(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138362
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/22 20060101AFI20230922BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230922BHJP
B41J 11/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B65H5/22 C
B41J2/01 305
B41J11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024425
(22)【出願日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2022042228
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】細江 祐規
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
3F049
【Fターム(参考)】
2C056HA29
2C058DA13
2C058DA38
3F049AA01
3F049FB01
3F049LA01
3F049LB01
(57)【要約】
【課題】搬送装置において、吸着搬送される媒体の画像形成部への接触の可能性を低減する。
【解決手段】搬送装置1は、媒体Mに画像形成を行う画像形成部の一例であるインクジェットヘッド110に対向するように配置され、媒体Mを吸着しながら搬送する。また、搬送装置1は、媒体Mを吸着する吸着領域を有する搬送面Sを備える。吸着領域は、媒体Mの搬送方向Dにおいてインクジェットヘッド110に対向する領域全体を含む第1吸着領域A1と、この第1吸着領域A1よりも搬送方向Dにおける上流側に位置し、第1吸着領域A1よりも強い吸着力で媒体Mを吸着する第2吸着領域A2とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に画像形成を行う画像形成部に対向するように配置され、前記媒体を吸着しながら搬送する搬送装置であって、
前記媒体を吸着する吸着領域を有する搬送面を備え、
前記吸着領域は、前記媒体の搬送方向において前記画像形成部に対向する領域全体を含む第1吸着領域と、当該第1吸着領域よりも前記搬送方向における上流側に位置し、前記第1吸着領域よりも強い吸着力で前記媒体を吸着する第2吸着領域とを含む
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
複数のベルト孔を有し、前記搬送面において前記媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの前記搬送面とは反対側の面において前記搬送ベルトを支持する支持部材と、
前記搬送面に前記吸着領域を形成するように前記複数のベルト孔を介してエアを吸引する吸引部とを更に備え、
前記支持部材は、前記搬送方向及び当該搬送方向に直交する前記媒体の幅方向のそれぞれに配列され、前記ベルト孔に連通可能な複数の凹部と、当該複数の凹部のうち一部の凹部に連結され、当該凹部からエアを吸引することによって前記第1吸着領域を形成する複数の第1吸引孔と、前記複数の凹部のうち他の一部の凹部に連結され、前記複数の第1吸引孔よりも吸引路が広く、前記凹部からエアを吸引することによって前記第2吸着領域を形成する複数の第2吸引孔とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記複数の第1吸引孔は、前記ベルト孔よりも吸引路が狭く、
前記複数の第2吸引孔は、前記ベルト孔よりも吸引路が広い
ことを特徴とする請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記第2吸着領域は、前記搬送方向において前記第1吸着領域の長さの半分以下であることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置のインクジェットヘッドの下方においてエアをファンで吸引して圧力を生成し、用紙をベルトに吸着して搬送する吸着搬送が知られている。この吸着搬送では、ベルトの下にはプラテンが設けられ、このプラテンのベルトとの摺動面側にはリブで囲われたセルと呼ばれる圧力室が設けられることで、負圧を生成させ、用紙の吸着を実現している。具体的には、セル内に生成された負圧が、ベルト孔を介して用紙にかかることで用紙をベルト搬送面に吸着している。
【0003】
このような吸着搬送においては、搬送面全域に負圧を生成し、用紙を吸着する手法が一般に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸着搬送において、セル内の負圧生成速度はセルに連結されたセル穴径と比例関係にあり、セル内負圧生成速度は、セル穴径が大きければ上がり、セル穴径が小さければ下がる。搬送される用紙の吸着を維持できる範囲であれば、セル穴径をできるだけ小さくすることが望ましい。
【0006】
なぜなら、セル穴を大きくした場合、例えば、吸引による吸引風が発生し、ベルト搬送面上の気流を乱してしまう。これによって、インクミスト滴の着弾位置が乱れ、画像品質を低下させる恐れがある。
【0007】
ただし、セル穴径を小さくすることで、セル内の負圧生成速度は下がり、ベルト上に用紙が乗っていない、開放状態にあるセルでは、負圧が生成されにくい。また、このように搬送面上の用紙が乗っていない開口穴(開放状態のセル穴)が多いと、開口穴から空気が流れ、用紙で密閉状態のセルの負圧が高まりにくい。
【0008】
これらの理由により、特に画像形成開始1枚目の用紙のプラテンへの突入時には、ベルト上に用紙が無く、全穴が開放状態であるため、全セル内の負圧が生成されにくい状態である。この状態で、用紙がベルト上に搬送されると、通紙1枚目の用紙の先端の吸着が充分でなく、用紙がベルト搬送面から浮いてしまうことがありうる。用紙がベルト搬送面から浮くと、用紙がインクジェットヘッドに接触するヘッドアタックが発生する場合がある。このヘッドアタックが発生すると、インクジェットヘッドの破損や用紙の搬送ジャムなどを引き起こす。なお、用紙に限らず、他のシート状などの媒体においても、ヘッドアタックが発生するおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、吸着搬送される媒体の画像形成部への接触の可能性を低減することができる搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、搬送装置は、媒体に画像形成を行う画像形成部に対向するように配置され、前記媒体を吸着しながら搬送する搬送装置であって、前記媒体を吸着する吸着領域を有する搬送面を備え、前記吸着領域は、前記媒体の搬送方向において前記画像形成部に対向する領域全体を含む第1吸着領域と、当該第1吸着領域よりも前記搬送方向における上流側に位置し、前記第1吸着領域よりも強い吸着力で前記媒体を吸着する第2吸着領域とを含む。
【発明の効果】
【0011】
前記態様によれば、吸着搬送される媒体の画像形成部への接触の可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施の形態に係る搬送装置を備える画像形成装置を示す正面図である。
【
図2】一実施の形態における第1吸着領域及び第2吸着領域を説明するためのプラテンを示す平面図である。
【
図3】一実施の形態における第1吸着領域及び第2吸着領域を説明するための搬送ベルト及びプラテンの一部を示す拡大平面図である。
【
図4】一実施の形態における第1吸着領域及び第2吸着領域を説明するためのプラテン等を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係る搬送装置について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る搬送装置1を備える画像形成装置100を示す正面図である。
【0015】
図1及び後述する
図2~
図4に示す上下方向、左右方向、及び前後方向は、右方向を媒体Mの搬送方向Dとした場合の一例にすぎないが、例えば、上下方向は鉛直方向であり、左右方向及び前後方向は水平方向である。媒体Mは、例えば用紙である。但し、媒体Mは、用紙以外のシート状の媒体などであってもよい。
【0016】
図1に示すように、画像形成装置100は、画像形成部の一例である複数のインクジェットヘッド110と、複数の押さえローラ120と、搬送装置1とを備える。
【0017】
インクジェットヘッド110は、インクを吐出することによって媒体Mに画像形成を行う。例えば、インクジェットヘッド110は、
図2に示すように、媒体Mの搬送方向Dの8列のそれぞれで、搬送方向Dに直交する媒体Mの幅方向Wに3個ずつ、計24個配置されている。なお、搬送方向Dに互いに隣接する2列のインクジェットヘッド110は、幅方向Wに半ピッチ分だけずれるように配置されている。すなわち、インクジェットヘッド110は、千鳥状に配置されている。
【0018】
ここで、インクジェットヘッド110を一例とする画像形成部は、搬送方向Dに間隔を隔てて複数列配置されているものに限られず、1列(1つ)のみ配置されていてもよいし、個数及び配置は特に制限されない。また、画像形成部は、インクジェットヘッド110に限定されず、サーマルヘッド等の他の画像形成ヘッド、感光体ドラム等の転写体などであってもよい。なお、
図2では、後述する搬送ベルト11を省略し、複数のインクジェットヘッド110を太い実線で示し、第2吸着領域A2の搬送方向Dにおける下流側端部の境界を表す仮想線Vを破線で示す。
【0019】
押さえローラ120は、搬送ベルト11により搬送される媒体Mを搬送ベルト11の搬送面Sに向けて押さえるように、搬送ベルト11の上方において搬送ベルト11に接触する高さに配置されている。これにより、押さえローラ120は、搬送ベルト11の回転に従動して回転する。
【0020】
例えば、押さえローラ120は、インクジェットヘッド110の各列の間に1本ずつ計7本と、搬送方向Dの最上流側のインクジェットヘッド110の上流側に1本と、搬送方向Dの最下流側のインクジェットヘッド110の下流側に1本とで、計9本配置されている。押さえローラ120は、インクジェットヘッド110の各列の間に2本設けられていてもよい。なお、押さえローラ120は、搬送ベルト11の幅方向Wの全体に亘って設けられているとよい。
【0021】
搬送装置1は、搬送ベルト11と、複数のプーリ12~15と、プラテン21と、プラテンプレート22と、チャンバ23と、ファン24とを備える。
【0022】
搬送ベルト11は、複数のプーリ12~15に掛け渡されて回転する無端帯状のベルトであり、媒体Mを吸着しながら搬送する。
【0023】
図3及び
図4に示すように、搬送ベルト11には、複数のベルト孔11aが設けられている。このベルト孔11aは、例えば、幅方向Wにおいて後述するプラテン21の凹部21aの形成間隔と同一間隔で、搬送方向Dにおいて後述するプラテン21の凹部21aの形成間隔2つ分で、また、幅方向Wに互いに隣接する2列のベルト孔11aは、搬送方向Dに半ピッチ分だけずれるように配置されている。すなわち、ベルト孔11aは、千鳥状に配置されている。但し、ベルト孔11aの配置は、特に制限されない。
【0024】
複数のプーリ12~15は、いずれか1つ(例えばプーリ13)が図示しないモータ等の駆動手段から動力を伝達される駆動プーリであり、残りが従動プーリである。
【0025】
プラテン21は、搬送ベルト11の搬送面S(上面)とは反対側の面(下面)において搬送ベルト11を支持する支持部材の一例である。プラテン21は、例えば平板状を呈する。プラテン21上では、上述のように回転する搬送ベルト11が摺動する。
【0026】
図2に示すように、プラテン21は、搬送方向D及び幅方向Wのそれぞれに配列されベルト孔11aに連通可能な複数の凹部21a(
図3及び
図4参照)を有する。この凹部21aは、平面視において(インクジェットヘッド110側から見て)、例えば正方形状を呈する。複数の凹部21aは、セルと呼ばれる圧力室を構成するため、この凹部21aに連結された後述する第1吸引孔21b及び第2吸引孔21cとともに、搬送ベルト11の搬送面Sに、媒体Mを吸着する吸着領域(第1吸着領域A1及び第2吸着領域A2)を形成する。
【0027】
また、プラテン21は、
図3及び
図4に示すように、複数の凹部21aのうち一部の凹部21aに連結された第1吸引孔21bと、複数の凹部21aのうち他の一部の凹部21aに連結された第2吸引孔21cとを有する。第1吸引孔21bは、凹部21aからエアを吸引することによって、搬送方向Dにおいてインクジェットヘッド110に対向する領域全体を含む第1吸着領域A1を搬送面Sに形成する。また、第2吸引孔21cは、凹部21aからエアを吸引することによって、第1吸着領域A1よりも搬送方向Dにおける上流側に位置する第2吸着領域A2を搬送面Sに形成する。これらの第1吸引孔21b及び第2吸引孔21cは、プラテン21を上下方向に貫通する。第1吸引孔21b及び第2吸引孔21cは、凹部21aの前後方向の幅及び左右方向の幅よりも小径に設けられ、凹部21aの平面視における中央に連結されているとよい。
【0028】
第1吸引孔21bは、平面視において前記仮想線Vより下流側の領域全体の凹部21aに設けられており、各インクジェットヘッド110に対向する領域全体を含むエリアが第1吸着領域A1となっている。
【0029】
第2吸引孔21cは、プラテン21の搬送方向Dにおけるインクジェットヘッド110よりも上流側の端部の全体に亘って第2吸着領域A2を搬送面Sに形成する。但し、第2吸着領域A2は、インクジェットヘッド110(第1吸着領域A1)よりも上流側の搬送面Sのうちの一部であってもよい。なお、第2吸着領域A2は、搬送方向Dにおいて、第1吸着領域A1の長さの半分以下である。
【0030】
図4に示すように、第2吸引孔21cの径d2は、第1吸引孔21bの径d1よりも大きいため、第2吸引孔21cの吸引経路の断面積である吸引路は、第1吸引孔21bの吸引路よりも広い。そのため、第2吸引孔21cによって形成される第2吸着領域A2は、第1吸引孔21bによって形成される第1吸着領域A1よりも強い吸着力で媒体Mを吸着する。
【0031】
なお、第2吸着領域A2の吸着力を第1吸着領域A1の吸着力よりも強くするためには、第2吸着領域A2からエアを吸引するファン(吸引部の一例)と、第1吸着領域A1からエアを吸引するファンとを個別に配置し、第2吸着領域A2からエアを吸引するファンの吸引力を、第1吸着領域A1からエアを吸引するファンの吸引力よりも強くしてもよい。或いは、第1吸引孔21bと第2吸引孔21cとの吸引路の広さが同一であっても、例えば、第2吸引孔21cが設けられる間隔(密度)を、第1吸引孔21bが設けられる間隔よりも狭くすることや、後述するファン24と第1吸引孔21bとの間の吸引経路を、ファン24と第2吸引孔21cとの間の吸引経路よりも絞ることや、第2吸引孔21cに連結される凹部21aを、第1吸引孔21bに連結される凹部21aよりも広くしてベルト孔11aに連通しやすくすることなどによって、第2吸着領域A2の吸着力を第1吸着領域A1の吸着力よりも強くしてもよい。また、エア吸引に代えて静電吸着などの他の吸着手法が用いられる場合には、それぞれの吸着手法で、第2吸着領域A2の吸着力を第1吸着領域A1の吸着力よりも強くするとよい。
【0032】
また、第2吸引孔21cの径d2は、ベルト孔11aの径d0よりも大きいため、第2吸引孔21cの吸引路は、ベルト孔11aの吸引路よりも広い。このように第2吸引孔21cの吸引路がベルト孔11aの吸引路よりも広いことによって、第2吸着領域A2の凹部21aには、負圧が生成されやすい。一方、第1吸引孔21bの径d1は、ベルト孔11aの径d0よりも小さいため、第1吸引孔21bの吸引路は、ベルト孔11aの吸引路よりも狭い。
【0033】
プラテン21の凹部21aが形成されていない領域には、リブ21dが上方に突出するように設けられている。換言すると、リブ21dによって凹部21aが区切られている。
【0034】
プラテン21には、下方に突出する複数のボス21eが設けられている。
【0035】
プラテンプレート22は、プラテン21の下方に配置され、プラテン21の複数のボス21eの下端においてプラテン21を支持する。プラテンプレート22は、例えば平板状を呈する。
【0036】
プラテンプレート22には、チャンバ23の内部の負圧室に連通する複数の貫通孔22aが設けられている。
【0037】
チャンバ23は、プラテンプレート22の下方に配置され、負圧室を内部に有する。
【0038】
ファン24は、チャンバ23の負圧室から排気する。これにより、ファン24は、チャンバ23内に負圧を発生させ、この負圧により、プラテンプレート22の貫通孔22aや、プラテンプレート22とプラテン21との間隙(ボス21eの周囲)や、プラテン21の凹部21a、第1吸引孔21b、及び第2吸引孔21cを介してベルト孔11aに吸引力を発生させ、媒体Mを搬送ベルト11に吸着させる。なお、ファン24は、搬送面Sに吸着領域(第1吸着領域A1及び第2吸着領域A2)を形成するように複数のベルト孔11aを介してエアを吸引する吸引部の一例である。
【0039】
媒体Mを吸着搬送するために、エア吸引に代えて、静電吸着などが用いられる場合には、ファン24を省略可能である。また、本実施の形態では、インクジェットヘッド110の下方に搬送装置1が配置されているが、インクジェットヘッド110の横や上方に搬送装置1が配置されてもよい。その場合には、上述の説明とは向きが異なる構成が採用されればよい。
【0040】
以上説明した本実施の形態では、搬送装置1は、媒体Mに画像形成を行う画像形成部の一例であるインクジェットヘッド110に対向するように配置され、媒体Mを吸着しながら搬送する。また、搬送装置1は、媒体Mを吸着する吸着領域を有する搬送面Sを備える。吸着領域は、媒体Mの搬送方向Dにおいてインクジェットヘッド110に対向する領域全体を含む第1吸着領域A1と、この第1吸着領域A1よりも媒体Mの搬送方向Dにおける上流側に位置し、第1吸着領域A1よりも強い吸着力で媒体Mを吸着する第2吸着領域A2とを含む。
【0041】
ところで、画像形成開始1枚目の媒体Mのプラテン21への突入時には、搬送ベルト11上に媒体Mが無く、ベルト孔11aの全てが開放状態で凹部21a(セル)内の負圧が生成されにくい状態である。この状態で、1枚目の媒体Mが搬送ベルト11上に搬送されると、1枚目の媒体Mの先端の吸着が充分でなく、1枚目の媒体Mが搬送面Sから浮きやすい。しかしながら、本実施の形態では、第1吸着領域A1よりも媒体Mの搬送方向Dにおける上流側に位置する第2吸着領域A2は、第1吸着領域A1よりも強い吸着力で媒体Mを吸着する。そのため、1枚目の媒体Mの先端を吸着しやすくすることができる。よって、本実施の形態によれば、吸着搬送される媒体Mのインクジェットヘッド110への接触の可能性を低減することができる。更には、媒体Mのインクジェットヘッド110への接触の可能性を低減することができることによって、インクジェットヘッド110の破損や媒体Mの搬送ジャムの発生を低減することができる。また、画像形成部としてインクジェットヘッド110が配置され、吸着手法として吸引吸着が用いられる場合に、第1吸着領域A1においては、媒体Mの搬送方向Dにおける第1吸着領域A1の上流側に位置する第2吸着領域A2において既に媒体Mが搬送面Sに吸着されているため、第2吸着領域A2よりも弱い吸着力(吸引力)で媒体Mの吸着を維持しながら、インクジェットヘッド110が吐出するインクミスト滴の着弾位置の乱れなどに起因する画像品質の低下が発生するのを防止することができる。また、上述のように、第2吸着領域A2が、搬送方向Dにおいて第1吸着領域A1の長さの半分以下である場合、吸着領域の多くの部分が、第2吸着領域A2よりも吸着力が弱い第1吸着領域A1となるため、インクミスト滴の着弾位置の乱れなどに起因する画像品質の低下が発生するのをより一層防止することができる。
【0042】
また、本実施の形態では、搬送装置1は、搬送ベルト11と、支持部材の一例であるプラテン21と、吸引部の一例であるファン24とを更に備える。搬送ベルト11は、複数のベルト孔11aを有し、搬送面Sにおいて媒体Mを搬送する。プラテン21は、搬送ベルト11の搬送面S(上面)とは反対側の面(下面)において搬送ベルト11を支持する。ファン24は、搬送面Sに吸着領域を形成するように複数のベルト孔11aを介してエアを吸引する。プラテン21は、搬送方向D及び幅方向Wのそれぞれに配列され、ベルト孔11aに連通可能な複数の凹部21aと、これらの複数の凹部21aのうち一部の凹部21aに連結され、この凹部21aからエアを吸引することによって第1吸着領域A1を形成する複数の第1吸引孔21bと、複数の凹部21aのうち他の一部の凹部21aに連結され、複数の第1吸引孔21bよりも吸引路が広く、凹部21aからエアを吸引することによって第2吸着領域A2を形成する複数の第2吸引孔21cとを有する。
【0043】
これにより、プラテン21の凹部21aに連結させる第1吸引孔21b及び第2吸引孔21cの吸引路の広さを変更した簡素な構成で、第1吸着領域A1及び第2吸着領域A2を形成することができる。そのため、簡素な構成で、吸着搬送される媒体Mのインクジェットヘッド110への接触の可能性を低減することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、複数の第1吸引孔21bは、ベルト孔11aよりも吸引路が狭く、複数の第2吸引孔21cは、ベルト孔11aよりも吸引路が広い。
【0045】
これにより、第1吸着領域A1よりも吸着力(吸引力)が強い第2吸着領域A2において、ベルト孔11aよりも吸引路が広い第2吸引孔21cによって凹部21aに負圧を生成させやすくすることができる。そのため、画像形成開始1枚目の媒体Mのプラテン21への突入時に、搬送ベルト11上に媒体Mが無く、ベルト孔11aの全てが開放状態で凹部21a(セル)内の負圧が生成されにくい状態であっても、1枚目の媒体Mの先端をより確実に吸着することができる。また、画像形成部としてインクジェットヘッド110が配置され、吸着手法として吸引吸着が用いられる場合に、第1吸着領域A1においては、既に第2吸着領域A2において媒体Mが搬送面Sに吸着されているため、ベルト孔11aよりも吸引路が狭い第1吸引孔11cによって第2吸着領域A2よりも十分に弱い吸着力(吸引力)で媒体Mの吸着を維持しながら、インクジェットヘッド110が吐出するインクミスト滴の着弾位置の乱れなどに起因する画像品質の低下が発生するのをより確実に防止することができる。
【0046】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0047】
[付記1]
媒体に画像形成を行う画像形成部に対向するように配置され、前記媒体を吸着しながら搬送する搬送装置であって、
前記媒体を吸着する吸着領域を有する搬送面を備え、
前記吸着領域は、前記媒体の搬送方向において前記画像形成部に対向する領域全体を含む第1吸着領域と、当該第1吸着領域よりも前記搬送方向における上流側に位置し、前記第1吸着領域よりも強い吸着力で前記媒体を吸着する第2吸着領域とを含む
ことを特徴とする搬送装置。
【0048】
[付記2]
複数のベルト孔を有し、前記搬送面において前記媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの前記搬送面とは反対側の面において前記搬送ベルトを支持する支持部材と、
前記搬送面に前記吸着領域を形成するように前記複数のベルト孔を介してエアを吸引する吸引部とを更に備え、
前記支持部材は、前記搬送方向及び当該搬送方向に直交する前記媒体の幅方向のそれぞれに配列され、前記ベルト孔に連通可能な複数の凹部と、当該複数の凹部のうち一部の凹部に連結され、当該凹部からエアを吸引することによって前記第1吸着領域を形成する複数の第1吸引孔と、前記複数の凹部のうち他の一部の凹部に連結され、前記複数の第1吸引孔よりも吸引路が広く、前記凹部からエアを吸引することによって前記第2吸着領域を形成する複数の第2吸引孔とを有する
ことを特徴とする付記1記載の搬送装置。
【0049】
[付記3]
前記複数の第1吸引孔は、前記ベルト孔よりも吸引路が狭く、
前記複数の第2吸引孔は、前記ベルト孔よりも吸引路が広い
ことを特徴とする付記2記載の搬送装置。
【0050】
[付記4]
前記第2吸着領域は、前記搬送方向において前記第1吸着領域の長さの半分以下であることを特徴とする付記1から3のいずれか記載の搬送装置。
【符号の説明】
【0051】
1 搬送装置
11 搬送ベルト
11a ベルト孔
12~15 プーリ
21 プラテン
21a 凹部
21b 第1吸引孔
21c 第2吸引孔
21d リブ
21e ボス
22 プラテンプレート
22a 貫通孔
23 チャンバ
24 ファン
100 画像形成装置
110 インクジェットヘッド
120 押さえローラ
A1 第1吸着領域
A2 第2吸着領域
D 搬送方向
V 仮想線
M 媒体
S 搬送面
W 幅方向