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特開2023-138255コアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138255
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】コアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20230922BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20230922BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C23C16/455
B01J19/00 N
B01J2/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141698
(22)【出願日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】202210257610.4
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】リー シュイチン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ズァユン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ミンハン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン イーヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジン シン
【テーマコード(参考)】
4G004
4G075
4K030
【Fターム(参考)】
4G004BA00
4G075AA27
4G075BA01
4G075BB10
4G075BD09
4G075BD14
4G075CA45
4G075DA02
4G075EB01
4G075EC01
4G075EC06
4K030CA18
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA10
4K030LA25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被覆後の粉体の純度を向上させ得るとともに、多種類のナノ粒子の被覆に適用可能なコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置及び方法を提供する。
【解決手段】被覆装置は、被覆リング構造21、前駆体搬送装置及び噴射装置を含み、被覆リング構造にナノ粒子を被覆するための前駆体を含む被覆気流を供給し、噴射装置を用いて被覆リング構造内の被覆気流をリング内に位置するナノ粒子合成火炎39中に噴射することにより、ナノ粒子を合成した直後にオンラインその場被覆を行うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状であり、リングがナノ粒子を合成するためのナノ粒子合成火炎を囲むように配置された被覆リング構造と、
前記被覆リング構造の内部に連通し、前記ナノ粒子を被覆するための前駆体を含む被覆気流を前記被覆リング構造の内部に搬送するように構成された前駆体搬送装置と、
前記被覆リング構造の内側の周方向に沿って間隔をおいて複数設けられた噴射装置であって、前記噴射装置は、第1端が前記被覆リング構造の内部に連通し、第2端がリング内に位置し、前記ナノ粒子合成火炎中の前記ナノ粒子に対してオンラインその場被覆を行うために、前記被覆リング構造の内部の前記被覆気流を前記ナノ粒子合成火炎に噴射するように構成された前記噴射装置と、を含む、ことを特徴とするコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置。
【請求項2】
前記噴射装置は、内管及び外管を含むスリーブ構造であり、前記内管と前記外管が前記第2端において形成した環状通路内には螺旋構造が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置。
【請求項3】
前記内管と前記外管はいずれも固定部と可動部を含み、リング内に位置する前記噴射装置が回転可能となり、噴射角度を調整可能とするように、前記可動部は前記固定部に回転可能に取り付けられ、前記可動部と前記固定部は球殻式回転接続によって取り付けられ、前記固定部と前記可動部の端部にはいずれも開口部を有する中空球殻が設けられ、前記可動部の中空球殻が前記固定部の中空球殻に外嵌される、ことを特徴とする請求項2に記載のコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置。
【請求項4】
前記噴射装置は均一に偶数個が配置され、2つの対向する前記噴射装置ごとから噴出された2本の噴流は、対向して衝撃するように噴射されて前記ナノ粒子合成火炎に入る、ことを特徴とする請求項2に記載のコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置。
【請求項5】
前記被覆リング構造の内部に複数の独立したキャビティを有し、複数の前記キャビティは、前記被覆リング構造が径方向に層構造を形成するように、リングの中心軸を回って設けられ、各前記噴射装置中の前記内管と前記外管の前記第1端はそれぞれ異なる前記キャビティに連通し、
前記前駆体搬送装置は、主管及び前記主管に接続された複数本の分岐管を含み、各前記分岐管はそれぞれ1つの前記キャビティに連通し、各前記分岐管にはそれぞれバルブが設けられる、ことを特徴とする請求項2に記載のコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置。
【請求項6】
前記被覆リング構造は、内側から外側へ順に、独立した環状の内側リング気室と外側リング気室を含み、
前記内側リング気室の内部において、リング内に近い気室壁に第1キャビティが設けられ、残りの領域に第2キャビティが形成され、前記第1キャビティは上部に位置する複数の凸気室と下部に位置する1つの環状気室によって形成され、複数の凸気室は前記気室壁の周方向に沿って間隔をおいて設けられ、
前記外側リング気室の内部において、リング内に近い気室壁に第3キャビティが設けられ、残りの領域に第4キャビティが形成され、前記第3キャビティは上部に位置する複数の凸気室と下部に位置する1つの環状気室によって形成され、複数の凸気室は前記気室壁の周方向に沿って間隔をおいて設けられる、ことを特徴とする請求項5に記載のコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置。
【請求項7】
前記外側リング気室と前記内側リング気室内に位置する凸気室は、数が同じであり且つ周方向の配置位置が一致しており、
複数の前記噴射装置は交互に配置された2組に分けられ、
第1組の噴射装置において、前記外管は前記内側リング気室中の凸気室に連通し、前記内管は前記内側リング気室を貫通して前記外側リング気室中の凸気室に連通し、
第2組の噴射装置において、前記外管は前記第2キャビティに連通し、前記内管は前記内側リング気室を貫通して前記外側リング気室中の前記第4キャビティに連通する、ことを特徴とする請求項6に記載のコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置。
【請求項8】
前記前駆体搬送装置に接続され、前駆体を含む溶液にガスを吹き込んで前記被覆気流を形成し、形成された前記被覆気流を前記前駆体搬送装置に搬送するように構成された被覆気流形成装置、及び/又は、
前記被覆リング構造の外側に固定され、前記被覆リング構造を支持し且つ前記被覆リング構造の前記ナノ粒子合成火炎に対する高さを調整するように構成された調整支持フレーム、を更に含み、
前記ナノ粒子合成火炎は、火炎合成燃焼装置によって生成され、前記火炎合成燃焼装置は前記被覆リング構造の下方に設けられ、
前記調整支持フレームは、前記火炎合成燃焼装置に固定的に取り付けられ、ギアラックの噛み合いによる伝動によって前記被覆リング構造の前記火炎合成燃焼装置に対する高さを調整する、ことを特徴とする請求項5に記載のコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置。
【請求項9】
前記被覆気流形成装置は、前記容器外に位置し、前記容器内の溶液を加熱・保温するための予熱装置を更に含み、及び/又は、
前記被覆気流形成装置に接続された前記主管には、気流の流量を調整するようにガスを吹き込むためのガスバイパスが接続され、及び/又は、
前記前駆体搬送装置は、前記主管と前記分岐管の外部を包む加熱部材を更に含む、ことを特徴とする請求項8に記載のコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置。
【請求項10】
被覆リング構造を、ナノ粒子を合成するためのナノ粒子合成火炎を囲むように予め配置するステップと、
前記ナノ粒子合成火炎の中でナノ粒子を合成し、前記被覆リング構造の内部の、ナノ粒子を被覆するための前駆体を含む被覆気流を複数本の噴流のように噴出して前記ナノ粒子合成火炎に入らせ、前記ナノ粒子合成火炎に合成した前記ナノ粒子に対してオンラインその場被覆を行うステップと、を含む、ことを特徴とするコアシェルナノ粒子の気相合成被覆方法。
【請求項11】
前駆体を含む溶液にガスを吹き込んで前記被覆気流を得るステップであって、前記被覆気流に含まれる前駆体の量は、吹き込まれたガスの量によって制御するステップ、及び/又は、
前記被覆気流にバイパスガスを吹き込んで、前記被覆リング構造の内部に搬送するステップ、を更に含む、ことを特徴とする請求項10に記載のコアシェルナノ粒子の気相合成被覆方法。
【請求項12】
各噴流は直流噴流方式、旋回流噴流方式、又は外側の旋回流噴流が内側の直流噴流を包む方式のうちの1種又は数種の方式で噴出し、
前記方法は、前記被覆リング構造の各キャビティに入る被覆気流の流量を制御し、各噴流中の直流噴流と旋回流噴流の流量比を調整して、各噴流の流量と流速を調整するステップ、及び/又は、
各噴流の噴射角度を調整するステップ、及び/又は、
前記ナノ粒子合成火炎の高さ方向に沿った前記被覆リング構造の位置を調整するステップ、を更に含む、ことを特徴とする請求項10に記載のコアシェルナノ粒子の気相合成被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子合成の技術分野に関し、具体的には、高温気相合成によるナノ粒子の表面被覆修飾に適用されるコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子の表面被覆は、ナノ蛍光粒子の発光性能を向上させる手段として、外部環境とのエネルギー交換による蛍光消光を効果的に抑制することができる。現在、コア/シェル構造のナノ粒子の被覆・合成の経路は、主に多段階合成経路及び一段階合成経路の2種類に分けられる。
【0003】
多段階合成経路において、コア粒子の調製と被覆過程は不連続であり、多くは湿式化学法を採用して合成を展開し、例えばまず水熱法を利用してコアナノ蛍光粒子を調製し、それを収集した後にゾルゲル法を利用してその表面に一層のシェル粒子を被覆する。しかしながら、これはより多くの時間とプロセスコストを消費すると共に、操作を難しくし、粒子性能の品質に関する不確実性のリスクを大幅に向上させる。
【0004】
一段階合成法では、ナノ粒子の合成と被覆の過程は、連続的な一体化のユニットで完成され、最終的なナノ粒子生成物を収集すればよい。一段階合成法は、主に気相エアロゾル合成法、例えば霧化火炎合成法に基づくものである。現在、学者は、この技術を利用して、SiOコロイドと硝酸イットリウム、硝酸ユウロピウム塩の混合溶液を前駆体として調製することにより、SiOで被覆されたYSi:Euのコアシェル型ナノ蛍光粒子の合成に成功したが、前駆体溶液にシリカコロイドが含まれるため、シリコン元素は合成過程全体でイットリウム、ユウロピウム元素と十分に混合して反応し、コア粒子には必然的にシリコン元素が含まれる。このような方法は、構成成分としてシリコン元素を含むコア粒子の表面SiO被覆のみに適用され、シリコン元素成分を含まない他のコア粒子に対して適用されず、被覆対象の種類範囲を大幅に制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、独立した被覆リング構造によってナノ粒子を合成した直後にオンラインその場被覆(on-line in-situ coating)を行うことを実現して、従来の被覆方法で被覆材料のコア粒子成分・構造への影響を解決し、被覆後の粉体の純度を向上させることができると共に、より多くの種類のナノ粒子の被覆に適用されるコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、以下の技術的解決手段によって実現できる。
【0007】
本発明の一態様は、
環状であり、リングがナノ粒子合成火炎を囲むように配置された被覆リング構造と、
被覆リング構造の内部に連通し、ナノ粒子を被覆するための前駆体を含む被覆気流を前記被覆リング構造の内部に搬送するように構成された前駆体搬送装置と、
被覆リング構造の内側の周方向に沿って間隔をおいて複数設けられた噴射装置であって、前記噴射装置は、第1端が被覆リング構造の内部に連通し、第2端がリング内に位置し、ナノ粒子合成火炎中のナノ粒子に対してオンラインその場被覆を行うために、被覆リング構造の内部の被覆気流をナノ粒子合成火炎に噴射するように構成された前記噴射装置と、を含むコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置を提供する。
【0008】
本発明の一実施形態では、前記噴射装置は、内管及び外管を含むスリーブ構造であり、内管と外管が第2端において形成した環状通路内には螺旋構造が設けられてもよい。ここで、複数の噴射装置は、被覆リング内の被覆気流を複数本の噴流のように噴出し、且つ各噴流は直流噴流、旋回流噴流、又は外側の旋回流噴流が内側の直流噴流を包むように噴出する。
【0009】
本発明の一実施形態では、前記内管と外管はいずれも固定部と可動部を含み、リング内に位置する噴射装置が回転可能となり、噴射角度を調整可能とするように、前記可動部は固定部に回転可能に取り付けられてもよい。
【0010】
本発明の一実施形態では、前記可動部と固定部は球殻式回転接続によって取り付けられ、前記固定部と可動部の端部にはいずれも開口部を有する中空球殻が設けられ、可動部の中空球殻が固定部の中空球殻に外嵌されてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態では、前記噴射装置は均一に偶数個が配置され、2つの対向する噴射装置ごとから噴出された2本の噴流は、対向して衝撃するように噴射されてナノ粒子合成火炎に入ってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態では、前記被覆リング構造の内部に複数の独立したキャビティを有し、複数のキャビティは、被覆リング構造が径方向に層構造を形成するように、リングの中心軸を回って設けられ、各噴射装置中の内管と外管の第1端はそれぞれ異なるキャビティに連通してもよい。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記前駆体搬送装置は、主管及び主管に接続された複数本の分岐管を含み、各分岐管はそれぞれ1つのキャビティに連通し、各分岐管にはそれぞれバルブが設けられてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記被覆リング構造は、内側から外側へ順に、独立した環状の内側リング気室と外側リング気室を含み、前記内側リング気室の内部において、リング内に近い気室壁に第1キャビティが設けられ、残りの領域に第2キャビティが形成され、前記第1キャビティは上部に位置する複数の凸気室と下部に位置する1つの環状気室によって形成され、複数の凸気室は前記気室壁の周方向に沿って間隔をおいて設けられ、前記外側リング気室の内部において、リング内に近い気室壁に第3キャビティが設けられ、残りの領域に第4キャビティが形成され、前記第3キャビティは上部に位置する複数の凸気室と下部に位置する1つの環状気室によって形成され、複数の凸気室は前記気室壁の周方向に沿って間隔をおいて設けられてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態では、外側リング気室と内側リング気室内に位置する凸気室は、数が同じであり且つ周方向の配置位置が一致してもよい。更に、複数の噴射装置は交互に配置された2組に分けられ、第1組の噴射装置において、外管は内側リング気室中の凸気室に連通し、内管は前記内側リング気室を貫通して外側リング気室中の凸気室に連通し、第2組の噴射装置において、外管は第2キャビティに連通し、内管は内側リング気室を貫通して外側リング気室中の第4キャビティに連通してもよい。
【0016】
本発明の一実施形態では、前記気相合成被覆装置は被覆気流形成装置を更に含み、該被覆気流形成装置は、前記前駆体搬送装置に接続され、前駆体を含む溶液にガスを吹き込んで被覆気流を形成し、形成された被覆気流を前駆体搬送装置に搬送するように構成されてもよい。ここで、前記被覆気流形成装置は、前駆体を含む溶液を収容するための容器、及び容器に取り付けられた吸気管と排気管を含み、前記吸気管は、末端が溶液の液面以下に伸びて溶液内にガスを吹き込んで被覆気流を形成するように構成され、前記排気管は、末端が溶液液面の上方に位置し、他端が前記主管に接続されてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態では、前記被覆気流形成装置は、容器外に位置し、容器内の溶液を加熱・保温するための予熱装置を更に含んでもよい。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記被覆気流形成装置に接続された主管には、気流の流量を調整するようにガスを吹き込むためのガスバイパスが接続されてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態では、前記前駆体搬送装置は、前記主管と分岐管の外部を包む加熱部材を更に含んでもよい。
【0020】
本発明の一実施形態では、前記気相合成被覆装置は、前記被覆リング構造の外側に固定され、前記被覆リング構造を支持し且つ前記被覆リング構造のナノ粒子合成火炎に対する高さを調整するように構成された調整支持フレーム、を更に含んでもよい。
【0021】
本発明の一実施形態では、前記ナノ粒子合成火炎は、火炎合成燃焼装置によって生成され、前記火炎合成燃焼装置は被覆リング構造の下方に設けられてもよい。前記調整支持フレームは前記火炎合成燃焼装置に固定的に取り付けられ、ギアラックの噛み合いによる伝動によって被覆リング構造の火炎合成燃焼装置に対する高さを調整することができる。
【0022】
本発明の一実施形態では、前記調整支持フレームは、接続部材、接続部材に設けられたラック、接続部材に外嵌されたケース、ケース内に位置し且つラックと噛み合うギア、ギアに接続されてギアを駆動するための駆動部材、及びケースに固定された固定座を含み、前記固定座は前記火炎合成燃焼装置に固定的に取り付けられてもよい。
【0023】
本発明の他の態様は、
被覆リング構造を、ナノ粒子合成火炎を囲むように予め配置するステップと、
ナノ粒子合成火炎の中でナノ粒子を合成し、被覆リング構造の内部の、ナノ粒子を被覆するための前駆体を含む被覆気流を複数本の噴流のように噴出してナノ粒子合成火炎に入らせ、ナノ粒子合成火炎に合成したナノ粒子に対してオンラインその場被覆を行うステップと、を含むコアシェルナノ粒子の気相合成被覆方法を提供する。
【0024】
本発明の一実施形態では、前記被覆方法は、前駆体を含む溶液にガスを吹き込んで被覆気流を得るステップを更に含んでもよい。ここで、前記被覆気流に含まれる前駆体の量は、吹き込まれたガスの量によって制御する。
【0025】
本発明の一実施形態では、前記被覆方法は、前記被覆気流にバイパスガスを吹き込んで、被覆リング構造の内部に搬送するステップを更に含んでもよい。
【0026】
本発明の一実施形態では、各噴流は直流噴流方式、旋回流噴流方式、又は外側の旋回流噴流が内側の直流噴流を包む方式のうちの1種又は数種の方式で噴出してもよい。
【0027】
本発明の一実施形態では、前記被覆方法は、被覆リング構造の各キャビティに入る被覆気流の流量を制御し、各噴流中の直流噴流と旋回流噴流の流量比を調整して、各噴流の流量と流速を調整するステップを更に含んでもよい。
【0028】
本発明の一実施形態では、前記被覆方法は、各噴流の噴射角度を調整するステップを更に含んでもよい。
【0029】
本発明の一実施形態では、前記被覆方法は、ナノ粒子合成火炎の高さ方向に沿った被覆リング構造の位置を調整するステップを更に含んでもよい。
【0030】
本発明の他の態様は、ナノ粒子を被覆するための被覆リング構造を提供する。前記被覆リング構造は環状であり、前記被覆リング構造の内部に複数の独立したキャビティを有し、前記キャビティは噴射装置に接続されるように構成され、前記キャビティの内部はナノ粒子を被覆する被覆気流を導入するように構成され、前記被覆気流に前記ナノ粒子を被覆するための前駆体が含まれる。
【0031】
本発明の一実施形態では、複数のキャビティは、前記被覆リング構造が径方向に層構造を形成するように、リングの中心軸を回って設けられ、前記噴射装置は内管と外管を含むスリーブ構造であり、内管と外管の第1端はそれぞれ異なるキャビティに連通してもよい。
【0032】
本発明の一実施形態では、内管と外管が第2端において形成した環状通路内には螺旋構造が設けられてもよい。
【0033】
本発明の一実施形態では、前記被覆リング構造は、内側から外側へ順に、独立した環状の内側リング気室と外側リング気室を含み、前記内側リング気室の内部において、リング内に近い気室壁に第1キャビティが設けられ、残りの領域に第2キャビティが形成され、前記第1キャビティは上部に位置する複数の凸気室と下部に位置する1つの環状気室によって形成され、複数の凸気室は前記気室壁の周方向に沿って間隔をおいて設けられ、前記外側リング気室の内部において、リング内に近い気室壁に第3キャビティが設けられ、残りの領域に第4キャビティが形成され、前記第3キャビティは上部に位置する複数の凸気室と下部に位置する1つの環状気室によって形成され、複数の凸気室は前記気室壁の周方向に沿って間隔をおいて設けられてもよい。
【0034】
本発明の一実施形態では、外側リング気室と内側リング気室内に位置する凸気室は、数が同じであり且つ周方向の配置位置が一致してもよい。複数の噴射装置は交互に配置された2組に分けられ、第1組の噴射装置において、外管は内側リング気室中の凸気室に連通し、内管は前記内側リング気室を貫通して外側リング気室中の凸気室に連通し、第2組の噴射装置において、外管は第2キャビティに連通し、内管は内側リング気室を貫通して外側リング気室中の第4キャビティに連通してもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明にかかるコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置及び方法によれば、独立した被覆リング構造にナノ粒子を被覆するための前駆体を含む被覆気流を供給し、噴射装置を用いて被覆リング構造内の被覆気流をリング内に位置するナノ粒子合成火炎中に噴射することにより、ナノ粒子を合成した直後にオンラインその場被覆を行うことを実現して、被覆材料のコア粒子成分・構造への影響を回避し、被覆後の粉体の純度を向上させることができる。また、本発明の気相合成被覆装置及び方法はより広い適用範囲を有すると共に、被覆の均一性や、効率、精度及び柔軟性を向上させることもできる。
【0036】
また、本発明によれば、被覆リング構造と噴射装置との組み合わせによって、被覆粒子の純度及び均一性に対する柔軟な調整及び制御を更に実現することができる。更に、被覆ガスの噴流位置や、入射運動量及び流動の均一性に対する柔軟な調整と組み合わせて、被覆粒子の純度及び被覆の均一性を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施例におけるコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置の構造概略図である。
図2】本発明の一実施例における被覆リング構造と調整支持フレームの取り付け構造の側面図である。
図3】本発明の一実施例における被覆リング構造と調整支持フレームの取り付け構造の平面図である。
図4】本発明の一実施例における噴射装置を含む被覆リング構造の部分横断面図である。
図5図4のIにおける部分拡大図である。
図6図4のIIにおける部分拡大図である。
図7】本発明の一実施例における螺旋通路の構造概略図である。
図8】本発明の一実施例における一箇所の被覆リング構造の部分縦断面図である。
図9】本発明の一実施例における他の箇所の被覆リング構造の部分縦断面図である。
図10】本発明の一実施例における噴射装置の噴射方向の調整を示す概略図である。
図11】本発明の一実施例における内管中の直流噴流の流れを示す概略図である。
図12】本発明の一実施例における外管中の旋回流噴流の流れを示す概略図である。
図13】本発明の被覆されていないナノ粒子の写真である。
図14】本発明の被覆されたナノ粒子の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施例及び図面を参照しながら、本発明の技術的解決手段について明確かつ完全に説明する。明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例だけであり、全ての実施例ではない。以下の少なくとも1つの例示的な実施例の説明は実際に例示的なものであり、本発明及びその応用又は使用を制限するものではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をしない前提で得られた全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0039】
以下、まず本発明のいくつかの具体的な実施形態について全体的に説明する。
【0040】
本発明に提供されたコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置は、被覆リング構造、前駆体搬送装置、及び噴射装置を含む。本発明によれば、独立した被覆リング構造にナノ粒子を被覆するための前駆体を含む被覆気流を供給し、噴射装置によってその内の被覆気流をリング内に位置するナノ粒子合成火炎(即ち、ナノ粒子を合成するための火炎)中に噴射することにより、火炎に合成されたナノ粒子に対してオンラインその場被覆(on-line in-situ coating)を行うことを実現して、被覆材料のコア粒子成分・構造への影響を回避し、被覆後の粉体の純度を向上させると共に、より多くの種類のナノ蛍光粒子の被覆に適用される。従来の多段階合成経路に比べて、本発明はオンラインその場被覆を実現し、多段階合成経路に存在している操作難度が大きく、被覆の品質が不十分といった問題を克服することができる。ここで、用語「オンラインその場被覆(on-line in-situ coating)」とは、ナノ粒子を合成した直後に元の場所でそのまま被覆を行うことを意味する。
【0041】
本発明の気相合成被覆装置において、前記被覆リング構造は環状、例えば円環状構造であり、且つ内部に被覆気流を収容するキャビティを有し、被覆する時に前記被覆リング構造をナノ粒子合成火炎の外周に外嵌し、即ちナノ粒子合成火炎をリング内に置き、被覆リング構造を用いて火炎に合成されたナノ粒子を被覆する。ここで、前記ナノ粒子合成火炎は火炎合成燃焼装置により噴射され、火炎にナノ蛍光粒子を生成した後、噴射装置により被覆材料を含む被覆気流を供給してナノ粒子と混合させ、それにより被覆を完了する。使用時、リングで噴射された火炎を包むように被覆リング構造を火炎合成燃焼装置の上方、例えば真上に置き、その内のナノ粒子を被覆する。
【0042】
本発明において、用語「被覆リング構造」とは、ナノ粒子(即ちコア)を合成するナノ粒子合成火炎に被覆しようとする物質(即ちシェル)の気相前駆体を導入する構造である。用語「リング内」とは、被覆リング構造の周方向の内側のナノ粒子をコアシェル被覆する空間(即ちナノ粒子のコアシェル構造の合成空間)である。
【0043】
本発明の好ましい実施例では、前記コアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置は、異なるナノ粒子合成後の被覆を満たすために、前記被覆リング構造を支持し、且つ前記被覆リング構造のナノ粒子合成火炎の高さ方向に沿った位置を調整するように構成された調整支持フレームを更に含んでもよい。更に、前記調整支持フレームの上部と下部はそれぞれ被覆リング構造と火炎合成燃焼装置に固定的に取り付けられ、ギアラックの噛み合いによる伝動により両者の距離を調整し、被覆リング構造のナノ粒子合成火炎に対する位置を調整することにより、異なるナノ粒子の合成時の火炎中に位置する高さに基づいて、柔軟に調整し、被覆効果を向上させることができる。
【0044】
本発明の実施形態では、前記被覆リング構造の内部は1つのキャビティを有し、好ましくは、前記被覆リング構造の内部は複数の独立したキャビティを有するようにとされ、且つ複数のキャビティは、被覆リング構造が径方向に層構造を形成するように、リングの中心軸を回って設けられ、各噴射装置中の内管と外管の第1端はそれぞれ異なるキャビティに連通してもよい。上記被覆リング構造の内部とは、構造自体の内部を意味する。該実施例において、内管と外管を異なるキャビティに連通することにより、直流噴流と旋回流噴流の流量に対する個別制御を実現し、被覆気流とナノ粒子の混合の均一性を向上させ、被覆気流の被覆効果を向上させることができる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、前記被覆リング構造は、内側から外側へ順に、独立した環状の内側リング気室と外側リング気室を含んでもよい。ここで、前記内側リング気室の内部において、リング内に近い気室壁に第1キャビティが設けられ、残りの領域に第2キャビティが形成され、前記第1キャビティは上部に位置する複数の凸気室と下部に位置する1つの環状気室によって形成され、複数の凸気室は前記気室壁の周方向に沿って間隔をおいて設けられる。前記外側リング気室の内部において、リング内に近い気室壁に第3キャビティが設けられ、残りの領域に第4キャビティが形成され、前記第3キャビティは上部に位置する複数の凸気室と下部に位置する1つの環状気室によって形成され、複数の凸気室は前記気室壁の周方向に沿って間隔をおいて設けられる。該実施例において、第1キャビティと第3キャビティは、いずれも上部の複数の凸気室と下部の1つの環状気室により構成されるため、被覆気流をよりよく凸気室に集中した後凸気室に設けられた噴射装置により噴出することができる。該実施例の構造がよりコンパクトで、噴射した被覆気流をより柔軟に調整することができ、被覆の均一性を更に向上させ、噴射効果を向上させることができる。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、噴射装置中の内管と外管の取り付けを容易にするために、外側リング気室と内側リング気室内に位置する凸気室は、数が同じであり且つ周方向の配置位置が一致している。更に、複数の噴射装置は交互に配置された2組に分けられる。第1組の噴射装置において、外管は内側リング気室中の凸気室に連通し、内管は前記内側リング気室を貫通して外側リング気室中の凸気室に連通する。第2組の噴射装置において、外管は第2キャビティに連通し、内管は内側リング気室を貫通して外側リング気室中の第4キャビティに連通する。該実施例では、噴射装置は2組に分けられ、1組は第1キャビティと第3キャビティ内の被覆ガスを噴出し、他の組は第2キャビティと第4キャビティ内の被覆ガスを噴出することにより、被覆気流の径方向の均一性を保証し、各キャビティ内に入る被覆ガスを調整することによって円周方向に沿って噴射する被覆気流の均一性に対する柔軟な調整を実現できる。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、前記噴射装置は、被覆リング構造の内側の周方向に沿って間隔をおいて複数設けられる。ここで、前記噴射装置は、第1端が被覆リング構造の内部に連通し、第2端がリング内に位置し、即ち被覆リング構造の内側から伸び出し、前記噴射装置は、ナノ粒子合成火炎中のナノ粒子に対してオンラインその場被覆を行うために、被覆リング構造の内部の被覆気流をナノ粒子合成火炎に噴射するように構成される。更に、前記噴射装置は均一に偶数個が配置されることにより、2つの対向する噴射装置ごとから噴出された2本の噴流は、対向して衝撃するように噴射されてナノ粒子合成火炎に入り、被覆気流が火炎中心で合成されたナノ粒子と混合して被覆を完了することを保証することができる。
【0048】
好ましくは、前記噴射装置はスリーブ構造を採用することにより、各噴射装置が1種の噴流の方式又は2種の噴流を複合した方式で噴射することを実現し、噴射装置の具体的な噴射方式の柔軟な調整を実現できる。前記噴射装置は、内管及び外管を含み、内管と外管が第2端において形成した環状通路内には螺旋構造が設けられ、複数の噴射装置は被覆リング内の被覆気流を複数本の噴流のように噴出する。該実施例において、噴射装置のスリーブ構造が螺旋通路を有するため、噴射装置から噴出された各噴流は、直流噴流、旋回流噴流、又は外側の旋回流噴流が内側の直流噴流を包むように噴出することができ、実情に応じて柔軟に調整することができる。外側の旋回流噴流が内側の直流噴流を包む動作方式を採用する場合、火炎の周方向及び径方向に沿う混合をより均一且つ精確にし、被覆効果が比較的高くなる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、前記内管と外管はいずれも固定部と可動部を含み、リング内に位置する噴射装置が回転可能となり、噴射角度を調整可能とするように、前記可動部は固定部に回転可能に取り付けられる。更に、前記可動部と固定部は、球殻式回転接続によって取り付けられる。具体的には、固定部と可動部の端部にはいずれも開口部を有する中空球殻が設けられ、可動部の中空球殻が固定部の中空球殻に外嵌されて中空球体を形成し、且つ内管と外管の2つの球体が同じ球心で設置されて噴射の均一性が保証される。
【0050】
本発明の気相合成被覆装置において、前記前駆体搬送装置は被覆リング構造の内部のキャビティに連通し、ナノ粒子を被覆するための前駆体を含む被覆気流を前記被覆リング構造の内部に搬送するように構成される。被覆リング構造が複数のキャビティを有する場合、前記前駆体搬送装置は、主管及び主管に接続された複数本の分岐管を含み、各分岐管はそれぞれ1つのキャビティに連通し、且つ各分岐管にはそれぞれバルブが設けられる。それにより、各キャビティに入る被覆気流の流量に対する個別制御を実現し、噴射気流の各方向における均一性を保証できる。具体的には、被覆リング構造の各キャビティに入る被覆気流の流量を制御することにより、各噴流中の直流噴流と旋回流噴流の流量比を調整することができ、各噴流の流量と流速を調整することができる。好ましくは、前記前駆体搬送装置は、前記主管と分岐管の外部を包む加熱部材を更に含み、前記加熱部材によって前駆体搬送装置中の被覆気流を保温し、被覆気流が前駆体を含んだ状態を維持する効果を保証することができる。
【0051】
更に、本発明のコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置は、前駆体搬送装置に接続された被覆気流形成装置を更に含み、前記被覆気流形成装置は、前駆体を含む溶液にガスを吹き込んで被覆気流を形成し、ナノ粒子を被覆するための前駆体被覆気流を前駆体搬送装置に入らせる。ここで、前記被覆気流に含まれる(含まれ、運ばれる)前駆体の量は、吹き込まれたガスの量によって制御する。
【0052】
具体的には、前記被覆気流形成装置は、前駆体を含む溶液を収容するための容器、及び容器に取り付けられた吸気管と排気管を含み、前記吸気管は、末端が溶液の液面以下に伸びて溶液内にガスを吹き込んで被覆気流を形成するように構成され、前記排気管は、末端が溶液液面の上方に位置し、他端が前記主管に接続される。前記被覆気流形成装置は、容器外に位置し、容器内の溶液を加熱・保温するための予熱装置を更に含み、被覆気流の形成効率を向上させることができる。
【0053】
好ましくは、被覆気流形成装置に接続された主管にはガスを吹き込むためのガスバイパスが設けられ、前記ガスバイパスによって被覆気流にガスを吹き込んで、噴射装置の気流流量と流速を保証することができ、被覆効果を保証できる。
【0054】
本発明に提供されたコアシェルナノ粒子の気相合成被覆方法は、被覆リング構造を、ナノ粒子合成火炎を囲むように配置するステップと、ナノ粒子合成火炎の中でナノ粒子を合成し、被覆リング構造内部の、ナノ粒子を被覆するための前駆体を含む被覆気流を複数本の噴流のように噴出してナノ粒子合成火炎に入らせ、ナノ粒子合成火炎に合成したナノ粒子に対してオンラインその場被覆を行うステップと、を含む。
【0055】
以下、更に具体的な実施例及び図1~14を参照して本発明を更に説明する。
【0056】
図1は本発明の一実施例におけるコアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置の構造を概略的に示し、図2及び図3はそれぞれ本実施例における被覆リング構造と調整支持フレームの取り付け構造の側面図と平面図を概略的に示す。図1に示されるように、該コアシェルナノ粒子の気相合成被覆装置は、被覆気流形成装置、前駆体搬送装置、被覆リング構造21、噴射装置、火炎合成燃焼装置及び調整支持フレームを含む。
【0057】
前記調整支持フレームによって被覆リング構造21が火炎合成燃焼装置に取り付けられ、且つ噛合方式によって両者の縦方向の距離が調整可能となり、異なるナノ粒子の合成時の火炎中の位置に基づいて、被覆リング構造21のナノ粒子合成火炎39に対する位置を柔軟に調整することができる。前記調整支持フレームは、接続部材20、接続部材20に設けられたラック19、接続部材20に外嵌されたケース16、ケース16内に位置し且つラック19と噛み合うギア22、ギア22に接続されてギア22を駆動するための駆動部材17、及びケース16に固定された固定座15を含み、前記固定座15は前記火炎合成燃焼装置に固定的に取り付けられる。
【0058】
具体的には、図1及び図2に示されるように、被覆リング構造21の一側壁面に、接続部材20が垂直に固定接続され、接続部材20は例えば矩形断面を有する棒状構造の接続ロッドであり、接続部材20の一側にラック19が設けられる。接続部材20に外嵌されたケース16は、例えば伝動ケース16であり、伝動ケース16は前記固定座15を介して火炎合成燃焼装置14の一側壁面に固定接続される。ラック19と接続部材20が伝動ケース16の内部を貫通できるように、伝動ケース16の上部と下部には開口部が設けられる。伝動ケース16の内部においてラック19の一側にギア22が設けられ、ギア22はラック19と噛合するように配置される。ギア22を駆動するための駆動部材17は、例えば伝動軸17であり、伝動軸17の一端はギア22の中心に垂直に固定され、伝動軸17の他端は伝動ケース16の壁面を貫通し、且つハンドホイール18に固定接続される。ハンドホイール18を時計回り又は反時計回りに回転させることにより、伝動軸17を介してギア22を回転させることができ、相応的に、ギア22の回転によってそれに噛合するラック19を駆動して上下移動を実現し、最終的に、接続部材20及びそれに固定接続された被覆リング構造21を駆動して上下移動を実現し、被覆リング構造21の高さ位置に対する柔軟な調整を実現できる。図2に示されるように、固定ボルト23は伝動ケース16の一側壁面に設けられ、固定ボルト23を回転させることにより、固定ボルト23の伝動ケース16内に伸びる長さを調整することができ、それにより接続部材20の位置に対する固定を実現し、位置決めの役割を果たす。
【0059】
図4は本発明の一実施例における噴射装置を含む被覆リング構造21の部分横断面を概略的に示し、図5及び図6はそれぞれ図4のI及びIIにおける部分拡大図を概略的に示し、図8及び図9はそれぞれ本発明の一実施例における2箇所の被覆リング構造21の部分縦断面を概略的に示す。
【0060】
前記被覆リング構造21の内部は複数のキャビティを有し、且つ複数のキャビティは火炎の径方向に多層構造を形成し、各キャビティに入る被覆気流の流量を制御することによりそれに接続された噴射装置の噴射量を制御して、火炎の径方向における被覆の均一性の調整を実現できる。前記被覆リング構造21は、内側から外側へ順に、独立した環状の内側リング気室29と外側リング気室26を含み、前記内側リング気室29の内部に第1キャビティと第2キャビティを有し、前記外側リング気室26の内部に第3キャビティと第4キャビティを有し、且つ第1キャビティと第3キャビティはいずれも複数の凸気室と1つの環状気室によって形成される。
【0061】
図1に示されるように、該実施例における被覆リング構造21は火炎合成燃焼装置14の真上に設けられ、火炎合成燃焼装置14と同軸に配置され、被覆リング構造21は、火炎合成燃焼装置14の中心から噴射されたナノ粒子合成火炎39を囲んでいる。図4~6及び図8~9に示されるように、前記被覆リング構造21は、内側から外側へ順に、環状を呈する内側リング気室29及び外側リング気室26が設けられる。前記外側リング気室26の内部には外側リング凸気室27と外側リング内気室28を有し、前記内側リング気室29の内部には内側リング内気室30と内側リング凸気室31を有する。
【0062】
具体的には、前記内側リング気室29の内部の中心領域に近い一側には、高さ方向に沿って、上から下へ、内側リング凸気室31と内側リング内気室30が順次配置され、且つ内側リング凸気室31と内側リング内気室30が接続され且つ連通している。前記内側リング内気室30全体は円環状キャビティであり、内側リング気室29内部の中心領域に近い内壁に内嵌され、内側リング凸気室31は3つあり、円周方向に沿って120°間隔で均一に配置され、且つ内側リング気室29内部の中心領域に近い内壁に内嵌され、3つの内側リング凸気室31の2つずつの隣接領域には、それぞれ内側リング間隔気室37が形成され、内側リング間隔気室37は3つある。
【0063】
前記外側リング気室26の内部の中心領域に近い一側に、高さ方向に沿って、上から下へ、外側リング凸気室27と外側リング内気室28が順次配置され、且つ外側リング凸気室27と外側リング内気室28が接続され且つ連通している。前記外側リング内気室28全体は円環状キャビティであり、外側リング気室26内部の中心領域に近い内壁に内嵌され、外側リング凸気室27は3つあり、円周方向に沿って120°間隔で均一に配置され、且つ外側リング気室26の内部の中心領域に近い内壁に内嵌され、3つの外側リング凸気室27の2つずつの隣接領域には、それぞれ外側リング間隔気室38が形成され、外側リング間隔気室38は3つある。
【0064】
図4に示されるように、3つの外側リング凸気室27と3つの内側リング凸気室31は円周方向に沿って同じ角度位置に配置され、凸気室噴射ヘッド24の取り付けを容易にし、間隔気室噴射ヘッド25の取り付けを容易にし、且つ被覆の均一性を保証することができる。
【0065】
再び図3及び図4を参照し、それらは更に噴射装置の被覆リング構造における取り付け構造を概略的に示す。再び図5及び図6を参照し、それらはそれぞれ2組の噴射装置の取り付け状況、スリーブ構造、及び球殻の回転式取り付け方式を更に概略的に示す。
【0066】
図4に示されるように、該実施例における被覆リング構造21に取り付けられた2組の噴射装置において、そのうちの1組は凸気室噴射ヘッド24であり、もう1組は間隔気室噴射ヘッド25である。図3に示されるように、凸気室噴射ヘッド24及び間隔気室噴射ヘッド25の数はいずれも3つであり、3つの前記凸気室噴射ヘッド24及び3つの間隔気室噴射ヘッド25は被覆リング構造21の内側に配置され、具体的には円周方向に沿って60°間隔で均一に配置され、各前記凸気室噴射ヘッド24はそれぞれ内側から外側へ、1つの内側リング凸気室31と1つの外側リング凸気室27に接続され且つ連通し、各間隔気室噴射ヘッド25はそれぞれ内側から外側へ、1つの内側リング間隔気室37と1つの外側リング間隔気室38に接続され且つ連通している。
【0067】
図5に示されるように、前記凸気室噴射ヘッド24は、固定外部ノズル32、可動外部ノズル33、螺旋通路34、可動内部ノズル35、固定内部ノズル36で構成される。ここで、前記固定外部ノズル32は管状構造であり、一端が内側リング凸気室31に接続され且つ連通し、他端が一端に開口部を有する第1外部中空球殻に接続され且つ連通する。前記可動外部ノズル33は管状構造であり、可動外部ノズル33の一端が、一端に開口部を有する第2外部中空球殻に接続され且つ連通し、該第2外部中空球殻全体は固定外部ノズル32端の第1外部中空球殻の外側に外嵌されてもよい。前記固定内部ノズル36は固定外部ノズル32内部の中心軸線に配置され、固定内部ノズル36の一端は順に内側リング凸気室31と内側リング気室29を貫通して、外側リング凸気室27に接続され且つ連通し、前記固定内部ノズル36の他端は一端に開口部を有する第1内部中空球殻に接続され且つ連通する。前記可動内部ノズル35は管状構造であり、可動内部ノズル35の一端が、一端に開口部を有する第2内部中空球殻に接続され且つ連通し、該第2内部中空球殻全体は固定内部ノズル36端の第1内部中空球殻の外側に外嵌されてもよい。前記螺旋通路34は可動内部ノズル35の出口に外嵌されて固定され、螺旋通路34によって螺旋状の気流通路を形成することができ、直流噴流を接線速度を有する旋回流噴流に変換するために用いられる。前記固定外部ノズル32及び可動外部ノズル33の内径はいずれも固定内部ノズル36及び可動内部ノズル35の外径より大きいため、固定外部ノズル32の内側及び可動外部ノズル33の内側はそれぞれ固定内部ノズル36の外側及び可動内部ノズル35の外側と環状気流通路を形成し、且つ両通路が連通する。
【0068】
図6に示されるように、前記間隔気室噴射ヘッド25は、固定外部ノズル32、可動外部ノズル33、螺旋通路34、可動内部ノズル35、固定内部ノズル36で構成される。ここで、前記固定外部ノズル32は管状構造であり、一端が内側リング間隔気室37に接続され且つ連通し、他端が一端に開口部を有する第1外部中空球殻に接続され且つ連通する。前記可動外部ノズル33は管状構造であり、可動外部ノズル33の一端が、一端に開口部を有する第2外部中空球殻に接続され且つ連通し、該第2外部中空球殻全体は固定外部ノズル32端の第1外部中空球殻の外側に外嵌されてもよい。前記固定内部ノズル36は固定外部ノズル32内部の中心軸線に配置され、前記固定内部ノズル36の一端は順に前記内側リング間隔気室37と内側リング気室29を貫通し、外側リング間隔気室38及び外側リング気室26に接続され且つ連通し、前記固定内部ノズル36の他端は一端に開口部を有する第1内部中空球殻に接続され且つ連通される。前記可動内部ノズル35は管状構造であり、可動内部ノズル35の一端が、一端に開口部を有する第2内部中空球殻に接続され且つ連通し、該第2内部中空球殻全体は固定内部ノズル36端の第1内部中空球殻の外側に外嵌されてもよい。前記螺旋通路34は前記可動内部ノズル35の出口に外嵌されて固定され、螺旋通路34によって螺旋状の気流通路を形成することができ、直流噴流を接線速度を有する旋回流噴流に変換するために用いられる。前記固定外部ノズル32及び可動外部ノズル33の内径はいずれも固定内部ノズル36及び可動内部ノズル35の外径より大きいため、固定外部ノズル32の内側及び可動外部ノズル33の内側はそれぞれ固定内部ノズル36の外側及び可動内部ノズル35の外側と環状気流通路を形成し、且つ両通路が連通する。
【0069】
再び図1を参照し、被覆気流形成装置と、前駆体搬送装置と被覆リング構造との接続概略図が概略的に示されている。前記被覆気流形成装置において、前駆体を含む溶液にガスを吹き込んで被覆気流を形成し、ナノ粒子を被覆するための前記前駆体は被覆気流によって運ばれ前駆体搬送装置に入り、前記前駆体搬送装置によって被覆気流を被覆リング構造の内部に送る。
【0070】
具体的には、図1に示されるように、溶液9は、フラスコ11の中下部に充填されており、SiO前駆体を含む液相ヘキサメチルジシロキサン(又は気相に揮発しやすい他の前駆体であってもよい)溶液である。吸気管8は、フラスコ11の上部を貫通して溶液9の内部に延びている。排気管12は、同様にフラスコ11の上部を貫通し、溶液9の液面よりも上方に延びている。前記フラスコ11の外壁に予熱装置10が配置され、前記予熱装置10は電気加熱により発熱し、フラスコ11内の溶液9の温度を30℃~50℃の恒温状態に維持することができる。前記排気管12は一本の円管である。被覆ガス分岐管6は2本の分岐管を含む。被覆ガス四分岐管13は4本の分岐管を含む。前記被覆ガス四分岐管13は一定の柔軟性を有する、被覆リング構造21に追従して上下移動しやすいホースである。被覆ガス分岐管6及び被覆ガス四分岐管13の各本の管路に、各本の管路の流量を調整するためのバルブ5が取り付けられる。前記排気管12のフラスコ11から延びる一端は被覆ガス主管7の一端に接続され且つ連通し、被覆ガス主管7の他端は分岐し、それぞれ被覆ガス分岐管6の一端の2本の分岐管に接続され且つ連通し、前記被覆ガス分岐管6の2本の分岐管の他端はそれぞれ分岐し、それぞれ前記被覆ガス四分岐管13における4本の分岐管の一端に接続され且つ連通する。前記被覆ガス四分岐管13における4本の分岐管の他端はそれぞれ内側リング凸気室入口管1、内側リング気室入口管2、外側リング凸気室入口管3、外側リング気室入口管4に接続され且つ連通する。ここで、前記内側リング凸気室入口管1、内側リング気室入口管2、外側リング凸気室入口管3、外側リング気室入口管4は、管状構造であり、共に被覆リング構造21の一側に配置され、且つすべては被覆リング構造21の底部に配置されてもよい。前記内側リング凸気室入口管1、内側リング気室入口管2、外側リング凸気室入口管3、外側リング気室入口管4は、それぞれ内側リング内気室30、内側リング気室29、外側リング内気室28、外側リング気室26に接続され且つ連通する。
【0071】
図1に示されるように、前記被覆ガス主管7にガスバイパス40が設けられ、前記ガスバイパス40の作用として、ヘキサメチルジシロキサン又は気相に揮発しやすい他の前駆体がいずれも供給可能な流量で、ガスバイパス40内に導入された窒素ガスの流量を調整することにより、最終的に各凸気室噴射ヘッド24と各間隔気室噴射ヘッド25から噴出された総気流の流量と流速が同じであることを保証することである。図1に示されるように、被覆ガス主管7、被覆ガス分岐管6、被覆ガス四分岐管13に、それぞれ経路に沿って加熱ベルトを包んで50℃程度まで保温し、気相前駆体の管路内壁での凝縮損失を防止できる。
【0072】
本発明における噴射装置は2組に分けられ、1組は第1キャビティと第3キャビティに連通し、他の組は第2キャビティと第4キャビティに連通する。ここで、各噴流は図11に示されるような直流噴流の方式で噴出してもよいし、図12に示されるような旋回流噴流の方式で噴出してもよく、又は外側の旋回流噴流が内側の直流噴流を包むように噴出してもよい。図13及び図14は、それぞれ被覆されていないナノ粒子及び被覆されたナノ粒子の写真を概略的に示す。
【0073】
以下、図面を参照して本発明の合成被覆方法の具体的な実施例、即ち2種類の動作シーンについて説明する。もちろん、本発明の適用可能な動作シーンはこれらに限定されるものではない。
【0074】
動作シーン1:3つの凸気室噴射ヘッド24と3つの前記間隔気室噴射ヘッド25は同時に動作する。コアシェルナノ粒子の気相合成被覆過程において、3つの凸気室噴射ヘッド24と3つの間隔気室噴射ヘッド25が同時に動作する使用シーンにおける具体的な方法及び動作過程は以下のとおりである。
【0075】
ステップS10では、火炎合成燃焼装置14を起動し、火炎合成燃焼装置14の上部の中心領域でナノ粒子合成火炎39を形成し、ナノ粒子合成火炎39の中で、ナノ粒子を生成した。
【0076】
ステップS20では、主にSiO前駆体を含む液相ヘキサメチルジシロキサンである溶液9をフラスコ11に加えた後、予熱装置10を起動し、溶液9を30℃付近の恒温に維持した。経路に沿って被覆ガス主管7、被覆ガス分岐管6、被覆ガス四分岐管13に包まれた加熱ベルトを起動し、気相ヘキサメチルジシロキサンの管路内壁での凝縮損失を防止するために、管内温度を50℃付近に維持した。
【0077】
ステップS30では、窒素ガスを加圧により、まず吸気管8を介して溶液9の内部に送り込み、窒素ガスと溶液9との接触、混合及びバブリングの過程において、一定濃度を有する気相ヘキサメチルジシロキサンを含む被覆気流を形成し、続いて排気管12に入り、被覆ガス主管7、被覆ガス分岐管6、被覆ガス四分岐管13を順に流れた。以上の管路により、被覆気流を4本の被覆気流に分け、それぞれ内側リング凸気室入口管1、内側リング気室入口管2、外側リング凸気室入口管3、及び外側リング気室入口管4に供給することができる。この時、気流に含まれるナノ粒子を被覆するための前駆体の量は、実際の必要に応じて入った窒素ガスの流量を調整することで調整できる。
【0078】
ステップS40では、内側リング凸気室入口管1に流入した被覆気流は、内側リング内気室30及びそれに連通した3つの内側リング凸気室31内に順次流入し、最終的に、可動外部ノズル33と可動内部ノズル35との間に形成された環状通路から噴出し、螺旋通路34のサイクロン作用を受けたため、噴出した被覆気流は高速旋回流噴流を形成した。それと同時に、外側リング凸気室入口管3に流入した被覆気流は、外側リング内気室28及びそれに連通した3つの外側リング凸気室27内に順次流入し、最終的に、可動内部ノズル35から噴出して高速直流噴流を形成した。以上の気流組織により、凸気室噴射ヘッド24の出口において内層の直流噴流と外層の旋回流噴流の気流流動が構築された。
【0079】
ステップS50では、内側リング気室入口管2に流入した被覆気流は、内側リング気室29及びそれに連通した3つの内側リング間隔気室37内に順次流入し、最終的に、可動外部ノズル33と可動内部ノズル35との間に形成された環状通路から噴出し、螺旋通路34のサイクロン作用を受けたため、噴出した被覆気流は高速旋回流噴流を形成した。それと同時に、外側リング気室入口管4に流入した被覆気流は、外側リング気室26及びそれに連通した3つの外側リング間隔気室38内に順次流入し、最終的に、可動内部ノズル35から噴出して高速直流噴流を形成した。以上の気流組織により、間隔気室噴射ヘッド25の出口において内層の直流噴流と外層の旋回流噴流の気流流動が構築された。
【0080】
ステップS60では、以上の被覆気流噴流組織により、被覆リング構造21の内側において円周方向に沿って6つの被覆ガス噴流を形成し、この6つの被覆ガス噴流は被覆リング構造21の中心に位置するナノ粒子合成火炎39の内部に噴射され、被覆気流と火炎に生成されたナノ粒子が混合してナノ粒子を被覆した。
【0081】
動作シーン2:3つの間隔気室噴射ヘッド25を動作しなく、3つの凸気室噴射ヘッド24のみを動作する。コアシェルナノ粒子の気相合成被覆過程において、3つの前記間隔気室噴射ヘッド25を動作しなく、3つの凸気室噴射ヘッド24のみを動作する使用シーンにおける具体的な方法及び動作過程は以下のとおりである。
【0082】
ステップS10乃至ステップS30は、動作シーン1と同様である。
【0083】
ステップS40では、内側リング気室入口管2と外側リング気室入口管4に被覆気流を流れないように、内側リング気室入口管2と外側リング気室入口管4に連通した被覆ガス四分岐管13における2本の分岐管上のバルブを閉じた。
【0084】
ステップS50では、内側リング凸気室入口管1に流入した被覆気流は、内側リング内気室30及びそれに連通した3つの内側リング凸気室31内に順次流入し、最終的に、可動外部ノズル33と可動内部ノズル35との間に形成された環状通路から噴出し、螺旋通路34のサイクロン作用を受けたため、噴出した被覆気流は高速旋回流噴流を形成した。それと同時に、外側リング凸気室入口管3に流入した被覆気流は、外側リング内気室28及びそれに連通した3つの前記外側リング凸気室27内に順次流入し、最終的に、可動内部ノズル35から噴出して高速直流噴流を形成した。以上の気流組織により、凸気室噴射ヘッド24の出口において内層の直流噴流と外層の旋回流噴流の気流流動が構築された。
【0085】
ステップS60では、以上の被覆気流噴流組織により、被覆リング構造21の内側において円周方向に沿って3つの被覆ガス噴流を形成し、この3つの被覆ガス噴流は被覆リング構造21の中心に位置するナノ粒子合成火炎39の内部に噴射され、被覆気流と火炎に生成されたナノ粒子が混合してナノ粒子を被覆した。
【0086】
以上の2種類の動作シーンにおいて、独立した被覆リング構造及びそれに設けられた噴射装置によって気相前駆体をそのリング中心の霧化高温火炎フィールドに高速に導入することで、高温気相合成ナノ粒子のオンラインその場被覆を実現した。それと同時に、被覆気流の噴流位置や、入射運動量及び流動の均一性に対する柔軟な調整を組み合わせて、被覆粒子の純度及び被覆の均一性を向上させた。
【0087】
本発明の上記実施形態及び実施例によれば、独立した被覆リング構造にナノ粒子を被覆するための前駆体を含む被覆気流を供給し、噴射装置を用いて被覆リング構造内の被覆気流をリング内に位置するナノ粒子合成火炎中に噴射することにより、ナノ粒子を合成した直後にオンラインその場被覆を行うことを実現して、被覆材料のコア粒子成分・構造への影響を回避し、被覆後の粉体の純度を向上させることができる。また、本発明の気相合成被覆装置及び方法はより広い適用範囲を有すると共に、被覆の均一性、効率、精度及び柔軟性を向上させることもできる。
【0088】
また、本発明の上記実施形態及び実施例によれば、被覆リング構造と噴射装置との組み合わせによって、被覆粒子の純度及び均一性に対する柔軟な調整及び制御を更に実現することができる。更に、被覆ガスの噴流位置や、入射運動量及び流動の均一性に対する柔軟な調整と組み合わせて、被覆粒子の純度及び被覆の均一性を更に向上させることができる。
【0089】
従来技術に比べ、本発明は更に以下の利点と有益な効果を有する。
【0090】
1)合成過程がコンパクトで、一段階で連続的に被覆する。
独立した被覆リング構造を設けることにより、火炎に合成されたナノ粒子に対して一段階で連続的に被覆することができる。被覆前駆体がナノ蛍光コア粒子の生成後に供給される場合に適用し、コア粒子の成分・構造に影響を与えず、複数種類のナノ蛍光粒子の被覆に適用し、且つ被覆後の粉体の純度が高く、収量が大きい。
【0091】
2)コア粒子と外層被覆材を正確にマッチングできる。
調整支持フレームを設置することにより、例えばギアとラックの調整方式を採用することにより、被覆リング構造の火炎の高さ方向に沿った位置を柔軟に調整することができ、異なるナノ粒子の合成反応の時間スケールで、コア粒子の生成時間と外層被覆材料の成長時間とのマッチング要求を満たし、コア粒子と外層被覆材料の正確なマッチング及び効率的な被覆を実現できる。
【0092】
3)火炎の周方向及び径方向に沿う均一の混合を実現して被覆効果を保証できる。
リング内側の周方向に沿って噴射装置を設置して噴射し、例えば円周方向に沿って均一に配置して複数の被覆ガス噴流を噴射することにより、火炎に沿う均一の混合を実現できる。各噴流には直流噴流と旋回流噴流を組み合わせることにより、火炎の周方向に沿う均一の混合及び正確な被覆効果を実現できる。各噴流の間は対向して衝撃するように配置されることにより、各被覆ガス噴流と火炎中のナノ粒子との火炎の径方向に沿う混合を強化することができ、火炎の中心領域の粒子に対する均一の混合及び正確な被覆を実現できる。本発明は、以上の方式により、周方向及び径方向の間に沿う気流の外乱効果を補強することができ、全混流に近い設計を構築し、最終的に火炎の中心領域を含む各領域の粒子に対する均一の混合及び正確な被覆を実現できる。
【0093】
4)周方向に沿って噴出した被覆気流の均一性を柔軟に調整できる。
噴射装置を各キャビティに連通することによって各気流の流量に対する柔軟な制御を実現できる。噴射装置を2組に分けることにより、例えば3つの凸気室ノズルと3つの間隔気室ノズルを円周方向に沿って間隔をおいて均一に設け、独立した気室及びバルブと組み合わせて、3つの凸気室ノズル又は3つの間隔気室ノズルをそれぞれオン又はオフすることを実現でき、円周方向に沿って噴射した被覆気流の均一性に対する柔軟な調整を実現できる。
【0094】
5)各被覆ガス噴流の入射運動量及び混合特性を柔軟に調整できる。
各噴射装置の内管と外管を異なるキャビティに接続することにより、内外管の直流噴流と旋回流噴流との流量比の制御を実現することができる。噴射装置の内管と外管との間に形成された螺旋通路によって外側の旋回流噴流が内側の直流噴流を包む気流流動を構築することができる。外側の旋回流噴流と内側の直流噴流との間の流量比を調整することにより、全体的な噴流流動特性を調整できる。
ここで、外側の旋回流噴流と内側の直流噴流の流量比を増大させる場合、旋回流噴流が主導的な役割を果たし、気流は回転方式でナノ粒子合成火炎に噴射され、被覆用前駆体と火炎に生成されたナノ粒子との間の外乱及び混合効果を強化することに有利であり、円周方向に沿った被覆の均一性を促進できる。外側の旋回流噴流と内側の直流噴流の流量比を減少させる場合、直流噴流が主導的な役割を果たし、気流は比較的大きい運動量でナノ粒子合成火炎に直接噴射され、被覆用前駆体を火炎の中心に直接噴射することに有利であり、径方向に沿った被覆の均一性を促進できる。
【0095】
6)各被覆ガス噴流の噴流方向を柔軟に調整できる。
噴射装置の噴射方向を調整可能とすることにより、例えばリング内に位置する部分を回転可能な構造にし、更に球殻式回転接続を採用することにより、可動外部ノズルと可動内部ノズルの噴射角度に対する柔軟な調整を実現することができ、異なるナノ粉体合成作業状況に基づいて柔軟に調整することに有利である。
【0096】
7)複数種類の前駆体の被覆に適用する。
本発明は、複数種類の前駆体の被覆に適用し、例えば、具体的な実施形態の部分に説明されたSiO以外に、TiO、Feなどの材料の前駆体を利用してナノ粒子への被覆を実現できる。
【0097】
本発明の説明は例示及び説明のために与えられたものであり、網羅するものでなく又は本発明を開示された形式に限定するものではない。当業者であれば、多くの修正や変形が明らかである。実施例を選択して説明することは、本発明の原理や実際の応用をよりよく説明するためであり、特定の用途に適用される様々な実施例を設計することは、当業者が本発明を理解することを可能にするためである。
【符号の説明】
【0098】
1-内側リング凸気室入口管、2-内側リング気室入口管、3-外側リング凸気室入口管、4-外側リング気室入口管、5-バルブ、6-被覆ガス分岐管、7-被覆ガス主管;8-吸気管、9-溶液、10-予熱装置、11-フラスコ、12-排気管、13-被覆ガス四分岐管、40-ガスバイパス;
14-火炎合成燃焼装置、39-ナノ粒子合成火炎、15-固定座、16-伝動ケース、17-伝動軸、18-ハンドホイール、19-ラック、20-接続部材、22-ギア、23-固定ボルト;
21-被覆リング構造、26-外側リング気室、27-外側リング凸気室、28-外側リング内気室、29-内側リング気室、30-内側リング内気室、31-内側リング凸気室;37-内側リング間隔気室、38-外側リング間隔気室;
24-凸気室ノズル、25-間隔気室ノズル、32-固定外部ノズル、33-可動外部ノズル、34-螺旋通路、35-可動内部ノズル、36-固定内部ノズル
図1
図2
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図6
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図10
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