従って、第1パルス変調信号s2のパルスには、fc-f(120MHz-7.5MHz)の周波が含まれている。例えば、第1パルス変調信号s2は、第1変調信号がパルス化される位置に基づいて、cosの波形を有する信号になる。そして、第1分周器42aは、第1パルス変調信号s2を発光素子駆動回路32および第1位相シフト器43aに出力する。本実施形態のfc-f[Hz](120-7.5MHz)は、本発明の「第1周波数」の一例である。
【0025】
第2分周器42bは、分周波信号と基準周波数信号s1とによりfc+f[Hz](本実施形態では、120+7.5MHz)で変調された第2変調信号を生成する。また、第2分周器42bは、連続信号である第2変調信号をパルス化し、所定時間間隔毎に発せられる断続信号である第2パルス変調信号s3に変換する。従って、第2パルス変調信号s3のパルスには、fc+f(120MHz+7.5MHz)の周波が含まれている。例えば、第2パルス変調信号s3は、第2変調信号がパルス化される位置に基づいて、cosの波形を有する信号になる。そして、第2分周器42bは、第2パルス変調信号s3を発光素子駆動回路32および第2位相シフト器43bに出力する。本実施形態のfc+f[Hz](120+7.5MHz)は、本発明の「第2周波数」の一例である。
【0026】
このように、第1分周器42aと第2分周器42bとによって、周波数の近接した2つの変調信号、fc+f[Hz]及びfc-f[Hz]が生成されるとともに、変調信号をパルス化したパルス変調信号が生成される。
【0027】
第1位相シフト器43aは、第1パルス変調信号s2と、設定された位相差と、に基づいて位相差に相当するシフト時間を演算し、設定されたシフト方向に、設定されたシフト時間だけ第1パルス変調信号s2をシフトさせた第3パルス変調信号s4を発生し、発光素子駆動回路32に出力する。本実施形態では、第1位相シフト器43aは、-π/2(-90°)位相に相当する時間だけ第1パルス変調信号s2をシフトさせた第3パルス変調信号s4を発生し、発光素子駆動回路32に出力する。第3パルス変調信号s4には、第1パルス変調信号s2と同様に、fc-f[Hz](本実施形態では、120-7.5MHz)の周波が含まれている。第3パルス変調信号s4は、第1パルス変調信号s2を-π/2(-90°)位相に相当する時間だけシフトさせた信号であるため、例えば、第3パルス変調信号s4がパルス化される位置に基づいて、sinの波形を有する信号になる。
【0028】
第2位相シフト器43bは、第2パルス変調信号s3と、設定された位相差と、に基づいて位相差に相当するシフト時間を演算し、設定されたシフト方向に、設定されたシフト時間だけ第2パルス変調信号s3をシフトさせた第4パルス変調信号s5を発生し、発光素子駆動回路32に出力する。本実施形態では、第2位相シフト器43bは、π/2(90°)位相に相当する時間だけ第2パルス変調信号s3をシフトさせた第4パルス変調信号s5を発生し、発光素子駆動回路32に出力する。第4パルス変調信号s5には、第2パルス変調信号s3と同様に、fc+f[Hz](本実施形態では、120+7.5MHz)の周波が含まれている。第4パルス変調信号s5は、第2パルス変調信号s3をπ/2(90°)位相に相当する時間だけシフトさせた信号であるため、例えば、第4パルス変調信号s5がパルス化される位置に基づいて、-sinの波形を有する信号になる。
【0029】
なお、第1位相シフト器43aおよび第2位相シフト器43bのそれぞれがシフトさせるシフト時間は、±π/2(±90°)位相に相当する時間だけに限定されるわけではなく、以下の式で表される位相に相当する時間であってもよい。
式:2π・n+k・2π/a(n=自然数、k=1,2,・・・,a、a=定数)
【0030】
例えば、第1位相シフト器43aは、第1パルス変調信号s2を2π・n-π/2または2π・n+π/2に相当する時間だけシフトさせた第3パルス変調信号s4を発生する。また、例えば、第2位相シフト器43bは、第2パルス変調信号s3を2π・n-π/2または2π・n+π/2に相当する時間だけシフトさせた第4パルス変調信号s5を発生する。以下の説明では、第1位相シフト器43aが第1パルス変調信号s2を-π/2(-90°)位相に相当する時間だけシフトさせた第3パルス変調信号s4を発生し、第2位相シフト器43bが第2パルス変調信号s3をπ/2(90°)位相に相当する時間だけシフトさせた第4パルス変調信号s5を発生する場合を例に挙げる。
【0031】
そして、発光素子駆動回路32は、第1パルス変調信号s2と、第2パルス変調信号s3と、第3パルス変調信号s4と、第4パルス変調信号s5と、を含む発光駆動信号により、発光素子21をバースト発光(断続発光)させる。すなわち、発光素子駆動回路36は、120-7.5MHzで変調された第1変調信号に基づいて生成された第1パルス変調信号s2と、120+7.5MHzで変調された第2変調信号に基づいて生成された第2パルス変調信号s3と、120-7.5MHzで変調され-90°位相分の時間がシフトされた第3パルス変調信号s4と、120+7.5MHzで変調され90°位相分の時間がシフトされた第4パルス変調信号s5と、を含む発光駆動信号により、発光素子21を駆動する。本実施形態の発光素子駆動回路32は、本発明の「発光駆動部」の一例である。
【0032】
発光素子21(例えば、レーザダイオード:LD)は、発光素子駆動回路32によって駆動され、所定周波数に強度変調されたレーザ光線を射出する。レーザ光線は、ハーフミラー(図示せず)によって測距光23a、23bと内部参照光とに分割される。ハーフミラーを透過した測距光23a、23bは、対物レンズ(図示せず)を通して測定対象物(図示せず)に照射される。測定対象物で反射された反射測距光23a’、23b’は、対物レンズ、ハーフミラーを通して受光素子27により受光される。なお、受光素子27としては、フォトダイオード、例えば、アバランシフォトダイオード(APD)が用いられる。
【0033】
発光素子21、発光素子駆動回路32等は、本発明の「測距光射出部」を構成する。受光素子27、受光回路33等は、本発明の「受光信号発生部」を構成する。
【0034】
例えば、
図2(A)に表したように、バースト発光の周期(バースト周期)は、10μs(100kHz)である。また、バースト発光時間は、266nsである。
【0035】
さらに、発光素子駆動回路32は、120MHz-7.5MHz(cos成分)の第1パルス変調信号s2と、120MHz+7.5MHz(cos成分)の第2パルス変調信号s3と、-90゜位相分の時間がシフトされた120MHz-7.5MHz(sin成分)の第3パルス変調信号s4と、90゜位相分の時間がシフトされた120MHz+7.5MHz(sin成分)の第4パルス変調信号s5と、に基づいた発光を時分割により交互に行う(
図2(A)参照)。
【0036】
図2(A)に示す120MHz-7.5MHzの第1パルス変調信号s2および120MHz+7.5MHzの第2パルス変調信号s3に対し、遅れて発せられる120MHz-7.5MHzの第3パルス変調信号s4および120MHz+7.5MHzの第4パルス変調信号s5は、それぞれ-90°位相分および90゜位相分の時間がシフトされた変調信号となっている。
【0037】
従って、発光素子21からは、120MHz-7.5MHzおよび-90゜位相分の時間がシフトされ120MHz-7.5MHzで変調された測距光23a、さらに120MHz+7.5MHzおよび90゜位相分の時間がシフトされ120MHz+7.5MHzで変調された測距光23bが、時分割により交互にバースト発光周期(10μs)でバースト発光される。
【0038】
前述したように、発光素子21から射出されたレーザ光線は、ハーフミラー(図示せず)によって測距光23a、23bと内部参照光とに分割される。測距光23a、23bに対する信号処理と内部参照光に対する信号処理とは、同一である。そのため、以下では測距光23a、23bについて説明する。
【0039】
図1に表したように、反射測距光23a’,23b’が、受光素子27に入射する。
図2(B)に表したように、受光素子27からは、断続受光信号41a,41bが交互に発せられる。断続受光信号41a,41bは、測距光23a,23bに対応している。
【0040】
つまり、反射測距光23a’は、fc-f(120MHz-7.5MHz)の第1パルス変調信号s2および第3パルス変調信号s4に基づいたパルス変調光である。従って、受光素子27から発せられる受光信号は、パルス出力となると共にパルス内部は、fc-f(120MHz-7.5MHz)の周波数を有する断続受光信号41aとなる。また、反射測距光23b’は、fc+f(120MHz+7.5MHz)の第2パルス変調信号s3および第4パルス変調信号s5に基づいたパルス変調光である。従って、受光素子27から発せられる受光信号は、パルス出力となると共にパルス内部は、fc+f(120MHz+7.5MHz)の周波数を有する断続受光信号41bとなる。
【0041】
断続受光信号41aは、266nsの信号幅と、120MHz-7.5MHzと-π/2(-90゜)位相分の時間がシフトされた120MHz-7.5MHzとを含む受光信号となっている。同様に、断続受光信号41bは、266nsの信号幅と、120MHz+7.5MHzとπ/2(90°)位相分の時間がシフトされた120MHz+7.5MHzとを含む受光信号となっている。
【0042】
前述したように、発光素子21の発光周期は、10μs(100kHz)となっている。従って、断続受光信号41a,41bの発生周期(発生間隔)は、10μsとなっている。なお、発光間隔は、測距光が測定対象物に対して往復する時間より充分長く設定され、要求される最大測距距離に対応させ、適宜設定される。
【0043】
断続受光信号41a,41bは、増幅器49で増幅され、ミキシング回路46において120MHzの基準周波数信号とミキシングされ、+7.5MHzと-7.5MHzとの断続変調信号になる。±7.5MHzの断続変調信号は、増幅器44で増幅され、受光回路33に出力される。
【0044】
±7.5MHzの断続変調信号の内、±90゜位相分の時間がシフトされた断続変調信号については、受光回路33によって、時間的に±90゜だけ遅れている断続受光信号を±90゜の時間だけ進める信号処理(復元処理)が行われる。また、±7.5MHzの断続変調信号は、受光回路33で、A/D変換される等、所要の信号処理が行われ、制御演算部37に入力される。±90゜位相分の時間がシフトされた±7.5MHzの断続変調信号について、復元処理が実行されることで、±7.5MHzと位相の異なる±7.5MHzとが時間遅れなしで入力される。
【0045】
制御演算部37は、記憶部38に格納された各種プログラムを実行し、距離測定に必要な所要の演算を実行する。また、制御演算部37は、発光素子駆動回路32を制御し、発光素子駆動回路32を介して発光素子21の発光状態を制御する。また、制御演算部37は、受光素子27に入射する反射測距光23a’、23b’と内部参照光との切替えを行う。
【0046】
さらに、制御演算部37は、受光信号から内部参照光と反射測距光23a’23b’との位相差(受光時間差)を求めて距離を演算する。また、制御演算部37は、内部参照光と反射測距光23a’、23b’との位相差を求めることで、受光回路33のドリフト等回路上の不安定要素を除去する。本実施形態の制御演算部37の動作の詳細については、後述する。
【0047】
記憶部38には、測定に必要な演算の為の各種プログラムが格納されている。例えば、受光素子27から出力される信号を増幅、A/D変換する等の信号処理を実行する為の信号処理プログラム、バースト信号に対して離散フーリエ変換(DFT:discrete Fourier transform)を実行する為の演算プログラム、DFTの結果を位相と振幅とに変換するプログラム、DFTを実行することで得られた1次周波数、2次周波数、・・・の位相と振幅とを抽出する為の演算プログラム等が格納されている。また、記憶部38には、測距結果、演算結果等の各種データが格納される。
【0048】
主制御部39は、光波距離計20の測距作動を制御すると共に制御演算部37の演算処理を制御する。主制御部39と制御演算部37とは、互いに統合された制御部であってもよい。
【0049】
なお、受光素子27には、120MHz+7.5MHzと90゜位相分の時間がシフトされた120MHz+7.5MHzとを含む内部参照光、および120MHz-7.5MHzと-90゜位相分の時間がシフトされた120MHz-7.5MHzとを含む内部参照光が、時分割で入射する。内部参照光が入射した受光素子27から発せられる受光信号も、測距光23a、23bと同様の処理が実行される。
【0050】
内部参照光については、光路長は一定している。そのため、受光回路33等の回路が安定した状態では、発光駆動信号の発生タイミングと、受光回路33が内部参照光を受光し、発する受光信号の発生タイミングと、は固定される。従って、受光回路33等の回路が安定した状態では、受光回路33が内部参照光を受光し、発する断続受光信号の発生タイミングと、発光駆動信号の発生タイミングと、の関係も固定される。そのため、受光回路33が発する内部参照光の受光信号は、発光駆動信号に基づく信号となる。
【0051】
而して、発光素子駆動回路32が発する発光駆動信号を参照用の信号として使用してもよい。
【0052】
次に、本実施形態の制御演算部37の動作を、図面を参照して説明する。
図3は、測定対象物が段差を有する場合を例示する模式図である。
図4は、本実施形態の受光信号の一例を示す模式図である。
図5は、本実施形態の制御演算部が実行するエラー判定制御を説明する模式図である。
【0053】
測定対象物70が段差を有する場合の制御演算部37の動作例について、
図3~
図5を参照して説明する。
以下の説明では、説明の便宜上、120MHz-7.5MHz(cos成分)の第1パルス変調信号s2に基づいて発光素子21から発光された測距光23aを「第1測距光231」と称する。120MHz+7.5MHz(cos成分)の第2パルス変調信号s3に基づいて発光素子21から発光された測距光23bを「第2測距光232」と称する。-90゜位相分の時間がシフトされた120MHz-7.5MHz(sin成分)の第3パルス変調信号s4に基づいて発光素子21から発光された測距光23aを「第3測距光233」と称する。90゜位相分の時間がシフトされた変調信号120MHz+7.5MHz(sin成分)の第4パルス変調信号s5に基づいて発光素子21から発光された測距光23bを「第4測距光234」と称する。
【0054】
図2(A)に関して前述した通り、第1測距光231、第2測距光232、第3測距光233および第4測距光234は、発光素子21からこの順に交互に発光される。第4測距光234が発光された後では、再び、第1測距光231、第2測距光232、第3測距光233および第4測距光234が、発光素子21からこの順に交互に発光される。そのため、
図3に表した第1測距光235は、第1測距光231に相当する。
図3に示した例では、光波距離計20は、測定対象物70に対して左から右へ向かって測距光を走査している。
【0055】
また、以下の説明では、第1測距光231に対応する受光信号を「第1断続受光信号411」と称する。第2測距光232に対応する受光信号を「第2断続受光信号412」と称する。第3測距光233に対応する受光信号を「第3断続受光信号413」と称する。第4測距光234に対応する受光信号を「第4断続受光信号414」と称する。各受光信号が各測距光に対応しているため、
図4に示した通り、第1断続受光信号411、第2断続受光信号412、第3断続受光信号413および第4断続受光信号414は、受光素子27からこの順に交互に発せられる。なお、第1測距光235が第1測距光231に相当するため、第1測距光235に対応する第1断続受光信号415は、第1断続受光信号411に相当する。
【0056】
ここで、
図4に示したように、本実施形態の制御演算部37は、第1断続受光信号411のうち信号幅(本実施形態では266ns)の中央部分の受光信号から比較信号411aを取得する。同様に、制御演算部37は、第2断続受光信号412のうち信号幅の中央部分の受光信号から比較信号412aを取得する。制御演算部37は、第3断続受光信号413のうち信号幅の中央部分の受光信号から比較信号413aを取得する。制御演算部37は、第4断続受光信号414のうち信号幅の中央部分の受光信号から比較信号414aを取得する。
【0057】
また、本実施形態の制御演算部37は、第1~4断続受光信号411、412、413、414の少なくともいずれかの位相を-π/2またはπ/2だけシフトさせたシフト信号を取得する。
図5に示した例では、制御演算部37は、第3断続受光信号413のうち信号幅の中央部分の受光信号から、比較信号413aに対して位相をπ/2(90°)だけシフトさせたシフト信号413bを取得する。同様に、制御演算部37は、第4断続受光信号414のうち信号幅の中央部分の受光信号から、比較信号414aに対して位相を-π/2(-90°)だけシフトさせたシフト信号414bを取得する。
【0058】
そして、制御演算部37は、互いに同じ120MHz-7.5MHzで変調されたシフト信号413bの位相と比較信号411aの位相とを比較するエラー判定制御を実行する。具体的には、制御演算部37は、互いに同じ周波数120MHz-7.5MHzにおいて、第3断続受光信号413のうち信号幅の中央部分(すなわち安定領域)を周波数解析して求めたシフト信号413bの位相と、第1断続受光信号411のうち信号幅の中央部分(すなわち安定領域)を周波数解析して求めた比較信号411aの位相と、を比較するエラー判定制御を実行する。
図3に示したように、測定点P1および測定点P3は、測定対象物70のうちで互いに同一平面上に存在する。そうすると、取得データの位相に時系列的な変化が生じないため、
図5に示すように、第3断続受光信号413のうち信号幅の中央部分(すなわち安定領域)を周波数解析して求めたシフト信号413bの位相が、第1断続受光信号411のうち信号幅の中央部分(すなわち安定領域)を周波数解析して求めた比較信号411aの位相に合致する。
【0059】
これに対して、制御演算部37は、互いに同じ120MHz+7.5MHzで変調されたシフト信号414bの位相と比較信号412aの位相とを比較するエラー判定制御を実行する。具体的には、制御演算部37は、互いに同じ周波数120MHz+7.5MHzにおいて、第4断続受光信号414のうち信号幅の中央部分(すなわち安定領域)を周波数解析して求めたシフト信号414bの位相と、第2断続受光信号412のうち信号幅の中央部分(すなわち安定領域)を周波数解析して求めた比較信号412aの位相と、を比較するエラー判定制御を実行する。
図3に示したように、測定点P2と測定点P4との間には、測定対象物70の段差が存在する。そうすると、取得データの位相に時系列的な変化が生ずるため、
図5に示すように、第4断続受光信号414のうち信号幅の中央部分(すなわち安定領域)を周波数解析して求めたシフト信号414bの位相が、第2断続受光信号412のうち信号幅の中央部分(すなわち安定領域)を周波数解析して求めた比較信号412aの位相に合致しない。
【0060】
そして、制御演算部37は、シフト信号の位相と、断続受光信号の位相と、の間の位相差が所定閾値以上である場合に、断続受光信号を除去する制御を実行する。また、制御演算部37は、測定対象物70までの距離に応じて所定閾値を設定する。本実施形態の制御演算部37は、このようなエラー判定制御を逐次実行する。
【0061】
なお、制御演算部37により取得されたシフト信号413bの位相が、比較信号411aの位相に対して反転している場合がある。すなわち、制御演算部37により取得されたシフト信号413bの位相が、比較信号411aの位相に対してπ(180°)だけずれている場合がある。例えば、シフト信号413bが-cosの波形であり、比較信号411aがcosの波形である場合がある。この場合には、制御演算部37は、シフト信号413bの位相および比較信号411aの位相のいずれか一方を反転させ、位相を反転させたシフト信号413bおよび比較信号411aのいずれか一方の位相と、位相を反転させていないシフト信号413bおよび比較信号411aのいずれか他方の位相と、を比較するエラー判定制御を実行する。これにより、制御演算部37は、前述したエラー判定制御と同様のエラー判定制御を実行できる。これは、シフト信号414bの位相と比較信号412aの位相とを比較するエラー判定制御についても同様である。
【0062】
なお、
図5に示した例において、制御演算部37は、第3断続受光信号413からシフト信号413bを取得したが、第1断続受光信号411のうち信号幅の中央部分の受光信号から、比較信号411aに対して位相を-π/2(-90°)だけシフトさせたシフト信号を取得してもよい。この場合には、制御演算部37は、そのシフト信号の位相と比較信号413aの位相とを比較するエラー判定制御を実行する。また、制御演算部37は、第4断続受光信号414からシフト信号414bを取得したが、第2断続受光信号412のうち信号幅の中央部分の受光信号から、比較信号412aに対して位相をπ/2(90°)だけシフトさせたシフト信号を取得してもよい。この場合には、制御演算部37は、そのシフト信号の位相と比較信号414aの位相とを比較するエラー判定制御を実行する。
【0063】
本実施形態に係る光波距離計20によれば、制御演算部37は、第1パルス変調信号s2により発光された第1測距光231に対応する第1断続受光信号411と、第2パルス変調信号s3により発光された第2測距光232に対応する第2断続受光信号412と、2π・n-π/2または2π・n+π/2に相当する時間だけシフトさせた第3パルス変調信号s4により発光された第3測距光233に対応する第3断続受光信号413と、2π・n-π/2または2π・n+π/2に相当する時間だけシフトさせた第4パルス変調信号s5により発光された第4測距光234に対応する第4断続受光信号414と、の少なくともいずれか(本実施形態では第3、4断続受光信号413、414)の位相を2π・n-π/2または2π・n+π/2だけシフトさせたシフト信号413b、414bを取得する。これにより、測定対象物70が段差を有していない場合には、取得データの位相に時系列的な変化が生じないため、シフト信号413b、414bの位相は、互いに同じ周波数で変調された断続受光信号(本実施形態では第1、2断続受光信号411、412の比較信号411a、412a)の位相に合致する。そこで、制御演算部37は、シフト信号413b、414bの位相と、互いに同じ周波数で変調された断続受光信号(本実施形態では第1、2断続受光信号411、412の比較信号411a、412a)の位相と、を比較するエラー判定制御を実行する。このように、本実施形態に係る光波距離計20は、時系列的に離れた位相のデータをエラー判定に利用することで、エラー判定の精度を向上させ、測定距離値の誤差の除去率を向上させることができる。
【0064】
また、制御演算部37は、信号幅(本実施形態では266ns)の中央部分を周波数解析して求めたシフト信号413b、414bの位相と、信号幅(本実施形態では266ns)の中央部分を周波数解析して求めた第1、2断続受光信号411、412の位相と、を比較する。そのため、制御演算部37は、比較的な綺麗な安定領域のシフト信号413b、414bの位相と、比較的な綺麗な安定領域の第1、2断続受光信号411、412の位相と、を比較することができる。これにより、本実施形態に係る光波距離計20は、エラー判定の精度をより一層向上させ、測定距離値の誤差の除去率をより一層向上させることができる。
【0065】
また、制御演算部37は、シフト信号413b、414bの位相と、第1、2断続受光信号411、412の位相と、の間の位相差が所定閾値以上である場合に、断続受光信号(本実施形態では第2断続受光信号412および第4断続受光信号414)を除去する。そのため、本実施形態に係る光波距離計20は、シフト信号413b、414bの位相と、第1、2断続受光信号411、412の位相と、の間の位相差が所定閾値未満の有効な受光信号を利用しつつ、シフト信号413b、414bの位相と、第1、2断続受光信号411、412の位相と、の間の位相差が所定閾値以上の受光信号を除去して、測定距離値の誤差の除去をより適格に実行することができる。
【0066】
さらに、制御演算部37は、測定対象物70までの距離に応じて設定した所定閾値を用いて、シフト信号413b、414bの位相と、第1、2断続受光信号411、412の位相と、の間の位相差が所定閾値未満の有効な受光信号を利用しつつ、シフト信号413b、414bの位相と、第1、2断続受光信号411、412の位相と、の間の位相差が所定閾値以上の受光信号を除去する。これにより、本実施形態に係る光波距離計20は、測定距離値の誤差の除去をより適格に実行することができる。
【0067】
次に、本実施形態の制御演算部37の他の動作を、図面を参照して説明する。
図6は、測定対象物が傾斜を有する場合を例示する模式図である。
【0068】
まず、発光素子21が発光する第1測距光231、第2測距光232、第3測距光233および第4測距光234は、
図3に関して前述した通りである。また、受光素子27から発せられる第1断続受光信号411、第2断続受光信号412、第3断続受光信号413および第4断続受光信号414は、
図3に関して前述した通りである。
【0069】
ここで、
図6に示すように、測定対象物70が傾斜を有する場合には、互いに同じ120MHz-7.5MHzを有する第1断続受光信号411と第3断続受光信号413との中心位置が、互いに同じ120MHz+7.5MHzを有する第2断続受光信号412と第4断続受光信号414との中心位置からずれることがある。具体的には、
図6に示すずれ値S11のように、第1断続受光信号411に基づいて算出された測定点P1までの距離値と、第3断続受光信号413に基づいて算出された測定点P3までの距離値と、の中心位置C1が、第2断続受光信号412に基づいて算出された測定点P2までの距離値と、第4断続受光信号414に基づいて算出された測定点P2までの距離値と、の中心位置C2からずれることがある。中心位置C1が中心位置C2からずれると、取得データに誤差が生ずる。
【0070】
このような場合、本実施形態の制御演算部37は、測定対象物70までの距離値の算出に使用するデータの選択を変え、第1測距光231、235に対応する第1断続受光信号411、415と第3測距光233に対応する第3断続受光信号413との中心位置C3と、第2測距光232に対応する第2断続受光信号412と第4測距光234に対応する第4断続受光信号414との中心位置C2と、を合致させる制御を実行する。
【0071】
例えば、制御演算部37は、第1断続受光信号411と第1断続受光信号415との中心位置を求め、その中心位置と、第3断続受光信号413と、の中心位置C3を求める。そうすることにより、制御演算部37は、第1断続受光信号411と第3断続受光信号413と第1断続受光信号415とに基づいた中心位置C3と、第2断続受光信号412と第4断続受光信号414との中心位置C2と、を合致させる。
【0072】
本実施形態に係る光波距離計20によれば、第1断続受光信号411、415と第3断続受光信号413との中心位置C3が、第2断続受光信号412と第4断続受光信号414との中心位置C2に合致する。そのため、本実施形態に係る光波距離計20は、取得データに誤差が生ずることを抑えることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0074】
20:光波距離計、 21:発光素子、 23a:測距光、 23a’:反射測距光、 23b:測距光、 23b’:反射測距光、 27:受光素子、 32:発光素子駆動回路、 33:受光回路、 37:制御演算部、 38:記憶部、 39:主制御部、 40:基準信号発生器、 41a、41b:断続受光信号、 42a:第1分周器、42b:第2分周器、 43a:第1位相シフト器、43b:第2位相シフト器、 44:増幅器、 46:ミキシング回路、 49:増幅器、 70:測定対象物、 231:第1測距光、 232:第2測距光、 233:第3測距光、 234:第4測距光、 235:第1測距光、 411:第1断続受光信号、 411a:比較信号、 412:第2断続受光信号、 412a:比較信号、 413:第3断続受光信号、 413a:比較信号、 413b:シフト信号、 414:第4断続受光信号、 414a:比較信号、 414b:シフト信号、 415:第1断続受光信号、 C1、C2、C3:中心位置、 P1、P2、P3、P4:測定点、 S11:ずれ値、 s1:基準周波数信号、 s2:第1パルス変調信号、 s3:第2パルス変調信号、 s4:第3パルス変調信号、 s5:第4パルス変調信号