(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138336
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】搬送ベルトのベルト周方向長さの測定方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 21/06 20060101AFI20230922BHJP
G01B 11/04 20060101ALI20230922BHJP
B65G 15/30 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01B21/06 101Z
G01B11/04 101Z
B65G15/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010360
(22)【出願日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2022044242
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祐太
【テーマコード(参考)】
2F065
2F069
3F024
【Fターム(参考)】
2F065AA22
2F065BB01
2F065BB15
2F065DD03
2F065FF11
2F065FF41
2F065GG04
2F065HH04
2F065MM03
2F065PP15
2F065QQ25
2F065RR08
2F069AA34
2F069BB29
2F069DD19
2F069EE09
2F069GG04
2F069GG07
2F069HH09
2F069HH15
2F069JJ13
2F069PP01
3F024CA02
(57)【要約】
【課題】所定幅を有する搬送ベルトの幅方向の両端のベルト周方向の長さを正確、且つ、迅速に測定する方法及び測定装置を提供する。
【解決手段】搬送ベルト4の幅方向の一方側の端部41のみを、第1プーリ2と第2プーリ3との間に巻き掛けて、所定の張力を付与した状態で端部41のベルト周方向の長さを測定する工程と、搬送ベルト4の幅方向の他方側の端部42のみを、第1プーリ2と第2プーリ3との間に巻き掛けて、所定の張力を付与した状態で端部42のベルト周方向の長さを測定する工程とを含む、搬送ベルト4のベルト周方向長さの測定方法であり、更に搬送ベルト4の端部41のベルト周方向の長さと搬送ベルト4の端部42のベルト周方向の長さとの差が、予め設定した所定の閾値以下の場合には合格と判断し、所定の閾値を超える場合には不合格と判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ベルトの幅方向の一方側の端部をプーリ間に掛けて当該一方側の端部のベルト周方向の長さを測定する工程と、
前記搬送ベルトの幅方向の他方側の端部をプーリ間に掛けて当該他方側の端部のベルト周方向の長さを測定する工程と、
を含む搬送ベルトのベルト周方向長さの測定方法。
【請求項2】
前記測定した、前記搬送ベルトの幅方向の一方側の端部のベルト周方向の長さと、前記搬送ベルトの幅方向の他方側の端部のベルト周方向の長さとの差を算出する工程と、
前記算出した差が、予め設定した所定の閾値以下の場合に合格と判断し、前記算出した差が、前記所定の閾値を超える場合に不合格と判断する工程と、
を含む、請求項1に記載の搬送ベルトのベルト周方向長さの測定方法。
【請求項3】
前記プーリの外周の幅方向の長さは、5mm以上、かつ、前記搬送ベルトの全幅の半分以下である、請求項1に記載の搬送ベルトのベルト周方向長さの測定方法。
【請求項4】
記憶装置に記憶した、前記搬送ベルトにおける、ベルト厚み方向の張力負担部分に相当する位置である、ピッチ高さを踏まえた、前記搬送ベルトの幅方向の両端の、前記ピッチ高さ位置でのベルト周方向の長さをそれぞれ測定する、請求項1に記載の搬送ベルトのベルト周方向長さの測定方法。
【請求項5】
前記プーリ間に巻き掛けた前記搬送ベルトの外周を、幅方向に接触して押圧する、請求項1に記載の搬送ベルトのベルト周方向長さの測定方法。
【請求項6】
前記プーリ間に巻き掛けた前記搬送ベルトの外周を、幅方向に接触して押圧する位置は、前記搬送ベルトが掛けられる2つのプーリの共通接線の接点間を結ぶ直線から、前記搬送ベルトの外周側に、「前記搬送ベルトの厚み-0.5mm」以上、「前記搬送ベルトの厚み+1.0mm」以下の範囲内の距離にある、請求項5に記載の搬送ベルトのベルト周方向長さの測定方法。
【請求項7】
搬送ベルトの幅方向の一方側の端部をプーリ間に掛けて、所定の張力を付与した状態で、前記一方側の端部のベルト周方向の長さを測定する、測定装置であって、
前記プーリの外周の幅方向の長さは、5mm以上、かつ、前記搬送ベルトの全幅の半分以下である、搬送ベルトのベルト周方向長さを測定する測定装置。
【請求項8】
前記プーリ間に巻き掛けた前記搬送ベルトの外周を、幅方向に接触して押圧する、少なくとも1つの押さえ部材を備えた、請求項7に記載の搬送ベルトのベルト周方向長さを測定する測定装置。
【請求項9】
前記押さえ部材は、前記搬送ベルトが掛けられる2つのプーリの共通接線の接点間を結ぶ直線から、前記搬送ベルトの外周側に、「前記搬送ベルトの厚み-0.5mm」以上、「前記搬送ベルトの厚み+1.0mm」以下の範囲内の距離に配置されている、請求項8に記載の搬送ベルトのベルト周方向長さを測定する測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリ間に巻き掛けられた搬送ベルトの周方向長さを測定する方法、及び、それを測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ベルトの長さを測定する装置(検尺装置)としては、例えば、特許文献1に開示されるような装置が挙げられる。特許文献1に開示されるのは、一対の測定用のプーリに伝動ベルトを架け渡し、両プーリを互いに引き離す方向の所定の力を加えた状態で両プーリの軸間距離を測定して伝動ベルトの長さを測定する装置である。このような装置では、1本のベルトに対して、1つのベルト長さが測定されることになる。つまり、ベルトの幅方向の両端部における長さの差(ベルトの左右の長さの差)を測定することはできない。
【0003】
ところで、伝動ベルトと同じ「ベルト」と呼ばれるものの中に、ベルトコンベヤ装置などに使用される搬送ベルトがある。このベルトコンベヤ装置では、駆動プーリを含む複数のプーリに無端状(環状)の搬送ベルトが取り付けられている。搬送ベルトは、ポリエステルなどの合成繊維で形成された基布(芯体帆布)にポリ塩化ビニルやポリウレタンなどの樹脂(またはエラストマー)を積層した構造をしている。基布は、張力を担う部分であり、通常、プーリと接触する側に向けられ、基布の裏面側にあたる樹脂層が搬送面になるようにベルトコンベヤ装置に取り付けられている。搬送ベルトは、駆動プーリからの駆動力を受けて回転運動を行い、搬送ベルト上に積載された搬送物を搬送可能となっている。搬送ベルトの幅は、搬送物の大きさによってさまざまな広さのものがあるが、製品によっては幅が2000mm程度と非常に広いものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように幅の広い搬送ベルトでは、伝動ベルトの場合にはあまり問題とならない、ベルトの幅方向の両端部における長さの差が問題になる場合がある。具体的には、搬送ベルトの幅方向の両端部における長さの差が大きい場合、搬送ベルトを走行させると幅方向の片側へ片寄りながら走行する「片寄り走行」が発生しやすくなる。この「片寄り走行」が発生すると、搬送ベルトがプーリから逸脱して外れやすくなる。そのため、搬送ベルトではベルトの幅方向の両端部における長さの差を小さくする要請があり、ベルトの幅方向の両端部における長さを個別に測定する必要がある。
【0006】
また、ベルトの長さを測定する際の別の問題点として、ベルトが長さ測定用のプーリに十分に沿わずに、浮き上がりが発生することが挙げられる。この問題は、ベルトの曲げ剛性が大きい場合や、ベルトの伸びや損傷を防ぐためにプーリを引き離す方向に加える力を大きくできない場合などに顕著となる。ベルトが測定用プーリに十分に沿っていない場合、計算によって求めたベルト長さは、実際のベルト長さよりも短くなるため、正確なベルト長さを測定できない。
【0007】
このように、搬送ベルトの長さを測定するに際し、伝動ベルト用の長さ測定装置は十分な機能を有しているとは言い難く、これまでは定規などを使った手作業での測定が行われるのが通例であった。具体的には、
図8に示すように、搬送ベルトを平坦な机の上などに置き、平坦部の長さを鋼製巻尺や金属製直尺で繰り返し測定し、その合計を搬送ベルトのベルト長さとしている。
図8の例では、まず平坦部A-B間の長さを測定した後、搬送ベルトを回転させてB-C部が平坦部となるように配置し、平坦部B-C間の長さを測定する。以後同様に搬送ベルトの回転と測定とを繰り返し、C-D間、D-A間の長さを測定する。そして、測定した平坦部分の長さを合計して、搬送ベルト全体の長さを算出する。この方法で求められるベルト長さは、搬送ベルトの厚み方向の中心部分を結んだ長さ(中心長さ)である。この中心長さと搬送ベルトの厚み方向の位置関係を基に、搬送ベルトの内周長さや張力を担う部分に相当する長さ(ピッチ長さ)なども計算できる。
【0008】
しかしながら、このような測定を搬送ベルトの幅方向の両端(左端と右端)で行うことで搬送ベルトの左右の長さを求めることができるが、工数が多くかかる上に、測定者による誤差も発生しやすかった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、所定幅を有する搬送ベルトの幅方向の両端のベルト周方向の長さを正確、且つ、迅速に測定する方法及び測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、搬送ベルトの幅方向の一方側の端部をプーリ間に掛けて当該一方側の端部のベルト周方向の長さを測定する工程と、
前記搬送ベルトの幅方向の他方側の端部をプーリ間に掛けて当該他方側の端部のベルト周方向の長さを測定する工程と、
を含む搬送ベルトのベルト周方向長さの測定方法である。
【0011】
上記方法によれば、所定幅を有する搬送ベルトの幅方向の両端のベルト周方向の長さをそれぞれ別個に測定することで、片寄り走行の原因となる、搬送ベルトの幅方向の両端におけるベルト周方向の長さの違いを検出できる。
【0012】
また、本発明は、上記ベルト周方向長さの測定方法において、
前記測定した、前記搬送ベルトの幅方向の一方側の端部のベルト周方向の長さと、前記搬送ベルトの幅方向の他方側の端部のベルト周方向の長さとの差を算出する工程と、
前記算出した差が、予め設定した所定の閾値以下の場合に合格と判断し、前記算出した差が、前記所定の閾値を超える場合に不合格と判断する工程と、
を含んでいてもよい。
【0013】
上記方法によれば、搬送ベルトの幅方向の両端のベルト周方向の長さの差を算出し、この差に基づき搬送ベルトに求められる、幅方向の両端におけるベルト周方向の長さの適否を自動的に判断することができる。これにより、測定者の利便性が向上する。
【0014】
また、本発明は、上記ベルト周方向長さの測定方法において、
前記プーリの外周の幅方向の長さが、5mm以上、かつ、前記搬送ベルトの全幅の半分以下であることを特徴としてもよい。
【0015】
上記方法によれば、搬送ベルトの端部のみをプーリ間に掛けて、搬送ベルトの幅方向の両端のベルト周方向の長さをそれぞれ測定できる。プーリの外周の幅方向の長さ(プーリ軸方向の長さ)が長すぎると搬送ベルトの端部のみをプーリに掛ける際に調節が必要となり、工数が増大する。一方、プーリの外周の幅方向の長さが短すぎると搬送ベルトがプーリから外れやすくなり、測定が困難となる。
【0016】
また、本発明は、上記ベルト周方向長さの測定方法において、
記憶装置に記憶した、前記搬送ベルトにおける、ベルト厚み方向の張力負担部分に相当する位置である、ピッチ高さを踏まえた、前記搬送ベルトの幅方向の両端の、前記ピッチ高さ位置でのベルト周方向の長さをそれぞれ測定してもよい。
【0017】
上記方法によれば、搬送ベルトにおいて、ベルト厚み方向における張力負担部分に相当する位置であるピッチ高さ(例えば芯体帆布層の中心位置)を結ぶベルト周方向の長さ(ピッチ周長さ)をそれぞれ測定することができる。実用的に用いられているピッチ周長さも測定することができ、更に、利便性が向上する。
【0018】
また、本発明は、上記ベルト周方向長さの測定方法において、
前記プーリ間に巻き掛けた前記搬送ベルトの外周を、幅方向に接触して押圧してもよい。
【0019】
上記方法によれば、搬送ベルトの端部にしかプーリが接触しないので、搬送ベルトとプーリとが接触していない部分で搬送ベルトが外周側に膨らみ、測定精度が低下する場合がある。そこで、プーリ間に巻き掛けた搬送ベルトの外周を、幅方向に接触して押圧した状態で、搬送ベルトの両端部のベルト周方向の長さを測定することにより、測定精度を向上させることができる。
【0020】
また、本発明は、上記ベルト周方向長さの測定方法において、
前記プーリ間に巻き掛けた前記搬送ベルトの外周を、幅方向に接触して押圧する位置が、前記搬送ベルトが掛けられる2つのプーリの共通接線の接点間を結ぶ直線から、前記搬送ベルトの外周側に、「前記搬送ベルトの厚み-0.5mm」以上、「前記搬送ベルトの厚み+1.0mm」以下の範囲内の距離にあることを特徴としてもよい。
【0021】
搬送ベルトの外周を押圧する位置が、2つのプーリの共通接線の接点間を結ぶ直線から離れすぎた場合(「搬送ベルトの厚み+1.0mm」を超える場合)には、搬送ベルトを押圧することができない、或いは、押圧力が弱くなり、搬送ベルトの外周側への膨らみを十分に押さえることができない虞がある。一方、搬送ベルトの外周を押圧する位置が、2つのプーリの共通接線の接点間を結ぶ直線に近すぎる場合(「搬送ベルトの厚み-0.5mm」未満)には、搬送ベルトがプーリに巻き付く角度が大きくなり過ぎて、測定精度が低下する。
そこで、搬送ベルトの外周を、幅方向に接触して押圧する位置を上記範囲内にすることにより、上記問題を解決した。
【0022】
また、本発明は、搬送ベルトの幅方向の一方側の端部をプーリ間に掛けて、所定の張力を付与した状態で、前記一方側の端部のベルト周方向の長さを測定する、測定装置であって、
前記プーリの外周の幅方向の長さは、5mm以上、かつ、前記搬送ベルトの全幅の半分以下であることを特徴としている。
【0023】
上記構成によれば、所定幅を有する搬送ベルトの幅方向の両端のベルト周方向の長さをそれぞれ別個に測定することで、片寄り走行の原因となる、搬送ベルトの幅方向の両端におけるベルト周方向の長さの違いを検出できる。
【0024】
また、本発明は、上記ベルト周方向の長さを測定する測定装置において、
前記プーリ間に巻き掛けた前記搬送ベルトの外周を、幅方向に接触して押圧する、少なくとも1つの押さえ部材を備えていてもよい。
【0025】
上記構成によれば、搬送ベルトの端部にしかプーリが接触しないので、搬送ベルトとプーリとが接触していない部分で搬送ベルトが外周側に膨らみ、測定精度が低下する場合がある。そこで、プーリ間に巻き掛けた搬送ベルトの外周を、幅方向に接触して押圧した状態で、搬送ベルトの両端部のベルト周方向の長さを測定することにより、測定精度を向上させることができる。
【0026】
また、本発明は、上記ベルト周方向の長さを測定する測定装置において、
前記押さえ部材が、前記搬送ベルトが掛けられる2つのプーリの共通接線の接点間を結ぶ直線から、前記搬送ベルトの外周側に、「前記搬送ベルトの厚み-0.5mm」以上、「前記搬送ベルトの厚み+1.0mm」以下の範囲内の距離に配置されていることを特徴としてもよい。
【0027】
搬送ベルトの外周を押圧する位置が、2つのプーリの共通接線の接点間を結ぶ直線から離れすぎた場合(「搬送ベルトの厚み+1.0mm」を超える場合)には、搬送ベルトを押圧することができない、或いは、押圧力が弱くなり、搬送ベルトの外周側への膨らみを十分に押さえることができない虞がある。一方、搬送ベルトの外周を押圧する位置が、2つのプーリの共通接線の接点間を結ぶ直線に近すぎる場合(「搬送ベルトの厚み-0.5mm」未満)には、搬送ベルトがプーリに巻き付く角度が大きくなり過ぎて、測定精度が低下する。
そこで、搬送ベルトの外周を、幅方向に接触して押圧する位置を上記範囲内にすることにより、上記問題を解決した。
【発明の効果】
【0028】
所定幅を有する搬送ベルトの幅方向の両端のベルト周方向の長さを正確、且つ、迅速に測定する方法及び測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】搬送ベルトをセットした測定装置の斜視図、及び、測定装置の上面図
【
図3】
図2の搬送ベルトをセットした測定装置の側面図
【
図7】(A)実施例1の「測定装置で測定した長さ」と「手作業で測定した長さ」との差を示す棒グラフ(B)実施例2の「測定装置で測定した長さ」と「手作業で測定した長さ」との差を示す棒グラフ
【
図8】従来のベルト周長の測定方法の説明図(ベルトの側面図)
【
図9】その他の実施形態2に係る荷重付与機構を備えた測定装置の説明図
【
図10】その他の実施形態2に係る、搬送ベルトに対する張力付与手順の説明図
【
図11】その他の実施形態2に係る、搬送ベルトに対する張力付与手順の説明図
【
図12】その他の実施形態3に係る固定支持プレート及び可動支持プレートの説明図
【
図13】その他の実施形態4に係る第1プーリ及び第2プーリの説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、
図1に示す、第1プーリ2と第2プーリ3との間に、搬送ベルト4のベルト幅方向の一方側の端部41のみ(又は他方側の端部42のみ)を巻き掛けて、搬送ベルト4のベルト幅方向の一方側の端部41(又は他方側の端部42)のベルト周方向の長さを測定する測定装置1を例示して説明する。
【0031】
(測定装置1)
測定装置1は、
図1に示すように、直線状のガイドレール11と、ガイドレール11の一方端に固定された固定支持プレート12と、ガイドレール11上を移動自在な可動支持プレート13と、可動支持プレート13をガイドレール11の他方端側に引き寄せる荷重付与機構14と、演算装置15と、演算装置15に接続された表示部16とを備えている。
【0032】
(ガイドレール11)
ガイドレール11は、直線状のレールであり、一方端に固定支持プレート12が固定されており、他方端には、荷重付与機構14が設けられている。そして、固定支持プレート12と後述する荷重付与機構14との間で、ガイドレール11上を移動自在な可動支持プレート13(可動支持プレート13の下側に取り付けられたキャリッジ(不図示)がガイドレール11上を移動する)が、ガイドレール11に載置されている。
【0033】
(固定支持プレート12及び可動支持プレート13)
固定支持プレート12は、プレート状の台座であり、第1プーリ2、2本の押さえ部材61、62、レーザー測長器5のレーザー送受信部51が設置されている。
可動支持プレート13は、プレート状の移動式の台座であり、第2プーリ3、2本の押さえ部材63、64、レーザー測長器5の反射部52が設置されている。また、可動支持プレート13には、ガイドレール11上の任意の位置で固定するストッパーが設けられている(不図示)。
【0034】
(第1プーリ2及び第2プーリ3)
第1プーリ2及び第2プーリ3は、
図1及び
図3に示すように、同種のプーリであり、第1プーリ2の中心軸と第2プーリ3の中心軸とを結ぶ線がガイドレール11と平行になるように、固定支持プレート12及び可動支持プレート13にそれぞれ固定されている。
第1プーリ2及び第2プーリ3は、搬送ベルト4が第1プーリ2及び第2プーリ3に沿いやすく、測定精度を向上できる観点からは、プーリ径は大きい方が好ましい。一方で、ベルト周方向の長さが短い搬送ベルト4を測定可能とする観点からは、プーリ径は小さい方が好ましい。そのため、第1プーリ2及び第2プーリ3の外径は20mm~100mm程度の範囲であるのが好ましい。
なお、第1プーリ2及び第2プーリ3の形状は、必ずしも円形状でなくてもよく、半円形状、円形状の一部を切り欠いた形状(後述のその他の実施形態4参照)であってもよい。
【0035】
また、第1プーリ2と第2プーリ3との間に、搬送ベルト4の幅方向の一方側の端部41のみ又は他方側の端部42のみを巻き掛けて、搬送ベルト4の幅方向の両端(端部41、端部42)のベルト周方向の長さをそれぞれ別個に測定する観点からは、第1プーリ2及び第2プーリ3の各外周の幅方向の長さPH(軸方向の長さ)は短い方が好ましい。一方で、あまり短くし過ぎると搬送ベルト4が第1プーリ2及び第2プーリ3から外れやすくなり、測定が困難となる。そこで、第1プーリ2及び第2プーリ3の各外周の幅方向の長さPH(軸方向の長さ)は、5mm以上、かつ、搬送ベルト4の全幅(ベルト幅)の半分以下であることが好ましい(
図3参照)。例えば、ベルト幅20~350mmの搬送ベルト4であれば、第1プーリ2及び第2プーリ3の各外周の幅方向の長さPHは、5~50mm、特に10~20mm程度の範囲であるのが好ましい。
【0036】
なお、第1プーリ2及び第2プーリ3の各外周の幅方向の長さPHが長い場合であっても、第1プーリ2及び第2プーリ3の先端部分にのみ搬送ベルト4の端部41(又は端部42)を巻き掛けることにより、搬送ベルト4の幅方向の両端(端部41、端部42)のベルト周方向の長さをそれぞれ別個に測定するという目的は達成されるが、ベルト幅のどの程度まで第1プーリ2及び第2プーリ3に巻き掛けるかを調節する必要があるため、第1プーリ2及び第2プーリ3の各外周の幅方向の長さPHは、搬送ベルト4のベルト幅に対して十分に短い方が好ましい。第1プーリ2及び第2プーリ3の各外周の幅方向の長さPHが十分に短ければ、第1プーリ2及び第2プーリ3に搬送ベルト4を巻き掛けたとしても、搬送ベルト4の端部41(又は端部42)のみが巻き掛かることとなるため、作業性が向上する。
【0037】
(押さえ部材61~64)
押さえ部材61~64は、円柱形状をしており、高さは、搬送ベルト4のベルト幅よりも大きい。本実施形態では、押さえ部材61~64(4本)は、同一規格(直径は10mm、高さは100~500mm)のものを使用している。
押さえ部材61~64は、第1プーリ2と第2プーリ3との間に巻き掛けられた搬送ベルト4の外周を、端部41から端部42にかけてベルト幅方向に接触して押圧する位置において、固定支持プレート12及び可動支持プレート13にそれぞれ固定されている。
【0038】
具体的には、押さえ部材61~64は、
図4に示すように、搬送ベルト4が巻き掛けられる第1プーリ2の外周と第2プーリ3の外周との共通接線の接点間を結ぶ、直線CL1又は直線CL2(接点A1と接点A4との間を結ぶ直線CL1、接点A2と接点A3との間を結ぶ直線CL2)から、搬送ベルト4の外周側に、「搬送ベルト4の厚み-0.5mm」以上、「搬送ベルト4の厚み+1.0mm」以下の範囲内(
図4に示すY方向の距離1.5mmの範囲)の距離、且つ、第1プーリ2の外周と第2プーリ3の外周との共通接線の一方の接点(例えば、接点A3)から他方の接点側(例えば、接点A2)に15mm以上35mm以下の範囲内(
図4に示すX方向の距離15~35mmの範囲)で離れた距離に、配置されている。
【0039】
本実施形態の測定装置1によれば、押さえ部材61~64がなければ、搬送ベルト4の端部41(又は端部42)しか第1プーリ2及び第2プーリ3に接触しないので、搬送ベルト4と第1プーリ2及び第2プーリ3とが接触していない部分で搬送ベルト4が外周側に膨らみ、測定精度が低下する場合がある(
図5参照)。特に、搬送ベルト4の剛性が大きい場合や、大きな荷重をかけられない場合には、搬送ベルト4が第1プーリ2及び第2プーリ3に十分に沿わないことがある。このような場合、第1プーリ2の中心軸と第2プーリ3の中心軸との間の軸間距離Cが短くなってしまうため、搬送ベルト4の長さが実際よりも短く算出されてしまう。そこで、第1プーリ2と第2プーリ3との間に巻き掛けた搬送ベルト4の外周を、押さえ部材61~64により、ベルト幅方向に接触して押圧した状態で、搬送ベルト4の端部41(又は端部42)のベルト周方向の長さを測定することにより、小さな荷重であっても搬送ベルト4を第1プーリ2及び第2プーリ3に容易に沿わせることができるため、測定精度を向上させることができる(
図5参照)。
【0040】
また、搬送ベルト4の外周を押圧する位置が、直線CL1又は直線CL2から離れすぎた場合(「搬送ベルト4の厚み+1.0mm」を超える場合)には、搬送ベルト4を押圧することができない、或いは、押圧力が弱くなり、搬送ベルト4の外周側への膨らみを十分に押さえることができない虞がある。一方、搬送ベルト4の外周を押圧する位置が、直線CL1又は直線CL2に近すぎる場合(「搬送ベルト4の厚み-0.5mm」未満)には、搬送ベルト4が第1プーリ2や第2プーリ3に巻き付く角度が大きくなり過ぎて、測定精度が低下する場合がある。そこで、搬送ベルト4の外周を、ベルト幅方向に接触して押圧する位置を上記範囲内にすることにより、上記問題を解決した。
【0041】
(レーザー測長器5)
レーザー測長器5は、レーザー送受信部51と反射部52とから構成されており、第1プーリ2の中心軸と第2プーリ3の中心軸との間の軸間距離Cを測定し、演算装置15に送信可能としている。なお、レーザー測長器5としては、変位センサー、距離センサー、タイムオブフライト方式などを使用してもよいし、軸間距離Cの測定にエンコーダー(ロータリー式、磁気式)を使用してもよい。
【0042】
(荷重付与機構14)
荷重付与機構14は、
図1に示すように、ワイヤー141、3つの滑車142、及び分銅143から構成されており、ワイヤー141の一方端には可動支持プレート13が取り付けられており、ワイヤー141の他方端には、3つの滑車142を経由して分銅143が取付可能とされている。この分銅の重量を変更することにより、第1プーリ2と第2プーリ3との間に巻き掛けられた搬送ベルト4に、所定の張力を与えることができる。なお、荷重付与機構14としては、エアや油圧とロードセルとを組み合わせた機構を採用してもよい。
【0043】
(演算装置15)
演算装置15は、本実施形態ではパーソナルコンピュータであり、ユーザーが操作することにより、レーザー測長器5からのデータ受信、各種のデータやリクエストの入力、データの記憶保存、計算を行うことができる。なお、演算装置15は、ポジショニングカウンター等の他の測定機器をパーソナルコンピュータ等に接続して(組み合わせて)使用してもよい。演算装置15は、制御部151と、記憶部152(記憶装置)と、入力部153と、外部出力される表示部16を有している。
【0044】
制御部151は、演算装置15でのコンピュータ制御を行うものである(CPU等)。
記憶部152は、システムプログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、書き換え可能な記憶領域であるRAM(Random Access Memory)と、フラッシュメモリ等によって構成されている。本実施形態では、記憶部152には、レーザー測長器5で測定された軸間距離Cや、プーリの外径Dや搬送ベルト4のピッチ高さa等の情報を記憶可能とし、搬送ベルト4のベルト周方向の長さを算出するプログラム(後述)等も格納されている。
入力部153は、ユーザー等が、様々な各種のデータやリクエストやコマンドを入力するための操作機器であり、例えば、タッチパネル等が使用される。
表示部16は、制御部151からの指令等に基づいた情報等を表示する。
【0045】
(搬送ベルト4)
ベルト周方向長さの測定対象となる搬送ベルト4は、本実施形態では、
図6に示すように、外周側に樹脂層4A、内周側に芯体帆布層4Bが積層された構造をしている。また、搬送ベルト4のベルト厚み方向における張力負担部分に相当する位置であるピッチ高さa(本実施形態では、例えば、芯体帆布層4Bの中心位置)を結ぶ長さをピッチ周長さLpとしている。なお、搬送ベルト4としては、本実施形態のように2層構造のものに限られず、樹脂層と芯体帆布層とが交互に積層された3層構造以上のものでもよく、その構造は特に限定されない。また、ピッチ周長さLpを決定するピッチ高さaについても、搬送ベルト4の構造・仕様により張力負担部分の位置が変わることから、これに対応して決定される。
【0046】
(測定処理(方法))
次に、測定装置1を使用した、搬送ベルト4のベルト幅方向の一方側の端部41(又は他方側の端部42)のベルト周方向の長さを測定する測定処理(方法)について説明する。
【0047】
なお、搬送ベルト4は、ベルト幅:100mm、ベルト厚み:1.14mm、ピッチ高さa:0.29mmのものを使用した。また、押さえ部材61~64は、直径:15mm、高さ:250mm、押さえ部材61~64は、CL1(又はCL2)から搬送ベルト4の外周側に1.5mmの位置、且つ、第1プーリ2の外周と第2プーリ3の外周との共通接線の一方の接点A3(又は接点A4)から他方の接点A2側(又は接点A1)に15mmの位置に配置した。また、第1プーリ2及び第2プーリ3の外径Dは40mm、外周の幅方向の長さPHは10mmである。
【0048】
(所定の情報入力)
まず、ユーザーは、測定装置1の演算装置15の入力部153により、第1プーリ2(第1プーリ2と同仕様の第2プーリ3)の外径D(例えば、40mm)、搬送ベルト4のピッチ高さa(0.29mm)等の情報を記憶部152に記憶させる。
【0049】
(搬送ベルト4の端部41の巻き掛け)
次に、第1プーリ2と第2プーリ3との間に、測定対象となる搬送ベルト4のベルト幅方向の一方側の端部41のみを巻き掛ける。この際、搬送ベルト4の外周が、押さえ部材61~64に接触するように巻き掛ける(
図2、
図3参照)。
これにより、第1プーリ2及び第2プーリ3の各外周の幅方向の長さPH(10mm)は、5mm以上、かつ、搬送ベルト4のベルト幅の半分(50mm)以下であることから、搬送ベルト4が第1プーリ2及び第2プーリ3から外れ難く、搬送ベルト4の端部41のみのベルト周方向の長さを測定することができる。
また、第1プーリ2と第2プーリ3との間に巻き掛けた搬送ベルト4の外周を、押さえ部材61~64により幅方向に接触して押圧した状態にすることができるため、搬送ベルト4の端部41のベルト周方向の長さを精度よく測定することができる。
【0050】
(搬送ベルト4に張力付与)
次に、荷重付与機構14において、所定重量の分銅143をワイヤー141に取り付け、可動支持プレート13を引き寄せることにより、第1プーリ2と第2プーリ3との間に巻き掛けられた搬送ベルト4に、所定の張力を与える(
図2、
図3参照)。
【0051】
(搬送ベルト4の端部41のベルト周方向の長さの算出)
次に、搬送ベルト4に所定の張力を付与した状態で、ユーザーによる演算装置15からの指令により、レーザー測長器5によって、第1プーリ2の中心軸と第2プーリ3の中心軸との間の軸間距離Cを測定する。そして、測定された軸間距離Cは、演算装置15に送信され、記憶部152に記憶される。
【0052】
次に、演算装置15が、搬送ベルト4の端部41のベルト周方向の長さLiを、記憶部152に記憶された、軸間距離Cの値、第1プーリ2・第2プーリ3の外径Dの値、及び、下記(式1)に基づき、プログラム処理により算出する。
Li=2C+πD・・・(式1)
例えば、C=369.2mm、D=40mmであれば、搬送ベルト4の端部41のベルト周方向の長さLi=864mmと算出される。
上記(式1)により、第1プーリ2と第2プーリ3の外周部分を結ぶ長さ(搬送ベルト4の内周長さ)を求めることができる。
【0053】
また、より実用的な搬送ベルト4の長さとして、搬送ベルト4のベルト厚み方向における張力負担部分に相当する位置であるピッチ高さa(本実施形態では、例えば、芯体帆布層4Bの中心位置)を結ぶ長さである、ピッチ周長さLpも算出することができる。
具体的には、演算装置15が、搬送ベルト4の端部41のピッチ周長さLpを、記憶部152に記憶された、軸間距離Cの値、第1プーリ2・第2プーリ3の外径Dの値、ピッチ高さaの値、及び、下記(式2)に基づき、プログラム処理により算出する。
Lp=2C+π(D+2a)=Li+2aπ・・・(式2)
例えば、C=369.2mm、D=40mm、a=0.29mmであれば、搬送ベルト4の端部41のピッチ周長さLp=865.9mmと算出される。
【0054】
なお、搬送ベルト4の外周長さを求める場合には、ピッチ高さaの値に搬送ベルト4の厚みの値を入れ、(式2)に基づき算出することができる。
【0055】
そして、算出された、搬送ベルト4の端部41のベルト周方向の長さLi、及び、搬送ベルト4の端部41のピッチ周長さLpは、記憶部152に記憶されるとともに、表示部16に表示される(
図2参照)。
【0056】
(搬送ベルト4の端部42のベルト周方向の長さの算出)
次に、上記搬送ベルト4の端部41のベルト周方向の長さLi等の測定方法と同様の手順により、搬送ベルト4の端部42のベルト周方向の長さLi、及び、搬送ベルト4の端部42のピッチ周長さLpを算出し、記憶部152に記憶するとともに、表示部16に表示する。
【0057】
(搬送ベルト4の合否判定)
次に、演算装置15は、搬送ベルト4の端部41のベルト周方向の長さLiと搬送ベルト4の端部42のベルト周方向の長さLiとの差を算出する。
そして、演算装置15は、算出した差が、予め設定した所定の閾値以下の場合には合格と判断し、合格である旨のメッセージを表示部16に表示する。
一方、演算装置15は、算出した差が、所定の閾値を超える場合には不合格と判断し、不合格である旨のメッセージを表示部16に表示する。
これにより、搬送ベルト4の幅方向の両端41、42のベルト周方向の長さの差を算出し、この差に基づき搬送ベルト4に求められる、ベルト幅方向の両端41、42におけるベルト周方向の長さの適否を自動的に判断することができる。これにより、測定者の利便性が向上する。
【0058】
なお、搬送ベルト4の合否判定においては、算出した差が、予め設定した所定の閾値未満の場合には合格と判断し、合格である旨のメッセージを表示部16に表示してもよい。また、算出した差が、所定の閾値以上の場合には不合格と判断し、不合格である旨のメッセージを表示部16に表示してもよい。搬送ベルト4の合否判定に係る閾値の扱い(閾値以下、閾値未満、閾値以上、閾値を超えるの選択)は、便宜設定可能であり、本願発明の構成の同一性の範囲内の変更である。
【0059】
上記測定装置1及び測定方法によれば、所定幅を有する搬送ベルト4の幅方向の両端41、42のベルト周方向の長さをそれぞれ別個に測定することで、片寄り走行の原因となる、搬送ベルト4のベルト幅方向の両端41、42におけるベルト周方向の長さの違いを検出することができる。
【0060】
(その他の実施形態1)
上記実施形態では、所定幅を有する搬送ベルト4の幅方向の両端41、42のベルト周方向の長さをそれぞれ別個に測定しているが、搬送ベルト4の幅方向の両端41、42における、第1プーリ2の中心軸と第2プーリ3の中心軸との間の軸間距離Cのみをそれぞれ別個に測定してもよい。即ち、ベルト周方向の長さは、搬送ベルト4のベルト周方向における一周分の長さだけでなく、軸間距離のみの長さを含む概念である。
この場合、搬送ベルト4の端部41の軸間距離Cと搬送ベルト4の端部42の軸間距離Cとの差を算出し、算出した差が、予め設定した軸間距離用の所定の閾値以下(又は所定の閾値未満)の場合には合格と判断し、合格である旨のメッセージを表示部16に表示する。また、算出した差が、予め設定した軸間距離用の所定の閾値を超える場合(又は所定の閾値以上)には不合格と判断し、不合格である旨のメッセージを表示部16に表示する。
これによれば、上記(式1)や(式2)に係る計算を経なくても簡易的に、搬送ベルト4の合否判定を行うことができる。
【0061】
(その他の実施形態2)
上記実施形態の測定装置1の荷重付与機構14は、ワイヤー141の一方端に可動支持プレート13が取り付けられており、ワイヤー141の他方端には分銅143が取付可能な簡素な構成をしている。
この場合、短い搬送ベルト4から長い搬送ベルト4まで測定できるようにしようとすれば、分銅143の上下方向の移動距離も大きくする必要があるため、測定装置1の設置場所が制限される場合がある。
そこで、測定装置1の荷重付与機構114としては、分銅143と可動支持プレート13との連結/切り離しの切り替えができるようにしてもよい。
【0062】
具体的には、
図9に示すように、荷重付与機構114は、ワイヤー141、3つの滑車142、分銅143に加えて、エアシリンダー144、シャフト145、連結部材146、キャリッジ147、及び、可動支持プレート13の下側に取り付けられたクランプレバー付きセットカラー148(レバー以外の部分は不図示)を主な構成要素としている。
【0063】
連結部材146の下側には、ガイドレール11上を移動自在とするキャリッジ147が取り付けられ、更に、連結部材146には、ワイヤー141の一方端及びシャフト145の一方端が連結されている。これにより、シャフト145、連結部材146、キャリッジ147、ワイヤー141、及び、ワイヤー141の他方端に取り付けられた分銅143は一体的(荷重付与部分)に移動可能とされている。
【0064】
また、クランプレバー付きセットカラー148は、可動支持プレート13の下側に取り付けられており、セットカラーの中をシャフト145が貫通している。このクランプレバー付きセットカラー148は、クランプレバーによりシャフト145に対して締め付けを行うことにより、シャフト145と可動支持プレート13とを連結し固定可能としている。これにより、分銅143等の荷重付与部分と可動支持プレート13とが一体的にガイドレール11上を移動可能とされる。なお、クランプレバーを緩めると、可動支持プレート13は、シャフト145から切り離され、可動支持プレート13は、分銅143等の荷重付与部分とは切り離して独立してガイドレール11上を移動可能となる。
【0065】
エアシリンダー144は、エアをかけることによりシリンダーを伸ばして連結部材146を押圧し、連結部材146を固定支持プレート12側に移動させることができる。また、エアシリンダー144は、エアを抜くことによりシリンダーを縮めて連結部材146の押圧を解除することができる。
【0066】
次に、上記荷重付与機構114による、搬送ベルト4への張力の付与の仕方について説明する。
(1)エアシリンダー144にエアをかけることによりシリンダーを伸ばして連結部材146を押圧し、分銅143を引き上げる(
図10参照)。
(2)クランプレバー付きセットカラー148のクランプレバーを緩め、可動支持プレート13を、搬送ベルト4の端部41のベルト周方向の長さの測定時(所定の張力を付与された状態)における、第1プーリ2と第2プーリ3との間の軸間距離よりも少しだけ短い位置まで移動させる(
図10参照)。
(3)クランプレバー付きセットカラー148のクランプレバーを締め、シャフト145と可動支持プレート13とを連結し固定する(
図10参照)。
(4)第1プーリ2と第2プーリ3との間に搬送ベルト4のベルト幅方向の一方側の端部41を巻き掛けた後、エアシリンダー144のエアを抜くことによりシリンダーを縮めて連結部材146の押圧を解除し、シャフト145を介して分銅143の荷重を搬送ベルト4に作用させる(
図11参照)。
【0067】
上記荷重付与機構114を備えた測定装置によれば、分銅143の移動距離は、搬送ベルト4の長さによらず、エアシリンダー144のシリンダーの伸び縮みの距離分だけ確保すれば足りる。これにより、測定装置を卓上に置いて搬送ベルト4の長さを測定することが可能となり、設置場所の自由度を高めることができる。
【0068】
なお、上記手順の(2)(4)に関し、第1プーリ2と第2プーリ3との間の軸間距離をおおまかに調節する際に、搬送ベルト4の概略長さが分かっている場合は上記のような手順になるが、搬送ベルト4の概略長さが分かっていない場合は、手順(2)で搬送ベルト4の端部41を、第1プーリ2と第2プーリ3との間に巻き掛けながら可動支持プレート13を適切な位置まで移動させて、手順(4)ではエアシリンダー144のエアを抜くことによりシリンダーを縮める操作のみを行う。
【0069】
(その他の実施形態3)
搬送ベルトの中には、搬送ベルトの内周面にベルト周方向に沿って蛇行防止桟が設けられているものがある。この蛇行防止桟はベルト幅方向の中央にベルト周方向に沿って設けられているものや、ベルト幅方向の両端にベルト周方向に沿って設けられているものがある。
そこで、蛇行防止桟が両端にベルト周方向に沿って設けられている搬送ベルトの端部のベルト周方向の長さを測定する際に、蛇行防止桟と第1プーリ及び第2プーリとが干渉するのを防ぐために、第1プーリ2及び第2プーリ3を、固定支持プレート12及び可動支持プレート13にそれぞれ固定するのではなく、
図12に示すように、固定支持プレート12及び可動支持プレート13にそれぞれ設けられたシャフト71及びシャフト81に、第1プーリ2及び第2プーリ3を抜き差しする構造(第1プーリ2及び第2プーリ3の軸方向位置の調節ができる機構)としてもよい。
【0070】
具体的には、
図12に示すように、固定支持プレート12(可動支持プレート13)のシャフト71(シャフト81)に差し込む第1プーリ2(第2プーリ3)の下に、蛇行防止桟の高さに対応した適切なサイズのカマシ72(カマシ82)を入れ、キー73(キー83)で固定することで、蛇行防止桟と第1プーリ2(第2プーリ3)とが干渉するのを防止して、搬送ベルトの端部のベルト周方向の長さを測定することができる。
単に第1プーリ2(第2プーリ3)を固定する位置を高くしただけでは、ベルト幅の狭い搬送ベルトの端部のベルト周方向の長さを測定するのが困難になるが、カマシ72(カマシ82)の有無、大きさ、数により、第1プーリ2(第2プーリ3)の軸方向の位置を調節できるようにすることで、あらゆる搬送ベルトの端部のベルト周方向の長さを自在に測定することができる。
【0071】
(その他の実施形態4)
上記実施形態では、円形状をした、第1プーリ2及び第2プーリ3を使用した測定装置1について説明した(
図2参照)。
しかし、第1プーリ2及び第2プーリ3の形状は、
図13に示すように、円形状の一部を弓形状に切り欠いた、切り欠き部21を有する第1プーリ2及び切り欠き部31を有する第2プーリ3としてもよい。
これによれば、第1プーリ2の切り欠き部21と第2プーリ3の切り欠き部31とを対向させた際に、第1プーリ2と第2プーリ3との間の軸間距離を、円形状をした第1プーリ2及び第2プーリ3の場合と比べて、短くすることができることから、長さの短い搬送ベルト4も測定することができる。
【0072】
なお、上記その他の実施形態3で説明した、固定支持プレート12及び可動支持プレート13にそれぞれ設けられたシャフト71及びシャフト81に、第1プーリ2及び第2プーリ3を抜き差しする構造の場合、
図13に示すように、第1プーリ2(第2プーリ3)において、シャフト71(シャフト81)を通す穴は、切り欠き部21(切り欠き部31)とは反対側に寄った位置に設け、シャフト71(シャフト81)の外周全体を第1プーリ2(第2プーリ3)が覆うことが好ましい。
【実施例0073】
(実施例1)
上記測定装置の測定精度を評価するため、ベルト幅20~350mm、ベルト周方向の長さ360~2070mm、ベルト厚み0.8~2.6mmの搬送ベルト、217本について、測定装置を用いて測定したベルト周方向の長さと、従来技術に記載した手作業による方法(金属製直尺を使用して平坦部分の長さを連続して測定する方法)で測定したベルト周方向の長さとの比較を行った。測定装置の構成は以下の通りである。
第1プーリ及び第2プーリ:外径D 40mm、外周の幅方向の長さPH 10mm
押さえ部材:直径15mm×高さ250mm
押さえ部材の位置:CL1(又はCL2)から搬送ベルトの外周側に1.5mmの位置、且つ、第1プーリの外周と第2プーリの外周との共通接線の一方の接点A3(又は接点A4)から他方の接点A2側(又は接点A1)に15mmの位置に配置
分銅:1.0kgf
測長器:ロータリーエンコーダ(武藤工業(株)製)
演算装置:ポジショニングカウンター
図7(A)に、「測定装置で測定した長さ」と「手作業で測定した長さ」との差を棒グラフに示す。これによれば、「測定装置で測定した長さ」と「手作業で測定した長さ」には、大きな差異は見られなかった。
【0074】
(実施例2)
測長器としてレーザー式の測長器((株)キーエンス製)を用い、実施例1と同様の比較を行った。使用した搬送ベルトは、ベルト幅20~250mm、ベルト周方向の長さ320~2000mm、ベルト厚み1.1~2.6mmの搬送ベルト、84本である。測定装置の構成は測長器を除いて実施例1と同じである。
図7(B)に、「測定装置で測定した長さ」と「手作業で測定した長さ」との差を棒グラフに示す。これによれば、「測定装置で測定した長さ」と「手作業で測定した長さ」には、大きな差異は見られなかった。
【0075】
(測定時間の比較)
ベルト周方向の長さ1200mmの搬送ベルトの長さを手作業で測定して記録するのに要する時間は21秒であったのに対して、測定装置を用いた場合には9秒で完了し、大幅な時間短縮が可能であることが確かめられた。