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特開2023-138350半導体チップの転写方法および半導体チップの転写装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138350
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】半導体チップの転写方法および半導体チップの転写装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H01L21/52 C
H01L21/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017567
(22)【出願日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2022044041
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大久保 憲治
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA19
5F047BA21
5F047CA08
5F047FA07
5F047FA15
(57)【要約】
【課題】支持基板から被転写基板に半導体チップを転写する転写工程に要する時間の増大を抑制することが可能な半導体チップの転写方法を提供する。
【解決手段】この半導体チップ1の転写方法は、レーザ光Lを用いた半導体チップの転写方法であって、半導体チップが支持された支持基板10における半導体チップの保持領域11内に複数の転写領域12を互いに重ならないように配置する転写領域配置工程と、転写領域内の半導体チップの中から被転写基板に転写する半導体チップを選択する計算を実行する計算工程と、転写領域内の半導体チップにレーザ光を照射することにより、転写領域内の半導体チップのみを被転写基板20に転写する転写工程と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を用いた半導体チップの転写方法であって、
前記半導体チップが支持された支持基板における前記半導体チップの保持領域内に複数の転写領域を互いに重ならないように配置する転写領域配置工程と、
前記転写領域内の半導体チップの中から被転写基板に転写する前記半導体チップを選択する計算を実行する計算工程と、
前記転写領域内の前記半導体チップにレーザ光を照射することにより、前記転写領域内の前記半導体チップのみを前記被転写基板に転写する転写工程と、
を備えた、半導体チップの転写方法。
【請求項2】
前記複数の転写領域は、同一形状である、請求項1に記載の半導体チップの転写方法。
【請求項3】
前記転写領域配置工程は、前記支持基板の前記保持領域内に複数の前記転写領域を互いに接しつつ重ならないように配置する、請求項1または2に記載の半導体チップの転写方法。
【請求項4】
前記転写領域は、前記保持領域の中心部に設けられた第1転写領域と、前記第1転写領域を囲むように設けられた複数の第2転写領域とを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体チップの転写方法。
【請求項5】
隣接する前記第2転写領域は互いに接して配置されるとともに、前記第1転写領域の外周は前記第2転写領域のいずれかの外周と接している、請求項4に記載の半導体チップの転写方法。
【請求項6】
前記保持領域の中心から最も離れた位置に設けられた前記転写領域における前記保持領域の中心から最も離れた外周が、前記保持領域の外周縁に内接するように配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体チップの転写方法。
【請求項7】
前記転写領域の形状は矩形であり、かつ、前記被転写基板の形状は矩形である、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体チップの転写方法。
【請求項8】
前記保持領域の形状は略円形であり、前記転写領域の形状は正六角形である、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体チップの転写方法。
【請求項9】
前記保持領域の形状は略円形であり、前記転写領域の形状は真円形である、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体チップの転写方法。
【請求項10】
半導体チップが支持された支持基板を保持する支持基板保持部と、
前記支持基板に支持された前記半導体チップが転写される被転写基板を保持する被転写基板保持部と、
前記支持基板にレーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記レーザ光照射部によるレーザ光の照射を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記支持基板における前記半導体チップの保持領域内に複数の転写領域を互いに重ならないように配置し、
前記転写領域内の半導体チップの中から前記被転写基板に転写する前記半導体チップを選択する計算を実行し、
前記転写領域内の前記半導体チップに前記レーザ光照射部にレーザ光を照射させることにより、前記転写領域内の前記半導体チップのみを前記被転写基板に転写する制御を行うように構成されている、半導体チップの転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光を用いた半導体チップの転写方法および半導体チップの転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を用いた半導体チップの転写方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、支持基板に半導体チップを保持させる半導体チップ保持工程と、支持基板から半導体チップを被転写基板に転写する転写工程とを備える、半導体チップの転写方法が開示されている。転写工程では、支持基板の半導体チップが支持された面と、被転写基板の半導体チップが転写される面とを対向するように配置する。そして、支持基板の半導体チップを支持した側と反対側から半導体チップに向けてレーザ光を照射する。これにより、半導体チップの支持基板による保持状態を解除して、半導体チップを被転写基板に転写する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/166301号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には開示されていないが、半導体チップが支持された支持基板から被転写基板への半導体チップの転写は、支持基板における半導体チップの保持領域が一定形状に分割されることにより形成された複数の転写領域毎に行われる。また、上記特許文献1には開示されていないが、支持基板の隣接する半導体チップの間隔は、支持基板から転写された被転写基板の隣接する半導体チップの間隔よりも小さい。そのため、支持基板の転写領域の隣接する半導体チップを、被転写基板にそのままの間隔で隣接するように転写することができない。そこで、支持基板の転写領域から半導体チップを被転写基板に転写する前に、転写領域内の半導体チップの中から転写する半導体チップを選択する計算を行い、計算により選択された半導体チップを被転写基板に転写する。ここで、支持基板の保持領域内の複数の転写領域は、上記一定形状と同一の形状を有する転写領域と、一部に保持領域の外部を含んで分割されることにより上記一定の形状と異なる形状を有する転写領域とを含む。これにより、複数の転写領域は異なる形状の転写領域が混在するため、複数の転写領域における半導体チップの位置および数は一様ではない。また、異なる形状の複数の転写領域から半導体チップが被転写基板に転写されることに起因して、被転写基板における半導体チップが転写される領域の形状が複雑化する。また、複数の転写領域のうち互いに重なる転写領域がある場合、半導体チップを選択する計算の際、重なる部分における半導体チップが既に転写されているか否かを判定する必要がある。これらの理由により、異なる形状を含む転写領域内の半導体チップの中から転写する半導体チップを選択する計算時間が長くなり、転写工程に要する時間が増加するという問題がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、支持基板から被転写基板に半導体チップを転写する転写工程に要する時間の増大を抑制することが可能な半導体チップの転写方法および半導体チップの転写装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による半導体チップの転写方法は、レーザ光を用いた半導体チップの転写方法であって、半導体チップが支持された支持基板における半導体チップの保持領域内に複数の転写領域を互いに重ならないように配置する転写領域配置工程と、転写領域内の半導体チップの中から被転写基板に転写する半導体チップを選択する計算を実行する計算工程と、転写領域内の半導体チップにレーザ光を照射することにより、転写領域内の半導体チップのみを被転写基板に転写する転写工程と、を備える。
【0008】
この第1の局面による半導体チップの転写方法は、上記のように、半導体チップが支持された支持基板における半導体チップの保持領域内に複数の転写領域を互いに重ならないよう配置する転写領域配置工程と、転写領域内の半導体チップの中から被転写基板に転写する半導体チップを選択する計算を実行する計算工程と、転写領域内の半導体チップにレーザ光を照射することにより転写領域内の半導体チップのみを被転写基板に転写する転写工程と、を備える。これにより、複数の転写領域のうち互いに重なる転写領域がないため、重なる部分における半導体チップの有無を判定する必要がない。これらの理由から、異なる形状を含む複数の転写領域における転写する半導体チップを選択する計算を実行する場合と比べて、被転写基板に転写する半導体チップを選択する計算時間の増加を抑制することができる。その結果、支持基板から被転写基板に半導体チップを転写する転写工程に要する時間の増大を抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面による半導体チップの転写方法において、好ましくは、転写領域配置工程は、支持基板の保持領域内に複数の転写領域を互いに接しつつ重ならないように配置する。このように構成すれば、転写領域を互いに接さないように間隔を隔てて配置する場合と比べて、隣接する転写領域間の間隙を低減させて保持領域内に転写領域を効率良く配置することができる。これにより、転写可能な半導体チップの数を増加させることができる。そのため、転写する半導体チップを選択する計算時間の増加を抑制しながら、転写領域内の半導体チップのみを被転写基板に転写する転写工程において転写可能な半導体チップの数を増加させることができる。
【0010】
上記第1の局面による半導体チップの転写方法において、好ましくは、転写領域は、保持領域の中心部に設けられた第1転写領域と、第1転写領域を囲むように設けられた複数の第2転写領域とを含む。このように構成すれば、第2転写領域が保持領域の中心部に設けられた第1転写領域を囲むように設けられていることにより、保持領域内に転写領域をより効率良く配置することができる。これにより、転写可能な半導体チップの数をより増加させることができる。そのため、転写する半導体チップを選択する計算時間の増加を抑制しながら、転写可能な半導体チップの数をより増加させることができる。
【0011】
この場合、好ましくは、隣接する第2転写領域は互いに接して配置されるとともに、第1転写領域の外周は第2転写領域のいずれかの外周と接している。このように構成すれば、支持基板内に第1転写領域と第2転写領域との間の間隙を低減させて保持領域内において転写領域をさらに効率良く配置することができる。これにより、転写可能な半導体チップの数をさらに増加させることができる。そのため、転写する半導体チップを選択する計算時間の増加を抑制しながら、転写可能な半導体チップの数をさらに増加させることができる。
【0012】
上記第1の局面による半導体チップの転写方法において、好ましくは、保持領域の中心から最も離れた位置に設けられた転写領域における支持基板の中心から最も離れた外周が、保持領域の外周縁に内接するように配置されている。このように構成すれば、保持領域の中心から最も離れた位置に設けられた転写領域の保持領域の中心から最も離れた外周が保持領域の外周縁に内接するように配置されていない場合と比べて、保持領域の外周縁近傍に転写領域をより効率良く配置することができる。これにより、転写可能な半導体チップの数をさらに増加させることができる。そのため、転写する半導体チップを選択する計算時間の増加を抑制しながら、転写可能な半導体チップの数をより増加させることができる。
【0013】
上記第1の局面による半導体チップの転写方法において、好ましくは、転写領域の形状は矩形であり、かつ、被転写基板の形状は矩形である。このように構成すれば、矩形状の転写領域に支持された半導体チップを同じ矩形状の被転写基板に転写することができるため、転写領域における転写可能な半導体チップの被転写基板に対する使用効率の低下を抑制することができる。ここで、本明細書において、「被転写基板に対する使用効率」とは、転写工程前に転写領域に支持された半導体チップの数に対する、転写工程により上記転写領域から被転写基板に転写された半導体チップの数の割合である。
【0014】
上記第1の局面による半導体チップの転写方法において、好ましくは、保持領域の形状は略円形であり、転写領域の形状は正六角形である。このように構成すれば、隣接する転写領域の互いの一辺を対向するように配置することができるため、隣接する転写領域間の間隙をより低減させて保持領域内に転写領域をより効率良く配置することができる。そのため、保持領域内における半導体チップの使用効率の低下をより抑制することができる。ここで、本明細書において、「保持領域内における使用効率」とは、保持領域内の半導体チップの数に対する転写領域における半導体チップの数の割合である。
【0015】
上記第1の局面による半導体チップの転写方法において、好ましくは、保持領域の形状は略円形であり、転写領域の形状は真円形である。このように構成すれば、略円形状の保持領域内において隣接する複数の転写領域に囲まれた間隙を低減させて転写領域をより効率良く配置することができる。そのため、保持領域内における半導体チップの使用効率の低下を抑制することができる。
【0016】
この発明の第2の局面による半導体チップの転写装置は、半導体チップが支持された支持基板を保持する支持基板保持部と、支持基板に支持された半導体チップが転写される被転写基板を保持する被転写基板保持部と、支持基板にレーザ光を照射するレーザ光照射部と、レーザ光照射部によるレーザ光の照射を制御する制御部とを備え、制御部は、支持基板における半導体チップの保持領域内に複数の転写領域を互いに重ならないように配置し、転写領域内の半導体チップの中から被転写基板に転写する半導体チップを選択する計算を実行し、転写領域内の半導体チップにレーザ光照射部にレーザ光を照射させることにより、転写領域内の半導体チップのみを被転写基板に転写する制御を行うように構成されている。
【0017】
この発明の第2の局面による半導体チップの転写装置は、上記のように、制御部は、支持基板における半導体チップの保持領域内に複数の転写領域を互いに重ならないよう配置し、転写領域内の半導体チップの中から被転写基板に転写する半導体チップを選択する計算を実行し、転写領域内の半導体チップにレーザ光を照射することにより転写領域内の半導体チップのみを被転写基板に転写する制御を行うように構成されている。これにより、複数の転写領域のうち互いに重なる転写領域がないため、重なる部分における半導体チップの有無を判定する必要がない。これらの理由から、異なる形状を含む複数の転写領域における転写する半導体チップを選択する計算を実行する場合と比べて、被転写基板に転写する半導体チップを選択する計算時間の増加を抑制することができる。その結果、支持基板から被転写基板に半導体チップを転写する転写工程に要する時間の増大を抑制することが可能な半導体チップの転写装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、支持基板から被転写基板に半導体チップを転写する転写工程に要する時間の増大を抑制することが可能な半導体チップの転写方法および半導体チップの転写装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態による半導体チップの転写方法を説明するための図である。
図2】第1実施形態による半導体チップが支持された支持基板を示した模式図である。
図3】第1実施形態による転写領域を示した模式図である。
図4】第1実施形態による転写装置の全体構成を示した模式図である。
図5】制御部の機能ブロックを説明するための図である。
図6】第1実施形態による転写方法の処理を説明するためのフローチャートである。
図7】比較例による転写領域を示した模式図である。
図8】第2実施形態による転写領域を示した模式図である。
図9】第3実施形態による転写領域を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1図6を参照して、第1実施形態による半導体チップ1の転写方法について説明する。
【0022】
(半導体チップ1の転写方法の概要)
図1に示すように、半導体チップ1の転写方法は、支持基板10の転写領域12(図3参照)に支持された半導体チップ1に対して支持基板10を介してレーザ光Lを照射することにより、半導体チップ1を被転写基板20に転写する半導体チップ1の転写方法である。たとえば、半導体チップ1の転写方法は、レーザリフトオフ法などの公知の剥離技術を用いて、支持基板10から半導体チップ1を剥離して被転写基板20に半導体チップ1を転写することにより、EL表示装置などの表示装置のディスプレイパネルを製造するための半導体チップ1の転写方法である。
【0023】
半導体チップ1として、マイクロ発光ダイオード(LED)と呼ばれる50um×50um以下の半導体チップ1が用いられる。なお、半導体チップ1は、マイクロLEDに限定されず、種々の半導体素子を用いることができる。
【0024】
支持基板10は、たとえば、SiO2(二酸化ケイ素)基板やサファイヤ基板のようにレーザ光Lを透過する材料により形成されている。支持基板10は、支持基板10上に形成された剥離層2を介して複数の半導体チップ1を支持している。図示はしていないが、支持基板10上の隣接する半導体チップ1の間隔は、支持基板10から転写された被転写基板20上の隣接する半導体チップ1の間隔よりも小さい。図2に示すように、複数の半導体チップ1は、支持基板10上において剥離層2(図1参照)を介して所定の間隔でマトリクス状に配列されている。支持基板10は、円形状を有している。支持基板10は、半導体チップ1が保持された半導体チップ1の保持領域11を有する。
【0025】
本明細書において、保持領域11とは、支持基板10の中心Cを中心として、支持基板10において最外周に配置された少なくとも複数の半導体チップ1の外周を繋いだ最小の輪郭11aにより囲まれているとともに、最小の輪郭11aにより囲まれている部分が、複数の半導体チップ1のすべてを含み、かつ、略円形となるように繋がれている部分を示す。図3に示すように、支持基板10の保持領域11内には、複数の同一形状の転写領域12が互いに接しつつ重ならないように配置されている。図3において、転写領域12は、ハッチングにより図示された領域である。なお、図面の簡略化のため、半導体チップ1の図示は省略している。
【0026】
図1に示すように、剥離層2は、レーザ光照射部50からレーザ光Lが照射されることにより分解してガス成分を発生する材料により形成されている。剥離層2は、たとえば、ポリイミドやシリコンが用いられる。
【0027】
被転写基板20は、たとえば、支持基板10上のマイクロLEDが被転写基板20に多数転写されることによりマイクロLEDディスプレイパネルを製造するための基板である。被転写基板20には、転写された半導体チップ1を接着するための接着層21が形成されている。被転写基板20には、転写された半導体チップ1に対して接続可能な配線が形成されていても良い。被転写基板20は、矩形状(不図示)を有している。なお、被転写基板20は、たとえば、支持基板10から転写された半導体チップ1を一時的に保持する半導体チップ保持基板であっても良い。
【0028】
半導体チップ1の転写方法の処理(図6参照)は、後述するように、支持基板10における半導体チップ1の保持領域11内に複数の同一形状の転写領域12を互いに重ならないように配置する転写領域配置工程と、転写領域12内の半導体チップ1の中から被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算を実行する計算工程と、転写領域12内の半導体チップ1にレーザ光を照射することにより、転写領域12内の半導体チップ1のみを被転写基板20に転写する転写工程と、を備える。すなわち、転写工程では、転写領域12と転写領域12以外の領域とを含む保持領域11全体のうちの転写領域12の半導体チップのみを被転写基板20に転写する。
【0029】
半導体チップ1が支持された支持基板10から被転写基板20への半導体チップ1の転写は、支持基板10の保持領域11内の一定形状の同一形状を有する転写領域毎(図3参照)に行われる。一の転写領域12に支持された半導体チップ1が被転写基板20に転写された後、支持基板10と被転写基板20とを相対移動させ、一の転写領域12と異なる他の転写領域12に支持された半導体チップ1が被転写基板20に転写される。なお、転写領域12以外の領域に支持された半導体チップ1は被転写基板20へ転写されない。
【0030】
(半導体チップ1の転写装置100)
図4に示すように、半導体チップ1の転写装置100は、支持基板保持部30と、被転写基板保持部40と、レーザ光照射部50と、制御部61と、記憶部67とを備える。転写装置100は、第1実施形態の半導体チップ1の転写方法を実行するように構成されている。なお、図面において、転写装置100の左右方向をX方向としている。また、転写装置100の上下方向をZ方向としている。また、転写装置100のX方向およびZ方向と直交する方向をY方向としている。
【0031】
支持基板保持部30は、半導体チップ1が支持された支持基板10を保持する。支持基板保持部30は、半導体チップ1を支持した支持基板10を、半導体チップ1を支持した面を下向きにして保持する。支持基板保持部30は開口部31を有する。支持基板保持部30に保持された支持基板10は、開口部31を介してレーザ光照射部50から出射されたレーザ光Lが照射される。支持基板保持部30は、第1移動機構32により、少なくともX軸方向およびY軸方向に関して被転写基板保持部40に対して相対移動可能なように構成されている。
【0032】
被転写基板保持部40は、支持基板10に支持された半導体チップ1が転写される被転写基板20を保持する。被転写基板保持部40は、上面41において被転写基板20を保持する。被転写基板保持部40は、第2移動機構42により、少なくともX軸方向およびY軸方向に関して支持基板保持部30に対して相対移動可能なように構成されている。なお、移動機構は、第1移動機構32および第2移動機構42のいずれか一方のみが設けられていても良い。第1移動機構32による支持基板保持部30の移動および第2移動機構42による被転写基板保持部40の移動の一方または両方が行われることにより、支持基板10内に配置された転写領域12の被転写基板20に対する相対位置、および、転写領域12に支持された半導体チップ1の被転写基板20に対する相対位置を調節することができる。
【0033】
レーザ光照射部50は、支持基板10にレーザ光Lを照射するように構成されている。レーザ光照射部50は、レーザ光源51と、ガルバノミラー52と、fθレンズ53とを含む。レーザ光源51は、レーザ光Lを出射する光源である。ガルバノミラー52は、交差する二軸に回転可能であり、レーザ光Lを任意の角度で反射する。fθレンズ53はガルバノミラー52からのレーザ光Lを支持基板10の転写領域12上に集光する。したがって、支持基板10内に配置された転写領域12の大きさは、ガルバノミラー52の走査範囲内に納まる。
【0034】
レーザ光照射部50は、ガルバノミラー52およびfθレンズ53を介して、支持基板保持部30に保持された支持基板10の半導体チップ1を支持した面と反対側の面にレーザ光Lを照射する。レーザ光Lは、ガルバノミラー52およびfθレンズ53により、転写領域12に支持されている半導体チップ1に対して選択的に照射される。レーザ光Lが支持基板10を介して剥離層2(図1参照)に照射されることにより、レーザリフトオフにより支持基板10から半導体チップ1が剥離され、支持基板10から被転写基板20へ半導体チップ1が転写される。
【0035】
制御部61は、制御装置60に設けられている。制御装置60は、たとえばPC(パーソナルコンピュータ)により構成される。制御装置60は、制御部61と、記憶部67とを備える。
【0036】
制御部61は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにより構成され、記憶部67に記憶されたプログラムを実行することにより各種制御を行う。制御部61は、支持基板10の保持領域11内に複数の同一形状の転写領域12を互いに接しつつ重ならないように配置する制御を行う。ここで、「転写領域12を配置する」とは、転写領域12を定義または設定することを示す。また、制御部61は、転写領域12内の半導体チップ1の中から被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算を実行する。また、制御部61は、転写領域12内の半導体チップ1にレーザ光照射部50にレーザ光Lを照射させることにより、転写領域12内の半導体チップ1のみを被転写基板20に転写する制御を行う。
【0037】
(制御部61の各機能ブロック)
図5に示すように、制御部61は、転写領域配置部62と、選択計算部63と、光源制御部64と、光学制御部65と、移動機構制御部66と、を含む。
【0038】
図3に示すように、転写領域配置部62は、半導体チップ1が保持された保持領域11内に複数の転写領域12を配置する。複数の転写領域12は、同一形状の転写領域12を互いに接しつつ重ならないように配置する。転写領域配置部62による転写領域12の配置により、保持領域11内には、複数の同一形状の転写領域12と、転写領域12以外の複数の領域15とが含まれる。転写領域12以外の複数の領域15は、一定の同一形状の転写領域12の形状と異なる形状を有する。転写領域12以外の複数の領域15は、計算工程(図6参照)において、領域内の半導体チップ1の中から被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算が実行されない領域である。また、転写領域12以外の複数の領域15は、転写工程(図6参照)において、半導体チップ1の被転写基板20への転写が行われない領域である。
【0039】
転写領域配置部62は、半導体チップ1の転写工程の開始前に、予め記憶部67(図3参照)に記憶されている、または、入力部69により入力された、今回実行される半導体チップ1の転写工程において設定される転写領域12の形状および配置を参照し、半導体チップ1が支持された支持基板10における保持領域11内に転写領域12を配置する。第1実施形態において、転写領域12の形状は矩形である。転写領域配置部62により支持基板10内に配置された複数の転写領域12の形状および配置は、記憶部67に記憶される。
【0040】
転写領域12は、保持領域11の中心部に設けられた第1転写領域12aと、第1転写領域12aを囲むように設けられた複数の第2転写領域12bとを含む。隣接する第2転写領域12bは互いに接して配置されるとともに、第1転写領域12aの外周は第2転写領域12bのいずれかの外周と接している。また、保持領域11の中心から最も離れた位置に設けられた第2転写領域12bにおける保持領域11の中心から最も離れた外周が、保持領域11の外周縁に内接するように配置されている。
【0041】
すなわち、第1実施形態の転写領域12は、略円形状の保持領域11の中心部に設けられた矩形状の第1転写領域12aと、第1転写領域12aを囲むように設けられた4つの矩形状の第2転写領域12bとを含む。隣接する第2転写領域12bは、第1転写領域12aと接する角において互いに接して配置されている。第1転写領域12aの四辺の各々は、いずれかの第2転写領域12bの一辺と接している。第2転写領域12bの保持領域11の中心から最も離れた2つの角は、保持領域11の外周縁に内接するように配置されている。
【0042】
図5に示すように、選択計算部63は、転写領域12内の半導体チップ1の中から被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算を実行する。上述したように、支持基板10上の隣接する半導体チップ1の間隔は、支持基板10から転写された被転写基板20上の隣接する半導体チップ1の間隔よりも小さい。そのため、支持基板10上の隣接する半導体チップ1を、被転写基板20上にそのままの間隔で隣接するように転写することができない。そこで、半導体チップ1の転写工程の前に、転写領域配置部62により配置された転写領域12内の半導体チップ1の中から転写する半導体チップ1を選択する計算を行い、計算により選択された半導体チップ1を被転写基板20に転写する。転写する半導体チップ1を選択する具体的な計算方法は、公知の手法を用いて実行される。選択計算部63は、半導体チップ1の転写工程の前に、すべての転写領域12に対して被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算を実行する。選択計算部63の計算により選択された転写領域12内の半導体チップ1は、記憶部67に記憶される。
【0043】
光源制御部64は、半導体チップ1の転写時に、レーザ光照射部50(図4参照)からレーザ光Lを照射させる制御および照射を停止させる制御を行う。
【0044】
光学制御部65は、選択計算部63の計算により選択された転写領域12内の半導体チップ1に対してレーザ光Lを照射するため、ガルバノミラー52(図4参照)を調整する制御を行う。
【0045】
移動機構制御部66は、第1移動機構32(図4参照)による支持基板保持部30(図4参照)の移動および第2移動機構42(図4参照)による被転写基板保持部40(図4参照)の移動の一方または両方を行わせる制御を行う。移動機構制御部66は、被転写基板20の被転写面上の所定の位置と支持基板10の所定の転写領域12の位置とが対向するように位置合わせを行うように構成されている。
【0046】
記憶部67は、揮発性記憶装置および不揮発性記憶装置を含んで構成される。記憶部67は、プログラムや、転写装置100の転写に関する各種情報などを記憶している。
【0047】
制御装置60には、表示部68および入力部69が接続されている。表示部68は、たとえば液晶表示装置である。表示部68は、エレクトロルミネッセンス表示装置、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイであってもよい。入力部69は、たとえばマウスである。入力部69は、キーボードやタッチパネルであってもよい。
【0048】
(半導体チップ1の転写方法の処理の流れ)
図6を参照して、第1実施形態による、半導体チップ1の転写方法の処理の流れについて説明する。なお、以下に説明する半導体チップ1の転写方法の処理は、制御部61により実行される。なお、処理ステップの順番は、互いに矛盾しない限りにおいて、前後を入れ替えたり同時に実行させたりすることができる。
【0049】
ステップS1において、転写領域配置部62は、予め記憶部67に記憶された、または、入力部69により入力された、今回実行される半導体チップ1の転写工程において設定される転写領域12の形状および配置を参照し、支持基板10における保持領域11内に転写領域12を配置する。転写領域配置部62は、保持領域11内に複数の同一形状の転写領域12を互いに接しつつ重ならないように配置する。その後、処理はステップS2に進む。
【0050】
ステップS2において、選択計算部63は、転写領域配置部62により配置された転写領域12内の半導体チップ1の中から被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算を実行する。選択計算部63は、転写領域12毎に転写する半導体チップ1を選択する計算を実行する。選択計算部63は、転写領域12以外の複数の領域に対しては、被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算を実行しない。その後、処理はステップS3に進む。
【0051】
ステップS3において、移動機構制御部66は、第1移動機構32を介して半導体チップ1を支持した支持基板10を保持した支持基板保持部30の移動、および、第2移動機構42を介して被転写基板20を保持した被転写基板保持部40を移動、の一方または両方を行わせる。移動機構制御部66は、第1移動機構32および第2移動機構42の少なくとも一方を介して、被転写基板20の被転写面上の半導体チップ1が転写される所定の位置と、支持基板10の半導体チップ1が転写される複数の転写領域12のうちの1つの転写領域12の位置とが対向するように、位置合わせを行う。その後、処理はステップS4に進む。
【0052】
ステップS4において、光学制御部65は、ガルバノミラー52を調整するとともに、光源制御部64は、レーザ光照射部50からレーザ光Lを照射させる。支持基板10の半導体チップ1を支持した面と反対側の面から半導体チップ1にレーザ光Lが照射されることにより、1つの転写領域12内の半導体チップ1のみが被転写基板20に転写される。転写領域12以外の領域は、レーザ光が照射されず、半導体チップ1は被転写基板20へ転写されない。その後、処理はステップS5に進む。
【0053】
ステップS5において、転写領域配置部62は、配置した複数の転写領域12のすべてにおいて半導体チップ1の被転写基板20へ転写が終了したか否かを判定する。転写領域配置部62は、配置した複数の転写領域12のすべてにおいて半導体チップ1の被転写基板20への転写が終了したと判定した場合(ステップS5においてYes)、処理は終了し、配置した複数の転写領域12のすべてにおいて半導体チップ1の被転写基板20への転写が終了していないと判定した場合(ステップS5においてNo)は、処理はステップS3に進む。なおステップS5の判定は、転写領域配置部62ではなく、制御部61の他の機能部により実行されても良い。
【0054】
次に、図7を参照して、比較例による半導体チップの転写方法について説明する。転写領域12は複数の同一形状の領域が互いに重ならないように配置されている例を示した上記第1実施形態とは異なり、比較例による転写領域92は複数の異なる形状の領域が重なるものと重ならないものを含んで配置されている。なお、比較例による支持基板90は、第1実施形態の支持基板10と同様のものである。
【0055】
比較例による支持基板90の保持領域91内には、複数の異なる形状の転写領域92が配置されている。複数の転写領域92は、互いに重なるものと、互いに重ならないものを含んでいる。複数の転写領域92は異なる形状の転写領域92が混在するため、複数の転写領域92における半導体チップ(不図示)の位置および数は一様ではない。また、異なる形状の複数の転写領域92から半導体チップが被転写基板(不図示)に転写されることに起因して、被転写基板における半導体チップが転写される領域の形状が複雑化する。また、複数の転写領域92のうち互いに重なる転写領域92については、重なる部分における半導体チップが既に転写されているか否かを判定する必要がある。そのため、第1実施形態による転写領域12と比べて、比較例による転写領域92では、異なる形状を含む転写領域92内の半導体チップの中から被転写基板に転写する半導体チップを選択する計算時間が長くなり、転写工程に要する時間が増加する。
【0056】
(第1実施形態の効果)
次に、第1実施形態の効果について説明する。
【0057】
第1実施形態の半導体チップ1の転写方法では、上記のように、半導体チップ1が支持された支持基板10における半導体チップ1の保持領域11内に複数の同一形状の転写領域12を互いに重ならないよう配置する転写領域配置工程と、転写領域12内の半導体チップ1の中から被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算を実行する計算工程と、転写領域12内の半導体チップ1にレーザ光Lを照射することにより転写領域12内の半導体チップ1のみを被転写基板20に転写する転写工程と、を備える。これにより、複数の同一形状の転写領域12における半導体チップ1の位置および数は一様となる。また、異なる形状の複数の転写領域12から半導体チップが被転写基板20に転写されることに起因する被転写基板20における半導体チップ1の転写される領域の形状が複雑化することを抑制することができる。また、複数の転写領域12のうち互いに重なる転写領域12がないため、重なる部分における半導体チップ1の有無を判定する必要がない。これらの理由から、異なる形状を含む複数の転写領域12における転写する半導体チップ1を選択する計算を実行する場合と比べて、被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算時間の増加を抑制することができる。その結果、支持基板10から被転写基板20に半導体チップ1を転写する転写工程に要する時間の増大を抑制することができる。
【0058】
なお、第1実施形態の半導体チップ1の転写方法では、支持基板10の転写領域12以外の領域に支持された半導体チップ1は被転写基板20に転写されない。これにより、支持基板10には、転写されない一定数の半導体チップ1が存在することになる。そのため、半導体チップ1の転写における歩留まりが悪いとも考えられる。しかしながら、第1実施形態の半導体チップ1の転写方法では、半導体チップ1の歩留まりの低下と引き換えに、被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算速度を速くすることができる。そのため、第1実施形態の半導体チップ1の転写方法によれば、異なる形状を含む複数の転写領域12における転写する半導体チップ1を選択する計算を実行する場合と比べて、被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算時間の増加を抑制することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、転写領域配置工程は、支持基板10の保持領域11内に複数の同一形状の転写領域12を互いに接しつつ重ならないように配置する。これにより、同一形状の転写領域12を互いに接さないように間隔を隔てて配置する場合と比べて、隣接する転写領域12の間の間隙を低減させて保持領域11内に転写領域12を効率良く配置することができるため、転写可能な半導体チップ1の数を増加させることができる。そのため、転写する半導体チップ1を選択する計算時間の増加を抑制しながら、転写領域12内の半導体チップ1のみを被転写基板20に転写する転写工程において転写可能な半導体チップ1の数を増加させることができる。
【0060】
また、第1実施形態では、上記のように、転写領域12は、保持領域11の中心部に設けられた第1転写領域12aと、第1転写領域12aを囲むように設けられた複数の第2転写領域12bとを含む。これにより、保持領域11内に転写領域12をより効率良く配置することができるため、転写可能な半導体チップ1の数をより増加させることができる。そのため、転写する半導体チップ1を選択する計算時間の増加を抑制しながら、転写可能な半導体チップ1の数をより増加させることができる。
【0061】
また、第1実施形態では、上記のように、隣接する第2転写領域12bは互いに接して配置されるとともに、第1転写領域12aの外周は第2転写領域12bのいずれかの外周と接している。これにより、支持基板10内に第1転写領域12aと第2転写領域12bとの間の間隙を低減させて保持領域11内において転写領域12をさらに効率良く配置することができるため、転写可能な半導体チップ1の数をさらに増加させることができる。そのため、転写する半導体チップ1を選択する計算時間の増加を抑制しながら、転写可能な半導体チップ1の数をさらに増加させることができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、保持領域11の中心から最も離れた位置に設けられた転写領域12における支持基板10の中心から最も離れた外周が、保持領域11の外周縁に内接するように配置されている。これにより、保持領域11の中心から最も離れた位置に設けられた転写領域12の保持領域11の中心から最も離れた外周が保持領域11の外周縁に内接するように配置されていない場合と比べて、保持領域11の外周縁近傍に転写領域12をより効率良く配置することができるため、転写可能な半導体チップ1の数をさらに増加させることができる。そのため、転写する半導体チップ1を選択する計算時間の増加を抑制しながら、転写可能な半導体チップ1の数をより増加させることができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、転写領域12の形状は矩形であり、かつ、被転写基板20の形状は矩形である。これにより、矩形状の転写領域12に支持された半導体チップ1を同じ矩形状の被転写基板20に転写することができるため、転写領域12における転写可能な半導体チップ1の被転写基板20に対する使用効率の低下を抑制することができる。
【0064】
また、第1実施形態の半導体チップ1の転写装置100は、上記のように、制御部61は、支持基板10における半導体チップ1の保持領域11内に複数の同一形状の転写領域12を互いに重ならないように配置し、転写領域12内の半導体チップ1の中から被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算を実行し、転写領域12内の半導体チップ1にレーザ光照射部50にレーザ光Lを照射させることにより、転写領域12内の半導体チップ1のみを被転写基板20に転写する制御を行うように構成されている。これにより、複数の同一形状の転写領域12における半導体チップ1の位置および数は一様となる。また、異なる形状の複数の転写領域12から半導体チップが被転写基板20に転写されることに起因する被転写基板20における半導体チップ1の転写される領域の形状が複雑化することを抑制することができる。また、複数の転写領域12のうち互いに重なる転写領域12がないため、重なる部分における半導体チップ1の有無を判定する必要がない。これらの理由から、異なる形状を含む複数の転写領域12における転写する半導体チップ1を選択する計算を実行する場合と比べて、被転写基板20に転写する半導体チップ1を選択する計算時間の増加を抑制することができる。その結果、支持基板10から被転写基板20に半導体チップ1を転写する転写工程に要する時間の増大を抑制することが可能な半導体チップ1の転写装置100を提供することができる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、図8を参照して、第2実施形態による半導体チップ1の転写方法について説明する。第2実施形態では、転写領域12の形状は矩形である例を示した上記第1実施形態とは異なり、転写領域13の形状は正六角形である例について説明する。第2実施形態において第1実施形態と共通する点については、説明を省略する。なお、図8において、転写領域13は、ハッチングにより図示された領域である。また、図面の簡略化のため、半導体チップ1の図示は省略している。
【0066】
第2実施形態においても、転写領域13は、保持領域11の中心部に設けられた第1転写領域13aと、第1転写領域13aを囲むように設けられた複数の第2転写領域13bとを含む。隣接する第2転写領域13bは互いに接して配置されるとともに、第1転写領域13aの外周は第2転写領域13bのいずれかの外周と接している。また、保持領域11の中心から最も離れた位置に設けられた第2転写領域13bにおける保持領域11の中心から最も離れた外周が、保持領域11の外周縁に内接するように配置されている。
【0067】
第2実施形態の転写領域12は、略円形状の保持領域11の中心部に設けられた六角形状の第1転写領域13aと、第1転写領域13aを囲むように設けられた6つの六角形状の第2転写領域13bとを含む。第1転写領域13aの六辺の各々は、いずれかの第2転写領域13bの一辺と重なるように接している。第2転写領域13bの第1転写領域13aと重なるように接する一辺と接続する辺は、隣接する第2転写領域13bの辺と重なるように接している。第2転写領域13bの保持領域11の中心から最も離れた2つの角は、保持領域11の外周縁に内接するように配置されている。
【0068】
第1実施形態における隣接する第2転写領域12bは、第1転写領域12aと接する角において互いに接して配置されている。これに対して、第2実施形態における隣接する第2転写領域13bは、互いの一辺を接して配置されている。そのため、第2実施形態による半導体チップ1の転写方法は、第1実施形態による半導体チップ1の転写方法と比べて、隣接する転写領域13の間の間隙を低減させて保持領域11内に転写領域13をより効率良く配置することができる。そのため、保持領域11内における半導体チップ1の使用効率の低下を抑制することができる。また、第1実施形態と同様、異なる形状を含む複数の転写領域における転写する半導体チップを選択する計算を実行する場合と比べて、被転写基板に転写する半導体チップを選択する計算時間の増加を抑制することができる。一方、第2実施形態による半導体チップ1の転写方法は、第1実施形態による半導体チップ1の転写方法と比べて、六角形状の転写領域13における転写可能な半導体チップ1の矩形状の被転写基板20に対する使用効率は劣ることになる。
【0069】
(第2実施形態の効果)
次に、第2実施形態の効果について説明する。
【0070】
第2実施形態の半導体チップ1の転写方法では、上記のように、保持領域11の形状は略円形であり、転写領域13の形状は正六角形である。これにより、隣接する転写領域13の互いの一辺を対向するように配置することができるため、隣接する転写領域13の間の間隙をより低減させて保持領域11内に転写領域13をより効率良く配置することができる。そのため、保持領域11内における半導体チップ1の使用効率の低下をより抑制することができる。
【0071】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0072】
[第3実施形態]
次に、図9を参照して、第3実施形態による半導体チップ1の転写方法について説明する。第3実施形態では、転写領域12の形状は矩形である例を示した上記第1実施形態とは異なり、転写領域14の形状は真円形である例について説明する。第3実施形態において第1実施形態と共通する点については、説明を省略する。なお、図9において、転写領域14は、ハッチングにより図示された領域である。また、図面の簡略化のため、半導体チップ1の図示は省略している。
【0073】
第3実施形態においても、転写領域14は、保持領域11の中心部に設けられた第1転写領域14aと、第1転写領域14aを囲むように設けられた複数の第2転写領域14bとを含む。隣接する第2転写領域14bは互いに接して配置されるとともに、第1転写領域14aの外周は第2転写領域14bのいずれかの外周と接している。また、保持領域11の中心から最も離れた位置に設けられた第2転写領域14bにおける保持領域11の中心から最も離れた外周が、保持領域11の外周縁に内接するように配置されている。
【0074】
第3実施形態の転写領域14は、略円形状の保持領域11の中心部に設けられた真円形状の第1転写領域14aと、第1転写領域14aを囲むように設けられた6つの真円形状の第2転写領域14bとを含む。隣接する第2転写領域14bは、互いの円周上において接して配置されている。第1転写領域14aは、第1転写領域14aの円周上において、いずれかの第2転写領域14bの円周と接している。第2転写領域14bの保持領域11の中心から最も離れた円周状の点において、保持領域11の外周縁に内接するように配置されている。
【0075】
第1実施形態における隣接する第2転写領域12bは、第1転写領域12aと接する角において互いに接して配置されている。これに対して、第3実施形態における隣接する第2転写領域14bは、互いの円周上において接して配置されている。そのため、第3実施形態による半導体チップ1の転写方法は、第1実施形態による半導体チップ1の転写方法と比べて、隣接する転写領域14の間の間隙を低減させて保持領域11内に転写領域14をより効率良く配置することができる。そのため、保持領域11内における半導体チップ1の使用効率の低下を抑制することができる。また、第1実施形態と同様、異なる形状を含む複数の転写領域における転写する半導体チップを選択する計算を実行する場合と比べて、被転写基板に転写する半導体チップを選択する計算時間の増加を抑制することができる。一方、第3実施形態による半導体チップ1の転写方法は、第1実施形態による半導体チップ1の転写方法と比べて、真円形状の転写領域14における転写可能な半導体チップ1の矩形状の被転写基板20に対する使用効率は劣ることになる。
【0076】
(第3実施形態の効果)
次に、第3実施形態の効果について説明する。
【0077】
上記第3実施形態の半導体チップ1の転写方法では、上記のように、保持領域11の形状は略円形であり、転写領域14の形状は真円形である。これにより、略円形状の保持領域11内において隣接する複数の転写領域14に囲まれた間隙を低減させてに転写領域14をより効率良く配置することができる。そのため、保持領域11内における半導体チップ1の使用効率の低下を抑制することができる。
【0078】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0079】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0080】
たとえば、上記第1実施形態では、転写領域配置工程において、支持基板10の保持領域11内に複数の同一形状の転写領域12が互いに接しつつ重ならないように配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、転写領域配置工程において、支持基板10の保持領域11内に複数の同一形状の転写領域12が、互いに接さず、かつ、重ならないように配置されていても良い。
【0081】
また、上記第1実施形態では、転写領域12は、保持領域11の中心部に設けられた第1転写領域12aと、第1転写領域12aを囲むように設けられた複数の第2転写領域12bとを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1転写領域12aは保持領域11の中心部に設けられていなくても良いし、第2転写領域12bは、第1転写領域12aを囲むように設けられていなくても良い。また、たとえば、保持領域11の中心部に設けられた第1転写領域12aと、第1転写領域12aを囲むように設けられた複数の第2転写領域12bと、第2転写領域12bを囲むように設けられた複数の第3転写領域とを含んでいても良い。
【0082】
また、上記第1実施形態では、隣接する第2転写領域12bは互いに接して配置されるとともに、第1転写領域12aの外周は第2転写領域12bのいずれかの外周と接している例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、隣接する第2転写領域12bは互いに接して配置されていなくても良いし、第1転写領域12aの外周は第2転写領域12bのいずれかの外周と接していなくても良い。
【0083】
また、上記第1実施形態では、保持領域11の中心から最も離れた位置に設けられた転写領域12における保持領域11の中心から最も離れた外周が、保持領域11の外周縁に内接するように配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、保持領域11の中心から最も離れた位置に設けられた転写領域12における保持領域11の中心から最も離れた外周は、保持領域11の外周縁に内接していなくても良い。
【0084】
また、上記第1~第3実施形態では、支持基板10の形状は円形であり、保持領域11の形状は略円形であり、被転写基板20の形状は矩形である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、支持基板10、保持領域11および被転写基板20の形状は、いずれも、円形であっても良いし、多角形であっても良い。
【0085】
また、上記第1~第3実施形態では、レーザ光照射部50は、レーザ光源51と、ガルバノミラー52と、fθレンズ53とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。
たとえば、ガルバノミラー52の代わりにポリゴンミラーを用いても良いし、ガルバノミラー52とfθレンズ53の代わりにマスクを用いても良い。
【0086】
また、上記第1~第3実施形態では、複数の転写領域の形状は互いに同一形状である。これにより、複数の転写領域における半導体チップの位置および数は一様となる。また、異なる形状の複数の転写領域から半導体チップが被転写基板に転写されることに起因する被転写基板における半導体チップの転写される領域の形状が複雑化することを抑制することができる。その一方、複数の転写領域の形状は必ずしも同一形状でなくとも構わない。
【符号の説明】
【0087】
1 半導体チップ
10 支持基板
11 保持領域
12、13、14 転写領域
12a、13a、14a 第1転写領域
12b、13b、14b 第2転写領域
20 被転写基板
30 支持基板保持部
40 被転写基板保持部
50 レーザ光照射部
61 制御部
100 転写装置
L レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9